(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172352
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/26 20060101AFI20231129BHJP
B29C 51/02 20060101ALI20231129BHJP
B29C 51/36 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/02
B29C51/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084083
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林 竜汰
(72)【発明者】
【氏名】松田 卓朗
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AA03
4F202AA04
4F202AA11
4F202AC03
4F202AG07
4F202AR12
4F202CA27
4F202CB01
4F202CK12
4F202CN01
4F202CP06
4F208AC03
4F208AJ08
4F208AR12
4F208MA01
4F208MA05
4F208MB01
4F208MC03
4F208MG22
4F208MJ09
4F208MJ11
4F208MJ14
4F208MJ26
4F208MJ30
4F208MK03
(57)【要約】
【課題】樹脂シートが意図せずして金型に近づいてしまうことを抑制可能な、成形装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、樹脂シート形成装置と、ローラユニットと、金型と、除電機を備える、成形装置であって、前記樹脂シート形成装置は、溶融状態の樹脂シートを押し出すように構成され、前記ローラユニットは、第1及び第2ローラを備え、第1及び第2ローラは、前記樹脂シートを挟んだ状態で互いに逆方向に回転して前記樹脂シートを第1及び第2ローラの下方に送り出し可能に構成され、前記金型は、前記樹脂シートを賦形する賦形面を有し、前記除電機は、前記樹脂シートが前記ローラユニットを通過した後であって前記樹脂シートの下端が前記金型の成形領域の下端に到達する前の時点に、前記樹脂シートの除電を行うように構成される、成形装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シート形成装置と、ローラユニットと、金型と、除電機を備える、成形装置であって、
前記樹脂シート形成装置は、溶融状態の樹脂シートを押し出すように構成され、
前記ローラユニットは、第1及び第2ローラを備え、
第1及び第2ローラは、前記樹脂シートを挟んだ状態で互いに逆方向に回転して前記樹脂シートを第1及び第2ローラの下方に送り出し可能に構成され、
前記金型は、前記樹脂シートを賦形する賦形面を有し、
前記除電機は、前記樹脂シートが前記ローラユニットを通過した後であって前記樹脂シートの下端が前記金型の成形領域の下端に到達する前の時点に、前記樹脂シートの除電を行うように構成される、成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記金型は、前記成形領域に凸部を備える、成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成形装置であって、
前記成形領域の全高をHとすると、前記凸部の頂部は、前記成形領域の下端から0.3H以下の位置に設けられる、成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成形装置であって、
前記凸部の頂部よりも上側に、上方に向かって突出量が徐々に小さくなる傾斜面が設けられる、成形装置。
【請求項5】
請求項2~請求項4の何れか1つに記載の成形装置であって、
前記金型の周囲に配置された型枠を備え、
前記型枠は、前記樹脂シートを吸着可能な吸着面を備え、
前記型枠は、前記樹脂シートに向かって前進して前記樹脂シートを吸着した後に前記金型に対して相対的に後退して前記樹脂シートを前記凸部に押し付けるように構成される、成形装置。
【請求項6】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の成形装置であって、
前記ローラユニットは、第1及び第2ローラを収容するフレームを備え、
前記除電機は、前記フレームの下側に直接又は別の部材を介して装着される、成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂シート形成装置から押し出された樹脂シートを一対のローラで挟んで送り出した後、金型を用いて樹脂シートを賦形して成形体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂シートは、通常、金型から数10mm程度離れた位置を通るように垂下されるが、樹脂シートが意図せずして金型に近づいてしまう結果、意図しない皺が成形体に形成されてしまう等の問題が生じる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂シートが意図せずして金型に近づいてしまうことを抑制可能な、成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)樹脂シート形成装置と、ローラユニットと、金型と、除電機を備える、成形装置であって、前記樹脂シート形成装置は、溶融状態の樹脂シートを押し出すように構成され、前記ローラユニットは、第1及び第2ローラを備え、第1及び第2ローラは、前記樹脂シートを挟んだ状態で互いに逆方向に回転して前記樹脂シートを第1及び第2ローラの下方に送り出し可能に構成され、前記金型は、前記樹脂シートを賦形する賦形面を有し、前記除電機は、前記樹脂シートが前記ローラユニットを通過した後であって前記樹脂シートの下端が前記金型の成形領域の下端に到達する前の時点に、前記樹脂シートの除電を行うように構成される、成形装置。
(2)(1)に記載の成形装置であって、前記金型は、前記成形領域に凸部を備える、成形装置。
(3)(2)に記載の成形装置であって、前記成形領域の全高をHとすると、前記凸部の頂部は、前記成形領域の下端から0.3H以下の位置に設けられる、成形装置。
(4)(3)に記載の成形装置であって、前記凸部の頂部よりも上側に、上方に向かって突出量が徐々に小さくなる傾斜面が設けられる、成形装置。
(5)(2)~(4)の何れか1つに記載の成形装置であって、前記金型の周囲に配置された型枠を備え、前記型枠は、前記樹脂シートを吸着可能な吸着面を備え、前記型枠は、前記樹脂シートに向かって前進して前記樹脂シートを吸着した後に前記金型に対して相対的に後退して前記樹脂シートを前記凸部に押し付けるように構成される、成形装置。
(6)(1)~(5)の何れか1つに記載の成形装置であって、前記ローラユニットは、第1及び第2ローラを収容するフレームを備え、前記除電機は、前記フレームの下側に直接又は別の部材を介して装着される、成形装置。
【0007】
本発明者は樹脂シートが金型に近づいてしまう原因について調査をしたところ、樹脂シートが第1及び第2ローラを通過する際に樹脂シートが帯電してしまい、静電的な作用によって樹脂シートが金型に引き寄せられてしまうためであることを突き止めた。そして、この知見に基づき、樹脂シートが第1及び第2ローラを通過した後に樹脂シートの除電を行うことによって、樹脂シートが意図せずして金型に近づいてしまうこと抑制可能であることを見出し、本発明の完成に到った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の成形装置100を示す。
【
図2】ローラユニット2A及び除電機4を示し、
図2Aは、斜め下から見た斜視図であり、
図2Bは、底面図であり、
図2Cは、
図2B中のC-C断面図である。
【
図3】金型3B及び型枠3Cの構成を示す断面図である。
【
図4】成形体の製造方法において、垂下工程後の状態を示す断面図である。
【
図5】
図4の状態から樹脂シート5Aを金型3Aに密着させ、樹脂シート5Bを型枠3Cに密着っせた後の断面図である。
【
図6】
図4に示す垂下工程において、除電機4がない場合に樹脂シート5Bが金型3Bに近づいて凸部3B1に乗り上げてしまう状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.成形装置100の構成
図1に示すように、本発明の一実施形態の成形装置100は、一対の樹脂シート形成装置1と、一対のローラユニット2と、金型ユニット3と、除電機4を備える。一対の樹脂シート形成装置1は、互いに区別が必要な場合には、符号を1A,1Bのように、添字A,Bを付する。ローラユニット2及び樹脂シート5についても同様である。
【0011】
<樹脂シート形成装置1>
樹脂シート形成装置1は、溶融状態の樹脂シート5を押し出すように構成される。樹脂シート形成装置1は、一例では、ホッパー12と、押出機13と、アキュームレータ17と、Tダイ18を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。なお、アキュームレータ17は不要な場合は省略可能であり、その場合、押出機13から押し出された溶融樹脂が直接Tダイ18に注入される。
【0012】
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。シリンダ13aの樹脂押出口から押し出された溶融樹脂は、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて溶融樹脂11aをTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて溶融状態の樹脂シート5を形成する。
【0013】
<ローラユニット2>
ローラユニット2は、樹脂シート形成装置1と金型ユニット3の間に配置される。ローラユニット2は、第1及び第2ローラ2a,2bを備える。ローラ2a,2bは、樹脂シート5を挟んだ状態で互いに逆方向に回転して樹脂シート5をローラ2a,2bの下方に送り出し可能に構成される。好ましくは、ローラ2a,2b間の隙間2cが可変に構成されており、隙間2cを広げた状態でローラ2a,2bの間に樹脂シート5を配置した後に隙間2cを狭めることによって、ローラ2a,2bで樹脂シート5を挟着することができる。ローラ2aは、位置が固定された固定ローラであり、ローラ2bは、ローラ2aとの間の距離が可変に構成された可動ローラである。
【0014】
ローラユニット2は、フレーム2dと、可動ローラ支持部2eと、駆動機構2fを備える。フレーム2dは、樹脂シート5が通過できるように上面及び下面が開放されている。ローラ2a,2bは、フレーム2d内に配置されている。ローラ2a,2bの一方は、フレーム2dに装着された回転駆動機構(不図示)によって回転駆動可能に構成されている。ローラ2a,2bの一方の回転は、ギア機構(不図示)を介して、回転方向が逆向きになってローラ2a,2bの他方に伝達可能になっている。このため、ローラ2a,2bは、互いに逆方向に同期回転して、樹脂シート5を下方に送り出し可能になっている。例えば、回転駆動機構がローラ2bを回転駆動する場合、ローラ2bに加えられた回転は、ギア機構を介してローラ2aに伝達される。
【0015】
ローラ2bは、可動ローラ支持部2eに回転可能に支持されており、可動ローラ支持部2eは、駆動機構2fによって移動可能になっている。駆動機構2fは、シリンダ機構などで構成されており、可動ローラ支持部2eを移動させることによって隙間2cの大きさを変更可能になっている。
【0016】
ローラ2a,2bで樹脂シート5を挟んだ状態でローラ2a,2bを互いに逆方向に回転させることによって樹脂シート5をローラ2a,2bの下方に送り出すことができる。この際に、樹脂シート5と、ローラ2a,2bとの間の摩擦によって、樹脂シート5が帯電する。この帯電は、湿度が低いときに顕著になる。
【0017】
<金型ユニット3>
金型ユニット3は、開閉可能に構成された第1及び第2金型3A,3Bを備える。金型3A,3Bは、それぞれ、樹脂シート5を賦形する賦形面3A3,3B3を備える。賦形面3A3,3B3は、所望の成形体を形成するための成形領域3aに設けられる。本実施形態では、パーティング面3A4,3B4で囲まれた領域が成形領域3aとなる。
【0018】
より具体的には、第1樹脂シート形成装置1Aから押し出され、第1ローラユニット2Aを通過した第1樹脂シート5Aは、金型3Aに隣接した位置に垂下され、金型3Aによって減圧吸引されて賦形面3A3に沿った形状に賦形される。一方、第2樹脂シート形成装置1Bから押し出され、第2ローラユニット2Bを通過した第2樹脂シート5Bは、金型3Bに隣接した位置に垂下され、金型3Bによって減圧吸引されて賦形面3B3に沿った形状に賦形される。
【0019】
その後、金型3A,3Bを閉じると、金型3A,3Bのパーティング面3A4,3B4において樹脂シート5A,5Bが溶着し、パーティング面3A4,3B4によって囲まれた内側の成形領域3aに所望の成形体が形成される。
【0020】
金型3Bは、凸部3B1を有し、金型3Aは、凸部3B1を収容可能な凹部3A1を有する。本実施形態では、凸部3B1は、パーティング面3B4よりも突出した部位である。
【0021】
金型ユニット3は、金型3Bの周囲に配置された型枠3Cを備える。型枠3Cは、樹脂シート5Bを吸着可能な吸着面3Caを備える。型枠3Cは、
図5に示すように樹脂シート5Bに向かって前進して樹脂シート5Bを吸着した後に、金型3Bに対して相対的に後退して(つまり、型枠3Cが後退するか、及び/又は金型3Bが前進して)樹脂シート5Bを凸部3B1に押し付けるように構成される。
【0022】
金型ユニット3は、金型3A,3Bよりも下方に配置された第1及び第2シート把持部3D,3Eを備える。シート把持部3D,3Eは、それぞれ、樹脂シート5A,5Bを把持した後に、金型3A,3Bのそれぞれの開方向に移動することによって樹脂シート5A,5Bを金型3A,3Bに押し付ける。これによって、
図5に示すように、樹脂シート5Aと金型3Aで囲まれた密閉空間3A2と、樹脂シート5Bと、型枠3Cと、金型3Bで囲まれた密閉空間3B2が形成され、金型3A,3Bの減圧吸引による賦形性が向上する。
【0023】
ところで、型枠3Cが移動可能な範囲は限られており、樹脂シート5Bは、型枠3Cが到達可能な位置に垂下させる必要がある。このため、通常は、樹脂シート5Bと凸部3B1の頂部3B1aの間の隙間を過度に大きくすることは困難であり、この隙間は、通常、10~30mm(好ましくは15~25mm)に設定される。
【0024】
樹脂シート5Bが帯電していない場合には、樹脂シート5Bが金型3Bに引き寄せられることはないが、樹脂シート5Bが帯電していると、
図6に示すように、静電力によって樹脂シート5Bが意図せずして金型3Bに引き寄せられてしまい、凸部3B1に乗り上げてしまう場合がある。樹脂シート5Bが凸部3B1に乗り上げると、その際に、樹脂シート5Bの弛みが増大し、その結果、樹脂シート5Bに内面同士がくっつく折れ肉が発生してしまう場合がある。樹脂シート5Bの折れ肉は、樹脂シート5Bを賦形しても消失しない場合があり、成形不良となってしまう。このような問題の発生を抑制すべく、本実施形態では、樹脂シート5Bの除電を行っている。除電を行うための除電機4については後述する。
【0025】
成形領域3aの全高をHとすると、凸部3B1の頂部3B1aは、成形領域3aの下端3a1から0.3H以下の位置に設けられることが好ましい。頂部3B1aが低い位置にある場合、樹脂シート5Bが頂部3B1aに対向する位置にまで下降した時点での樹脂シート5Bの長さが長くなるので、その分だけ、樹脂シート5Bが動きやすくなり、静電力によって金型3Bに引き付けられやすくなる。このため、頂部3B1aが上記位置にある場合に、本発明を適用する技術的意義が特に顕著である。頂部3B1aの位置は、例えば、0.01H、0.05H、0.1H、0.15H、0.2H、0.25H、0.3Hであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。
【0026】
凸部3B1の頂部3B1aよりも上側に、上方に向かって突出量が徐々に小さくなる傾斜面3B1bが設けられることが好ましい。この部位に傾斜面3B1bが設けられていると、樹脂シート5Bが金型3Bに引き付けられたときに樹脂シート5Bが凸部3B1の上に乗りやすいので、このような場合に、本発明を適用する技術的意義が特に顕著である。
【0027】
凸部3B1の上端3B1c(例えば、本実施形態では傾斜面3B1bの上端3B1c)の位置は、成形領域3aの下端3a1から0.6H以下の位置に設けられることが好ましい。この場合に、樹脂シート5Bが特に凸部3B1の上に乗りやすいからである。上端3B1cの位置は、例えば、0.1H、0.2H、0.3H、0.4H、0.5H、0.6Hであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。上端3B1cとは、凸部3B1の突出量が上方に向かって変化しなくなるか又は大きくなる位置である。上端3B1cの上側には凸部3B1がないか、別の凸部3B1が設けられる。
【0028】
凸部3B1は、パーティング面3B4からの突出量が例えば5~50mmである。この突出量は、好ましくは5~20mmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
頂部3B1aでのパーティング面3B4からの突出量をP1とし、上端3B1cでのパーティング面3B4からの突出量をP2とすると、P1又は(P1-P2)は、好ましくは5~20mmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
金型3Bは、複数の凸部3B1を有してもよく、この場合には、少なくとも1つの凸部3B1(例えば、最も下にある凸部3B1)が上記構成を有すればよい。
【0031】
<除電機4>
除電機4は、樹脂シート5Bがローラユニット2Bを通過した後であって樹脂シート5Bの下端が成形領域3aの下端3a1に到達する前の時点に、樹脂シート5Bの除電を行うように構成される。これによって、樹脂シート5Bが金型3Bに引き付けられることが抑制される。
【0032】
除電機4が除電を行うタイミングは、樹脂シート5Bの下端が最も下にある凸部3B1の頂部3B1aに到達する前の時点がさらに好ましく、成形領域3aの上端3a2に到達する前の時点がさらに好ましく、樹脂シート5Bがローラユニット2Bを通過した直後がさらに好ましい。この場合、樹脂シート5Bが金型3Bに引き付けられることが特に抑制される。
【0033】
除電機4は、イオン放出部4aから放出されるイオンを樹脂シート5Bに照射することによって樹脂シート5Bの除電を行うことができる。照射するイオンは、樹脂シート5Bが帯びている電荷とは逆の電荷を有するものであり、樹脂シート5Bの電荷とイオンの電荷が結合して樹脂シート5Bが除電される。例えば、樹脂シート5Bが負電荷を帯びている場合には、正電荷のイオンを照射すればよい。除電機4には、イオンを気流に乗せて対象物に照射するものもあるが、気流を樹脂シート5Bに照射すると、樹脂シート5Bが冷えてしまって賦形性が悪化してしまう虞があるので、除電機4は、気流なしで動作させることが好ましい。除電機4の例としては、キーエンス社製、型式SJ-H108Aが挙げられる。
【0034】
除電機4は、ローラユニット2Bと金型ユニット3の間に配置することが好ましく、ローラユニット2Bのフレーム2dの下側に直接又は別の部材を介して装着することが好ましい。この場合、樹脂シート5Bがローラユニット2Bを通過した直後に樹脂シート5Bの除電が可能な位置に除電機4を配置することができる。除電機4は、細長い形状であり、除電機4の長手方向がローラ2a,2bの長手方向に平行になるように配置することが好ましい。
【0035】
樹脂シート5Bと除電機4の間の長さは、例えば、200~500mmであり、具体的には例えば、200、250、300、350、400、450、500mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、樹脂シート5Bの除電を行う除電機4のみが設けられているが、必要な場合には、樹脂シート5Aの除電を行う除電機4を別途設けてもよい。
【0037】
1-2.成形体の製造方法
次に、成形装置100を用いて、成形体を製造する方法について説明する。
【0038】
本実施形態の製造方法は、垂下工程と、成形工程を備える。以下、これらの工程について説明する。
【0039】
(1)垂下工程
垂下工程では、
図4に示すように、第1樹脂シート形成装置1AのTダイ18から押し出され且つ第1ローラユニット2Aを通過した第1樹脂シート5Aを金型3Aに隣接した位置に垂下させる。また、第2樹脂シート形成装置1BのTダイ18から押し出され且つ第2ローラユニット2Bを通過した第2樹脂シート5Bを金型3Bに隣接した位置に垂下させる。
【0040】
樹脂シート5Bが帯電していると、
図6に示すように、樹脂シート5Bが金型3B(特に凸部3B1)に引き付けられて凸部3B1の上に乗り上げてしまう虞があるが、本実施形態では、ローラユニット2Bと金型3Bの間の空間で、除電機4が樹脂シート5Bの除電を行っているので、樹脂シート5Bが金型3Bに引き付けられることなく、樹脂シート5Bが垂下される。
【0041】
(2)成形工程
成形工程では、
図5に示すように、金型3Aを樹脂シート5Aに近づけると共に、把持部3Dで樹脂シート5Aを把持した状態で把持部3Dを金型3Aの開方向(
図5の左方向)に移動させることによって、樹脂シート5Aを金型3Aのパーティング面3A4に密着させる。また、型枠3Cを樹脂シート5Bに近づけると共に、把持部3Eで樹脂シート5Bを把持した状態で把持部3Eを金型3Bの開方向(
図5の右方向)に移動させることによって、樹脂シート5Bを型枠3Cに密着させる。これによって、樹脂シート5Aと金型3Aで囲まれた密閉空間3A2と、樹脂シート5Bと、型枠3Cと、金型3Bで囲まれた密閉空間3B2が形成される。
【0042】
次に、金型3Aで樹脂シート5Aを減圧吸引することで樹脂シート5Aを金型3Aの賦形面3A3に沿った形状に賦形する。また、型枠3Cを金型3Bに対して相対的に後退させることによって、樹脂シート5Bを金型3B(特に、凸部3B1)に押し付けると共に、金型3Bで樹脂シート5Bを減圧吸引することで樹脂シート5Bを金型3Bの賦形面3B3に沿った形状に賦形する。
【0043】
次に、金型3A,3Bを閉じると、金型3A,3Bのパーティング面3A4,3B4において樹脂シート5A,5Bが溶着し、パーティング面3A4,3B4によって囲まれた内側の成形領域3aに所望の成形体が形成される。成形領域3aの外側にはバリが形成される。その後、金型3A,3Bを開いてバリ付きの成形体を取り出し、バリ除去などの後処理を行うことによって、所望の成形体が得られる。成形体は、中空成形体であるが、中実成形体であってもよい。また、成形体は、発泡成形体と非発泡成形体の何れであってもよい。
【0044】
2.その他実施形態
・上記実施形態では、成形装置100は、2枚の樹脂シート5A,5Bを用いて成形を行う装置であったが、成形装置100は、1枚の樹脂シート5を用いて成形を行う装置であってもよい。この場合、成形装置100は、樹脂シート形成装置1とローラユニット2を一つずつ備えればよい。また、金型3A,3Bで樹脂シート5を挟んで樹脂シート5の成形を行うことができるので、金型3A,3Bは、樹脂シート5を減圧吸引する必要はない。
・上記実施形態では、成形装置100は、第1及び第2金型3A,3Bを備えているが、第2金型3Bのみを備え、減圧吸引による真空成形によって樹脂シート5Bの成形を行ってもよい。この場合、所望の成形体を形成するための賦形面3B3が設けられた部位が成形領域3aとなり、成形領域3aを取り囲む部位がベース部(パーティング面3B4に対応する部位)となる。凸部3B1は、ベース部よりも突出した部位であることが好ましく、第2金型3Bにおいて最も突出した部位であることがさらに好ましい。このような形態であっても、除電機4で樹脂シート5Bの除電を行うことによって、樹脂シート5Bが金型3Bに引き付けられることが抑制される。なお、このような実施形態では、樹脂シート形成装置、ローラユニット、樹脂シート、金型、シート把持部がそれぞれ一つずつなので、構成要素名の最初の「第2」は省いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 :樹脂シート形成装置
1A :第1樹脂シート形成装置
1B :第2樹脂シート形成装置
2 :ローラユニット
2A :第1ローラユニット
2B :第2ローラユニット
2a :第2ローラ
2b :第2ローラ
2c :隙間
2d :フレーム
2e :可動ローラ支持部
2f :駆動機構
3 :金型ユニット
3A :第1金型
3A1 :凹部
3A2 :密閉空間
3A3 :賦形面
3A4 :パーティング面
3B :第2金型
3B1 :凸部
3B1a :頂部
3B1b :傾斜面
3B1c :上端
3B2 :密閉空間
3B3 :賦形面
3B4 :パーティング面
3C :型枠
3Ca :吸着面
3D :第1シート把持部
3E :第2シート把持部
3a :成形領域
3a1 :下端
3a2 :上端
4 :除電機
4a :イオン放出部
5 :樹脂シート
5A :第1樹脂シート
5B :第2樹脂シート
11 :原料樹脂
11a :溶融樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
25 :連結管
27 :連結管
100 :成形装置