(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172390
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/28 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01N29/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084158
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】500305508
【氏名又は名称】株式会社検査技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】刈谷 晃洋
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB01
2G047AC08
2G047BB02
2G047BC11
2G047CA01
2G047EA08
2G047GB29
(57)【要約】
【課題】超音波検査装置において、曲面形状を有する検査対象物に対しても適用可能とする。
【解決手段】超音波検査装置10は、送信探触子11及び受信探触子12を備える。送信探触子11は、前記曲面に線接触する第一凸円筒面14を有する第一接触部13と、第一凸円筒面14に向かって超音波を送出する送信素子16とを有する。受信探触子12は、前記曲面に線接触する第二凸円筒面24を有する第二接触部23と、第二凸円筒面24から入射する超音波を受信する受信素子26とを有する。送信素子16は、第一接触位置P1を通り第一基準仮想線L10を基準として受信探触子12と反対側に傾く、第一送信側仮想線L11に直交する第一取り付け面15に沿って設けられている。受信素子26は、第二接触位置P2を通り第二基準仮想線L20を基準として送信探触子11と反対側に傾く、第二受信側仮想線L21に直交する第二取り付け面25に沿って設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信探触子及び受信探触子を備え、検査対象物が有する凹または凸の曲面に前記送信探触子および受信探触子を接触させて超音波検査を行うための装置であって、
前記送信探触子は、
前記曲面に線接触する第一凸円筒面を有する第一接触部と、
前記第一接触部の一部に設けられ前記第一凸円筒面に向かって超音波を送出する送信素子と、を有し、
前記受信探触子は、
前記曲面に線接触する第二凸円筒面を有する第二接触部と、
前記第二接触部の一部に設けられ前記第二凸円筒面から入射する超音波を受信する受信素子と、を有し、
前記送信素子は、下記に定義する第一接触位置を通り下記に定義する第一基準仮想線を基準として前記受信探触子と反対側に傾く、第一送信側仮想線に直交する第一取り付け面に沿って設けられていて、
前記受信素子は、下記に定義する第二接触位置を通り下記に定義する第二基準仮想線を基準として前記送信探触子と反対側に傾く、第二受信側仮想線に直交する第二取り付け面に沿って設けられている、
超音波検査装置。
第一接触位置:前記第一凸円筒面と前記曲面とが線接触する位置
第二接触位置:前記第二凸円筒面と前記曲面とが線接触する位置
第一基準仮想線:前記曲面の中心と前記第一接触位置とを通過する仮想線
第二基準仮想線:前記曲面の中心と前記第二接触位置とを通過する仮想線
【請求項2】
前記第一凸円筒面のうち、前記第一凸円筒面の周方向に沿って中央の位置が、前記第一接触位置となり、
前記第二凸円筒面のうち、前記第二凸円筒面の周方向に沿って中央の位置が、前記第二接触位置となる、請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記送信探触子と前記受信探触子とを連結している連結部を備え、
前記連結部は、前記送信探触子と前記受信探触子との間隔を調整可能として、前記送信探触子と前記受信探触子とを取り付けている、請求項1または請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記連結部は、前記送信探触子と前記受信探触子との間隔を一定として、前記送信探触子と前記受信探触子とを保持可能である、請求項3に記載の超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属製部品の疲労度などを検査する方法として、超音波法(表面SH波法)およびX線回析法が知られている。X線回析法については、作業資格の制限および測定環境の制限があり、超音波法のほうが利便性が高い。
【0003】
超音波法では、テスト品に対して、負荷を与えて行う耐久試験と、超音波によるパラメータ(伝搬速度)の測定とを繰り返し行い、その都度、パラメータと疲労度との関係を求め、これらを纏めたデータベース(検量線)が作成される。そして、実際の運用では、例えば回収した実製品(市場回収品)のパラメータを測定し、前記データベースを参照して、その実製品の疲労度を確認している。
【0004】
特許文献1に、超音波検査装置が開示されている。この超音波検査装置は、送信探触子および受信探触子を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、超音波検査装置では、送信探触子および受信探触子それぞれを検査対象物の平面に接触させる。
図6に示すように、送信探触子91および受信探触子92それぞれは、検査対象物100に接触させる接触部93を有するが、その接触部93は、検査対象物100との接触面94が矩形であるブロック形状を有する。このため、検査対象物100が凹曲面99を有する場合、接触部93を接触させると角当たりし、接触面94と凹曲面99との間に隙間が生じ、測定不能となる。
【0007】
例えば、円筒ころ軸受が備える外輪は、その内周側に凹曲面形状となる軌道面を有する。このような軌道面に送信探触子および受信探触子を接触させ、外輪の疲労度の検査を行うことは、
図6に示す超音波検査装置では不可能である。
【0008】
そこで、本開示では、曲面形状を有する検査対象物に対しても適用可能となる超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本開示の超音波検査装置は、送信探触子及び受信探触子を備え、検査対象物が有する凹または凸の曲面に前記送信探触子および受信探触子を接触させて超音波検査を行うための装置であって、
前記送信探触子は、
前記曲面に線接触する第一凸円筒面を有する第一接触部と、
前記第一接触部の一部に設けられ前記第一凸円筒面に向かって超音波を送出する送信素子と、を有し、
前記受信探触子は、
前記曲面に線接触する第二凸円筒面を有する第二接触部と、
前記第二接触部の一部に設けられ前記第二凸円筒面から入射する超音波を受信する受信素子と、を有し、
前記送信素子は、下記に定義する第一接触位置を通り下記に定義する第一基準仮想線を基準として前記受信探触子と反対側に傾く、第一送信側仮想線に直交する第一取り付け面に沿って設けられていて、
前記受信素子は、下記に定義する第二接触位置を通り下記に定義する第二基準仮想線を基準として前記送信探触子と反対側に傾く、第二受信側仮想線に直交する第二取り付け面に沿って設けられている。
第一接触位置:前記第一凸円筒面と前記曲面とが線接触する位置
第二接触位置:前記第二凸円筒面と前記曲面とが線接触する位置
第一基準仮想線:前記曲面の中心と前記第一接触位置とを通過する仮想線
第二基準仮想線:前記曲面の中心と前記第二接触位置とを通過する仮想線
【0010】
送信探触子から検査対象物への超音波の入射角度が所定角度に設定されることで、その超音波は検査対象物の表層を伝搬する。なお、前記所定角度は、検査対象物の材質と、送信探触子のうち、その検査対象物に接触する部分(第一接触部)の材質とによって定まる。
【0011】
そこで、本開示の超音波検査装置によれば、送信探触子の第一凸円筒面は検査対象物の曲面に線接触し、送信素子から送出する超音波は第一接触位置から前記曲面に入射する。前記のように送信素子が設けられることで、第一接触位置における超音波の入射方向と、その第一接触位置における前記曲面の法線との成す角度(入射角度)を、前記所定角度に設定することができ、送信探触子から送出された超音波は検査対象物の表層を伝搬する。
受信探触子の第二凸円筒面は前記曲面に線接触し、前記表層を伝搬した超音波は第二接触位置から第二接触部に入射する。前記のように受信素子が設けられることで、その入射の角度に沿った線の先に受信素子が位置することができ、受信素子は前記超音波を検出することが可能となる。
以上より、曲面形状を有する検査対象物に対しても検査が可能となる。
【0012】
(2)好ましくは、前記第一凸円筒面のうち、前記第一凸円筒面の周方向に沿って中央の位置が、前記第一接触位置となり、前記第二凸円筒面のうち、前記第二凸円筒面の周方向に沿って中央の位置が、前記第二接触位置となる。この構成によれば、検査対象物の曲面に対する第一接触部および第二接触部それぞれの接触位置がわかりやすく、検査の作業性が向上する。
【0013】
(3)好ましくは、前記超音波検査装置は、前記送信探触子と前記受信探触子とを連結している連結部を備え、前記連結部は、前記送信探触子と前記受信探触子との間隔を調整可能として、前記送信探触子と前記受信探触子とを取り付けている。この構成によれば、検査対象物の曲面の形状にあわせて、第一接触部および第二接触部を適切な姿勢で、その曲面に線接触させることが可能となる。
【0014】
(4)前記(3)の場合において、さらに、好ましくは、前記連結部は、前記送信探触子と前記受信探触子との間隔を一定として、前記送信探触子と前記受信探触子とを保持可能である。この構成によれば、複数の検査対象物が有する曲面の形状が同じであれば、繰り返しの検査が容易であり、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の超音波検査装置によれば、曲面形状を有する検査対象物に対しても検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の超音波検査装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、検査対象物である外輪の軸方向に沿って見た送信探触子の断面図である。
【
図4】
図4は、受信探触子を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の超音波検査装置の他の形態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、従来の超音波検査装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の超音波検査装置の一例を示す模式図である。
図1に示す超音波検査装置10は、金属製である検査対象物7の疲労度など、その内部の状態を非破壊で検査するための装置である。超音波検査装置10は、検査対象物7の表層を伝搬する超音波の速度(時間)に基づいて、検査対象物7の状態を検査する表面SH波法に基づく検査装置である。なお、前記表層とは、検査対象物7の表面の近傍領域であり、例えば、前記表面から2~3ミリメールより浅い範囲の領域である。
【0018】
本実施形態では、転がり軸受の軌道輪を検査対象物7とする。その軌道輪は、金属製であり、リング状の部材である。具体的には、
図1に示す形態では、検査対象物7は、ころ軸受の外輪8である。その外輪8の内周に軌道面8aが設けられている。軌道面8aを、転動体である円筒ころが転がり接触する。その軌道面8aに、後述する送信探触子11及び受信探触子12を接触させる。外輪8の軌道面8aは、円筒面であり、
図1に示すように、凹曲面を有する。なお、転がり軸受は、円すいころ軸受であってもよく、この場合、検査対象物7となる外輪8の軌道面8aは、円すい面に沿った面であり、凹曲面を有する。
【0019】
超音波検査装置10は、送信探触子11及び受信探触子12を備える。本実施形態の超音波検査装置10は、送信探触子11と受信探触子12とを連結している連結部30を備える。超音波検査装置10は、パルス発生器51、増幅器52、および演算部53を備える。パルス発生器51は、送信探触子11の送信素子16に超音波を発生させるため電気信号を送信素子16に与える。増幅器52は、電気回路を有して構成され、受信探触子12の受信素子26が受信した超音波の信号である受信信号を取得し増幅する。演算部53は、CPUを有して構成され、増幅した受信信号に対応する大きさのパラメータとして、超音波の速度(時間)を演算によって取得する。このように、超音波検査装置10は、検査対象物7である外輪8が有する凹曲面(軌道面8a)に送信探触子11および受信探触子12を接触させて超音波検査を行うための装置である。
【0020】
〔送信探触子11について〕
送信探触子11は、第一本体部17と、第一接触部13と、送信素子16とを有する。第一本体部17は、例えば金属製の筐体により構成されている。第一本体部17に、後述する連結部30が有する第一アーム31が取り付けられている。第一本体部17に第一接触部13が固定されている。第一接触部13は、軌道面8aに線接触する第一凸円筒面14を有する。送信素子16は、第一接触部13の一部に設けられており、第一凸円筒面14に向かって超音波を送出する。
図2は、送信探触子11を拡大して示す断面図である。
図2は、検査対象物7である外輪8の軸方向に沿って見た送信探触子11の断面図である。
図3は、
図2のIII矢視の図である。
【0021】
第一接触部13は超音波伝搬媒体であればよく、本実施形態では、第一接触部13は樹脂製である。第一接触部13は半円柱形状を有しており、第一凸円筒面14は半円筒面形状である。なお、第一接触部13は、角度180度の厳密な半円柱の形状でなくてよい。つまり、第一凸円筒面14は、角度180度の厳密な半円筒の形状でなくてよい。例えば、第一凸円筒面14は、角度160度の範囲の円筒に沿った形状であってもよい。第一接触部13は、中実の部材であり、第一凸円筒面14と異なる面(反対側の面)に送信素子16が取り付けられている。
【0022】
第一本体部17は中空の部材であるが、送信素子16が取り付けられた第一接触部13が、第一本体部17と一体となった状態で、第一本体部17内に溶融樹脂が充填され、その溶融樹脂を硬化させる。なお、送信素子16に繋がるリード線は、第一本体部17の外に引き出されている。
【0023】
送信素子16は、一般的な超音波検査装置に用いられる素子であり、例えば、平板状の圧電素子により構成された超音波プローブである。送信素子16は、横波の超音波を出力可能である。パルス発生器51から送信素子16に所定電圧のパルス電圧が加えられると、送信素子16の平面16aから所定周波数の超音波が出力される。出力された超音波は、第一接触部13から外部へ送出される。
【0024】
送信素子16は平板状である。送信素子16からの超音波の出力方向は、送信素子16の平面16aに直交する方向となる。送信素子16は、超音波の出力方向が第一凸円筒面14上の一点を通るように、第一接触部13に取り付けられている。前記一点は、第一凸円筒面14と軌道面8aとが接触する第一接触位置P1となる。第一凸円筒面14と軌道面8aとは線接触することから、第一接触位置P1は、その線接触する範囲(線に沿った範囲)に含まれる。本実施形態では、第一凸円筒面14のうち、第一凸円筒面14の周方向に沿って中央の位置が、第一接触位置P1となる。
【0025】
送信素子16から出力される超音波は、送信素子16の出力面となる平面16aに対して平行に振動しつつ第一接触位置P1に入射する振動成分(SH波)と、その振動方向に対して垂直方向に振動しつつ第一接触位置P1に入射する振動成分(SV波)とを含む。
【0026】
送信素子16からの超音波の出力方向は、第一接触位置P1における第一凸円筒面14(軌道面8a)の第一接線Q1に平行な方向でなく垂直な方向でなく、その第一接線Q1に傾斜する方向となる。つまり、第一接触位置P1において、送信素子16からの超音波は、軌道面8aに対して、第一接線Q1に平行でもなく垂直でもない斜め方向から入射する。送信素子16から出力された超音波は、第一接触位置P1から外部へ送出される。
【0027】
ここで、送信探触子11(送信素子16)から検査対象物7(外輪8)への超音波の入射角度が所定角度に設定されることで、その超音波は検査対象物7(外輪8)の表層を伝搬する。なお、前記所定角度は、検査対象物7(外輪8)の材質と、送信探触子11のうち、その検査対象物7に接触する部分(第一接触部13)の材質とによって定まる。
【0028】
前記のように超音波を外輪8の表層を伝搬させるため、送信素子16は、第一接触部13に次のような配置となって設けられている。
すなわち、送信素子16は、第一送信側仮想線L11に直交する第一取り付け面15に沿って設けられている。前記第一送信側仮想線L11は、第一接触位置P1を通る仮想線であって、下記に定義する第一基準仮想線L10を基準として受信探触子12(
図1参照)と反対側(
図1、
図2では左側)に傾く仮想線である。
【0029】
第一基準仮想線L10:軌道面8aの中心Cと第一接触位置P1とを通過する仮想線。
【0030】
なお、第一接触位置P1は、前記のとおり、第一凸円筒面14と軌道面8aとが線接触する位置である。
第一取り付け面15は、平面であり、第一接触部13の一部に設けられている。第一取り付け面15に、送信素子16の平面16aが密着して取り付けられている。
【0031】
このように送信素子16が設けられることで、第一接触位置P1における超音波の入射方向と、その第一接触位置P1における軌道面8aの第一法線Q11との成す角度(入射角度)を、前記所定角度に設定することができる。その結果、送信探触子11から送出された超音波は外輪8の表層を伝搬する。
【0032】
〔受信探触子12について〕
図1に示すように、受信探触子12は、第二本体部27と、第二接触部23と、受信素子26とを有する。第二本体部27は、例えば金属製の筐体により構成されている。第二本体部27に、後述する連結部30が有する第二アーム32が取り付けられている。第二本体部27に第二接触部23が固定されている。第二接触部23は、軌道面8aに線接触する第二凸円筒面24を有する。第二接触部23は、第一接触部13と離れた位置で軌道面8aに接触する。受信素子26は、第二接触部23の一部に設けられ、第二凸円筒面24から入射する超音波を受信する。
図4は、受信探触子12を拡大して示す断面図である。
【0033】
第二接触部23は超音波伝搬媒体であればよく、本実施形態では、第二接触部23は樹脂製である。第二接触部23は半円柱形状を有しており、第二凸円筒面24は半円筒面形状である。なお、第二接触部23は、角度180度の厳密な半円柱の形状でなくてよい。つまり、第二凸円筒面24は、角度180度の厳密な半円筒の形状でなくてよい。例えば、第二凸円筒面24は、角度160度の範囲の円筒に沿った形状であってもよい。第二接触部23は、中実の部材であり、第二凸円筒面24と異なる面(反対側の面)に受信素子26が取り付けられている。
【0034】
第二本体部27は中空の部材であるが、受信素子26が取り付けられた第二接触部23が、第二本体部27と一体となった状態で、第二本体部27内に溶融樹脂が充填され、その溶融樹脂を硬化させる。なお、受信素子26に繋がるリード線は、第二本体部27の外に引き出されている。
【0035】
受信素子26は、一般的な超音波検査装置に用いられる素子であり、例えば、平板状の圧電素子により構成された超音波プローブである。受信素子26は、第二接触部23に入射した超音波を受信することで所定の電圧を発生させる。受信素子26は平板状である。受信素子26は、送信素子16と同様の構成を有するが、少なくともSH波を受信する横波検出用の圧電素子を有して構成される。受信素子26は、超音波を受信して、その強度に応じた電圧を発生させ、それを受信信号として増幅器52(
図1参照)に出力する。
【0036】
受信素子26における超音波の受信方向は、受信素子26の平面26aに直交する方向となる。超音波の受信方向が、第二凸円筒面24上の一点から受信素子26に向かう方向となるように、受信素子26は第二接触部23に取り付けられている。前記一点は、第二凸円筒面24と軌道面8aとが接触する第二接触位置P2となる。第二凸円筒面24と軌道面8aとは線接触することから、第二接触位置P2は、その線接触する範囲(線に沿った範囲)に含まれる。本実施形態では、第二凸円筒面24のうち、第二凸円筒面24の周方向に沿って中央の位置が、第二接触位置P2となる。
【0037】
受信素子26における超音波の受信方向は、第二接触位置P2における第二凸円筒面24(軌道面8a)の第二接線Q2に平行な方向でなく垂直な方向でなく、その第二接線Q2に傾斜する方向となる。送信素子16から出力され外輪8の表層を伝搬した超音波は、第二接触位置P2から第二接触部23に入射する。第二接触部23を第二接触位置P2において軌道面8aに接触させることで、第二接触位置P2で第二接触部23に入射した超音波は、第二接線Q1に平行でもなく垂直でもない斜め方向に伝わる。
【0038】
軌道面8aから第二接触部23への超音波の入射角度は、検査対象物7(外輪8)の材質と、送信探触子11のうち、その検査対象物7に接触する部分(第二接触部23)の材質とによって定まる。
【0039】
前記のように外輪8から第二接触部23に入射した超音波を受信素子26が受信するため、つまり、第二接触位置P2における第二接触部23への入射方向を、受信素子26の受信方向と一致させるため、受信素子26は、第二接触部23に次のような配置となって設けられている。
すなわち、受信素子26は、第二受信側仮想線L21に直交する第二取り付け面25に沿って設けられている。前記第二受信側仮想線L21は、第二接触位置P2を通る仮想線であって、下記に定義する第二基準仮想線L20を基準として送信探触子11(
図1参照)と反対側(
図1、
図4では右側)に傾く仮想線である。
【0040】
第二基準仮想線L20:軌道面8aの中心Cと第二接触位置P2とを通過する仮想線。
【0041】
なお、第二接触位置P2は、前記のとおり、第二凸円筒面24と軌道面8aとが線接触する位置である。
第二取り付け面25は、平面であり、第二接触部23の一部に設けられている。第二取り付け面25に、受信素子26の平面26aが密着して取り付けられている。
【0042】
このように、受信探触子12の第二凸円筒面24は軌道面8aに線接触し、外輪8の表層を伝搬した超音波は第二接触位置P2から第二接触部23に入射する。受信素子26が前記のように設けられることで、その入射の角度に沿った線の先に受信素子26が位置することができ、受信素子26は超音波を検出することが可能となる。
【0043】
以上より、本実施形態の超音波検査装置10によれば、曲面形状を有する外輪8に対しても検査が可能となる。
【0044】
〔連結部30について〕
前記のとおり(
図1参照)、超音波検査装置10は、送信探触子11と受信探触子12とを連結している連結部30を備える。連結部30は、ベース体33と、第一アーム31と、第二アーム32とを有する。第一アーム31の一方の端部に送信探触子11が取り付けられていて、第一アーム31の他方の端部がベース体33に支持されている。第二アーム32の一方の端部に受信探触子12が取り付けられていて、第二アーム32の他方の端部がベース体33に支持されている。
【0045】
ベース体33は、第一アーム31及び第二アーム32を揺動可能に支持している。その揺動の方向は、送信探触子11と受信探触子12とが接近および離反する方向である。つまり、連結部30は、送信探触子11と受信探触子12との間隔を調整可能として、送信探触子11と受信探触子12とを取り付けている。この構成により、軌道面8aの形状にあわせて、第一接触部13および第二接触部23を適切な姿勢で軌道面8aに線接触させることが可能となる。特に、軌道面8aに対して第一凸円筒面14及び第二凸円筒面24を第一接触位置P1および第二接触位置P2で接触させることが容易となる。
【0046】
ベース体33は、第一アーム31を揺動可能として支持すると共に、所定の位置で第一アーム31を揺動不能に拘束することができる。例えば、図示しないが、ロックボルトの締め付けによってベース体33に対して第一アーム31は揺動不能となり、ロックボルトを緩めることで第一アーム31は揺動可能となる。第二アーム32についても同様に、ベース体33は、第二アーム32を揺動可能として支持すると共に、所定の位置で第二アーム32を揺動不能に拘束することができる。以上より、連結部30は、送信探触子11と受信探触子12との間隔を一定として、送信探触子11と受信探触子12とを保持可能とする。この構成により、検査の対象である外輪8が複数あり、これら外輪8の軌道面8aの形状が同じであれば、繰り返し検査が可能であり、作業性が向上する。
【0047】
〔検査対象物7が内輪9である場合〕
図5は、本発明の超音波検査装置の他の形態を示す模式図である。
図5に示す超音波検査装置10では、
図1に示す形態と比較して、検査対象物7が、転がり軸受の軌道輪であるという点で同じであるが、
図1に示す外輪8とは異なり、ころ軸受の内輪9である。その内輪9の外周に軌道面9aが設けられている。軌道面9aを、転動体である円筒ころが転がり接触する。その軌道面9aに、送信探触子11及び受信探触子12を接触させる。内輪9の軌道面9aは、円筒面であり、
図5に示すように、凸曲面を有する。なお、ころ軸受は、円すいころ軸受であってもよく、この場合、検査対象物7となる内輪9の軌道面9aは、円すい面であり、凸曲面を有する。
【0048】
図5に示す超音波検査装置10は、送信探触子11及び受信探触子12を備え、検査対象物7が有する凸曲面(軌道面9a)に送信探触子11および受信探触子12を接触させて超音波検査を行う。
【0049】
送信探触子11は、第一接触部13と送信素子16とを有する。第一接触部13は、軌道面9aに線接触する第一凸円筒面14を有する。送信素子16は、第一接触部13の一部に設けられていて、第一凸円筒面14に向かって超音波を送出する。
受信探触子12は、第二接触部23と受信素子26とを有する。第二接触部23は、軌道面9aに線接触する第二凸円筒面24を有する。受信素子26は、第二接触部23の一部に設けられていて、第二凸円筒面24から入射する超音波を受信する。
【0050】
送信素子16は、第一送信側仮想線L11に直交する第一取り付け面15に沿って設けられている。第一送信側仮想線L11は、第一接触位置P1を通る仮想線であって、下記に定義する第一基準仮想線L10を基準として受信探触子12と反対側(
図5では左側)に傾く仮想線である。
【0051】
第一基準仮想線L10:軌道面9aの中心Cと第一接触位置P1とを通過する仮想線。
なお、第一接触位置P1は、第一凸円筒面14と軌道面9aとが線接触する位置である。
【0052】
受信素子26は、第二受信側仮想線L21に直交する第二取り付け面25に沿って設けられている。第二受信側仮想線L21は、第二接触位置P2を通る仮想線であって、下記に定義する第二基準仮想線L20を基準として送信探触子11と反対側(
図5では右側)に傾く仮想線である。
【0053】
第二基準仮想線L20:軌道面9aの中心Cと第二接触位置P2とを通過する仮想線。
なお、第二接触位置P2は、第二凸円筒面24と軌道面8aとが線接触する位置である。
【0054】
図5に示す実施形態においても、第一凸円筒面14のうち、第一凸円筒面14の周方向に沿って中央の位置が、第一接触位置P1となる。第二凸円筒面24のうち、第二凸円筒面14の周方向に沿って中央の位置が、第二接触位置P2となる。
【0055】
図5に示す実施形態においても、超音波検査装置10は連結部30を備える。連結部30は、送信探触子11と受信探触子12との間隔を調整可能として、これら送信探触子11と受信探触子12とを取り付けている。さらに、その連結部30は、送信探触子11と受信探触子12との間隔を一定として、送信探触子11と受信探触子12とを保持可能である。このような機能を実現するための連結部30の具体的な構成は、
図1に示す形態と同様であり、共通する1つのベース体(図示せず)と、第一アーム31と、第二アーム32とを有する。
【0056】
図5に示す超音波検査装置10に対して、
図1から
図4により説明した各構成を適宜、適用可能である。
図5に示す超音波検査装置10において、
図1から
図4に示す超音波検査装置10と同じ構成については、同じ符号を付しており、ここでは、その構成の説明を省略する。
【0057】
〔その他〕
前記各実施形態では、検査対象物7が転がり軸受の軌道輪(外輪8および内輪9)である場合について説明したが、検査対象物7は、凹または凸の曲面を有する部材であればよく、軌道輪以外であってもよい。
連結部30の構成は、図示する形態以外であってもよく、送信探触子11および受信探触子12を揺動可能として支持する機構を有する以外に、平行移動可能として支持する機構を有していてもよい。
【0058】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0059】
7 検査対象物
8 外輪
8a 軌道面(曲面)
9 内輪
9a 軌道面(曲面)
10 超音波検査装置
11 送信探触子
12 受信探触子
13 第一接触部
14 第一凸円筒面
15 第一取り付け面
16 送信素子
23 第二接触部
24 第二凸円筒面
25 第二取り付け面
26 受信素子
30 連結部
C 中心
L10 第一基準仮想線
L11 第一送信側仮想線
L20 第二基準仮想線
L21 第二受信側仮想線