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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172402
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A47C27/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084174
(22)【出願日】2022-05-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔公開事由〕 刊行物 〔刊行物名〕 福祉用具総合カタログ 〔発行日〕 令和3年9月21日 〔公開事由〕 ウェブサイト 〔掲載日〕 令和3年11月29日 〔掲載アドレス〕 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000041260.html https://www.inoac.co.jp/living/wp/wp-content/uploads/2021/12/82b4dbbd6c857960e5d2c66dcf16be98.pdf https://www.inoac.co.jp/living/categories/nursing_care/nc13/ https://inoac.jp/catalog/care/
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓也
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB02
3B096AB07
3B096AD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リクライニング式ベッドで横臥者の上体を起こすとき等に、マットレスが曲げられることがある。従来よりも曲げ易いマットレスを提供する。
【解決手段】本開示のマットレス10は、第1層11と第2層12とを積層したマットレス10であって、前記第1層11は、表裏の少なくとも一方の面に、幅方向に延びる溝30を備え、前記第2層12は、前記第1層11とは反対側の面に、幅方向に延びる溝を有しないマットレスである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と第2層とを積層したマットレスであって、
前記第1層は、表裏の少なくとも一方の面に、幅方向に延びる溝を備え、
前記第2層は、前記第1層とは反対側の面に、幅方向に延びる溝を有しないマットレス。
【請求項2】
前記溝は、前記第1層の表裏の両面に、前記第1層の長手方向でそれぞれ複数設けられ、前記表裏の前記溝同士が、前記長手方向の同じ位置に配置されている請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記第2層は、前記第1層より硬度が低い及び/又は反発弾性率が大きい請求項1又は2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記溝は、複数設けられ、それら溝の分布が前記第1層の長手方向で異なり、
前記第1層の長手方向の中央部では、その両側における前記長手方向の中央寄り部分よりも、前記複数の溝の分布が密になっている請求項1又は2に記載のマットレス。
【請求項5】
前記溝の深さは、前記第1層の厚さの半分未満になっている請求項1又は2に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリクライニング式ベッドで横臥者の上体を起こすとき等に、マットレスが曲げられることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2017/183670号公報(図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来よりも曲げ易いマットレスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、第1層と第2層とを積層したマットレスであって、前記第1層は、表裏の少なくとも一方の面に、幅方向に延びる溝を備え、前記第2層は、前記第1層とは反対側の面に、幅方向に延びる溝を有しないマットレスである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】マットレスの正面図
図2】ギャッチアップ時のマットレスの正面図
図3】マットレスの底面図
図4】マットレスの平面図
図5】マットレスの側面図
図6】マットレスの拡大正断面図
図7】第1層の溝周辺の拡大正断面図
図8】ギャッチアップ時のマットレスの中央部の拡大正面図
図9】ギャッチアップ時のマットレスの膝裏部分の拡大正面図
図10】マットレスの他の使用例を示す正面図
図11】マットレスの他の使用例でのギャッチアップ時の正面図
図12】(A)他の実施形態に係るマットレスの正面図、(B)他の実施形態に係るマットレスの正面図、(C)他の実施形態に係るマットレスの正面図
図13】従来のマットレスのギャッチアップ時の正面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、本開示の一実施形態に係るマットレス10は、第1層11と第2層12が積層された2層構造を有する。例えば、マットレス10の平面形状は、略長四角形状になっていて(図3参照)、長手方向の途中で折り曲げ可能になっている(図2参照)。なお、以下では、マットレス10の表裏の面のうち、第1層11側の面を第1面11F、第2層12側の面を第2面12S、と適宜呼ぶこととする。
【0008】
本実施形態の例では、マットレス10は、医療用や介護用のリクライニング式のベッド90に載置される。ベッド90は、図2に示すように、例えば横臥者の上体を起こすため等に折り曲げられ(いわゆる、ギャッチアップされ)、それに伴い、マットレス10も折り曲げられる。図1及び図2に示すマットレス10の使用例では、第1層11が上側に配置され、第2層12が下側に配置される。そして、第1層11上に横臥者が横たわる。
【0009】
第1層11と第2層12は、マットレス10を曲げ変形可能とする材料で構成されていればよく、例えば、弾性体で構成されていてもよい。弾性体としては、発泡体やゴム等が挙げられる。第1層11と第2層12は、マットレス10の軽量化やクッション性の観点から、発泡体であることが好ましい。また、マットレス10は、通気性を有していると、横臥者が蒸れにくくなるので、好ましい。本実施形態の例では、第1層11と第2層12が、通気性を有する(例えば連続気泡構造の)発泡体(例えば、ポリウレタン樹脂の発泡体)で構成されていて、マットレス10も厚さ方向で通気性を有している。
【0010】
本実施形態の例では、第2層12は、第1層11に比べて、硬度が低くなっている(特性A)。また、本実施形態の例では、第2層12は、第1層11に比べて、反発弾性率が大きくなっている(特性B)。マットレス10では、上記の特性Aと特性Bのうち、何れか一方の特性を有していることが好ましく、両方の特性を有していることがより好ましい。例えば、第1層11の硬さは、160~240Nであることが好ましく、180~220Nであることがより好ましく、190~210Nであることが更に好ましい。第1層11の反発弾性率は、20~50%であることが好ましく、25~45%であることがより好ましく、30~35%であることが更に好ましい。第1層11の密度(見掛け密度)は、20~40kg/mであることが好ましく、22~35kg/mであることがより好ましく、25~30kg/mであることが更に好ましい。また、例えば、第2層12の硬さは、80~150Nであることが好ましく、90~135Nであることがより好ましく、110~120Nであることが更に好ましい。第2層12の反発弾性率は、30~60%であることが好ましく、35~50%であることがより好ましく、40~45%であることが更に好ましい。第2層の密度(見掛け密度)は、16~35kg/mであることが好ましく、18~30kg/mであることがより好ましく、20~24kg/mであることが更に好ましい。なお、マットレス10は、上記特性Aと特性Bの何れの特性も有していない構成とすることもできる。なお、上記硬度(硬さ)は、JIS K6400-2(D法)に準拠して測定することができる。また、上記反発弾性率は、JIS K6400-3に準拠して測定することができる。
【0011】
図1に示すように、本実施形態では、第2層12は、第1層11より薄くなっている。なお、第2層12を、第1層11と同じ厚さにしてもよいし、第2層12より厚くしてもよい。
【0012】
図1及び図4に示すように、第1層11には、第1層11の(即ち、マットレス10の)幅方向に延びる溝30が形成されていて、本実施形態では、溝30は、第1層11の表裏の両面に形成されている。一方、第2層12には、その表裏の何れの面にも、第2層12の(マットレス10の)幅方向に延びる溝が設けられておらず、本実施形態では、第2層12の表裏の両面が平坦面になっている(図1及び図5参照)。
【0013】
図4に示すように、本実施形態の例では、溝30は、第1層11を幅方向に横断していて、例えば直線状をなしている。溝30は、マットレス10の長手方向で複数設けられていてもよく、本実施形態の例では、第1層11の表裏の両面それぞれに、互いに平行になった複数の溝30が設けられている。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の例では、第1層11の表裏の溝30同士が、マットレス10の長手方向の同じ位置に配置されている。詳細には、本実施形態の例では、第1層11の表裏で溝30の数が同じであると共にそれら溝30の配置が同じになっている。
【0015】
本実施形態では、図6に示すように、第1層11の厚さ方向の途中には、第1層11の表裏の両面の溝30が共に到達していない部分が設けられている。これにより、溝30を有していても第1層11の強度を確保することが容易になっている。また、本実施形態では、溝30の深さは、第1層11の厚さの半分未満になっている。なお、例えば、複数の溝30の中に、溝30の深さが第1層11の厚さの半分以上となる溝30が含まれていてもよい。また、第1層11を、第1層11の厚さ方向の途中に、溝30が到達していない部分が設けられていない構成とすることもできる。この構成では、第1層11の表裏の溝30を、第1層11の長手方向でずらして配置すればよい。
【0016】
また、本実施形態の例では、図1に示すように、複数の溝30の間隔が一定ではなく、マットレス10の長手方向で溝30同士の間隔(即ち、溝30の分布)が異なっている。具体的には、第1層11の長手方向の中央部Cでは、その両側における長手方向の中央寄り部分B,Dよりも、複数の溝30の分布が密になっている。また、例えば、第1層11の長手方向の両端部又は両端寄り部分(例えば、図1に示す部分A,E)では、上記中央寄り部分B,Dよりも、複数の溝30の分布が密になっている。図1に示す例では、第1層11の長手方向における複数の溝30の分布は、上記中央部Cと部分A,Eで、最も密になっている。なお、隣り合う溝30同士の間隔は、2種類でもよいし、3種類以上であってもよい。
【0017】
なお、本実施形態の例では、複数の溝30は、第1層11の長手方向で対称に形成されている。即ち、本実施形態の例では、マットレス10全体が、長手方向で対称な形状になっている。そして、マットレス10は、幅方向で図1とは反対側から見た場合も、図1に示す形状と同じ形状になっていると共に、長手方向で図5とは反対側から見た場合も、図5に示す形状と同じ形状になっている。このように、マットレス10が長手方向で対称な形状になっていると、横臥者の頭を長手方向のどちら側に配置してもよくなるため、便利である。なお、本実施形態の例では、全ての溝30が同じ形状になっているが、一部の溝30の形状を他の溝30の形状とは異なるようにすることもできる。
【0018】
図7に示すように、溝30は、その深さ方向の途中に溝幅を狭くする幅狭部31を有し、くびれた形状になっている。例えば、溝30の底面32は、平坦になっていて、第2層12と略平行になっている。溝30の内面のうち溝幅方向で互いに対向する1対の側面33には、湾曲凹面33Uと、湾曲膨出面33Tと、が設けられている。湾曲凹面33Uは、底面32から滑らかに連続して溝30の開口34側へと向かい、第1層11の幅方向から見て円弧状をなしている。また、湾曲膨出面33Tは、湾曲凹面33Uから開口34の開口縁へと滑らかに連続し、第1層11の幅方向から見て円弧状をなしている。このように、溝30の側面33が、底面32と開口34の開口縁とに滑らかに連続していて尖った角部を有していないので、マットレス10が曲げられて溝30が閉じるか又は開くように変形されても、溝30の内面の一部に局所的に応力が集中し過ぎることを抑制可能となる。なお、例えば、湾曲膨出面33Tの円弧の曲率半径は、湾曲凹面33Uの円弧の曲率半径よりも大きくなっている。
【0019】
図7に示すように、本実施形態の例では、溝30の溝幅方向(第1層11の長手方向)において、開口34の大きさは、底面32の大きさよりも大きくなっている。また、本実施形態の例では、溝30の1対の側面33の間隔は、開口34で最も大きくなっている。
【0020】
本実施形態の例では、底面32における溝幅方向の中央Pから互いに対向する1対の幅狭部31(湾曲膨出面33T)へ引いた接線同士のなす角度αは、30度以上になっている(例えば、35度になっている)。
【0021】
上述のように、本実施形態のマットレス10は、ベッド90のギャッチアップ時に折り曲げられる(図2参照)。ここで、本実施形態では、溝30が第1層11の幅方向に延びているので、第1層11を、即ちマットレス10を、長手方向の途中で容易に曲げることが可能となる。また、本実施形態では、溝30が、第2層12よりも厚い第1層11の方に設けられているので、マットレス10を効果的に曲げ易くすることが可能となる(図8及び図9参照)。
【0022】
上述のように、第2層12では、第1層11よりも、硬度が低くなっていてもよいし、反発弾性率が大きくなっていてもよい。例えば、図10及び図11に示す他の使用例のように、マットレス10は、図1に示す使用例とは上下を逆にして使用することもできる(即ち、第1層11が下側になって第2層12が上側になる)。このように、第1層11と第2層12を異ならせることで、マットレス10の使用者の好みや症状に合わせて、第1層11と第2層12の何れを上側に配置するかを選択することができ、選択の幅を広げることが可能となる。例えば、柔らかめと硬めのマットレス10の何れが好みかによって、硬度が低い方の層と高い方の層の何れを上側にするかを選択できる。本実施形態では、溝30が第1層11の表裏の両面に形成されているので、マットレス10をどちら側にも折り曲げ容易にすることができるので、マットレス10のリバーシブル性が高まる(図2及び図11参照)。
【0023】
また、本実施形態の例のように、第1層11を、第2層12に比べて、厚くすると共に硬度を高くする構成では、第1層11でマットレス10の強度を確保しながらも、溝30により第1層11を曲げ易くすることが可能となり、さらに使用者の好み等に応じて、第2層12を上側にするか否かを選択できる。即ち、非常に使い勝手のよいマットレス10を提供できる。
【0024】
本実施形態では、第1層11の表裏の溝30同士が、第1層11の長手方向の同じ位置に配置されているので、ずれている場合に比べて、第1層11におけるそれら溝30が形成された箇所の厚さをより薄くすることができ、第1層11をより曲げ易くすることが可能となる。一方で、第1層11には、その厚さ方向の途中に、表裏の溝30が共に到達していない部分が設けられているので、第1層11の強度を確保することが可能となる。
【0025】
本実施形態では、マットレス10の長手方向の中央部C(図1参照)、即ち、折り曲がる頻度の高い部分、の溝の分布が密になる。従って、マットレス10の折り曲げやすさの恩恵を受け易くなり、使い勝手を一層良くすることが可能となる。また、溝30により、マットレス10の上面(第1面11F)のうち横臥者を受け止める受部39が分割されているので、受部39を厚さ方向や長手方向に変形させ易くすることが可能となり、従来よりも体圧分散性の向上が期待できる。ここで、マットレス10の長手方向の中央部Cは、横臥者の臀部や骨盤等のように張り出した部分を受け止める部分にもなり、圧力がかかり易い部分でもある。また、マットレス10の部分E(図1参照)は、横臥者の頭や肩を受け止める部分であり、部分Aは足を受け止める部分であるので、それら部分E,Aには、同様に圧力がかかり易い。本実施形態では、この中央部Cや部分A,Eにおいて、溝30により受部39が複数に分割されているので、受部39を変形させ易くすることが可能となり、より体圧分散性の向上が期待できる。しかも、中央部Cや部分A,Eの溝30の分布が密になることで、第1層11をより変形させ易くすることが可能となり、従来よりもより一層の体圧分散性の向上が期待できる。
【0026】
また、本実施形態のマットレス10によれば、以下のように、ギャッチアップ時の腹圧を低減させる効果も期待できる。図2及び図13に示すように、仰向けになった横臥者の上体を起こす背上げギャッチアップをするときには、上体がずれ落ちないように臀部を支持するため、ベッド90うち膝裏の部分を盛り上げる膝上げギャッチアップをすることがある。この場合、上体と膝とが上側に上がることで、腹部に対して上側と下側から圧力がかかる(腹圧がかかる)と考えられ(図13の矢印の向きを参照)、横臥者が腹部付近等につらさを感じるという問題が生じる。このとき、マットレス100の長手方向の中央部C(臀部付近)は、上面が凹面となるような谷折り状態となるため、マットレス100の上面が、ギャッジアップ前よりも縮むこととなる。そして、横臥者の太もも裏や臀部とマットレス100(部分B)との間、及び、背中とマットレス100(部分D)との間が、摩擦により固定されると、横臥者の体が縮まるように力を受けると考えられる(図13の矢印の向きを参照)。このため、腹圧や、背中と臀部における圧迫感やつっぱり感等のつらさを感じ易くなる。しかも、背上げされると、仰向けになった横臥者の背面は、伸びるように曲げられ、マットレス100の上面の縮む向きとは反対の向きにずれようとするので、上記摩擦がより強くなり、上記つらさをより感じ易くなると考えらえる。
【0027】
ここで、健常者であれば、自力で動いて体とマットレスを一旦離すことで、それらの間の圧を逃がすことができると考えられ、楽になることができる。一方、自力で体を動かすのが困難な横臥者は、体とマットレスを一旦離す背抜き作業を他者にしてもらう必要があり、すぐに楽になれないという問題もある。
【0028】
これに対し、本実施形態のマットレス10(図2参照)では、幅方向に延びる溝30を有することで、第1層11を薄くする部分が設けられるので、溝30が無い一定厚さの従来のマットレス100(図13参照)に比べて、横臥者をマットレス10の長手方向に縮ませようとする力を低減させることが可能となり、腹圧等の上記つらさの緩和が可能となると考えられる。また、本実施形態のマットレス10では、溝30を有することで、第1層11の上面のうち横臥者を受ける受部39(図2等参照)が長手方向で分断されるので、溝30が無い構成に比べて、マットレス10の上面が長手方向でずれ易くなり、体にかかる長手方向の力(例えば体が縮む向きに受ける力等)を逃がすことが可能となると考えられる。
【0029】
また、背上げギャッチアップされていると、上記背抜き作業後でも、重力により上体がマットレス100に対して下側にずれるように付勢されることが考えられる(図13の矢印の向きを参照)。ここで、マットレスと体との間には上述のように摩擦が生じるため、横臥者が、つっぱり感等のつらさを感じることが考えられる。これに対し、本実施形態のマットレス10では、上述のように、溝30により長手方向でマットレス10の上面が分断されているので、溝30同士の間の受部39が、横臥者の体に合わせて長手方向に(下方に)移動(変形)し易くなり、つっぱり感等のつらさの低減を図ることも期待できる。
【0030】
また、背上げと膝上げのギャッチアップが行われると、臀部や太もも付近にマットレスの厚さ方向にも圧迫感を感じることが考えられるが、溝30によってマットレス10の上面が分断されていることで、分断されていない場合よりも、受部39をマットレス10の厚さ方向に圧縮させ易くすることも可能となる。これにより、臀部や太もも付近の圧迫感の低減も図ることが可能となると考えられる。
【0031】
また、幅方向に延びる溝30を上面に有することで、厚さが一定の従来のマットレス100に比べて、マットレス10が曲がり易くなるので、ギャッチアップ時にマットレス10がうねって中央部Cの上面に部分的な盛り上がりができることが抑制され、背中や腰に違和感を覚えさせることを抑制可能となる。
【0032】
なお、図10及び図11に示す例でも、第1層11の溝30が設けられることで、第1層11の上面のうち横臥者を受ける受部39が長手方向で分断されると共に、第1層11に厚さを薄くする部分が設けられる。従って、マットレス10の折り曲げ時に、横臥者の体を縮ませようとする力を抑制可能となり、腹圧の低減を図ることが可能となる。
【0033】
また、上述のように膝上げギャッチアップをして膝を曲げさせるときには、図9に示すように、マットレス10のうち使用者の膝裏の部分は、臀部付近(図8参照)とは反対側に曲がる(上側に凸となるように曲がる)。これに対し、本実施形態のマットレス10では、溝30が、第1層11の両面に設けられているので、第1層11を(即ち、マットレス10を)、どちら側に折り曲げる場合でも、容易に折り曲げることが可能となる。
【0034】
図7に示すように、本実施形態の例では、溝30の底面32における溝幅方向の中央Pから互いに対向する1対の幅狭部31へ引いた接線同士のなす角度αが、30度以上になっている。ここで、医療現場や介護現場では、ベッド90の水平からのリクライニング角度θ(図2参照)について、誤嚥防止のためには30度以上つけることが一般的であり、また、床ずれ予防のためにリクライニング角度θを30度以上変化させることが一般的である。従って、上記接線同士のなす角度αが30度以上になっていると、第1層11のうち溝30が形成された部分が30度まで折り曲げられるまで、幅狭部31同士が当たらないかほぼ当たらないこととなる。その結果、第1層11を(即ち、マットレス10を)より折り曲げ易くなり、ベッド90のリクライニングにマットレス10を追従させ易くなる。また、一つの溝30の角度αが30度以上あると、その溝30がある部分でマットレス10を局所的に折り曲げることが可能となるので、マットレス10の折り曲げがより容易となる。
【0035】
また、溝30の側面33に設けられた湾曲膨出面33Tが円弧状になっているので、開口34が閉じるようにマットレス10が曲げられたときに、幅狭部31同士が当接してからも湾曲膨出面33T同士を当接させながらさらに開口34を閉じるように第1層11を曲げることが可能となり(図8参照)、マットレス10をより一層曲げ易くすることが可能となる。
【0036】
[他の実施形態]
(1)マットレス10は、医療用や介護用のベッドに載置されるものでなくてもよい。本開示のマットレス10では、例えば、収納時等に丸めたり折りたたんだりする場合にも、曲がり易くなるので好適である。
【0037】
(2)上記実施形態において、マットレス10は、例えば袋状等のカバーで覆われて使用されてもよい。
【0038】
(3)上記実施形態では、溝30が、第1層11の表裏の両面に設けられていたが、第1層11の表裏の一方の面のみに設けられていてもよい(図12(A)、図12(B)及び図12(C)参照)。なお、第1層11の表裏の面のうち溝30が形成されていない面は、平坦面であってもよいし、この面に第1層11の幅方向に延びる溝30の代わりに長手方向に延びる溝が形成されていてもよい。
【0039】
(4)上記実施形態では、第2層12の表裏の両面が平坦であったが、第2層12の表裏の少なくとも一方の面に、第2層12の長手方向に延びる溝が形成されていてもよい。また、第2層12のうち第1層11側を向く面に、第2層12の幅方向に延びる溝が形成されていてもよい(図12(C)参照)。
【0040】
(5)上記実施形態では、溝30が、第1層11において、表裏で長手方向の同じ位置に形成されていたが、表裏で異なる位置に形成されていてもよい。また、第1層11の表裏で溝30の数が異なっていてもよい。
【0041】
(6)上記実施形態では、溝30の分布が、第1層11の長手方向で変化していたが、一定であってもよい。
【0042】
(7)上記実施形態では、溝30が全て同じ形状であってが、一部の溝30が他の溝30と異なる形状になっていてもよい。
【0043】
(8)上記実施形態では、溝30の配置が、第1層11の長手方向で対称になっていたが、非対称になっていてもよい。
【0044】
(9)本実施形態の例では、マットレス10は、第1層11と第2層12からなる2層構造をなしていたが、第1層11と第2層12を含む3層以上の積層構造をなしていてもよい。この場合、例えば、第1層11と第2層12が最外層となり、それらの間に1つ以上の層が配置されていてもよいし、第1層11と第2層12の少なくとも一方が、最外層となっていなくてもよい。マットレス10が3層以上の構造となる場合、第1層11と第2層12以外の層には、幅方向又は長手方向に延びる溝が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。複数層同士を接着する積層構造としては、2層構造が、層間の接着材を少なくすることができるので、マットレス10の通気性を確保し易くなり、横臥者の蒸れ難さの観点から好ましい。なお、マットレス10を単層構造としてもよい。この場合、例えば、図1に示される第1層11のみからなるマットレス10であってもよい。
【0045】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果や変形例等を示しつつ説明する。
【0046】
例えば、以下の特徴群は、マットレスに関し、「例えばリクライニング式ベッドで横臥者の上体を起こすとき等に、マットレスが曲げられることがある(例えば、再表2017/183670号公報(図5等)参照)。」という背景技術について、「従来よりも曲げ易いマットレスが求められている。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来のマットレスに対して、従来にない新たなマットレスの開発が望まれている。
【0047】
[特徴1]
第1層と第2層とを積層したマットレスであって、
前記第1層は、表裏の少なくとも一方の面に、幅方向に延びる溝を備え、
前記第2層は、前記第1層とは反対側の面に、幅方向に延びる溝を有しないマットレス。
【0048】
本特徴では、溝が第1層の幅方向に延びているので、第1層を、即ちマットレスを、長手方向の途中で容易に曲げることが可能となる。
【0049】
[特徴2]
前記溝は、前記第1層の表裏の両面に、前記第1層の長手方向でそれぞれ複数設けられ、前記表裏の前記溝同士が、前記長手方向の同じ位置に配置されている特徴1に記載のマットレス。
【0050】
本特徴では、第1層の表裏の溝同士が、第1層の長手方向の同じ位置に配置されているので、第1層においてそれら溝が形成された箇所の厚さをより薄くすることができ、マットレスをより曲げ易くすることが可能となる。
【0051】
[特徴3]
前記第2層は、前記第1層より硬度が低い及び/又は反発弾性率が大きい特徴1又は2に記載のマットレス。
【0052】
本特徴によれば、第1層と第2層を異ならせることで、マットレスの使用者の好みや症状に合わせて、第1層と第2層の何れを上側に配置するかを選択することができ、選択の幅を広げることが可能となる。
【0053】
第2層よりも硬度が高い第1層に幅方向に延びる溝が設けられることで、マットレスをより効果的に曲げ易くすることが可能となる。
【0054】
[特徴4]
前記第2層は、前記第1層より薄い特徴1から3の何れか1の特徴に記載のマットレス。
【0055】
本特徴では、第1層の方が第2層よりも厚いので、第1層が曲げ難くなるところ、第1層に溝が設けられるので、マットレスをより効果的に曲げ易くすることが可能となる。
【0056】
[特徴5]
前記溝の深さは、前記第1層の厚さの半分未満になっている特徴1から4の何れか1の特徴に記載のマットレス。
【0057】
[特徴6]
前記溝は、前記第1層の表裏の両面に形成され、
前記第1層の厚さ方向の途中には、前記第1層の両面の前記溝が共に到達していない部分が設けられている特徴1から5の何れか1の特徴に記載のマットレス。
【0058】
本特徴によれば、第1層の強度の確保することが可能となる。
【0059】
[特徴7]
前記溝は、複数設けられ、それら溝の分布が前記第1層の長手方向で異なり、
前記第1層の長手方向の中央部では、その両側における前記長手方向の中央寄り部分よりも、前記複数の溝の分布が密になっている特徴1から6の何れか1の特徴に記載のマットレス。
【0060】
[特徴8]
前記第1層の長手方向の両端部又は両端寄り部分では、前記中央寄り部分よりも前記複数の溝の分布が密になっている特徴7に記載のマットレス。
【0061】
[特徴9]
表裏の少なくとも一方の面に、幅方向に延びる溝を備えるマットレスであって、
前記溝は、複数設けられ、それら溝の分布が前記マットレスの長手方向で異なり、
前記長手方向の中央部は、その両側における前記長手方向の中央寄り部分よりも、前記複数の溝の分布が密になっている特徴1又は2に記載のマットレス。
【0062】
特徴7~9では、マットレスの長手方向の中央部、即ち、折り曲がる頻度の高い部分の溝の分布が密になる。従って、マットレスの折り曲げ易さの恩恵を受け易くなり、使い勝手を一層良くすることが可能となる。また、マットレスの長手方向の中央部は、横臥者の臀部や骨盤等のように張り出した部分に当たり易い部分にもなり、圧力がかかり易い部分でもある。特徴7~9では、この中央部の溝の分布が密になることで、第1層をより変形させ易くすることが可能となり、従来よりも圧力の分散性を良くすることが期待できる。なお、例えば、特徴9のマットレスは、積層構造であってもよいし、単層構造であってもよい。また、例えば、特徴9のマットレスは、溝が片面にのみ設けられる構成であってもよい。
【0063】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0064】
10 マットレス
11 第1層
12 第2層
30 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
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