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特開2023-172444コーヒー豆解砕物及びそれを配合した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172444
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】コーヒー豆解砕物及びそれを配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20231129BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084253
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中野 純也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC532
4C083AC662
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD042
4C083BB22
4C083CC01
4C083CC23
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE11
4C083EE18
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】抽出後のコーヒー粉から化粧品用油剤を抽出溶媒としてコーヒー油成分を抽出した後のコーヒー豆残渣を解砕して得られるコーヒー豆解砕物の消臭効果及び又はスクラブ効果を利用し、該コーヒー豆解砕物を配合した化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】抽出後のコーヒー粉からコーヒー油成分を抽出した後のコーヒー豆残渣を簡易製法で解砕してコーヒー豆解砕物を得、それを化粧料に配合すること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出後のコーヒー粉から化粧品用油剤によりコーヒー油成分を抽出した後のコーヒー豆残渣を解砕したコーヒー豆解砕物。
【請求項2】
化粧品用油剤が、常温で液体のエステル油および又はトリグリセライドである請求項1に記載のコーヒー豆解砕物。
【請求項3】
化粧品用油剤が、オリーブ油、マカデミアナッツ油、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルの一種または二種以上から選ばれる請求項1又は2に記載のコーヒー豆解砕物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコーヒー豆解砕物を配合した化粧料。
【請求項5】
請求項3に記載のコーヒー豆解砕物を配合した化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出したコーヒー粉を、化粧品油剤を抽出溶媒としてコーヒー油成分抽出物を得ることについては、既に特許出願しているが、コーヒー油成分抽出物を得た後、コーヒー豆残渣を解砕することで得られるコーヒー豆解砕物及びそれを配合した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用に使用された抽出後のコーヒー豆の再利用については、様々な分野において資源再利用を目的に展開されている(特許文献1,2)。しかしながら、抽出後のコーヒー豆を原料とした化粧品原料への用途展開事例は少なく、その理由として水分を含むコーヒー豆をカビなどの影響を防ぎ、安定に化粧品原料に用いる手段が少ないことが挙げられる。事例としては、バイオ加工技術を用いて、回収したコーヒー豆をカビなどの繁殖を抑え、工業用原料として使用している例がある(特許文献3)。ただし、プロセスが複雑であり工業用への利用は広く進んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-197380号公報
【特許文献2】特開2011-57920号公報
【特許文献3】国際公開2021/069749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抽出した後のコーヒー粉から、化粧品油剤を抽出溶媒としてコーヒー油成分抽出物を得た後のコーヒー豆残渣を解砕したコーヒー豆解砕物の消臭効果および又はスクラブ効果を利用した化粧料を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
産業廃棄物である水分を含んだ抽出後のコーヒー豆を乾燥させ、化粧品油剤を用いて抽出させることで安全かつ安定にコーヒー油成分抽出物を得た後のコーヒー豆残渣を適度な大きさに解砕することで、消臭効果および又はスクラブ効果を有するコーヒー豆解砕物を得ることで、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、簡易な方法により抽出後のコーヒー豆から化粧品原料として消臭効果やスクラブ効果を有するコーヒー豆解砕物を得、それを配合した化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳述する。
本発明に用いる抽出後のコーヒー豆は、飲料用などに用いられたものに特に限定されない。
【0008】
抽出後のコーヒー粉からコーヒー油成分抽出物を得るために溶媒として用いる油剤は、化粧品用途で使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず用いることができ、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油およびトリグリセライド類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、ワセリン等の炭化水素類、常温で液体であるイソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸ヘキシル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、ダイマー酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸オクチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル、オクチルドデシル)、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル等のエステル油およびトリグリセライド類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、アボガド油、オリーブ油、サフラワー油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、メドウフォーム油、硬化ヒマシ油、シア脂、ラノリン、魚油等の精製油又は硬化(水添)油等の動植物油類、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸等の脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール等の高級アルコール類、メチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることで得られる。好ましくは、取り扱いやすい常温で液体のエステル油および又はトリグリセライド類が挙げられる。さらに好ましくは、コーヒー油成分と相溶性に優れ、かつ汎用的に化粧品に用いられるオリーブ油、マカデミアナッツ油、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが挙げられる。
【0009】
本発明は、抽出した後のコーヒー粉からこれらの油剤でコーヒー油成分抽出物を得た後のコーヒー豆残渣を解砕したコーヒー豆解砕物を得ることにある。さらに、このコーヒー豆解砕物を配合した化粧料を得ることにある。化粧料の剤形としては、石鹸、洗顔クリーム、ボディソープ、クレンジング剤などが挙げられるが、特に限定されない。
【0010】
以下に本発明の実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、以下の例において、配合量の記載は特に断りがない限り、質量%を意味する。
【実施例0011】
実施例1.抽出後のコーヒー乾燥物の調製
ステンレスバットに抽出後のコーヒー3686gを入れ、105℃の恒温槽で24時間乾燥させた。恒温槽より抽出後のコーヒー入りステンレスバットを取出し、室温まで冷却させたところ、収量1364g、収率37.0%で抽出後のコーヒー乾燥物を得た。
乾燥減量(105℃、1g、1h)は、0.91%でほとんどの水分を除去できた。菌検査を実施したところ、乾燥前の抽出後のコーヒーは、10の6乗オーダーの菌が検出されたが、水分を除去した抽出後のコーヒー乾燥物は、菌は未検出だった。
IR(ATR法):3318cm-1、2922 cm-1、2852 cm-1、1744 cm-1、1643 cm-1、1454 cm-1、1377 cm-1、1153cm-1、1028 cm-1、712 cm-1
2922 cm-1、2852 cm-1、1454cm-1、712 cm-1にコーヒー油由来のアルキル基の吸収、1744 cm-1にコーヒー油由来のカルボニル結合の吸収があり、コーヒー油由来成分が含有されていることが確認された。
【0012】
実施例2.コーヒー豆解砕物1の調製
200mLビーカーにシュガースクワラン80gと実施例1で得られたコーヒー豆乾燥物40gを入れ、室温で2時間混合撹拌した。次に、ろ紙と珪藻土を用いてろ過し、ろ液を回収し、コーヒー油含有シュガースクワラン溶液68.78gを得たが、その際のろ過残渣すなわちコーヒー豆残渣を、解砕装置(例えばグラインダー)により解砕して、コーヒー豆解砕物1を得た。動的光散乱を用いた粒度測定により平均粒子径は4~100μmのコーヒー豆解砕物が確認できた。
【0013】
実施例3.コーヒー豆解砕物2の調製
200mLビーカーに2-エチルヘキサン酸セチル80gと実施例1で得られたコーヒー豆乾燥物40gを入れ、室温で2時間混合撹拌した。次に、ろ紙と珪藻土を用いてろ過し、ろ液を回収し、コーヒー油含有2-エチルヘキサン酸セチル溶液66.95gを得たが、その際のろ過残渣すなわちコーヒー豆残渣を、解砕装置(例えばグラインダー)により解砕して、コーヒー豆解砕物2を得た。動的光散乱を用いた粒度測定により平均粒子径は4~100μmのコーヒー豆解砕物が確認できた。
【0014】
実施例4.コーヒー豆解砕物3の調製
200mLビーカーにトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル120gと実施例1で得られたコーヒー豆乾燥物80gを入れ、室温で2時間混合撹拌した。次に、ろ紙と珪藻土を用いてろ過し、ろ液を回収し、コーヒー油含有トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル溶液113.56gを得たが、その際のろ過残渣すなわちコーヒー豆残渣を、解砕装置(例えばグラインダー)により解砕して、コーヒー豆解砕物3を得た。動的光散乱を用いた粒度測定により平均粒子径は4~100μmのコーヒー豆解砕物が確認できた。
【0015】
本発明品の消臭効果に関し、アンモニアを臭気物質モデルとした消臭効果の測定原理について示す。一定の容量の容器、例えば2Lビーカーの底部に、シャーレを設置し、そのシャーレ内に一定濃度のアンモニア水溶液を入れる。ビーカー内に一定の試験体をアンモニア水溶液が入ったシャーレとは別に設置することで、ビーカー内のアンモニア濃度変化を測定し、消臭効果を評価することができる。アンモニアの測定には、アンモニア検知管を用いる。試験体を入れていない測定をブランクとし、アンモニア量の低下率が大きいほど、消臭効果が高いことを示す。
【0016】
実施例2~4で得られたコーヒー豆解砕物と比較例1~3について、上記の試験法により消臭効果を試験した。アンモニア消臭効果試験の結果を下表に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
上記の結果から、実施例2~4のコーヒー豆解砕物は、アンモニア消臭効果が高いとされる多孔質シリカと同程度の消臭効果を有することが確認された。
【0019】
以下に本発明のコーヒー豆解砕物を含有する化粧料の応用例を示す。配合量は質量%である。処方例1~3について、アンモニア消臭効果を試験したところ、実施例2~4と同様に優れた結果を得た。
【0020】
<処方例1>石鹸
1.ヤシ脂肪酸 20.0
2.パーム油脂肪酸 20.0
3.グリセリン 6.0
4.水酸化ナトリウム(85%) 15.3
5.水 35.0
6.EDTA-2Na 0.2
7.クエン酸Na 0.5
8.実施例2に示したコーヒー豆残渣解砕物 3.0
(調製方法)1~3を80℃に加温する。4~5を室温で溶解する。1~3、4~5および6~8を均一混合する。型に入れ乾燥させて終了とする。
(使用感)処方例1を実際に使用したところ、コーヒー豆残渣解砕物から得られるスクラブ効果を確認した。
【0021】
<処方例2>ボディソープ
1.ココイルグルタミン酸TEA(30%水溶液) 30.0
2.トリデセスー4カルボン酸Na 5.0
3.ココアンホ酢酸Na(40%水溶液) 10.0
4.PEG-50水添ヒマシ油 0.5
5.1,3-ブチレングリコール 5.0
6.防腐剤 適量
7.EDTA-2Na 0.1
8.精製水 残量
9.実施例3に示したコーヒー豆残渣解砕物 2.0
(調製方法)1~9を加温均一化し、冷却する。
(使用感)処方例2を実際に使用したところ、コーヒー豆残渣解砕物から得られるスクラブ効果を確認した。
【0022】
<処方例3>洗顔クリーム
1.ラウリン酸 10.0
2.パルミチン酸 12.0
3.ステアリン酸 10.0
4.ラウロイルメチルタウリンNa液 5.0
5.ステアリン酸グリセリル(SE) 2.0
6.PEG―30 10.0
7.グリセリン 10.0
8.ソルビトール(70%水溶液) 5.0
9.防腐剤 適量
10.KOH 7.0
11.精製水 残量
12.実施例4に示したコーヒー豆残渣解砕物 2.5
(調製方法)1~9、10~11をそれぞれ加温溶解し、1~9を撹拌しながら、10~11を徐々に加え均一化する。撹拌しながら冷却し、12を加え均一化する。
(使用感)処方例3を実際に使用したところ、コーヒー豆残渣解砕物から得られるスクラブ効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
抽出後のコーヒー粉から化粧品用油剤によりコーヒー油成分抽出物を得た後のコーヒー豆残渣を解砕した本発明のコーヒー豆解砕物は、優れた消臭効果および又はスクラブ効果を有し、該コーヒー豆解砕物を配合した化粧料においても優れた消臭効果および又はスクラブ効果を発揮した。