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特開2023-172344車輪製造装置、及び、車輪の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172344
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車輪製造装置、及び、車輪の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20231129BHJP
   B23K 26/282 20140101ALI20231129BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231129BHJP
【FI】
B60B19/00 H
B23K26/282
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084056
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時安 優和
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA07
4E168BA14
4E168BA23
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4E168DA29
(57)【要約】
【課題】 環状の芯材と芯材に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する車輪を容易に製造できる車輪製造装置、及び、車輪の製造方法を提供する。
【解決手段】 複数のセグメント7によって構成される芯体2と、芯体の環状軸線の周りに回転自在に設けられた複数のフリーローラ3とを有する車輪を製造するための車輪製造装置1であって、円形な外輪郭を有する中心治具29を備え、保持具21と、セグメントの隣り合うもの同士を溶接するレーザ溶接機23と、を有し、レーザ溶接機は、セグメントの外周面のうち環状軸線の中心軸から離れた部分を溶接するときには、レーザの光軸Eをセグメントの外周面7Aに直交する方向に設定し、セグメントの外周面のうち中心軸に近接する部分を溶接するときには、光軸をセグメントの外周面に対して直交する方向に対して、中心軸から離れる側に傾斜した方向に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに結合された円弧状の複数のセグメントによって構成される円環状の芯体と、前記芯体の環状軸線の周りに回転自在に設けられた複数のフリーローラとを有する車輪を製造するための車輪製造装置であって、
円形な外輪郭を有する中心治具を備え、前記中心治具の外周に前記セグメントを互いに突き合せた状態で保持する保持具と、
前記セグメントの隣り合うもの同士を、レーザを照射することにより溶接するレーザ溶接機と、を有し、
前記レーザ溶接機は、前記セグメントの外周面のうち前記環状軸線の中心軸から離れた部分を溶接するときには、前記レーザの光軸を前記セグメントの外周面に直交する方向に設定し、前記セグメントの外周面のうち前記中心軸に近接する部分を溶接するときには、前記光軸を前記セグメントの外周面に対して直交する方向に対して、前記中心軸から離れる側に傾斜した方向に設定する車輪製造装置。
【請求項2】
前記レーザ溶接機は、前記レーザを照射するヘッドと、前記ヘッドを移動させるマニピュレータとを備え、
前記マニピュレータは、前記セグメントを溶接するときに、前記ヘッドの少なくとも一部を前記セグメントの軸線方向視で前記フリーローラと重なる位置に配置する請求項1に記載の車輪製造装置。
【請求項3】
前記保持具は、前記中心軸の両側から前記セグメントを保持する請求項1に記載の車輪製造装置。
【請求項4】
前記保持具は、前記中心治具を支持する支持部材を更に備え、
前記中心治具は、チャックと、前記チャックに径方向に移動可能に支持され、径方向外側に移動することにより、前記フリーローラに当接可能な複数のベースと、前記チャックの中心に設けられたシャフトと、を有し、
前記支持部材は前記シャフトの両端部を支持する請求項1に記載の車輪製造装置。
【請求項5】
前記シャフトは、前記ベースの径方向内側に位置している請求項4に記載の車輪製造装置。
【請求項6】
前記シャフトは、前記ベースの径方向内側に当接することによって、前記ベースの径方向内側への移動を規制する請求項5に記載の車輪製造装置。
【請求項7】
前記チャックは前記シャフトを貫通させる貫通孔を備え、
前記シャフトは、前記貫通孔に一方側から挿入される第1部材と、前記貫通孔の他方側において前記第1部材に結合する第2部材とを備える請求項4~請求項6のいずれか1つの項に記載の車輪製造装置。
【請求項8】
前記第1部材と前記第2部材とには軸線方向に連通する螺子孔が設けられている請求項7に記載の車輪製造装置。
【請求項9】
前記支持部材は、下方に凹み、前記シャフトの前記両端部をそれぞれ受容するV字状の溝を有する請求項4に記載の車輪製造装置。
【請求項10】
前記ベースの前記中心軸に平行な方向の幅は、前記フリーローラの前記中心軸に平行な方向の幅よりも小さい請求項4に記載の車輪製造装置。
【請求項11】
互いに結合された円弧状の複数のセグメントによって構成される円環状の芯体と、前記芯体の環状軸線の周りに回転自在に設けられた複数のフリーローラとを有する車輪を製造するための車輪の製造方法であって、
円形な外輪郭を有する中心治具の外周に前記セグメントを互いに突き合せた状態で保持する保持工程と、
前記セグメントの隣り合うもの同士を、レーザを照射することにより溶接する溶接工程と、を有し、
前記セグメントの外周面のうち前記環状軸線の中心軸から離れた部分を溶接するときには、前記レーザの光軸を前記セグメントの外周面に直交する方向に設定し、前記セグメントの外周面のうち前記中心軸に近接する部分を溶接するときには、前記光軸を前記セグメントの外周面に対して直交する方向に対して、前記中心軸から離れる側に傾斜した方向に設定する車輪の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動装置に使用される車輪を製造するための車輪製造装置、車輪の製造方法、及び、溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、全方向移動装置に使用される車輪の製造方法について開示している。車輪は、環状の芯体と、芯体に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する。車輪の製造方法は、直線状のパイプ材に複数の切欠部を形成する第1工程と、直線状のパイプ材に複数のフリーローラを装着する第2工程と、複数の切欠部を埋めるようにパイプ材を複数個所で屈曲させ、パイプ材を環状にする第3工程と、パイプ材の端部同士を溶接すると共に、各切欠部の縁部同士を溶接する第4工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6746655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第4工程では、フリーローラが装着されたパイプ材(セグメントともいう)の端部同士が溶接される。しかし、フリーローラがパイプ材に設けられているため、パイプ材へのアクセスが難しく、TIG溶接を行うことが容易ではない。そのため、パイプ材の溶接が容易であり、芯体を容易に構成することのできる車輪の製造装置の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、環状の芯材と芯材に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する車輪を容易に製造することのできる車輪製造装置、及び、車輪の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、互いに結合された円弧状の複数のセグメント(7)によって構成される円環状の芯体(2)と、前記芯体の環状軸線の周りに回転自在に設けられた複数のフリーローラ(3)とを有する車輪を製造するための車輪製造装置(1)であって、円形な外輪郭を有する中心治具(29)を備え、前記中心治具の外周に前記セグメントを互いに突き合せた状態で保持する保持具(21)と、前記セグメントの隣り合うもの同士を、レーザを照射することにより溶接するレーザ溶接機(23)と、を有し、前記レーザ溶接機は、前記セグメントの外周面のうち前記環状軸線の中心軸から離れた部分を溶接するときには、前記レーザの光軸(E)を前記セグメントの外周面(7A)に直交する方向に設定し、前記セグメントの外周面のうち前記中心軸に近接する部分を溶接するときには、前記光軸を前記セグメントの外周面に対して直交する方向に対して、前記中心軸から離れる側に傾斜した方向に設定する。
【0007】
この態様によれば、フリーローラがセグメントに設けられていても、フリーローラとレーザ溶接機との干渉を回避しつつ、セグメントをその周方向全周に渡って溶接し、芯材を構成することができる。よって、環状の芯材と芯材に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する車輪を容易に製造することのできる車輪製造装置を提供することができる。
【0008】
上記の態様において、好ましくは、前記レーザ溶接機は、前記レーザを照射するヘッド(71)と、前記ヘッドを移動させるマニピュレータ(73)とを備え、前記マニピュレータは、前記セグメントを溶接するときに、前記ヘッドの少なくとも一部を前記セグメントの軸線方向視で前記フリーローラと重なる位置に配置する。
【0009】
この態様によれば、ヘッドをセグメントに接近させることができる。これにより、隣接するセグメントをより確実に溶接することができる。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記保持具は、前記中心軸の両側から前記セグメントを保持する。
【0011】
この態様によれば、保持具によってセグメントを良好に保持できる。
【0012】
上記の態様において、好ましくは、前記保持具は、前記中心治具を支持する支持部材(27)を更に備え、前記中心治具は、チャック(41)と、前記チャックに径方向に移動可能に支持され、径方向外側に移動することにより、前記フリーローラに当接可能な複数のベース(43)と、前記チャックの中心に設けられたシャフト(45)と、を有し、前記支持部材は前記シャフトの両端部を支持する。
【0013】
この態様によれば、保持具を簡素な構成にすることができ、また、保持具によってセグメントを良好に支持できる。
【0014】
上記の態様において、好ましくは、前記シャフトは、前記ベースの径方向内側に位置している。
【0015】
この態様によれば、保持具をコンパクトに構成することができる。また、溶接時に、シャフトとレーザ溶接機とが干渉し難くなる。
【0016】
上記の態様において、好ましくは、前記シャフトは、前記ベースの径方向内側に当接することによって、前記ベースの径方向内側への移動を規制する。
【0017】
この態様によれば、簡素な構成によって、ベースをチャックに対して適正な位置に保持することができる。
【0018】
上記の態様において、好ましくは、前記チャックは前記シャフトを貫通させる貫通孔(42)を備え、前記シャフトは、前記貫通孔に一方側から挿入される第1部材(65)と、前記貫通孔の他方側において前記第1部材に結合する第2部材(67)とを備える。
【0019】
この態様によれば、シャフトを簡素に構成することができ、また、シャフトの組み立てが容易になる。
【0020】
上記の態様において、好ましくは、前記第1部材と前記第2部材とには軸線方向に連通する螺子孔(69)が設けられている。
【0021】
この態様によれば、第1部材と第2部材とを強固に結合させることができる。
【0022】
上記の態様において、好ましくは、前記支持部材は、下方に凹み、前記シャフトの前記両端部をそれぞれ受容するV字状の溝(39)を有する。
【0023】
この態様によれば、セグメントをシャフトの軸線を中心とする回転可能に保持部材に保持させることができる。そのため、製造を行う作業者がセグメントの溶接すべき箇所が適正な位置となるように、セグメントの位置を調節することができる。
【0024】
上記の態様において、好ましくは、前記ベースの前記中心軸に平行な方向の幅は、前記フリーローラの前記中心軸に平行な方向の幅よりも小さい。
【0025】
この態様によれば、ベースの軸線方向の幅がフリーローラの軸線方向の幅よりも小さくなるため、溶接時にベースによってレーザ溶接機の駆動が妨げられ難くなる。
【0026】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、互いに結合された円弧状の複数のセグメント(7)によって構成される円環状の芯体(2)と、前記芯体の環状軸線の周りに回転自在に設けられた複数のフリーローラ(3)とを有する車輪を製造するための車輪の製造方法であって、円形な外輪郭を有する中心治具(29)の外周に前記セグメントを互いに突き合せた状態で保持する保持工程と、前記セグメントの隣り合うもの同士を、レーザを照射することにより溶接する溶接工程と、を有し、前記セグメントの外周面のうち前記環状軸線の中心軸から離れた部分を溶接するときには、前記レーザの光軸(E)を前記セグメントの外周面(7A)に直交する方向に設定し、前記セグメントの外周面のうち前記中心軸に近接する部分を溶接するときには、前記光軸を前記セグメントの外周面に対して直交する方向に対して、前記中心軸から離れる側に傾斜した方向に設定する。
【0027】
この態様によれば、セグメントがレーザ溶接されて、芯材が構成される。そのため、フリーローラがセグメントに設けられていても、フリーローラとレーザ溶接機との干渉を回避しつつ、セグメントをその周方向全周に渡って溶接することができる。よって、環状の芯材と芯材に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する車輪を容易に製造することのできる車輪の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の構成によれば、環状の芯材と芯材に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する車輪を容易に製造することのできる車輪製造装置、及び、車輪の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る車輪製造装置の斜視図、及び、破線によって囲まれた部分の拡大図
図2】車輪を備えた全方向移動装置の断面図
図3】車輪の側面図
図4】フリーローラが設けられたパイプ材を示す斜視図
図5】車輪の断面図、及び、その拡大図
図6】車輪が保持具に固定され、溶接時が行われているときの様子を示す斜視図
図7】実施形態に係る保持具の分解斜視図
図8】(A)ロック部材がロック孔に挿入されているとき、及び、(B)ロック部材がロック孔から抜き取られたときをそれぞれ示す中心治具の断面図
図9】(A)実施形態に係るシャフトの断面図、及び(B)その変形例
図10】レーザ溶接機のブロック図
図11】レーザの照射方向に係る設定入力を示す模式図
図12】レーザの照射時のヘッドの動きを説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明に係る車輪製造装置1について説明する。図1に示すように、車輪製造装置1は、環状の芯体2、及び芯体2に回転自在に設けられた複数のフリーローラ3を有する車輪4を製造するために使用される。図2に示すように、車輪製造装置1によって製造される車輪4は、全方向移動装置5に設けられる。全方向移動装置5は、電動車椅子や、台車、パーソナルモビリティに使用される。
【0031】
(車輪4の構造)
図3に示すように、芯体2は軸線Aを中心とした環状をなしている。芯体2は、図4に示すように、端部において互いに突き合わせ溶接された円弧状をなす複数のパイプ材7によって構成されている。パイプ材7は芯体2を構成するセグメントに相当している。すなわち、芯体2は、それぞれが円弧状をなし、互いに結合された複数のセグメント(パイプ材7)によって構成されている。本実施形態では、芯体2は、半円状をなし、互いに結合された半円状の2つのパイプ材7(セグメント)によって構成されている。
【0032】
図4に示すように、パイプ材7は断面円形の円筒状をなす、いわゆる丸パイプ材であって、例えばステンレス等の金属によって形成されている。図3に示すように、芯体2の断面中心を通過する線(以下、環状軸線B)は、軸線Aを中心とした周方向に延び、軸線Aを中心とする円環状をなしている。
【0033】
図5に示すように、各フリーローラ3は、ラジアルベアリングであるベアリング8を介して芯体2に支持されている。ベアリング8は、インナレース11と、アウタレース12と、インナレース11及びアウタレース12の間に介装された複数のボール13と、複数のボール13を保持するリテーナ(不図示)とを有する玉軸受であるとよい。
【0034】
各フリーローラ3は、スリーブ15と、スリーブ15の外周面に設けられたゴムリング16とを有する。スリーブ15は金属によって形成されているとよい。ゴムリング16は、スリーブ15の外周面に加硫接着等によって接着されているとよい。スリーブ15の内側には、ベアリング8が配置される。本実施形態では、各スリーブ15の内側に2つのベアリング8が互いに間隔をおいて配置され、2つのベアリング8はそれぞれ各スリーブ15の内側に圧入されている。
【0035】
芯体2の外周面は各ベアリング8のインナレース11の内周面に圧接している。これにより、各ベアリング8のインナレース11は、芯体2の外周面に固定されている。本実施形態では、芯体2の外周面には、円環状のカラー19が設けられている。芯体2の外周面がカラー19の内周面に圧接ことによって、カラー19は芯体2に固定されている。カラー19はインナレース11の縁部を係止し、芯体2に対する各インナレース11の軸線Aを中心とした周方向への移動を規制する。
【0036】
複数のフリーローラ3のそれぞれは、環状軸線Bを中心として芯体2に対して回転する。また、複数のフリーローラ3のそれぞれは、軸線Aを中心とした接線と平行な軸線を中心として、芯体2に対して回転する。
【0037】
(車輪の製造方法)
次に、車輪4の製造方法の概略について説明する。
【0038】
車輪4の製造を行う作業者は、車輪4の製造工程の最初の工程(第1工程)において、予め半円状に屈曲されたパイプ材7を用意する。次に、作業者は、パイプ材7の適所に一対のベアリング8及びカラー19が装着された複数のフリーローラ3を配置する。その後、作業者はパイプ材7の内部に液体や気体等を導入して加圧することによって、パイプ材7を拡径し、ベアリング8のインナレース11をパイプ材7に固定する。これにより、フリーローラ3は、それぞれパイプ材7に回転可能に結合される。
【0039】
作業者は、第1工程を少なくとも2回行うことによって、フリーローラ3が結合されたパイプ材7(図4参照)を少なくとも2つ用意する。その後、作業者は、パイプ材7の端部を突き合わせて、円環状をなすように配置した後、車輪製造装置1(図1参照)に組付けて、隣り合う2つのパイプ材7の端部を溶接する第2工程を行う。これにより、隣り合う2つのパイプ材7が結合されて環状の芯体2が形成され、主輪が完成する。本実施形態に係る車輪製造装置1は、特に、第2工程において、パイプ材7を保持して溶接するのに好適である。
【0040】
(車輪製造装置)
次に、車輪製造装置1の構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、車輪製造装置1は、保持具21と、レーザ溶接機23とを備える。本実施形態では、車輪製造装置1は車輪4の製造を行うための作業台25上に載置されている。
【0042】
保持具21(車輪保持装置ともいう)は、溶接時に、フリーローラ3が設けられた円弧状のパイプ材7を互いにつき合わせた状態で保持する。図6に示すように、保持具21は、支持部材27(台座ともいう)と、円形な外輪郭を有する中心治具29(中心部材ともいう)とを備えている。
【0043】
支持部材27は、一対の脚部31と、一対の脚部31に支持された基部33とを備えている。脚部31はそれぞれL字金具によって構成されている。車輪製造装置1が載置される作業台25の上面に固定されている。
【0044】
基部33は略コの字状をなす金属板材によって構成されている。基部33は上方に向けて開口するように配置され、脚部31を介して支持されている。
【0045】
詳細には、基部33は、上下方向に延び、互いに平行をなすように配置された一対の平板部35と、平板部35の下端部を接続する水平部37とを備えている。脚部31の上端それぞれ対応する平板部35に固定されている。平板部35の上端にはそれぞれ、下方に凹むV字状の溝部39が設けられている。
【0046】
中心治具29は、チャック41と、チャック41に径方向に移動可能に支持され、中心治具29の外周部を構成する複数のベース43と、チャック41の中心に設けられたシャフト45と、を有している。
【0047】
図7に示すように、チャック41は、中心軸線Cを中心とした円盤状に形成されている。チャック41はステンレス等の金属によって構成されているとよい。チャック41の中心には、中心軸線Cに沿って貫通するチャック貫通孔42が設けられている。
【0048】
ベース43のそれぞれは、チャック41の外周面に対向し、周方向に円弧状に延びた周壁部46と、周壁部46からチャック41の側面に沿って中心軸線C側に延びる一対の側壁47を有する。一対の側壁47はそれぞれ、扇形に形成されているとよい。ベース43は樹脂等によって構成されていてもよく、ステンレス等の金属によって構成されていてもよい。
【0049】
周壁部46の外周部は中心治具29の外周面を構成する。パイプ材7が保持具21に取り付けられるときには、周壁部46の外周部はフリーローラ3が周壁部46の外周部に当接し、パイプ材7を互いに付き合わされた状態で保持しつつ、パイプ材7が適正な円環状をなすように維持する。フリーローラ3が適正な位置に維持され易いように、周壁部46の外周部にはフリーローラ3の少なくとも一部を受容する係合溝49(図12も参照)が設けられているとよい。ベース43のそれぞれは、互いに同一形状に形成されているとよい。
【0050】
ベース43の中心軸線Cに平行な方向の幅は、フリーローラ3の軸線Aに平行な方向の幅よりも小さい。
【0051】
図6及び図7に示すように、各ベース43の側壁47には、厚み方向に貫通するガイド溝51が形成されている。ガイド溝51は径方向外側に延びる長孔状をなしている。チャック41には、ガイド溝51を通過する少なくとも1つのガイドピン52が結合されている。ガイドピン52がガイド溝51に当接することによって、チャック41に対するベース43の移動方向が径方向内外方向となるように規制されている。本実施形態では、1つのガイド溝51に対して2つのガイドピン52が設けられている。このように、ガイド溝51に2以上のガイドピン52が設けられることによって、ガイドピン52がガイド溝51に当接し、チャック41に対するベース43の傾斜角度が一定に維持される。
【0052】
このように、各ベース43のチャック41に対する移動は、ガイド溝51とガイドピン52との当接によって、径方向内外方向に規制される。以下、ベース43と中心軸線Cとの距離が最小になるときのベース43の位置を収縮位置と記載し、ベース43と中心軸線Cとの距離が最大になるときのベース43の位置を拡張位置と記載する。
【0053】
図7に示すように、各ベース43と、チャック41とはそれぞれ、1以上のスプリング突き出しピン55によって接続されている。図8に示すように、スプリング突き出しピン55は、筒状の筒部本体55Aと、筒部本体55Aにその軸線に沿って所定範囲内でスライド移動可能に受容されたピン55Bと、ピン55Bの外周に設けられたスプリング55Cとを備えている。
【0054】
筒部本体55Aの外周面には雄ねじが設けられている。チャック41の外周面には径方向内側に延びる螺子孔57が設けられている。螺子孔57はチャック貫通孔42に達しているとよい。筒部本体55Aは螺子孔57に挿入されて、筒部本体55Aはチャック41に螺子止めされている。
【0055】
ピン55Bは筒部本体55Aに受容された軸部58と、軸部58の両端に設けられた2つの頭部59とを有している。2つの頭部59はいずれも筒部本体55Aの内径よりも幅広の外径を有しているが、他方側は一方側に比べて幅広の外径を有するように構成されている。一方側の頭部59は、チャック貫通孔42に収容されている。一方側の頭部59は、筒部本体55Aの外径よりも小さく、且つ、筒部本体55Aの内径よりも大きな外径を有している。これにより、一方側の頭部59の径方向外側への移動が規制されている。
【0056】
ベース43の外側壁には他方側の頭部59よりも径の小さなベース貫通孔60が設けられている。軸部58は貫通孔を通過し、他方側の頭部59がベース43の外側壁の径外側に位置している。他方側の頭部59はベース貫通孔60よりも幅広に形成されている。これにより、ベース43のチャック41に対する径方向外側への移動が制限されている。
【0057】
スプリング55Cはピン55Bの外周において、筒部本体55Aとベース43との間に設けられ、筒部本体55Aをベース43に対して径方向外側に付勢する。これにより、スプリング55Cは、対応するベース43を拡張位置に向けて付勢する。
【0058】
図6及び図7に示すように、中心治具29は、チャック41に着脱可能に取り付けられ、ベース43のそれぞれに当接することによってベース43のチャック41に対する移動を規制する複数のロック部材61を有する。図7図8(A)及び(B)に示すように、各ベース43の側壁と、チャック41とにはそれぞれ、貫通孔であるロック孔62が形成されている。ベース43をチャック41に対して径方向内側に押圧すると、ベース43の側壁に設けられたロック孔62と、チャック41に設けられたロック孔62とが互いに重なり合う位置になる(図8(A)参照)。一方、ロック部材61をロック孔62から抜くと、スプリング55Cの付勢力によって、ベース43が径方向外側に移動する(図8(B)参照)。各ロック孔62にロック部材61が挿入されることによって、チャック41に対するベース43の移動が禁止されて、適正な位置となる。ロック部材61は、例えばピンであってもよい。
【0059】
図6に示すように、シャフト45はチャック41の中心に設けられ、中心軸線Cを軸線とした円柱形をなす金属部材によって構成されている。本実施形態では、シャフト45はチャック貫通孔42(図7参照)に嵌め込まれて、チャック41に固定されている。シャフト45は両端部において、溝部39に上側から挿入されて、溝部39に受容されている。
【0060】
シャフト45の両端がそれぞれ溝に受容されることによって、中心軸線Cの両側(ベース43の側壁47の両外側)からパイプ材7が保持される。これにより、簡素な構成によって、パイプ材7を良好に、且つ、安定して保持することができる。
【0061】
また、シャフト45が溝部39に受容されることによって、中心治具29が支持される。そのため、パイプ材7を、中心軸線Cを中心に回転可能に支持部材27に保持させることができる。これにより、製造を行う作業者がパイプ材7の溶接すべき箇所がレーザ溶接機23によって溶接することのできる適正な位置となるように、パイプ材7の位置を容易に調節することができる。
【0062】
本実施形態では、図7に示すように、シャフト45は、チャック貫通孔42に一方側から挿入される第1部材65と、チャック貫通孔42の他方側において第1部材65に結合する第2部材67とを備えている。
【0063】
図9(A)及び(B)に示すように、第1部材65は円柱状の第1部材頭部65Aと、第1部材頭部65Aよりも径方向に幅が狭く、第1部材頭部65Aの中心軸線に沿って第1部材頭部65Aから突出する第1部材軸部65Bとを備えている。第1部材頭部65Aはチャック貫通孔42の内径よりも径方向に幅が広い。
【0064】
第2部材67は円柱状の第2部材頭部67Aと、第2部材頭部67Aよりも径方向に幅が狭く、第2部材頭部67Aの中心軸線に沿って第2部材頭部67Aから突出する第2部材軸部67Bとを備えている。第2部材軸部67Bには突端に突出方向逆向きに凹み、第1部材軸部65Bの突端を受容可能な第2部材凹部67Cが設けられている。第2部材頭部67Aはチャック貫通孔42の内径よりも径方向に幅が広い。
【0065】
第1部材65をチャック貫通孔42に一方側から挿入し、チャック貫通孔42の他方側に第2部材67を配置して、第1部材軸部65Bの突端を第2部材凹部67Cに挿入することによって、第2部材67を第1部材65に結合させることができる。これにより、作業者はシャフト45を容易に組み立てることができる。また、シャフト45を2つの部材によって構成されるため、その構成が簡素である。
【0066】
本実施形態では、図9(A)に示すように、第1部材65と第2部材67とにはそれぞれ、中心軸線方向に連通する螺子孔69が設けられている。螺子孔69に螺子70を挿入することによって、第1部材65と第2部材67とを強固に結合させることができる。
【0067】
但し、第1部材65と第2部材67とを結合させる態様はこの態様には限定されない。例えば、図9(B)に示すように、第1部材軸部65Bの外周面に雄ねじが設けられ、第2部材凹部67Cに雄ねじに螺合する雌ねじが設けられ、第1部材軸部65Bが第2部材凹部67Cにねじ込まれることによって、第1部材65と第2部材67とが結合されてもよい。
【0068】
ベース43がチャック41に対して適正な位置にあるときに、シャフト45の第1部材頭部65A及び/又は第2部材頭部67Aが、ベース43の径方向内側に当接することによって、ベース43の径方向内側への移動を規制するように構成されていてもよい。これにより、簡素な構成によって、ベース43をチャック41に対して適正な位置に保持することができる。
【0069】
保持具21は、その他、車輪4の周方向において複数のフリーローラ3を挟持するクランプ装置や、バンド部材等を備えていてもよい。但し、クランプ装置やバンド部材は必須ではなく、必要に応じて、適宜、保持具21に設けられる。
【0070】
レーザ溶接機23は、レーザを照射することにより、保持具21に保持されたパイプ材7の隣り合うもの同士を溶接する。パイプ材7の隣り合うもの同士が溶接(突き合わせ溶接)されることによって、芯体2が構成される。レーザ溶接機23は、YAGレーザ、CO2レーザ、ファイバーレーザ、ディスクレーザ等のいずれのレーザを用いて溶接を行う装置であってもよい。
【0071】
レーザ溶接機23は、図1に示すように、パイプ材7にレーザを照射するヘッド71と、ヘッド71を移動させるマニピュレータ73と、マニピュレータ73を駆動制御するコントローラ75とを備えている。
【0072】
ヘッド71は軸線を中心として所定方向に延びる略柱状をなしている。ヘッド71はその延在方向一端側(以下、照射端71A)の端面からその延在方向に延びる光軸Eに沿ってレーザを照射する。ヘッド71の照射端71A側の端部は隣接するフリーローラ3の間に挿入可能な大きさに構成されていてもよい。
【0073】
マニピュレータ73は基端において作業台25に固定され、先端にヘッド71を備えた多関節のロボットアームによって構成されている。マニピュレータ73は関節を駆動させることによって、コントローラ75から指示された軌跡に沿って、コントローラ75から指示された姿勢でヘッド71を移動させることができる。図1及び図6には、一点鎖線及び二点鎖線によって、ヘッド71の位置の例が併せて示されている。
【0074】
図10に示すように、コントローラ75は、CPU(中央演算処理装置)等によって構成されたプロセッサ77、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等によって構成されたメモリ78、及び、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等によって構成された記憶装置79を備えたコンピュータによって構成されている。コントローラ75はその他、タッチパネル81を備えている。タッチパネル81は、作業者からの入力を受け付け、作業者に情報を表示する入出力装置として機能する。
【0075】
コントローラ75はタッチパネル81において作業者からヘッド71の移動軌跡Dと、その軌跡上の各位置における光軸Eの向きとに係る情報を受け付ける(例えば、図11参照)。コントローラ75はタッチパネル81に作業開始に係る入力を受け付けると、ヘッド71が移動軌跡Dに沿って移動し、且つ、その光軸Eが入力された向きとなるようにマニピュレータ73を駆動させ、ヘッド71からレーザを照射させる溶接処理を行う。
【0076】
次に、パイプ材7を保持して溶接する第2工程の詳細について説明する。
【0077】
作業者は、フリーローラ3の取り付けが完了(すなわち、第1工程が完了)した2つのパイプ材7の両端を突き合わせて仮止めし、本溶接前の車輪4を形成する。その後、作業者は、保持具21にセットすることによって、円形な外輪郭を有する中心治具29の外周にパイプ材7が互いに突き合された(すなわち、仮止めされた)状態で保持する保持工程を行う。
【0078】
保持工程において、作業者はまず、中心治具29のロック孔62に挿入されたロック部材61を抜き、ベース43をチャック41に対して拡径させる。その後、ベース43を縮径させながら、本溶接前の車輪4の内側に挿入し、ロック部材61をロック孔62に挿入する。これにより、チャック41に対して各ベース43が適正な位置に維持される。
【0079】
その後、作業者はシャフト45を構成する第1部材65及び第2部材67を取り付ける。これにより、ベース43の径方向内端がシャフト45を構成する第1部材65又は第2部材67に当接し、ベース43の径方向内側への移動が規制される。
【0080】
作業者はシャフト45の両端をそれぞれ、基部33の上端に設けられた溝部39に受容させる。これにより、本溶接前の車輪4は保持具21に水平方向に延びる軸線を中心とする回転可能に支持されて、保持工程が完了する。このとき、フリーローラ3は係合溝49に受容されている。
【0081】
次に、作業者は、パイプ材7の隣り合うもの同士を、レーザを照射することにより溶接する溶接工程を行う。溶接工程において、作業者は、まず、コントローラ75のタッチパネル81において、図11に模式的に示すヘッド71の移動軌跡D及びそれぞれの位置における光軸Eの向きに係る設定入力を行う。図11において、ヘッド71の移動軌跡Dは太線の矢印によって、各位置でのヘッド71の姿勢は三角形によって、それぞれの地点における光軸Eは一点鎖線によって、模式的に示されている。
【0082】
図11に示すように、ヘッド71の移動軌跡Dは、第1の領域X、第2の領域Y、及び、第3の領域Zを含む。第1の領域Xでは、照射端71Aから延びる光軸Eがパイプ材7の下端(中心軸線C側に近接する側の端部)にある位置からヘッド71が上方(中心軸線Cから離反する側)にスライド移動する。第2の領域Yでは、ヘッド71がパイプ材7の環状軸線Bを中心として回転移動する。第3の領域Zでは、照射端71Aから延びる光軸Eがパイプ材7の下端に達するまで、ヘッド71が下方にスライド移動する。
【0083】
図12に示すように、第1の領域X及び第2の領域Yにおいて、ヘッド71の少なくとも一部がパイプ材7の軸線方向視でフリーローラ3と重なる位置に配置されてもよい。これにより、ヘッド71とパイプ材7とを接近させることができる。これにより、パイプ材7をより確実に溶接することができる。また、車輪製造装置1をコンパクトに構成することができる。
【0084】
図11に示すように、第1の領域X及び第3の領域Zにおいて、作業者は、光軸Eがパイプ材7の下半部よりも下部分、すなわち、パイプ材7の中心軸線Cに近接する部分を向くように設定する。また、第1の領域X及び第3の領域Zにおいて、作業者は、光軸Eをパイプ材7(セグメント)の外周面7Aに対して直交する方向から中心軸線Cから離れる側、すなわち、より水平をなすように傾斜させた方向に設定する。
【0085】
一方、作業者は、第2の領域Yにおいては、光軸Eが第1の領域X及び第3の領域Zのときよりも、パイプ材7の上側の部分、すなわち、パイプ材7の中心軸線Cからより離れた部分を向くように設定する。また、第2の領域Yにおいては、作業者は、光軸Eをパイプ材7(セグメント)の外周面7Aに直交する方向に設定する。
【0086】
設定入力が完了すると、作業者は2つのパイプ材7の仮溶接部分の一方が上端となるように本溶接前の車輪4の姿勢を調節した後、タッチパネル81に作業開始に係る入力を行う。タッチパネル81に作業開始に係る入力が行われると、コントローラ75(詳細には、プロセッサ77)が溶接処理を実行する。溶接処理において、プロセッサ77は、ヘッド71が設定入力に沿って移動し、仮溶接部分の一方にレーザが照射されるように、マニピュレータ73及びヘッド71の駆動制御を行う。これにより、仮溶接部分の一方が溶接されて、仮溶接部分の一方を構成する隣接するパイプ材7(セグメント)の端部同士が本溶接される。
【0087】
次に、作業者は、2つのパイプ材7の仮溶接部分の他方が上端となるように本溶接前の車輪4を回転させて、パイプ材7の位置を調節した後、タッチパネル81に作業開始に係る入力を行う。タッチパネル81に作業開始に係る入力が行われると、コントローラ75(詳細には、プロセッサ77)が溶接処理を実行する。溶接処理において、プロセッサ77は、ヘッド71が設定入力に沿って移動し、仮溶接部分の他方にレーザが照射されるように、マニピュレータ73及びヘッド71の駆動制御を行う。これにより、仮溶接部分の他方が溶接されて、仮溶接部分の他方を構成する隣接するパイプ材7(セグメント)の端部同士が本溶接される。
【0088】
本溶接が完了した後、作業者は、シャフト45をチャック41から取り外す。これにより、ベース43が中心軸線C側に移動可能になる。そして、スプリング55Cの付勢力に抗して複数のベース43が中心軸線C側に移動させられることによって、車輪4の内周部と、複数のベース43の外周部とが離れ、車輪4が中心治具29から取り外される。
【0089】
次に、このように構成した車輪製造装置1、及び、車輪4の製造方法の効果について説明する。
【0090】
パイプ材7の仮溶接部分のうち、環状軸線Bの軸線A(中心軸線C)から離れたに対して部分については、芯体2の径外側からアクセスすることができるため、溶接は比較的容易である。一方、環状軸線Bの軸線A(中心軸線C)に近い部分については、芯体2の径内側からアクセスする必要があるため、溶接は容易ではない。
【0091】
車輪製造装置1がTIG溶接よりも離れた位置から溶接することが可能なレーザ溶接機23を備える。ヘッド71が第2の領域Yに位置するときには、パイプ材7の中心軸線Cから離れた部分が溶接され、このとき、レーザの光軸Eはパイプ材7の外周面7Aに直交する方向に設定される。一方、ヘッド71が第1の領域X又は第3の領域Zに位置するときには、パイプ材7の中心軸線Cに近接する部分が溶接され、このとき、レーザがパイプ材7の外周面7Aに対して直交する方向から傾斜した方向(非直交方向)に指向するように設定される。詳細には、レーザの光軸Eは、中心軸線Cから離れる側、すなわち水平方向の側に傾斜させた方向に設定される。
【0092】
これにより、図12に示すように、パイプ材7の中心軸線Cに近い部分おいて、フリーローラ3とレーザ溶接機23との干渉や、レーザ溶接機23と保持具21との干渉を回避しつつ、パイプ材7を溶接することができる。よって、本発明に係る車輪製造装置1及び車輪4の製造方法によって、環状のパイプ材7とパイプ材7に回転可能に支持された複数のフリーローラ3とを有する車輪4を容易に製造することのできる車輪製造装置1及び車輪4の製造方法を提供することができる。
【0093】
車輪4が保持具21に保持されているときには、フリーローラ3が係合溝49に受容されている。図12に示すように、ベース43の中心軸線Cに平行な方向の幅は、フリーローラ3の中心軸線C(軸線A)に平行な方向の幅よりも小さいため、ベース43の中心軸線Cに平行な方向の幅がフリーローラ3の中心軸線Cに平行な方向の幅よりも大きい場合に比べて、車輪製造装置1を小型化することができる。また、ベース43の中心軸線Cに平行な方向の幅を小さくすることによって、環状軸線Bの軸線A(中心軸線C)に近い部分を溶接するときに、レーザ溶接機23のヘッド71の移動がベース43によって妨げられ難くなり、パイプ材7(芯体2)に対する径内側からの溶接作業が容易になる。
【0094】
また、シャフト45は、ベース43の径方向内側に位置している。そのため、保持具21をコンパクトに構成することができ、溶接時にシャフト45とヘッド71とが干渉し難くなり、シャフト45によってレーザ溶接機23のヘッド71の移動が妨げられ難くなる。
【0095】
シャフト45が両端部でそれぞれ溝部39に受容されることによって、中心治具29は基部33に回転可能に支持される。中心治具29を回転させることによって、製造を行う作業者がパイプ材7の溶接すべき箇所が適正な位置となるように調節することが容易である。
【0096】
次に、このように製造した車輪4の使用例について説明する。車輪4は、主として、全方向移動装置5に使用される。全方向移動装置5は、例えば、図2に示すように、フレーム91と、フレーム91に回転可能に支持された一対のドライブディスク92と、一対のドライブディスク92の間に配置された環状の車輪4と、ドライブディスク92のそれぞれを回転させる一対の電動モータとを有する。一対のドライブディスク92は、電動モータの駆動力を車輪4に駆動力を伝達する。
【0097】
フレーム91は、車体の下部から下方に延びる一対の側壁部を有する。図2に示すように、一対のフレーム91の下端には、左右に延びる支持軸97が架け渡されている。支持軸97には、一対のドライブディスク92が回転可能に支持されている。一対のドライブディスク92は支持軸97の軸線を中心として回転する。各ドライブディスク92は、支持軸97に対して左右方向における位置が規制されている。各ドライブディスク92は、左右方向に互いに距離をおいて対向している。
【0098】
ドライブディスク92は、環状の車輪4の両側にそれぞれ配置され、車輪4に摩擦力を与えて車輪4を軸線A回り及び環状の環状軸線B回りに回転させる。ドライブディスク92は、フレーム91に回転可能に支持される円盤状のベース101と、ベース101の外周部に互いに傾斜して回転可能に支持され、車輪4に接触する複数のドライブローラ102とを有する。ベース101は、支持軸97と同軸に配置されている。
【0099】
各ドライブディスク92の互いに相反する面にはドリブンプーリ104がそれぞれ設けられている。ドリブンプーリ104はドライブディスク92と同軸に設けられている。ドリブンプーリ104はベルト106によって電動モータの出力軸に設けられたドライブプーリと接続されている。各電動モータが互いに独立して回転することによって、各ドライブディスク92が互いに独立して回転する。
【0100】
各全方向移動装置5において、一対のドライブディスク92が同一方向に同一の回転速度で回転する場合には、車輪4は一対のドライブディスク92と共に回転する。すなわち、車輪4は軸線Aを中心として前転又は後転する。このとき、ドライブディスク92のドライブローラ102及び車輪4のフリーローラ3は芯体2に対して回転しない。各全方向移動装置5において、一対のドライブディスク92間に回転速度差が生じる場合には、一対のドライブディスク92の回転に起因する円周(接線)方向の力に対し、この力に直交する向きの分力が左右のドライブローラ102から車輪4のフリーローラ3に作用する。ドライブローラ102の軸線がドライブローラ102の周方向に対して傾斜しているため、ドライブディスク92間に回転速度差に起因して分力が生じる。この分力によって、ドライブローラ102がベース101に対して回転すると共に、フリーローラ3が芯体2に対して回転する。これにより、車輪4は、左右方向への駆動力を発生させる。
【0101】
左右の全方向移動装置5が前方に同じ速度で回転することによって、車体が前進する。左右の全方向移動装置5が後方に同じ速度で回転することによって、車体が後退する。左右の全方向移動装置5の前後方向への回転に速度が生じることによって、車体は右方又は左方に旋回する。左右の全方向移動装置5の各車輪4のフリーローラ3が回転することによって、車体は右方又は左方に平行移動する。
【0102】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。支持部材27は、中心治具29の高さ及び向きを変更する機構を有してもよい。ベース43の形状及び数は任意に変更することができる。
【0103】
移動軌跡Dには第1の領域X、第2の領域Y、第3の領域Zがそれぞれ含まれていればよく、例えば、第1の領域Xと第2の領域Yとの間に、例えば、ヘッド71を上昇させつつ、光軸Eを外周面7Aに垂直となるように変更する領域が設けられていてもよい。また、第2の領域Yと第3の領域Zとの間に、ヘッド71を下降させつつ、光軸Eを少しずつ水平となるように変更する領域が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 :車輪製造装置
2 :芯体
3 :フリーローラ
4 :車輪
7 :パイプ材(セグメント)
21 :保持具
23 :レーザ溶接機
27 :支持部材
29 :中心治具
39 :溝部(溝)
41 :チャック
42 :チャック貫通孔(貫通孔)
43 :ベース
45 :シャフト
65 :第1部材
67 :第2部材
69 :螺子孔
70 :螺子
71 :ヘッド
73 :マニピュレータ
B :環状軸線
C :中心軸線(中心軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12