(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172315
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】水栓用カバー
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
E03C1/042 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084022
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(71)【出願人】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】小林 宙
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BB01
2D060BC30
2D060BD01
2D060BD03
2D060BE11
2D060BE20
2D060BF01
(57)【要約】
【課題】メインカバーにサブカバーを取り付ける際のサブカバーの位置調整を容易にする。
【解決手段】水栓本体に取り付けて用いられる水栓用カバーは、開口部を有するメインカバーと、メインカバーの開口部に着脱可能に取り付けられるサブカバー32と、サブカバー32を固定するためのねじ部材とを備える。サブカバー32は、ねじ部材が挿通される第2挿通孔と、メインカバーに設けられる被係合部72に当接するカム部71とを備える。カム部71は、サブカバー32がねじ部のねじ込み方向に押し込まれたとき、被係合部72に当接することにより、ねじ込み方向に交差する方向へサブカバー32を移動させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に取り付けて用いられる水栓用カバーであって、
開口部を有するメインカバーと、
前記メインカバーの前記開口部に着脱可能に取り付けられるサブカバーと、
前記サブカバーを固定するためのねじ部材とを備え、
前記サブカバーは、
前記ねじ部材が挿通される挿通孔と、
前記メインカバー又は前記水栓本体に設けられる被係合部に当接するカム部とを備え、
前記カム部は、前記サブカバーが前記ねじ部材のねじ込み方向に押し込まれたとき、前記被係合部に当接することにより、前記ねじ込み方向に交差する方向へ前記サブカバーを移動させることを特徴とする水栓用カバー。
【請求項2】
前記挿通孔は、前記サブカバーにおいて、前記カム部により前記サブカバーを移動させる方向の後方側に位置する縁から切り欠かれた切り欠き形状であることを特徴とする請求項1に記載の水栓用カバー。
【請求項3】
前記ねじ込み方向から前記サブカバーを見た平面視において、前記カム部により前記サブカバーを移動させる方向と直交する方向を前記サブカバーの幅方向としたとき、
前記サブカバーは、前記サブカバーを前記幅方向に二分する中心線を挟んで位置する二つの前記カム部を備える請求項1又は請求項2に記載の水栓用カバー。
【請求項4】
前記被係合部は、前記メインカバーに設けられている請求項1又は請求項2に記載の水栓用カバー。
【請求項5】
前記ねじ込み方向から前記サブカバーを見た平面視において、前記カム部により前記サブカバーを移動させる方向と直交する方向を前記サブカバーの幅方向としたとき、
前記メインカバーは、前記サブカバーに当接することにより、前記サブカバーの前記幅方向の位置ずれを規制する規制部を備える請求項1又は請求項2に記載の水栓用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓本体に取り付けて用いられる水栓用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水栓本体を水栓用カバーによって被覆したカバー水栓を開示する。特許文献1に開示される水栓用カバーは、水栓本体に取り付けられるメインカバーと、カバー本体に対して脱着可能に取り付けられるサブカバーとを備える。このようなサブカバーは、例えば、メンテナンス用のカバーとして適用される。メンテナンス用のカバーは、水栓本体の止水栓などのメンテナンスを要する部分を部分的に覆うカバーであり、メンテナンスの際に取り外される。この場合、メンテナンス用のカバーを取り外すのみで、メインカバーを取り外すことなくメンテナンスを行うことができるため、メンテナンスする際の利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される水栓用カバーのサブカバーは、ねじ部材によってメインカバーに脱着可能に取り付けられる。ねじ部材を用いた固定方法として、サブカバーに対してねじ部材を挿通するための挿通孔を設け、この挿通孔に挿通されたねじ部材を、メインカバーのねじ孔に螺合させる方法が挙げられる。この場合、サブカバーの挿通孔は、組付け性や設計公差を考慮して、遊びを有する形状、即ち、ねじ部材の直径よりも大きい形状に形成される。そのため、本来の取り付け位置から上記遊びの分、ずれた位置にサブカバーが取り付けられることがある。この場合には、メインカバーとサブカバーの間に不要な隙間が生じてしまうため、サブカバーを付け直す作業を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する水栓用カバーは、水栓本体に取り付けて用いられる水栓用カバーであって、開口部を有するメインカバーと、前記メインカバーの前記開口部に着脱可能に取り付けられるサブカバーと、前記サブカバーを固定するためのねじ部材とを備え、前記サブカバーは、前記ねじ部材が挿通される挿通孔と、前記メインカバー又は前記水栓本体に設けられる被係合部に当接するカム部とを備え、前記カム部は、前記サブカバーが前記ねじ部材のねじ込み方向に押し込まれたとき、前記被係合部に当接することにより、前記ねじ込み方向に交差する方向へ前記サブカバーを移動させる。
【0006】
上記構成によれば、ねじ部材のねじ込みによりサブカバーが更にねじ込み方向に移動する際に、カム部が被係合部に当接しながら移動することにより、ねじ込み方向に交差する方向にサブカバーが押し出される。したがって、サブカバーの取り付け位置に関して、ねじ部材をねじ込む操作によって、ねじ込み方向の位置決めと、ねじ込み方向に交差する方向の位置調整を同時に行うことができる。よって、メインカバーにサブカバーを取り付ける際に、サブカバーを目的の位置に位置させるための位置調整を容易に行うことができる。また、上記構成によれば、取り付け時にサブカバーがメインカバーに向かって押し出されるため、取り付け後のサブカバーとメインカバーとの間に生じる隙間をより小さくできる。
【0007】
上記水栓用カバーにおいて、前記挿通孔は、前記サブカバーにおいて、前記カム部により前記サブカバーを移動させる方向の後方側に位置する縁から切り欠かれた切り欠き形状であることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、サブカバーにおける挿通孔が切り欠かれている縁側から挿通孔内にねじ部材を出し入れできる。これにより、メインカバーなどに設けられたねじ孔からねじ部材を完全に取り外すことなく、ねじ部材の先端部分のみを螺合した状態にて、サブカバーの取り付け及び取り外しを行うことができる。したがって、サブカバーの取り付け時及び取り外し時の施工性が向上する。
【0009】
上記水栓用カバーにおいて、前記ねじ込み方向から前記サブカバーを見た平面視において、前記カム部により前記サブカバーを移動させる方向と直交する方向を前記サブカバーの幅方向としたとき、前記サブカバーは、前記サブカバーを前記幅方向に二分する中心線を挟んで位置する二つの前記カム部を備えることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、サブカバーにおける幅方向の両側がカム部により押し込まれる。そのため、カム部によりサブカバーをスライド移動させる際に、幅方向の一方側が先行するようにサブカバーが傾いてしまうことを抑制できる。
【0011】
上記水栓用カバーにおいて、前記被係合部は、前記メインカバーに設けられていることが好ましい。
上記構成の場合、カム部と被係合部との当接に基づくサブカバーの位置調整は、被係合部が設けられているメインカバーの位置を基準として行われる。そのため、水栓本体に対するメインカバーの取り付け位置が僅かにずれていた場合であっても、サブカバーとメインカバーとの間に生じる隙間を小さくする効果が得られる。
【0012】
上記水栓用カバーにおいて、前記ねじ込み方向から前記サブカバーを見た平面視において、前記カム部により前記サブカバーを移動させる方向と直交する方向を前記サブカバーの幅方向としたとき、前記メインカバーは、前記サブカバーに当接することにより、前記サブカバーの前記幅方向の位置ずれを規制する規制部を備えることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、カム部によりサブカバーを移動させる際に、幅方向の一方側が先行するようにサブカバーが傾いてしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メインカバーにサブカバーを取り付ける際のサブカバーの位置調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】サブカバーを取り外した状態の水栓の下面図である。
【
図8】(a)~(d)は、サブカバーの取り付け方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、浴室の壁面Wに設置される。以下では、壁面W側に向かって水栓10を見た場合における上下方向、左右方向、及び前後方向をそれぞれ、水栓10の上下方向、左右方向、及び前後方向として説明する。
【0017】
[水栓本体]
図1及び
図2に示すように、水栓10は、壁面Wに設けられる図示しない給湯管及び給水管に連結される水栓本体11を備える。水栓本体11は、給湯管及び給水管から供給される湯水が流通する管状の金属ボデー12を備える。金属ボデー12を構成する金属は、例えば、青銅、黄銅等の銅合金、ステンレスである。金属ボデー12の中央下部には、カラン用の吐水管13が接続されるとともに、金属ボデー12の中央後部には、シャワーヘッド用のホース14が接続される。
【0018】
金属ボデー12の左側前部には、温度調節ハンドル15及び流量調節ハンドル16が回動可能に取り付けられている。温度調節ハンドル15は、回動させることによって、吐水管13及びシャワーヘッドから吐水される混合水の温度を調節するハンドルである。流量調節ハンドル16は、回動させることによって、吐水管13及びシャワーヘッドから吐水される湯水の流量を調節するハンドルである。
【0019】
金属ボデー12の右側前部には、カラン用ボタン17及びシャワー用ボタン18が取り付けられている。カラン用ボタン17は、押し込み操作を行うことによって、吐水管13からの吐止水を切り替えるボタンである。シャワー用ボタン18は、押し込み操作を行うことによって、シャワーヘッドからの吐止水を切り替えるボタンである。
【0020】
図3に示すように、金属ボデー12の下部中央には、下方に突出する柱状の基部19が設けられている。基部19の先端面には、下方に開口するねじ孔が形成されている。基部19のねじ孔には、係止部材20を間に挟んで係止用ねじ部材21が螺合されている。係止部材20は、基部19よりも外径の大きい円環板状の部材であり、基部19の先端面と係止用ねじ部材21との間に挟持されることにより、基部19の先端に固定されている。係止部材20は、例えば、座金である。
【0021】
本実施形態において、基部19、係止部材20、及び係止用ねじ部材21は、後述するサブカバー32を係止するための引掛け用突起22を構成する。引掛け用突起22は、基部19及び係止用ねじ部材21により構成される軸部と、係止部材20により構成されてなり、軸部から周方向に突出するフランジ部とを備える。
【0022】
[水栓用カバー]
図1及び
図2に示すように、水栓10は、水栓本体11に取り付けられる水栓用カバー30を備える。水栓用カバー30は、メインカバー31と、サブカバー32とを備える。メインカバー31は、水栓本体11を覆うカバーであり、水栓本体11及び壁面Wに固定されている。サブカバー32は、水栓本体11における止水栓等のメンテナンス対象部位を覆うカバーであり、メインカバー31に対して着脱可能に取り付けられている。サブカバー32が設けられていることにより、メインカバー31を取り付けた状態のまま、サブカバー32のみを取り外すのみでメンテナンス作業を行うことができる。以下、水栓用カバー30を構成する各部材の詳細を説明する。
【0023】
(メインカバー)
図1及び
図2に示すように、メインカバー31は、支持部材31aと、カバー本体31bと、天板31cとを備える。なお、
図2においては、天板31cの図示を省略している。
【0024】
支持部材31aは、カバー本体31b及び天板31cを支持する金属製の部材であり、壁面Wに固定される。支持部材31aを構成する金属は、例えば、青銅、黄銅等の銅合金、ステンレスである。
【0025】
図2に示すように、支持部材31aは、水栓本体11の後面側に配置されて壁面Wにねじ止めにより固定される後壁40を備える。後壁40の両側部には、前方に突出する一対の第1支持壁41が一体に形成されている。各第1支持壁41には、天板31cを固定するための貫通孔41aが設けられている。後壁40の下縁の両側部には、前方に突出する一対の第2支持壁42が一体に形成されている。各第2支持壁42には、カバー本体31bを固定するためのねじ孔42aが設けられている。後壁40の下縁には、前方に突出する左右一対の第3支持壁43が一体に形成されている。第3支持壁43は、第2支持壁42の左右方向の中央側に位置している。各第3支持壁43には、サブカバー32を第3支持壁43に固定するねじ部材B1を螺合させるねじ孔43aが形成されている。第3支持壁43及びねじ孔43aは、ねじ部材B1が下方から上方へ向かってねじ込み可能である形状に形成されている。
【0026】
カバー本体31bは、水栓本体11の下面の一部、前面、及び左右の両側面を覆う部材である。カバー本体31bの材質は特に制限されず、金属製、樹脂製等を採用できる。カバー本体31bは、樹脂の表面に金属メッキが形成されたものであってもよい。
【0027】
図4に示すように、カバー本体31bは、水栓本体11の下面側を覆う下壁50を備えている。下壁50には、左右方向に並ぶ一対の貫通孔51が形成されている。一対の貫通孔51には、下壁50を水栓本体11に固定するためのねじ部材B2が挿通されている。なお、水栓本体11の下面には、ねじ部材B2が螺合するねじ穴(図示略)が設けられている。
【0028】
下壁50の後部には、水栓本体11の下面側の後部を露出させる開口部52が形成されている。開口部52は、下壁50の後端から前方側に向かって徐々に幅が狭くなる略台形状の第1部分52aと、第1部分52aの左右方向の中央部から前方に延びる略一定幅の第2部分52bとを備える。第2部分52bの先端部分は、カラン用の吐水管13が挿通される部分である。
【0029】
図4及び
図6に示すように、下壁50は、開口部52の第1部分52aの縁部に沿って形成されるとともに上方に突出する第1規制壁53を備える。第1規制壁53の左右方向の両端部には、開口部52内に突出する一対の連結壁54が設けられている。各連結壁54には、貫通孔54aが設けられている。貫通孔54aには、カバー本体31bの下壁50を支持部材31aに固定するためのねじ部材B3が挿通されている。
【0030】
第1規制壁53の開口部52側の側面には、第1部分52aの縁部に沿って延びるとともに開口部52側に突出する突条形状の第2規制壁55が設けられている。第1規制壁53及び第2規制壁55は、開口部52にサブカバー32を取り付ける際のガイド面として機能する。また、第2規制壁55は、サブカバー32の上面と当接することにより、それ以上のサブカバー32の上方向への移動を規制する。なお、上下方向における第2規制壁55の形成位置は、サブカバー32の取り付け位置に応じて任意に設定できる。例えば、第1規制壁53は、サブカバー32の上面が第1規制壁53に当接した状態において、カバー本体31bの下壁50の下面とサブカバー32の下面とが面一となる位置に設けられている。
【0031】
図2に示すように、カバー本体31bは、水栓本体11の前面及び両側面を覆う周壁56を備えている。周壁56は、下壁50の前部及び両側部に沿って形成されるとともに下壁50から上方に突出する壁部である。周壁56の左側前部には、温度調節ハンドル15及び流量調節ハンドル16が挿通される二つのハンドル孔56aが形成されている。周壁56の右側前部には、カラン用ボタン17及びシャワー用ボタン18が挿通される二つのボタン孔56bが形成されている。
【0032】
天板31cは、水栓本体11の上面を覆う部材である。天板31cは、ねじ部材等の所定の固定手段によって、支持部材31aにおける第1支持壁41の貫通孔41aに固定される。天板31cの材質は特に制限されず、金属製、樹脂製等を採用できる。天板31cは、樹脂の表面に金属メッキが形成されたものであってもよい。
【0033】
(サブカバー)
サブカバー32は、メインカバー31の開口部52に取り付けられることにより、水栓本体11の下面における開口部52から露出する部分を覆う部材である。
【0034】
図5に示すように、サブカバー32は、メインカバー31の開口部52に取り付けた際に、開口部52の第1部分52aに配置される第1壁部60と、開口部52の第2部分52bに配置される第2壁部61とを備える。
【0035】
第1壁部60は、下面側から見た平面視形状が、開口部52の第1部分52aと相似形状かつ第1部分52aよりも一回り小さい形状に形成されている。第1壁部60の左右方向の中央部には、水栓本体11において、シャワーヘッド用のホース14が取り付けられる部分であるホース取付部23が挿通される第1挿通孔60aが形成されている。また、第1壁部60における第1挿通孔60aを挟んだ左右方向の両側には、サブカバー32を支持部材31aに固定するねじ部材B1を挿通させる第2挿通孔60bが形成されている。
【0036】
第1挿通孔60a及び各第2挿通孔60bは、第1壁部60の後方側の縁から切り欠かれた切り欠き形状である。第1挿通孔60a及び各第2挿通孔60bは、後方側の縁から前方に向かって一定幅で伸びるとともに、先端部が半円状に形成されている。また、第2挿通孔60bは、ねじ部材B1が下方から上方へ向かって挿通可能である形状に形成されている。
【0037】
第1挿通孔60aは、メインカバー31の開口部52にサブカバー32が取り付けられている状態において、ホース取付部23よりも前方側に大きく広がるように形成されている。同様に、各第2挿通孔60bは、メインカバー31の開口部52にサブカバー32が取り付けられている状態において、ねじ部材B1よりも前方側に大きく広がるように形成されている。
【0038】
換言すると、第1挿通孔60aの前方側の縁部とホース取付部23との間、及び第2挿通孔60bの前方側の縁部とねじ部材B1との間には、隙間が形成されている。当該隙間の前後方向の長さは、後述するサブカバーの取り付け方法における操作3において、引掛け用突起22に係止部63を係止するためのサブカバー32を前方へのスライド移動を許容できる長さに設定される。
【0039】
第2壁部61は、第1壁部60の左右方向の中央部から前方に延びる略一定幅の壁部である。第2壁部61の左右方向の幅は、開口部52の第2部分52bの幅よりも僅かに小さい。第2壁部61の先端は、カラン用の吐水管13の外周に沿った凹形状に形成されている。第2壁部61の左右方向の両側縁には、上方に突出するとともに第2壁部61の両側縁に沿って前後方向に延びる一対の縦壁62が設けられている。各縦壁62の後端部分は、第1壁部60の上面の途中部分まで延長して形成されている。
【0040】
一対の縦壁62の上部には、水栓本体11の引掛け用突起22に係止される一対の係止部63が設けられている。係止部63は、各縦壁62の上縁から上方に突出するとともに先端部が左右方向中央側に突出する断面L字状の壁部である。以下では、断面L字状の係止部63における左右方向中央側に突出する壁部を上壁部64と記載する。
【0041】
一対の係止部63の各上壁部64は、その先端同士が互いに対向するように形成されている。各上壁部64の先端同士の間には、スリット状の隙間Sが形成されている。隙間Sの幅は、水栓本体11に設けられる引掛け用突起22の基部19の直径よりも僅かに大きい。また、上壁部64の前方側の縁部には、切り欠き状の干渉抑制部64aが形成されている。
【0042】
詳細は後述するが、係止部63は、引掛け用突起22に対して、後方側から前方側に向かってサブカバー32をスライド移動させ、サブカバー32の第2壁部61を差し込む操作を行うことにより、引掛け用突起22に係止される。干渉抑制部64aは、上記操作時に、引掛け用突起22を構成する係止部材20(フランジ部)と上壁部64とが干渉して上記操作の妨げになることを抑制するために設けられている。干渉抑制部64aは、係止部材20の外周形状よりも大きい形状に形成される。係止部材20が円板状である本実施形態においては、干渉抑制部64aは、凹円弧状の切り欠きであり、その半径は、係止部材20の半径以上に設定されている。
【0043】
(カム機構)
図7に示すように、水栓用カバー30は、サブカバー32の取り付け位置の調整を補助するカム機構70を備える。カム機構70は、サブカバー32に設けられるカム部71と、メインカバー31に設けられる被係合部72とを備える。
【0044】
詳細は後述するが、メインカバー31の開口部52にサブカバー32を取り付ける際には、メインカバー31のねじ孔43a及びサブカバー32の第2挿通孔60bに対して、ねじ部材B1を上方向へねじ込む操作が行われる。カム部71及び被係合部72は、上記操作に基づいてサブカバー32が上方へ移動する際に、互いに当接することにより、サブカバー32の移動方向を上方に向かう方向から上方及び前方へ向かう斜め方向へと変換する。
【0045】
図5及び
図7に示すように、サブカバー32は、二つのカム部71を備える。二つのカム部71は、第1壁部60の上面に設けられるとともに、サブカバー32を左右方向に二分する中心線L1を挟んで位置している。より具体的には、二つのカム部71は、第1壁部60の上面において、中心線L1に対して線対称となる位置に設けられている。各カム部71は、第1壁部60の上面から上方に突出する突出部分であり、被係合部72に接触する第1カム面71aを備えている。
【0046】
図4及び
図7に示すように、メインカバー31は、二つの被係合部72を備える。二つの被係合部72は、カバー本体31bの各連結壁54の下面に設けられるとともに、上下方向において、サブカバー32に設けられるカム部71と重なる位置に位置している。各被係合部72は、連結壁54の下面から下方に突出する突出部分であり、カム部71の第1カム面71aに接触する第2カム面72aを備えている。
【0047】
図7に示すように、カム部71の第1カム面71a及び被係合部72の第2カム面72aは、互いに当接した状態で被係合部72に対してカム部71が上方に相対移動した際に、カム部71に対して前方へ向かう力を発生させる形状に形成される。第1カム面71a及び第2カム面72aは、上記力が発生する形状であれば特に限定されない。一例として、図面では、第1カム面71a及び第2カム面72aが、前方から後方に向かって下方に傾斜する平行な傾斜面である場合を図示している。
【0048】
[サブカバーの取り付け方法]
図8を参照して、水栓本体11に取り付けられている状態のメインカバー31の開口部52にサブカバー32を取り付ける方法について説明する。サブカバー32を取り付ける際には、以下に記載する操作1~操作4を順に行う。また、メインカバー31の開口部52に取り付けられたサブカバー32を取り外す場合には、以下に記載する操作1~操作4を逆の順で行う。
【0049】
(操作1)
図8(a)に示すように、支持部材31aの第3支持壁43に形成されているねじ孔43a(符号略)にねじ部材B1をねじ込む。このとき、ねじ部材B1は、その先端部分のみをねじ込んだ状態として、奥までねじ込まない。
【0050】
(操作2)
図8(a)に示すように、メインカバー31の開口部52の下方にサブカバー32を位置させる。そして、
図8(b)に示すように、サブカバー32を後方へスライド移動させる。これにより、サブカバー32の切り欠き形状の第1挿通孔60a内にホース取付部23を位置させるとともに、サブカバー32の切り欠き形状の各第2挿通孔60b内にねじ部材B1の軸部を位置させる。このとき、サブカバー32の第2挿通孔60bの縁がねじ部材B1の軸部に当接するまでサブカバー32を後方へスライド移動させる。
【0051】
(操作3)
図8(c)に示すように、サブカバー32の先端、即ち、第2部分52bを上に持ち上げてサブカバー32を斜めに傾けた状態とする。このとき、第2部分52bに設けられる係止部63の上壁部64が、水栓本体11に設けられる引掛け用突起22の係止部材20よりも上に位置するようにサブカバー32の先端を持ち上げる。
【0052】
ここで、サブカバー32の係止部63における上壁部64の前方側の縁部には、切り欠き状の干渉抑制部64aが形成されている。これにより、サブカバー32の係止部63の上壁部64を、引掛け用突起22の係止部材20よりも上に位置させる際に、上壁部64が係止部材20に当接することを抑制できる。したがって、上壁部64が係止部材20よりも上に位置するようにサブカバー32の先端を持ち上げる操作をスムーズに行うことができる。
【0053】
次いで、
図8(d)に示すように、サブカバー32を前方へスライド移動させる。そして、引掛け用突起22の係止部材20の直上に、サブカバー32の係止部63の上壁部64が載置された状態とする。具体的には、
図8(c)の状態から、サブカバー32を前方へスライド移動させる。そして、サブカバー32の第1壁部60の先端が、カバー本体31bの第1規制壁53に当たった位置で、サブカバー32の先端を下に降ろす。これにより、引掛け用突起22の係止部材20の直上に係止部63の上壁部64が載置された状態、即ち、引掛け用突起22に係止部63が係止された状態になる。
【0054】
ここで、メインカバー31を構成するカバー本体31bの下壁50には、開口部52の縁部から上方に突出する第1規制壁53、及び第1規制壁53から開口部52側に突出する第2規制壁55が設けられている。第1規制壁53及び第2規制壁55のそれぞれ前後方向、即ち、サブカバー32をスライド移動させる方向に延びるように形成されている。そのため、先端を持ち上げた状態のサブカバー32を前方へスライド移動させるとき、サブカバー32の第1壁部60の左右の両側部を、第1規制壁53及び第2規制壁55に当てながらスライド移動させることができる。
【0055】
この場合、第1規制壁53及び第2規制壁55がガイド面として機能することにより、サブカバー32のスライド移動をスムーズに行うことができる。加えて、サブカバー32の両側部が第1規制壁53に当接することにより、スライド移動させる際のサブカバー32の左右方向の位置ずれを抑制できる。また、サブカバー32の両側部が第2規制壁55に当接することにより、サブカバー32の先端が必要以上に持ち上げられた状態になることを抑制できる。
【0056】
(操作4)
操作1において、先端部分のみをねじ込んだ状態としていたねじ部材B1を奥までねじ込むことにより、ねじ部材B1のヘッド部と支持部材31aの第3支持壁43との間にサブカバー32の第1壁部60を挟み込む。これにより、サブカバー32は、メインカバー31の開口部52に取り付けられる。
【0057】
ここで、水栓用カバー30は、カム機構70を備えている。カム機構70は、ねじ部材B1の上方向へのねじ込みに伴うサブカバー32の上方向への移動に基づいて、サブカバー32の移動方向を上方及び前方へ向かう斜め方向へと変換することにより、サブカバー32の取り付け位置を調整する。
【0058】
図7に示すように、ねじ部材B1のねじ込みによってサブカバー32が一定位置まで上昇すると、サブカバー32に設けられたカム部71の第1カム面71aが、カバー本体31bに設けられた被係合部72の第2カム面72aに当接する。第1カム面71a及び第2カム面72aは、前方から後方に向かって下方に傾斜する平行な傾斜面である。そのため、ねじ部材B1のねじ込みによりサブカバー32が更に上方に移動しようとすると、第2カム面72a上を第1カム面71aが滑ることにより、サブカバー32が前方へ押し出される。これにより、ねじ部材B1のねじ込みに基づいて、サブカバー32の前後方向の位置調整が行われる。具体的には、サブカバー32の取り付け位置が、メインカバー31を構成するカバー本体31bとサブカバー32との間の前後方向の隙間がより小さくなる位置に調整される。
【0059】
上記の操作1~4により、サブカバー32は、前方側の係止部63の1点と、後方側の左右方向両側の二つのねじ部材B1の2点の合計3点で支持される態様にてメインカバー31に固定される。そして、サブカバー32は、メインカバー31の開口部52に取り付けられた状態になる。
【0060】
ここで、メインカバー31の開口部52に取り付けられた状態のサブカバー32において、引掛け用突起22の直下には、第2壁部61が位置している。そのため、取り付け状態のサブカバー32に対して、その先端を持ち上げる力が加えられた場合に、第2壁部61が引掛け用突起22の先端である下端に当接することにより、それ以上のサブカバー32の先端の上方向の移動を規制できる。これにより、サブカバー32の取り付け状態が安定する。
【0061】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)水栓本体11に取り付けて用いられる水栓用カバー30は、開口部52を有するメインカバー31と、メインカバー31の開口部52に着脱可能に取り付けられるサブカバー32と、サブカバー32を固定するためのねじ部材B1とを備える。サブカバー32は、ねじ部材B1が挿通される第2挿通孔60bと、メインカバー31に設けられる被係合部72に当接するカム部71とを備える。カム部71は、サブカバー32がねじ部材B1のねじ込み方向に押し込まれたとき、被係合部72に当接することにより、ねじ込み方向に交差する方向へサブカバー32を移動させる。本実施形態において、上記ねじ込み方向は、下から上に向かう方向であり、上記ねじ込み方向に交差する方向は、後から前に向かう方向である。
【0062】
上記構成によれば、ねじ部材B1のねじ込みによりサブカバー32が更に上方に移動する際に、カム部71が被係合部72に当接しながら移動することにより、サブカバー32が前方へ押し出される。したがって、サブカバー32の取り付け位置に関して、ねじ部材B1をねじ込む操作によって、ねじ込み方向である上下方向の位置決めと、ねじ込み方向に交差する方向である前後方向の位置調整を同時に行うことができる。よって、メインカバー31にサブカバー32を取り付ける際に、サブカバー32を目的の位置に位置させるための位置調整を容易に行うことができる。
【0063】
そして、上記構成によれば、取り付け時にサブカバー32が前方へ押し出されるため、取り付け後のサブカバー32とメインカバー31との間に生じる前後方向の隙間をより小さくできる。そのため、上記構成は、サブカバー32の第2挿通孔60bに対して、組付け性や設計公差などを考慮した遊びを大きく確保した場合に特に効果的である。
【0064】
(2)第2挿通孔60bは、サブカバー32の後方側の縁、即ち、カム部71によりサブカバー32を移動させる方向の後方側に位置する縁から切り欠かれた切り欠き形状である。
【0065】
上記構成によれば、サブカバー32における第2挿通孔60bが切り欠かれている縁側から第2挿通孔60b内にねじ部材B1を出し入れできる。これにより、メインカバー31に設けられたねじ孔43aからねじ部材B1を完全に取り外すことなく、ねじ部材B1を緩めて、その先端部分のみが螺合した状態にて、サブカバー32の取り付け及び取り外しを行うことができる。したがって、サブカバー32の取り付け時及び取り外し時の施工性が向上する。
【0066】
(3)ねじ部材B1のねじ込み方向からサブカバー32を見た平面視において、サブカバー32をスライド移動させる方向と直交する方向(以下、幅方向と記載する。)に二分する中心線L1を挟んで位置する二つのカム部71を備える。本実施形態において、上記幅方向は、左右方向である。
【0067】
上記構成によれば、サブカバー32における幅方向の両側がカム部71により押し込まれる。そのため、カム部71によりサブカバー32を移動させる際に、左右方向の一方側が先行するようにサブカバー32が傾いてしまうことを抑制できる。
【0068】
(4)被係合部72は、メインカバー31に設けられている。
上記構成の場合、カム部71と被係合部72との当接に基づくサブカバー32の位置調整は、被係合部72が設けられているメインカバー31の位置を基準として行われる。そのため、水栓本体11に対するメインカバー31の取り付け位置が僅かにずれていた場合であっても、サブカバー32とメインカバー31との間に生じる隙間を小さくする効果が得られる。
【0069】
(5)メインカバー31は、サブカバー32に当接することにより、サブカバー32の幅方向の位置ずれを規制する規制部としての第1規制壁53を備える。
上記構成によれば、カム部71によりサブカバー32を移動させる際に、幅方向の一方側が先行するようにサブカバー32が傾いてしまうことを抑制できる。また、サブカバー32の取り付け時において、第1規制壁53は、引掛け用突起22に係止部63を引掛けるためにサブカバー32をスライド移動させる際のガイド面としても機能する。そのため、上記構成によれば、引掛け用突起22に係止部63を引掛ける操作をスムーズに行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・サブカバー32に設けられる第2挿通孔60bの形状は、切り欠き形状に限定されない。第2挿通孔60bの形状は、例えば、閉じた孔状であってもよい。
【0071】
・サブカバー32に設けられるカム部71の配置は、上記実施形態に限定されない。例えば、中心線L1上にカム部71を配置してもよい。また、サブカバー32に対して、上下方向に延びる縦壁を設けるとともに、その縦壁の側面にカム部71を形成してもよい。なお、被係合部72は、カム部71の配置に応じて、カム部71と当接する位置に配置する。また、上記実施形態では、メインカバー31に被係合部72を設けていたが、水栓本体11に被係合部72を設けてもよい。なお、メインカバー31の内側に位置する部材は、すべて水栓本体11の一部とみなす。
【0072】
・サブカバー32に設けられるカム部71の形成数は特に限定されるものではなく、1であってもよいし、3以上であってもよい。被係合部72についても同様である。
・メインカバー31に設けられる第1規制壁53及び第2規制壁55の一方又は両方を省略してもよい。
【0073】
・サブカバー32の係止部63と引掛け用突起22との係合構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、サブカバー32をスライド移動させることにより係止される構造であればよい。例えば、係止部材20に代えて、引掛け用突起22の外周に係止部63の上壁部64が挿入可能な溝を設けた構成としてもよい。
【0074】
・サブカバー32は水栓本体11の下方に配置されるサブカバーに限定されない。例えば、サブカバー32は、水栓本体11の上方、側方、又は前方に配置されるサブカバーであってもよい。また、サブカバー32は、メンテナンス以外の用途に用いられるサブカバーであってもよい。
【0075】
・ねじ部材B1のねじ込み方向は、上方に向かう方向に限定されない。例えば、ねじ部材B1のねじ込み方向は、下方に向かう方向であってもよいし、前方又は後方に向かう方向であってもよいし、左方又は右方に向かう方向であってもよい。
【0076】
・カム部71に基づくサブカバー32の移動方向は、前方に向かう方向に限定されるものではなく、ねじ部材B1のねじ込み方向に交差する方向であればよい。例えば、ねじ部材B1のねじ込み方向が上方に向かう方向である場合、上記移動方向は、後方に向かう方向であってもよいし、左方又は右方に向かう方向であってもよい。また、ねじ部材B1のねじ込み方向が上下方向以外の方向である場合、上記移動方向は、上方又は下方に向かう方向であってもよい。
【0077】
・カム部71及び被係合部72の形状は、被係合部72に当接した状態のカム部71がねじ部材B1のねじ込み方向に相対移動した際に、カム部71に対して、上記ねじ込み方向に交差する方向へ向かう力を発生させる形状であればよい。例えば、カム部71の第1カム面71a及び被係合部72の第2カム面72aの形状を、平行な傾斜面に代えて、テーパ面やアール形状の面に変更してもよい。
【0078】
また、カム部71及び被係合部72に関して、面と面との当接に基づいて上記力を発生させる構成に代えて、面と突部との当接に基づいて上記力を発生させる構成としてもよい。例えば、上記実施形態において、カム部71の形状は、傾斜面を有するそのままの形状とし、被係合部72を、下方に突出するとともに先端面が球面状など凸曲面状である突部に変更する。この場合にも、ねじ部材B1のねじ込み時において、サブカバー32が上方に移動しようとすると、突部形状の被係合部72の先端の表面上を、カム部71の第1カム面71aが滑ることにより、サブカバー32が前方へ押し出される。同様に、上記実施形態において、被係合部72の形状は、傾斜面を有するそのままの形状とし、カム部71を、上方に突出する突部に変更してもよい。
【0079】
・メインカバー31の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、カバー本体31bと天板31cとが一の部材により形成されていてもよいし、支持部材31aとカバー本体31bとが一の部材により形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
B1~B3…ねじ部材、L1…中心線、10…水栓、11…水栓本体、30…水栓用カバー、31…メインカバー、31a…支持部材、31b…カバー本体、31c…天板、32…サブカバー、52…開口部、70…カム機構、71…カム部、71a…第1カム面、72…被係合部、72a…第2カム面。