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特開2023-172423複数加工室用ミスト捕集捕集システム
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  • 特開-複数加工室用ミスト捕集捕集システム 図1
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  • 特開-複数加工室用ミスト捕集捕集システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172423
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】複数加工室用ミスト捕集捕集システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B23Q11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084209
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】赤津 典孝
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011AA00
(57)【要約】
【課題】複数の加工室におけるミストの捕集を一台のミストコレクタによって適切に行う複数加工室用ミスト捕集システムを提供すること。
【解決手段】加工室内で発生したミストを捕集するミストコレクタと、前記ミストコレクタを複数の加工室に接続する分岐したダクトと、複数の前記加工室に対応して設けられた前記ダクトの分岐部分に配管された複数の電動式のダクトシャッタと、前記ミストコレクタおよび複数ある前記ダクトシャッタのそれぞれの開閉を制御する制御装置と、を有する複数加工室用ミスト捕集システム。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工室内で発生したミストを捕集するミストコレクタと、
前記ミストコレクタを複数の加工室に接続する分岐したダクトと、
複数の前記加工室に対応して設けられた前記ダクトの分岐部分に配管された複数の電動式のダクトシャッタと、
前記ミストコレクタおよび複数ある前記ダクトシャッタのそれぞれの開閉を制御する制御装置と、
を有する複数加工室用ミスト捕集システム。
【請求項2】
前記ダクトシャッタは、対応する前記加工室におけるワーク加工中は閉状態であり、当該加工室における加工処理後のミスト捕集時に開状態に切り換えられる請求項1に記載の複数加工室用ミスト捕集システム。
【請求項3】
全ての加工室においてワークが加工中の場合は前記ミストコレクタの駆動が停止される請求項1または請求項2に記載の複数加工室用ミスト捕集システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加工室を有する工作機械や加工機械ラインにおけるミストの捕集を一台のミストコレクタによって行う複数加工室用ミスト捕集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、加工時に発生する切屑の洗い流しや加工部を冷却する目的などでクーラントが使用され、旋盤による切削加工などが行われる加工室内にはクーラントが飛び散っている。例えば下記特許文献1には、その加工時に発生する切屑やミスト(クーラントや潤滑剤の供給により発生する油煙およびその飛沫など)が非加工領域へ侵入するのを防止するためのミスト捕集システムが開示されている。具体的には、工作機械に加工室内のミストなどを捕集するミストコレクタが設けられ、そのミストコレクタは、加工室との間に吸引ダクトが接続され、また、工作機械内の加工室外領域には供給ダクトが接続されている。
【0003】
前記従来例のミスト捕集システムは、吸引ダクトから送られた空気に含まれているミストなどを取り除いて清浄化された空気を排出し、供給ダクトではミストコレクタから排出された空気が加工室外領域に供給される。したがって、加工室内の切りくずやミストが加工室外領域へ侵入するのを防止することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3228799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来例のミスト捕集システムは、一つの加工室に対するミストの捕集を目的とした構成であり、2軸旋盤のように一台の工作機械に加工室が2箇所に分けられた構成を想定してはいない。例えば、複数ある加工室ごとにミストコレクタを用意したミスト捕集システムではコストがかかり過ぎるほか、対象とする工作機械や加工機械ラインなどの全体が大型化してしまう。一方で、複数の加工室を一台のミストコレクタで対応するならば、ミストコレクタが駆動し続けることになる。そのため、加工中の切粉を吸い込んでしまいダクトを破損させるほか、加工ブローのクーラントを直接吸い込むことによってミストコレクタを破損させる原因となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、複数の加工室におけるミストの捕集を一台のミストコレクタによって適切に行う複数加工室用ミスト捕集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る複数加工室用ミスト捕集システムは、加工室内で発生したミストを捕集するミストコレクタと、前記ミストコレクタを複数の加工室に接続する分岐したダクトと、複数の前記加工室に対応して設けられた前記ダクトの分岐部分に配管された複数の電動式のダクトシャッタと、前記ミストコレクタおよび複数ある前記ダクトシャッタのそれぞれの開閉を制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、分岐したダクトを介してミストコレクタに接続された複数の加工室は、複数のダクトシャッタについて各々開閉制御することにより、開状態のダクトシャッタに対応する加工室はミストコレクタに連通し、閉状態のダクトシャッタに対応する加工室はミストコレクタとの連通が遮断される。従って、ワーク加工中の加工室があったとしてもミストの捕集が必要な加工室のみをミストコレクタに連通させることができ、一台のミストコレクタによって複数の加工室を対象としたミストの捕集を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複数加工室用ミスト捕集システムを搭載した工作機械を示した正面図である。
図2】工作機械の加工室内を簡略化して示した図である。
図3】ダクトシャッタを示した図である。
図4】複数加工室用ミスト捕集システムの第2実施形態を示した加工機械ラインの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る複数加工室用ミスト捕集システムの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、複数加工室用ミスト捕集システムを搭載した工作機械を示した正面図である。この工作機械1は、全体が機体カバー3によって覆われ、正面には中央に操作盤31が配置され、その左右両側に開閉扉32,33が形成されている。工作機械1は、機内において左右対称に旋盤が構成された2軸旋盤であり、開閉扉32,33は、第1加工室35および第2加工室36の正面開口部に設けられたものである。
【0011】
図2は、工作機械1の加工室内を簡略化して示した図である。第1加工室35には第1主軸装置11および第1タレット装置12が配置され、第2加工室36には第2主軸装置13および第2タレット装置14が配置されている。第1および第2主軸装置11,13は、ワークを把持する主軸チャックが設けられ、スピンドルモータの回転を受けて把持したワークに回転を与えるものである。また、第1および第2タレット装置12,14は、多角形の刃物台に複数の工具が着脱可能に取り付けられ、サーボモータの回転制御によって刃物台が旋回し、複数の工具の中から特定の工具の旋回割出しが行われるよう構成されている。
【0012】
そうした工作機械1にはガントリー式のワーク自動搬送機5が設けられ、加工処理にあたってワークの搬送が行われる。第1および第2加工室35,36の天井にはワーク搬入出用の開口部が形成され、そこにスライド式の開閉シャッタ37,38が設けられている。ワーク自動搬送機5によって行われるワークの自動搬送は、その開閉シャッタ37,38が開けられた開口部を通して行われるようになっている。
【0013】
図1に示すように正面から見た工作機械1は、左側に複数の加工前ワークを搭載したワークストッカが配置され、右側には加工済みワークを受け取る回収ストッカが配置されることとなる。そして、ワーク自動搬送機5によって搬送されたワークが第1加工室35と第2加工室36とでそれぞれ所定の加工が行われることとなる。工作機械1は、ワーク加工が行われると第1および第2加工室35,36内において切粉などが発生し、その洗い流しや加工部を冷却するためクーラントが噴射されるようになっている。
【0014】
クーラントを噴射して行うワーク加工では、そのクーラントが加工熱によってミスト状(霧状)になってしまう。そうしたミストは、第1および第2加工室35,36内から外に排出されてしまうと、工作機械1およびその周辺が汚損されてしまうことになる。そのため、第1および第2加工室35,36内で生じたミストは、外へと排出しないように各々の空間内で捕集することが求められる。
【0015】
そこで、工作機械1では加工室内で発生したミストを捕集するためミストコレクタ7が使用される。特に本実施形態では、2軸旋盤の工作機械1に対して一台のミストコレクタ7による複数加工室用ミスト捕集システムが構成されている。このミストコレクタ7は、一般的なフィルタ式ミストコレクタであり、第1および第2加工室35,36からファンによって吸い込んだミストを、複数のフィルタを通過させて下部ドレンから排出するようにしたものである。このミストコレクタ7は工作機械1の制御装置に接続され、加工処理プログラムに従った駆動制御が行われる。
【0016】
ミストコレクタ7は、ミストをファンによって吸い込むため工作機械1に対して分岐したダクト8が接続されている。ダクト8は、分岐した一方の第1ダクト81が第1加工室35へ接続され、もう一方の第2ダクト82が第2加工室36へと接続されている。また、本実施形態の複数加工室用ミスト捕集システムでは、第1ダクト81に電動式の第1ダクトシャッタ21が設けられ、第2ダクト82にも同じく電動式の第2ダクトシャッタ22が設けられている。そして、第1ダクトシャッタ21と第2ダクトシャッタ22は、工作機械1の制御装置によって各々独立した開閉制御が行われるようになっている。
【0017】
図3は、第1ダクトシャッタ21および第2ダクトシャッタ22を示した図である。第1ダクトシャッタ21および第2ダクトシャッタ22は同じ構造のものであり、筒形状のボディ25内部に円形の開閉板26が、その中心位置を通る径方向の回転軸27によって軸支されている。その回転軸27の一方にはギヤモータ28が連結され、反対側には開閉板26を元の閉状態に戻すためのばねが取り付けられている。
【0018】
続いて、工作機械1では、前述したようにワーク自動搬送機によって運ばれたワークが第1加工室35と第2加工室36内でそれぞれ所定の加工が行われる。そうしたワーク加工中にミストコレクタ7のファンが駆動していると、加工ブローのクーラントを直接吸込んでしまうほか、切粉までも吸い込んでしまい破損するおそれがある。しかし、第1加工室35および第2加工室36でのワーク加工が常に同じタイミングで行われているわけではないため、ファンの駆動を停止してしまうと、加工を終了した一方で発生したミストを捕集できず、そのミストが加工室外へと流れてしまう。
【0019】
そこで、本実施形態では、第1加工室35内におけるワークの加工および非加工のタイミングに従って第1ダクトシャッタ21の開閉が制御され、同じく第2加工室36内におけるワークの加工および非加工のタイミングに従って第2ダクトシャッタ22の開閉が制御される。また、本実施形態の複数加工室用ミスト捕集システムでは、第1加工室35および第2加工室36の両方でワーク加工が行われている場合には、第1ダクトシャッタ21および第2ダクトシャッタ22は閉じられミストコレクタ7におけるファンの駆動が停止する。
【0020】
図1の例では、第1ダクトシャッタ21が開けられて第1加工室35とミストコレクタ7との間のダクト8が連通し、ミストコレクタ7の駆動によりファンが回転することによって第1加工室35内のミストが第1ダクト81へと吸い込まれて捕集される。一方で、そのときダクト8によって同じミストコレクタ7に接続されている第2加工室36内ではワークの加工が行われ、切粉やクーラントが飛び散っている。しかし、第2ダクトシャッタ22が閉じられて第2ダクト82は遮断されているため、駆動するミストコレクタ7に第2加工室36内の切粉やクーラントは吸い込まれるようなことはない。
【0021】
その後、第2加工室36内でのワーク加工が終了したならば、クーラントの噴射が止められて第2ダクトシャッタ22が開けられ、第2加工室36内で発生するミストの捕集が行われる。このとき第1加工室35においてワーク加工が開始されていなければ、ミストコレクタ7は第1加工室35内および第2加工室36内のミストを同時に捕集することとなる。そして、第1加工室35および第2加工室36で次のワーク加工が開始される場合には、各々のタイミングで第1ダクトシャッタ21や第2ダクトシャッタ22が閉じられる。
【0022】
よって、本実施形態の複数加工室用ミスト捕集システムでは、第1ダクトシャッタ21および第2ダクトシャッタ22の各々の開閉制御によって、選択的に第1加工室35内および第2加工室36内のミストを捕集することができる。一台のミストコレクタ7によって2つの加工室を対象にミストの捕集を行うことができ効率的であるほか、工作機械1の設置スペースを抑えることができる。
【0023】
次に、図4は、複数加工室用ミスト捕集システムの第2実施形態を示した加工機械ラインの正面図である。加工機械ライン2は、工作機械などがモジュール化され、そうした各種の作業モジュールが機体幅方向に並べられている。具体的には、図面右端にワーク搬入部となるワーク搬入モジュール51が設置され、図面左端のワーク搬出部であるワーク排出モジュール56までの間に、旋盤やマシニングセンタなどワークに加工処理を施す作業モジュール52,53,54,55が設置されている。
【0024】
加工機械ライン2は、全ての作業モジュール51,52,53,54,55,56が同じ形状の外装カバー58によって覆われ、作業モジュール52、53,54,55の前側部分には幅方向全体に広がった搬送空間が構成され、その中にワーク自動搬送機が組み込まれている。ワーク自動搬送機は、ワーク搬入モジュール51から取り出したワークを作業モジュール52,53,54,55の加工室61,62,63,64へと順番に搬送し、それぞれにおいて加工処理されたワークをワーク排出モジュール56へと回収させるものである。
【0025】
加工室61,62,63,64では、加工時にクーラントが噴射され加工熱によってミストが発生するため、加工機械ライン2でもミストを捕集するはミストコレクタが使用される。特に、本実施形態の加工機械ライン2には4つの加工室61,62,63,64が存在するが、一台のミストコレクタ7によって複数加工室用ミスト捕集システムが構成されている。このミストコレクタ7は、加工機械ライン2の制御装置に接続され、加工処理プログラムに従った駆動制御が行われる。
【0026】
ミストコレクタ7には加工機械ライン2との間にダクト9が接続され、特に4つの加工室61,62,63,64に対して分岐している。そして、分岐した各ダクトには電動式のダクトシャッタ65,66,67,68が設けられている。ダクトシャッタ65,66,67,68は、図3に示す前記実施形態のダクトシャッタと同じ構造であり、加工機械ライン2の制御装置によって各々の開閉が制御される。
【0027】
本実施形態の複数加工室用ミスト捕集システムでは、作業モジュール52,53,54,55の全てでワーク加工が行われている場合にはミストコレクタ7におけるファンの駆動が停止する。そして、その一台でもワーク加工が終了してミストの捕集が必要になれば、ダクトシャッタ65,66,67,68のうち該当するものが開けられ、ミストコレクタ7のファンが駆動してミストの捕集が開始される。図4の例では、作業モジュール53,54でワーク加工処理が実行され、作業モジュール52,55ではワークの加工処理が終了した状態が示されている。従って、ダクトシャッタ66,67は閉じられているが、ダクトシャッタ65,68が開けられ、加工室61,64内で発生したミストがミストコレクタ7によって捕集される。
【0028】
よって、本実施形態の複数加工室用ミスト捕集システムでは、ダクトシャッタ65,66,67,68の各々に対する開閉制御によって、選択的に加工室61,62,63,64内のミストを捕集することができる。一台のミストコレクタ7によって4台の作業モジュール52,53,54,55を対象にミストの捕集を行うことができ効率的であるほか、加工機械ライン2の設置スペースを抑えることができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、複数加工室用ミスト捕集システムを搭載する対象として2軸旋盤や加工機械ラインを示したが、これらに限られることはなく、加工室の数もミストコレクタによってミストの捕集が有効に行える範囲において限定されない。
【符号の説明】
【0030】
1…工作機械 7…ミストコレクタ 8…ダクト 11…第1主軸装置 12…第1タレット装置 13…第2主軸装置 14…第2タレット装置 21…第1ダクトシャッタ 22…第2ダクトシャッタ 35…第1加工室 36…第2加工室 81…第1ダクト 82…第2ダクト


図1
図2
図3
図4