(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172451
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】両面粘着シートの製造方法および両面粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/40 20180101AFI20231129BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231129BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C09J7/40
C09J7/38
C09J133/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084264
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】澤村 周
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF041
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】良好な外観を有する薄い両面粘着シートを、環境負荷を低減しつつ製造するのに適した両面粘着シートの製造方法、及び両面粘着シートを提供する。
【解決手段】両面粘着シートの製造方法は、はく離ライナー11上に水分散型粘着剤組成物を塗布して塗膜20aを形成する工程と、塗膜20aを加熱乾燥させて粘着剤層21を形成する工程と、基材フィルム30の第1面31を粘着剤層21の露出面に貼り合わせる工程と、基材フィルム30の第2面32上に水分散型粘着剤組成物を塗布して塗膜20bを形成する工程と、塗膜20bを加熱乾燥させて粘着剤層22を形成する工程を含む。両面粘着シートXは、厚さ12μm以下の基材フィルム30と、水分散型粘着剤組成物から形成された第1面31上の粘着剤層21と、水分散型粘着剤組成物から形成された第2面32上の粘着剤層22と、粘着剤層21の粘着面21aに剥離可能に接するはく離ライナー11とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はく離ライナー上に第1水分散型粘着剤組成物を塗布して第1塗膜を形成する第1塗布工程と、
前記第1塗膜を加熱によって乾燥させて第1粘着剤層を形成する第1乾燥工程と、
第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基材フィルムの前記第1面を、前記はく離ライナー上の前記第1粘着剤層の露出面に貼り合わせる、貼合せ工程と、
前記基材フィルムの前記第2面上に第2水分散型粘着剤組成物を塗布して第2塗膜を形成する第2塗布工程と、
前記第2塗膜を加熱によって乾燥させて第2粘着剤層を形成する第2乾燥工程とを含む、両面粘着シートの製造方法。
【請求項2】
前記基材フィルム上の前記第2粘着剤層の露出面にはく離ライナーを貼り合わせる工程を更に含む、請求項1に記載の両面粘着シートの製造方法。
【請求項3】
第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基材フィルムであって、12μm以下の厚さを有する基材フィルムと、
前記第1面上に配置された第1粘着剤層であって、前記基材フィルムとは反対側に第1粘着面を有し、第1水分散型粘着剤組成物から形成された第1粘着剤層と、
前記第2面上に配置された第2粘着剤層であって、前記基材フィルムとは反対側に第2粘着面を有し、第2水分散型粘着剤組成物から形成された第2粘着剤層と、
前記第1粘着面に剥離可能に接するはく離ライナーとを備える、両面粘着シート。
【請求項4】
前記第2粘着剤層は、前記基材フィルムに対する前記第2水分散型粘着剤組成物の塗工膜から形成されている、請求項3に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記はく離ライナーが35μm以上の厚さを有する、請求項3に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
前記第2粘着面に剥離可能に接するはく離ライナーであって、25μm以下の厚さを有するはく離ライナーを更に備える、請求項3に記載の両面粘着シート。
【請求項7】
前記基材フィルムが、前記第1面および/または前記第2面を形成するアンカー層を有する、請求項3から6のいずれか一つに記載の両面粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートの製造方法および両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着シートは、例えば、基材フィルムと、当該基材フィルムの一方面上の第1の粘着剤層と、他方面上の第2の粘着剤層とを有する。両面粘着シートは、例えば、ディスプレイパネルなどのデバイスにおいて接合用材料として用いられる。このような両面粘着シートは、従来、例えば次のように製造される。
【0003】
まず、第1のはく離ライナー上に第1の粘着剤層を形成し、第2のはく離ライナー上に第2の粘着剤層を形成する。はく離ライナー上への粘着剤層の形成においては、まず、塗工機によってはく離ライナー上に粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する(塗布工程)。はく離ライナーは、表面が剥離処理されたプラスチックフィルムである。粘着剤組成物は、例えば、ベースポリマーと他の成分と有機溶剤との混合によって調製される。塗布工程では、塗工機におけるダイスおよびブレードなどの金属部材により、はく離ライナーが擦過される。そのため、はく離ライナーには、その擦過による破れ、たわみ、及びシワが生じないための厚さが必要である。塗工機によって粘着剤組成物が塗布される基材(はく離ライナー,後記の基材フィルム)には、例えば35μm以上の厚さが、必要である。塗布工程の後、はく離ライナー上の塗膜が加熱によって乾燥されて、粘着剤層が形成される。
【0004】
次に、第1のはく離ライナー上の第1の粘着剤層を、基材フィルムの一方面に貼り合わせる(第1の転写工程)。次に、第2のはく離ライナー上の第2の粘着剤層を、基材フィルムの他方面に貼り合わせる(第2の転写工程)。これにより、両面粘着シートが得られる。
【0005】
以上のように製造される両面粘着シートでは、各粘着剤層がはく離ライナーによって被覆されている。はく離ライナーは、両面粘着シートの使用時に除去される。除去されたはく離ライナーは、廃棄される。
【0006】
このような両面粘着シートに関する技術については、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
両面粘着シートの作製においては、廃プラスチック量の低減の観点から、はく離ライナー上での粘着剤層の形成と当該粘着剤層の基材フィルムへの転写の代わりに、基材フィルム上での粘着剤層の直接的な形成が考えられる(第1の方法)。例えば、次のとおりである。
【0009】
まず、基材フィルムの一方面上に、塗工機によって粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する(第1塗布工程)。次に、基材フィルム上の塗膜を加熱によって乾燥して第1の粘着剤層を形成する。次に、基材フィルム上の粘着剤層に第1のはく離ライナーを貼り合わせる。次に、基材フィルムの他方面上に、塗工機によって粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する(第2塗布工程)。次に、基材フィルム上の塗膜を加熱によって乾燥して第2の粘着剤層を形成する。次に、基材フィルム上の第2の粘着剤層に第2のはく離ライナーを貼り合わせる。第1および第2はく離ライナーとして、上述の従来の製造方法における上記はく離ライナーよりも薄いはく離ライナーを用いることにより、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減できる。廃プラスチック量の低減は、環境負荷の低減に役立つ。
【0010】
一方、両面粘着シートには、用途に応じた薄さが求められる。例えばディスプレイパネル用途の両面粘着シートに対しては、薄型化の要求は強い。良好な粘着特性の確保のために粘着剤層の厚さを維持しつつ、両面粘着シートを薄型化するためには、薄い基材フィルムを用いる必要がある。しかし、上述の第1の方法では、基材フィルムが第1塗布工程で破れ、たわみ、及びシワが生じないように、基材フィルムには例えば35μm以上の厚さが求められる。そのため、第1の方法は、両面粘着シートの薄型化に適しない。そこで、次のような製造方法が考えられる(第2の方法)。
【0011】
まず、塗工機によって第1のはく離ライナー上に粘着剤組成物(ベースポリマーと有機溶剤とを含む)を塗布して塗膜を形成する(第1塗布工程)。次に、第1のはく離ライナー上の塗膜を加熱によって乾燥して第1の粘着剤層を形成する(第1乾燥工程)。次に、第1のはく離ライナー上の第1の粘着剤層を、基材フィルムの一方面に貼り合わせる。次に、基材フィルムの他方面上に、塗工機によって粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する(第2塗布工程)。次に、基材フィルム上の塗膜を加熱によって乾燥して第2の粘着剤層を形成する(第2乾燥工程)。次に、基材フィルム上の第2の粘着剤層に第2のはく離ライナーを貼り合わせる。
【0012】
このような第2の方法において、第2塗布工程の基材フィルムは、同フィルムの一方面に配置されている第1のはく離ライナーおよび粘着剤層によって実質的に補強されている。そのため、基材フィルムとしては、厚さが例えば35μm未満の薄いプラスチックフィルムを用いることができる。そのため、第2の方法は、上述の第1の方法よりも、両面粘着シートの薄型化に適する。加えて、第2の方法では、第2はく離ライナーとして、上述の従来の製造方法における上記はく離ライナーよりも薄いはく離ライナーを用いることにより、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減できる。しかし、第2の方法によると、第1の粘着剤層に欠点が生じる。具体的には、次のとおりである。
【0013】
第1の粘着剤層は、有機溶剤を含有する粘着剤組成物から形成されているため、第1乾燥工程後に、第1の粘着剤層には微量の有機溶剤が残存する。第2乾燥工程では、このような第1の粘着剤層が、基材フィルムと第1のはく離ライナーとによって被覆された状態で、加熱される。これにより、第1の粘着剤層において、残存有機溶剤の気化に起因して欠点が生じる。具体的には、第1の粘着剤層内の残存有機溶剤が、第2乾燥工程での加熱によって急激に気化し、粘着剤層とはく離ライナーとの間に局所的な気泡を形成する。気泡により、粘着剤層表面に窪み(気泡痕)が形成される。これら気泡および気泡痕は、両面粘着シートにとって欠点であり、両面粘着シートの外観不良・厚み不良の原因となり、好ましくない。
【0014】
本発明は、良好な外観を有する薄い両面粘着シートを、環境負荷を低減しつつ製造するのに適した両面粘着シートの製造方法、および両面粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明[1]は、はく離ライナー上に第1水分散型粘着剤組成物を塗布して第1塗膜を形成する第1塗布工程と、前記第1塗膜を加熱によって乾燥させて第1粘着剤層を形成する第1乾燥工程と、第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基材フィルムの前記第1面を、前記はく離ライナー上の前記第1粘着剤層の露出面に貼り合わせる、貼合せ工程と、前記基材フィルムの前記第2面上に第2水分散型粘着剤組成物を塗布して第2塗膜を形成する第2塗布工程と、前記第2塗膜を加熱によって乾燥させて第2粘着剤層を形成する第2乾燥工程とを含む、両面粘着シートの製造方法を含む。
【0016】
本発明[2]は、前記基材フィルム上の前記第2粘着剤層の露出面にはく離ライナーを貼り合わせる工程を更に含む、上記[1]に記載の両面粘着シートの製造方法を含む。
【0017】
本発明[3]は、第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基材フィルムであって、12μm以下の厚さを有する基材フィルムと、前記第1面上に配置された第1粘着剤層であって、前記基材フィルムとは反対側に第1粘着面を有し、第1水分散型粘着剤組成物から形成された第1粘着剤層と、前記第2面上に配置された第2粘着剤層であって、前記基材フィルムとは反対側に第2粘着面を有し、第2水分散型粘着剤組成物から形成された第2粘着剤層と、前記第1粘着面に剥離可能に接するはく離ライナーとを備える、両面粘着シートを含む。
【0018】
本発明[4]は、前記第2粘着剤層は、前記基材フィルムに対する前記第2水分散型粘着剤組成物の塗工膜から形成されている、上記[3]に記載の両面粘着シートを含む。
【0019】
本発明[5]は、前記はく離ライナーが35μm以上の厚さを有する、上記[3]または[4]に記載の両面粘着シートを含む。
【0020】
本発明[6]は、前記第2粘着面に剥離可能に接するはく離ライナーであって、25μm以下の厚さを有するはく離ライナーを更に備える、上記[3]から[5]のいずれか一つに記載の両面粘着シートを含む。
【0021】
本発明[7]は、前記基材フィルムが、前記第1面および/または前記第2面を形成するアンカー層を有する、上記[3]から[6]のいずれか一つに記載の両面粘着シートを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の両面粘着シートの製造方法における第2塗布工程では、基材フィルムは、同フィルムの一方面に配置されているはく離ライナーおよび第1粘着剤層によって実質的に補強されている。第2塗布工程では、このような基材フィルムの第2面上に、塗工機によって第2水分散型粘着剤組成物を塗布できる。そのため、本製造方法は、薄い基材フィルムを用いるのに適する。
【0023】
また、本製造方法によると、第2粘着剤層の粘着面を被覆するはく離ライナーを有しないタイプの両面粘着シート(片面はく離ライナー付き両面粘着シート)を製造できる。そのため、本製造方法は、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減して環境負荷を低減するのに適する。
【0024】
加えて、本製造方法では、第1および第2粘着剤層の形成材料として第1および第2水分散型粘着剤組成物を用いる。そのため、本製造方法は、有機溶剤を含有する粘着剤組成物が用いられる上述の従来の製造方法よりも、環境負荷の低減に適する。
【0025】
更に加えて、第1水分散型粘着剤組成物から形成された第1粘着剤層内には、有機溶剤が実質的に残存しない。そのため、本製造方法は、第2乾燥工程において第2塗膜と共に加熱される第1粘着剤層において、残存有機溶剤の気化に起因する欠点の発生を回避または抑制できる(水分散型粘着剤組成物から形成された第1粘着剤層においては、水分が有機溶剤より、急激な気化を起こしにくいことから、欠点の発生が回避または抑制される)。第1粘着剤層内の欠点の回避または抑制は、両面粘着シートにおいて良好な外観を確保するのに適する。
【0026】
したがって、本製造方法は、良好な外観を有する薄い両面粘着シートを、環境負荷を低減しつつ製造するのに適する。
【0027】
本発明の両面粘着シートは、このような製造方法によって製造できる。したがって、本両面粘着シートは、良好な外観を有する薄い両面粘着シートとして、環境負荷を低減しつつ製造するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の両面粘着シートの製造方法を表す。
図1Aは第1塗布工程を表し、
図1Bは第1乾燥工程を表し、
図1Cは貼合せ工程を表し、
図1Dは第2塗布工程を表し、
図1Eは第2乾燥工程を表す。
【
図2】第2乾燥工程後に、第2粘着剤層にはく離ライナーが貼り合わされる場合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1Aから
図1Eは、本発明の両面粘着シートの製造方法の一実施形態を表す。この製造方法は、第1塗布工程と、第1乾燥工程と、貼合せ工程と、第2塗布工程と、第2乾燥工程とを含む。この製造方法は、後述の両面粘着シートX(
図1E)を製造する方法である。両面粘着シートXは、両面粘着シートYを含む片面はく離ライナー付き両面粘着シートである。
【0030】
第1塗布工程では、
図1Aに示すように、はく離ライナー11上に塗膜20aを形成する。具体的には、塗工機によって第1水分散型粘着剤組成物をはく離ライナー11上に塗布して塗膜20aを形成する。塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、およびダイコートが挙げられる。塗布方法としては、ダイコートが好ましい。本工程では、塗布方法に応じた塗工機を使用する。
【0031】
はく離ライナー11は、粘着シートを被覆して保護する要素である。はく離ライナー11は、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムである。当該プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリエステルフィルムが挙げられる。はく離ライナー11の塗膜20a側の表面は、好ましくは剥離処理されている。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離処理およびフッ素剥離処理が挙げられる。
【0032】
はく離ライナー11の厚さT1は、本工程で はく離ライナー11に破れ、たわみ、及びシワが発生するのを抑制する観点から、好ましくは35μm以上、より好ましくは38μm以上である(塗布工程では、塗工機におけるダイスおよびブレードなどの金属部材により、はく離ライナー11が擦過される)。はく離ライナー11の厚さT1は、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減する観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下である。
【0033】
第1水分散型粘着剤組成物は、水分散型ポリマーと水とを含有する水性エマルションである。水分散型ポリマーとしては、例えば、水分散型のアクリルポリマー、水分散型のウレタン系ポリマー、および、水分散型のポリエステル系ポリマーが挙げられ、好ましくは、水分散型のアクリルポリマーが用いられる。当該アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分の重合体である。「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、および(メタ)アクリル酸イソテトラデシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アクリル酸メチルと炭素数2~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルとが用いられ、更に好ましくは、アクリル酸メチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとが用いられる。
【0035】
モノマー成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、第1水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤層において粘着性等の基本特性を適切に発現させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。
【0036】
モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、極性基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、およびシラノール基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。共重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0037】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。モノマー成分は、第1水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤層の粘着性を確保する観点から、好ましくはカルボキシ基含有モノマーを含み、より好ましくは、アクリル酸またはメタクリル酸を含み、特に好ましくはアクリル酸およびメタクリル酸を併用する。
【0038】
モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの割合は、第1水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤層の凝集力を確保する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの割合は、酸による被着体の腐食リスクの回避の観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0039】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、および(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシルが挙げられる。
【0040】
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、およびアクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0041】
シラノール基含有モノマーとしては、例えば、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0042】
水分散型アクリルポリマーは、例えば、上述のモノマー成分を乳化重合させることによって形成できる。乳化重合においては、例えば、まず、モノマー成分と、乳化剤と、水とを含む混合物を撹拌してモノマーエマルションを調製する。次に、モノマーエマルションに重合開始剤を添加して重合反応を開始する。この重合反応には、アクリルポリマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。重合方式としては、滴下重合であってもよいし、一括重合であってもよい。重合時間は、例えば0.5~10時間である。重合温度は、例えば50℃~80℃である。
【0043】
乳化剤としては、例えば、アニオン乳化剤、ノニオン乳化剤、およびラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)が挙げられる。
【0044】
アニオン乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、および、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。
【0045】
ノニオン乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、および、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック重合体が挙げられる。
【0046】
ラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)としては、例えば、上記アニオン乳化剤または上記ノニオン乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された乳化剤が挙げられる。このラジカル重合性官能基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基、およびアリルエーテル基が挙げられる。反応性乳化剤としては、具体的には、アンモニウム-α-スルホナト-ω-1-(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレンが好ましい。乳化剤として反応性乳化剤が用いられる場合、乳化重合によって得られる水分散型アクリルポリマーは、反応性乳化剤に由来するモノマーユニットを含む。すなわち、乳化剤がアクリルポリマーに取り込まれている。そのため、第1水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層が被着体に貼着された場合、被着体が乳化剤(低分子量成分)によって汚染されることを抑制できる。
【0047】
乳化剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。乳化剤の配合量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば0.5質量部以上であり、また、例えば5質量部以下である。
【0048】
重合開始剤としては、例えば、アゾ重合開始剤および過酸化物重合開始剤が挙げられる。アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス{2-[N-(2-カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2'-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、および、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)が挙げられる。過酸化物重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、および過酸化水素が挙げられる。重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。重合開始剤の配合量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば0.01質量部以上であり、また、例えば2質量部以下である。
【0049】
連鎖移動剤としては、例えば、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、t-ラウリルメルカプタン、t-ドデカンチオール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、および、2,3-ジメルカプト-1-プロパノールが挙げられる。連鎖移動剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。連鎖移動剤の配合量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば0.001質量部以上であり、また、0.5質量部以下である。
【0050】
このような乳化重合により、水分散型アクリルポリマーはポリマーエマルション(水分散型アクリルポリマーが水に分散されている水分散液)として調製される。
【0051】
水分散型アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば10万以上、好ましくは30万以上であり、また、例えば500万以下、好ましくは300万以下である。アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
【0052】
水分散型ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば20℃以下であり、好ましくは0℃以下である。ポリマーのガラス転移温度は、例えば、Foxの式から算出される。
【0053】
第1水分散型粘着剤組成物は、水分散型ポリマーおよび水以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、防腐剤、界面活性剤、架橋剤、および帯電防止剤が挙げられる。
【0054】
増粘剤としては、例えば、カルボン酸系共重合体増粘剤(carboxylic acid copolymer thickener)およびポリアクリル酸増粘剤が挙げられる。
【0055】
カルボン酸系共重合体増粘剤は、カルボン酸系共重合体からなるエマルションタイプの増粘剤である。カルボン酸系共重合体は、例えば、カルボキシ基含有アクリルモノマーを含むモノマー成分の共重合体である。カルボン酸系共重合体増粘剤の市販品としては、例えば、東亜合成社製の「アロンB-300K」、「アロンB-500」、「アロンA-7055」および「アロンA-7075」が挙げられ、好ましくは「アロンB-500」が用いられる。カルボン酸系共重合体増粘剤は、単独で用いられてもよいし二種類以上が併用されてもよい。
【0056】
ポリアクリル酸増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸(アクリル酸のホモポリマー)、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸アンモニウムが挙げられる。ポリアクリル酸増粘剤の市販品としては、例えば、東亜合成社製の「アロンA-10H」(ポリアクリル酸)、「アロンA-20L」(ポリアクリル酸ナトリウム)、「アロンA-7100」(ポリアクリル酸ナトリウム)、「アロンA-30」(ポリアクリル酸アンモニウム)、および「アロンA-7195」(ポリアクリル酸ナアンモニウム)が挙げられ、好ましくは「アロンA-10H」が用いられる。
【0057】
第1水分散型粘着剤組成物の固形分における増粘剤の割合は、第1水分散型粘着剤組成物における増粘の確保の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.4質量%以上である。第1水分散型粘着剤組成物の固形分における増粘剤の割合は、第1水分散型粘着剤組成物における過度の増粘を避ける観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.6質量%以下である。水分散型粘着剤組成物の固形分とは、水分散型粘着剤組成物における水以外の成分であり、具体的には、水分散型ポリマーと、必要に応じて配合される他の成分(増粘剤、レベリング剤および粘着付与剤など)とを合わせたものである。
【0058】
レベリング剤としては、例えば、「ネオコールSW-C」(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム,第一工業製薬社製)、「ネオコールP」(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム,第一工業製薬社製)、「サーフィノール420」(アセチレングリコールエチレンオキシド系界面活性剤,日信化学工業社製)、および、「ペレックスOT-P」(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム,花王社製)が挙げられる。また、レベリング剤としては、「ノプコウエット50」(スルホン酸系アニオン性界面活性剤)、「SNウエット126」(変性シリコーン/特殊ポリエーテル系の界面活性剤)、「SNウエットFST2」(ポリオキシアルキレンアミンの非イオン系湿潤剤)、「SNウエットS」(ポリオキシアルキレンアミンエーテルの非イオン系湿潤剤)、および「SNウエット125」(変性シリコーン系界面活性剤)も挙げられる(いずれもサンノプコ社製)。レベリング剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第1水分散型粘着剤組成物における良好なレベリング性確保の観点から、レベリング剤は、好ましくは、「ネオコールSW-C」、「ネオコールP」および「ペレックスOT-P」から選択される少なくとも一つが用いられる。
【0059】
レベリング剤の配合量は、第1水分散型粘着剤組成物のハジキ抑制の観点から、水分散型ポリマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上である。レベリング剤の配合量は、第1水分散型粘着剤組成物の粘着特性確保の観点から、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0060】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂などの粘着付与剤樹脂が挙げられる。粘着付与剤の配合量は、第1水分散型粘着剤組成物の粘度と、同組成物から形成される粘着剤層の粘着性とのバランスの観点から、水分散型ポリマー100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0061】
シランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、および3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられ、好ましくは3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。シランカップリング剤の配合量は、水分散型ポリマー100質量部に対し、例えば0.005質量部以上であり、また、例えば1質量部以下である。
【0062】
第1水分散型粘着剤組成物は、有機溶剤を含有しない。このような第1水分散型粘着剤組成物は、環境負荷の低減の観点から好ましい。
【0063】
第1水分散型粘着剤組成物は、例えば、水分散型ポリマーの乳化重合液に各種成分を添加することによって調製できる。また、第1水分散型粘着剤組成物は、その水含有量が増減されて固形分濃度が調整される。
【0064】
第1水分散型粘着剤組成物の固形分濃度は、良好な粘度を確保する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0065】
第1水分散型粘着剤組成物は、両面粘着シートXにおける欠点を低減する観点から、塗布工程前にろ過されているのが好ましい。
【0066】
第1乾燥工程では、
図1Bに示すように、はく離ライナー11上の塗膜20aを加熱によって乾燥させて粘着剤層21(第1粘着剤層)を形成する。乾燥温度は、乾燥効率の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上である。乾燥温度は、はく離ライナー11の変形(膨張,収縮)を抑制する観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。乾燥時間は、乾燥温度に応じて例えば1~10分間である。
【0067】
粘着剤層21の厚さは、良好な粘着力を確保する観点から、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは12μm以上である。粘着剤層21の厚さは、両面粘着シートYの薄型化の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
【0068】
貼合せ工程では、
図1Cに示すように、はく離ライナー11上の粘着剤層21に基材フィルム30を貼り合わせる。基材フィルム30は、第1面31と、当該第1面31とは反対側の第2面32とを有する。本工程では、基材フィルム30の第1面31を、はく離ライナー11上の粘着剤層21の露出面に貼り合わせる。貼り合わせには、例えばラミネータを使用できる。本工程により、中間製造物としての積層フィルムX'が得られる。
【0069】
基材フィルム30は、例えば、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。基材フィルム30の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。基材フィルム30の材料としては、透明性および強度の観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂が用いられ、より好ましくはPETが用いられる。
【0070】
基材フィルム30の第1面31は、基材フィルム30に対する粘着剤層21の密着性を確保するために表面改質処理されていてもよい。また、基材フィルム30の第2面32は、基材フィルム30に対する後述の粘着剤層22の密着性を確保するために表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、およびグロー処理が挙げられる。
【0071】
基材フィルム30の第1面31は、基材フィルム30に対する粘着剤層21の投錨性を高めて密着性を確保するアンカー層によって形成されていてもよい。基材フィルム30の第2面32は、基材フィルム30に対する後述の粘着剤層22の投錨性を高めて密着性を確保するアンカー層によって形成されていてもよい。アンカー層を形成する材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリエステルポリウレタン樹脂が挙げられる。アンカー層としては、上述の樹脂フィルム成膜時にフィルム表面にインライン処理によって形成される層、および、樹脂フィルム成膜後にフィルム表面に形成される層が挙げられる。アンカー層の厚さは、例えば0.01μm以上であり、また、例えば2.0μm以下である。
【0072】
基材フィルム30の厚さは、両面粘着シートXの取り扱い性を確保する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは4μm以上である。基材フィルム30の厚さは、後述の両面粘着シートYの薄型化の観点から、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0073】
第2塗布工程では、
図1Dに示すように、積層フィルムX'における基材フィルム30上に塗膜20bを形成する。具体的には、塗工機によって第2水分散型粘着剤組成物を基材フィルム30の第2面32上に塗布して塗膜20b(基材フィルム30に対する塗工膜)を形成する。第2水分散型粘着剤組成物は、水分散型ポリマーと水とを含有する水性エマルションである。第2水分散型粘着剤組成物が含有する成分および当該成分の配合量については、第1水分散型粘着剤組成物に関して上述した成分および当該成分の配合量と同様である。第2水分散型粘着剤組成物の組成と第1水分散型粘着剤組成物の組成とは、同じであってもよいし、異なってもよい。粘着剤層21,22において互いに同質・同等の特性を確保する観点からは、第2水分散型粘着剤組成物の組成と第1水分散型粘着剤組成物の組成とは、同じであるのが好ましい。粘着剤層21,22の特性が同質・同等であることは、両面粘着シートYないし両面粘着シートXを表裏の区別をせずに作業効率よく加工および使用できることから好ましい。
【0074】
第2乾燥工程では、
図1Eに示すように、基材フィルム30上の塗膜20bを加熱によって乾燥させて粘着剤層22(第2粘着剤層)を形成する。乾燥温度は、乾燥効率の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上である。乾燥温度は、はく離ライナー11および基材フィルム30の変形(膨張,収縮)を抑制する観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。第2乾燥工程での乾燥温度と、上述の第1乾燥工程での乾燥温度とは、好ましくは同じである。また、乾燥時間は、乾燥温度に応じて例えば1~10分間である。第2乾燥工程での乾燥時間と、上述の第1乾燥工程での乾燥時間とは、好ましくは同じである。
【0075】
粘着剤層22の厚さは、良好な粘着力を確保する観点から、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは12μm以上である。粘着剤層22の厚さは、両面粘着シートYの薄型化の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。粘着剤層21,22の厚さは、互いに、同じであってもよいし、異なってもよい。粘着剤層21,22の厚さは、粘着剤層21,22において互いに同質・同等の特性を確保する観点から、互いに同じであるのが好ましい。
【0076】
以上のようにして、両面粘着シートXを製造できる。
【0077】
両面粘着シートXは、所定厚さのシート形状を有する片面はく離ライナー付き両面粘着シートである。両面粘着シートXは、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がる。両面粘着シートXは、はく離ライナー11と、粘着剤層21と、基材フィルム30と、粘着剤層22とを厚さ方向Hにこの順で有する。基材フィルム30および粘着剤層21,22は両面粘着シートYを形成する。基材フィルム30は、上述のように、第1面31と当該第1面31とは反対側の第2面32とを有し、好ましくは12μm以下の厚さを有する。基材フィルム30の厚さが12μm以下であることは、両面粘着シートXの薄型化の観点から好ましい。粘着剤層21は、基材フィルム30の第1面31上に配置され、基材フィルム30とは反対側に粘着面21aを有する。粘着剤層21は、第1水分散型粘着剤組成物から形成されている。はく離ライナー11は、粘着面21aに剥離可能に接する。粘着剤層22は、基材フィルム30の第2面32上に配置され、基材フィルム30とは反対側に粘着面22aを有する。粘着剤層22は、第2水分散型粘着剤組成物から形成されている。粘着剤層22は、具体的には、基材フィルム30に対する第2水分散型粘着剤組成物の塗工膜から形成されている。このことは、両面粘着シートXの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減して環境負荷を低減するのに役立つ。
【0078】
両面粘着シートYは、例えば、ディスプレイパネルにおける光通過箇所に配置される粘着シートである。ディスプレイパネルとしては、例えば、モバイルデバイスおよびウェアラブルデバイスなどのディスプレイパネルが挙げられる。ディスプレイパネルは、例えば、画素パネル、偏光フィルム、タッチパネル、およびカバーガラスなどの要素を含む積層構造を有する。両面粘着シートYは、例えば、ディスプレイパネルの製造過程において、積層構造に含まれる要素どうしの接合に用いられる。はく離ライナー11は、両面粘着シートYの使用時に、当該両面粘着シートYから剥がされる。
【0079】
両面粘着シートXは、
図2に示すように、粘着剤層22の粘着面22aを被覆するはく離ライナー12を更に備えてもよい。このような両面粘着シートXは、両面はく離ライナー付き両面粘着シートである。
図2に示す両面粘着シートXは、上述の第2乾燥工程(
図1E)の後に、はく離ライナー12を粘着剤層22の粘着面22aに貼り合わせることによって、製造できる。両面粘着シートXは、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減する観点から、片面はく離ライナー付き両面粘着シートであるのが好ましい。
【0080】
はく離ライナー12は、粘着シートを被覆して保護する要素である。はく離ライナー12は、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムである。当該プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリエステルフィルムが挙げられる。はく離ライナー12の粘着剤層22側の表面は、好ましくは剥離処理されている。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離処理およびフッ素剥離処理が挙げられる。
【0081】
はく離ライナー12は、はく離ライナー11より薄い。はく離ライナー12の厚さT2は、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減する観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは18μm以下である。はく離ライナー12の厚さT2は、はく離ライナー12による保護機能を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上である。
【0082】
はく離ライナー11,12の合計厚さ(T1+T2)は、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減する観点から、好ましくは75μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは65μm以下である。合計厚さ(T1+T2)は、はく離ライナーによる保護機能を確保する観点から、好ましくは45μm以上、より好ましくは47μm以上である。
【0083】
上述の両面粘着シートの製造方法における第2塗布工程(
図1D)では、基材フィルム30は、第1面31側に配置されているはく離ライナー11および粘着剤層21によって実質的に補強されている。第2塗布工程では、このような基材フィルム30の第2面32上に、塗工機によって第2水分散型粘着剤組成物を塗布できる。このような製造方法は、薄い基材フィルム30を用いるのに適する。
【0084】
また、両面粘着シートの製造方法によると、粘着剤層22を被覆するはく離ライナーを有しないタイプの両面粘着シート(
図1Eに示す両面粘着シートX)を製造できるか、または、塗工機による塗布工程では破れ、たわみ、またはシワが生じてしまう薄いはく離ライナー12によって粘着剤層22が被覆されたタイプの両面粘着シート(
図2に示す両面粘着シートX)を製造できる。このような製造方法は、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減して環境負荷を低減するのに適する。
【0085】
加えて、両面粘着シートの製造方法では、粘着剤層21,22の形成材料として水分散型粘着剤組成物を用いる。このような製造方法は、有機溶剤を含有する粘着剤組成物が用いられる上述の従来の製造方法よりも、環境負荷の低減に適する。
【0086】
更に加えて、水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層21内には、有機溶剤が実質的に残存しない。そのため、第2乾燥工程(
図1E)において塗膜20bと共に加熱される粘着剤層21においては、残存有機溶剤の気化に起因する欠点の発生が回避または抑制される。粘着剤層21内に微量の水分が残存する場合であっても、水分は有機溶剤より、急激な気化を起こしにくいことから、欠点の発生が回避または抑制される。粘着剤層21内の欠点の回避または抑制は、両面粘着シートXにおいて良好な外観を確保するのに適する。
【0087】
したがって、本製造方法は、良好な外観を有する薄い両面粘着シートを、環境負荷を低減しつつ製造するのに適する。
【0088】
また、上述の両面粘着シートXは、このような製造方法によって製造できる。したがって、両面粘着シートXは、良好な外観を有する薄い両面粘着シートとして、環境負荷を低減しつつ製造するのに適する。
【実施例0089】
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
【0090】
〔実施例1〕
〈水分散型粘着剤組成物の調製〉
容器内で、蒸留水30質量部と、アクリル酸2-エチルヘキシル85質量部と、アクリル酸メチル13質量部と、アクリル酸1.25質量部と、メタクリル酸0.75質量部と、連鎖移動剤としてのt-ドデカンチオール0.035質量部と、反応性乳化剤(品名「アクアロンKH-1025」,アンモニウム-α-スルホナト-ω-1-(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン,第一工業製薬社製)1.88質量部と、シランカップリング剤(品名「KBM-503」,3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,信越化学工業社製)0.02質量部とを含む混合物を、ホモミキサーによって撹拌し、モノマーエマルションを調製した。
【0091】
一方、還流冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌機を備える反応容器内で、イオン交換水73質量部と、反応性乳化剤(アクアロンKH-1025)0.07質量部とを含む混合物を、60℃で1時間、窒素雰囲気下にて撹拌した。次に、この混合物に、重合開始剤としての2,2'-アゾビス{2-[N-(2-カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}4水和物(品名「VA-057」,富士フィルム和光純薬社製)0.1質量部を加えた後、当該混合物を60℃に保持しつつ、上述のモノマーエマルションを当該混合物に4時間かけて滴下して乳化重合反応を進行させた。次に、当該反応液を、3時間、60℃に保持した(エージング)。次に、こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、10質量%アンモニア水溶液を加えることによって溶液のpHを6.0に調整した。以上のようにして、水分散型ポリマーとして水分散型アクリルポリマーを含有するアクリルポリマーエマルションを調製した。
【0092】
アクリルポリマーエマルションに対し、水分散型アクリルポリマー100質量部あたり、カルボン酸系共重合体増粘剤(品名「アロンB-500」,東亞合成社製)1.00質量部(固形分換算値)と、ポリアクリル酸系増粘剤(品名「アロンA-10H」,ポリアクリル酸,重量平均分子量20万,東亞合成社製)3.15質量部(固形分換算値)と、粘着付与剤(品名「タマノルE-200NT」,テルペン系樹脂,荒川化学工業社製)35質量部(固形分換算値)と、レベリング剤(品名「ネオコールSW-C」,ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム,第一工業製薬社製)0.89質量部(固形分換算値)とを加えて混合した。次に、当該混合物を、イオン交換水の添加によって固形分濃度25.5質量%に調整した後、10質量%アンモニア水溶液の添加によってpH9.0に調整した。以上のようにして、水分散型粘着剤組成物C1(固形分濃度25.5質量%)を調製した。
【0093】
〈両面粘着シートの作製〉
まず、第1はく離ライナーとしてのはく離ライナーL1上に、塗工機によって水分散型粘着剤組成物C1を塗布して塗膜を形成した(第1塗布工程)。はく離ライナーL1は、シリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(品名「ダイアホイルMRF#38」,厚さ38μm,三菱ケミカル社製)である。本工程では、はく離ライナーL1の剥離処理面に水分散型粘着剤組成物C1を塗布した。本工程では、塗工機として、ダイコータータイプの片面塗工機を使用した(後記の塗布工程においても同様である)。
【0094】
次に、はく離ライナーL1上の塗膜を、オーブン内で2分間乾燥させ、厚さ13μmの粘着剤層(第1粘着剤層)を形成した(第1乾燥工程)。乾燥温度は120℃とした(後記の乾燥工程においても同様である)。
【0095】
次に、はく離ライナーL1上の粘着剤層に、厚さ4μmの基材フィルム(品名「K330E4.5W」,PETフィルム,三菱ケミカル社製)を貼り合わせた(貼合せ工程)。これにより、中間製造物としての積層フィルム(はく離ライナーL1/第1粘着剤層/基材フィルム)を得た。
【0096】
次に、積層フィルムにおける基材フィルム上に水分散型粘着剤組成物C1を塗布して塗膜を形成した(第2塗布工程)。
【0097】
次に、基材フィルム上の塗膜を、オーブン内で2分間乾燥させ、厚さ13μmの粘着剤層(第2粘着剤層)を形成した(第2乾燥工程)。
【0098】
以上のようにして、実施例1の両面粘着シートを作製した。実施例1の両面粘着シートは、片面はく離ライナー付き両面粘着シートであり、はく離ライナーL1(第1はく離ライナー,厚さ38μm)と、水分散型粘着剤組成物C1から形成された第1粘着剤層(厚さ13μm)と、基材フィルム(厚さ4μm)と、水分散型粘着剤組成物C1から形成された第2粘着剤層(厚さ13μm)とを厚さ方向にこの順で有する。第1粘着剤層と基材フィルムと第2粘着剤層との総厚さは30μmである。
【0099】
〔実施例2〕
第2はく離ライナーとしてのはく離ライナーL2を第2粘着剤層に貼り合わせる工程を更に実施したこと以外は、実施例1の両面粘着シートと同様にして実施例2の両面粘着シートを作製した。はく離ライナーL2は、シリコーン剥離処理されたPETフィルム(品名「ダイアホイルMRF#25」,厚さ25μm,三菱ケミカル社製)である。本工程では、はく離ライナーL2の剥離処理面を、第2粘着剤層の露出面(粘着面)に貼り合わせた。
【0100】
実施例2の両面粘着シートは、両面はく離ライナー付き両面粘着シートであり、はく離ライナーL1(第1はく離ライナー,厚さ38μm)と、水分散型粘着剤組成物C1から形成された第1粘着剤層(厚さ13μm)と、基材フィルム(厚さ4μm)と、水分散型粘着剤組成物C1から形成された第2粘着剤層(厚さ13μm)と、はく離ライナーL2(第2はく離ライナー,厚さ25μm)とを厚さ方向にこの順で有する。
【0101】
〔比較例1〕
〈粘着剤組成物の調製〉
まず、還流冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌機を備える反応容器内で、アクリル酸n-ブチル(BA)70質量部と、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)30質量部と、アクリル酸3質量部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)0.05質量部と、熱重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部と、溶媒としてのトルエンとを含む混合物を、60℃で6時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリルベースポリマーを含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中のアクリルベースポリマーの重量平均分子量は約55万であった。
【0102】
次に、ポリマー溶液に対し、アクリルベースポリマー100質量部あたり、粘着付与剤(品名「ペンセルD-125」,重合ロジンエステル樹脂,荒川化学工業社製)30質量部と、架橋剤(品名「コロネートL」,トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体,東ソー製)3質量部とを加えて混合し、粘着剤組成物C2を調製した。
【0103】
〈両面粘着シートの作製〉
まず、第1はく離ライナーとしてのはく離ライナーL1(ダイアホイルMRF#38)の剥離処理面に粘着剤組成物C2を塗布して塗膜を形成した。次に、はく離ライナーL1上の塗膜を、オーブン内で2分間乾燥させ、厚さ13μmの粘着剤層(第1粘着剤層)を形成した。
【0104】
一方、第2はく離ライナーとしてのはく離ライナーL3上に粘着剤組成物C2を塗布して塗膜を形成した。はく離ライナーL3は、シリコーン剥離処理されたPETフィルム(品名「ダイアホイルMRF#38」,厚さ38μm,三菱ケミカル社製)である。本工程では、はく離ライナーL3の剥離処理面に粘着剤組成物C2を塗布して塗膜を形成した。次に、当該はく離ライナーL3上の塗膜を、オーブン内で2分間乾燥させ、厚さ13μmの粘着剤層(第2粘着剤層)を形成した。
【0105】
次に、はく離ライナーL1上の粘着剤層を、厚さ4μmの基材フィルム(品名「K330E4.5W」,PETフィルム,三菱ケミカル社製)の一方面に貼り合わせた(第1転写工程)。次に、はく離ライナーL3上の粘着剤層を、基材フィルムの他方面に貼り合わせた(第2転写工程)。
【0106】
以上のようにして、比較例1の両面粘着シートを作製した。比較例1の両面粘着シートは、両面はく離ライナー付き両面粘着シートであり、はく離ライナーL1(第1はく離ライナー,厚さ38μm)と、粘着剤組成物C2から形成された第1粘着剤層(厚さ13μm)と、基材フィルム(厚さ4μm)と、粘着剤組成物C2から形成された第2粘着剤層(厚さ13μm)と、はく離ライナーL3(第2はく離ライナー,厚さ38μm)とを厚さ方向にこの順で有する。
【0107】
〔比較例2〕
水分散型粘着剤組成物C1の代わりに粘着剤組成物C2を用いたこと以外は実施例1の両面粘着シートと同様にして、比較例2の両面粘着シートを作製した。比較例2の両面粘着シートは、片面はく離ライナー付き両面粘着シートであり、はく離ライナーL1(第1はく離ライナー,厚さ38μm)と、粘着剤組成物C2から形成された第1粘着剤層(厚さ13μm)と、基材フィルム(厚さ4μm)と、粘着剤組成物C2から形成された第2粘着剤層(厚さ13μm)とを厚さ方向にこの順で有する。
【0108】
〔比較例3〕
実施例1に関して上述した第1塗布工程を、はく離ライナーL1(厚さ38μm)に代えて薄い上記はく離ライナーL2(ダイアホイルMRF#25,厚さ25μm)を用いて実施した。具体的には、はく離ライナーL2の剥離処理面上に、塗工機によって水分散型粘着剤組成物C1を塗布して塗膜を形成した。しかし、はく離ライナーL2において、塗工機通過時に、たわみ、シワ、および破れが生じた。そのため、はく離ライナー付き両面粘着シートの製造プロセスを適切には続行できなかった。
【0109】
〈外観評価〉
実施例1,2および比較例1,2の各両面粘着シート(片面はく離ライナー付き両面粘着シートまたは両面はく離ライナー付き両面粘着シート)について、次のようにして外観を評価した。
【0110】
まず、両面粘着シートから、面積1m2のサンプルシートを切り出した。次に、サンプルシートを目視で観察し、欠点(異物,変色)の有無および数を調べた。そして、両面粘着シートの外観について、最大長さ2mm以上の欠点が確認されなかった場合を“良”と評価し、最大長さ2mm以上の欠点が確認された場合を“不良”と評価した。その結果を表1に示す。最大長さ2mm以上の欠点の数も表1に示す。比較例2の両面粘着シートにおける欠点は、第1粘着剤層と第1はく離ライナーとの間に存在することを確認した。比較例2の両面粘着シートの製造過程の第2乾燥工程にて、第1粘着剤層内の残存有機溶剤の気化に起因して欠点が生じた。
【0111】
【0112】
[評価]
実施例1,2および比較例1,2の各両面粘着シート(片面はく離ライナー付き両面粘着シート,両面はく離ライナー付き両面粘着シート)において、基材フィルムは薄く(厚さ4μm)、且つ、第1粘着剤層と基材フィルムと第2粘着剤層の合計厚さ(30μm)は同一である。比較例1の両面粘着シートにおけるはく離ライナーの厚さの合計(76μm)より、実施例1,2の各両面粘着シートにおけるはく離ライナーの厚さの合計(38μm,63μm)は小さい。すなわち、実施例1,2の両面粘着シートは、比較例1の両面粘着シートより、両面粘着シートの製造および使用に起因する廃プラスチック量を低減するのに適する。また、比較例2の両面粘着シート(第1粘着剤層が粘着剤組成物C2から形成されている)では、良好な外観を確保できなかった。これに対し、実施例1,2の両面粘着シート(第1粘着剤層が水分散型粘着剤組成物C1から形成されている)では、良好な外観を確保できた。また、第1はく離ライナーとして厚さ25μmのはく離ライナーL2を用いた場合(比較例3)、上述のように、はく離ライナー付き両面粘着シートの製造プロセスを適切には続行できなかった。