(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172369
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20231129BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20231129BHJP
B60Q 1/24 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B66F9/24 S
B66F11/04
B60Q1/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084109
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】511044401
【氏名又は名称】有限会社フューチャーネット
(74)【代理人】
【識別番号】100130007
【弁理士】
【氏名又は名称】垣木 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】上 清文
【テーマコード(参考)】
3F333
3K339
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3K339AA18
3K339BA03
3K339BA07
3K339BA08
3K339BA09
3K339BA22
3K339BA26
3K339CA30
3K339DA01
3K339EA05
3K339FA04
3K339GB30
(57)【要約】
【課題】夜間作業の際に作業員が安全にバケットに対して乗降することができる高所作業車を提供する。
【解決手段】車両本体10と、車両本体10の作業面13を水平に保持するアウトリガー14と、伸縮、起伏及び旋回可能なブーム21と、ブーム21に支持されたバケット22と、ブーム21の伸縮、起伏及び旋回動作を制御するブーム作動制御装置23を含む高所作業装置20を備えた高所作業車10において、バケット22に対して作業員が乗降するための複数のステップ31~37が車両本体10の側面又は後端面及び作業面13に設けられており、各ステップ31~37にはそれぞれ1又は複数の滑り止め41~47bが貼付され、各ステップ31~37の踏面及び滑り止めを照明装置51~57により略鉛直方向又は略水平方向から照射する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車両本体と、
前記車両本体の前後左右に設けられ、前記車両本体の作業面を水平に保持する複数のアウトリガーと、
前記複数のアウトリガーの作動を制御するアウトリガー作動制御装置と、
前記車両本体に設けられ、伸縮、起伏及び旋回可能なブームと、前記ブームに支持されたバケットと、前記ブームの伸縮、起伏及び旋回動作を制御するブーム作動制御装置を含む高所作業装置と、
前記車両本体の側面又は後端面及び前記作業面に設けられ、前記バケットに対して作業員が乗降するための複数のステップと、
前記複数のステップの踏面を略鉛直方向又は略水平方向から照射する複数の照明装置と、を備えたことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記複数のステップは、略鉛直方向に重なるように位置する少なくとも2段のステップを含み、前記複数の照明装置は、上段に位置するステップの裏面に設けられ、下段に位置するステップの踏面を略鉛直方向から下向きに照射する照明装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記車両本体の前記作業面には前記複数のステップの一部を構成する機材ボックスが設けられており、前記複数の照明装置の一部は、前記機材ボックスのエッジ部分に設けられ、前記複数のステップの一部を略水平方向から照射する照明装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記複数のステップには、それぞれ前記複数の照明装置により照明されたときに照明光とは異なる波長の蛍光を放出する蛍光材料を含む樹脂製の滑り止めが貼付されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の高所作業車。
【請求項5】
鉛直方向に隣接する2つのステップの踏面に貼付されている滑り止めの材料の樹脂は、異なる波長の蛍光を放出する蛍光材料を含むことを特徴とする請求項4に記載の高所作業車。
【請求項6】
1つのステップの踏面に複数の滑り止めが貼付されている場合、同一ステップ上の滑り止めはすべて同一の蛍光材料を含む樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の高所作業車。
【請求項7】
前記複数のステップに貼付されている滑り止めは、略水平な踏面から鉛直方向に回り込むように連続的に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車、特に作業員がバケットに対して乗降する際のステップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば台風などの災害により停電などが発生した場合に、停電などを復旧させるために夜間であっても高所作業が行なわれる。夜間作業において、高所作業車のアウトリガーを作動させて車輪を浮かせて高所作業車を保持した状態で作業員がバケットに乗り込む場合、例えばヘルメットに取り付けられた小型の照明装置の光を頼りに、地上からステップ伝いに高所作業車の上に昇り、さらにブーム伝いに高所作業車の上を移動してバケットに乗り込む必要がある。また、作業員がバケットから降りる場合、その逆のルートを辿って地上に降りなければならない。ところで、高所作業車の上はブームの旋回動作と干渉しないようにするために手すりなどは設けられていない。そのため、作業員は高所作業車の車体やブームなどに手を掛けながら慎重にステップを昇降しなければならない。作業員がバケットに乗り込む場合は、作業員の体よりも高い位置に高所作業車の車体の一部やブームあるいはバケットが存在するため、それらに手を掛けることができ、比較的安全に移動することができる。しかしながら、作業員がバケットから降りる際には、作業員の体よりも高い位置に手を掛けることはできるものがほとんど存在せず、作業員が足を踏み外して高所作業車から転落する事故が多発している。
【0003】
特許文献1には、農作業用のトラクタの事例ではあるが、ステップの中央部付近に貫通穴を設け、小型の電球(いわゆる豆電球)を発光させてステップの上下方向に照明光を照射することが提案されている。このような農作業用車両の場合は、ステップの近くに手すりなどが設けられているため、ステップの中央部付近で小型の電球を発光させるだけでも十分にその目的を達成することができる。ところが、高所作業車の場合は鉛直方向及び水平方向に複数のステップが存在する、すなわち移動距離が長い上に手すりなどが設けられていないため、複数の点光源が発光していても、夜間作業における作業員の乗降に関しては、さほど効果は期待できない。
【0004】
特許文献2には、フォークリフトやショベルカーなどの前部ピラーに、夜間時の走行等においては車両の前方を照らし、レバー操作時には運転席を含む乗降口付近を照らすことができるように、投光面の向きを切り換えることができる照明装置を設けることが提案されている。このような照明装置によれば、作業員が車両に乗り込む際には、乗降口のステップが照らされるので有効であるが、作業員が車両から降りるときには、照明装置が作業員の背後にあるため、乗降口のステップが作業員の陰に入るため降車時には有効ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-31712号公報
【特許文献2】特開2005-319934号公報(特許第4345566号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、夜間作業の際に作業員が安全にバケットに対して乗降することができる高所作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る高所作業車は、
自走可能な車両本体と、
前記車両本体の前後左右に設けられ、前記車両本体の作業面を水平に保持する複数のアウトリガーと、
前記複数のアウトリガーの作動を制御するアウトリガー作動制御装置と、
前記車両本体に設けられ、伸縮、起伏及び旋回可能なブームと、前記ブームに支持されたバケットと、前記ブームの伸縮、起伏及び旋回動作を制御するブーム作動制御装置を含む高所作業装置と、
前記車両本体の側面又は後端面及び前記作業面に設けられ、前記バケットに対して作業員が乗降するための複数のステップと、
前記複数のステップの踏面を略鉛直方向又は略水平方向から照射する複数の照明装置と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成において、前記複数のステップは、略鉛直方向に重なるように位置する少なくとも2段のステップを含み、前記複数の照明装置は、上段に位置するステップの裏面に設けられ、下段に位置するステップの踏面を略鉛直方向から下向きに照射する照明装置を含むように構成されていてもよい。
【0009】
また、前記車両本体の前記作業面には前記複数のステップの一部を構成する機材ボックスが設けられており、前記複数の照明装置の一部は、前記機材ボックスのエッジ部分に設けられ、前記複数のステップの一部を略水平方向から照射する照明装置を含むように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記複数のステップには、それぞれ前記複数の照明装置により照明されたときに照明光とは異なる波長の蛍光を放出する蛍光材料を含む樹脂製の滑り止めが貼付されているように構成されていてもよい。
【0011】
さらに、鉛直方向に隣接する2つのステップの踏面に貼付されている滑り止めの材料の樹脂は、異なる波長の蛍光を放出する蛍光材料を含むように構成されていてもよい。
【0012】
さらに、1つのステップの踏面に複数の滑り止めが貼付されている場合、同一ステップ上の滑り止めはすべて同一の蛍光材料を含む樹脂材料で形成されているように構成されていてもよい。
【0013】
前記複数のステップに貼付されている滑り止めは、略水平な踏面から鉛直方向に回り込むように連続的に設けられているように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、複数のステップの踏面及び踏面に滑り止めが貼付されている場合はその滑る止めが照明装置によって略水平方向又は略鉛直方向から照明されるので、夜間作業の際に作業員がバケットに対して安全に乗降することができる。特に、作業員がバケットから降りる際でも、ステップの踏面が作業員の陰によって視認しにくくなることもなく、転落事故の可能性を低減することができる。
【0015】
また、ステップの踏面に貼付されている滑り止めの樹脂材料に蛍光材料が含まれている場合、材料樹脂に含まれる蛍光材料が照射された照明光により励起され、照明光の波長とは異なる波長の蛍光を放出して、滑り止めのほぼ全体が発光するので、作業員は各ステップの踏面の幅や広さを容易に認識することができ、発光している滑り止め部分を踏んで移動すればバケットに対して安全に乗降することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る高所作業車の全体の構成を示す平面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る高所作業車の他の構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る高所作業車について、図面を参照しつつ説明する。
図1は高所作業車1の全体構成を示す平面図、
図2はその側面図、
図3はその背面図である。これらの図は、後述するブーム21が収納位置(又は最下降位置)まで下降された高所作業を行う前又は後の状態を示している。
【0018】
この高所作業車1は自走可能であり、運転台11及びエンジン(図示せず)や車輪12などが取り付けられた車両本体10と、車両本体10の作業面13に設けられた高所作業装置20などで構成されている。高所作業装置20は、伸縮、起伏及び旋回可能なブーム21と、ブーム21に支持されたバケット22と、ブーム21の伸縮、起伏及び旋回動作を制御するブーム作動制御装置23などで構成されている。この構成例では、ブーム作動制御装置23が車両本体10の後端側に配置され、バケット22が運転台11の上部に配置されている。また、作業員が車両本体10の作業面に対して昇降するためのステップは車両本体10の後端面に設けられている。
【0019】
図1に示すように、ブーム作動制御装置23は、車両本体10の後端近傍で、かつ、車体の幅方向の中央部に設けられている。一方、バケット22は、運転台11の上部で、かつ、ブーム21の先端部近傍21aにおいて片持ち梁状に旋回自在に保持されている。ブーム21が収納位置(又は最下降位置)まで下降された状態では、バケット22及びブーム21の先端部近傍21aが車体幅以内に収められていなければならないため、ブーム21は平面視で斜めになっている。また、車両本体体10の前後左右には、車両本体10を持ち上げて作業面13を水平に保持するための4つのアウトリガー14及びアウトリガー作動制御装置15が設けられている。
【0020】
高所作業車1は、高所作業に際して作業員がバケット22に対して乗降するための複数のステップ31~37を備えている。高所作業を行う場合、まずアウトリガー作動制御装置15を駆動して、アウトリガー14を伸ばし、車輪12を上方に持ち上げ、車両本体10の作業面13を水平に保持する。この状態で作業員が車両本体10の作業面13に昇るために、高所作業車1はその後端面に複数(例えば3段)のステップ31~33を備えている。第1ステップ31は、車両本体10の後端面近傍の底面から下向きに突出するように設けられている。第2ステップ32は、車両本体10の後端面近傍の側面から水平方向に突出するように設けられている。また、車両本体10の後端面近傍に設けられたテールライトボックス16の上面が第3ステップ33として機能する。
【0021】
また、車両本体10の作業面13には、ブーム21及びブーム作動制御装置23の旋回動作と干渉しない位置に、例えば工具や作業用の機材などを収納する複数の機材ボックス18及び19などが設けられている。上段の機材ボックス19は下段の機材ボックス18の上に取り付けられており、これらの機材ボックス18及び19の上面も作業員がバケット22に対して乗降する際の第4ステップ34及び第5ステップ35として機能する。なお、第3ステップ33と第4ステップ34との間には、ブーム21及びブーム作動制御装置23の旋回動作と干渉しない位置に手摺17が設けられているが、第4ステップ34と第5ステップ35の間や機材ボックス18及び19の上面には手摺は設けられていない。さらに、運転台11の天井部には、第6ステップ36が設けられている。また、必要に応じて、バケット22の近傍のブーム21の上面も第7ステップ37として機能する。
【0022】
上記各ステップ31~37の踏面には、それぞれ1又は複数の滑り止めが貼付されている。まず、
図3に示すように、第1ステップ31ないし第3ステップ33には、それぞれ1つの滑り止め41~43が貼付されている。各滑り止め41~43は、それぞれ各ステップ31~33の踏面に沿って水平方向に貼付されるとともに、鉛直面に沿って鉛直方向に回り込むように(又はオーバーハングするように)貼付されている。第1ステップ31の踏面の鉛直上方、例えば車両本体10の底面などには、第1ステップ31の踏面及びその上に貼付された滑り止め31を鉛直方向から下向きに照射する第1照明装置51が設けられている。また、第2ステップ32及び第3ステップ33に隣接するテールライトボックス16及びブーム作動制御装置23の駆動部23aの側壁には、それぞれ第2ステップ32及び第3ステップ33の踏面及びその上に貼付された滑り止め32及び33を水平方向から照射する第2照明装置52及び第3照明装置53が設けられている。
【0023】
一方、
図1又は
図2に示すように、機材ボックス18及び19の上面の第4ステップ34及び第5ステップ35は車両本体10の前後方向に細長いので、それぞれのステップの踏面について複数の滑り止め44a~44d及び45a~45eが貼付されている。第4ステップ34及び第5ステップ35のエッジ部に貼付されている滑り止め44a及び45aも、それぞれ機材ボックス18及び19の側壁(鉛直面)に沿って鉛直方向に回り込むように(又はオーバーハングするように)貼付されている。また、機材ボックス18及び19の上面には、それぞれ滑り止め44a~44d及び45a~45eの配列方向に沿って第4照明装置54及び第5照明装置55が設けられている。同様に、運転台11上の第6ステップ36にも複数の滑り止め46a~46d及び第6照明装置56が設けられている。
図1では、第6ステップ36が車体の幅方向にも広いため、滑り止め46a~46d及び第6照明装置56が2組設けられた例を示している。また、バケット22の近傍のブーム21の上面の第7ステップ37にも、滑り止め47a及び47bが貼付され、第7照明装置57が設けられている。上記各滑り止め41~43、44a~44d、45a~45e、46a~46d、47a及び47bは、例示であって、その数、形状及び大きさは図示したものに限定されず、適用される高所作業車の大きさや構造などに応じて適宜選択される。また、第4照明装置54及び第5照明装置55は、それぞれ機材ボックス18及び19上から作用面13側への転落を防止するように車両本体10の内側に取り付けられているが、機材ボックス18及び19上から地面への転落を防止するために車両本体10の外側に取り付けてもよいし、あるいは機材ボックス18及び19の両側に取り付けてもよい。
【0024】
これらの照明装置51~57は、例えば白色LEDを配列したLEDアレイとすることが好ましい。LEDは、消費電力が少ないうえに発光輝度が高く、さらに指向性が高い。そのため、例えば第1照明装置51の場合、第1ステップ31の踏面及びその上に貼付された滑り止め41を鉛直方向のほぼ真上から下向きに照射するので、光漏れ、すなわちエネルギーのロスが少なく、第1ステップ31の踏面や滑り止め41上での照度が高くなり、夜間作業において作業員が第1ステップ31の位置を認識しやすくなる。同様に、第2照明装置52~第6照明装置56の場合、第2ステップ32~第6ステップ36の踏面及びその上に貼付された滑り止め42~46dをほぼ水平方向に照射するので、第2照明装置52~第6照明装置56の光源から離れた場所であっても、各ステップの踏面及びその上に貼付された滑り止め上での十分な照度を確保することができる。なお、第7ステップ37として機能するブーム21の上面は若干傾斜しており、水平ではないけれども、第7照明装置57は第7ステップ37及びその上に貼付された滑り止め47a及び47bをブーム21の上面とほぼ平行に照射するので、第2照明装置52~第6照明装置56の場合と同様の効果が得られる。また、照明装置51等としてLEDアレイを用いることにより、各照明装置自体の幅や高さを小さく抑えることができる。また、第4ステップ34及び第5ステップ35として機能する機材ボックス18及び19の上面や第6ステップ36のエッジ部分に照明装置54~56を取り付けることにより、作業員は照明装置54~56の発光部分がこれらのステップ34~36の端部であることを認識することができ、誤ってこれらのステップから転落する可能性を低減することができる。
【0025】
各滑り止め41等の材料としては、一般的に摩擦係数の大きいゴムなどの樹脂材料が選択される。この実施形態では、滑り止め41等の樹脂材料には、照明装置51等により照明されたときに照明光とは異なる波長の光を励起する蛍光材料が含まれている。滑り止め41等が照明装置51等により照明されると、樹脂材料中の蛍光材料が励起され、照明光の波長とは異なる波長の光を放出する。蛍光材料が樹脂材料中に均一に含有されていれば、滑り止め41等が照明されたときに滑り止め41等のほぼ全体から蛍光が放出されるので、作業員は滑り止め41等の幅や面積などを認識することができる。換言すれば、作業員は、発光していない場所を踏めば転落する可能性があり、発光している箇所を辿って移動すればバケット22に対して安全に乗降できることがわかる。
【0026】
滑り止め41~43、44a、45a,46aに関しては、前述のように、踏面に沿って水平方向に貼付されるとともに、鉛直面に沿って鉛直方向に回り込むように(又はオーバーハングするように)貼付されている。これら滑り止め41~43、44a、45a,46aに照射された照明光は樹脂材料の内部で反射や屈折を繰り返しながら進行するので、直接照明装置によって照明されないオーバーハング部分からも蛍光が放出される。例えば、作業員が地上から上記各ステップ31~37を伝ってバケット22に乗り込む際、各滑り止め41~43、44a、45a,46aの水平面から放出される蛍光は作業員からは見えにくいけれども、これらのオーバーハング部分からの蛍光は作業員の目に入射しうるので、作業員はそこに段差があることを認識することができる。そのため、作業員が段差で躓いたり、膝を打撲したりする可能性を低減することができる。また、鉛直方向に隣接する2つのステップの滑り止め41等について、樹脂材料に含有させる蛍光材料の種類を変え、隣接する2つのステップの滑り止め41等が異なる波長の蛍光を放出するようにすれば、次の段のステップを認識しやすくなる。
【0027】
一方、1つのステップに複数の滑り止め44a~47bが貼付されている場合、例えば第4ステップ34上に貼付されている滑り止め44a~44dから同じ波長の蛍光を放出させ、第5ステップ35上に貼付されている滑り止め45a~45eから同じ波長であって、かつ、滑り止め44a~44dから放出される蛍光とは異なる波長の蛍光を放出させるように構成してもよい。それによって、平面視では一列に連続する滑り止め44a~45eであっても、作業員は、滑り止め44a~44dと滑り止め45a~45eがそれぞれ同一平面上に配列されているが、滑り止め44a~44dと滑り止め45a~45eとは異なるステップに設けられており、両者の間に段差があることを認識することができる。同様に、第6ステップ36上に貼付されている滑り止め46a~46dからは、同じ波長であって第5ステップ35上の滑り止め45a~45eから放出される蛍光とは異なる波長(滑り止め44a~44dから放出される蛍光と同じ波長であってもよい)の蛍光を放出させるようにしてもよい。さらに、第7ステップ37上に貼付されている滑り止め47a及び47bからからも、同じ波長であって、かつ、第6ステップ36の滑り止め46a~46dから放出される蛍光とは異なる波長(滑り止め44a~44dまたは45a~45eから放出される蛍光と同じ波長であってもよい)の蛍光を放出させるようにしてもよい。それによって、作業員は異なる色で発光している複数組の滑り止め44a~47bが、発光色ごとに段差の異なる複数のステップ上に配列され、同じ色で発光している滑り止め同士はフラットであることを認識することができ、車両本体10の作業面13(例えば、第4ステップ34、第5ステップ35、第6ステップ36等)上での作業員の移動速度を速くすることも可能である。
【0028】
図4は、本実施形態に係る高所作業車1の他の構成例(変形例)を示す。この変形例では、ブーム作動制御装置23が運転台11の後ろに配置され、バケット22が車両本体10の後端側に配置されている。また、作業員が車両本体10の作業面13上に昇るための第1ステップ31~第4ステップ34が車両本体10の側面に設けられており、第1ステップ31及び第2ステップ32が後輪12の泥よけの位置に、第3ステップ33及び第4ステップ34が後輪12のタイヤハウス上にそれぞれ配置されている。また、第1ステップ31と第2ステップ32及び第3ステップ33と第4ステップ34は、それぞれ鉛直方向に重なるように位置している。第2ステップ32の裏面には、第1照明装置51が第1ステップ31の踏面及びその上に貼付された滑り止め41を鉛直方向のほぼ真上から下向きに照射するように取り付けられている。同様に、鉛直方向において第2ステップ32に対向する車両本体10の裏面には、第2照明装置52が第2ステップ32の踏面及びその上に貼付された滑り止め42を鉛直方向のほぼ真上から下向きに照射するように取り付けられている。さらに、鉛直方向において第3ステップ33に対向する第4ステップ35の裏面には、第3照明装置53が第3ステップ33の踏面及びその上に貼付された滑り止め43を鉛直方向のほぼ真上から下向きに照射するように取り付けられている。車両本体10の作業面13には機材ボックス18等が取り付けられており、作業面13全体はフラットではなく凹凸面が存在するが、第4ステップ34は作業面13の他のいずれかの凹凸面と面一であってもよい。第4ステップ34の踏面には滑り止め44が貼付されており、機材ボックス18の壁面には、第4照明装置54が第4ステップ34の踏面及びその上に貼付された滑り止め44をほぼ水平方向に照射するように取り付けられている。
【0029】
バケット22は第1ステップ31及び第2ステップ32の鉛直上方に位置しているが、作業員による車両本体10の作業面13上への登段動作を妨げないように、バケット22の底面と作用面13との間には鉛直方向に一定のスペースが設けられている。同様に、第3ステップ33及び第4ステップ34は、作業員が車両本体10の作業面13上に登段する最終ステップであるため、水平方向にバケット22と干渉しない位置に設けられている。そのため、作業員が第4ステップ34から直接バケット22に乗り込むことは困難であり、この変形例においても機材ボックス18の上面は第5ステップ35として機能する。第5ステップ35の踏面には滑り止め45a及び45bが貼付されており、機材ボックス19の壁面には、第5照明装置55が第5ステップ35の踏面及びその上に貼付された滑り止め45a及び45bをほぼ水平方向に照射するように取り付けられている。
図4から明らかなように、水平方向及び鉛直方向において、第5ステップ35とバケット22との間には一定の距離があるため、機材ボックス18には、第5ステップ35の踏面と干渉しない位置に第6ステップ36が設けられている。第6ステップ36の踏面上には、滑り止め46a及び46bと、第6ステップ36の踏面及びその上に貼付された滑り止め46a及び46bをほぼ水平方向に照射する第6照明装置56が取り付けられている。
【0030】
この変形例においても、滑り止め41~44、45a、46a及び46bは、踏面に沿って水平方向に貼付されるとともに、鉛直面に沿って鉛直方向に回り込むように(又はオーバーハングするように)貼付されている。各滑り止め41等の樹脂材料には、照明装置51等により照明されたときに照明光とは異なる波長の光を励起する蛍光材料が含まれている。また、鉛直方向に隣接する2つステップの滑り止め41等については、樹脂材料に含有させる蛍光材料の種類を変え、隣接する2つのステップの滑り止め41等が異なる波長の蛍光を放出するようにすることが好ましい。さらに、1つのステップに複数の滑り止め45a及び45b、46a及び46bが貼付されている場合、それら複数の滑り止め45a及び45b、46a及び46bから同じ波長の蛍光を放出させるようにしてもよい。
【0031】
このように、本発明によれば、夜間作業の際に、作業員が高所作業車のバケットに対して乗降する際、地面からバケットまでの間に設けられている複数のステップについて、それぞれの踏面及び滑り止めが照明装置によってほぼ鉛直方向から又はほぼ水平方向から照射されるので、作業員はステップの位置や幅又は面積などを容易に認識することができ、作業員が高所作業車から転落する可能性を低減することができる。
【0032】
さらに、ステップの踏面に貼付されている滑り止めの樹脂材料に蛍光材料が含まれているので、材料樹脂に含まれる蛍光材料が照射された照明光により励起され、照明光の波長とは異なる波長の蛍光を放出して、滑り止めのほぼ全体が発光する。そのため、作業員は発光している滑り止め部分を踏んで移動すれば、転落することなくバケットに対して安全に乗降することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 高所作業車
10 車両本体
11 運転台
12 車輪
13 (車両本体の)作業面
14 アウトリガー
15 アウトリガー作動制御装置
16 テールライトボックス
17 手摺
18,19 機材ボックス
20 高所作業装置
21 ブーム
22 バケット
23 ブーム作動制御装置
31~37 第1~第7ステップ
41~47b 滑り止め
51~57 第1~第7照明装置