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  • 特開-ノック式ボールペン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172437
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ノック式ボールペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/00 20060101AFI20231129BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B43K29/00 N
B43K24/08 150
B43K24/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084236
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】500205840
【氏名又は名称】株式会社 エポックケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小高 晴男
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HC04
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】内部の回転要素に絵柄や文字等を直接印刷し、その印刷部分をノック操作のたびに回転させてその変化を軸筒を通して透視して楽しむことができ、しかも、製造コストを抑えて比較的廉価にて供給することができるノック式ボールペンを提供することを課題とする。
【解決手段】内部が透視可能な軸筒1と、軸筒1とは別成形されて軸筒1内に嵌合固定されるガイド機能及びロック機能を有するブッシュ2と、ブッシュ2にガイドされて上下方向に摺動するノック棒3と、リフィル6を保持し、リフィル6の先端部に巻装されるスプリング7により常時上方に付勢される回転パイプ4とを備え、回転パイプ4には絵柄や文字が印刷され、また、回転パイプ4に、ブッシュ2にガイドされて上下方向に摺動する回転子5が一体に形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が透視可能な軸筒と、前記軸筒とは別成形されて前記軸筒内に嵌合固定されるガイド機能及びロック機能を有するブッシュと、前記ブッシュにガイドされて上下方向に摺動するノック棒と、リフィルを保持し、前記リフィルの先端部に巻装されるスプリングにより常時上方に付勢される回転パイプとを備え、
前記回転パイプには絵柄や文字が印刷され、また、前記回転パイプには前記ブッシュにガイドされて上下方向に摺動する回転子が一体に形成され、前記回転パイプは、前記ノック棒に対するノック操作のたびに、前記ブッシュによりロックされ、また、ロック状態から解放されて回転し、その回転に伴う前記絵柄や文字の変化が前記軸筒を通して透視可能であることを特徴とするノック式ボールペン。
【請求項2】
前記軸筒と前記ブッシュは異なる樹脂製とされる、請求項1に記載のノック式ボールペン。
【請求項3】
前記軸筒はABS樹脂製とされ、前記ブッシュはポリアセタール樹脂製とされる、請求項2に記載のノック式ボールペン。
【請求項4】
前記軸筒と前記回転子を含む前記回転パイプはABS樹脂製とされ、前記ノック棒と前記ブッシュはポリアセタール樹脂製とされる、請求項1に記載のノック式ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック式ボールペンに関するものであり、より詳細には、ノック操作をする度に透明軸内のリフィルを保持する回転パイプが回転し、回転パイプに印刷した文字や絵柄の変化を透視して楽しむことができるノック式ボールペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノック式ボールペンの多くは、いわゆるノックカム機構を備えていて、ノック操作でリフィルを押し出し、ロックから指を離すと、リフィルがロックされて筆記が可能となり、再度ノック操作すると、ロックが外れてリフィルが引っ込む構成となっている。
【0003】
このノックカム機構は、軸筒の内周面に軸筒と一体に形成される周面カムと、周面カムに定角度置きに形成される係止溝に沿って摺動する突子を外周面に備えていてノックに接合されるノック棒と、周面カムに定角度置きに形成されるガイド溝に沿って摺動するリブを外周面に備えていて、リフィルの端部が連結される回転子とから成る。回転子は、リフィルに巻装されたスプリングによりリフィルと共に常時付勢され、斜面にされたリブの上面が、ノック棒の鋸歯状底面に当接した状態となっている。また、周面カムの縦溝間に三角形状に窪むロック部が形成される。
【0004】
上記構成においては、ノック棒の鋸歯状底面の斜面部とリブ上面の斜面との当接関係により、回転子を常に一方向に回転させようと作用する力が働く。その状態においてノック操作によりノック棒が押下されると、回転子が押し下げられてそのリブが縦溝から抜けるに至り、回転子は回転してそのリブの頭面がロック部の斜面に沿って摺動し、ロック部にロックされ、リフィル先端の露出状態が維持され、筆記可能となる。その後再度ノック操作すると、リブがロック部から外れてロック解除となり、回転子は上記斜面同士の当接関係により再び回転してリブが隣のガイド溝に入り込むことで、回転子が上昇してリフィルが引っ込む。
【0005】
このようなノックカム機構を備えたノック式ボールペンの場合、ボールペンの軸筒及びその内周面に一体に形成される周面カムは一般にABS樹脂製で、周面カムに摺接する回転子は、周面カムに対する摺動性が良好で摩擦に強いポリアセタール樹脂製とされる。
【0006】
従来、 筆記具のノックを押す度に、表示窓に記載された情報を順次に表示する表示器付きノック回転式筆記具が提案されている。この提案に係る筆記具は、従来のノック回転式の筆記具軸筒の中間部に凸レンズ付きの表示窓を設け、ラチェット機構の爪部品に外層透明な中空円筒形軸を設け、前記軸の中空層に表示用紙片やフィルムを挿入するものである(特開2009-126173号公報)。
【0007】
この提案に係る筆記具の場合、表示窓から表示させるのは、標示用紙片やフィルムに印刷されたものであるため、組み立て時にそのフィルム等の装脱に手間がかかる。また、当然のことながら、その発明においては、筆記具構成部品自体に直接印刷して表示させることは想定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-126173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来提案されている、ノックを押す度に表示窓に記載された情報を順次に表示させるタイプの筆記具の場合、表示窓から表示させるのは、標示用紙片やフィルムに印刷されたものであるため、組み立てに手間がかかり、また、筆記具構成部品自体に直接印刷して表示させることは想定されていない。そこで本発明は、内部の回転要素に絵柄や文字等を直接印刷し、その印刷部分をノック操作のたびに回転させてその変化を軸筒を通して透視して楽しむことができ、しかも、製造コストを抑えて比較的廉価にて供給することができるノック式ボールペンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく研究開発を進めた結果、軸筒内の回転要素に印刷する必要があることを前提にし、そのためには回転要素は印刷可能な樹脂製とし、回転要素を駆動するための要素(周面カム)は、回転要素の滑りがよい樹脂製とする必要があるとの知見を得て本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
即ち、上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、内部が透視可能な軸筒と、前記軸筒とは別成形されて前記軸筒内に嵌合固定されるガイド機能及びロック機能を有するブッシュと、前記ブッシュにガイドされて上下方向に摺動するノック棒と、リフィルを保持し、前記リフィルの先端部に巻装されるスプリングにより常時上方に付勢される回転パイプとを備え、
前記回転パイプには絵柄や文字が印刷され、また、前記回転パイプには前記ブッシュにガイドされて上下方向に摺動する回転子が一体に形成され、前記回転パイプは、前記ノック棒に対するノック操作のたびに、前記ブッシュによりロックされ、また、ロック状態から解放されて回転し、その回転に伴う前記絵柄や文字の変化が前記軸筒を通して透視可能であることを特徴とするノック式ボールペンである。
【0012】
一実施形態においては、前記軸筒と前記ブッシュは異なる樹脂製とされる。その場合、好ましくは、前記軸筒はABS樹脂製とされ、前記ブッシュはポリアセタール樹脂製とされる。また、一実施形態においては、前記軸筒と前記回転子を含む前記回転パイプはABS樹脂製とされ、前記ノック棒と前記ブッシュはポリアセタール樹脂製とされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るノック式ボールペンは上記のとおりであって、ブッシュにガイドされて上下方向に摺動する回転子が回転パイプに一体に形成され、回転パイプは絵柄や文字の印刷に適した素材製であって、回転パイプに直接絵柄や文字を印刷することができるため、比較的低コストにて製造供給でき、また、周面カムの役割を果たすブシュは、軸筒とは別成形にすることで、回転パイプの滑りが良好で強度のある樹脂製とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るノック式ボールペンの一実施形態の構成を示す平面図及び正面図である。
図2】本発明に係るノック式ボールペンの一実施形態の構成を示す分解図である。
図3図1におけるA-A線断面図及びB-B線断面図である。
図4】本発明に係るノック式ボールペンにおける回転要素の分解図及びC-C線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明に係るノック式ボールペンは、内部が透視可能な軸筒1と、軸筒1とは別成形されて軸筒1内に嵌合固定されてガイド機能及びロック機能を発揮するブッシュ2と、ブッシュ2にガイドされて上下方向に摺動するノック棒3と、リフィル6を保持し、リフィル6の先端部に巻装されるスプリング7により常時上方に付勢される回転パイプ4とを備えて構成され、回転パイプ4には、ブッシュ2にガイドされてブッシュ2内を上下方向に摺動する回転子5が一体に形成される。
【0016】
軸筒1は、通例、透明ないし半透明のABS樹脂製とされ、軸筒1とは別成形されるブッシュ2とノック棒3は、ポリアセタール樹脂製とされ、また、回転パイプ4及びそれに一体成形される回転子5は、軸筒1と同様にABS樹脂製とされる。
【0017】
各部をこのような素材製とするのは、回転パイプ4に絵柄や文字を印刷する必要性があることに基づく。即ち、回転パイプ4及び回転子5は、印刷が可能なABS樹脂製とされ、回転子5が内周面に沿って摺接することになるブッシュ2は、摩擦に強く、ABS樹脂製の回転子5の滑動が良好となるポリアセタール樹脂製とされる。また、摩擦強度が必要なノック棒3も、ポリアセタール樹脂製とされる。このようにブッシュ2は、軸筒1とは異なる素材製とされるため、軸筒1とは別に成形され、後に軸筒1内に押し込み嵌合されて固定される。
【0018】
軸筒1の先端には先端キャップ8がネジ付けられ、そこからリフィル6の先端部が出没する。また、軸筒1の後端部には、クリップ9が嵌着され、クリップ9の上面開口から中空ノック10が差し込まれ、ノック棒3の頭部が中空ノック10内に嵌合される。
【0019】
ノック棒3は円筒状で、外周面下部に、ブッシュ2の内周面に縦向きに形成される係止溝11に係合して摺動する係合突子15が、通例、定角度間隔置きに3つ突設される。また、ノック棒3の底面は、鋸歯状環16とされる(図2,4)。
【0020】
回転子5は、円柱軸の周面にリブ17を、通例、定角度間隔置きに3つ形成して成るもので、リブ17の頭面17aは斜面にされる(図2,4)。このリブ17は、ブッシュ2の内周面に縦向きに形成されるガイド溝12に係合して上下方向に摺動する。また、その頭面17aは、ノック棒3底面の鋸歯状環16の斜面に接面し、後述するように、鋸歯状環16から横方向への回転駆動作用を受ける。回転子5は回転パイプ4に一体成形され、回転パイプ4に適宜絵柄や文字が印刷される。絵柄や文字は、回転子5にまで及ぶ場合もある。
【0021】
ブッシュ2は、従来のノックカム機構における周面カムと実質的に同じ構成で、同じ作用を奏する。即ち、ブッシュ2の内周面には、係合突子15が係合する係止溝11と、リブ17が出入するガイド溝12が形成され、また、ガイド溝12間の底面に、三角形状に凹んでいてリブ17をロックするロック部13が形成される(図2,4)。
【0022】
上記構成において、回転パイプ4と一体の回転子5は、リフィル6が先端キャップ8内に没している際には、そのリブ17が、ガイド溝12に係合した状態でスプリング7により上方に付勢され、リブ17の頭面17aが、ブッシュ2内に嵌入しているノック棒3の鋸歯状環16に接圧している(図3)。その状態において、中空ノック10に対するノック操作に伴ってノック棒3が下降すると、リブ17はガイド溝12に係合した状態で下方に押し下げられる。
【0023】
ノック棒3が、その係合突子15が係止溝11の底まで押し下げられると、リブ17がガイド溝12から脱する。すると直ちに、鋸歯状環16から横方向への作用を受けて、回転子5及びそれと一体の回転パイプ4が回転し、リブ17はガイド溝12からずれる。そこでノック10から指を離すと、回転子5は、その後もスプリング7により付勢され続けて上昇するが、リブ17はガイド溝12からずれているので、リブ17の頭面17aは鋸歯状環16から離れてブッシュ2のロック部13の斜面に当接し、その斜面に沿って滑動し、ロック部13の最奥部に至ってロックされる。その状態においてリフィル6の露出状態が維持されて、筆記可能となる。
【0024】
その後再びノック操作すると、上記と同様に鋸歯状環16の作用でリブ17は横移動し、ロック部13から脱してガイド溝12に至り、スプリング7の弾発力でガイド溝12内を上昇する結果、リフィル6が引っ込む。
【0025】
上記のようにして回転パイプ4は、ノック操作する度に一方向に回転し、それに印刷されている絵柄や文字も回転し、軸筒1を通してその回転に伴う変化を楽しむことができる。
【0026】
リフィル6は回転パイプ4から取り外しできるので、リフィル6のみ交換することもできるが、本発明に係るノック式ボールペンの場合は、回転パイプ4に絵柄や文字等を印刷することができるので比較的廉価にて供給することができるため、回転パイプ4に印刷する絵柄や文字等に種々のものを用意することで、リフィル6と回転パイプ4を一体化した状態で商品化し、リフィル6を含む回転パイプ4を交換対象にすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るノック式ボールペンは上記のとおりであって、ブッシュにガイドされて上下方向に摺動する回転子が回転パイプに一体に形成され、回転パイプは絵柄や文字の印刷に適した素材製であって、回転パイプに直接絵柄や文字を印刷することができるため、比較的低コストにて製造供給でき、また、周面カムの役割を果たすブシュは、軸筒とは別成形にすることで、回転パイプの滑りが良好で強度のある樹脂製とすることができる効果があり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0028】
1 軸筒
2 ブッシュ
3 ノック棒
4 回転パイプ
5 回転子
6 リフィル
7 スプリング
8 先端キャップ
9 クリップ
10 中空ノック
11 係止溝
12 ガイド溝
13 ロック部
15 係合突子
16 鋸歯状環
17 リブ
図1
図2
図3
図4