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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172350
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231129BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20231129BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231129BHJP
【FI】
H02M7/48 M
B60L9/18 J
B60L3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084078
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 恭啓
(72)【発明者】
【氏名】稲田 遼一
【テーマコード(参考)】
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125CD04
5H125EE16
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770JA11W
5H770JA17Y
5H770LA07Z
5H770LA10Z
5H770QA06
5H770QA14
(57)【要約】
【課題】三相モータの一相オープン故障時に、安定的なトルクを出力する二相制御に移行可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】
電力変換装置は、三相インバータ回路と、三相のインバータ配線を三相のモータ配線または前記三相のモータの中性点のいずれかにそれぞれ接続する切り替え部と、前記三相のインバータ回路と前記切り替え部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記三相モータの一相が故障した場合、故障した前記一相に対応する前記インバータ配線と同じ相の前記モータ配線とを遮断し、当該インバータ配線と前記モータの中性点との接続に切り替えるように、前記切り替え部を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を変換した交流電力を出力して三相モータを駆動させる三相インバータ回路と、
前記三相インバータ回路からそれぞれ引き出される三相のインバータ配線を、前記三相モータからそれぞれ引き出される三相のモータ配線または前記三相のモータの中性点のいずれかにそれぞれ接続する切り替え部と、
前記三相のインバータ回路と前記切り替え部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記三相モータの一相が故障した場合、故障した前記一相に対応する前記インバータ配線と同じ相の前記モータ配線とを遮断し、当該インバータ配線と前記モータの中性点との接続に切り替えるように、前記切り替え部を制御する
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記三相モータの中性点と前記切り替え部は、中性点接続部を介して接続される
電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記切り替え部と前記中性点接続部は、電子スイッチでそれぞれ構成される
電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記電子スイッチは、前記三相インバータ回路内に設けられる
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記三相インバータ回路と前記三相モータとは、4本のケーブルで接続され、
前記4本のケーブルのうち、3本のケーブルは、前記三相のインバータ配線と前記三相のモータ配線とを接続し、残り1本のケーブルは、前記切り替え部と前記三相モータの中性点とを接続する
電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記三相インバータ回路と三相前記モータとは、4本のバスバで接続され、
前記4本のバスバのうち、3本のバスバは、前記三相のインバータ配線と前記三相のモータ配線とを接続し、残り1本のバスバは、前記切り替え部と前記三相モータの中性点とを接続する
電力変換装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記三相インバータ回路を複数有する
電力変換装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力変換装置であって、
前記切り替え部と前記中性点接続部は、前記三相モータの筐体内に配置される
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用インバータと接続される三相電気モータの動作の安全性は、車両の信頼性確保に重要である。例えば、運転中にこの三相モータの相が開放故障した場合、その状態で車両を安全な場所や修理可能な工場まで移動するように制御することが求められている。
【0003】
下記の特許文献1では、車両が衝突した時に、モータの故障相をインバータから切り離し可能にすることで、故障に対応できる電気自動車の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5692018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、故障の際のインバータとモータとの切り離し時にトルクリプルが発生したり、特定の位相角で車両が止まった場合にモータが回転できなかったりする可能性がある。これを鑑みて本発明は、三相モータの一相オープン故障時に、安定的なトルクを出力する二相制御に移行可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電力変換装置は、直流電力を変換した交流電力を出力して三相モータを駆動させる三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路からそれぞれ引き出される三相のインバータ配線を、前記三相モータからそれぞれ引き出される三相のモータ配線または前記三相のモータの中性点のいずれかにそれぞれ接続する切り替え部と、前記三相のインバータ回路と前記切り替え部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三相モータの一相が故障した場合、故障した前記一相に対応する前記インバータ配線と同じ相の前記モータ配線とを遮断し、当該インバータ配線と前記モータの中性点との接続に切り替えるように、前記切り替え部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、三相モータの一相オープン故障時に、安定的なトルクを出力する二相制御に移行可能な電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力変換装置とモータとを制御する制御部についての説明図
図2】本発明の一実施形態に係る、電力変換装置についての説明図
図3】一相開放故障時においての従来の電流経路と本発明の電流経路の説明図
図4図2の切り替え部および中性点接続部を電子スイッチに組み込んだ実施例
図5】本発明の一実施形態に係る、電力変換装置の制御フロー
図6図4の電子スイッチを電力変換回路の相にそれぞれ組み込んだ実施例
図7】第1、第2変形例
図8】第3変形例
図9】第4変形例
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
(本発明の一実施形態と装置の全体構成)
図1
車両に搭載された電力変換装置(以下インバータ)において、電力変換回路3は、パワー半導体をスイッチングさせることで、直流電源5から入力される直流電流を交流電流に変換し、変換した交流電流によってモータ1を駆動させている。電力変換回路3が三相の場合では、三相分の上アームと下アーム、合わせて6つのパワー半導体が電力変換回路3内に存在する。以下の説明では、三相のインバータを例に説明する。
【0012】
インバータの制御部10は、車両の上位コントローラから指示された目標トルクを受けて、Duty計算部で、U相,V相,W相それぞれのDuty比を演算する。つづいて、PWM(Pulse Width Modulation)信号生成部では、演算されたDuty比に基づいてPWM信号を生成し、そのPWM信号をドライバ回路に入力する。ドライバ回路は、入力されたPWM信号に基づいて駆動信号を生成し、電力変換回路3へその駆動信号を入力する。電力変換回路3は、入力された駆動信号によって動作する。電力変換回路3は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体を実装し、そのパワー半導体をスイッチング動作することで、直流電源5からの直流電力を三相交流電力へと変換している。なお、電力変換回路3がリレー回路を有している場合、そのリレー回路は、制御部10のリレー回路制御部6によって制御されている。
【0013】
電力変換回路3から出力される三相交流電流値は、電流センサ12(以下センサ12)によって取得され、フィードバックによりDuty計算部の演算に使用される。モータ1が故障した場合、制御部10の故障検知部は、センサ12から三相交流電流値を取得し、取得した電流値に基づいて、モータ1の故障情報をPWM信号生成部や上位のコントローラへフィードバックする。
【0014】
モータ1は、内部に3個の巻き線を有した3相モータであり、電力変換回路3から出力される交流電力によって駆動される。モータ1は、例えば永久磁石を用いた同期モータや、永久磁石を用いない誘導モータなどである。電力変換装置は、モータ1の動力を直流電力に変換して直流電源5を充電する機能も有する。
【0015】
図2
電力変換回路3は、U相、V相、W相6つのパワー半導体を有する。平滑コンデンサ4は、パワー半導体のオン/オフによって生じる電流を平滑化し、直流電源5から電力変換回路3へ供給される直流電流のリップルを抑制するコンデンサである。平滑コンデンサ4は、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどが使用される。直流電源5はモータ1を駆動させる電力を供給する電源であり、例えばバッテリなどである。電力変換回路3は、直流電源5から入力される直流電力を、ドライバ回路から入力される駆動信号によって内部のパワー半導体のオン/オフを切り替えることで、交流電力に変換してモータ1を駆動させる。パワー半導体は、IGBTに限らず、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)なども含まれる。
【0016】
パワー半導体は相ごとに上下2つずつに分けられ、上側3つのパワー半導体が上アーム、下側3つのパワー半導体が下アームである。電力変換回路3から引き出される配線(インバータ配線)は、モータ配線を介してモータ1の各相の巻き線とそれぞれ接続する。センサ12はモータ1の各相(U相、V相、W相)に流れる交流電流を測定するセンサである。センサ12は、測定した各相の交流電流を交流電流値として制御部10に出力する。
【0017】
電力変換回路3とモータ1との間には、電力変換回路3からそれぞれ引き出される三相のインバータ配線を、モータ1からそれぞれ引き出される三相のモータ配線またはモータ1の中線点のいずれかにそれぞれ接続する切り替え部8を備えている。また、モータ1の中性点と切り替え部8は、中性点接続部9を介して接続される。
【0018】
切り替え部8は、3つの3点リレー回路で構成される。中性点接続部9は、1つの2点リレー回路で構成される。切り替え部8と中性点接続部9それぞれのリレー回路は、前述した制御部10が有するリレー回路制御部6によって制御される。リレー回路制御部6は、マイクロコンピュータの一機能として実現できる。
【0019】
電力変換回路3と切り替え部8を制御する制御部10は、モータ1の一相が故障した場合、故障した一相に対応するインバータ配線と同じ相のモータ配線とを遮断し、当該インバータ配線と三相モータ1の中性点との接続に切り替えるように、切り替え部8を制御する。
【0020】
図3
図2に説明した本発明の構成の効果について、図3(a)の従来技術を適用した三相モータの開放故障時の三相交流電流の流れ、図3(b)の本発明を適用した場合の三相モータの開放故障時の三相交流電流の流れの図を用いて説明する。モータ1の三相のうち一相が開放故障した場合、図1に前述した故障検知部は、センサ12から取得する三相交流電流値とドライバ回路の動作を比較して、モータ1の故障と故障した相を検知する。ここで、図3(a)に示す従来のモータ1では、三相のうち一相が開放故障した場合、交流電流の還流経路において、残りの2相は180°位相でのみ電流経路11aが形成される(逆向きの流れも同様)。そのため、トルクの出力の大きさに波が生じてしまい、最小トルクとなる電気角で車両が停止した場合、再び車両を動かすための十分なトルクを得られない可能性がある。
【0021】
そこで本発明では、図3(b)に示すように、電力変換回路3のU相、V相、W相のそれぞれのパワー半導体とモータ1との間に、3点リレー回路の切り替え部8を設ける。また、切り替え部8とモータ1の中性点との間に、2点リレー回路の中性点接続部9を設けている。切り替え部8のリレー回路は、リレー回路制御部6(図1)からの指令により、パワー半導体~モータ1間、または、中性点接続部9~モータ1間のいずれかを繋ぐように、回路を切り替える動作を行う。
【0022】
中性点接続部9の2点リレー回路は、切り替え部8の3点リレー回路のうち一点のリレー回路と、モータ1の中性点との間に設置される。中性点接続部9は、切り替え部8のリレー回路と同様に、リレー回路制御部6からの指令により、オンまたはオフの切り替え動作を行う。これにより、モータ1側の誘起電圧は、電力変換回路3にたいして完全に遮断される。
【0023】
本発明では、三相のうち一相が開放故障した場合、切り替え部8は、3点リレー回路の中で故障した一相に対応するリレー回路をモータ1の中性点とつなぐように切り替える。またこの時、中性点接続部9は、切り替え部8の故障した一相に対応するリレー回路とモータ1の中性点とをつなぐ切り替えを行うことで、モータ1の開放故障相に対応する電力変換回路3のレグが、モータ1の中性点と接続される。このようにすることで、開放故障したモータ1の故障相と電力変換回路3側を切り離して欠相と同じ状態にして、残り2相の電流位相差が60度になるように残り2相のドライバ回路を制御する。そのため、モータ1の中性点からインバータに対して、二相制御のための電流の還流経路11bを確保することができ、トルクリプルを抑制したトルク制御を実現できる。つまり、車両において、モータ1の巻線故障時に安定的なトルクを出力できる。
【0024】
図4
本発明のリレー回路の切り替えをFET(Field Effect Transistor)で構成した実施例を示す。電力変換回路3の各レグとモータ1の各相への入力とのスイッチ回路とをバックツーバックで接続した2つのFETが3対で構成されている。また、電力変換回路3の各レグとモータ1の中性点とのスイッチ回路を実現するバックツーバックで接続された2つのFETの3対で構成されている。このように、切り替え部8と中性点接続部9は、半導体スイッチング回路である電子スイッチ7でそれぞれ構成される。これらFETのオン/オフは、制御部10に含まれるリレー回路制御部6からの信号によって制御される。
【0025】
このような構成では、通常動作において全ての相とモータ1の間のFETはON状態となり、モータ1の中性点とのFETは全てOFF状態とする。また、いずれか一相のモータ1の巻線開放故障では、いずれか一相のレグ~モータ1の巻線間をOFFにし、電力変換回路3と故障巻線を電気的に切り離す一方で、故障に対応したいずれか一相のレグとモータ1の中性点とを繋ぐFETはONにする。これにより、電子スイッチ7にリレー回路を用いた構成であっても、二相制御を可能にするモータ1の巻線の接続を実現できる。そのため、6点の半導体スイッチで実現が可能である。また、このように、半導体スイッチ7を用いて切り替え部8と中性点接続部9を実現することで、より小型/軽量化でき、またリレー回路制御部6からの指令に対して応答速度を高めることが出来る。
【0026】
図5
制御部10の制御フローチャートを説明する。ステップS1では、HVAC電流とIGBTの動作とを比較して、モータ1の開放故障を検知する。ステップS1では、例えば、IGBTをオンにしているのに電流が流れない場合を上下アームで確かめる。ステップS1でモータ1の開放故障を検知できなければフローを終了する。ステップS2では、モータ1の故障検知後、一度安全状態へ移行するために、全てのIGBTをオフにして、ゼロトルク状態にする。ステップS3では、故障を特定したモータ1のいずれかの相と繋がる3点リレー回路を、電力変換回路3の各レグと2点リレー回路との接続へ切り替える。なお、ステップS3で正常の相と繋がる3点リレー回路については、正常時と同様の接続を維持する。ステップS4では、3点リレー回路と三相モータ1の中性点を繋ぐ2点リレー回路をオンにする。ステップS5では、正常動作している残りの二相の動作を確認する。ステップS5では、例えば、慣性によってモータ1が回転している場合、発生した誘起電圧による電流を残りの二相の電流センサ12で検知すれば、モータ1の二相が有効であると判断できる。ステップS5で、残りの二相が正常と判断できれば、ステップS6で電力変換回路3を二相制御に切り替え、フローを終了する。ステップS5で、残りの二相が正常と判断出来なければ、ステップS1に戻り、モータ1の故障診断を行う。
【0027】
図6
インバータが備える電力変換回路3は、一相分の上下アームのIGBTやその周辺回路、放熱機構を一つのモジュールにした、パワーカードやパワーモジュールと呼ばれる構造を、U相、V相、W相の分を束ねて構成される。そこで、切り替え部8と中性点接続部9のリレー回路で、半導体スイッチ7として構成したものを、この電力変換回路3内にそれぞれ組み込む。この構成により、リレー回路の発熱に対応する半導体の冷却を、IGBT等のパワー半導体と共通にでき、放熱構造の簡素化を図り、冷却構造のレイアウトの変更を最小限に抑えることが出来る。
【0028】
図7
(第1変形例、第2変形例)
図7(a)に示す第1変形例のように、インバータ3a内に、電力変換回路3以外に切り替え部8と中性点接続部9を備える構成であってもよい。これにより、モータ1の故障相をインバータ3aから切り離し、二相制御のための電流の還流経路を中性点からインバータ3aへ確保することが出来る。また、三相インバータ回路3を複数有する構成であっても、同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、図7(b)に示す第2変形例のように、モータ筐体1a側に切り替え部8と中性点接続部9を備える構成であってもよい。切り替え部8と中性点接続部9は、モータ1aの筐体内に配置されることで、切り替え部8を三相全て中性点接続部9側へ切換えると同時に、中性点接続部9をオフにすることで、衝突事故など車両に著しい破損が発生した場合に高電圧ケーブルの断線が懸念される場合に備えて、モータ1の故障相をモータ1ごとインバータ3aから電気的に分離することが出来る。また、二相制御のための電流の還流経路を中性点からインバータ3aへ確保することが出来る。また、モータ筐体1a内のリレーをOFFにすることで、ケーブル断線による誘起電圧による感電を防ぎ、モータ巻線の開放故障での安定動作の実現、高電圧感電に対する安全性向上を実現する。
【0030】
図8
(第3変形例)
インバータ3aとモータ1aを4本ケーブルで接続する構成であっても良い。インバータ3aが備える電力変換回路3とモータ1(モータ筐体1a)とを接続する4本のケーブルのうち、3本のケーブルは、三相のインバータ配線と三相のモータ配線とを接続し、残り1本のケーブルは、切り替え部8とモータ1の中性点とを接続する。このようにすることで、車両におけるインバータ3aとモータ筐体1aの搭載自由度が向上する。
【0031】
図9
(第4変形例)
本発明は、インバータ3aが備える電力変換回路3と、モータ1が4本バスバ14によって直接接続されるような一体型の構成であってもよい。この場合、4本のバスバのうち、3本のバスバは、三相のインバータ配線と三相のモータ配線とを接続し、残り1本のバスバは、切り替え部8とモータ1の中性点とを接続する。このような構成であれば、高電圧ケーブルの接続が必要なインバータ3aとモータ1a分離の構成と比較しても、コストと重量の影響を最小限に抑えることができる。
【0032】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0033】
(1)電力変換装置は、直流電力を変換した交流電力を出力して三相モータ1を駆動させる三相インバータ回路3と、三相インバータ回路3からそれぞれ引き出される三相のインバータ配線を、三相モータ1からそれぞれ引き出される三相のモータ配線または三相モータ1の中性点のいずれかにそれぞれ接続する切り替え部8と、三相のインバータ回路3と切り替え部8を制御する制御部10と、を備える。制御部10は、三相モータ1の一相が故障した場合、故障した一相に対応するインバータ配線と同じ相のモータ配線とを遮断し、当該インバータ配線と三相モータ1の中性点との接続に切り替えるように、切り替え部8を制御する。このようにしたことで、三相モータ1の一相オープン故障時に、安定的なトルクを出力する二相制御に移行可能な電力変換装置を提供できる。
【0034】
(2)三相モータ1の中性点と切り替え部8は、中性点接続部9を介して接続される。このようにしたことで、モータ1の故障相を電力変換回路3から切り離し、二相制御のための電流の還流経路を中性点から電力変換回路3へ確保することが出来る。
【0035】
(3)切り替え部8と中性点接続部9は、電子スイッチ7でそれぞれ構成される。このようにしたことで、小型/軽量化でき、またリレー回路制御部6からの指令に対して応答速度を高めることが出来る。
【0036】
(4)電子スイッチ7は、三相インバータ回路3内に設けられる。このようにしたことで、放熱構造の簡素化を図り、レイアウトの変更を最小限に抑えることが出来る。
【0037】
(5)三相インバータ回路3と三相モータ1とは、4本のケーブル13で接続され、4本のケーブル13のうち、3本のケーブルは、三相のインバータ配線と三相のモータ配線とを接続し、残り1本のケーブルは、切り替え部8と三相モータ1の中性点とを接続する。このようにしたことで、車両におけるインバータ3aとモータ1aの搭載自由度が向上する。
【0038】
(6)三相インバータ回路3と三相モータ1とは、4本のバスバ14で接続され、4本のバスバ14のうち、3本のバスバは、三相のインバータ配線と三相のモータ配線とを接続し、残り1本のバスバは、切り替え部8と三相モータ1の中性点とを接続する。このようにしたことで、コストと重量の影響を最小限に抑えることができる。
【0039】
(7)三相インバータ回路3を複数有する。このようにしたことで、出力を向上させても、三相モータ1の一相オープン故障時に、安定的なトルクを出力できる二相制御に移行できる。
【0040】
(8)切り替え部8と中性点接続部9は、三相モータ筐体1a内に配置される。このようにしたことで、ケーブル断線による誘起電圧による感電を防ぎ、モータ巻線の開放故障での安定動作の実現、高電圧感電に対する安全性向上を実現する。
【0041】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や他の構成を組み合わせることができる。また本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 三相モータ
1a モータ筐体
2 リレー回路
3 電力変換回路
3a 電力変換装置(インバータ)
4 平滑コンデンサ
5 直流電源
6 リレー回路制御部
7 半導体スイッチ
8 切り替え部(3点リレー回路)
9 中性点接続部(2点リレー回路)
10 制御部
11 電流の流れ
11a 従来の1相分故障時の電流経路
11b 本発明の1相分故障時の電流経路
12 電流センサ
13 4本ケーブル
14 4本バスバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9