(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172453
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】介護移送装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/14 20060101AFI20231129BHJP
A61G 1/003 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61G7/14
A61G1/003 701
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084266
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】503147022
【氏名又は名称】瀧川 雅浩
(71)【出願人】
【識別番号】519272798
【氏名又は名称】蜂谷 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 正彦
(72)【発明者】
【氏名】竹中 克己
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH01
4C040JJ04
4C040JJ08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被介護者を移送する際の安全性を充分に確保することができる介護移送装置を提供する。
【解決手段】移送装置本体4と、被介護者を受けるための受け構造体8と、受け構造体を横方向に移動自在に支持する第1スライド機構と、受け構造体を上下方向に移動自在に支持する第2スライド機構とを備えた介護移送装置。受け構造体は、被介護者を載置支持する受け体42と、受け体42の片側面側を覆うための旋回支持体44とを有し、旋回支持体44は、上方に旋回された上旋回角度位置と下方に旋回された下旋回角度位置との間を旋回自在であり、上旋回角度位置においては受け体との間に被介護者を受け入れるための受入れ開口70を生成し、下旋回角度位置においては受入れ開口を閉塞して受け体と協働して被介護者を受け入れるための載置受け部を構成する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動手段により移動可能に構成された移送装置本体と、被介護者を受けるための受け構造体と、前記受け構造体を前記移送装置本体の側方に突出する受け位置と前記移送装置本体の上方に位置する収納位置との間を横方向に移動自在に支持する第1スライド機構と、前記受け構造体を上方に持ち上げる上昇位置と前記上方位置から下方に下がった下降位置との間を上下方向に移動自在に支持する第2スライド機構と、を備えており、
前記受け構造体は、被介護者を載置支持する受け体と、前記受け体の片側面側を覆うための旋回支持体とを有し、前記旋回支持体は、上方に旋回された上旋回角度位置と下方に旋回された下旋回角度位置との間を旋回自在であり、前記上旋回角度位置においては前記受け体の片側面側を開放して前記受け体との間に被介護者を受け入れるための受入れ開口を生成し、前記下旋回角度位置においては前記受入れ開口を閉塞して前記受け体と協働して被介護者を受け入れるための載置受け部を構成することを特徴とする介護移送装置。
【請求項2】
前記受け構造体は、前記第1スライド機構を介して前記横方向に移動自在に配設された移動支持体を備え、前記受け体は、前記移動支持体に取り付けられ且つ長手方向に延びる支持柱状部と、前記支持柱状部に間隔をおいて配設された複数の支持受け部とを有し、前記複数の支持受け部は前記受け体の前記片側面側に延びており、また前記旋回支持体は、前記移動支持体に上下方向に旋回自在に装着された旋回部材と、前記受け体側の前記複数の支持受け部のうちの特定支持受け部に対応して前記旋回部材に設けられた連結部とを備え、前記旋回支持体側の前記連結部が前記受け体側の前記特定支持受け部に着脱自在に連結されることを特徴とする請求項1に記載の介護移送装置。
【請求項3】
前記旋回支持体の前記旋回部材は、前記移動支持体に旋回自在に装着された一対のアーム部と、前記一対のアーム部の先端部を接続する把持部とを有し、前記把持部にその軸方向に間隔をおいて複数の連結部が配設されており、また前記一対のアーム部には、その軸方向に伸縮する伸張部が設けられ、前記複数の連結部の各々には挿入連結孔が設けられており、前記把持部を引っ張って前記伸張部を伸張させた後に前記複数の連結部の挿入連結孔に前記受け体側の前記特定支持受け部の先端部を挿入することによって、前記受け体と前記旋回支持体とが着脱自在に連結されることを特徴とする請求項2に記載の介護移送装置。
【請求項4】
前記移送装置本体には、前記第2スライド機構を介して昇降載置台が昇降自在に支持され、前記昇降載置台に前記第1スライド機構介して前記受け構造体が前記横方向に移動自在に支持され、前記昇降載置台の表面には前記長手方向に間隔をおいて複数の収容凹部が設けられており、前記受け構造体が前記収納位置に位置付けられると、前記複数の支持受け部は前記昇降載置台の複数の収容凹部に収容され、前記昇降載置台の上面と前記複数の支持受け部の上面とは実質上同一の平面を規定することを特徴とする請求項2に記載の介護移送装置。
【請求項5】
前記移送装置本体の底部には、横転防止のための支持脚体が装着され、前記支持脚体は、前記移送装置本体の下側に収納される収納角度位置と前記移送装置本体の横方向外側に突出する支持角度位置との間を旋回自在に装着され、前記支持脚体は、上下方向に昇降自在である脚部を有していることを特徴とする請求項1に記載の介護移送装置。
【請求項6】
前記移送装置本体の前記底部の両端部には、内側から外側に向けて旋回自在に一対の支持脚体が装着されており、前記移送装置本体の下側に収納するときには、前記一対の支持脚体は外側から内側に向けて前記収納角度位置まで旋回され、前記移送装置本体の外側に突出するときには、前記一対の支持脚体は内側から外側に向けて前記支持角度位置まで旋回されることを特徴とする請求項5に記載の介護移送装置。
【請求項7】
前記受け構造体に関連して、被介護者が横臥するベッドにはエアマットレスが設けられ、前記エアマットレスは、前記受け構造体側の前記複数の支持受け部に対応して設けられる複数の第1支持袋部と、前記複数の第1支持袋部の間に配設される第2支持袋部とを有しており、前記被介護者を支持するときには、前記エアマットレスの前記第1支持袋部及び前記第2支持袋部に圧縮空気が充填されて膨張状態に保たれ、前記受け構造体を用いて前記介護者を移送するときには、前記エアマットレスの前記第1支持袋部に圧縮空気が充填されて膨張状態に保持されるが、前記第2支持袋部に充填された圧縮空気が放出されて収縮状態に保持され、前記エアマットレスの収縮された前記第2支持袋部の上側に前記受け構造体の前記複数の支持受け部が挿入されることを特徴とする請求項6に記載の介護移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者、患者などの被介護者をベッドから持ち上げて移送する介護移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被介護者を移送する介護移送装置として、一対の柱部及びこれらを接続する継ぎ部を備えた本体部と、一対の柱部の下端部から延びる脚部と、この本体部に昇降動自在に支持された床部とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この介護移送装置を用いて被介護者を移送するには、一対の脚部をベッドの下方空間に挿入しながら被介護者に近づき、その床部の先端部を被介護者の高さとなるように高さ調整する。そして、このように高さ調整した後に床部をベッドとその上に横臥した被介護者との間に挿入して被介護者を床部の上に載置し、このように床部に載置した状態で被介護者を所望の場所に移送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した介護移送装置には、次の通りの問題がある。即ち、被介護者を載置する床部は平らな床状に構成されていることから、移送の際に例えば脚部が建物の壁などに衝突すると、その衝撃によって被介護者が床部上を転がって下方に落下するおそれがあり、移送の際の安全性を充分に確保することが難しい。
【0005】
本発明は、被介護者を移送する際の安全性を充分に確保することができる介護移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の介護移送装置は、移動手段により移動可能に構成された移送装置本体と、被介護者を受けるための受け構造体と、前記受け構造体を前記移送装置本体の側方に突出する受け位置と前記移送装置本体の上方に位置する収納位置との間を横方向に移動自在に支持する第1スライド機構と、前記受け構造体を上方に持ち上げる上昇位置と前記上方位置から下方に下がった下降位置との間を上下方向に移動自在に支持する第2スライド機構と、を備えており、
前記受け構造体は、被介護者を載置支持する受け体と、前記受け体の片側面側を覆うための旋回支持体とを有し、前記旋回支持体は、上方に旋回された上旋回角度位置と下方に旋回された下旋回角度位置との間を旋回自在であり、前記上旋回角度位置においては前記受け体の片側面側を開放して前記受け体との間に被介護者を受け入れるための受入れ開口を生成し、前記下旋回角度位置においては前記受入れ開口を閉塞して前記受け体と協働して被介護者を受け入れるための載置受け部を構成することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の介護移送装置では、前記受け構造体は、前記第1スライド機構を介して前記横方向に移動自在に配設された移動支持体を備え、前記受け体は、前記移動支持体に取り付けられ且つ長手方向に延びる支持柱状部と、前記支持柱状部に間隔をおいて配設された複数の支持受け部とを有し、前記複数の支持受け部は前記受け体の前記片側面側に延びており、また前記旋回支持体は、前記移動支持体に上下方向に旋回自在に装着された旋回部材と、前記受け体側の前記複数の支持受け部のうちの特定支持受け部に対応して前記旋回部材に設けられた連結部とを備え、前記旋回支持体側の前記連結部が前記受け体側の前記特定支持受け部に着脱自在に連結されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の介護移送装置では、前記旋回支持体の前記旋回部材は、前記移動支持体に旋回自在に装着された一対のアーム部と、前記一対のアーム部の先端部を接続する把持部とを有し、前記把持部にその軸方向に間隔をおいて複数の連結部が配設されており、また前記一対のアーム部には、その軸方向に伸縮する伸張部が設けられ、前記複数の連結部の各々には挿入連結孔が設けられており、前記把持部を引っ張って前記伸張部を伸張させた後に前記複数の連結部の挿入連結孔に前記受け体側の前記特定支持受け部の先端部を挿入することによって、前記受け体と前記旋回支持体とが着脱自在に連結されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の介護移送装置では、前記移送装置本体には、前記第2スライド機構を介して昇降載置台が昇降自在に支持され、前記昇降載置台に前記第1スライド機構介して前記受け構造体が前記横方向に移動自在に支持され、前記昇降載置台の表面には前記長手方向に間隔をおいて複数の収容凹部が設けられており、前記受け構造体が前記収納位置に位置付けられると、前記複数の支持受け部は前記昇降載置台の複数の収容凹部に収容され、前記昇降載置台の上面と前記複数の支持受け部の上面とは実質上同一の平面を規定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の介護移送装置では、前記移送装置本体の底部には、横転防止のための支持脚体が装着され、前記支持脚体は、前記移送装置本体の下側に収納される収納角度位置と前記移送装置本体の横方向外側に突出する支持角度位置との間を旋回自在に装着され、前記支持脚体は、上下方向に昇降自在である脚部を有していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の介護移送装置では、前記移送装置本体の前記底部の両端部には、内側から外側に向けて旋回自在に一対の支持脚体が装着されており、前記移送装置本体の下側に収納するときには、前記一対の支持脚体は外側から内側に向けて前記収納角度位置まで旋回され、前記移送装置本体の外側に突出するときには、前記一対の支持脚体は内側から外側に向けて前記支持角度位置まで旋回されることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項7に記載の介護移送装置では、前記受け構造体に関連して、被介護者が横臥するベッドにはエアマットレスが設けられ、前記エアマットレスは、前記受け構造体側の前記複数の支持受け部に対応して設けられる複数の第1支持袋部と、前記複数の第1支持袋部の間に配設される第2支持袋部とを有しており、前記被介護者を支持するときには、前記エアマットレスの前記第1支持袋部及び前記第2支持袋部に圧縮空気が充填されて膨張状態に保たれ、前記受け構造体を用いて前記介護者を移送するときには、前記エアマットレスの前記第1支持袋部に圧縮空気が充填されて膨張状態に保持されるが、前記第2支持袋部に充填された圧縮空気が放出されて収縮状態に保持され、前記エアマットレスの収縮された前記第2支持袋部の上側に前記受け構造体の前記複数の支持受け部が挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の介護移送装置によれば、移動手段により移動可能に構成された移送装置本体と、この移送装置本体に支持された受け構造体とを備え、この受け構造体は第1スライド機構を介して受け位置と収納位置との間を横方向に移動自在に構成されるとともに、第2スライド機構を介して上昇位置と下降位置との間を上下方向に移動自在に構成されている。
【0014】
この受け構造体は、被介護者を載置支持する受け体と、この受け体の片側面側を覆うための旋回支持体とを有し、上旋回角度位置においては、旋回支持体は受け体の片側面側を開放するので、開放された受入れ開口を通してして被介護者を受け体上に受け入れ載置することができ、また下旋回角度位置においては、前回支持体は受け体の受入れ開口を閉塞するので、受け体に載置された被介護者の載置受け部からの落下を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の介護移送装置によれば、受け構造体の受け体は、移動支持体に取り付けられた支持柱状部と、この支持柱状部に間隔をおいて設けられた複数の支持受け部を有し、複数の支持受け部は受け体の片側面側に延びており、また旋回支持体は、移動支持体に上下方向に旋回自在に装着された旋回部材と、この旋回部材に設けられた連結部とを備え、旋回支持体側の連結部が受け体側の特定支持受け部に着脱自在に連結されるので、このように連結された状態では、受け構造体の片側面側が旋回支持体により覆われ、またその他側面側及び底面が受け体により覆われ、これによって、被介護者を受け構造体に安定して受入れ載置することができる。
【0016】
また、旋回部材側の連結部が受け体側の特定支持受け部に連結されるので、この特定支持受け部の先端側は旋回部材に支持され、これにより、特定支持受け部は両面支持状態となり、この特定支持受け部の強度アップを図ることができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の介護移送装置によれば、旋回部材は、移動支持体に旋回自在に装着された一対のアーム部と、一対のアーム部の先端部を接続する把持部とを有し、一対のアーム部にその軸方向に伸縮する伸張部が設けられ、また複数の連結部の各々に挿入連結孔が設けられているので、把持部を引っ張って伸張部を伸張させた後に複数の連結部の挿入連結孔に受け体側の特定支持受け部の先端部を挿入することによって、受け体と旋回支持体とを着脱自在に挿入連結することができ、その連結操作を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の介護移送装置によれば、昇降載置台の表面には長手方向に間隔をおいて複数の収容凹部が設けられ、受け構造体が収納位置に位置付けられると、複数の支持受け部は昇降載置台の複数の収容凹部に収容され、昇降載置台の上面と複数の支持受け部の上面とが実質上同一の平面を規定するので、受け構造体を収納位置に位置付けた状態においては、被介護者を載置支持する受け構造体の受け面は平坦な面となり、これによって、被介護者を優しく載置支持することができる。
【0019】
また、本発明の請求項5に記載の介護移送装置によれば、移送装置本体の底部には、移送装置本体の下側に収納される収納角度位置と移送装置本体の横方向外側に突出する支持角度位置との間を旋回自在に支持脚体が装着されているので、この支持脚体を支持角度位置に位置付けることによって、移送装置本体が非常に安定した状態となり、被介護者を受け構造体に載置させる際に発生し易い移送装置本体の横転を防止することができる。
【0020】
また、本発明の請求項6に記載の介護移送装置によれば、移送装置本体の底部の両端部には、内側から外側に向けて旋回自在に一対の支持脚体が装着され、一対の支持脚体を外側から内側に向けて収納角度位置まで旋回することによって、移送装置本体の下側にコンパクトに収納することができ、また内側から外側に向けて支持角度位置まで旋回させることによって、移送装置本体を非常に安定した状態にし、その横転を確実に防止することができる。
【0021】
更に、本発明の請求項7に記載の介護移送装置によれば、受け構造体に関連して、被介護者が横臥するベッドにはエアマットレスが設けられ、このエアマットレスは、複数の第1支持袋部と、複数の第1支持袋部の間に配設される第2支持袋部とを有しているので、エアマットレスの第1支持袋部及び第2支持袋部に圧縮空気を充填した状態では、エアマットレス全体が膨張した状態に保たれ、被介護者を優しく載置支持することができ、またエアマットレスの第1支持袋部に圧縮空気が充填されるが、その第2支持袋部に充填された圧縮空気が放出されて収縮状態した状態では、第1支持袋部で被介護者を支持した状態において第2支持袋部の上側に受け構造体の複数の支持受け部を挿入することができ、これによって、被介護者の受け構造体の支持受け部への載置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に従う介護移送装置の一実施形態を示す平面図。
【
図4】昇降載置台を上昇位置に位置付けた状態で示す側面図。
【
図5】受け構造体を受け位置に位置付け、旋回支持体を下旋回角度位置に旋回させ、更に旋回支持部材の把持部を引っ張った状態で示す平面図。
【
図6】
図1の介護移送装置における旋回支持部材を示す側面図。
【
図7】支持脚体を支持角度位置に旋回し、昇降載置台を下降位置に位置付け、受け構造体を受け位置に位置付けた状態において、旋回支持体を上旋回角度位置と下旋回角度位置との間を旋回させたときの状態を示す正面図。
【
図8】支持脚体を支持角度位置に旋回し、昇降載置台を上昇位置に位置付け、受け構造体を受け位置に位置付けた状態において、旋回支持体を上旋回角度位置と下旋回角度位置との間を旋回させたときの状態を示す正面図。
【
図9】ベッドに敷いたエアマットレスの第1支持袋部の圧縮空気を収縮させた状態で示す側面図。
【
図10】ベッドのエアマットレスの第1支持袋部の上側に介護移送装置側の複数の受け支持部を挿入する前の状態を示す正面図。
【
図11】ベッドのエアマットレスの第1支持袋部の上側に介護移送装置側の複数の受け支持部を挿入した状態を示す正面図。
【
図12】
図12(a)~(c)は、ベッドのエアマットレスの第1支持袋部の上側に介護移送装置側の複数の受け支持部を挿入する際の動きを説明するための説明図。
【
図13】ベッドのエアマットレスの第1支持袋部の上側に介護移送装置側の複数の受け支持部を挿入した後に受け体と旋回支持体とを連結した状態を示す正面図。
【
図14】介護移送装置側の受け体と旋回支持体とを連結した状態において昇降載置台を上昇位置に移動させた状態を示す側面図。
【
図16】昇降載置台を上昇位置に位置付けた状態において移動支持体を収納位置まで戻した状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う介護移送装置の一実施形態について説明する。
図1~
図3において、図示の介護移送装置2は、移送装置本体4と、この移送装置本体2に装着された昇降載置台6と、この昇降載置台6に装着された受け構造体8とを備えている。移送装置本体4は、介護移送装置2のベース部として機能し、その底部に移動手段10が設けられている。
【0024】
図示の移動手段10は、4つの移動キャスタ12から構成され、これら移動キャスタ12が移送装置本体4の底面四角部に配設されている。各移動キャスタ12は、それ自体周知のものから構成され、移送装置本体4に取り付けられた取付部材14、この取付部材14に旋回自在に装着されたフォーク16及びこのフォーク16に回転自在に支持された車輪18を備えている。この形態では、昇降載置台6には、長手方向(
図1及び
図2において左右方向、
図3において紙面に対して垂直な方向)の両端部に把持部材20が取り付けられ、この把持部材20の把持部22は斜め上方に延びている。尚、この把持部材20は、昇降載置台6に代えて移送装置本体4に設けるようにしてもよい。このように構成されているので、把持部材20の把持部22を把持して押す(又は引っ張る)ことにより、この移送装置本体4を前進(又は後進)させることができる。
【0025】
昇降載置台6は上下スライド機構24(第2スライド機構を構成する。)を介して上下方向に移動自在に移送装置本体4に支持されている。図示の上下スライド機構24は、それ自体周知の4つの昇降リニアガイド26から構成され、これら昇降リニアガイド26が移送装置本体4の四角部に配設されている。昇降リニアガイド26は、移送装置本体4に取り付けられた固定側部材(図示せず)と、この固定側部材に移動自在に装着された可動側部材28とから構成され、この可動側部材28が昇降載置台6に取り付けられている。
【0026】
上下スライド機構24としては、昇降リニアガイド26に代えて、それ自体周知のスライド機構(図示せず)を用いることもでき、スライド機構の片側部材(固定側部材)が移送装置本体4側に取り付けられ、その他側部材(可動側部材)が昇降載置台6側に取り付けられる。
【0027】
移送装置本体4と昇降載置台6との間には昇降用シリンダ機構30(例えば、
図10参照)が配設され、この昇降用シリンダ機構30は、例えば、移送装置本体4の長手方向の片側部及び他側部(例えば、被介護者の頭部側を支持する部位と足側を支持する部位)に間隔おいて設けられる。昇降用シリンダ機構30は、例えば電動シリンダ機構から構成され、そのシリンダ本体32が例えば移送装置本体4の上面に取り付けられ、その出力ロッド34が例えば昇降載置台6の底面に取り付けられる。尚、昇降用シリンダ機構30として、電動シリンダ機構30に代えて、例えば圧縮空気を利用する空圧シリンダ機構を用いるようにしてもよく、或いは昇降用シリンダ機構30を省略し、螺合構造を採用して手動又は電動でもって昇降させるようにしてもよい。
【0028】
このように構成されているので、一対の昇降用シリンダ機構30が同期して伸張すると、上下スライド機構24(昇降リニアガイド26)に沿って昇降載置台6が上方に上昇して上昇位置(
図4に示す位置)に位置付けられ、またこの昇降用シリンダ機構30が同期して収縮すると、下方に降下して下降位置(
図3に示す位置)に位置付けられる。
【0029】
昇降載置台6の表面(上面)には、
図1及び
図5に示すように、その長手方向に間隔をおいて複数の収容凹部36が設けられ、これら収容凹部36は、昇降載置台6の幅方向(
図1において上下方向、
図2において紙面に対して垂直な方向、
図3において左右方向)一側端から他側端まで延びている。昇降載置台6のこれら収容凹部36には、後述する受け構造体8の支持受け部56が収容される(
図1参照)。
【0030】
次に、受け構造体8について説明すると、図示の受け構造体8は、昇降載置台6に装着された移動支持本体40と、この移動支持本体40に装着された受け体42と、この受け体42の片側面側(
図1において上側、
図3において右側)を覆うための旋回支持体44とを含んでいる。移動支持本体40は、移送装置本体4の長手方向に間隔をおいて配設された一対の支持本体部46、48を備え、一方の支持本体部46が片方の横スライド機構50(
図2、
図5参照)(第1スライド機構の一部を構成する。)を介して昇降載置台6の一端側にスライド移動自在に支持され、他方の支持本体部48が他方の横スライド機構52(
図2、
図5参照)(第1スライド機構の一部を構成する。)を介して昇降載置台6の他端側にスライド移動自在に支持されている。これら横スライド機構50,52は、例えば、横移動リニアガイドから構成され、横移動リニアガイドの固定側部材が移送装置本体4側に取り付けられ、その可動側部材が受け構造体8側に取り付けられる。
【0031】
一対の支持本体部46,48間には、矩形状断面の支持柱状部54が配設され、受け体42の他側面側において、その一端部が一方の支持本体部46に取り付けられ、その他端部が他方の支持本体部48に取り付けられ、この支持柱状部54は、移送装置本体4の長手方向に直線状に延びている。
【0032】
この支持柱状部54には、その軸方向(即ち、移送装置本体4の長手方向)に間隔をおいて複数の支持受け部56が設けられ、この複数の支持受け部56は、昇降載置台6の上面の複数の収容凹部36に対応して設けられている。複数の支持受け部56は、
図7及び
図8に示すように、全体としてプレート状であり、その一端部が支持柱状部54に取り付けられ、その先端側は下方に凹状に湾曲した後に水平方向に延び、それらの先端部は半円状に形成されている(
図5参照)。これら支持受け部56は、被介護者を載置支持するための適宜の形状でよく、例えば、支持柱状部54から先端側に向けて直線状に延びていてもよく、またそれらの先端部についても挿入しやすい形状であればよく、例えば半楕円状などの適宜の形状でよい。
【0033】
一対の支持本体部46,48間には、更に、旋回支持体44が旋回自在に取り付けられ、この旋回支持体44は、上下方向に旋回される旋回部材57を備えている。この旋回部材57は、一対のアーム部58,60と、一対のアーム部58,60の先端部を接続する把持部62とを有し、一方のアーム部58の基部が一方の支持本体部46における支持柱状部54の取付部位の内側に旋回自在に連結され、他方のアーム部60の基部が他方の支持本体部48における支持柱状部54の取付部位の内側に旋回自在に連結されている。
【0034】
この旋回支持体44の把持部62には、複数の支持受け部56のうちの一部の特定支持受け部56a(この実施形態では、長手方向中央領域に位置する5つの支持受け部)に対応して複数(この実施形態では、5つ)の連結部64が設けられている。各連結部64は、旋回部材57の把持部62に装着された基部から内側に傾斜して下方に延び、その先端部に挿入連結孔66が設けられている(例えば、
図10参照)。
【0035】
この実施形態では、更に、一対のアーム部58,60には、その軸方向に伸縮する伸張部68が設けられている。伸張部68は、その構造を図示していないが、例えばコイルばねの作用によって収縮状態に保持され、このコイルばねの作用に抗して引っ張ることによって伸張させることができる。
【0036】
このように構成されているので、旋回支持体44は、上旋回角度位置(
図7及び
図8に一点鎖線で示す角度位置)と下旋回角度位置(
図7及び
図8に実線で示す角度位置)との間を上下方向に旋回自在である。旋回支持体44が上旋回角度位置にあるときには、旋回支持体44の一対のアーム部58,60が斜め上方に延び、これにより、受け体42の片側面側が開放され、この受け体42と旋回支持体44との間に被介護者を受け入れるための受入れ開口70(
図10参照)が生成される。
【0037】
また、旋回支持体44が下旋回角度位置にあるときには、旋回支持体44の旋回部材57が水平方向に延び、旋回部材57の把持部62及びこれに装着された複数の連結部64が受け体42の片側面側の受入れ開口70を閉塞し、この下旋回角度位置に保持した状態では、受け体42の複数の支持受け部56並びに旋回支持体44の旋回部材57及びこれに装着された連結部64は、被介護者を載置支持するための受け載置部を構成し、この受け載置部の片側面側は旋回部材57及び複数の連結部64により規定され、その他側面側及び底面は受け体42の複数の支持受け部56により規定される。
【0038】
尚、図示していないが、旋回支持体44(旋回部材57)の上旋回角度位置を越える旋回動を阻止するための上旋回阻止手段(例えば、上旋回当接部)を設け、またその下旋回角度位置を越える旋回動を阻止するための下旋回阻止手段(例えば、下旋回当接部)を設けることができる。
【0039】
この実施形態では、複数の支持受け部56のうち中央側に位置するものの長さが両側に位置するものよりも長くなっているが、複数の支持受け部56の長さが同じ長さになるようにしてもよく、また連結部64に関しても、複数の支持受け部56のうちの一部の特定支持受け部56aに対応して連結部64を設けているが、例えば、複数の支持受け部56の全てに対して連結部64を設けるようにしてもよい。
【0040】
この旋回支持体44の把持部62を矢印72(
図5、
図7及び
図8参照)で示す方向に引っ張りながら下旋回角度位置まで旋回させると、一対のアーム部58,60の伸張部68が伸張して
図7及び
図8に実線で示す状態となり、この旋回部材57に装着された連結部64は、受け体42の複数の支持受け部56(この場合、特定支持受け部56a)の外側に位置するようになり、このように構成することにより、旋回支持体44の下旋回角度位置までの旋回動が許容される。
【0041】
そして、
図7及び
図8に示す状態において旋回部材57の把持部62から手を離すと、一対のアーム部58,60の伸張部68が収縮し、把持部62とともに複数の連結部64が複数の支持受け部56側に移動し、これら連結部64の挿入連結孔66内に受け体42側の特定支持受け部56aの先端部が挿入連結される。この挿入連結状態においては、複数の特定支持受け部56aの基部側が支持柱状部54に支持され、それらの先端部が旋回支持体44の連結部64に支持されるので、これらの特定支持受け部56aは両端支持状態となり、これによって、受け構造体8に充分な強度を持たせることができ、被介護者を安全に載置支持することができる。
【0042】
尚、このような挿入連結孔66に代えて、例えば係合連結構造を採用するようにしてもよく、この場合、係合連結構造は、支持受け部56と係脱自在に係合連結する複数の係合部材を含み、複数の係合部材を対応する支持受け部56の先端部に係合連結することによって、受け体42と旋回支持体44とを係脱自在に係合連結することができる。
【0043】
また、移動支持本体40(一対の支持本体部46,48)は、一対の横スライド機構50,52を介して横方向に移動自在であるので、例えばこの移動支持本体40(又は旋回部材57)を手で移動させることによって、移動支持本体40(これに装着された受け体42及び旋回支持体44)を横方向に収納位置(
図1に示す位置であって、昇降載置台6の上面に位置する位置)と受け位置(
図5に示す位置であって、昇降載置台6の側方に突出する位置)との間を横方向に移動させることができる。
【0044】
移動支持本体40(受け体42及び支持旋回体44)を収納位置に位置付けると、
図1に示すように、受け体42の複数の支持受け部56(具体的には、その水平に延びる部位)が昇降載置台6の収容凹部36に収容され、これら支持受け部56の上面は昇降載置台6の上面と実質上同一平面を規定し、このように構成することにより、被介護者を優しく載置支持することができる。
【0045】
また、この移動支持本体40(受け体42及び支持旋回体44)を受け位置に位置付けると、
図5から理解されるように、受け体42の複数の支持受け部56は昇降載置台6の横方向外側に位置付けられ、このように構成することによって、ベッド上に横臥している被介護者をこれら支持受け部56の上側に位置付け、後述する如くしてこれら支持受け部56に載置支持することができる。
【0046】
尚、図示していないが、移動支持本体40(受け体42及び支持旋回体44)の受け位置を越える移動を阻止するための第1移動阻止手段(例えば、第1移動当接部)を設けるとともに、移動支持本体40の収納位置を越える移動を阻止するための第2移動阻止手段(例えば、第2移動当接部)を設けることができる。
【0047】
この介護移送装置2においては、
図2、
図3、
図7及び
図8に示すように、移送装置本体4の底部(この実施例では、その底面)に一対の支持脚体82,84が対向するように配設され、一方の支持脚体82は、移送装置本体4の片端部側に、他方の支持脚体84はその他端部側に設けられ、これら支持脚体82,84は実質上同一の構造である。
【0048】
支持脚体82(84)は、移送装置本体4の底部に旋回自在に装着された旋回アーム部86と、この旋回アーム部86の先端部に取り付けられた脚部88とを備え、脚部88が例えば電動シリンダ90によって上下方向に昇降自在に構成されている。支持脚体82(84)の旋回アーム部86は横方向に旋回自在であり、移送装置本体4の下方に収納される収納角度位置(
図2及び
図3に示す角度位置)と移送装置本体4の横方向外側に突出する支持角度位置(
図7及び
図8に示す角度位置)との間を旋回自在に構成されている。
【0049】
支持脚体82,84の旋回アーム部86は、直接的に手で旋回させるように構成されているが、操作ハンドルなどを設けてこの操作ハンドルを回転操作して旋回させるようにしてもよく、或いは旋回駆動モータを設けてこの旋回駆動モータを作動させて旋回させるようにしてもよい。
【0050】
支持脚体82,84の旋回アーム部86を相互に近接する方向に内側に旋回させて収納角度位置に位置付けると、
図2、
図3及び
図5から理解されるように、それらの旋回アーム部86及び脚部88が移送装置本体4の下方に位置し、この移送装置本体4の下側にコンパクトに収納することができる。また、これらの旋回アーム部86を相互に離隔する方向に外側に旋回させて支持角度位置に位置付けると、
図7及び
図8に示すように、これら旋回アーム部86が移送装置本体4から横方向に延びる位置に位置付けられ、これら旋回アーム部86及び脚部88が後述するように横転防止の支えとして機能し、被介護者を受け構造体8に載置支持した際の横方向の横転を防止することができる。
【0051】
この支持脚体82,84において、それらの電動シリンダ90を収縮させると、
図2~
図4示すように、脚部88が床面Fから上昇する上昇位置に位置付けられ、この脚部88を上昇位置に保持することによって、旋回アーム部86の収納角度位置及び支持角度位置に向けての旋回動が許容される。また、それらの電動シリンダ90を伸張させると、
図7及び
図8に示すように、脚部88が下方に降下して下降位置に位置付けられ、この下降位置に保持することによって、脚部88が床面Fに接地して移送装置本体4を支持することができ、これによって、移送装置本体4の横転を確実に防止することができる。
【0052】
尚、図示していないが、支持脚体82,84に関連して、これらの旋回アーム部86の収納角度位置を越える旋回動を阻止するための第1旋回阻止手段(例えば、第1旋回当接部)を設けるとともに、それらの支持角度位置を越える旋回動を阻止するための第2旋回阻止手段(例えば、第2旋回当接部)を設けることができる。
【0053】
次に、主として
図9~
図16を参照して、上述した介護移送装置2を用いた被介護者の移送について説明する。
図9において、ベッド102に横臥した被介護者Pを移送するには、上述した介護移送装置2をベッド102の横側まで移動させる(
図1も参照)。この介護移送装置2を用いる場合、ベッド102の上面と被介護者Pとの間に後に説明するように介護移送装置2の複数の支持受け部56の先端側を挿入する必要があることから、ベッド102の上面側にエアマットレス104を敷き、このエアマットレス104の上に被介護者Pが横臥するようになる。
【0054】
ここで、
図9を参照してエアマットレス104について説明すると、エアマットレス104は、複数の第1支持袋部106と複数の第2支持袋部108とを備え、これら第1支持袋部106と第2支持袋部108とが、エアマットレス104の長手方向(
図9において左右方向)に交互に配設されている。複数の第2支持袋部108は、介護移送装置2の複数の支持受け部56に対応して設けられ、これら第2支持袋部108の幅は、複数の支持受け部56(特定支持受け部56aを含む)の幅よりも幾分大きく構成される。
【0055】
この実施形態では、複数の第1支持袋部106と複数の第2支持袋部108との幅を同じ大きさにしているが、例えば、これら第2支持袋部108の幅を第1支持袋部106よりも幾分大きくするようにしてもよく、このように構成した場合、受け体42の複数の支持受け部56の幅を幾分大きくしてその強度アップを図ることができる。
【0056】
このエアマットレス104においては、複数の第1支持袋部106は第1空気流路(図示せず)を介して相互に連通され、複数の第2支持袋部108は第2空気流路(図示せす)を介して相互に連通されている。また、例えば、第1空気流路は、第1流路切換弁(図示せず)を介して圧縮空気供給源(例えば、エアポンプ)(図示せず)に連通され、第2空気流路は、第2流路切換弁(図示せず)を介して圧縮空気供給源に連通される。
【0057】
このエアマットレス104を使用するとき、圧縮空気供給源は、第1流路切換弁を通して第1空気流路に連通されるとともに、第2流路切換弁を通して第2空気流路に連通される。このときには、圧縮空気供給源からの圧縮空気は、第1流路切換弁及び第1空気流路を通して複数の第1支持袋部106に送給され、この圧縮空気によって、これら第1支持袋部106が膨らんで膨張状態に保たれる。また、第1圧縮空気供給源からの圧縮空気は、第2流路切換弁及び第2空気流路を通して複数の第2支持袋部108にも送給され、この圧縮空気によって、これら第2支持袋部108が膨らんでエアマットレス104全体が膨張状態に保たれる。従って、第1及び第2支持袋部106,108は、
図9に実線で示す状態に保持され、被介護者Pはこのエアマットレス104の上で気持ちよく横臥することができる。
【0058】
また、ベッド102に横臥する被介護者Pを移送するときには、複数の第2支持袋部108は第2空気流路及び第2流路切換弁を通して大気に開放され、これら第2支持袋部108内の圧縮空気が第2流路切換弁を通して大気中に排出される。このとき、複数の第1支持袋106は、圧縮空気によって膨張状態に保たれているが、複数の第2支持袋部108は、圧縮空気が排出されることによって、
図9に一点鎖線で示すように収縮状態となり、萎んだ第2支持袋部108の上側(即ち、第2支持袋部108被介護者Pとの間)に空隙110が生成される。
【0059】
この実施形態では、エアマットレス104を第1及び第2支持袋部106,108が膨らんだ全膨張状態と第2支持袋部108が膨らんだ第1部分膨張状態(このとき、第1支持袋部106は縮んだ状態になる)とに切り替えて使用するように構成しているが、このような状態に加えて、更に、第1支持袋部106が膨らんだ第2部分膨張状態(このとき、第2支持袋部108は縮んだ状態になる)になるように構成することもでき、このように構成した場合、このエアマットレス108を第1部分膨張状態と第2部分膨張状態とに切り替えて使用することによって、被介護者の床ずれなどを防止することができる。
【0060】
被介護者Pを移送するときには、エアマットレス104の第2支持袋部108の圧縮空気を抜いた状態にし、かかる状態において、この介護移送装置4をベッド102の横に近づける。このとき、
図10に示すように、支持脚体82,84の旋回アーム部86が支持角度位置に保持され、それらの脚部88が上昇位置に保持される。また、昇降載置台6が下降位置に保持され、受け構造体8(受け体42及び旋回支持体44)が受け位置に保持され、旋回支持体44が上旋回角度位置に保持される。
【0061】
そして、
図11に示すように、介護移送装置2における受け体42の複数の支持受け部56の先端側を、ベッド102上のエアマットレス104の萎んだ第2支持袋部108の上側空間(即ち、萎んだ第2支持袋部108とエアマットレス104上で横臥する被介護者Pとの間の空隙110)に挿入し、移送装置本体4がベッド102に近接するまで近づける。かくすると、介護移送装置2の受け体42の複数の支持受け部56がエアマットレス104と被介護者Pとの間に挿入された状態となる。このとき、介護移送装置2の支持脚体82,84の旋回アーム部86は、ベッド102の下側空間に挿入される。
【0062】
上述した説明では、エアマットレス104を覆うシーツについては省略して説明したが、エアマットレス104にシーツSが敷いてあるときには、例えば
図12に示すようにして受け体42の複数の支持受け部56がシーツSの上側にて挿入される。
【0063】
図12において、エアマットレス104の表面側に、
図12(a)で示すようにシーツSが敷かれている場合、受け体42の複数の支持受け部56を挿入するに際し、一対の昇降用シリンダ機構30が幾分伸張され、これによって、
図12(b)に示すように、昇降載置台6が上記下降位置よりも幾分上昇した状態に位置付けられ、この幾分上昇した状態でもって、移送装置本体4を移動させて複数の支持受け部56の先端部をエアマットレス104の片側部の上方まで移動させる。
【0064】
その後、一対の昇降用シリンダ機構30が幾分収縮され、これによって、
図12(c)に示すように、昇降載置台6が上記下降位置まで下降され、この下降移動により、複数の支持受け部56の先端部はエアマットレス104の表面側のシーツSを押し下げ、複数の支持受け部56及びシーツSの一部は、萎んだこのように空隙110内に収容された状態でもって、受け体42の複数の支持受け部56が、エアマットレス104(その上側のシーツS)と被介護者Pとの間に挿入される。
【0065】
尚、複数の支持受け部56によってシーツSを押し下げたときにその一部が第2支持袋部108の上側の空隙110内に所要の通りに収容されるように、またシーツSを押し下げた状態でもって複数の支持受け部56の挿入が許容されるように、このシーツS自体が充分な伸縮性を有しているのが好ましい。
【0066】
次いで、
図13に示すように、支持脚体82,84の電動シリンダ90を伸張させ、脚部88を下方に下降位置まで移動させて床面Fに接地させ、このように接地させることにより、介護移送装置2を床面に安定的に支持することができる。また、旋回部材57の把持部62を把持して下方に旋回させて支持旋回体44を下旋回角度位置に位置付け、把持部材57の連結部64の挿入連結孔66に受け体42の特定支持受け部56aの先端部を挿入連結する。このように挿入連結すると、
図13から理解される如く、受け構造体8の上面に幅方向に凹状の受け載置部が形成され、被介護者Pは、この受け載置部に載置支持され、これにより、被介護者Pが受け構造体8(受け体42及び旋回支持体44)から落下するのを防止することができる。
【0067】
次に、
図14及び
図15に示すように、一対の昇降用シリンダ機構30を伸張させて昇降載置台6を上昇位置に位置付ける。かくすると、昇降載置台6とともに受け構造体8(受け体42及び旋回支持体44)が上昇し、受け体42の複数の支持受け部56はエアマットレス104に横臥していた被介護者Pを上方に持上げ、このようにして被介護者Pをベッド102(エアマットレス104及びシーツS)から持ち上げることができる。このとき、受け構造体8は移送装置本体4から横側に突出して位置して不安定な状態であるが、この受け構造体8の下方に支持脚部82,84の旋回アーム部86の脚部88が接地されているので、この移送装置本体4が横に横転することがなく、被介護者Pを受け構造体8内に安定して載置支持することができる。
【0068】
その後、
図16に示すように、旋回支持体44を移送装置本体4側に押して受け構造体8(受け部42及び旋回支持体44)を収納位置に位置付け、このように収納位置に位置付けることによって、被介護者Pをベッド102から介護移送装置2に移送させることができる。この収納位置においては、受け体42の複数の支持受け部56が昇降載置台6の収容凹部36に収容されてこの昇降載置台6の上面と実質上同一平面を規定するので、被介護者Pを昇降載置台6の上面に安定的に載置支持することができる。
【0069】
被介護者Pを載置した状態で介護移送装置4を他の場所に移動させるときには、支持脚体82,84の電動シリンダ90を収縮させて脚部88を上昇位置に位置付けた後に、それらの旋回アーム部86を内側に旋回させて収納角度位置に位置付け、このようにすることによって、介護移送装置2の移動が許容される。また、昇降用シリンダ機構30を収縮させて昇降載置台6を下降位置に位置付け、このようにすることによって、被介護者Pの載置位置が低くなり、被介護者Pを載置した状態で介護移送装置4を安定して移動させることができる。
【0070】
尚、介護移送装置4に載置支持した被介護者Pをベッド102に戻すときには、上述したと反対に行うようにすればよく、安全にベッド102(その上のエアマットレス104)に戻すことができる。
【0071】
以上、本発明に従う介護移送装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0072】
2 介護移送装置
4 移送装置本体
6 昇降載置台
8 受け構造体
24 上下スライド機構(第2スライド機構)
26 昇降リニアガイド
30 昇降用シリンダ機構
36 収容凹部
42 受け体
44 旋回支持体
50,52 横スライド機構(第1スライド機構)
54 支持柱状部
56 支持受け部
56a 特定支持受け部
57 旋回部材
64 連結部
82,84 支持脚体
102 ベッド
104 エアマットレス
106 第1支持袋部
108 第2支持袋部
110 空隙
P 被介護者
S シーツ