(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172415
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】清掃用ウェットシート
(51)【国際特許分類】
A47L 13/17 20060101AFI20231129BHJP
A47L 13/20 20060101ALI20231129BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20231129BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20231129BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20231129BHJP
A01N 47/12 20060101ALI20231129BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20231129BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20231129BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20231129BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A47L13/17 A
A47L13/20 A
A47K7/00 G
A47K7/00 F
A61L2/18
A01N25/34 A
A01N47/12 Z
A01N47/44
A01N33/12 101
A01N43/40 101K
A01P1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084195
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昭晃
【テーマコード(参考)】
3B074
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074CC03
3B074EE00
4C058AA07
4C058BB07
4C058CC02
4C058JJ08
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB09
4H011BB11
4H011BB13
4H011DA07
4H011DD05
(57)【要約】
【課題】拭き掃除を行った後の被清掃面にカビが発生するのを抑えることができる清掃用ウェットシートを実現する。
【解決手段】原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシート100であって、薬液は、少なくともブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアニド、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムを含有しており、その薬液中、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量は0.005質量%以上0.02質量%以下とする。また、その薬液は酸性を呈するように調整されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、少なくともブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアニド、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムを含有していることを特徴とする清掃用ウェットシート。
【請求項2】
前記薬液中、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量は0.005質量%以上0.02質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項3】
前記薬液は、酸性を呈するように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項4】
前記原紙シートには、第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスと、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスとがそれぞれ複数形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項5】
当該清掃用ウェットシートは、バスルーム清掃用のウェットシートであることを特徴とする請求項4に記載の清掃用ウェットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭き掃除を行った後の被清掃面にカビが発生するのを抑えることができる清掃用ウェットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体の汚れや汗などを拭き取るのに使うウェットシート(ウェットティッシュ)がある。そのようなウェットシートには積層タイプのシートとロールタイプのシートがあり、複数枚のウェットシートが所定の袋や容器に収納されている。
そして近時、乳幼児のような皮膚刺激に対して敏感なユーザーでも安心して使うことができるものとして、エタノールを使用しないウェットシートの要望があるが、エタノールが不使用であると複数枚のシートを使い終える前に、袋や容器内でウェットシートにカビなどが繁殖してしまうことが懸念される。
そのため、エタノール不使用であっても、カビなどが繁殖するのを防止できるウェットシート(ウェットティッシュ)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バスルームでカビが繁殖するのを防止するのに、防カビ燻煙剤が用いられるが、防カビ燻煙剤では既に発生したカビを除去することはできない。
そのため、既に発生したカビを除去する場合には、壁面や天井などに薬液をスプレーで塗布して掃除することが一般的であるが、天井に塗布した薬液が滴り落ちることがあり、それには注意を要するので、カビ取り掃除は煩雑なものであった。
そこで、本発明者らは鋭意検討し、カビなどの汚れを拭き取りつつ、拭き掃除を行った後の被清掃面に防カビ効果を付与することができる清掃用シートを開発するに至った。
【0005】
本発明の目的は、拭き掃除を行った後の被清掃面にカビが発生するのを抑えることができる清掃用ウェットシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
原紙シートに薬液が含浸された清掃用ウェットシートであって、
前記薬液は、少なくともブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアニド、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムを含有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用ウェットシートにおいて、
前記薬液中、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量は0.005質量%以上0.02質量%以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用ウェットシートにおいて、
前記薬液は、酸性を呈するように調整されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートにおいて、
前記原紙シートには、第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスと、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスとがそれぞれ複数形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の清掃用ウェットシートであって、
当該清掃用ウェットシートは、バスルーム清掃用のウェットシートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、拭き掃除を行った後の被清掃面にカビが発生するのを抑えることができる清掃用ウェットシートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の清掃用ウェットシートが取り付けられた清掃具を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の清掃用ウェットシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃用ウェットシート100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されず、あくまで特許請求の範囲の記載を基に判断される。
なお、以下においては、
図1に示したように、前後、左右、上下、X方向、Y方向及びZ方向を定めて説明する。また、本明細書において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0014】
[1.構成の説明]
まず、清掃用ウェットシート100の構成について説明する。
【0015】
[(1)使用時の状態]
図1に示すように、清掃用ウェットシート100は、例えば、矩形の平板状のヘッド部201と、ヘッド部201の上面に取り付けられた柄部202と、を備えた清掃具200に交換可能に装着されて床面や壁面や天井の清掃に用いられるシートであり、原紙シートに薬液が含浸されたシートである。
長尺な棒状の柄部202を備えている清掃具200のヘッド部201に清掃用ウェットシート100を装着して使用することで、床面はもちろん、壁面の高所や天井の拭き掃除を行い易くなる。
なお、ここで原紙シートとは、清掃用ウェットシート100の薬液が含浸される前の状態のことを言う。
【0016】
清掃用ウェットシート100は、
図2に示すように矩形状に形成され、清掃具200のヘッド部201の底面を覆って清掃面を形成し、清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り線Sで折り曲げられてヘッド部201の上面に係止され、清掃具200に装着された状態となる。
なお、長手縁部201aとは、ヘッド部201の長手方向に沿った縁部を指す。すなわち、矩形のヘッド部201の4つの縁部のうちの、長い方の2つの縁部を指す。
【0017】
[(2)原紙シート]
原紙シートは、所定の繊維間をスパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術によって結合することで製造される不織布である。
【0018】
具体的には、原紙シートとしては、例えば、親水性繊維と疎水性繊維とを混合させた上で、これら繊維を結合させることで製造された不織布を用いる。
【0019】
[a 親水性繊維]
親水性繊維としては、綿、パルプ、麻等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維等を使用することができるが、保水性を維持する観点からパルプ、レーヨン、ポリプロピレンスパンボンド繊維(PPSB)等を使用することが好ましい。
また、原紙シートを構成する繊維中の親水性繊維の配合割合は、35質量%~75質量%であることが好ましい。
【0020】
[b 疎水性繊維]
疎水性繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテフレタレート(PBT)等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の複合繊維としては、相対的に融点の低い樹脂(低融点樹脂)を鞘部、相対的に融点の高い樹脂(高融点樹脂)を芯部とした芯鞘型や、低融点樹脂と高融点樹脂とが所定方向に並列したサイドバック型等が挙げられる。
また、原紙シートを構成する繊維中の疎水性繊維の配合割合は、25質量%~65質量%であることが好ましい。
【0021】
[c 目付け量]
原紙シートの目付け量は、汚れの保持能力と、シートの柔軟性とを両立する観点から、50~100g/m2であることが好ましい。なお、目付け量は、JIS P8124:2011に従って測定した坪量のことをいう。
【0022】
[(3)薬液]
上記のような原紙シートに含浸される薬液としては、少なくともブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアニド、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムを含有しているものを使用する。
ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル(IPBC)は、主に真菌類に対して防腐効果を発揮する防腐剤である。薬液中、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量は0.005質量%~0.02質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、製造コストを適正な範囲に抑えつつ、良好な防カビ効果を発揮する。
ポリアミノプロピルビグアニドは、カチオン系の防腐剤である。薬液中、ポリアミノプロピルビグアニドの含有量は0.05質量%~0.1質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、製造コストを適正な範囲に抑えつつ、良好な防カビ効果を発揮する。
塩化ベンザルコニウムは、カチオン系の防腐剤である。薬液中、塩化ベンザルコニウムの含有量は0.05質量%~0.125質量%であることが好ましい。0.05質量%未満であると防腐効果が発現し難く、0.125質量%を超えると皮膚刺激が強くなるおそれがある。
塩化セチルピリジニウムは、高い抗カビ作用を有するカチオン系界面活性剤である。薬液中、塩化セチルピリジニウムの含有量は0.01質量%~0.03質量%であることが好ましい。0.01質量%未満であると防腐効果が発現し難く、0.03質量%を超えると泡立ちが発生し製造工程に支障をきたすおそれがある。
【0023】
また、薬液は、原紙シートの乾燥時の質量に対して、150質量%~450質量%含浸させるが、好ましくは180質量%~350質量%である。
薬液は、乾燥させた原紙シートに対して含浸され、清掃用ウェットシート100の使用時に清掃面から放出されることとなる。
【0024】
[(4)エンボス]
図1及び
図2に示すように、清掃用ウェットシート100には、シートに凹凸を生じさせ、当該凹凸によって汚れを掻き取ることで、被清掃面の汚れに対する拭き取り性能を向上させるため、シートがZ方向に圧縮された部分であるエンボス20が配置されている。
エンボス20は、例えば
図2に示すように、平面視において、一方向に短尺で幅が狭い細長の楕円形状であり、長軸方向略中央部にくびれ部を有する、いわゆるひょうたん形に形成されている。エンボス20の形状としてはこれに限られず、例えば、多角形等種々の形状や、各形状を組み合わせた形状としてもよいが、汚れの掻き取り性向上の観点からは、このようなひょうたん形とするのが好ましい。
【0025】
かかるエンボス20は、例えば、温度80℃~200℃、エンボス圧0.2MPa~1.0MPaの条件による熱エンボスにて形成することができる。熱エンボスによりエンボス20を形成する場合、凸エンボスロールとしては、少なくとも外周面が炭素鋼、ステンレス鋼あるいはポリプロピレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等の硬化樹脂等からなるものを用いることができるが、中でも耐久性や耐熱性の観点から、ステンレス鋼からなるものを用いるのが好ましい。
また、熱エンボスによりエンボス加工を行う場合は、清掃用ウェットシート100に薬液を含浸させる工程の前に行うのが、凹凸形状の付与し易さの観点から好ましい。
【0026】
[a 凸エンボス、凹エンボス]
エンボス20としては、Z方向上側(清掃用ウェットシート100の第1面側)に凸型となる凸エンボス21と、下側(清掃用ウェットシート100の第2面側)に凸型となる(すなわち、Z方向上側に凹型となる)凹エンボス22と、が形成されている。なお、各図においては、凸エンボス21を実線、凹エンボス22を破線で示している。
【0027】
凸エンボス21は、長軸方向において5mm~10mm、好ましくは6mm~8mmであり、長軸方向と直交する短軸方向において2mm~5mm、好ましくは3mm~4mmであり、Z方向において(中間部(後述)からの高さ)0.5mm~2mm、好ましくは0.7mm~1.5mmに形成される。凹エンボス22は、断面視において、凸エンボス21と上下逆さまに、かつ、略同一の形状に形成され、Z方向下側に向かって凸となる形状に形成されている。
【0028】
[b 中間部]
清掃用ウェットシート100に形成された各エンボス20の間には、中間部が形成されている。中間部は、エンボス20が形成されていない部分であるため、Z方向において、凸エンボス21よりも低く、凹エンボス22よりも高い位置となる。
【0029】
[c エンボスパターン]
本実施形態の清掃用ウェットシート100においては、例えば
図2に示すように、第1の辺aから直交する第1方向(
図2においてはX方向)と長軸方向のなす角度が、5°~45°、好ましくは15°~35°となるような凸エンボス21と凹エンボス22との組み合わせからなる、ひし形状の第1のエンボスブロック30が、第1の辺aから第2の辺bまで連続してエンボスブロック列31をなし、当該エンボスブロック列31が、第3の辺cから第4の辺dまで連続して複数配置され、隣り合う第1のエンボスブロック列31と第2のエンボスブロック列31において、当該第1のエンボスブロック列31内の第1のエンボスブロック30が、当該第2のエンボスブロック31列内の隣り合う第2のエンボスブロック30と、第1方向と直交する第2方向(
図2においてはY方向)に重なりを有し、第3の辺c上の任意の点から第4の辺dに垂直に伸ばした直線上に、少なくとも一つの凸エンボス21及び凹エンボス22が存在するように配置される。
【0030】
[d 非エンボス部]
図2に示すように、隣り合うエンボスブロック30同士の間には、清掃用ウェットシート100のエンボス20が形成された部分と比較してZ方向に圧縮されておらず、起毛を有している部分である非エンボス部40が設けられている。
【0031】
非エンボス部40は、エンボス20を形成する凸エンボスロールを、非エンボス部40の形状を除くようにデザインすることで、あるいは、起毛が残存する程度に、エンボス20の圧縮がなされている部分と比較して軽度に圧縮することで形成することができる。
このような非エンボス部40が、清掃用ウェットシート100の面積に対して25%~50%設けられていることで、拭き筋の発生を低減し、拭き取り性に優れた清掃用ウェットシート100とすることができる。なお、非エンボス部40は、清掃用ウェットシート100の面積に対して25%設けることが最も好ましい。
【0032】
なお、清掃具200に清掃用ウェットシート100を取り付けて拭き掃除を行う場合は、X方向又はY方向に略垂直に動かされるのが通常であるが、
図2に示すように、非エンボス部40が一直線状となるように形成されている場合、清掃用ウェットシート100を動かす角度によっては拭き筋が発生しやすくなるおそれがある。そこで、非エンボス部40が一直線状とならないようにエンボスブロック30を配置するのが、より望ましい。
【0033】
[2.効果の説明]
本実施形態の清掃用ウェットシート100には、第1の面に凸となるエンボスである凸エンボス21と、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボス22とがそれぞれ複数形成されてなる、エンボスブロック30(エンボスブロック列31)が設けられている。
このような清掃用ウェットシート100であれば、エンボス20(凸エンボス21、凹エンボス22)の凹凸によって被清掃面の汚れを掻き取ることができ、好適に汚れを拭き取る拭き掃除を行うことを可能にする。
【0034】
特に、本実施形態の清掃用ウェットシート100には、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアニド、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムを含有し、抗カビ性能を有している薬液が含浸されているので、清掃用ウェットシート100で拭いた被清掃面にその薬液を塗布することができ、その被清掃面に防カビ効果を付与することができる。
【0035】
このように、本実施形態の清掃用ウェットシート100であれば、拭き掃除を行った後の被清掃面に防カビ効果を付与することができるので、例えば、バスルームに発生したカビ汚れを拭き取りつつ、その被清掃面に防カビ効果を付与することができる。
そして、
図1に示したように、長尺な棒状の柄部202を備えている清掃具200のヘッド部201に清掃用ウェットシート100を装着して使用すれば、バスルームの天井など高所の拭き掃除を好適に行うことができるので、薬液をスプレーで塗布して掃除するよりも容易にバスルームのカビ掃除を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態の清掃用ウェットシート100によれば、上記のようにエンボス20が配置されていることで、シートの凹凸によって汚れに対する拭き取り性能を向上させることができるとともに、以下の効果を得ることができる。
【0037】
すなわち、通常、ヘッド部201を有する清掃具200に清掃用ウェットシート100を取り付けて拭き掃除を行う際には、第1方向(
図2においてはX方向)又は第2方向(
図2においてはY方向)に動かされるが、凸エンボスがこのような第1方向又は第2方向に沿って揃うように直列に配置されていると、凸エンボスによる拭き取りが行われなかった箇所(いわゆる「拭き筋」)が被清掃面に発生してしまうことがあり、拭き筋を視認した使用者は、薬液がまだシート内に残存しているにも関わらず、薬液が尽きて乾燥してきたと判断してシートを破棄してしまい、不要に多くのシートを使用してしまうことがある。
【0038】
これに対し、上記のようなエンボスパターンを有し、第3の辺c上の任意の点から第4の辺dに垂直に伸ばした直線上に、凸エンボス21が少なくとも一つ存在するように配置されている清掃用ウェットシート100が取り付けられている場合、少なくとも第2方向(
図2においてはY方向)に拭き掃除を行った際に、凸エンボス21同士が重なりしろを有するようになるため、拭き筋の発生を低減することができる。
【0039】
また、清掃用ウェットシート100の全面にエンボス20を設けずに、各エンボスブロック30の間に、非エンボス部40を、清掃用ウェットシート100の面積に対して25%~50%設けることで、清掃用ウェットシート100で拭き掃除を行う際に、非エンボス部40よりも突出した凸エンボス21がより大きい圧力を受けるため、薬液の放出性が向上して拭き筋の発生をより低減することができる。
また、凸エンボス21がより大きい圧力を受けることで、凸エンボス21の掻き取り性が向上し、かつ、非エンボス部40にゴミが溜まりやすくなるため、ごみの捕集性を高めることができる。また、凸エンボス21の掻き取り性や清掃用ウェットシート100のごみの捕集性が高まっても、凸エンボス21によって非エンボス部40が被清掃面に接地しにくくなる分、拭き抵抗の増加を抑制することができる。
【0040】
また、エンボスブロック30が、第1方向と長軸方向のなす角度が5°~45°、好ましくは15°~35°となるようなエンボス20からなる、ひし形状のものであることで、第1の辺aから第2の辺bまで連続して配置してなるエンボスブロック列31を、第3の辺cから第4の辺dまで連続して複数配置した際に、エンボスブロック30が必然的に清掃用ウェットシート100の第1方向に対してずれるように配置される。また、使用者が拭き掃除を行う際に、清掃用ウェットシート100を動かす角度に余裕が生まれるようになる。
【0041】
また、エンボス20が、楕円形状であり、長軸方向の略中央部にくびれ部を有する形状であることで、汚れの掻き取り性能を高めることができる。
【実施例0042】
次に、本発明の実施例について評価した結果を説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<薬液サンプル作成>
カビ掃除用の薬液として、表1に示す成分とその配合(質量%)によって、酸性処方の薬液(pH3.16)とアルカリ性処方の薬液(pH8.91)を調整した。
【0044】
【0045】
また、原紙シートとして、繊維の配合がPET/パルプ/PP/PP・PE=45/35/15/5であって、目付量が100g/m
2の不織布に、
図2に示したエンボス加工を施したものを用いた。
この原紙シートに酸性処方の薬液を200%含浸させた清掃用ウェットシートのサンプルと、原紙シートにアルカリ性処方の薬液を200%含浸させた清掃用ウェットシートのサンプルを作成した。
【0046】
<防カビ試験方法>
ユニットバスによく使用されるFRP板(繊維強化プラスチック板)の表面を清掃用ウェットシート100で拭き掃除する際の再現試験を行った。
ここでは、50mm×50mmのFRP板を左右に5枚並べて設置し、その右端に清掃用ウェットシートのサンプルを置き、そのサンプルの上に150gの錘を載せる。
そして、錘を載せた状態の清掃用ウェットシートのサンプルを5枚のFRP板の左端に約2秒かけて移動させた後、その左端から右端に約2秒かけて移動させる。
このようにFRP板上に載置した清掃用ウェットシートのサンプルを1往復させる模擬拭き掃除を行った。具体的には、300mlビーカーの底に清掃用ウェットシートのサンプルを括り付け、そのビーカーに水を10ml程度入れて150gとしたものを1往復させた。なお、5枚のうち中央に設置したFRP板を試験に用いることとした。
こうして、酸性処方の薬液が含浸された清掃用ウェットシートのサンプルで拭き掃除されたFRP板と、アルカリ性処方の薬液が含浸された清掃用ウェットシートのサンプルで拭き掃除されたFRP板を、それぞれ2枚得た。
なお、錘の150gは、フロアワイパーとしての清掃具200を用いて拭き掃除する際の再現として設定した。
【0047】
各サンプルで拭いたFRP板のうちの1枚は、模擬拭き掃除後に自然乾燥させた。
こうして、酸性処方拭き掃除試料(試料A)と、アルカリ性処方拭き掃除試料(試料B)を得た。
【0048】
また、各サンプルで拭いたFRP板のうちの残り1枚に対しては、被清掃面に蒸留水5mlを霧吹きスプレーによって吹きかけた後、自然乾燥させた。
こうして、酸性処方拭き掃除後に流水処理した試料(試料C)と、アルカリ性処方拭き掃除後に流水処理した試料(試料D)を得た。
なお、蒸留水の5mlは、被清掃面5cm2に0.5秒シャワーで水をかける際の水量の再現として設定した。
【0049】
次いで、上記4種の試料(A~D)をそれぞれシャーレ内のグルコース添加無機塩寒天平板培地上にのせ、混合胞子懸濁液0.1mLを試料および寒天平板培地の全面に接種し、その寒天平板培地を恒温槽内(29±1℃、相対湿度95%以上の環境下)で4週間培養した。
そのシャーレ内で発育したカビを観察し、そのカビの発育状態を下記の6段階で評価した。
なお、この防カビ試験は、JIS Z 2911に準拠した試験であり、未処理の試料と比較して1段階以上の差があればその効果が認められる。
6段階評価
「0」;肉眼および顕微鏡下でカビの発育は認められない。
「1」;肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡下では明らかに確認できる。
「2」;肉眼でカビの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%未満。
「3」;肉眼でカビの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%以上
50%未満。
「4」;菌糸はよく発育し、発育部分の面積は試料の全面積の50%以上。
「5」;菌糸の発育は激しく、試料全面を覆っている。
【0050】
<試験結果>
以下に、4種の試料(A~D)とブランクの評価を示す。
・酸性処方拭き掃除試料(試料A) ;評価「3」
・アルカリ性処方拭き掃除試料(試料B) ;評価「1」
・酸性処方・流水処理試料(試料C) ;評価「4」
・アルカリ性処方・流水処理試料(試料D) ;評価「4」
・未処理試料(ブランク) ;評価「5」
【0051】
この結果から、4種の試料(A~D)に防カビ効果が付与されていることがわかる。
特に、アルカリ性処方の薬液が含浸されているシートで模擬拭き掃除された試料Bに付与された防カビ効果が高いことがわかる。
酸性処方の薬液が含浸されているシートで模擬拭き掃除された試料Aにも十分な防カビ効果が付与されていることがわかる。
また、清掃用ウェットシートで拭き掃除した後、被清掃面にシャワーで水をかけると、その防カビ効果が低下することがわかる。
【0052】
以上の結果から、アルカリ性処方の薬液が含浸されている清掃用ウェットシート100であっても、酸性処方の薬液が含浸されている清掃用ウェットシート100であっても、拭き掃除を行った後の被清掃面に防カビ効果を付与することができる。
特に、アルカリ性処方の薬液(アルカリ性を呈する薬液)が含浸されている清掃用ウェットシート100による防カビ効果が高い。
【0053】
また、
図2に示したような、エンボスブロック30(エンボスブロック列31)が設けられている清掃用ウェットシート100であれば、アルカリ性/酸性どちらの薬液であってもエンボス20(凸エンボス21、凹エンボス22)の凹凸によって被清掃面の汚れを掻き取ることができ、好適に汚れを拭き取る拭き掃除を行うことができる。
特に、バスルームにおいて、水アカや石けんカスがついた跡、通称「ウロコ汚れ」を除去する掃除には、酸性処方の薬液が含浸されている清掃用ウェットシート100の方がその汚れの除去率が高く、良好に掃除することができる。
つまり、酸性処方の薬液(酸性を呈する薬液)が含浸されている清掃用ウェットシート100であれば、バスルーム清掃用のウェットシートとして、汚れを拭き取る掃除を良好に行うことができ、拭き掃除を行った後の被清掃面にカビが発生するのを抑えることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態の清掃用ウェットシート100であれば、好適に汚れを拭き取ることができ、拭き掃除を行った後の被清掃面にカビが発生するのを抑えることができる。
【0055】
また、この清掃用ウェットシート100を、長尺な棒状の柄部202を備えている清掃具200(フロアワイパー)のヘッド部201に装着して使用すれば、バスルームの天井など高所の拭き掃除を好適に行うことができるので、薬液をスプレーで塗布して掃除したり、バスルームに脚立などを持ち込んで掃除したりするよりも容易にバスルームのカビ掃除を行うことができる。
つまり、本実施形態の清掃用ウェットシート100とフロアワイパーなどの清掃具200を組み合わせて使い、床面や壁面はもちろん、カビ掃除し難い天井など高所の拭き掃除を行うようにすれば、防カビ燻煙剤を使用することなく、被清掃面にカビが発生するのを抑え、バスルームをきれいな状態で維持し易くなる。
【0056】
なお、以上の実施の形態においては、清掃用ウェットシート100を用いてバスルームを掃除する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、洗面所やトイレなどの水回りの掃除に清掃用ウェットシート100を用いてもよく、また清掃具200を使わずに、手に持った清掃用ウェットシート100で拭き掃除するようにしてもよい。
【0057】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。