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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172340
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】給電レール構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20231129BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231129BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20231129BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02G11/00
B60N2/06
B60N2/90
B60R16/02 620A
B60R16/02 623T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084051
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000114145
【氏名又は名称】ミック電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 達弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】笠原 燎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】不破 啓文
(72)【発明者】
【氏名】森下 英明
【テーマコード(参考)】
3B087
5G371
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087DE10
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】給電レール構造に於いて、弾性ベルトと給電レールとの衝突を防止し、異音の発生を抑制する。
【解決手段】所定方向に延びる筒形状を有する給電レールと、前記所定方向に沿って、前記給電レールに対してスライド可能に設けられたスライダと、前記給電レールの一端部に結合された基端、前記所定方向に於ける前記給電レールの中間部でU字状に屈曲する屈曲部、及び前記スライダに結合された遊端を有し、かつ上下方向を向く縁部を有する弾性ベルトと、前記給電レールの前記一端部に結合された基端、及び前記スライダに結合された遊端を有し、かつ前記弾性ベルトに沿って延在するフレキシブルフラットケーブルと、前記基端と前記屈曲部との間に於いて、前記弾性ベルトを支持する支持部材とを有する給電レール構造を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる筒形状を有する給電レールと、
前記所定方向に沿って、前記給電レールに対してスライド可能に設けられたスライダと、
前記給電レールの一端部に結合された基端、前記所定方向に於ける前記給電レールの中間部でU字状に屈曲する屈曲部、及び前記スライダに結合された遊端を有し、かつ上下方向を向く縁部を有する弾性ベルトと、
前記給電レールの前記一端部に結合された基端、及び前記スライダに結合された遊端を有し、かつ前記弾性ベルトに沿って延在するフレキシブルフラットケーブルと、
前記基端と前記屈曲部との間に於いて、前記弾性ベルトを支持する支持部材とを有し、
前記支持部材が、前記フレキシブルフラットケーブルと前記弾性ベルトに挟まれた縦壁を有し、
前記縦壁の中央部が前記弾性ベルトと係合している給電レール構造。
【請求項2】
前記支持部材が、前記縦壁の下端から側方に延出する下壁を含む請求項1に記載の給電レール構造。
【請求項3】
前記支持部材の前記縦壁が、側方に向けて突出する係止ピンを含み、
前記弾性ベルトが、前記弾性ベルトの面を貫通する開口を含み、
前記弾性ベルトの前記開口に前記係止ピンが突入することにより、前記弾性ベルトが前記支持部材に固定されている請求項2に記載の給電レール構造。
【請求項4】
前記支持部材が、前記給電レールに対して上下方向から弾発的に当接する弾性脚を有する請求項2又は請求項3に記載の給電レール構造。
【請求項5】
前記支持部材が、前記縦壁の上端から側方に延出する上壁を有し、
前記縦壁、前記下壁、及び前記上壁によって、側方に向けて開口した凹部が形成され、
前記弾性ベルトが、前記支持部材の前記縦壁に向けて凸状をなす横断面形状を有し、
前記弾性ベルトの前記縁部が、前記凹部内に受容されている請求項2又は請求項3に記載の給電レール構造。
【請求項6】
前記給電レールが、前記所定方向に延びる底壁と、前記底壁の左右両端から上方に延びる第1側壁及び第2側壁と、前記第2側壁の上端から前記第1側壁に向けて延びる上壁と、前記上壁の先端から下方に延びて、その先端が前記底壁に達する中央壁とを有し、
前記第1側壁、前記底壁、及び前記中央壁により、中空の第1空間が画定されており、
前記上壁、前記第2側壁、前記底壁、及び前記中央壁により、中空の第2空間が画定されており、
前記スライダの、前記弾性ベルトの前記遊端及び前記フレキシブルフラットケーブルの前記遊端が固定された部分が、前記第2空間内に配置され、
前記スライダが、前記中央壁を左右方向に貫通して前記所定方向に延びるスリットを介して、前記第1空間内及び前記第2空間内を前記所定方向にスライド可能とされている請求項1に記載の給電レール構造。
【請求項7】
前記第1側壁が、前記中央壁に向けて突出する庇部を有する請求項6に記載の給電レール構造。
【請求項8】
前記所定方向に沿って移動可能に設けられ、かつ略前後に延びる基部と、前記基部の前後端から左右一方に延出する前側凸部及び後側凸部とを有する受容部材を更に含み、
前記スライダが、前記前側凸部と前記後側凸部との間に配置され、
前記受容部材の前記所定方向へのスライド移動に追従して、前記スライダが前記所定方向にスライド移動するように構成されている請求項1に記載の給電レール構造。
【請求項9】
前記スライダの下端が、下方に向けて突出するリブを有する請求項1に記載の給電レール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電レール構造に関し、詳細には、自動車等の車両側の電源から乗物用シートに電力を供給するための給電レール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定方向に延びるスリットを含み、かつ略角筒形状を有する給電レールと、給電レール内に配置されて所定方向の中間部に於いてU字状に屈曲する弾性ベルトと、弾性ベルトに沿うように配置されたフレキシブルフラットケーブルとを有する給電レール構造が開示されている。フレキシブルフラットケーブルの基端は、車両の電源回路の配線に接続される固定端子によって給電レールに固定されている。また、フレキシブルフラットケーブルの遊端には、車両のスライドシートの配線に接続され、かつスリットを介して所定方向に往復運動可能なスライダが設けられている。
【0003】
この構成によれば、スライドシート及びスライダの進退に対応して、フレキシブルフラットケーブル及び弾性ベルトが所定方向に往復運動するため、フレキシブルフラットケーブルを介して、車両の電源回路からスライドシートへと電力を供給することができる。このとき、フレキシブルフラットケーブルが、U字状に曲げられた弾性ベルトに沿うように配置されていることにより、スライドシート及びスライダが進退しても、フレキシブルフラットケーブルは、給電レール内で座屈することなく往復運動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-032862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1に開示された構成では、弾性ベルトの中間部、特に弾性ベルトがU字状に屈曲した屈曲部に於いて、弾性ベルトが重力等により変形する。これにより、例えば車両の走行によって車体が振動すると、弾性ベルトが給電レールの底面に衝突し、異音が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を鑑み、給電レール構造に於いて、弾性ベルトと給電レールとの衝突を防止し、異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明の一態様は、所定方向に延びる筒形状を有する給電レール(15)と、前記所定方向に沿って、前記給電レールに対してスライド可能に設けられたスライダ(40)と、前記給電レールの一端部に結合された基端、前記所定方向に於ける前記給電レールの中間部でU字状に屈曲する屈曲部(56)、及び前記スライダに結合された遊端を有し、かつ上下方向を向く縁部を有する弾性ベルト(51)と、前記給電レールの前記一端部に結合された基端、及び前記スライダに結合された遊端を有し、かつ前記弾性ベルトに沿って延在するフレキシブルフラットケーブル(50)と、前記基端と前記屈曲部との間に於いて、前記弾性ベルトを支持する支持部材(52)とを有し、前記支持部材が、前記フレキシブルフラットケーブルと前記弾性ベルトに挟まれた縦壁(63)を有し、前記縦壁の中央部が前記弾性ベルトと係合している給電レール構造(1)を提供する。
【0008】
この態様によれば、基端と屈曲部との間に於いて、弾性ベルトが支持部材によって支持されているため、重力等による弾性ベルトの変形が起こり難くなる。これにより、弾性ベルトの給電レールへの衝突が防止され、異音の発生が抑制できる。また、弾性ベルトを安定的に支持することができる。
【0009】
また、上記の構成に於いて、前記支持部材が、前記縦壁の下端から側方に延びる下壁(65)を含むとよい。
【0010】
この構成によれば、支持部材の姿勢を安定させることができる。
【0011】
また、上記の構成に於いて、前記支持部材の前記縦壁が、側方に向けて突出する係止ピン(69)を含み、前記弾性ベルトが、前記弾性ベルトの面を貫通する開口を含み、前記弾性ベルトの前記開口に前記係止ピンが突入することにより、前記弾性ベルトが前記支持部材に固定されているとよい。
【0012】
この構成によれば、弾性ベルトが支持部材に確実に固定されるため、弾性ベルトが支持部材から脱落することを防止できる。
【0013】
また、上記の構成に於いて、前記給電レールに対して上下方向から弾発的に当接する弾性脚(67)を有するとよい。
【0014】
この構成によれば、支持部材のがたつきが低減されるため、支持部材による異音の発生を抑制することができる。
【0015】
また、上記の構成に於いて、前記支持部材が、前記縦壁の上端から側方に延出する上壁(64)を有し、前記縦壁、前記下壁、及び前記上壁によって、側方に向けて開口した凹部(68)が形成され、前記弾性ベルトが、前記支持部材の前記縦壁に向けて凸状をなす横断面形状を有し、前記弾性ベルトの前記縁部が、前記凹部内に受容されているとよい。
【0016】
この構成によれば、弾性ベルトの上下方向への移動が上壁及び下壁によって規制されているため、弾性ベルトが給電レールに衝突し難くなり、異音の発生を抑制することができる。
【0017】
また、上記の構成に於いて、前記給電レールが、前記所定方向に延びる底壁(16)と、前記底壁の左右両端から上方に延びる第1側壁(18)及び第2側壁(17)と、前記第2側壁の上端から前記第1側壁に向けて延びる上壁(19)と、前記上壁の先端から下方に延びて、その先端が前記底壁に達する中央壁(20)とを有し、前記第1側壁、前記底壁、及び前記中央壁により、中空の第1空間(22)が画定されており、前記上壁、前記第2側壁、前記底壁、及び前記中央壁により、中空の第2空間(23)が画定されており、前記スライダの、前記弾性ベルトの前記遊端及び前記フレキシブルフラットケーブルの前記遊端が固定された部分が、前記第2空間内に配置され、前記スライダが、前記中央壁を左右方向に貫通して前記所定方向に延びるスリット(21)を介して、前記第1空間内及び前記第2空間内を前記所定方向にスライド可能とされているとよい。
【0018】
この構成によれば、第1空間内のスライダが、第1側壁によって左右方向について保護されている。これにより、スライダに予期せぬ押圧力が加えられることを防止できるため、スライダが給電レールに接触し難くなり、異音の発生を抑制することができる。
【0019】
また、上記の構成に於いて、前記第1側壁が、前記中央壁に向けて突出する庇部(30)を有するとよい。
【0020】
この構成によれば、給電レール外から給電レール内に異物が侵入することを防止できるため、フレキシブルフラットケーブルが異物と接触して断線することを防止できる。
【0021】
また、上記の構成に於いて、前記所定方向に沿って移動可能に設けられ、かつ略前後に延びる基部と、前記基部の前後端から左右一方に延出する前側凸部(12)及び後側凸部(13)とを有する受容部材(11)を更に含み、前記スライダが、前記前側凸部と前記後側凸部との間に配置され、前記受容部材の前記所定方向へのスライド移動に追従して、前記スライダが前記所定方向にスライド移動するように構成されているとよい。
【0022】
この構成によれば、簡易な構成で、スライダを受容部材と連動して所定方向にスライド移動させることができる。
【0023】
また、上記の構成に於いて、前記スライダの下端が、下方に向けて突出するリブ(46)を有するとよい。
【0024】
この構成によれば、スライダが上下方向に揺動した際に、リブが給電レールの底面に当接することで、異音を低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、弾性ベルトと給電レールとの衝突が防止され、異音の発生が抑制された給電レール構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る給電レール構造が設けられた乗物用シートを示す斜視図
図2】本発明に係るスライダ及び受容部材を上方から見た断面図
図3】前記給電レールを後方から見た斜視図
図4】前記給電レールを図3のIV―IV線から見た断面図
図5】前記給電レールの後端を後方から見た斜視図
図6】前記給電レールを図3のVI―VI線から見た断面図であり、図6(A)ではスライダが最後部に位置し、図6(B)ではスライダが最前部に位置している
図7】本発明に係る支持部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係る給電レール構造1が、自動車等の車両に設けられた実施形態について説明する。以下の説明では、車両の乗物用シート2に着座した乗員を基準にして左右を定める。
【0028】
図1に示すように、車両のフロア3上には、略前後に延びる左右のスライドレール4、5が設けられている。スライドレール4、5は、それぞれ、車両のフロア3に固定されて主面が上下を向く略薄板形状を有するブラケット7と、ブラケット7の上面に固定されるロアレール8と、ロアレール8に対して前後方向にスライド可能に嵌入され、その上部に於いて乗物用シート2のシートクッションに一体的に固定されるアッパレール9とを含む。これにより、乗物用シート2は、フロア3に対して前後方向にスライド可能とされている。
【0029】
以下、説明の簡略化のために、右側のスライドレール4に設けられる給電レール構造1について説明するが、本発明の給電レール構造1は、構成を左右反転して、左側のスライドレール5に設けられてもよい。
【0030】
図2に示すように、アッパレール9の右側部には、アッパレール9に沿って延びる受容部材11が設けられている。受容部材11の前後端からは、右方に向けて、アッパレール9と略垂直をなす前側凸部12及び後側凸部13が延びている。受容部材11は、ボルト等の締結部材を挿入するための挿入孔を有し、締結部材によってアッパレール9の側面に固定されている。
【0031】
ブラケット7の、ロアレール8及びアッパレール9に対して右方の位置には、略前後に延びる給電レール構造1が設けられている。給電レール構造1は、車両に設けられた電源と乗物用シート2とを電気的に接続し、車両側の電源から乗物用シート2に給電するための構造体である。
【0032】
図3及び図4に示すように、給電レール構造1は、略前後に延びる略角筒形状を有する給電レール15を含む。給電レール15は、ブラケット7に対して上下方向に対向し、かつ略前後に延びる底壁16と、底壁16の左右両端から、上方に向けて底壁16に対して略垂直に延びる左側壁17及び右側壁18と、左側壁17の上端から、底壁16と略平行に延びる上壁19とを有する。上壁19の先端は、右側壁18より左方に位置しており、上壁19の先端からは、上壁19と略垂直をなす中央壁20が下方に延び、その先端が底壁16に達している。中央壁20には、中央壁20を左右方向に貫通して前後方向に延びるスリット21が設けられている。
【0033】
右側壁18、底壁16、及び中央壁20により、中空の第1空間22が画定されており、上壁19、左側壁17、底壁16、及び中央壁20により、中空の第2空間23が画定されている。図3に示すように、給電レール15の第1空間22側の前後端は、前後に開口している。また、給電レール15の第2空間23側の前端は、前側キャップ24によって閉じられており、給電レール15の第2空間23側の後端は、後側キャップ25によって閉じられている。
【0034】
給電レール15の底壁16の右端からは、主面が上下を向く薄板形状を有する複数の締結片27が、前後方向に所定間隔を於いて右方に延びている。締結片27は、ボルト等の締結部材を挿入するための挿入孔を有し、締結部材によってブラケット7に固定されている。給電レール15は、例えばアルミニウム等の金属から形成される。
【0035】
第1空間22側の底壁16には、中央壁20と略平行をなすガイド壁28が、上方に向けて立設されている。ガイド壁28の先端は、中央壁20の開口の下端よりも下方に位置しているとよい。上壁19側の中央壁20の下端には、右方にかけて下方に傾斜する第1庇部29と、左方に向けて中央壁20に対して略垂直に突出する上リブ31とが形成されている。第1庇部29の先端は、ガイド壁28よりも右方に配置されているとよい。また、右側壁18の上端には、左方に向けて中央壁20に対して略垂直に突出する第2庇部30が設けられている。第1庇部29の上端は、右側壁18の上端より下方に配置されているとよい。また、第1庇部29の下端は、第2庇部30の下端より下方に配置されているとよい。また、第1庇部29の左右方向に於ける長さは、第2庇部30の左右方向に於ける長さよりも長いことが好ましい。
【0036】
中央壁20の左側面の、スリット21の下方の部分には、第1下リブ32と、第1下リブ32の下方に位置する第2下リブ33とが、右方に向けて、中央壁20に対して略垂直に突出している。また、中央壁20の右側面の、第2下リブ33の下方に位置する部分には、第3下リブ34が、左方に向けて、中央壁20に対して略垂直に突出している。
【0037】
給電レール15及びスライドレール4の上方にはカバー36が形成され、カバー36は、給電レール15及びスライドレール4の上面を覆って前後方向に延びている。カバー36の、第1空間22の上方に対応する部分には、左右のリップ37が形成されている。左右のリップ37間には、前後方向に延びる開口が形成されている。カバー36は、樹脂等から形成されている。
【0038】
図4に示すように、給電レール15の第1空間22内には、略上下に延びるスライダ40が配置されている。スライダ40は、略上下に延びる胴部41と、胴部41の下部に固定される本体部42とを含む。スライダ40は、ABS樹脂等の絶縁体から形成される。
【0039】
胴部41の先端は、左右のリップ37間の開口を介して、上方に向けて第1空間22外に延出している。また、図2に示すように、胴部41の上部は、受容部材11の前側凸部12と後側凸部13との間に受容されている。
【0040】
本体部42は、胴部41の下端から左方に延びている。本体部42の下端からは、ガイド壁28及び中央壁20と略平行をなすガイド片47が、下方に向けて延出しており、ガイド片47は、ガイド壁28と中央壁20との間に受容されている。また、本体部42の一部は、スリット21を介して第2空間23内に延出し、係着部43を形成している。係着部43の上下端は、左方に向けて突出して上下一対の係着片44を形成している。係着片44の先端には、下方に向けて突出する当接リブ46が設けられている。
【0041】
給電レール15の第2空間23内には、第1空間22側から延出しているスライダ40の係着部43及び係着片44と、主面が左右を向いて略前後に延びる帯状のフレキシブルフラットケーブル50と、フレキシブルフラットケーブル50の内側面に沿って延びる帯状の弾性ベルト51と、弾性ベルト51を支持する支持部材52とが受容されている。
【0042】
フレキシブルフラットケーブル50は、導体からなる複数の金属板(例えば銅板)を幅方向に配列し、それらの外表面を耐熱絶縁テープで被覆した、可撓性を有する伝送線群である。図5及び図6に示すように、フレキシブルフラットケーブル50の基端は、後側キャップ25の内部に固定されており、かつ車体の電源に接続される車体側ハーネス55へと電気的に接続されている。フレキシブルフラットケーブル50は、後側キャップ25から、給電レール15の左側壁17に沿って前方に延び、給電レール15の前後方向の中間部に於いて後方へと屈曲して、U字状の屈曲部56を形成している。フレキシブルフラットケーブル50は、更に、屈曲部56から給電レール15の右側壁18に沿って後方に延び、スライダ40の係着部43に形成された上下一対の係着片44の間に固定されている。フレキシブルフラットケーブル50の遊端は、スライダ40を介して、車両用シート側の配線に接続されるシート側ハーネス58へと電気的に接続されている。これにより、車体側の電源と乗物用シート2とが電気的に接続されている。
【0043】
弾性ベルト51は、第2空間23内に於いて、その幅方向が略上下に対応するように配置されており、かつフレキシブルフラットケーブル50の内面に添って延びている。弾性ベルト51の外面、すなわちフレキシブルフラットケーブル50側の面は、フレキシブルフラットケーブル50に向けて凸となる湾曲形状に形成されている。弾性ベルト51の基端は後側キャップ25の内部に固定されており、弾性ベルト51の遊端はスライダ40の係着部43に固定されている。また、弾性ベルト51は、給電レール15の前後方向の中間部に於いて、フレキシブルフラットケーブル50と共にU字状の屈曲部56を形成している。弾性ベルト51は、ステンレス等の金属材料又は樹脂材料から形成される。
【0044】
給電レール15の、弾性ベルト51の基端と屈曲部56との間の部分には、弾性ベルト51を支持するための支持部材52が設けられている。図6に示すように、本実施形態では、支持部材52は、スライダ40が第1空間22内の最後部までスライド移動した際に、弾性ベルト51及びフレキシブルフラットケーブル50が屈曲部56を形成する位置のやや後方、すなわち図6(A)に於ける屈曲部56のやや後方に設けられている。また、本実施形態の支持部材52は、左側壁17に近接しており、スライダ40が前後方向にスライド移動しても、スライダ40と干渉しないように配置されている。
【0045】
図4及び図7に示すように、支持部材52は、給電レール15の左側壁17と略平行に延びる縦壁63と、縦壁63の上下端から右方に向けて、縦壁63に対して略垂直に延びる上壁64及び下壁65とを有する。下壁65の下面には、給電レール15の底壁16に向けて延びる弾性脚67が形成されている。また、支持部材52の上壁64は給電レール15の上壁19に当接しており、弾性脚67によって支持部材52が上下方向に付勢されている。別の実施形態として、上壁64の上面に、給電レール15の上壁19に向けて延びる弾性部を設けることもできる。
【0046】
弾性ベルト51は、縦壁63、上壁64、及び下壁65によって画定される凹部68内に受容されている。また、弾性ベルト51の上下縁の左右方向に於ける位置は、上壁64及び下壁65の方向に於ける位置と比べ、左方に配置されている。すなわち、弾性ベルト51は、上壁64及び下壁65によって上下方向から覆われている。
【0047】
縦壁63の主面の略中央には、右方に向けて、縦壁63に対して略垂直に延びる係止ピン69が突出しており、弾性ベルト51の、支持部材52の係止ピン69に対応する位置には、弾性ベルト51を左右に貫通する開口が設けられている。支持部材52の係止ピン69は、弾性ベルト51の開口内に突入しており、これにより、弾性ベルト51が支持部材52に固定されている。
【0048】
また、図6に示すように、支持部材52の周囲では、フレキシブルフラットケーブル50が給電レール15の左側壁17に向けて屈曲し、給電レール15の左側壁17と支持部材52の立壁との間に配置されている。すなわち、支持部材52の縦壁63によって、弾性ベルト51及びフレキシブルフラットケーブル50の面同士が、左右方向に離間されている。
【0049】
次に、スライダ40の前後方向への動作原理と、本実施形態の給電レール構造1の作用について説明する。アッパレール9がロアレール8に対して前進すると、アッパレール9に固定された受容部材11も前進を行うため、スライダ40の胴部41の後方側の側面が、受容部材11の後側凸部13から、前方に向けて押圧を受ける。これにより、スライダ40は、アッパレール9の前進に対応して前進移動を行うこととなる。このとき、スライダ40は、ガイド壁28と中央壁20との間に配置されたガイド片47によってガイドされた状態で、給電レール15に対して前方に摺動する。また、胴部41は、カバー36のリップ37を上方に変形させつつ前進移動を行う。更に、スライダ40の前進移動に対応して、スライダ40に固定されているフレキシブルフラットケーブル50及び弾性ベルト51の遊端も前進移動することとなる。
【0050】
同様に、アッパレール9がロアレール8に対して後退すると、アッパレール9に固定された受容部材11も後退し、胴部41の前方側の側面が、受容部材11の前側凸部12から後方に押されることとなる。これにより、スライダ40と、スライダ40に固定されているフレキシブルフラットケーブル50及び弾性ベルト51の遊端とが、受容部材11に対応して後退する。
【0051】
このように、スライドシートが前後に進退したとき、弾性ベルト51及びフレキシブルフラットケーブル50は、一体となって進退するように構成されているため、フレキシブルフラットケーブル50が座屈し難くなっている。また、本実施形態の弾性ベルト51は、フレキシブルフラットケーブル50に向けて凸となる湾曲形状を有するため、弾性ベルト51の強度が向上し、弾性ベルト51が略前後に延びる直線部に於いて、弾性ベルト51が座屈し難くなっている。
【0052】
本実施形態の弾性ベルト51は、屈曲部56と基端との間で、支持部材52の係止ピン69に固定されている。これにより、屈曲部56の前後方向に於ける位置に依らず、屈曲部56に加えられる下方への曲げモーメントが低減され、重力等による弾性ベルト51の変形が抑制されている。したがって、弾性ベルト51の下縁が給電レール15の底壁16に衝突し難くなり、異音の発生が抑制されている。また、本実施形態の支持部材52は、スライダ40が第1空間22内の最後部までスライド移動した際に、弾性ベルト51及びフレキシブルフラットケーブル50が屈曲部56を形成する位置のやや後方、すなわち図6(A)に於ける屈曲部56のやや後方に設けられている。これにより、屈曲部56に加えられる下方への曲げモーメントが良好に低減され、重力等による弾性ベルト51の変形が更に抑制されている。
【0053】
また、支持部材52は、弾性脚67によって上下方向に付勢されている。これにより、例えば車体に振動が発生した際に、支持部材52がガタ付き難くなっているため、異音の発生が抑制されている。更に、支持部材52が所定位置に保持されやすくなるため、弾性ベルト51が支持部材52の係止ピン69から脱落し難くなっている。
【0054】
また、支持部材52が、フレキシブルフラットケーブル50と弾性ベルト51に挟まれた縦壁63を有する。縦壁63は略上下に延びている。また、支持部材52は、縦壁63の上下端から左右一方に延出する上壁64及び下壁65とを含む。これにより、支持部材52のグラ付きが防止され、姿勢が安定する。これにより、弾性ベルト51を安定的に支持することができる。また、弾性ベルト51の上下縁は、縦壁63と、上壁64と、下壁65とによって画定される凹部68内に受容されている。これにより、弾性ベルト51の上下方向への移動が上壁19及び下壁65によって規制されているため、弾性ベルト51が給電レール15に衝突し難くなっている。また、縦壁63の中央部が弾性ベルト51と係合している。弾性ベルト51は、係止ピン69に突入することで固定されている。これにより、弾性ベルト51が支持部材52に確実に固定されるため、弾性ベルト51が支持部材52から脱落することを防止できる。更に、係止ピン69が立壁に対して略垂直な方向に延びているため、簡易な手段で弾性ベルト51を支持部材52に固定できる。
【0055】
また、本実施形態の給電レール15は、第1空間22内のスライダ40を右方から覆う右側壁18を含む。これにより、第1空間22内のスライダ40に予期せぬ押圧力が加えられることを防止できるため、スライダ40が給電レール15に接触し難くなり、異音の発生を抑制することができる。
【0056】
また、給電レール15の上壁19側の中央壁20の下端には、右方にかけて下方に傾斜する第1庇部29が設けられ、かつ第1庇部29の上端は、右側壁18の上端より下方に配置されている。これにより、第1空間22の上方から給電レール15内にネジ等の異物が侵入する際に、第1庇部29上を落下し易く、第2空間23内に異物が侵入し難くなるため、フレキシブルフラットケーブル50の断線が抑制される。更に、第1庇部29の先端は、ガイド壁28よりも右方に配置されているため、異物が第1庇部29上を落下した際に、ガイド壁28と右側壁18との間に着地し易くなる。更に、ガイド壁28と右側壁18との間に着地した異物が比較的大きい場合には、スライダ40の前後方向へのスライド移動によって、第1空間側の前後端から異物が給電レール15外に押し出されることとなる。これにより、第1空間22内の異物を容易に除去することができる。
【0057】
また、右側壁18の上端には、左方に向けて延びる第2庇部30が設けられているため、第2空間23内へのネジ等の異物の侵入が一層抑制されている。更に、第2庇部30の下端は、第1庇部29の下端よりも上方に配置されているため、異物が第1庇部29上を落下し易く、第2空間23内に異物が侵入し難くなる。また、第1庇部29の左右方向に於ける長さは、第2庇部30の左右方向に於ける長さよりも長い。これにより、所定長さを有する第1空間22をもって、第1庇部29及び第2庇部30を効果的に配置することができる。
【0058】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記の実施形態では、弾性ベルト51が、フレキシブルフラットケーブル50をばね力で押さえ付けることができれば、弾性ベルト51の断面形状は湾曲状に限られない。また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。一方、上記の実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :給電レール構造
2 :乗物用シート
4 :スライドレール
5 :スライドレール
11 :受容部材
12 :前側凸部
13 :後側凸部
15 :給電レール
16 :底壁
17 :右側壁
19 :上壁
20 :中央壁
22 :第1空間
23 :第2空間
24 :前側キャップ
25 :後側キャップ
29 :第1庇部
37 :リップ
40 :スライダ
50 :フレキシブルフラットケーブル
51 :弾性ベルト
52 :支持部材
63 :縦壁
64 :上壁
67 :弾性脚
68 :凹部
69 :係止ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7