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特開2023-172354チタン酸アルカリ金属の製造方法及び、チタン酸アルカリ金属の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172354
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】チタン酸アルカリ金属の製造方法及び、チタン酸アルカリ金属の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
C01G23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084085
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瀧 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀川 松秀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀樹
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA06
4G047CB04
4G047CC03
4G047CD05
(57)【要約】
【課題】フラックスを回収可能にして、製造コストを低減することができるチタン酸アルカリ金属の製造方法及び、チタン酸アルカリ金属の製造装置を提供する。
【解決手段】この発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、チタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む原料51をフラックス61中で加熱し、チタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、チタン酸アルカリ金属を含む生成物52を生成させる反応工程と、前記生成物52をフラックス61から分離させるフラックス分離工程とを含み、前記フラックス分離工程にて、通液性保持部11で前記生成物52を保持させながら、フラックス61が前記通液性保持部11を通過するようにして、前記生成物52をフラックス61から分離させるというものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸アルカリ金属を製造する方法であって、
チタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む原料をフラックス中で加熱し、チタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、チタン酸アルカリ金属を含む生成物を生成させる反応工程と、
前記生成物をフラックスから分離させるフラックス分離工程と
を含み、
前記フラックス分離工程にて、通液性保持部で前記生成物を保持させながら、フラックスが前記通液性保持部を通過するようにして、前記生成物をフラックスから分離させる、チタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項2】
前記通液性保持部が、フラックスを通すとともに前記生成物を通さない通液孔を有する容器状である、請求項1に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項3】
前記フラックス分離工程で、前記通液性保持部を、該通液性保持部に保持させた前記生成物とともに、フラックス中から持ち上げることにより、前記生成物をフラックスから分離させる、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項4】
前記反応工程にて、前記通液性保持部で前記原料を保持させながら、チタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させる、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項5】
前記反応工程から、少なくとも、前記フラックス分離工程でフラックスが前記通液性保持部を通過するまでの間、前記通液性保持部で前記原料又は前記生成物を保持させる、請求項4に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項6】
前記反応工程の前に、チタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む混合粉末から、前記通液性保持部で保持可能な前記原料としての圧粉体を成形する原料成形工程をさらに含む、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項7】
前記通液性保持部の、少なくとも前記生成物と接触する部分が、酸化アルミニウムからなる、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項8】
前記反応工程を、反応槽内にて該反応槽内の密閉状態で行う、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項9】
前記フラックス分離工程で、フラックスが前記通液性保持部を通過した後、前記生成物を減圧雰囲気下で加熱し、前記生成物に残留したフラックスを分離させる、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項10】
前記チタン化合物が二酸化チタンを含み、前記アルカリ金属化合物が炭酸カリウムを含み、前記チタン酸アルカリ金属がチタン酸カリウムを含む、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項11】
前記フラックスが、塩化カリウム及び/又はモリブデン酸カリウムを含む、請求項1又は2に記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項12】
チタン酸アルカリ金属を製造する装置であって、
内部でフラックスを貯留させ、該フラックス中で原料のチタン化合物とアルカリ金属化合物を反応させて、チタン酸アルカリ金属を含む生成物を生成させる反応槽と、
フラックスからの前記生成物の分離に用いられ、フラックスが通過するとともに前記生成物を保持することが可能な通液性保持部と
を備える、チタン酸アルカリ金属の製造装置。
【請求項13】
前記通液性保持部が、フラックスを通すとともに前記生成物を通さない通液孔を有する容器状である、請求項12に記載のチタン酸アルカリ金属の製造装置。
【請求項14】
前記通液性保持部が、前記原料を保持することを可能に構成されてなる、請求項12又は13に記載のチタン酸アルカリ金属の製造装置。
【請求項15】
前記通液性保持部が、前記原料としてチタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む混合粉末の圧粉体を保持することを可能に構成されてなる、請求項14に記載のチタン酸アルカリ金属の製造装置。
【請求項16】
前記通液性保持部の、少なくとも前記生成物と接触する部分が、酸化アルミニウムからなる、請求項12又は13に記載のチタン酸アルカリ金属の製造装置。
【請求項17】
前記反応槽が、該反応層の内部を密閉状態に維持可能な蓋体を有する、請求項12又は13に記載のチタン酸アルカリ金属の製造装置。
【請求項18】
前記生成物を減圧雰囲気下で加熱し、前記生成物に残留したフラックスを分離させる減圧加熱炉をさらに備える、請求項12又は13に記載のチタン酸アルカリ金属の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チタン酸アルカリ金属を製造する方法及び装置に関するものであり、特に、製造コストの低減に資する技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルカリ金属は、高強度、耐熱性、耐摩耗性、高誘電性その他の優れた化学的ないし物理的特性を有し、自動車用摩耗材やセラミックコンデンサ等の他、エンジニアリングプラスチックで樹脂材料に配合する補強材として用いられ得る。
【0003】
チタン酸アルカリ金属を製造する方法としては、焼成法、溶融法、フラックス法等の各種の手法が知られている。このうち、フラックス法では、原料のチタン化合物とアルカリ金属化合物を、塩化カリウム等の溶剤としてのフラックス中で、たとえば900℃以上に加熱して反応させ、チタン酸アルカリ金属を生成させる。
【0004】
これに関連する技術としては、たとえば特許文献1~3に記載されたものがある。なかでも特許文献1には、「チタン源化合物と加熱により二価イオンの金属酸化物となる化合物及び/又は該金属のハロゲン化物との混合物を、フラックスの存在下に常圧非水条件下で加熱反応させること」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-164800号公報
【特許文献2】米国特許第2841470号明細書
【特許文献3】米国特許第3328117号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したフラックス法で原料の加熱に用いるフラックスは、ある程度多くの量が使用されるも、たとえば原料の加熱終了後にほぼ全量を蒸発させ、さらにその後に残留分を洗浄により除去していて回収していなかった。それ故に、チタン酸アルカリ金属の製造の都度、比較的多量の新たなフラックスが必要になり、このことが製造コストを増大させるという問題があった。
【0007】
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、フラックスを回収可能にして、製造コストを低減することができるチタン酸アルカリ金属の製造方法及び、チタン酸アルカリ金属の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、チタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む原料をフラックス中で加熱し、チタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、チタン酸アルカリ金属を含む生成物を生成させる反応工程と、前記生成物をフラックスから分離させるフラックス分離工程とを含み、前記フラックス分離工程にて、通液性保持部で前記生成物を保持させながら、フラックスが前記通液性保持部を通過するようにして、前記生成物をフラックスから分離させるというものである。
【0009】
前記通液性保持部は、フラックスを通すとともに前記生成物を通さない通液孔を有する容器状であることが好ましい。
【0010】
より具体的には、前記フラックス分離工程で、前記通液性保持部を、該通液性保持部に保持させた前記生成物とともに、フラックス中から持ち上げることにより、前記生成物をフラックスから分離させることが好適である。
【0011】
前記反応工程では、前記通液性保持部で前記原料を保持させながら、チタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させることができる。
【0012】
この場合、前記反応工程から、少なくとも前記フラックス分離工程でフラックスが前記通液性保持部を通過するまでの間、前記通液性保持部で前記原料又は前記生成物を保持させることができる。
【0013】
前記反応工程の前には、チタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む混合粉末から、前記通液性保持部で保持可能な前記原料としての圧粉体を成形する原料成形工程をさらに含むことが好ましい。
【0014】
前記通液性保持部の、少なくとも前記生成物と接触する部分が、酸化アルミニウムからなることが好ましい。
【0015】
前記反応工程は、反応槽内にて該反応槽内の密閉状態で行うことが好ましい。
【0016】
前記フラックス分離工程では、フラックスが前記通液性保持部を通過した後、前記生成物を減圧雰囲気下で加熱し、前記生成物に残留したフラックスを分離させることが好適である。
【0017】
前記チタン化合物は二酸化チタンを含み、前記アルカリ金属化合物は炭酸カリウムを含み、前記チタン酸アルカリ金属はチタン酸カリウムを含むことがある。
【0018】
前記フラックスは、塩化カリウム及び/又はモリブデン酸カリウムを含むことがある。
【0019】
この発明のチタン酸アルカリ金属の製造装置は、内部でフラックスを貯留させ、該フラックス中で原料のチタン化合物とアルカリ金属化合物を反応させて、チタン酸アルカリ金属を含む生成物を生成させる反応槽と、フラックスからの前記生成物の分離に用いられ、フラックスが通過するとともに前記生成物を保持することが可能な通液性保持部とを備えるものである。
【0020】
前記通液性保持部は、フラックスを通すとともに前記生成物を通さない通液孔を有する容器状であることが好ましい。
【0021】
前記通液性保持部は、前記原料を保持することを可能に構成されたものであること、特に、前記原料としてチタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む混合粉末の圧粉体を保持することを可能に構成されたものであることが好ましい。
【0022】
前記通液性保持部の、少なくとも前記生成物と接触する部分は、酸化アルミニウムからなることが好適である。
【0023】
前記反応槽は、該反応層の内部を密閉状態に維持可能な蓋体を有することが好ましい。
【0024】
この発明のチタン酸アルカリ金属の製造装置は、前記生成物を減圧雰囲気下で加熱し、前記生成物に残留したフラックスを分離させる減圧加熱炉をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
この発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法及び、チタン酸アルカリ金属の製造装置によれば、フラックスを回収可能にして、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の一の実施形態に係るチタン酸アルカリ金属の製造方法に用いることができる製造装置の反応槽及び通液性保持部を模式的に示す、反応槽の深さ方向に沿う断面図である。
図2図1の製造装置で通液性保持部を用いて生成物をフラックスから分離させる様子を模式的に示す断面図である。
図3】他の製造装置の反応槽及び通液性保持部を模式的に示す断面図である。
図4図3の製造装置で通液性保持部を用いて生成物をフラックスから分離させる様子を模式的に示す断面図である。
図5】さらに他の製造装置の反応槽及び通液性保持部を模式的に示す断面図である。
図6図1の製造装置が備えることができる減圧加熱炉を模式的に示す断面図である。
図7】実施例1で得られた粉末のSEM画像である。
図8】実施例2で得られた粉末のSEM画像である。
図9】参考例1で得られた粉末のSEM画像である。
図10】参考例2で得られた粉末のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、この発明の実施の形態について説明する。
この発明の一の実施形態に係るチタン酸アルカリ金属の製造方法は、チタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む原料をフラックス中で加熱し、チタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、チタン酸アルカリ金属を含む生成物を生成させる反応工程と、前記生成物をフラックスから分離させるフラックス分離工程とを含むものである。フラックス分離工程では、通液性保持部で生成物を保持させながら、フラックスが通液性保持部を通過するようにして、生成物をフラックスから分離させる。それにより、これまでは除去されていたフラックスの回収が可能になって再利用することができて、製造コストを低減することができる。
【0028】
(チタン酸アルカリ金属)
ここで製造しようとするチタン酸アルカリ金属は、チタン酸化合物の一種であって、一般式:M2O・nTiO2(式中、Mはアルカリ金属元素、nは1~12の整数)で表されるものである。チタン酸アルカリ金属に含まれるアルカリ金属として具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等が挙げられ、特に、カリウム、ナトリウム及びリチウムからなる群から選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0029】
チタン酸アルカリ金属には、6チタン酸ナトリウム(Na2Ti613)、8チタン酸ナトリウム(Na2Ti817)、4チタン酸カリウム(K2Ti49)、6チタン酸カリウム(K2Ti613)、8チタン酸カリウム(K2Ti817)、5チタン酸リチウム(Li4Ti512)等がある。なかでも、6チタン酸カリウム(K2Ti613)は、高強度、高剛性、耐薬品性、耐摩耗性をもち、自動車のブレーキパッドなど摩擦材や、絶縁材、ガスケット、プラスチック補強材など、多用途に用いられることから、この実施形態の方法では、主として6チタン酸カリウム(K2Ti613)を製造することが好ましい。
【0030】
この実施形態の方法により得られるチタン酸アルカリ金属を含む生成物は、たとえば鉱石由来等の珪素を含むことがあるが、珪素を含む場合であっても、その珪素含有量は、たとえば3質量%以下、好ましくは2質量%以下である。また、当該生成物は、たとえば鉱石由来等の鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)からなる群から選択される少なくとも一種の元素をさらに含むことがある。これらの元素の含有量は合計、たとえば4質量%以下、典型的には3質量%以下である。
【0031】
チタン酸アルカリ金属は、エンジニアリングプラスチックの樹脂材料を劣化させ得る塩素の含有量が、0.1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
チタン酸アルカリ金属は繊維状粒子であることが好ましい。このような繊維状粒子のチタン酸アルカリ金属は、エンジニアリングプラスチックの補強材として用いた場合に樹脂材料を有効に強化するべく有効に機能すると考えられる。なお、この実施形態では、フラックス法を採用することとしており、それにより製造されるチタン酸アルカリ金属の粒子は、繊維状になりやすい傾向がある。
【0033】
より具体的には、チタン酸アルカリ金属の粒子の短径は、好ましくは0.05μm~1.00μm、より好ましくは0.10μm~0.50μmであり、長径は、好ましくは1.00μm~100.00μmであり、より好ましくは5.00μm~50.00μmである。チタン酸アルカリ金属の粒子の短径が短すぎる場合は、繊維状粒子が容易に折れ樹脂強化能に影響を及ぼすだけでなく、粉砕されたチタン酸アルカリ金属の微粉が空気中に分散する危険性がある。また、チタン酸アルカリ金属の粒子の短径が長すぎる場合は、繊維状粒子としての形状が維持され難くなる。チタン酸アルカリ金属の粒子の長径が短すぎる場合は、樹脂強化能に劣る可能性があり、また、長すぎる場合は嵩が増して取り扱いが難しくなる。
【0034】
チタン酸アルカリ金属の粒子の上記短径及び長径はそれぞれ、粒度・形状分布測定器を用いて、1万個以上のチタン酸アルカリ金属の粒子の短径d及び長径Lの各平均値として求める。ここで長径Lは、チタン酸アルカリ金属の粒子の投影像の輪郭線上の任意の二点間の最大長さを意味し、短径dは、上記の長径Lに垂直な方向の最小長さを意味する。粒度・形状分布測定器としては、株式会社セイシン企業製のPITA-3型を用いることができる。
【0035】
具体的には、粒度・形状分布測定器(株式会社セイシン企業製、PITA-3型)を用いて、1万個以上の各チタン酸アルカリ金属の粒子の投影像で、その投影像の輪郭線上の任意の二点間の最大長さを長径Lとし、前記長径に垂直な方向の最小長さを短径dとして、繊維状粒子を特定する。ここでは、L/d≧3を満たすものを繊維状粒子とする。そして、粒度・形状分布測定器を用いて、上記のようにして特定された繊維状粒子の投影像の周長を測定し、その周長と同じ円周を有する円を断面とする球の体積と、チタン酸アルカリ金属(チタン酸カリウム等)の真密度の理論値から、各繊維状粒子の質量を求める。その後、各繊維状粒子の質量を積算して繊維状粒子の合計質量を算出し、この繊維状粒子の合計質量が、測定に使用したチタン酸アルカリ金属の粒子の全質量に占める割合を、繊維状粒子の含有割合とする。
【0036】
チタン酸アルカリ金属は、水に添加して水スラリーとした場合に、当該水スラリーが中性付近のpHになることが望ましい。この場合、チタン酸アルカリ金属をエンジニアリングプラスチックの補強材として用いたときに、当該チタン酸アルカリ金属による樹脂材料の劣化が抑制されるからである。具体的には、上記の水スラリーのpHは、5.5~8.5であることが好適である。
【0037】
(原料)
この実施形態の方法で用いる原料には、チタン化合物及びアルカリ金属化合物が含まれる。
【0038】
チタン化合物としては、たとえば、二酸化チタン、亜酸化チタン、オルトチタン酸もしくはその塩、メタチタン酸もしくはその塩、水酸化チタン及び、ペルオクソチタン酸もしくはその塩等からなる群から選択される一種を、又は二種以上を組み合せて用いることができる。これらのなかでも二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンはアルカリ金属化合物との混合性及び反応性に優れ、また比較的安価であることによる。二酸化チタンを用いる場合、その結晶形がルチル型またはアナターゼ型であるものが好ましい。
【0039】
チタン化合物は一般に、粒子状、なかでも、顆粒を含む凝集体又は造粒体の形態で用いられる。なお、この凝集体とは、一次粒子が凝集した二次粒子や、二次粒子が凝集した三次粒子、それ以上の次数の粒子等の粗大粒子が形成されたものを意味する。特に二酸化チタンの凝集体又は造粒体が好適である。
チタン化合物の平均粒子径は、アルカリ金属化合物との均一な混合を効率的に行うため、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm~10.0mm、さらに好ましくは0.5mm~1.0mmとする。但し、平均粒子径が10.0mmを超える大きな凝集体又は造粒体であっても、解砕ないし粉砕により平均粒子径を10.0mm以下にして用いることは可能である。なおここで、平均粒子径は、JIS K0069の化学製品のふるい分け試験方法に従って測定した値を意味する。後述するアルカリ金属化合物の平均粒子径についても同様である。
【0040】
チタン化合物の凝集体としては、硫酸チタンや硫酸チタニルから製造される硫酸法酸化チタン、四塩化チタンを気相で酸化もしくは加水分解して製造される気相法酸化チタン、又は、四塩化チタン水溶液もしくはアルコキシチタンを中和もしくは加水分解して製造されるもの等を使用することができる。また、チタン化合物の凝集体に代えて、チタン化合物の造粒体を用いることもできる。チタン化合物の造粒体は、市販の微粒酸化チタンをスプレードライにより造粒したり、バインダーを添加して混練して造粒したりすること等により得ることができる。
【0041】
アルカリ金属化合物は、目的とするチタン酸アルカリ金属に応じて、カリウム化合物、ナトリウム化合物およびリチウム化合物からなる群から選択される少なくとも一種とすることが好ましい。より具体的には、カリウム、ナトリウム及び/又はリチウムの酸化物、炭酸塩、水酸化物又はシュウ酸塩等とすることができる。例えば、目的とするチタン酸アルカリ金属がチタン酸カリウムである場合には、アルカリ金属化合物としては炭酸カリウムが特に好適である。
【0042】
アルカリ金属化合物は粒子状のものとすることができる。アルカリ金属化合物の平均粒子径は、取扱いが容易なことから、好ましくは0.1mm~10.0mm、より好ましくは0.5mm~10.0mm、さらに好ましくは0.5mm~1.0mmとする。
【0043】
原料に含ませるチタン化合物とアルカリ金属化合物との比率に関し、例えば、合成しようとするチタン酸アルカリ金属がチタン酸カリウムである場合、原料中のカリウム原子のモル数に対する原料中のチタン原子のモル数のモル比が2.4~3.6、さらには2.6~3.4となる比率とすることが好適である。
【0044】
なお、原料には、必要に応じて、粉末状の金属チタン及び/又は水素化チタンを、たとえばチタン化合物中のチタン原子1モルに対して0.01モル~0.20モルで含ませることもできる。この場合、上述したチタン化合物とアルカリ金属化合物との比率におけるチタン原子のモル数には、このような金属チタン又は水素化チタン中のチタン原子のモル数も含めて調整する。また原料には、マグネシウム化合物やバリウム化合物等のアルカリ土類金属化合物を含ませてもよい。また、原料は、チタン酸アルカリ金属の生成に影響を及ぼさない程度の微量で、Fe23、Al23、SiO2、CeO2、WO3、ZrO2、Zr(CO32、CaCO3等の無機酸化物その他の化合物を含ませることもある。
原料は、固形分換算したときに、チタン化合物およびカリウム化合物を、85質量%~100質量%、さらには90質量%~100質量%で含むものとすることが好ましい。
【0045】
(原料成形工程)
原料成形工程では、上記のチタン化合物及びアルカリ金属化合物を含む混合粉末を成形し、ペレット状等の圧粉体を成形する。これにより、後述の反応工程及びフラックス分離工程で、当該圧粉体としての原料及び、該原料から生成された生成物を通液性保持部で保持しやすくなり、生成物をフラックスから更に容易に分離させることができるようになる。
【0046】
但し、上述した原料が、後述する反応工程で通液性保持部に保持させることができるものであれば、原料成形工程を行わずに、当該原料をそのまま反応工程で用いることもできる。この場合、原料成形工程は省略することができる。
【0047】
原料成形工程を行う場合、チタン化合物の粉末及びアルカリ金属化合物の粉末を含む混合粉末を、プレスや押出成形機等を用いて、圧粉体に成形する。圧粉体は、後述する通液性保持部の通液孔等を通過せずに通液性保持部で保持される程度の大きさとすることができ、その形状も特に問わない。
【0048】
(反応工程)
反応工程では、たとえば図1に示すような、チタン酸アルカリ金属の製造装置(以下、単に「製造装置」ともいう。)の反応槽1内にて、原料51をフラックス61中で加熱し、当該原料51に含まれるチタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させる。これにより、チタン酸アルカリ金属を含む生成物52が生成する(図2参照)。
【0049】
図1に例示する反応槽1は、内部に溶融状態のフラックス61を貯留させることが可能な底付き筒状等の槽本体部2と、槽本体部2の開口部分を覆う蓋体3と、槽本体部2の周囲に設けられ、反応槽1の内部を加熱することができるヒーター4とを有するものである。このような反応槽1を用いることで反応工程を行うことができるが、反応槽の構成は図示のものに限らない。
【0050】
反応工程では、原料51をフラックス61中にて、800℃~1150℃の温度で1時間~48時間にわたって加熱することが好ましい。加熱温度が低すぎると、反応が進行しない可能性があり、加熱温度が高すぎると、フラックスの揮散が激しくなることが懸念される。加熱時間が短い場合は、十分な結晶成長が見込めないおそれがある。加熱時間が長い場合は、十分に結晶成長させることができるが、コスト面を考慮すると長時間の加熱は工業的に望ましくない。
【0051】
反応槽1の蓋体3は、反応槽1の内部が密閉状態に維持されるように閉じることができる構造とすることが好適である。この場合、反応工程を反応槽1内の密閉状態で行うことができる。それにより、反応工程でヒーター4により加熱されるフラックス61の蒸発、それによるフラックス61のロスが抑制されるので、反応工程後に、より多くのフラックス61を再利用するべく回収することができる。反応工程では、反応槽1の内部の雰囲気は、フラックス61やその他の原材料に影響を及ぼすものでなければ特に限定されず、例えば、大気や不活性ガスを適用することができる。
【0052】
反応工程で用いるフラックス61は、得られるチタン酸アルカリ金属に応じて、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属のフッ化物のほか、モリブデン酸化物、アルカリ金属のモリブデン酸塩、タングステン酸化物、アルカリ金属のタングステン酸塩、アルカリ金属の酸化物、フッ化鉛、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化バナジウムなどから選択される一種を、あるいは二種以上の混合物を使い分けて用いることができる。たとえば、チタン酸カリウムを得る場合は、フラックス61としては、塩化カリウム(KCl)及び/又はモリブデン酸カリウム(K2MoO4)を含むものとすることができる。
【0053】
図示の製造装置は、上記の反応槽1の他、溶融したフラックス61は通過する一方で生成物52は保持することが可能な通液性保持部11をさらに備える。好ましくは、通液性保持部11は、原料51をも保持することが可能に構成されたものとする。なお、図示の通液性保持部11は、反応槽1の内外に延びる支持ロッド12に連結されている。この支持ロッド12は、主にフラックス分離工程で通液性保持部11をフラックス61中から持ち上げる際に用いられる。
【0054】
この実施形態では、原料51を通液性保持部11に保持させつつ、その通液性保持部11とともにフラックス61中に浸漬させ、反応工程を行う。反応工程では、通液性保持部11で原料51を保持させながら、原料51中のチタン化合物とアルカリ金属化合物とを反応させる。これにより生成されたチタン酸アルカリ金属を含む生成物は、引き続き通液性保持部11に保持されて、次に述べるフラックス分離工程が行われる。
【0055】
(フラックス分離工程)
反応工程後、反応工程で生成されたチタン酸アルカリ金属を含む生成物52を、フラックス61から分離させるフラックス分離工程を行う。
【0056】
このとき、通液性保持部11を用いて、通液性保持部11で生成物52を保持させながら、フラックス61が通液性保持部11を通過するようにする。これにより、生成物52からフラックス61の大部分が分離し、フラックス61が回収可能になる。回収されたフラックス61は、再度のチタン酸アルカリ金属の製造で使用することが可能である。その結果として、チタン酸アルカリ金属の製造の度に、新たなフラックスが必要になることによる製造コストの増大を抑えることができる。
【0057】
フラックス分離工程での通液性保持部11の使用は、たとえば図2に示すようにして行うことができる。すなわち、反応工程の終了後、反応槽1の蓋体3を開き、支持ロッド12を用いて通液性保持部11を、図2に矢印で示すように、フラックス61中から反応槽1の外部まで持ち上げる。反応工程を経たことにより、通液性保持部11で保持されているものは原料51から生成物52になっているところ、通液性保持部11を持ち上げると、それに保持された当該生成物52も反応槽1の外部まで持ち上げられる。この一方で、フラックス61は通液性保持部11を通過するので、反応槽1の内部に留まる。これにより、生成物52をフラックス61から容易に分離させることができる。反応槽1の内部に留まったフラックス61は、反応槽1の内部に貯留させたまま、又は反応槽1の内部から回収して、再度使用することができる。反応槽1の内部でのフラックス61の貯留を維持し、次の製造を行うと、反応槽1内へのフラックスの添加が不要になるので、製造工程を簡略化することができる。
【0058】
通液性保持部11は、図1及び2に示すように、底部等に複数個、特に多数個の通液孔が形成された籠状、袋状もしくは皿状その他の容器状とすることが好ましい。図示の通液性保持部11は、底部に通液孔が設けられた複数個ないし複数段の容器部分を有するものであり、それらの各容器部分内に複数個の原料51又は生成物52が保持されている。通液性保持部11に設けられた通液孔は、フラックス61を通すが生成物52や原料51を通さない寸法ないし形状とすることができる。
【0059】
但し、通液性保持部は、生成物52を保持することができ、かつフラックス61が通過するものであれば、容器状のものに限らない。たとえば、図3及び4に示す他の製造装置では、反応槽21の内部で深さ方向の途中に、通液孔を有する板状もしくはシート状又はメッシュその他の網状等の通液性保持部11aが、反応槽21の内面に固定されて取り付けられている。また、反応槽21の下部には、フラックス収容槽25が設けられており、反応槽21の内部とフラックス収容槽25の内部とは、反応槽21の底部に設けた開閉可能な連通穴26を介して接続されている。その他の構成については、図1、2に示すものと実質的に同様とすることができ、ここでの再度の説明は省略する。
【0060】
図3、4に示す製造装置では、反応槽21の底部の連通穴26を閉じた状態で、反応工程を行った後、フラックス分離工程で連通穴26を開き、図4に矢印で示すように、連通穴26を介してフラックス61を自重により、反応槽21の内部からフラックス収容槽25の内部に移す。このとき、通液性保持部11a上の生成物52は通液性保持部11aで保持されるが、フラックス61は通液性保持部11aを通過して、連通穴26より反応槽21の内部から流出する。この製造装置でも、生成物52をフラックス61から有効に分離させることができる。
【0061】
図5に示すさらに他の製造装置は、槽本体部32の底部としての通液性保持部11bが、反応槽31の内部を中央の連通穴36側に向かうに従って次第に深くする傾斜面を有し、連通穴36が生成物52の通過を許容しない寸法であって通液孔として機能することを除いて、図3、4に示すものとほぼ同様の構成を有するものである。槽本体部32の底部を構成する通液性保持部11bでは、生成物52は保持されるが、フラックス61は、当該通液性保持部11bの傾斜面上を流れて、最も深い位置にある中央の通液孔に相当する連通穴36を通過する。
【0062】
上述した通液性保持部11、11a又は11bを備える製造装置のうち、ここでは、主に図1、2に示す通液性保持部11を備える製造装置について説明するが、当該製造装置について述べる構成はそれ単独で又は複数を組み合わせて、他の製造装置にも適用できることがある。
【0063】
通液性保持部11は、少なくともフラックス61と反応性が低い材質で構成することができる。具体的には、ニッケル(Ni)製又は酸化アルミニウム(Al23)製の通液性保持部11が好適に用いられる。なかでも、酸化アルミニウムは、フラックス61のみならず、原料51のチタン化合物及びアルカリ金属化合物ならびに、生成物52のチタン酸アルカリ金属との反応性も低いことから、通液性保持部11の、少なくとも生成物52や原料51と接触する部分は、酸化アルミニウムからなることが好ましい。それにより、ニッケルとの反応に起因する黄色ないし深緑色の化合物(K0.8Ni0.4Ti3.68など)ではなく、白色のチタン酸カリウムが生成され得る。
【0064】
他方、原料51や生成物52と接触しない槽本体部2や蓋体3の少なくとも内面部分の材質は、フラックス61と反応性が低いものであればよい。そのような内面部分は、ニッケル(Ni)又は酸化アルミニウム(Al23)等で構成することがある。
【0065】
ところで、フラックス分離工程にて、通液性保持部11で生成物52を保持させながら、フラックス61が通液性保持部11を通過するようにした後、生成物52には、フラックスが付着して残留することがある。生成物52に残留したフラックスは、生成物52を通液性保持部11から取り出して洗浄することにより除去することも可能である。なおこの場合は、反応工程から、フラックス分離工程でフラックスが通液性保持部11を通過するまでの間、通液性保持部11で原料51又は生成物52が保持されることになる。
【0066】
一方、生成物52に残留したフラックスは、図6に例示するように、減圧雰囲気下での生成物52の加熱によって生成物52から分離させて回収することが好ましい。このことについて詳説すれば、次のとおりである。
【0067】
図2に示すようにして、通液性保持部11を生成物52とともにフラックス61中から持ち上げた後、生成物52を通液性保持部11で更に継続して保持させた状態で、通液性保持部11及び生成物52を反応槽1から、図6に示す減圧加熱炉41に移送する。減圧加熱炉41は、たとえば、内部に生成物52及び通液性保持部11が収容される底付き筒状の炉本体部42と、炉本体部42の開口部分を密閉して覆うことができる蓋体43と、減圧加熱炉41の内部を加熱するヒーター44とを有する。反応槽1から移送された通液性保持部11及び生成物52は、減圧加熱炉41の蓋体43が開いた状態で炉本体部42の開口部分から炉本体部42内に配置され、蓋体43を閉じて密閉された減圧加熱炉41の内部に収容される。
【0068】
ここでは、減圧加熱炉41の近傍に、冷却器ないし凝縮器としてのコンデンサ45が設けられており、減圧加熱炉41の内部とコンデンサ45の内部とが連通管46により連結されている。また、コンデンサ45は吸引管47により、図示しない真空ポンプに接続される。
【0069】
このような減圧加熱炉41により、生成物52に残留したフラックスを生成物52から分離させるには、ヒーター44により内部の生成物52を加熱しつつ、真空ポンプを用いて吸引管47、コンデンサ45及び連通管46を介して、減圧加熱炉41の内部の真空引きを行う。それにより、加熱で蒸発したフラックスは、連通管46を経てコンデンサ45の内部に至り、そこで冷却されて捕集される。コンデンサ45で捕集されたフラックスは、回収されて再利用することが可能である。
【0070】
この際の減圧加熱炉41での加熱温度は、たとえば30℃~3000℃とすることがあり、減圧加熱炉41の内部の真空度は、10-12Pa~105Paとすることができる。
【0071】
なお、図3、4の製造装置や図5の製造装置では、反応槽21、31自体を、上述したような減圧加熱炉として用いることが考えられる。この場合、フラックス61を反応槽21、31からフラックス収容槽25、35に移した後、連通穴26、36を閉じるとともに、図示は省略するが反応槽21、31をコンデンサと接続し、反応槽21、31の内部の生成物52の、減圧雰囲気下での加熱を行う。この場合も、生成物52に残留したフラックスが当該コンデンサで捕集されて回収される。
【0072】
上述したようにしてフラックス分離工程を行うことにより、反応工程で使用したフラックスを有効に回収することが可能になり、チタン酸アルカリ金属の製造コストを大きく低減することができる。
【実施例0073】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0074】
(実施例1)
チタン化合物として二酸化チタン(Cosmo Chemical社製、平均粒子径0.6μm)を46.12g、アルカリ金属化合物として炭酸カリウム(Unid社製)を13.89g秤量し、アルミナ製の乳鉢で10分以上粉砕混合して混合物の原料を得た。このようにして得られた原料を粉末成型金型(φ20mm)に充填し、1t圧をかけペレット(圧粉体)を6個作製した。
【0075】
支持ロッドを備えた円筒型アルミナ籠(品川ファインセラミックス社製)としての通液性保持部に、上記のペレットを入れた。そして、加熱設備にセットして乾燥させた円筒型アルミナ容器(容量5リットル)の反応槽内に、上記のようにペレットを入れた通液性保持部を挿入し、その上部から塩化カリウム(フラックス)を3000g投入した。通液性保持部の支持ロッドを、当該通液性保持部が塩化カリウムに十分埋まりかつ通液性保持部に触れない位置に合わせて、反応槽の蓋体に固定した。アルミナ保護管に入れた熱電対をペレット近くに配置し、反応槽内を真空引きした後にアルゴン雰囲気に置換した。次いで、反応槽を加熱し、1℃/minの昇温で1060℃に到達させて、その温度を8時間保持し、その後800℃になるまで自然降温を行った。800℃に達した際に、支持ロッドを用いて通液性保持部を加熱容器から引き上げ、塩化カリウムが充填された反応槽から、ペレットを通液性保持部とともに取り出して分離させた。その後、自然冷却してからペレットを水洗し、粉砕処理を行い、白色粉末を得た。
【0076】
得られた白色粉末に対し、粉末X線回折装置(X線源:CuKα線、パナリティカル社製、型番:X‘Part-ProMPD)を用いて組成分析を行い、当該白色粉末がチタン酸カリウム(K2Ti613)であることを確認した。
【0077】
また、得られた白色粉末について、粒度・形状分布測定器(株式会社セイシン企業製、PITA-3型)を用いて、1万個以上の粒子の投影像で、その投影像の輪郭線上の任意の二点間の最大長さ(長径L)と、前記長径に垂直な方向の最小長さ(短径d)を測定し、長径L及び短径dの各平均値を表1に示した。
また、得られた白色粉末の走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)による観察結果を図7に示す。これらの結果により、当該白色粉末の粒子の形状が、繊維状であることが確認できた。
【0078】
また、得られた白色粉末3gを水100mLに添加して水スラリーとした場合のpHを測定し、その結果を表1に示した。
【0079】
(実施例2)
使用した基材のうち、通液性保持部としてアルミナ籠の代わりにニッケル籠を用いたこと以外は実施例1と同様にして、黄色ないし深緑色の粉末を得た。
【0080】
得られた黄色ないし深緑色の粉末に対し、実施例1と同様にして組成分析を行い、当該粉末がチタン酸カリウム(K2Ti613)と、ニッケルを含有するチタン酸カリウム(K0.8Ni0.4Ti3.68)との混合物であることを確認した。
また、得られた粉末に対し、実施例1と同様にして各物性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
なお、表1の参考例1および参考例2は、市販のチタン酸カリウム(ともに東邦チタニウム株式会社製)の公知の物性を示したものである。
【0083】
また、実施例1および実施例2において、反応槽から回収した塩化カリウムは、フラックスとして再度使用可能であった。よって、本発明は、チタン酸アルカリ金属の製造コストを低減できることが分かった。
【符号の説明】
【0084】
1、21、31 反応槽
2、22、32 槽本体部
3、23、33 蓋体
4、24、34 ヒーター
11、11a、11b 通液性保持部
12 支持ロッド
25、35 フラックス収容槽
26、36 連通穴
41 減圧加熱炉
42 炉本体部
43 蓋体
44 ヒーター
45 コンデンサ
46 連通管
47 吸引管
51 原料
52 生成物
61 フラックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10