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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172450
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】手摺り取付け金具
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/14 20060101AFI20231129BHJP
   E04G 7/34 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E04G5/14 302A
E04G7/34 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084263
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 太一
(57)【要約】
【課題】ササラに沿って手摺りを取り付けるときに活用できる手摺り取付け金具を提供する。
【解決手段】ササラに取り付けるクランプ2と、このクランプ2に取り付けられた本体パイプ3と、この本体パイプ3に差し込まれた手摺り支柱パイプ4を固定する押しボルト5と、本体パイプ3の自転を180度の範囲内に制限する自転制限手段6を備え、手摺り支柱パイプ4の内部には、巾方向が当該手摺り支柱パイプ4の直径方向に沿うように挿入された帯状板12が固着され、自転制限手段6は、本体パイプ3の周壁部に周方向180度の範囲内に沿って設けられた長孔15と、この長孔15から手摺り支柱パイプ4に設けられた貫通孔14a/14bを経由して取付け用ネジ孔13に螺合締結される自転制限用ボルト16から構成され、自転制限用ボルト16が半円形の長孔15の両端何れかに位置するとき、押しボルト5と帯状板12の巾方向横断面とが一直線上に位置する構成。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段側辺のササラに取り付けるクランプと、このクランプに取り付けられた手摺り支柱差込み用の本体パイプと、この本体パイプに差し込まれた手摺り支柱パイプを当該本体パイプに固定する手摺り支柱固定用の押しボルトと、前記本体パイプに対する前記手摺り支柱パイプの自転を180度の範囲内に制限する自転制限手段を備えた手摺り取付け金具において、
前記クランプは、前記ササラに上から嵌合可能な門形のクランプ本体と、このクランプ本体の内外両垂直板部の内、内側の垂直板部に設けられた貫通ネジ孔を水平方向に螺合貫通する締結用ボルトから構成され、前記本体パイプは、前記クランプ本体の天板部の上に下端が固着され、前記自転制限手段は、前記本体パイプの周壁部に周方向に沿って設けられた長孔と、この長孔を経由して前記手摺り支柱パイプに設けられた取付け用ネジ孔に螺合締結される自転制限用ボルトから構成され、前記長孔は、前記本体パイプの、前記クランプ本体の内外両垂直板部と平行な直径方向2箇所を、前記クランプ本体の内外両垂直板部の内、外側の垂直板部のある側で180度の範囲にわたって連結する半円形の長孔であり、前記手摺り支柱パイプの内部には、この手摺り支柱パイプの長さ方向と平行に且つ巾方向が当該手摺り支柱パイプの中心位置を通る直径方向に沿うように位置する帯状板が固着され、この帯状板の前記半円形の長孔と同一高さに前記取付け用ネジ孔が設けられると共に、当該取付け用ネジ孔と同心状に前記手摺り支柱パイプに貫通孔が設けられ、前記自転制限用ボルトは、半円形の長孔の外側から前記貫通孔を経由して前記取付け用ネジ孔に螺合締結され、前記自転制限用ボルトが前記半円形の長孔の両端何れかに位置するとき、前記手摺り支柱固定用の押しボルトと前記帯状板の巾方向横断面とが一直線上に位置するように、前記手摺り支柱固定用の押しボルトが配置されている、手摺り取付け金具。
【請求項2】
前記帯状板は、その下端が前記手摺り支柱パイプの下端と一致する状態で当該帯状板の下端部と前記手摺り支柱パイプの下端部内周面とが溶接により互いに固着されている、請求項1に記載の手摺り取付け金具。
【請求項3】
前記本体パイプは、門形のクランプ本体の天板部の中心より前記外側の垂直板部のある側に片寄った位置に取り付けられて、当該本体パイプの外側面が門形のクランプ本体の前記外側の垂直板部の外側面と面一に構成されている、請求項1又は2に記載の手摺り取付け金具。
【請求項4】
前記帯状板に設けられる前記取付け用ネジ孔を当該帯状板に対して貫通させると共に、手摺り支柱パイプに前記取付け用ネジ孔と同心状に設けられて自転制限用ボルトが挿通される前記貫通孔は、当該手摺り支柱パイプの直径方向両側に設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載の手摺り取付け金具。
【請求項5】
前記手摺り支柱パイプに、外径の太い手摺り支柱パイプと、この外径の太い手摺り支柱パイプに出し入れ自在に内嵌可能な外径の細い手摺り支柱パイプが存在し、前記手摺り支柱差込み用の本体パイプは、外径の太い手摺り支柱パイプに合わせた内径とし、外径の細い手摺り支柱パイプの下端部には、前記外径の太い手摺り支柱パイプと同一外径の鋼管を外嵌固着してある、請求項1~4の何れか1項に記載の手摺り取付け金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段や踊り場などの仮設通路の側辺のササラに手摺り支柱パイプを取り付けるための手摺り取付け金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の手摺り取付け金具は、先行技術文献を示すことはできないが、階段などの通路側辺のササラに取り付けるクランプと、このクランプに取り付けられた手摺り支柱差込み用の本体パイプと、この本体パイプに差し込まれた手摺り支柱パイプを当該本体パイプに固定する手摺り支柱固定用の押しボルトと、前記本体パイプに対する前記手摺り支柱パイプの自転を180度の範囲内に制限する自転制限手段を備えた手摺り取付け金具が業界内において知られている。この手摺り取付け金具によって通路側辺のササラに取り付けられる手摺りは、ササラ長さ方向に適当間隔おきに配置された複数本の手摺り支柱パイプ間をササラ長さ方向と平行な手摺りパイプで連結したものであって、各手摺り支柱パイプの下端部に取り付けられた取付け金具が、通路両脇のササラに取り付けられる。この場合、手摺り支柱を取り付けるササラの外側(通路の外側)に建物の壁が隣接しているような状況では、前記クランプが備える水平横向きの締結用ボルトや、前記本体パイプに差し込まれた手摺り支柱パイプを当該本体パイプに固定する手摺り支柱パイプ固定用の押しボルトが、前記建物の壁と干渉しないようにササラの内側(通路の内側)に突出する向きで手摺り支柱パイプに前記本体パイプを取り付け、手摺り支柱パイプを取り付けるササラの外側(通路の外側)に十分な空間が確保できる状況では、前記クランプの締結用ボルトや手摺り支柱パイプ固定用の押しボルトがササラの外側(通路の外側)に突出する向きで手摺り支柱パイプに前記本体パイプを取り付けて、通路を利用する作業者が前記クランプの締結用ボルトや手摺り支柱パイプ固定用の押しボルトに接触する恐れを無くして安全性を高めることが必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにこの種の手摺り取付け金具では、状況に応じて手摺り支柱パイプに前記本体パイプを、180度向きを選択して取り付ける必要があるが、このような要求に対応できる手摺り取付け金具でありながら、手摺り支柱パイプとして比較的薄肉の鋼管を使用することができ、しかも手摺り支柱固定用の押しボルトの強力な締め付けも可能にする十分な強度を備えた手摺り取付け金具は、実用化されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる手摺り取付け金具を提案するものであって、本発明に係る手摺り取付け金具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、通路側辺のササラ(21)に取り付けるクランプ(2)と、このクランプ(2)に取り付けられた手摺り支柱パイプ差込み用の本体パイプ(3)と、この本体パイプ(3)に差し込まれた手摺り支柱パイプ(4)を当該本体パイプ(3)に固定する手摺り支柱パイプ固定用の押しボルト(5)と、前記手摺り支柱パイプ(4)に対する前記本体パイプ(3)の自転を180度の範囲内に制限する自転制限手段(6)を備えた手摺り取付け金具(1)において、前記クランプ(2)は、前記ササラ(21)に上から嵌合可能な門形のクランプ本体(10)と、このクランプ本体(10)の内外両垂直板部(7,8)の内、内側の垂直板部(7)に設けられた貫通ネジ孔(7a)を水平方向に螺合貫通する締結用ボルト(11)から構成され、前記本体パイプ(3)は、前記クランプ本体(10)の天板部(9)の上に下端が固着され、前記自転制限手段(6)は、前記本体パイプ(3)の周壁部に周方向に沿って設けられた長孔(15)と、この長孔(15)を経由して前記手摺り支柱パイプ(4)に設けられた取付け用ネジ孔(13)に螺合締結される自転制限用ボルト(16)から構成され、前記長孔(15)は、前記本体パイプ(3)の、前記クランプ本体(10)の内外両垂直板部(7,8)と平行な直径方向2箇所を、前記クランプ本体(10)の内外両垂直板部(7,8)の内、外側の垂直板部(8)のある側で180度の範囲にわたって連結する半円形の長孔(15)であり、前記手摺り支柱パイプ(4)の内部には、この手摺り支柱パイプ(4)の長さ方向と平行に且つ巾方向が当該手摺り支柱パイプ(4)の中心位置を通る直径方向に沿うように位置する帯状板(12)が固着され、この帯状板(12)の前記半円形の長孔(15)と同一高さに前記取付け用ネジ孔(13)が設けられると共に、当該取付け用ネジ孔(13)と同心状に前記手摺り支柱パイプ(4)に貫通孔(14a/14b)が設けられ、前記自転制限用ボルト(16)は、半円形の長孔(15)の外側から前記貫通孔(14a/14b)を経由して前記取付け用ネジ孔(13)に螺合締結され、前記自転制限用ボルト(16)が前記半円形の長孔(15)の両端何れかに位置するとき、前記手摺り支柱固定用の押しボルト(5)と前記帯状板(12)の巾方向横断面とが一直線上に位置するように、前記手摺り支柱固定用の押しボルト(5)が配置された構成になっている。
【発明の効果】
【0005】
上記本発明の構成によれば、手摺り支柱パイプ(4)の下端部に内装固着する帯状板(12)の巾方向が、複数本の手摺り支柱パイプを備えた手摺りの長さ方向に対して直角横向きとなるように取り付けておけば、この手摺り支柱パイプの下端部に自転制限手段の自転制限用ボルトによって本発明の手摺り取付け金具を取り付けたとき、クランプ本体の内外両垂直板部が、手摺りを取り付けるササラの長さ方向と平行な向きとなり且つ、クランプの締結用ボルトや手摺り支柱パイプの下端部に本発明の手摺り取付け金具を固定する押しボルトが、前記ササラの長さ方向に対して直角横向きになる。従って、ササラの外側に建物の壁が接近している状態か否かなどの状況に合わせて本発明の手摺り取付け金具の向きを180度変えて、手摺りの各手摺り支柱パイプの下端をササラに簡単容易に取り付けることができる。
【0006】
しかも本発明の上記構成によれば、手摺り支柱パイプ下端部の内部に配置させなければならない取付け用ネジ孔、即ち、自転制限手段の自転制限用ボルトを取り付けるための取付け用ネジ孔が設けられる帯状板が、手摺り支柱パイプに本発明の手摺り取付け金具を固定する押しボルトの締め付け押圧力を、当該帯状板の巾方向圧縮応力によって受け止めさせることができ、手摺り支柱パイプが比較的板厚の薄い鋼管で構成されていても、前記押しボルトの締め付け押圧力で手摺り支柱パイプが圧縮変形するような事態を確実に回避できる。又、自転制限手段の自転制限用ボルトを取り付けるための取付け用ネジ孔を、手摺り支柱パイプ内に直径方向に沿って配置した横断部材に設ける場合と比較して、構造が簡単で容易に組み立てることができる。
【0007】
上記本発明を実施する場合、具体的には、前記帯状板(12)は、その下端が前記手摺り支柱パイプ(4)の下端と一致する状態で、当該帯状板(12)の下端部と前記手摺り支柱パイプ(4)の下端部内周面とを溶接により互いに固着することができる。この構成によれば、前記帯状板を、その巾方向が前記手摺り支柱パイプの直径方向と一致する状態で簡単容易に溶接することができる。又、前記本体パイプ(3)は、門形のクランプ本体(10)の天板部(9)の中心より前記外側の垂直板部(8)のある側に片寄った位置に取り付けて、当該本体パイプ(3)の外側面が門形のクランプ本体(10)の前記外側の垂直板部(8)の外側面と面一に構成することができる。この構成によれば、ササラの外側に建物の壁が接近しているような状況でも、クランプ本体の外側の垂直板部をササラと建物の壁との間の狭い隙間に差し込みさえ可能であれば、当該ササラに本発明の手摺り取付け金具を取り付けて、手摺りを支持させることができる。
【0008】
前記帯状板(12)に設けられる前記取付け用ネジ孔(13)を当該帯状板(12)に対して貫通させると共に、手摺り支柱パイプ(4)に前記取付け用ネジ孔(13)と同心状に設けられて自転制限用ボルト(16)が挿通される前記貫通孔(14a,14b)は、当該手摺り支柱パイプ(4)の直径方向両側に設けることができる。この構成によれば、手摺りの各手摺り支柱パイプの下端部に本発明の手摺り取付け金具を取り付けるとき、自転制限用ボルトを前記本体パイプの直径方向両側の何れ側からも組み込むことができ、組み立て作業が簡単容易且つ能率的に行える。
【0009】
尚、本発明の手摺り取付け金具によってササラに取り付けようとする手摺りの手摺り支柱パイプ(4)に外径の太い手摺り支柱パイプ(24c,24d)と外径の細い手摺り支柱パイプ(25c)が存在するような場合、前記手摺り支柱差込み用の本体パイプ(3)は、外径の太い手摺り支柱パイプ(24c,24d)に合わせた内径とし、外径の細い手摺り支柱パイプ(25c)の下端部には、前記外径の太い手摺り支柱パイプ(24c,24d)を構成する鋼管と同一外径の鋼管(25d)を外嵌固着しておくことができる。このように構成すれば、外径の太い手摺り支柱パイプに使用する本発明の手摺り取付け金具と、外径の細い手摺り支柱パイプ使用する本発明の手摺り取付け金具の2種類を準備する必要がなくなり、1種類の手摺り取付け金具を何れの手摺り支柱パイプにも問題なく取り付けて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、取り付ける前の手摺り支柱パイプの下端部の縦断面図と、手摺り取付け金具の側面図であって、手摺り支柱パイプの下端部の縦断面図として、手摺り支柱パイプが太いものと細いものの2種類を示している。
図2図2は、手摺り支柱パイプを取り付けた状態の手摺り取付け金具を示す側面図である。
図3図3は、同上手摺り取付け金具を示す正面図である。
図4図4は、同上手摺り取付け金具を示す背面図である。
図5図5は、同上手摺り取付け金具を示す平面図である。
図6図6は、図2のA-A線断面図である。
図7図7は、図5のB-B線断面図である。
図8図8は、水平通路(踊り場)脇に取り付けられる手摺りを示す正面図とその一部の拡大縦断面図である。
図9図9は、傾斜通路(階段)脇に取り付けられる手摺りを示す正面図である。
図10図10は、通路側辺のササラに手摺り取付け金具を取り付けた状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図7に基づいて本発明一実施例を説明すると、手摺り取付け金具1は、クランプ2と本体パイプ3から成り、本体パイプ3には、この本体パイプ3に差し込まれた手摺り支柱パイプ4を抜け止めする手摺り支柱固定用の押しボルト5が設けられ、本体パイプ3と手摺り支柱パイプ4とには、押しボルト5によって本体パイプ3に固定する前の手摺り支柱パイプ4の180度の範囲内での自転を可能にする自転制限手段6が設けられている。
【0012】
前記クランプ2は、内外両垂直板部7,8と天板部9とから成る門形のクランプ本体10と、このクランプ本体10の内側の垂直板部7に設けられた貫通ネジ孔7a(図7参照)を水平方向に螺合貫通する締結用ボルト11から構成され、クランプ本体10は、鉄板をコノ字形に曲げ加工したような薄板構造のものではなく、鋳造によって一体製造される、各板部の厚さが十分にある高強度のものである。尚、内側の垂直板部7は、締結用ボルト11が螺合貫通する貫通ネジ孔7aを設けるための必要最低限の高さを有するものであり、外側の垂直板部8は、内側の垂直板部7よりも高さが高くなっている。
【0013】
本体パイプ3は、クランプ本体10の天板部9の巾よりも外径が小さなものであり、この本体パイプ3の下端が、天板部9の中心より外側の垂直板部8のある側に寄せられた状態で天板部9の上面に溶接により固着されて一体化されている。具体的には、外側の垂直板部8の外側面の上方への延長仮想面に本体パイプ3の外周面(上端の張出しフランジ部3aの外周面)が接するほどに、本体パイプ3を外側の垂直板部8のある側に極限まで寄せている。
【0014】
手摺り支柱パイプ4は、本体パイプ3の内径より少し小径の外径を有する、本体パイプ3と比較して薄肉の鋼管を利用したもので、その内部には、手摺り支柱パイプ4内に挿入できる最大の巾(手摺り支柱パイプ4の内径より少し短い巾)を有する厚板の帯状板12が固着されている。この帯状板12は、本体パイプ3の全長よりは短い長さを有するもので、その下端が手摺り支柱パイプ4の下端と面一になる状態で、帯状板12の下端部の巾方向両端部と手摺り支柱パイプ4の下端部の内周面とが、手摺り支柱パイプ4の下端から作業できる範囲内で溶接されて手摺り支柱パイプ4と一体に固着されている。この帯状板12には、その下端から当該帯状板12の巾程度上方に離れた位置に、手摺り支柱パイプ4の中心と交差する直径方向に貫通した取付け用ネジ孔13が設けられ、手摺り支柱パイプ4には、前記取付け用ネジ孔13と同心状に、当該取付け用ネジ孔13より大径の貫通孔14a,14bが直径方向両側に設けられている。
【0015】
本体パイプ3には、この本体パイプ3内に手摺り支柱パイプ4を挿入して当該手摺り支柱パイプ4の下端がクランプ本体10の天板部9上に載置されたときの前記貫通孔14a,14bの高さに、クランプ本体10の内外両垂直板部7,8の長さ方向と平行な方向の本体パイプ3の直径方向の両側2箇所を、前記クランプ本体10の外側の垂直板部8のある側で180度の範囲にわたって連結する半円形の長孔15が設けられている。この半円形の長孔15の上下巾は、本体パイプ3内に挿入された手摺り支柱パイプ4の前記貫通孔14a,14bの直径より小さくない巾であって、この半円形の長孔15の外側から手摺り支柱パイプ4の片側の貫通孔14aを経由させて手摺り支柱パイプ4内に挿入した自転制限用ボルト16の先端螺軸部16aを、手摺り支柱パイプ4内の帯状板12の取付け用ネジ孔13に螺合締結している。
【0016】
自転制限用ボルト16の先端螺軸部16aの長さは、当該先端螺軸部16aの基端位置まで取付け用ネジ孔13に螺合締結したときも、当該自転制限用ボルト16の、端面に六角穴を備えた円柱形頭部16bは本体パイプ3の外周面から外側に少し離れて位置すると共に、手摺り支柱パイプ4の反対側に位置する貫通孔14bには達しない長さに構成されている。従って本体パイプは、手摺り支柱パイプ4からの引き抜きは自転制限用ボルト16と半円形の長孔15とで阻止された状態で、自転制限用ボルト16が半円形の長孔15の一端から他端に達するまでの180度の範囲内で手摺り支柱パイプ4に対して正逆任意の方向に自転させることができる。即ち、自転制限手段6は、手摺り支柱パイプ4から半径方向に突出するように手摺り支柱パイプ4に取り付けられた自転制限用ボルト16と、本体パイプ3に設けられた半円形の長孔15とによって構成されている。
【0017】
手摺り支柱パイプ4を自転させて、自転制限用ボルト16が半円形の長孔15の一端又は他端に当接して自転が制限された状態では、自転制限用ボルト16は、クランプ本体10の内外両垂直板部7,8の長さ方向と平行な横向き姿勢にあって、帯状板12は、自転制限用ボルト16の軸心方向に対して直角の手摺り支柱パイプ4の直径方向に沿った姿勢にある。この状態にある手摺り支柱パイプ4を本体パイプ3に固定するための手摺り支柱固定用の押しボルト5が本体パイプ3に設けられている。即ち、本体パイプ3には、クランプ本体10の内側の垂直板部7の真上位置で半円形の長孔15と同一高さに円筒状雌ネジ体17が、本体パイプ3の半径方向に固着突設され、本体パイプ3には、この円筒状雌ネジ体17の貫通ネジ孔17aと同心状に当該貫通ネジ孔17aより大径の貫通孔が設けられて、この円筒状雌ネジ体17の外側から本体パイプ3の内部にまで手摺り支柱固定用の押しボルト5を螺合貫通させることができるように構成されている。尚、本体パイプ3には、円筒状雌ネジ体17と本体パイプ3の上端との間の入隅部と、円筒状雌ネジ体17と本体パイプ3の下端(クランプ本体10の天板部9)との間の入隅部とに補強用垂直厚板部18a,18bが設けられている。
【0018】
以上のように構成された手摺り取付け金具1の使用方法について説明すると、図8に示す踊り場などの水平通路19や、図9に示す階段が構築される傾斜通路20には、これら通路19,20の左右両側に通称ササラ21と称される垂直鋼板が配されている。このササラ21に図8の水平通路用手摺り22や図9の傾斜通路用手摺り23が取り付けられる。水平通路用手摺り22や傾斜通路用手摺り23で全長を変更できる構造のものを一例として説明すると、手摺り本体24と、この手摺り本体24に対して出し入れ自在な可動手摺り25との組み合わせから成り、手摺り本体24は、上下2段の手摺りパイプ24a,24bと、これら上下2段の手摺りパイプ24a,24bを連結一体化する2本の支柱パイプ24c,24dとから成り、可動手摺り25は、手摺り本体24の上下2段の手摺りパイプ24a,24bに対して出し入れ自在に内嵌する上下2段の手摺りパイプ25a,25bと、上下2段の手摺りパイプ25a,25bを連結一体化する1本の支柱パイプ25c、及び手摺り本体24に対して出し入れした可動手摺り25を固定する固定用ボルト26から構成されている。傾斜通路用手摺り23の全ての支柱パイプ24c,24d,25cの下端部は、傾斜通路20におけるササラ21の長さ方向に対して直角向きに傾斜させるように曲げ加工している。
【0019】
尚、手摺り本体24を構成する全てのパイプ24a~24dは太い同一径の鋼管であり、可動手摺り25を構成する全てのパイプ25a~25cは、前記パイプ24a~24d内に挿入可能な細い同一径の鋼管である。従って、細い鋼管で構成される可動手摺り25の1本の支柱パイプ25cの下端部には、図1図8の一部拡大縦断面図に示すように、手摺り本体24を構成する太いパイプ25a~25cと同じ鋼管を本体パイプ3の長さとほぼ同一長さに裁断した太い外嵌用鋼管25dを、下端どうしが面一になるように外嵌させて溶接固着し、全ての支柱パイプ24c,24d,25cの下端部の外径Dが同一になるように構成されている。この場合、本来の細い支柱パイプ25cの下端部に直径方向に貫通するように設けられる貫通孔14a,14bは、内側の細い支柱パイプ25cとこれに外嵌固着された太い外嵌用鋼管25dとにわたって設けられる。
【0020】
図8に示す踊り場などの水平通路19に水平通路用手摺り22を取り付ける場合や、図9に示す階段が構築される傾斜通路20に傾斜通路用手摺り23を取り付ける場合には、全ての支柱パイプ24c,24d,25cの下端部(支柱パイプ25cの下端部には太い外嵌用鋼管25dが外嵌固着されている)を、上記実施例の手摺り支柱パイプ4の下端部と同一構造に加工した上で、手摺り取付け金具1を取り付けておく。このとき、各支柱パイプ24c,24d,25cの下端部に内嵌固着される帯状板12は、各手摺り22,23の長さ方向に対して帯状板12の巾方向が直角向きとなるように固着されており、従って、本体パイプ3の外側に突出している自転制限手段6の自転制限用ボルト16は、本体パイプ3に対して各手摺り22,23の長さ方向の前後何れかに向かって突出し、押しボルト5を締め込まない状態では、各支柱パイプ24c,24d,25cの下端部に対して手摺り取付け金具1の本体パイプ3が180度の範囲内で自転可能な状態になっている。
【0021】
水平通路19脇のササラ21に水平通路用手摺り22を取り付けるときや、傾斜通路20脇のササラ21に傾斜通路用手摺り23を取り付けるときは、全ての支柱パイプ24c,24d,25cの下端部に取り付けられている手摺り取付け金具1を、そのクランプ2をササラ21に上から嵌合させて締結用ボルト11を締め込むことにより、ササラ21の上に固定するのであるが、図10の右側に示すように、ササラ21の外側に建物の壁27が接近して位置しているときは、各手摺り取付け金具1を支柱パイプ24c,24d,25cの下端部に対して、クランプ2の締結用ボルト11や押しボルト5がササラ21の内側、即ち、ササラ21に対して水平通路19や傾斜通路20のある側に突出する向きに自転させた状態で、クランプ2をササラ21に上から嵌合させる。この結果、クランプ2の外側の垂直板部8をササラ21と建物の壁27との間の狭い隙間内に差し込むことができると共に、クランプ2の締結用ボルト11や押しボルト5が建物の壁27と干渉することが無くなり、通路の内側からクランプ2の締結用ボルト11及び押しボルト5を締め込んで、手摺り取付け金具1をササラ21に固定すると共に手摺り取付け金具1を支柱パイプ24c,24d,25cの下端部に固定することができる。
【0022】
尚、図10の左側に示すように、ササラ21の外側に建物の壁27などが接近していない側のササラ21に対しては、各手摺り取付け金具1を支柱パイプ24c,24d,25cの下端部に対して、クランプ2の締結用ボルト11や押しボルト5がササラ21の外側、即ち、ササラ21に対して水平通路19や傾斜通路20のある側とは反対側に突出する向きに自転させた状態で、クランプ2をササラ21に取り付けることができる。このように水平通路用手摺り22や傾斜通路用手摺り23を取り付けることによって、水平通路19や傾斜通路20内を歩行する作業者の足元に対して、クランプ2の締結用ボルト11や押しボルト5が干渉する恐れが無くなる。勿論、水平通路19や傾斜通路20の仕上げ表面レベルが、クランプ本体10の高さの高い外側の垂直板部8の下端より上になるような状況であれば、ササラ21に対する手摺り取付け金具1の取付け向きを、図10の右側に示すように、クランプ本体10の高さの低い内側の垂直板部7がササラ21の内側に位置する向きに取り付ければ良い。
【0023】
本発明を実施する場合、取付け用ネジ孔13が設けられる帯状板12は、その下端と手摺り支柱パイプ4の内周面とを溶接することができる範囲内で、下端位置を手摺り支柱パイプ4の下端より上方に離れるような長さのものであっても良い。又、図示例では、帯状板12に設けられる取付け用ネジ孔13と同一高さで本体パイプ3に押しボルト5を設けているが、この押しボルト5は、帯状板12の長さの範囲内であれば、上下方向に位置を変えることも可能である。更に、帯状板12を厚くして、この帯状板12に設けられる取付け用ネジ孔13に対して自転制限用ボルト16の先端螺軸部16aが貫通しないように構成することもできるし、手摺り支柱パイプ4の直径方向両側に同心状に貫通孔14a,14bを設けたが、何れか片側にのみ貫通孔を設けて、手摺り支柱パイプ4に対する自転制限用ボルト16の差し込み方向を一定にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の手摺り取付け金具は、ササラに沿って手摺りを取り付けるときに、当該手摺りの各支柱パイプの下端部に取り付けておく手摺り取付け金具として効果的に活用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 手摺り取付け金具
2 クランプ
3 本体パイプ
3a 上端の張出しフランジ部
4 手摺り支柱パイプ
5 押しボルト
6 自転制限手段
7 内側の垂直板部
7a 貫通ネジ孔
8 外側の垂直板部
9 天板部
10 クランプ本体
11 締結用ボルト
12 帯状板
13 取付け用ネジ孔
14a,14b 貫通孔
15 半円形の長孔
16 自転制限用ボルト
16a 先端螺軸部
16b 円柱形頭部
17 円筒状雌ネジ体
17a 貫通ネジ孔
18a,18b 補強用垂直厚板部
19 水平通路
20 傾斜通路
21 ササラ
22 水平通路用手摺り
23 傾斜通路用手摺り
24 手摺り本体
24a,24b,25a,25b 手摺りパイプ
24c,24d,25c 支柱パイプ
25 可動手摺り
25d 太い外嵌用鋼管
26 固定用ボルト
27 建物の壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10