(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172303
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04847 20220101AFI20231129BHJP
【FI】
G06F3/04847
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084002
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河西 純
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】志小田 雄宇
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA27
5E555BA23
5E555BB13
5E555BC01
5E555BC17
5E555CA42
5E555CA47
5E555CC03
5E555DA23
5E555DB32
5E555DB53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザがエージェントと車両の一体感を得ることができる車両制御方法を提供する。
【解決手段】擬人化されたエージェントを備えた車両を制御する処理をプロセッサに実行させる車両制御方法であって、プロセッサは、エージェントの特徴を複数のエージェントごとに関連付けて格納するエージェントデータを参照し、車内のユーザに応じたエージェントを抽出S2し、対象エージェントをユーザに選択させるための選択指令を出力S3し、対象エージェントの情報を取得し、エージェントデータを参照して対象エージェントのエージェント特徴を抽出S5し、対象エージェントの特徴に応じてS7車両の制御パラメータを設定S8し、制御パラメータを制御対象に出力S9する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬人化されたエージェントを備えた車両を制御する処理をプロセッサに実行させる車両制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記エージェントの特徴を複数の前記エージェントごとに関連付けて格納するエージェントデータを参照し、車内のユーザに応じた前記エージェントを抽出し、
抽出された前記エージェントの中から対象エージェントを前記ユーザに選択させるための選択指令を出力し、
前記エージェントデータを参照して、前記対象エージェントのエージェント特徴を抽出し、
抽出された前記対象エージェントの特徴に応じて、前記車両の制御用の制御パラメータを設定し、
前記制御パラメータを制御対象に出力する車両制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御方法において、
前記車両に設けられたセンサの検出結果、又は、前記ユーザが所有する携帯端末と前記車両との間の接続状態に基づき、前記ユーザを検出する車両制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両制御方法において、
前記エージェントデータは、前記ユーザ及び/又は前記車両の識別情報と関連付けた前記エージェントの情報を含む車両制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の車両制御方法において、
前記エージェントの特徴は、キャラクタの種類、形状、性別、表情、動作、性格、又は服装の少なくとも1つの要素で示される車両制御方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の車両制御方法において、
前記選択指令は、前記抽出されたエージェントの音声及び/又は画像を前記ユーザに出力するための指令である車両制御方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の車両制御方法において、
前記対象エージェントは、前記ユーザの選択操作に基づき選択され、又は、前記選択操作がない場合には自動で選択される車両制御方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の車両制御方法において、
前記対象エージェントは、有形物でありエージェント機能を有するロボットである車両制御方法。
【請求項8】
請求項1又は2記載の車両制御方法において、
前記制御パラメータは、パワートレインの応答速度、ステアリングの重さ、サスペンションの固さ、車内照明装置の色と明るさ、香料発生装置の香りの種類、車両の接近音を出力する音装置による接近音の種類、音声アシスタント装置の賢さ、エアーコンディショナーの風量と温度、スピーカの音量、ナビゲーションシステムで設定される経路、又は自動運転システムの走り方の少なくとも1つである制御量を示す車両制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の車両制御方法において、
前記抽出された前記対象エージェントの特徴を車両制御に反映する反映度を決定し、
前記反映度に応じて前記制御パラメータを決定する車両制御方法。
【請求項10】
擬人化されたエージェントを備えた車両を制御する車両制御装置であって、
前記エージェントを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記エージェントの特徴を複数の前記エージェントごとに関連付けて格納するエージェントデータを参照して、車内のユーザに応じた前記エージェントを抽出し、
抽出された前記エージェントの中から対象エージェントを前記ユーザに選択させるための選択指令を出力し、
前記エージェントデータを参照して、前記対象エージェントのエージェント特徴を抽出し、
抽出された前記対象エージェントの特徴に応じて、前記車両の制御用の制御パラメータを設定し、
前記制御パラメータを制御対象に出力する車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用もてなし情報提供システムが知られている。(例えば特許文献1)。特許文献1記載の情報提供システムは、自動車を利用するユーザーの生体特性情報を取得し、ユーザー生体特性情報と記憶されたもてなし情報との予め定められた適合関係に基づいて、ユーザー生体特性情報に適合するもてなし情報を検索して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記情報提供システムはエージェントを用いたシステムではないため、ユーザがエージェントと車両の一体感を得ることができないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ユーザがエージェントと車両の一体感を得ることができる車両制御方法及び車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エージェントの特徴を複数のエージェントごとに関連付けて格納するエージェントデータを参照し、車内のユーザに応じたエージェントを抽出し、対象エージェントをユーザに選択させるための選択指令を出力し、対象エージェントの情報を取得し、エージェントデータを参照して対象エージェントのエージェント特徴を抽出し、対象エージェントの特徴に応じて車両の制御パラメータを設定し、制御パラメータを制御対象に出力することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザがエージェントと車両の一体感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における車両のブロック図である。
【
図2】
図2は、AR機器の画面に表示される画像の概念図である。
【
図3】
図3は、データベースに含まれるエージェント情報を説明するための表である。
【
図4】
図4は、データベースに含まれるエージェント情報を説明するための表である。
【
図5】
図5は、エージェント特徴と制御パラメータとの対応関係を説明するための表である。
【
図6】
図6は、コントローラによる車両制御の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る車両制御装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る車両制御装置を含む車両の構成の一例を示すブロック図である。
図1で示されるように、車両1は、車内カメラ2、AR機器3、データベース4、パワートレイン5、サスペンション6、車内照明装置7、及びコントローラ10を備えている。なお、車両1は、
図1に示す構成に限らず、例えばエンジン、モータ等の駆動類、ナビゲーションシステムなどの補器類、及びバッテリ等を有している。本実施形態に係る車両制御装置は、コントローラ10を含む装置であって、車内のユーザに対して、アバター等で擬人化されたエージェントを表示して、アバターと同乗しているようなバーチャル空間を車内ユーザに提供する。また車両制御装置は、エージェント特徴を複数のエージェントごと関連づけたエージェントデータを格納しており、車内のユーザに応じたエージェントを抽出する。そして車両制御装置は、抽出されたエージェントの中から対象エージェントをユーザに選択させて、エージェントデータを参照して選択されたエージェントのエージェント特徴を抽出し、対象エージェントの特徴に応じて車両の制御パラメータを設定し、制御パラメータを制御対象に出力する。
【0010】
例えば、ある車両におけるエージェントとして、小さな女性を模したアバターと執事を模したアバターを表示でき、ユーザが小さな女性のアバターを選択した場合には、車両制御装置は、選択されたアバターの特徴に応じて、車両が小型車のような挙動になるようサスペンション等の車載装置を制御する。一方、ユーザが執事を模したアバターを選択した場合には、選択されたアバターの特徴に応じて、車両が高級セダンのような挙動になるよう車載装置を制御する。これにより、本実施形態は、ユーザにより選択されたエージェントの特徴を車両に反映させるように、車両の車載装置を制御する。
【0011】
車内カメラ2は、車内の様子を撮像する装置である。AR機器3は、車内に位置する表示装置であって、ドライバーの頭部に装着されて、ドライバーに対して仮想空間を表示する。仮想空間の画像は、ドライバーが見ている実画像に、人を模したアバターを重畳した画像であって、実在する車外及び/又は車内の風景にバーチャルの視覚情報を重ねることで、実空間を仮想的に拡張させた画像である。アバターはユーザやアニメのキャラクター等で表され、AR機器3によるアバター表示がエージェントの機能を実行することになる。エージェントは、車内のユーザに対して情報を提示するよう擬人化されたものであるが、必ずしも人間を模す必要はなく、所定のキャラクタ、アバターやアイコンでもよい。エージェントは、仮想画像に限らず、物理的な個体として設けられてもよく、エージェントとしての人間やキャラクタ等の形を画像として、ナビゲーションシステムのディスプレイや、ユーザが所有する携帯端末(通信携帯端末)のディスプレイ上に表示させてもよい。なお、エージェントを含む仮想画像は車内ユーザに限らず車外のユーザと共有してもよい。つまり、仮想画像をネットワーク上で配信できるので、遠隔地にいるユーザがオンラインもしくはオフラインで当該車両のVR映像を視聴することができる。
【0012】
図2は、AR機器3を介してドライバーが見ている画像を表している。車両走行中、ドライバーがAR機器3を装着した状態で正面を向いた場合には、AR機器3はアバターを表示せずに、ドライバーの正面から見える実画像を表示する。一方、例えば車両停車中に、ドライバーがAR機器3を装着した状態で助手席側を向いた場合には、AR機器3は、車内外の実際の景色に加えてアバター20を含んだ仮想画像(拡張画像)を表示する(
図2を参照)。また、AR機器3は、コントローラ10の制御の下、車載通信を介してサーバに接続されてもよく、サーバーは遠隔ユーザの操作端末と通信可能な状態で接続されている。そして、遠隔ユーザは操作端末を操作することでアバター20を動かすことができ、ドライバーは、
図2のアバター20の動きを見ることも可能である。
【0013】
データベース4は、エージェントに関するデータを記憶する記憶媒体である。データベース4に格納されるデータについて、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3及び
図4はデータベースに含まれるエージェント情報を説明するための表であって、
図3はエージェントの種類を表し、
図4はエージェントの特徴を表す。
図3に示すように、データベース4は、ユーザに対して表示されるエージェントの情報を複数有している。
図3の例では、エージェントA~Dの4種類のエージェントを表している。エージェントA~Dの特徴は、エージェントごとに、アバターのタイプや、性格、複数、性別、表情、動作、性格、又は服装等の要素により異なっている。
図4に示すように、エージェントの特徴が各種エージェントごとに関連付けてエージェントデータとして格納されている。例えば、エージェントAは
図2に示すアバター20のような人型であり、エージェントBはキャラクタ型である。またエージェントA、Bの特徴は、性格、複数、性別で異なっている。エージェントの特徴は、
図4の例に限らず、例えば声質などでもよい。
【0014】
データベース4は、エージェントデータに加えて、ユーザデータも格納する。ユーザデータは、少なくともユーザの識別情報を含んでいる。ユーザの識別情報は、顔情報や指紋情報、又はユーザの携帯端末の情報を含んでいる。ユーザの識別情報は、ユーザ検出に使用される。また、ユーザデータは、ユーザにより登録されるエージェントの情報を含んでいる。例えば、ユーザが、システム利用のための登録時に、エージェントとして使用したいアバターを選択する。
図3の例で、ユーザが、エージェントA~Dのうち、エージェントA~Cを選択した場合には、ユーザの選択候補となるエージェントとして、エージェントA~Cの識別情報がユーザデータに登録される。なお、選択候補となるエージェントは、ユーザにより登録されたエージェントに限らず、例えば、現在、人気の高いアバターやキャラクタ等のエージェント、ユーザの年齢、性別等のユーザの特徴に合わせたエージェント、システムの利用時間帯、季節、気候、天気等に合わせたエージェント等、システム側で自動抽出されたものでもよい。
【0015】
そして、エージェントの情報がエージェント種類ごとにユーザの識別情報と関連付けることで、エージェントがユーザに紐づけられている。例えばユーザA~Dの4人が、エージェントAをお気に入りのエージェントとして登録した場合に、エージェントAはユーザA~Dの識別情報と関連づけられる。
【0016】
データベース4は、エージェントの特徴と、車両制御用の制御パラメータとを関連付けるテーブルを有している。
図5は、エージェント特徴と制御パラメータとの対応関係を説明するための表であり、「エージェント特徴-制御パラメータ」のテーブルに相当する。例えば、エージェントAのようにエージェントの特徴「タイプ」がヒト型である場合には、電気自動車(EV)又はハイブリッド車両(HEV)の接近音がキャラクタ音となる。また例えば、エージェントBのようにエージェントの特徴「性格」がせっかちである場合には、パワートレイン・トランスミッション(PT:パワートレイン)の応答速度は速くなり、ステアリングの重さは「重く」なり、その他、
図5に示すような車両制御になる。ここで、ステアリングの重さとは、ステアリングの操舵方向に対する反力の大きさである。なお、
図5の例では、制御パラメータ「パワートレイン・トランスミッションの応答速度」は速い/遅いと表記しているが、実際の制御パラメータは制御量(値)で表され、その他の制御パラメータも同様である。すなわち、制御パラメータは、パワートレインの応答速度、ステアリングの重さ、サスペンションの固さ、車内照明装置の色と明るさ、香料発生装置の香りの種類、車両の接近音を出力する音装置による接近音の種類、音声アシスタント装置の賢さ、エアーコンディショナーの風量と温度、スピーカの音量、ナビゲーションシステムで設定される経路、又は自動運転システムの走り方の少なくとも1つである。なお、制御パラメータは、上記に限らない。
【0017】
なお、エージェントのデータは、必ずしも車両を製造する事業者により作成されたデータに限らず、ゲーム会社やコンテンツ作成会社等の他の事業者により作成されたデータでもよい。また、制御パラメータも同様に、車両製造会社に限らず、他の事業者により作成されてもよい。これにより、エージェントの表示及び車両制御に関するコンテンツのバリエーションを増やすことで、ユーザの選択するエージェントの選択肢が増え、さまざまなエージェントに紐づいた車両制御を楽しむことができる。ただし、制御パラメータのうち、車内照明やスピーカの音量等、車両の運転に直接影響を及ぼさないパラメータに限り、車両製造会社以外の事業者により、任意に設定できるようにしてもよい。これにより、任意の事業者又はユーザがエージェントと車両制御パラメータの組み合わせを決定できることで、様々なバリエーションの車両制御を楽しむことができる。
【0018】
パワートレイン5、サスペンション6及び車内照明装置7は、本実施形態に係る車両制御装置の制御対象となる車載装置の一例である。
【0019】
コントローラ10は、エージェントを制御するための制御装置あり、ユーザを検出する機能、エージェントを制御する機能、エージェントの特徴に応じて車両を制御する機能等を有している。コントローラ10は、本実施形態に係る車両制御方法を実行させるプロセッサを有しており、機能ブロックとして、少なくともユーザ検出部11と、エージェント制御部12と、車両制御部13とを含む。各機能ブロックは、ソフトウェアと、ハードウェア(プロセッサ)との協働により各機能を実行する。本実施形態では、コントローラ10が有する機能を3つのブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明するが、コントローラ10の機能は必ずしも3つのブロックに分ける必要はなく、2つ以下の機能ブロック、あるいは、4つ以上の機能ブロックで分けてもよい。
【0020】
ユーザ検出部11は、車内カメラ2を用いて車内のユーザを検出する。ユーザ検出部11は、車内カメラ2で撮像された撮像画像に対して画像処理をしてユーザを検出する。ユーザ検出部11は、ユーザ検出用のセンサとして、車内カメラ2に限らず、例えばマイクを用いて、音声処理でユーザを検出してもよい。このように、ユーザ検出部11は、車両1に設けられたセンサの検出結果に基づきユーザを検出する。ユーザ検出部11は、ユーザが所有する携帯端末と車両との間の接続状態に基づきユーザを検出してよい。個人と紐づいた携帯端末と車両1が近距離通信網で接続された場合には、ユーザ検出部11は、携帯端末に紐づいたユーザ情報から、ユーザを検出できる。
【0021】
エージェント制御部12は、検出されたユーザの情報を取得し、データベース4のエージェントデータを参照して、ユーザに紐づけられているエージェントを抽出する。エージェント制御部12は、抽出されたエージェントの中から、対象エージェントをユーザに選択させるために、選択指令をAR機器3又は車載ディスプレイに出力する。例えば、ユーザAのユーザ情報がエージェントA~Cと紐づいている場合に、ユーザAが車内で検出されたときには、エージェント制御部12は、ユーザAに応じたエージェントとしてエージェントA~Cを抽出し、エージェントA~Cの中から対象エージェントをユーザに選択させるための選択指令を車載ディスプレイ及び/又はAR機器3に出力する。車載ディスプレイ及び/又はAR機器3は選択指令を受信すると、車載ディスプレイ及び/又はAR機器3の画面上に、エージェントA~Cを選択させるための選択画面を表示する。そして、ユーザは、画面上の選択画面を見ながら選択操作を行い、エージェントA~Cの中から対象エージェントを選択する。これにより、対象エージェントはユーザの選択操作に基づき選択される。
【0022】
なお、エージェント制御部12は、ユーザにエージェントを選択させる際に、エージェントの全ての特徴をユーザに提示する必要はなく、エージェントの一部の特徴を提示してもよい。つまり、エージェント制御部12は、必ずしもエージェントの全ての特徴を示す情報を選択指令に含めてAR機器3に送信する必要はなく、一部の特徴を示す情報のみを選択指令に含めればよい。例えば、エージェントの特徴のうち、容姿、表示、又は音声等、ユーザにとって直感的に、エージェントの特徴を把握できる情報をユーザに提示すればよい。これにより、ユーザは、簡易的な情報提示で、エージェントを容易に選択できる。
【0023】
また、エージェント制御部12は、ユーザにエージェントを選択させるために、ユーザに紐づけられているエージェントを表示する場合に、外見など、エージェントの一部の特徴のみを画面に表示して、例えばユーザによる画面のタッチ操作に応じて、エージェントの詳細な特徴を画面に表示してもよい。また、エージェント制御部12は、エージェントと紐づいていないユーザを検出した場合には、エージェントの最初の選択画面の時点で、あるいは、ユーザによる画面のタッチ操作に応じて、エージェントの詳細な特徴を画面に表示してもよい。
【0024】
エージェント制御部12は、対象エージェントをAR機器3の画面に表示させて、エージェントがユーザと会話したり、エージェントがユーザに対して情報を提供したりするよう、アバターの仮想画像や音声を制御する。なお、エージェントは、AR機器3の表示に限らず、ナビゲーションシステムや携帯端末などのディスプレイへの表示、車載スピーカと車載マイクを通じた対話を通じて、ユーザに提示してもよい。
【0025】
エージェント制御部12は、エージェントデータを参照して、ユーザにより選択された対象エージェントの特徴を抽出する。例えば、ユーザがエージェントAを選択した場合には、エージェント制御部12は、エージェントAの特徴として、タイプをヒト型、性格をのんびり、服装を制服、性別を男性のように抽出する(
図4を参照)。
【0026】
エージェント制御部12は、エージェントデータを参照して、抽出されたエージェントの特徴に応じて車両制御用の制御パラメータを設定する。例えば、ユーザがエージェントAを選択した場合には、エージェントAの特徴である「服装」が制服であるため、
図5に示すように、「服装:制服」に対応する制御対象は、アンビエンスライト(車内照明装置)及び車載した香り発生装置(香料発生装置)となる。そして、アンビエンスライトが中光に、香料発生装置がさわやかな香りになるように、制御対象の制御パラメータが設定される。
【0027】
車両制御部13は、設定された制御パラメータを制御対象に出力し、制御対象となる車載装置を制御する。例えば、ユーザがエージェントAを選択した場合には、エージェントAの特徴である「性格」がのんびりのため、パワートレイン・ミッションの応答速度が遅くなる(
図4及び
図5を参照)。一方、ユーザがエージェントBを選択した場合には、エージェントBの特徴である「性格」がせっかちのため、パワートレイン・ミッションの応答速度が速くなる。これにより、ユーザにより選択されたエージェントの特徴に応じて制御パラメータが設定されるため、ユーザはエージェントと車両との一体感を得ることができる。
【0028】
なおエージェント制御部12は、エージェントの特徴に応じて設定される制御パラメータを、ユーザの指定に応じて制御してもよい。例えば、ユーザが対象エージェントを選択した場合には、エージェント制御部12は、対象エージェントの特徴に応じて設定される制御対象のリストを、AR機器3の表示画面に表示する。例えば、ユーザがエージェントAを選択した場合に、エージェント制御部12は、エージェントAの特徴「のんびり」に対応した制御対象としてエアコンを表示し、制御パラメータとして「風量弱い」を表示する。このとき、ユーザは制御パラメータを調整でき、風量のレベルを「弱い」から「強い」に変更できる。これにより、エージェント制御部12は、ユーザの指定に応じて制御パラメータを調整できる。
【0029】
また、ユーザは、制御パラメータを調整する場合に、エージェントの特徴を車両制御に反映する反映度で指定してもよい。例えば、対象エージェントの特徴に応じて、スピーカの音量を大きくする場合に、反映度が50%に指定されている場合には、エージェントデータに格納されている、スピーカの制御パラメータで示される制御量に対して50%を乗じた制御量で、スピーカを制御すればよい。
【0030】
またエージェント制御部12は、エージェントの特徴に応じて設定される制御パラメータを、ユーザの指定に限らず、車両1の走行状態に応じて制御してよい。例えば、ステアリング操舵角の変化量が大きい、ブレ気液圧指令値の変化量が大きい、運転者の視線が頻繁に動いている等の運転負荷が高いと推定できる場合には、車両制御部13は、車両1を操作し易くなるように、制御パラメータを制御する。これにより、ドライバーの運転負荷を減らすことができる、一方、運転負荷が低いと推定できる場合には、車両制御部13は、エージェントの特徴を車両1に反映させて運転を楽しむように制御パラメータを制御する。このとき、制御パラメータの制御は、制御パラメータの大きさの調整でもよく、反映度の調整でもよい。
【0031】
次に、
図6を参照して、コントローラ10により実行される、エージェントの特徴を車両制御に反映させるための車両制御方法を説明する。
図6は、コントローラ10の車両制御の処理フローを示すフローチャートである。コントローラ10は、ユーザが車両に乗車して、車両のメインスイッチをオンにした時、又は、ユーザの操作によりシステムの起動指令を受信した時に、以下の制御フローを開始する。なお、メインスイッチは、車両を走行可能な状態にするための起動スイッチであって、エンジンを有する車両1であればイグニッションスイッチに相当する。
【0032】
ステップS1にて、コントローラ10のユーザ検出部11は車内カメラ2を用いて車内のユーザを検出する。ステップS2にて、コントローラ10のエージェント制御部12は、データベース4に格納されているエージェントデータを参照して、検出されたユーザに応じたエージェントを抽出する。ステップS3にて、エージェント制御部12は、抽出されたエージェントの中から対象エージェントをユーザに選択させるための選択指令をAR機器3及び/又は車載ディスプレイに出力する。
【0033】
ステップS4にて、エージェント制御部12は、ユーザによる選択に基づき対象エージェントの情報を取得する。対象エージェントの情報は、少なくともエージェントの種類又はエージェントの識別情報を含んでいればよい。ユーザがエージェントを選択しない場合には、エージェント制御部12が、例えば最も選択頻度の高いエージェントを対象エージェントとして自動で選択してもよい。ステップS5にて、エージェント制御部12は、データベース4に格納されているエージェントデータを参照して、対象エージェントの特徴を抽出する。
【0034】
ステップS6にて、エージェント制御部12は、対象エージェントの仮想画像をAR機器3の画面に表示させる。ステップS7にて、エージェント制御部12は、エージェントの特徴を車両制御に反映させるか否か判定する。例えば、エージェント制御部12は、ユーザに選択させるための画像をAR機器3/又は車載ディスプレイの画面に表示させて、ユーザからの操作指令に基づき判定する。ユーザがージェントの特徴を車両制御に反映させないことを選択した場合には、コントローラ10は、
図6の制御フローを終了する。一方、ユーザがージェントの特徴を車両制御に反映させることを選択した場合には、エージェント制御部12は、ステップS8以降の制御フローを実行する。
【0035】
ステップS8にて、エージェント制御部12は、抽出された対象エージェントに応じて、車両制御用の制御パラメータを設定する。ステップS9にて、コントローラ10の車両制御部13は、エージェント制御部12により設定された制御パラメータを制御対象に出力する。ステップS10にて、エージェント制御部12は、制御処理を継続するか否か判定する。例えば、ユーザがエージェントの特徴を車両制御に反映させる車両制御を停止する旨の停止操作を行い、コントローラ10が停止操作による信号を受信した場合には、エージェント制御部12は制御処理を中止して、
図6の制御フローを終了する。一方、車両制御を継続する場合には、コントローラ10はステップS8以降の制御フローを実行する。
【0036】
上記のように、本実施形態に係る車両制御方法及び車両制御装置において、コントローラ10は、エージェントの特徴を複数のエージェントごとに関連付けて格納するエージェントデータを参照し、車内のユーザに応じたエージェントを抽出し、抽出されたエージェントの中から対象エージェントをユーザに選択させるための選択指令を出力し、エージェントデータを参照して、対象エージェントのエージェント特徴を抽出し、抽出された対象エージェントの特徴に応じて、車両の制御用の制御パラメータを設定し、制御パラメータを制御対象に出力する。これにより、ユーザは制御パラメータの好みを、エージェントの特徴を介して選択できる。また、エージェントが変更すると制御パラメータが変更するため、エージェントと車両の一体感を感じることが可能である。また、ユーザの性格などの特徴をセンサ等で検出して車両制御に反映させるようなシステムでは、センサの精度により、ユーザの特徴を正確に検出できない場合には、ユーザの特徴と車両制御の一体感が損なわれてしまう。本実施形態では、ユーザがエージェントを選択する方法であるため、エージェントと車両の一体感を感じることが可能である。
【0037】
また本実施形態において、エージェントデータは、ユーザ及び/又は車両の識別情報と関連付けたエージェントの情報を含む。これにより、特定のユーザをセンサで検出できた場合には、ユーザに紐づいた複数のエージェントの情報を提示し、ユーザをセンサで検出できない場合には車両に紐づいた複数のエージェントの情報を提示できるので、ユーザは好みに応じて複数のエージェントから対象エージェントを選択することができる。
【0038】
また本実施形態において、エージェントの特徴は、キャラクタの種類、形状、性別、表情、動作、性格、又は服装の少なくとも1つの要素で示される。これにより、エージェントの特徴を一つ以上の要素で表すことで、そのエージェントの特徴を制御パラメータに対応づけることができる。
【0039】
また本実施形態において、ユーザに対してエージェントを選択させるための選択指令は、抽出されたエージェントの音声及び/又は画像をユーザに出力するための指令である。これにより、エージェントの特徴を視覚、聴覚を利用して提示しているので、ユーザはエージェントの特徴を直感的に把握できる。
【0040】
また本実施形態において、対象エージェントは、ユーザの選択操作に基づき選択され、又は、前記選択操作がない場合には自動で選択される。ユーザが特定のエージェントを選択した場合には、そのエージェントが一意に決まるので、そのエージェントの特徴を車両制御に反映できる。また、ユーザがエージェントを選択しない場合にも自動で対象エージェントを決定することで、対象エージェントの特徴を車両の制御パラメータを反映できる。
【0041】
また本実施形態において、抽出された対象エージェントの特徴を車両制御に反映する反映度を決定し、反映度に応じて前記制御パラメータを設定する。これにより、対象エージェントの特徴を車両制御に反映させる割合を変えることができる。なお、反映度は、ユーザの指定及び/又は車両の走行状態に応じて決定されてもよく、エージェントごとに異なる値でもよい。これにより、ユーザの好みや車両状態に応じて反映度を変更できる。
【0042】
なお、本実施形態において、ステップS1~S10の制御フローの順番は上記に限らず、任意の順序でよい。例えば、ステップS7の判定ステップは最初のステップとして実行されてもよい。すなわち、ユーザが車両に乗車したタイミングで、車載ディスプレイの画面表示で、本実施形態における車両制御を適用するか否かユーザに選択させてもよい。またステップS1によるユーザ検出の制御フローは省いてもよい。例えば、エージェントの情報が車両と紐づいている場合に、コントローラ10は、ユーザが車両に乗車したタイミングで、車載ディスプレイの画面表示で、車両に紐づいたエージェントをユーザに選択させる。そして、ユーザが選択した後、コントローラ10はステップS4以降の制御フローを実行すればよい。
【0043】
また、ステップS7の判定ステップを省いてもよい。例えば、ユーザが携帯端末において、本実施形態における車両制御を自動で車両に適用できるようデフォルト設定を行う。そして、携帯端末を所有するユーザが車両に乗車すると、車両1と携帯端末が近距離通信網を介して接続する。コントローラ10は、携帯端末との通信を通じて、デフォルト設定されていることを特定する。そして、コントローラ10はステップS2以降の制御フローを実行すればよい。
【0044】
ユーザ所有の携帯端末は、いわゆる電話機能を有した端末に限らず、エージェント機能を有したロボットとしてもよい。例えば、ユーザがロボットを車両1に持ちこむと、車両1とロボットが近距離通信網を介して接続する。コントローラ10は、車両1に接続されたロボットを、選択可能なエージェントとして認識する。そして、コントローラ10は、ユーザにより選択可能なエージェントしてロボットを含める。これにより、ユーザは、仮想画像に限らず、ロボットなどの有形物をエージェントとして選択でき、ユーザが日常生活で会話などのコミュニケーションをとっているロボットの特徴を車両制御に反映できるので、ユーザは日常生活の延長として違和感なく車両内で過ごすことができる。
【0045】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0046】
1…車両
2…車内カメラ
3…AR機器
4…データベース
5…パワートレイン
6…サスペンション
7…車内照明装置
10…コントローラ
11…ユーザ検出部
12…エージェント制御部
13…車両制御部
20…アバター