(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172429
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】化粧料組成物及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20231129BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20231129BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/00
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084217
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】山岡 奈央
(72)【発明者】
【氏名】馬場 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 雄介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC091
4C083AC092
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC691
4C083AC692
4C083AD041
4C083AD042
4C083BB06
4C083CC33
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】
油性成分を配合した液状の化粧料組成物において、低温安定性を向上させることを目的とする。また、低温安定性を向上させた液状の化粧料組成物を用いた毛髪処理方法の提供である。
【解決手段】
イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール、1価の低級アルコール、カチオン界面活性剤並びに高級アルコールが配合された、液状の化粧料組成物、並びに、当該化粧料組成物を用いた毛髪処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール、1価の低級アルコール、カチオン界面活性剤並びに高級アルコールが配合された、
液状の化粧料組成物。
【請求項2】
前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量が60質量%以上であり、
1価の低級アルコールの配合量に対する高級アルコールの配合量の質量比が、0.15以下である、
請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量が60質量%以上であり、
前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量に対するイソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールの合計配合量の質量比が0.4以上1以下である、
請求項1又は請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量が60質量%以上85質量%以下であり、
前記1価の低級アルコールの配合量が10質量%以上30質量%以下であり、
前記カチオン界面活性剤の配合量が0.1質量%以上5質量%以下であり、
前記高級アルコールの配合量が0.1質量%以上1.6質量%以下である、
請求項1又は請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
水が配合されていないか、又は、水が配合され、水の配合量が10質量%以下である、
請求項1又は請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の化粧料組成物を用いた毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物及び毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪や皮膚に様々な機能を付与することを目的として、各種の成分が配合された化粧料組成物が提供されている。また、化粧料組成物には、様々な剤型のものがある。
【0003】
各種の成分が配合された化粧料組成物の一例として、下記特許文献1には、塩化ジメチルジアリルアンモニウム誘導体の1種類以上と、カチオン変性フェヌグリークガム、カチオン変性タラガム、カチオン変性ローカストビーンガムから選ばれる1種類以上を含有することを特徴とする化粧料組成物が様々な剤型とともに提案されている。特許文献1の化粧料組成物は、起泡力に優れ、さらに毛髪や皮膚に対する吸着性が良く、良好なコンディショニング効果などをもたらすことが開示されている(請求項1、実施例など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化粧料組成物には、液状、クリーム状、固形状など様々な剤型のものが存在する。それらの中でも、液状の化粧料組成物は、クリーム状や固形状に比して、粘度が比較的低いため、毛髪や皮膚の上に化粧料組成物が広がりやすく、均一な塗布が容易となる。
【0006】
液状の化粧料組成物に配合される成分として、毛髪や皮膚への保湿性、手触りを向上させるなどの各種の機能を付与する目的で、油性成分が用いられることがある。しかしながら、油性成分が配合された液状の化粧料組成物は、一定期間低温で保存された際に、濁りや析出物が生じやすいことがあり、外観の変化が起こることがあった。
【0007】
低温保存による液状の化粧料組成物の外観の変化は、品質管理上好ましいものではない。また、化粧料組成物の外観の変化が起こった場合、消費者に対して不安を抱かせることがある。そのため、低温保存による外観の変化を改善するために、化粧料組成物の低温安定性を向上することが望まれている。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の課題は、油性成分を配合した液状の化粧料組成物において、低温安定性を向上させることである。また、本発明の別の課題は、低温安定性を向上させた液状の化粧料組成物を用いた毛髪処理方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、油性成分として高級アルコールを配合した液状の化粧料組成物において、イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール、1価の低級アルコール並びにカチオン界面活性剤が配合されたものとすれば、低温安定性が向上できるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
[1]の化粧料組成物は、イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール、1価の低級アルコール、カチオン界面活性剤並びに高級アルコールが配合された、液状の化粧料組成物である。
【0011】
[2]の化粧料組成物は、[1]の化粧料組成物であって、前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量が60質量%以上であり、1価の低級アルコールの配合量に対する高級アルコールの配合量の質量比が、0.15以下である。
【0012】
[3]の化粧料組成物は、[1]又は[2]の化粧料組成物であって、前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量が60質量%以上であり、前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量に対するイソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールの合計配合量の質量比が0.4以上1以下である。
【0013】
[4]の化粧料組成物は、[1]~[3]のいずれかの化粧料組成物であって、前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールの配合量が60質量%以上85質量%以下であり、前記1価の低級アルコールの配合量が10質量%以上30質量%以下であり、前記カチオン界面活性剤の配合量が0.1質量%以上5質量%以下であり、前記高級アルコールの配合量が0.1質量%以上1.6質量%以下である。
【0014】
[5]の化粧料組成物は、[1]~[4]のいずれかの化粧料組成物であって、水が配合されていないか、又は、水が配合され、水の配合量が10質量%以下である。
【0015】
[6]の毛髪処理方法は、[1]~[5]のいずれかの化粧料組成物を用いた毛髪処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧料組成物によれば、低温安定性を向上させた化粧料組成物が提供できる。また、本発明の毛髪処理方法によれば、本発明の化粧料組成物を用いた毛髪処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1~3、比較例1~3の化粧料組成物のDSCチャート。
【
図3】実施例4、5、比較例5~8の化粧料組成物のDSCチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態(以下、本実施形態という)に基づき、本発明を以下に説明する。
【0019】
<化粧料組成物>
本実施形態の化粧料組成物は、イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール、1価の低級アルコール、カチオン界面活性剤並びに高級アルコールが配合された、液状の化粧料組成物である。本発明の化粧料組成物によれば、低温安定性を向上させた化粧料組成物が提供できる。
【0020】
なお、本実施形態の化粧料組成物において「低温安定性の向上」とは、低温保存による化粧料組成物の外観の変化が小さいことをいう。低温保存による化粧料組成物の外観の変化を例示すると、低温保存前に透明状であった化粧料組成物が、低温保存によって濁りが生じたり、析出物が生じたりすることや、低温保存前に濁っていた化粧料組成物が、低温保存によって、より濁りが増加したり、析出物が生じたりすることなどが挙げられる。低温安定性における「低温」とは、低温保存による化粧料組成物の外観の変化を評価する際に当該評価に適した温度(例えば、-2℃~-10℃などの範囲)であり、例えば、-10℃である。
【0021】
(イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール)
本実施形態の化粧料組成物は、イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールが配合されたものである。イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールは、本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤及び高級アルコールの溶媒である。
なお、「及び/又は」とは、両方又はいずれか一方であることを意味する。
【0022】
前記イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールとは、少なくとも、イソペンチルジオール、ジプロピレングリコールのいずれか一方又は両方を必須として含む多価アルコールを意味する。
【0023】
以下の記載において、イソペンチルジオールを「IPG」と表記することがあり、ジプロピレングリコールを「DPG」と表記することがあり、イソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコールを「IPG及び/又はDPGを含む多価アルコール」と表記することがある。
【0024】
本実施形態の化粧料組成物は、IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとして、IPGのみ又はDPGのみが配合されたものであってもよく、IPG及びDPGの2種のみが配合されたものであってもよく、IPG及び/又はDPGが配合され、さらにIPG及びDPG以外の多価アルコール(以下、IPG及びDPG以外の多価アルコールを「その他の多価アルコール」と表記することがある)が1種又は2種以上配合されたものであってもよい。
【0025】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとしては、例えば、炭素数2以上24以下の多価アルコールを用いることできる。
【0026】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとしては、例えば、2価以上6価以下の多価アルコールを用いることができる。
【0027】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとしては、例えば、25℃で液状の多価アルコールを用いることができる。なお、「25℃で液状の多価アルコール」とは、25℃で流動性を有する多価アルコールをいう。
【0028】
前記イソペンチルジオール(別名:3-メチル-1,3-ブタンジオール)は、炭素数5の2価の多価アルコールである。
【0029】
前記ジプロピレングリコールは、炭素数6の2価の多価アルコールである。
【0030】
前記その他の多価アルコールは、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンチレングリコール、ジグリセリン、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリプロピレングリコール、ポリグリセリン-3、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600などが挙げられる。
【0031】
本実施形態の化粧料組成物にその他の多価アルコールが配合されたものとする場合、その他の多価アルコールとしては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0032】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量の下限値としては、化粧料組成物における外観の透明性を高める観点から、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。
なお、「IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量」とは、本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG、DPG、及びその他の多価アルコールの各配合量の合計配合量を意味する(以下の記載において同様の意味で用いる)。
【0033】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量の上限値としては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0034】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるIPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量の範囲としては、60質量%以上90質量%以下が好ましく、65質量%以上85質量%以下がより好ましい。これらの範囲が好ましい理由は、IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量の下限値及び上限値において、それぞれ上述した観点と同じ観点によるものである。
【0035】
([(IPG及びDPGの合計配合量)/(IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量)]比)
本実施形態の化粧料組成物は、前記IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量に対するIPG及びDPGの合計配合量の質量比([(IPG及びDPGの合計配合量)/(IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量)]比)が、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、0.4以上1以下である。
なお、上記「IPG及びDPGの合計配合量」とは、本実施形態の化粧料組成物におけるIPGの配合量及びDPGの配合量の合計配合量を意味する(以下の記載において同様の意味で用いる)。
【0036】
(1価の低級アルコール)
本実施形態の化粧料組成物は、1価の低級アルコールが1種又は2種以上配合されたものである。1価の低級アルコールは、本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤及び高級アルコールの溶媒である。
【0037】
前記1価の低級アルコールとしては、炭素数が2以上4以下の1価のアルコールを用いることができる。炭素数が2以上4以下の1価のアルコールは、直鎖状のアルコールであってもよく、分岐鎖状のアルコールであってもよい。
【0038】
前記1価の低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
【0039】
本実施形態の化粧料組成物に配合される1価の低級アルコールとしては、刺激臭を低減する観点から、エタノールを用いることが好ましい。
【0040】
本実施形態の化粧料組成物に配合される1価の低級アルコールの配合量の下限値としては、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
【0041】
本実施形態の化粧料組成物に配合される1価の低級アルコールの配合量の上限値としては、例えば、40質量%以下である。
なお、皮膚刺激が生じるおそれを低減する観点から、本実施形態の化粧料組成物に配合される1価の低級アルコールの配合量の上限値としては30質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
本実施形態の化粧料組成物に配合される1価の低級アルコールの配合量範囲としては、10質量%以上30質量%以下が好ましく、15質量%以上28質量%以下がより好ましく、18質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。これらの範囲が好ましい理由としては、1価の低級アルコールの配合量の下限値及び上限値において、それぞれ上述した観点と同じ観点によるものである。
【0043】
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、IPG及びDPGの合計配合量が、1価の低級アルコールの配合量よりも多いものである。
【0044】
([(1価の低級アルコールの配合量)/(IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量)]比)
本実施形態の化粧料組成物は、IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量に対する1価の低級アルコールの配合量の質量比([(1価の低級アルコールの配合量)/(IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールの配合量)]比)が、例えば、0.1以上2.5以下である。
【0045】
(カチオン界面活性剤)
本実施形態の化粧料組成物は、1種又は2種以上のカチオン界面活性剤が配合されたものである。本実施形態の化粧料組成物は、カチオン界面活性剤の配合により、毛髪に用いた際において、毛髪が柔らかい手触りとなる。
【0046】
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、炭素数12以上22以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩または炭素数12以上22以下のアルキル基を有する第3級アミン塩が挙げられる。上記塩としては、ハロゲン塩、アルキル硫酸塩などが挙げられる。なお、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよい。
【0047】
炭素数12以上22以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩としては、例えば、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムなど)、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(例えば、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなど)、エチレンオキサイド(E.O.)付加型の第4級アンモニウム塩(例えば、PEG-2オレアンモニウムクロリド、PEG-5ステアリルアンモニウムクロリドなど)などが挙げられる。炭素数12以上22以下のアルキル基を有する第3級アミン塩としては、例えば、脂肪酸アミドアミン(例えば、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなど)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(例えば、ポリオキシエチレンオレイルアミンなど)などが挙げられる。
【0048】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤としては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、炭素数が12以上22以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤としては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、炭素数が20以上のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩(より好適には、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム)を用いることがより好ましい。
【0049】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤としては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、塩化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化ステアリルトリメチルアンモニウムの併用、又は、塩化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムの併用が好ましい。
【0050】
本実施形態の化粧料組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量の下限値は、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。
【0051】
本実施形態の化粧料組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量の上限値は、皮膚刺激が生じるおそれを低減する観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
【0052】
本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤の配合量の範囲としては、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.3質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。これらの範囲が好ましい理由としては、カチオン界面活性剤の配合量の下限値及び上限値において、それぞれ上述した観点と同じ観点によるものである。
【0053】
(高級アルコール)
本実施形態の化粧料組成物は、1種又は2種以上の高級アルコールが配合されたものである。本実施形態の化粧料組成物は、高級アルコールの配合により、毛髪や頭皮などの皮膚に用いた際に毛髪や頭皮などの皮膚に油性感を付与することができる。
【0054】
本実施形態の化粧料組成物に配合される高級アルコールとしては、炭素数が12以上22以下の1価のアルコールを用いることができる。前記炭素数が12以上22以下の1価のアルコールは、飽和の高級アルコール又は不飽和の高級アルコールであってもよく、直鎖状の高級アルコール又は分岐鎖状の高級アルコールであってもよい。
【0055】
本実施形態の化粧料組成物に配合される高級アルコールは、25℃で固体状の高級アルコールであってもよく、25℃で液状の高級アルコールであってもよい。なお、「25℃で固体状の高級アルコール」とは、融点が30℃以上の高級アルコールをいう。また、「25℃で液状の高級アルコール」は、融点が30℃未満の25℃で流動性を有する高級アルコールをいう。
【0056】
前記高級アルコールとしては、例えば、直鎖状の高級アルコール(例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)、分岐鎖状の高級アルコール(例えば、ヘキシルデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなど)などが挙げられる。
【0057】
なお、本実施形態の化粧料組成物に配合される前記高級アルコールとしては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、25℃で固体状の高級アルコールを用いるとより好ましい。
【0058】
本実施形態の化粧料組成物に配合される高級アルコールとしては、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、ミリスチルアルコールを用いるとより好ましい。
【0059】
本実施形態の化粧料組成物における高級アルコールの配合量の下限値は、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。
【0060】
本実施形態の化粧料組成物における高級アルコールの配合量の上限値は、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。
【0061】
本実施形態の化粧料組成物に配合される高級アルコールの配合量の範囲としては、0.1質量%以上2質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。これらの範囲が好ましい理由としては、高級アルコールの配合量の下限値及び上限値において、それぞれ上述した観点と同じ観点によるものである。
【0062】
([(高級アルコールの配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比)
本実施形態の化粧料組成物は、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、1価の低級アルコールの配合量に対する高級アルコールの配合量の質量比([(高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比)の上限値が、0.15以下が好ましく、0.13以下がより好ましく、0.12以下がさらに好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物は、[(高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比の下限値は、例えば、0.01以上である。
【0063】
([(カチオン界面活性剤の配合量)/(高級アルコールの配合量)]比)
本実施形態の化粧料組成物は、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、高級アルコールの配合量に対するカチオン界面活性剤の配合量の質量比([(カチオン界面活性剤の配合量)/(高級アルコールの配合量)]比)が、0.1以上5以下である。
【0064】
(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)
本実施形態の化粧料組成物は、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、カチオン界面活性剤の配合量と高級アルコールの配合量との合計配合量(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)の上限値が、5質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましい、3質量%以下がさらに好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物は、カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量の下限値は、例えば、0.2質量%以上である。
【0065】
なお、本実施形態の化粧料組成物が、少なくとも高級アルコールとして25℃で固体状の高級アルコールと、カチオン界面活性剤として炭素数が20以上のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩とが少なくとも配合された場合、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、カチオン界面活性剤の配合量と高級アルコールの配合量との合計配合量(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)の上限値は、3.5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物が左記の場合において、カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量の下限値は、例えば、0.2質量%以上である。
【0066】
([(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比)
本実施形態の化粧料組成物は、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、1価の低級アルコールの配合量に対するカチオン界面活性剤の配合量と高級アルコールの配合量との合計配合量の質量比([(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比)の上限値が、0.15以下が好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物は、[(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比の下限値は、例えば、0.005以上である。
【0067】
なお、本実施形態の化粧料組成物が、高級アルコールとして25℃で固体状の高級アルコールと、カチオン界面活性剤として炭素数が20以上のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩とが少なくとも配合された場合、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、1価の低級アルコールの配合量に対するカチオン界面活性剤の配合量と高級アルコールの配合量との合計配合量の質量比([(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比)の上限値は、0.15以下が好ましい。
また、本実施形態の化粧料組成物が左記の場合において、[(カチオン界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量)/(1価の低級アルコールの配合量)]比の下限値は、例えば、0.01以上である。
【0068】
(任意成分)
本実施形態の化粧料組成物は、上述したイソペンチルジオール及び/又はジプロピレングリコールを含む多価アルコール、1価の低級アルコール、カチオン界面活性剤並びに高級アルコール以外の成分(以下、「任意成分」という)が、適宜配合されたものとしてよい。
【0069】
本実施形態の化粧料組成物に配合できる任意成分としては、例えば、水、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、高級アルコール以外の固形油(25℃で固形状の炭化水素、脂肪酸またはその塩、ロウ、エステル、シリコーンなど)、高級アルコール以外の液状油(25℃で液状の炭化水素、脂肪酸またはその塩、ロウ、エステル、シリコーンなど)、合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物、蛋白、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、色素、酸、アルカリ、キレート剤などである。
【0070】
(水)
本実施形態の化粧料組成物は、水が配合されたものであってもよく、水が配合されないものであってもよい。本実施形態の化粧料組成物に水が配合される場合、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、水の配合量は10質量%以下である。そのため、本実施形態の化粧料組成物は、水が配合されていないか、又は、水が配合され、水の配合量が10質量%以下とすることができる。
【0071】
本実施形態の化粧料組成物は、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、水が配合されないものが好ましい。
【0072】
なお、本実施形態の化粧料組成物に水が配合される場合には、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、水の上限値は、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
また、本実施形態の化粧料組成物に水が配合される場合には、水の配合量の下限値は、例えば、0.0001質量%以上である。
【0073】
本実施形態の化粧料組成物に水が配合される場合には、水の配合量の範囲としては、0.0001質量%以上8質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.0001質量%以上3質量%以下がさらに好ましく、0.0001質量%以上1質量%以下が特に好ましい。これらの範囲のうち、下限値が好ましい理由としては、上述した観点と同じ観点によるものである。
【0074】
本実施形態の化粧料組成物に水が配合される場合には、例えば、水の配合量が、高級アルコールの配合量よりも多いものとすることができる。
【0075】
([(水の配合量)/(高級アルコールの配合量)]比)
本実施形態の化粧料組成物は、高級アルコールの配合量に対する水の配合量の質量比([(水の配合量)/(高級アルコールの配合量)]比)が、例えば、0以上5以下である。
【0076】
(酸)
本実施形態の化粧料組成物は、1種又は2種以上の酸を配合してもよい。本実施形態の化粧料組成物は、前記酸の配合により、化粧料組成物のpHを調整することができる。前記酸としては、有機酸(例えば、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸など)、無機酸(例えば、リン酸など)を用いることができる。本実施形態の化粧料組成物における前記酸の配合量としては、例えば、0.01質量%以上2質量%以下である。
【0077】
(アルカリ)
本実施形態の化粧料組成物は、1種又は2種以上のアルカリを配合してもよい。本実施形態の化粧料組成物は、前記アルカリの配合により、化粧料組成物のpHを調整することができる。前記アルカリとしては、無機アルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなど)、有機アルカリ(例えば、アミノエチルプロパノール、アルギニン、トリエタノールアミンなど)を用いることができる。本実施形態の化粧料組成物における前記アルカリの配合量としては、例えば、0.01質量%以上2質量%以下である。
【0078】
(高級アルコール以外の固形油)
本実施形態の化粧料組成物は、高級アルコール以外の固形油が配合されたものとしてもよく、配合されないものであってもよい。なお、「高級アルコール以外の固形油」とは、25℃で静置した際に流動性を有さない固形状(ペースト状、フレーク状、粉末状を含む)の油(但し、高級アルコールを除く)をいう。
【0079】
本実施形態の化粧料組成物に固形油が配合される場合、その配合量の上限値としては、低温安定性をより向上させることが実現可能となる観点から、1質量%以下であることが好ましく、その配合量が0.5質量%以下であることがより好ましく、その配合量が0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0080】
前記高級アルコール以外の固形油としては、化粧料組成物に用いられる高級アルコール以外の固形油を用いることができ、例えば、25℃で流動性を有さない固形の炭化水素、脂肪酸又はその塩、ロウ、エステル及びシリコーンが挙げられる。
【0081】
前記25℃で固形の炭化水素としては、例えば、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。
前記25℃で固形の脂肪酸又はその塩としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、又はそれらの塩などが挙げられる。脂肪酸の塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
前記25℃で固形のロウとしては、例えば、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、ヒマワリ種子ロウなどが挙げられる。
前記25℃で固形のエステルとしては、例えば、パルミチン酸セチルなどが挙げられる。
前記25℃で固形のシリコーンとしては、例えば、アルキル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0082】
(液状の化粧料組成物)
本実施形態の化粧料組成物は、液状である。本実施形態の化粧料組成物における「液状」とは、B型粘度計で測定した際の、25℃での粘度の値が、3000mPa・s以下のものである。ここで、本実施形態の化粧料組成物の粘度は、B型粘度計において粘度に応じて選定したローターを使用して、ローターの回転速度を適宜設定し、25℃で計測した60秒後の値を採用する。例えば、3号ローターを用いて、回転速度を12rpmとした際の粘度の測定値を採用してもよい。
【0083】
(剤型)
本実施形態の化粧料組成物の剤型は、例えば、ローション状、乳液状である。
【0084】
(粘度)
本実施形態の化粧料組成物の粘度は、例えば、10mPa・s以上3000mPa・s以下である。
【0085】
(外観)
本実施形態の化粧料組成物の外観は、液状である以外には、特に限定されないが、例えば、透明状、不透明状とすることができる。なお、前記透明状とは、例えば、無色透明のガラス瓶に本実施形態の化粧料組成物を25℃で収容した際において、収容された化粧料組成物及びガラス瓶越しに周囲の景色が視認可能な程度の状態をいう。また、前記不透明状とは、例えば、無色透明のガラス瓶に本実施形態の化粧料組成物を25℃で収容した際において、収容された化粧料組成物及びガラス瓶越しに周囲の景色が視認できない状態をいう。
【0086】
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、外観が透明状である。
【0087】
(pH)
本実施形態の化粧料組成物の25℃におけるpHは、特に限定されないが、例えば、4.0以上9.0以下である。
【0088】
(用途)
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、毛髪、頭皮、頭皮以外の皮膚に用いられるものである。
【0089】
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、毛髪用とすることができる。毛髪用としては、ヘアケア用途(例えば、ヘアトリートメント、スタイリング兼用ヘアトリートメント、多剤式ヘアトリートメントの一構成剤、パーマの前処理用ヘアトリートメント、パーマの後処理用ヘアトリートメント、ヘアカラーリングの前処理用ヘアトリートメント、ヘアカラーリングの後処理用ヘアトリートメント、ブリーチの前処理用ヘアトリートメント、ブリーチの後処理用ヘアトリートメントなど)、ヘアスタリング用途などが挙げられる。なお、前記ヘアトリートメントは、洗い流さないヘアトリートメントであってもよく、洗い流すヘアトリートメントであってもよい。
【0090】
本実施形態の化粧料組成物は、毛髪により優れた滑らかさを付与できる観点から、毛髪に塗布した後に洗い流すヘアトリートメントとして用いると好ましい。
【0091】
本実施形態の化粧料組成物は、上述した毛髪用以外にも、頭皮用、頭皮以外の皮膚用とすることができる。頭皮用としては、例えば、頭皮用トリートメント(例えば、洗い流さない頭皮用トリートメント、洗い流す頭皮用トリートメント、多剤式の頭皮用トリートメントの一構成剤)などが挙げられる。
【0092】
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、毛髪用及び頭皮用を兼ねるものであってもよい。
【0093】
(使用方法)
本実施形態の化粧料組成物は、公知の化粧料組成物の使用方法を用いるとよい。
例えば、水で濡れた毛髪及び/又は頭皮に本実施形態の化粧料組成物を塗布して、毛髪及び/又は頭皮を乾燥させる使用方法としてもよい。
【0094】
(水混合時又は接触時における増粘)
本実施形態の化粧料組成物は、高級アルコールとして、直鎖状の高級アルコールが配合され、さらに、水が配合されていないか、若しくは、水が配合され、水の配合量が10質量%以下とした場合(かかる場合の本実施形態の化粧料組成物を、以下、「本実施形態に係る特定の化粧料組成物」ということがある。)は、適量の水と混合した際、又は適量の水と接触した際に増粘させることができる。本実施形態に係る特定の化粧料組成物は、水混合時又は接触時における増粘によって、液状から、比較的粘度が高いクリーム状やジェル状へと剤型を変化させことができ、使用時の演出効果を高めることができる。
【0095】
本実施形態に係る特定の化粧料組成物は、適量の水と混合することにより増粘させることができるため、本実施形態に係る特定の化粧料組成物と水との混合物を毛髪、頭皮又は頭皮以外の皮膚に用いることができる。
本実施形態に係る特定の化粧料組成物と水との混合比率としては、例えば、本実施形態の化粧料組成物:水の重量比において、2:1~1:2である。
【0096】
本実施形態に係る特定の化粧料組成物は、適量の水と接触させた際に増粘させることができるため、水に濡れた毛髪、水に濡れた頭皮又は頭皮以外の皮膚に用いた際に、本実施形態に係る特定の化粧料組成物を毛髪上、頭皮上又は頭皮以外の皮膚上において増粘させることができる。また、本実施形態に係る特定の化粧料組成物は、乾いた毛髪、頭皮又は頭皮以外の皮膚に用いた後、水ですすぐ際に、本実施形態に係る特定の化粧料組成物を増粘させることができる。
【0097】
(製造方法)
本実施形態の化粧料組成物は、剤型に応じた公知の化粧料組成物の製法を採用して製造できる。
【0098】
<毛髪処理方法>
本実施形態の毛髪処理方法は、上述した本実施形態の化粧料組成物を用いて毛髪を処理する方法である。
本実施形態の毛髪処理方法としては、本実施形態の化粧料組成物を用いる以外には、公知の毛髪処理方法を採用すればよい。そのため、上述した本実施形態の化粧料組成物の使用方法を用いてもよい。
【実施例0099】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0100】
(実施例1~7、比較例1~8の化粧料組成物の調製)
実施例1~7、比較例1~8の化粧料組成物を、表1~4に示す成分の組成となるように、常法により各成分を混合して調製した。調製した実施例1~7、比較例1~8の化粧料組成物を用いて、低温安定性の評価を下記に示す方法で行った。なお、実施例1~7、比較例1~8の化粧料組成物は、いずれも外観が液状であり、透明状であった。
【0101】
(低温安定性の評価)
調製した実施例1~7、比較例1~8の化粧料組成物を、それぞれ透明ガラス管(50mL)2本に40gずつ収容して密栓し、-2℃の恒温器内又は室温で、1ヶ月間静置した。1ヶ月経過後、室温で静置した実施例1の化粧料組成物入りの透明ガラス管(室温保管サンプル)の外観と、-2℃の恒温器で静置した実施例1の化粧料組成物入りの透明ガラス管(-2℃保管サンプル)の外観とを目視で比較観察した。また、実施例2~7、比較例1~8の化粧料組成物についても、実施例1と同様に、各化粧料組成物の室温保管サンプルの外観と-2℃保管サンプルの外観を比較観察した。なお、-2℃保管サンプルの外観観察は、各化粧料組成物入りの透明ガラス管を恒温器から取り出した直後に行った。
【0102】
(評価基準)
〇:室温保管サンプルの外観と-2℃保管サンプルの外観とを比較すると、両者に外観の変化が見られない。
△:室温保管サンプルの外観に比べて、-2℃保管サンプルの外観が濁っている。
×:室温保管サンプルの外観に比べて、-2℃保管サンプルの外観に析出物が見られる。
【0103】
(実施例1~3、比較例1~4の評価結果)
実施例1~3、比較例1~4の化粧料組成物における低温安定性の評価結果を、各化粧料組成物の組成とともに、表1に示す。
【0104】
【0105】
表1に示す結果から、実施例1~3の化粧料組成物は、比較例1~4の化粧料組成物に比べて、低温安定性の評価に優れたものであった。そのため、多価アルコールとして、イソペンチルジオール又はジプロピレングリコールが配合されると、低温安定性に優れることが分かる。
【0106】
(実施例4、5、比較例5~8の評価結果)
実施例4、5、比較例5~8の化粧料組成物における低温安定性の評価結果を、各化粧料組成物の組成とともに、表2に示す。
【0107】
【0108】
表2に示す結果から、実施例4、5の化粧料組成物は、比較例5~8の化粧料組成物に比べて、低温安定性の評価に優れたものであった。そのため、多価アルコールとして、イソペンチルジオール又はジプロピレングリコールが配合されると、低温安定性に優れることが分かる。
【0109】
(実施例1、6、7の評価結果)
実施例1、6、7の化粧料組成物における低温安定性の評価結果を、各化粧料組成物の組成とともに、表3に示す。
【0110】
【0111】
表3に示す結果から、実施例1、6、7の化粧料組成物は、表1、2に示す各比較例の化粧料組成物に比べて、低温安定性の評価に優れたものであった。
【0112】
(低温安定性以外の評価)
上記の低温安定性の評価とは別に、調製した化粧料組成物を用いて、示差走査熱量測定、毛髪の柔らかさ及び滑らかさ、水混合時の増粘性を評価した。
【0113】
(示差走査熱量測定)
以下の方法により、実施例1~5、比較例1~8の化粧料組成物を用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、示差走査熱量測定を行った。
【0114】
示差走査熱量測定は、実施例1~5、比較例1~8の化粧料組成物の各測定サンプルを準備し、示差走査熱量計(TA instrument製「DSC Q2000」)を使用して行った。測定条件としては、実施例1~5、比較例1~8の化粧料組成物の各測定サンプルを示差走査熱量計に入れ、25℃に調温し、降温速度2℃/分の条件で25℃から-10℃に降温させた後、-10℃で10分間静置した際の各温度における熱流(Heat Flow)を測定した。測定結果から、降温速度2℃/分の条件で25℃から-10℃に降温した際における、熱流(Heat Flow)が最大値を示した温度(発熱ピーク温度)を求めた。表1、2に、実施例1~5、比較例1~8の化粧料組成物における発熱ピーク温度の結果を示す。なお、表1、2の実施例1~4では、後述する
図1、
図3に示す通り、発熱ピークのピークトップが観察されなかったため、「≦10」の表記としている。
【0115】
図1に実施例1~3、比較例1~3の化粧料組成物のDSCチャート、
図2に比較例4の化粧料組成物のDSCチャート、
図3に実施例4、5、比較例5~8の化粧料組成物のDSCチャートをそれぞれ示す。これら
図1~3のDSCチャートは、上記測定条件のうち、降温速度2℃/分の条件で25℃から-10℃に温度を上げた際における約25℃付近から約-10℃付近の温度と熱流(Heat Flow)との関係を示すグラフである。なお、
図1~3のグラフは、便宜のため、正の値となる熱流の測定値を用いて作図した。
【0116】
表1、表2、
図1~3に示す結果から、実施例1~5の化粧料組成物は、比較例1~8の化粧料組成物に比べて、発熱ピークが観察されないか、又は、発熱ピーク温度がより低温となっていた。そのため、実施例1~5の化粧料組成物と比較例1~8の化粧料組成物との比較において、実施例1~5の化粧料組成物に発熱ピークが観察されないか、又は、発熱ピーク温度がより低温になることと、低温安定性に優れる評価結果との間に相関がみられた。この相関から、化粧料組成物において、比較対象となる化粧料組成物と比べて、発熱ピークが観察されないか、又は、発熱ピーク温度がより低温となることにより、当該化粧料組成物が、比較対象の化粧料組成物よりも低温安定性に優れることが示唆される。
【0117】
(毛髪の柔らかさ及び滑らかさの評価)
上記調製した実施例1、2及び実施例4、5の化粧料組成物をそれぞれ毛髪に処理し、毛髪の柔らかさ及び滑らかさを評価した。
【0118】
(毛髪処理)
同一人物から採取した毛髪から長さ約27cmで10gとなるように複数の毛束を作成した。毛束をシャンプー(ミルボン社製「グランドリンケージ シルキーリュクス シャンプー」)で洗浄した後、濡れた毛束に対して実施例1、2、4、5の化粧料組成物をそれぞれ1g塗布し、毛束から化粧料組成物を流水で洗い流した後、ドライヤーで毛束を乾燥させた。
【0119】
(評価方法)
上記毛髪処理した各毛束を用いて、毛髪用の化粧料組成物の評価を日常的に行う評価者2名により、下記評価基準に従って、「毛髪の柔らかさ」、「毛髪の滑らかさ」を触診により官能評価を行った。ここで、「毛髪の柔らかさ」とは毛束を指に巻きつけたときに毛髪が柔らかく感じる感触であり、「毛髪の滑らかさ」とは毛束の根元部分から毛先部分にかけて手を通した際に、根元部分から毛先部分まで均一な滑りがあり、毛髪が滑らかに感じる感触である。なお、評価の基準は、以下の通りである。
実施例1、2の評価の基準:実施例2
実施例4、5の評価の基準:実施例5
【0120】
(毛髪の柔らかさの評価基準)
〇 :評価の基準と比べて、毛髪が柔らかく感じる。
同等:評価の基準と同程度に、毛髪が柔らかく感じる
× :評価の基準と比べて、毛髪が柔らかく感じない。
【0121】
(毛髪の滑らかさの評価基準)
〇 :評価の基準と比べて、毛髪が滑らかに感じる。
同等:評価の基準と同程度に、毛髪が滑らかに感じる。
× :評価の基準と比べて、毛髪が滑らかに感じない。
【0122】
(実施例1、2及び実施例4、5の評価結果)
実施例1、2及び実施例4、5の毛髪の柔らかさ及び滑らかさの評価結果を、表5、6に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
表4に示す結果から、IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとして、IPGが配合された実施例1の化粧料組成物で処理した毛束は、DPGが配合された実施例2で処理した毛束と比べて、毛髪の柔らかさ及び滑らかさが優れていた。また、表5に示す結果においても、IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとして、IPGが配合された実施例4の化粧料組成物で処理した毛束は、DPGが配合された実施例5で処理した毛束と比べて、毛髪の柔らかさ及び滑らかさが優れていた。
そのため、IPG及び/又はDPGを含む多価アルコールとして、IPGを用いた場合、毛髪の柔らかさ及び滑らかさに優れることがわかる。
【0126】
(水混合時の増粘性の評価)
上記調製した実施例1~7、比較例1~8、参考例1の各化粧料組成物を用いて、水混合時の増粘性を評価した。
【0127】
(参考例1の化粧料組成物の調製)
評価に用いた参考例1の化粧料組成物は、次に示す組成となるように各配合成分を常法により混合して調製したものである。なお、参考例1の化粧料組成物は、実施例1の化粧料組成物の組成からミリスチルアルコールを無配合とし、イソペンチルジオールの配合量を78.59質量%としたものである。
【0128】
(参考例1の組成)
イソペンチルジオール 78.59質量%
エタノール 20質量%
塩化セチルトリメチルアンモニウム 1.41質量%
【0129】
実施例1~7、参考例1、比較例1~8の化粧料組成物を用いて、各化粧料組成物と水とを等量混合した時の増粘性を評価した。
【0130】
混合条件は、実施例1~7、参考例1、比較例1~8のいずれかの化粧料組成物を、透明ガラス管(100mL)に40g収容し、さらに精製水40gを加えて、攪拌棒で1分間攪拌して混合した。続いて、実施例1の水混合前の化粧料組成物と、実施例1の水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)とを、机上に敷いたビニールラップの上に少量ずつ別々に置き、水混合前の化粧料組成物又は水混合後の化粧料組成物をそれぞれ指で伸ばした際の粘度を、下記評価基準により評価した。また、実施例1の化粧料組成物の評価と同様に、実施例2~7、参考例1、比較例1~8の化粧料組成物における水混合時の増粘性を評価した。
【0131】
(評価基準)
○ :水混合前の化粧料組成物に比べて、水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)の方が粘度が高い。
同等:水混合前の化粧料組成物と水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)との粘度が同程度である。
× :水混合前の化粧料組成物に比べて、水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)の方が粘度が低い。
【0132】
(実施例1~7、参考例1、比較例1~8の評価結果)
実施例1~7、参考例1の化粧料組成物における水混合時の増粘性の評価結果を表6、表7に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
表6に示す結果から、実施例1~6の化粧料組成物(高級アルコールとして、ミリスチルアルコール配合)は、水を混合することで増粘した。また、参考例1の化粧料組成物(高級アルコール無配合)、実施例7(高級アルコールとして、イソステアリルアルコール配合)は、化粧料組成物と水とを混合することで減粘した。このことから、直鎖状の高級アルコールであるミリスチルアルコールを配合することにより、水混合時の増粘性に優れることがわかる。
なお、実施例1~5の化粧料組成物(高級アルコールとして、ミリスチルアルコールを1.5質量%配合)における各水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)の粘度に比べて、実施例6の化粧料組成物(高級アルコールとして、ミリスチルアルコールを0.5質量%配合)における各水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)の粘度が低かった。このことから、直鎖状の高級アルコールであるミリスチルアルコールの配合量が多くなると、水混合時の増粘性に優れる傾向となることがわかる。
【0136】
また、表7に示す結果から、比較例4、比較例8の化粧料組成物(多価アルコールとしてグリセリンのみ配合)は、参考例1の化粧料組成物(高級アルコール無配合)と同様に、水を混合することで減粘した。
【0137】
参考データとして、実施例1(高級アルコールとして、ミリスチルアルコールを配合)、実施例6(高級アルコールとして、イソステアリルアルコールを配合)、参考例1(高級アルコール無配合)の各化粧料組成物について、それぞれの水混合後の化粧料組成物(化粧料組成物と水との混合物)の粘度をB型粘度計により測定した。実施例1の化粧料組成物と水との混合物の粘度は、当該混合物を25℃にし、3号ローターを用いて、回転速度12rpmで60秒後の値を採用した。また、実施例5及び参考例1の各化粧料組成物と水との混合物の粘度は、回転速度30rpmに変更した以外は実施例1の化粧料組成物と水との混合物の粘度測定の条件と同様に行った。
【0138】
粘度測定の結果を以下に示す。
実施例1の化粧料組成物と水との混合物:2510mPa・s
実施例6の化粧料組成物と水との混合物:39mPa・s
参考例1の化粧料組成物と水との混合物:41mPa・s
【0139】
(処方例)
以下、ヘアトリートメントの処方例(処方例1~処方例153)を示す。下記の処方例1~処方例153のヘアトリートメントは、洗い流すヘアトリートメント、洗い流さないヘアトリートメント(アウトバストリートメント)のいずれにも用いることができる。
【0140】
(処方例1~処方例152)
表8~表35に処方例1~処方例152を示す。なお、表8~表35における成分の数値は配合量(単位は質量%)であり、「-」は未配合であることを示す。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
(処方例153)
イソペンチルジオール 69質量%
プロピレングリコール 5質量%
ジプロピレングリコール 2質量%
1,3-ブチレングリコール 2質量%
グリセリン 1質量%
エタノール 15.3質量%
イソプロパノール 2質量%
塩化セチルトリメチルアンモニウム 0.9質量%
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 0.5質量%
ミリスチルアルコール 1.2質量%
セチルアルコール 0.05質量%
ステアリルアルコール 0.03質量%
ベヘニルアルコール 0.02質量%
精製水 1質量%