(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172465
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20231129BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20231129BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231129BHJP
【FI】
H02M1/00 M
H02M1/08 A
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084290
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 嵐
(72)【発明者】
【氏名】川村 真央
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB02
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM18
5H770AA15
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA09X
5H770JA11X
(57)【要約】
【課題】並列接続されたパワーモジュール間でスイッチングタイミングずれが発生してもパワーモジュール間の共振を低減できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数のパワーモジュールが並列接続された主回路を有するスイッチ素子群を含む電力変換器、複数の前記パワーモジュールの駆動を制御する制御部、及び電源と前記電力変換器との間に接続された第一のコンデンサを備えた電力変換装置であって、主回路内の複数の前記パワーモジュール間を接続する電気的な経路に並列に接続された第二のコンデンサを備えた。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワーモジュールが並列接続された主回路を有するスイッチ素子群を含む電力変換器、複数の前記パワーモジュールの駆動を制御する制御部、及び電源と前記電力変換器との間に接続された第一のコンデンサを備えた電力変換装置であって、
前記主回路内の複数の前記パワーモジュールの間を接続する電気的な経路に並列に接続された第二のコンデンサを備えた電力変換装置。
【請求項2】
複数の前記パワーモジュールはそれぞれ第一の電極及び第二の電極を有する半導体スイッチング素子を含んでおり、
前記第二のコンデンサは複数の前記パワーモジュールの半導体スイッチング素子の第一の電極間または第二の電極間に接続された、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換器は前記スイッチ素子群が複数直列にされており、
前記第二のコンデンサは直列に接続された少なくとも1つの前記スイッチ素子群の主回路内に接続された、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
複数の前記パワーモジュールはそれぞれ第一の電極及び第二の電極を有する半導体スイッチング素子を含んでおり、
前記第二のコンデンサは直列に接続された少なくとも1つの前記スイッチ素子群の主回路内であって、隣接する前記スイッチ素子群に接続されていない側の前記半導体スイッチング素子の第一の電極間または第二の電極間に接続された、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第二のコンデンサを具備しない前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数f0に対し、
前記第二のコンデンサを具備する前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数は前記共振周波数f0より低周波数の第一の共振周波数f1と、前記共振周波数f0より高周波数の第二の共振周波数f2とを有し、
前記共振周波数f0における共振経路のインピーダンスZ0よりも前記第一の共振周波数f1における共振経路のインピーダンスZ1及び前記第二の共振周波数における共振経路のインピーダンスZ2は大きい、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第二のコンデンサを具備しない前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数f0に対し、
前記第二のコンデンサを具備する前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数は前記共振周波数f0より低周波数の第一の共振周波数f1と、前記共振周波数f0より高周波数の第二の共振周波数f2とを有し、
(2n-0.5)×f1≦f2≦(2n+0.5)×f1(nは自然数)を満たす、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
複数の前記パワーモジュールは半導体スイッチング素子を含んでおり、前記半導体スイッチング素子は、炭化珪素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、及びダイヤモンドのいずれか1つのワイドバンドギャップ半導体で構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車及び電気自動車などの電動パワートレイン用の電力変換装置は、IGBT及びMOSFETなどの半導体素子を内蔵したパワーモジュールにより構成され、このパワーモジュールを複数並列接続し同時にスイッチング駆動することにより電力容量を増大化させている。
【0003】
この種の電力変換装置では、並列接続された複数のパワーモジュールに内蔵される半導体素子の特性差に起因するパワーモジュール間の特性差、主回路及び制御回路のインダクタンスのばらつきにより、パワーモジュールのスイッチング動作のタイミングが異なる事象が発生する。
【0004】
スイッチングタイミングの差により電流アンバランスが発生し、例えば最も早くスイッチングオンしたパワーモジュールに電流が集中し、損失が増大してそのパワーモジュールが破壊するおそれがあった。
【0005】
これに対し、パワーモジュール間のスイッチングタイミングずれを抑制する手段が知られている。例えば、電力変換装置の構造として、にゲート配線のインピーダンスが大きくなる位置のモジュールにはゲート閾値電圧が低くスイッチングタイミングの早い特性のパワーモジュールを実装するようにして、パワーモジュール間のスイッチングタイミングずれを低減する手法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、複数の半導体素子の特性にばらつきがあっても、半導体素子の特性とゲート駆動電圧との関係をマップ情報として用いて、各半導体素子が所望の特性を示すように可変のゲート駆動電圧を与えられる構成をとる手法が提示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-156304号公報
【特許文献2】特開2019-4558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された方法を用いれば、スイッチングタイミングずれを低減することができる。しかし、パワーモジュール間のスイッチングタイミングをそろえるようにパワーモジュールの特性を選定して実装する必要があり電力変換装置の製造工程が複雑化する、歩留まりが悪化しコストが高くなってしまう。
【0009】
特許文献2に開示された方法を用いれば、特許文献1の方法と同様に、スイッチングタイミングずれを低減することができる。しかし、提示される手法を実現するためにゲート駆動回路が複雑化しコストが高くなる、設計難易度が上がるという課題が生じる。
【0010】
さらに、発明者らは、並列接続されたパワーモジュール間でスイッチングのタイミングがずれると、各パワーモジュール間で電圧差が生じてパワーモジュール間のインダクタンスとパワーモジュール内の半導体素子の寄生容量により、パワーモジュール間で共振現象が発生することを見出した。この共振による電圧振幅が、ドレイン―ソース間電圧に発生するサージに重畳することでドレイン―ソース間にかかる電圧が大きくなりパワーモジュールを破壊に至らしめるのである。これは特に損失を減らすために高di/dtにてスイッチングを行う場合に顕著に現れる課題である。
【0011】
これを回避するためには、一般的に導通時の抵抗が大きくて損失の大きい耐圧の高い素子を選択する、あるいは大きな損失が発生することを許容する設計として高di/dtの高速駆動ではなく、低di/dtの低速駆動の設定としなければならない。損失が大きくなると、これを許容するためにコストの高い大きいサイズの半導体素子あるいは高価な高性能素子を使う必要がある。
【0012】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、簡便な構成により、スイッチングタイミングずれを発端として発生するパワーモジュール間の共振を低減可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願に開示される電力変換装置は、複数のパワーモジュールが並列接続された主回路を有するスイッチ素子群を含む電力変換器、複数の前記パワーモジュールの駆動を制御する制御部、及び電源と前記電力変換器との間に接続された第一のコンデンサを備えた電力変換装置であって、前記主回路内の複数の前記パワーモジュールの間を接続する電気的な経路に並列に接続された第二のコンデンサを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本願に開示される電力変換装置によれば、主回路内の複数の前記パワーモジュール間を接続する電気的な経路に並列に接続された第二のコンデンサを備えたので、スイッチングタイミングずれを発端として発生するパワーモジュール間の共振を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の半導体スイッチング素子群の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力変換装置の比較例の回路構成を示す図である。
【
図4A】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための図である。
【
図4B】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための図である。
【
図4C】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための図である。
【
図4D】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための図である。
【
図4E】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための図である。
【
図4F】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための図である。
【
図5】比較例の電力変換装置において、パワーモジュール間の共振について説明するための別の図で、ドレイン―ソース電圧の推移を示す図である。
【
図6A】実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る電力変換装置及び比較例の共振状態を比較した図である。
【
図8】実施の形態1に係る電力変換装置及び比較例の共振電圧を比較した図である。
【
図9】実施の形態1に係る電力変換装置及び比較例の共振振幅を比較した図である。
【
図10】実施の形態1に係る電力変換装置及び比較例のドレイン―ソース電圧を比較した図である。
【
図11】実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成の別の例を示す図である。
【
図12】実施の形態2に係る電力変換装置において共振電圧を共振周波数成分ごとに分解した図である。
【
図13A】実施の形態3に係る電力変換装置の一部構造を示す上面図である。
【
図14A】実施の形態3に係る別の電力変換装置の一部構造を示す上面図で、基板を透視した図である。
【
図14C】実施の形態3に係る別の電力変換装置の一部構造を示す上面図で、基板を透視していない図である。
【
図15】実施の形態1から3に係る制御部のハードウエアの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願で開示される電力変換装置の実施の形態について図を参照して説明する。本実施の形態に係る電力変換装置は、パワーエレクトロニクス分野のインバータあるいはコンバータなどに関するものである。なお、各図中、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
【0017】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る電力変換装置について図を用いて説明する。
<電力変換装置の概略構成>
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。実施の形態1に係る電力変換装置は、電力変換器50として例えばインバータから構成され、電力変換器50の入力側には直流電源1が接続され、出力側には負荷であるモータ9が接続されている。
【0018】
直流電圧を出力する直流電源1は、例えばバッテリであり、この電力変換装置が電気自動車あるいはハイブリッド自動車に適用された場合には、直流電源の代表的な例として、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池からなる蓄電池が用いられ、その電圧は少なくとも100V以上である。
【0019】
電力変換器50の入力段には、電圧リプル及びノイズ除去用の平滑用コンデンサ2を備え、電力変換器50は半導体スイッチング素子群3~8を備えた、3相インバータである。インバータは平滑用コンデンサ2の出力電圧を、3相交流として3相出力端子Vu、Vv、Vwに出力する。インバータの3相出力端子は発電機あるいは電動機等からなるモータ9に接続され三相交流を供給する。
【0020】
制御部10は制御線32a~32fにより、各半導体スイッチング素子群3~8をそれぞれ予め設定されたデッドタイムを挟んでオン、オフ制御する。具体的には、制御部10はゲートドライバ回路11を備えており、半導体スイッチング素子群3は制御線32aを介して制御部10から出力される制御信号により、半導体スイッチング素子群4は制御線32bを介して制御部10から出力される制御信号により、半導体スイッチング素子群5は制御線32cを介して制御部10から出力される制御信号により、半導体スイッチング素子群6は制御線32dを介して制御部10から出力される制御信号により、半導体スイッチング素子群7は制御線32eを介して制御部10から出力される制御信号により、半導体スイッチング素子群8は制御線32fを介して制御部10から出力される制御信号により、スイッチング動作を行う。
【0021】
インバータの入力電圧を取得するため、電圧センサ回路(SV1)20がインバータ入力段に平滑用コンデンサ2と並列に設置され、制御部10は、信号線31aを介して入力電圧情報を取得する。また、電流センサ回路(SC1~3)21a~21cがインバータの3相出力端子Vu,Vv,Vwとモータ9との間に設けられており、各相の電流Iu,Iv,Iwの値を検出する。制御部10は、信号線31b~31dを介して、各相の電流値を取得する。
【0022】
モータ9には回転角センサ(Sns)30が設けられ、モータ9の回転角θmを検出し、検出された回転角θmは信号線31fを介して、制御部10に入力される。また、外部から、モータ9のトルク指令値Trq*及び直流電圧指令値V2*がそれぞれ信号線42a、42bを介して制御部10に入力される。
【0023】
実施の形態1に係る電力変換装置では、インバータに用いられているパワーモジュールの半導体スイッチング素子をMOSFET(Mertal oxide Semiconductor Field Effect Transistor)としているが、これに限るものではなく例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とDi(Diode:ダイオード)で構成されてもよい。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る電力変換装置の半導体スイッチング素子群の構造を詳細に示した図で、
図2では例として半導体スイッチング素子群3の構造を示した図である。半導体スイッチング素子群3は、複数のパワーモジュール3a、3bから構成されており、パワーモジュール3aとパワーモジュール3bが並列に接続されている。各パワーモジュール3a、3bの半導体スイッチング素子の電極であるドレイン、ソースはそれぞれ接続されており、制御部10の具備するゲートドライバ回路11はゲート抵抗3Ra、3Rbを介して各パワーモジュール3a、3bに接続されている。パワーモジュール3aを含む側をA相、パワーモジュール3bを含む側をB相と称する。なお、他の半導体スイッチング素子群4~8も同様に、複数のパワーモジュールが並列に接続された構造を有する。
【0025】
<パワーモジュール間の共振>
次に、発明者らが見出した、パワーモジュール間で共振現象、すなわち並列接続されたパワーモジュール間でスイッチングのタイミングがずれると、各パワーモジュール間で電圧差が生じてパワーモジュール間のインダクタンスとパワーモジュール内の半導体素子の寄生容量により、パワーモジュール間で共振が発生する現象、について説明する。
【0026】
図3は、
図1の電力変換器50であるインバータのうち半導体スイッチング素子群3,4が接続された1つのレグの回路構成を示したもので、本実施の形態1に係る回路構成に対する比較例である。
図3において、各パワーモジュール3a、4aの側がA相、各パワーモジュール3b、4bの側がB相である。また、各パワーモジュール3a、3b、4a、4bに図示されたコンデンサは、それぞれドレイン―ソース間、ドレイン―ゲート間、ゲート―ソース間に存在する寄生容量を表している。また、回路中の各寄生インダクタンスを、3La1,3Lb1,3Lga,3Lgb,3Lsa,3Lsb,3La2,3Lb2,4La1,4Lb1,4Lga,4Lgb,4Lsa,4Lsb,4La2,4Lb2の符号で示している。
【0027】
以下に、下アーム側の半導体スイッチング素子群4がターンオンしたときの、半導体スイッチング素子群3の各パワーモジュール間で共振が発生するメカニズムの一例を、
図4A~
図4Fを用いて説明する。なお、回路中流れる電流を矢印で示している。
【0028】
(1)モードA
図4Aは、モードAの状態を示しており、半導体スイッチング素子群3,4はともにオフ状態であり、インバータの出力側のモータ9から電流が流入している状態を考える。このとき、モータ9側から流れ込む電流は、半導体スイッチング素子群3のパワーモジュール3a、3bの内部ダイオードを介してソースからドレインに流れている。
【0029】
(2)モードB
図4Bは、モードBの状態を示しており、半導体スイッチング素子群4がターンオンする。ここで、パワーモジュール4aに対して、パワーモジュール4bが遅れてターンオンする。このため、パワーモジュール4aのドレイン電流がパワーモジュール4bに対して大きい。一方で、パワーモジュール3aの内部ダイオードに流れている電流は、パワーモジュール3bに比べて小さくなる。このため、パワーモジュール3aの電流がパワーモジュール3bより先に0となりリカバリが発生する。
【0030】
(3)モードC
図4Cは、モードCの状態を示している。パワーモジュール3aの内部ダイオードにリカバリが発生するため、リカバリ電流がA相側に流れる。このとき、B相側のパワーモジュール3bはリカバリが発生していない。パワーモジュール3bの内部ダイオードは導通状態である。
【0031】
(4)モードD
図4Dは、モードDの状態を示している。パワーモジュール3aの内部ダイオードがリカバリ後、パワーモジュール3aのドレイン―ソース間の寄生容量が充電されドレイン―ソース間電圧Vds_3aが上昇する。一方、パワーモジュール3bの内部ダイオードは導通状態のためドレイン―ソース間電圧Vds_3bはほぼ0Vである。このとき、Vds_3a>Vds_3bとなり、A相のパワーモジュール3aとB相のパワーモジュール3bとの間に電位差が発生する。
【0032】
(5)モードE
図4Eは、モードEの状態を示している。パワーモジュール3bのドレイン―ソース間電圧Vds_3bはほぼ0Vとなった後、リカバリが完了しパワーモジュール3bの内部ダイオードを導通することができず、電流は寄生容量に流れる。すなわち、半導体スイッチ群3において、A相のドレイン―ソース間電圧Vds_3aは増加し、B相と電位差が発生したため、A相からB相に電流が流れパワーモジュール3bのドレイン―ソース間の寄生容量は充電される。その後は、各パワーモジュール3a、3bの寄生容量間で共振する。ここで、半導体スイッチング素子群4に流れるターンオン電流は説明簡略化のため割愛する。
【0033】
(6)モードF
図4Fは、モードFの状態を示している。パワーモジュール3a、3bのリカバリ電流が減少するときに、パワーモジュール3aと平滑用コンデンサ2と間の寄生インダクタンス3La1,3La2,4La1,4La2、パワーモジュール3bと平滑用コンデンサ2と間の寄生インダクタンス3Lb1,3Lb2,4Lb1,4Lb2により、それぞれサージ電圧が発生し、各パワーモジュール3a、3bの寄生容量は平滑用コンデンサ2の電圧よりも高い電圧まで充電される。この時、寄生インダクタンスによるサージ電圧とモードEで説明したパワーモジュール間の共振による充電電圧が重畳される。ここでも、半導体スイッチング素子群4に流れるターンオン電流は説明簡略化のため割愛する。
【0034】
上記では、パワーモジュール3a、3bを並列接続させた半導体スイッチング素子群3及びパワーモジュール4a、4bを並列接続させた半導体スイッチング素子群4を備えた構成において、半導体スイッチング素子群4のパワーモジュール4a、4bのスイッチングにずれが生じ、それに伴う現象について説明した。この例では、スイッチング時のリカバリタイミングがばらつくことにより、非スイッチング側の半導体スイッチング素子群3のパワーモジュール3a、3b間に電位差が発生し、共振電流が流れる。これにより、パワーモジュール3a、3b間に共振電圧が発生することで、平滑用コンデンサ2と各パワーモジュール3a、3bとの間の寄生インダクタンスによるサージ電圧に共振電圧が重畳され、パワーモジュール3a、3bのドレイン―ソース間電圧が増大する。
【0035】
図5は、比較例の電力変換装置が
図4A~
図4Fに示したモードA~Fで動作した時の各パワーモジュール3a、3bのドレイン―ソース間の電圧波形、及びパワーモジュール3a、3bのドレイン―ソース間の共振電圧波形を示す図である。リカバリタイミングがずれることで、半導体スイッチング素子群3のVdsに電位差が発生し、パワーモジュール3a、3b間で共振する。そのときに流れる電流による充電電圧(共振電圧)が、サージ電圧のピーク電圧に重畳されることで、ドレイン―ソース間にかかる電圧が大きくなりパワーモジュールが破壊する恐れがあることが確認できる。共振による電流により、パワーモジュール3bのドレイン―ソース間の寄生容量の充電電圧が増加していくため、パワーモジュール3bのドレイン―ソース間電圧はパワーモジュール3aより共振電圧の重畳による影響を大きく受けている。
【0036】
上記では、半導体スイッチング素子群4のスイッチングのずれによるリカバリについてスイッチングしていない半導体スイッチング素子群3への影響で説明したが、スイッチングタイミングのずれによるリカバリ発生のタイミングのずれはあくまでも一例である。スイッチングのタイミングが揃っていても、各半導体スイッチング素子群の主回路の寄生インダクタンス成分が揃っていなければ、半導体スイッチング素子群内でターンオン時の電流が異なることになり、リカバリタイミングのずれを生じさせることになる。ここで各半導体スイッチング素子群の主回路の寄生インダクタンス成分とは、半導体スイッチング素子群3であれば、寄生インダクタンス3La1,3La2,3Lb1,3Lb2であり、半導体スイッチング素子群4であれば、寄生インダクタンス4La1,4La2,4Lb1,4Lb2である。
【0037】
<パワーモジュール間の共振電圧の抑制>
本実施の形態1に係る電力変換装置について、上記の課題に対する解決案について説明する。すなわち、
図4A~
図4Fで説明したサージ電圧の増大を抑制するためには、動作モードEで発生するパワーモジュール間の共振電圧を抑制する必要がある。
【0038】
図6Aは、実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成の一例を示す図で、
図1のインバータのうち半導体スイッチング素子群3,4が接続された1つのレグの回路構成を示したものである。
図4の比較例の構成と異なるのは、
図4Eで示した共振経路において、パワーモジュールが並列接続された主回路のA相とB相との間にコンデンサ100Cを挿入したことである。
図6Aにおいては、上アームのパワーモジュール3a、3bのドレイン間に挿入している。その他の構成は、
図4の比較例で示した構成と同様であるので、説明を省略する。また、
図6Bは、
図6AにモードEでパワーモジュール間の共振電圧の発生する共振経路を示した図である。
【0039】
図7は、
図4の回路構成である比較例及び
図6の回路構成である実施の形態1の共振状態を示す図である。図において、横軸は周波数、縦軸は共振経路のインピーダンスを示している。比較例の共振は、パワーモジュール3a、3b間で構成されるLC共振周波数f0で発生する。この共振を抑制するために、
図6Aのようにコンデンサ100Cを挿入すると、比較例のLC共振周波数f0よりも低い周波数の第一の共振周波数f1と比較例のLC共振周波数f0よりも高い周波数の第二の共振周波数f2とを備えるようになる。これにより、LC共振周波数f0におけるインピーダンスZ0に応じて発生していた共振電圧を、第一の共振周波数f1におけるインピーダンスZ1と第二の共振周波数f2におけるインピーダンスZ2による共振電圧に分散させることができる。ここで、共振経路とは、各パワーモジュールの寄生容量と各パワーモジュールを接続するドレインライン、ソースラインから構成される閉回路を指す。すなわち、比較例においては
図4Eで示した閉回路、
図6Bの本実施の形態1においては、比較例の閉回路にコンデンサ100Cを経由する回路を含む閉回路である。
【0040】
図8は、
図5に示した比較例におけるパワーモジュール3a、3bのドレイン―ソース間の共振電圧波形(破線)に共振回路にコンデンサ100Cを挿入した実施の形態1における共振電圧波形(実線)を重ねて示した図である。また、
図9は、共振電圧波形に対し高速フーリエ変換処理を行った結果を比較例(破線)と実施の形態1(実線)とを対比して示した図である。
図8において、コンデンサ100Cを挿入することで、ドレインソース電圧ピークのタイミングにおける、共振電圧が減少していることがわかる。これは、
図9に示されるように、LC共振周波数f0を複数の共振周波数f1,f2に分散しており、共振電圧の振幅が減少するためである。
【0041】
図10は、
図5に示した比較例におけるパワーモジュール3bのドレイン―ソース間の電圧波形(破線)に、コンデンサ100Cを挿入した実施の形態1におけるパワーモジュール3bのドレイン―ソース間の電圧波形(実線)を重ねて示した図である。
図10に示されるように、ドレイン―ソース間の電圧のピーク値を減少させることが可能となる。このようにドレイン―ソース間の電圧のピーク値を減少させることができれば、スイッチング素子を低損失かつ高速スイッチング駆動させることができ、小型で安価な素子を用いることが可能となる。
【0042】
以上のように、実施の形態1によれば、複数のパワーモジュールが並列接続されたスイッチング素子群を備えた電力変換装置において、複数のパワーモジュールを接続する経路と並列にコンデンサを接続して簡易な構造で共振抑制回路を構成したので、スイッチングタイミングずれを発端として発生するパワーモジュール間の共振電圧の振幅を低減することが可能となる。また、パワーモジュールのドレイン―ソース間の電圧のピーク値を減少させることが可能となる。これにより、スイッチング素子を低損失かつ高速スイッチング(高di/dt)駆動させることができ、小型で安価な素子を用いることが可能な電力変換装置を提供することができる。パワーモジュールのスイッチングで発生するサージ電圧に、パワーモジュール間の共振が重畳すると、パワーモジュールのドレイン―ソース間の耐圧を超過する虞があったが、本実施の形態によれば共振電圧の振幅を低減し、ドレイン―ソース間の耐圧以内に抑えることができる。
【0043】
図6Aで示した実施の形態1の回路構成において、コンデンサ100Cをパワーモジュール3a、3bのドレイン間に挿入しているが、これに限るものではなく、例えば、上アームのパワーモジュール3a、3bのソース間あるいは下アームのパワーモジュール4a、4bのドレイン間に挿入しても、同様に効果を得ることができる。すなわち、並列に接続されたパワーモジュールを構成する半導体スイッチング素子の第一電極間または第二電極間にコンデンサ100Cを接続すればよい。
【0044】
図11は、実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成の別の例を示す図である。
図11においては、上アームのパワーモジュール3a、3bのソース間にコンデンサ100Cを挿入している。その他の構成は、
図6Aで示した構成と同様であるので、説明を省略する。
図11では、共振経路には、ゲート抵抗3Rb,3Raが含まれているので、この抵抗での電力消費し、共振電圧の振幅は時間に応じて減衰していく。
【0045】
一方、
図6A及び
図6Bで示した上アームのドレイン間及び下アームのドレイン間にコンデンサ100Cを挿入した場合は、ゲート抵抗を導通していた共振電流が、コンデンサ100Cを通るようになるため、ゲート抵抗による共振電圧の減衰量が減少する。このことから、上アームのドレイン間、下アームのソース間にコンデンサを挿入する方がより効果的に共振電圧を抑制することが可能である。すなわち、レグのように並列に接続されたパワーモジュールが複数直列に接続された電力変換器においては、隣接するスイッチ素子群に接続されていない側の半導体スイッチング素子の第一の電極間または第二の電極間にコンデンサ100Cを接続すればよい。
【0046】
また、コンデンサ100Cを挿入した実施の形態1の電力変換装置において、
図7で示したように比較例のLC共振周波数f0でのインピーダンスZ0よりも、第一の共振周波数f1での第一のインピーダンスZ1及び第二の共振周波数f2での第二のインピーダンスZ2が大きい特性を有している例について示したが、これに限るものではない。例えば、第二のインピーダンスZ2が比較例のインピーダンスZ0より小さい場合においても同様の効果を得ることができる。
【0047】
但し、
図7で示したように比較例のインピーダンスZ0よりも、第一のインピーダンスZ1及び第二のインピーダンスZ2の両方が大きい場合には、共振を分散させるだけでなく、インピーダンスの増加により、共振振幅を低減させることができるため、より効果的である。
【0048】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る電力変換装置について図を用いて説明する。
実施の形態1においては、
図7を用いて、比較例のLC共振周波数f0でのインピーダンスZ0とコンデンサ100Cを挿入した場合の第一の共振周波数f1での第一のインピーダンスZ1及び第二の共振周波数f2での第二のインピーダンスZ2との関係について説明した。本実施の形態2においては、コンデンサ100Cを挿入した場合の第一の共振周波数f1及び第二の共振周波数f2の関係について説明する。なお、実施の形態2に係る電力変換装置の回路構成は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
図12は、
図8で示したコンデンサ100Cを並列接続された複数のパワーモジュールの主回路に挿入した場合のドレイン―ソース間電圧に現れる共振電圧の推移を示す図及びそれを各共振周波数f1,f2成分に分解した図である。
図12に示すように、共振開始のタイミングにおいて、各周波数成分の波形は負のピークの位相であり、ここから時間経過とともに位相が変化する。ここで、第二の共振周波数f2が、第一の共振周波数f1の偶数倍に近い値となるようにすればよい。すなわち、f2≒2n×f1(nは自然数)である。このような関係にあると、第一の共振周波数f1における共振電圧の正のピーク時に第二の共振周波数f2における共振電圧は負のピークとなり、振幅を相殺できることになり、好適である。ここで、第二の共振周波数f2が、第一の共振周波数f1の偶数倍に近い値というのは、(2n-0.5)×f1≦f2≦(2n+0.5)×f1を満たすことである。例えばn=1において、1.5×f1≦f2≦2.5×f2を満たすことである。
【0050】
実施の形態1では、第一のインピーダンスZ1及び第二のインピーダンスZ2が、比較例のインピーダンスZ0よりも、大きくする方がよかったが、実施の形態2では、インピーダンスに限定することはない。第二の共振周波数f2が、第一の共振周波数f2の偶数倍に近い値とすることで同等の効果を奏する。さらに、実施の形態1と2を組み合わせて、設定すればより効果的となる。なお、第一の共振周波数f1及び第二の共振周波数f2の設定はコンデンサ100Cの容量を調整することで行うことができる。
【0051】
以上のように、実施の形態2によれば、複数のパワーモジュールを接続する経路に並列に接続したコンデンサにより分散される第一の共振周波数f1及び第二の共振周波数f2に対し、第二の共振周波数f2が、第一の共振周波数f2の偶数倍に近い値とすることで実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0052】
パワーモジュール間の電位差による共振現象は、電位差が大きいほど発生する。スイッチングタイミング、リカバリのタイミングのずれを抑えることができても、スイッチング速度(dV/dt)が早いと、少しのタイミングのずれでも電位差が発生してしまう。このため、本実施の形態1及び2に係る電力変換装置は、高速でスイッチングし、電位差が発生しやすい素子ほど効果を奏する。つまり、半導体スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体である半導体素子ほど共振が発生しやすく、本実施の形態1及び2の効果を得られやすい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えばSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)、Ga2O3(酸化ガリウム)、C(ダイヤモンド)等からなる半導体である。
【0053】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3に係る電力変換装置について図を用いて説明する。
実施の形態3では、実施の形態1および2に係る電力変換装置の実装例について説明する。
【0054】
<実施例1>
図13Aは、実施の形態3に係る電力変換装置の一部構造を示す上面図、
図13Bは、
図13A中A―A方向から見た側面図である。図において、コンデンサ100Cはフレーム113ネジまたはばね等で固定されている。パワーモジュール3aの主回路の端子110a、パワーモジュール3bの主回路の端子110bはそれぞれコンデンサ100Cの端子112a、112bとネジまたは溶接により接続される。ここで、コンデンサ100Cはチップコンデンサと比較して大電流に対応可能なディスクリートのコンデンサである例である。
【0055】
この例では、コンデンサ100Cに直列の寄生インダクタンス成分を小さく接続できるため、共振振幅の低減効果が大きいことに加えて、コンデンサ100Cをフレーム113に固定させることで、振動耐久性を確保できる構成である。また、フレーム113はパワーモジュール3a、3bを固定することもでき、パワーモジュール3a、3bの振動耐久性も高めることが可能である。
【0056】
<実施例2>
図14Aは、実施の形態3に係る別の電力変換装置の一部構造を示す上面図で、基板を透視した図、
図14A中B―B方向から見た側面図、
図14Cは、
図14Aとは異なり基板を透視していない上面図である。図において、基板114の一方の面にコンデンサ100Cが実装され、パワーモジュール3a、3bは基板114の他方の面側に配置されている。パワーモジュール3aの主回路の端子110a及びパワーモジュール3bの主回路の端子110bの一つのノード全て、もしくはその一部が基板114に接続され、基板114上の導体を介してコンデンサ100Cに接続される。
【0057】
また、基板114には、パワーモジュール3aの制御端子111a,111b及びパワーモジュール3bの制御端子111c,111dが接続され、基板114に搭載された制御部10に接続される。また、基板114に接続される主回路の端子110a,110bは制御端子あるいは保護回路、状態検出回路に接続される端子を兼ねていてもよい。実施例2では、1つの基板114を用い、端子を併用することにより、小型で低コストに実現できる構成である。
【0058】
なお、実施例1,2では、ディスクリートのコンデンサを用いて説明しているが、これに限るものではなく、チップコンデンサを用いることでも同様の効果を奏する。
【0059】
以上のように実施の形態3によれば、実施の形態1及び2と同様の効果を奏するとともに、実施の形態1及び2に係る電力変換装置を簡便で小型化可能な構成で実現できる。
【0060】
なお、本実施の形態1から3における制御部10は、ハードウエアの一例を
図15に示すように、プロセッサ1000と記憶装置2000から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ1000は、記憶装置2000から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ1000にプログラムが入力される。また、プロセッサ1000は、演算結果等のデータを記憶装置2000の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0061】
<他の実施の形態>
上記各実施の形態に係る電力変換装置において、電力変換器50としてインバータを例に説明しているが、これに限るものではなくコンバータでもよい。複数のパワーモジュールが並列に接続された構成を含む電力変換器において発生する同様の課題に対し、本実施の形態に係る電力変換装置は効果を奏する。
【0062】
各実施の形態に係る電力変換装置では、パワーモジュール内部のチップ数については図示していないが、パワーモジュール内のチップ数では1つでも複数でもよい。チップ数に限らず、同様の効果を奏する。
【0063】
各実施の形態に係る電力変換装置では、パワーモジュールの並列数は2並列構成の例で説明したが、これに限るものではなく複数並列であれば3並列でもよく、同様の効果を奏する。
【0064】
各実施の形態に係る電力変換装置では、1つのレグを例に挙げ、上アームと下アームとを機能的に区別して説明したが、これに限るものではなく、上下アームの一体型パワーモジュールを並列接続する構成でもよく、同様の効果を奏することができる。例えば、1アームのみで構成される昇圧チョッパ回路において、スイッチングオフ時に発生する共振現象に対しても、同様の効果を奏することができる。
【0065】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0066】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0067】
(付記1)
複数のパワーモジュールが並列接続された主回路を有するスイッチ素子群を含む電力変換器、複数の前記パワーモジュールの駆動を制御する制御部、及び電源と前記電力変換器との間に接続された第一のコンデンサを備えた電力変換装置であって、
前記主回路内の複数の前記パワーモジュールの間を接続する電気的な経路に並列に接続された第二のコンデンサを備えた電力変換装置。
(付記2)
複数の前記パワーモジュールはそれぞれ第一の電極及び第二の電極を有する半導体スイッチング素子を含んでおり、
前記第二のコンデンサは複数の前記パワーモジュールの半導体スイッチング素子の第一の電極間または第二の電極間に接続された、付記1に記載の電力変換装置。
(付記3)
前記電力変換器は前記スイッチ素子群が複数直列にされており、
前記第二のコンデンサは直列に接続された少なくとも1つの前記スイッチ素子群の主回路内に接続された、付記1に記載の電力変換装置。
(付記4)
複数の前記パワーモジュールはそれぞれ第一の電極及び第二の電極を有する半導体スイッチング素子を含んでおり、
前記第二のコンデンサは直列に接続された少なくとも1つの前記スイッチ素子群の主回路内であって、隣接する前記スイッチ素子群に接続されていない側の前記半導体スイッチング素子の第一の電極間または第二の電極間に接続された、付記3に記載の電力変換装置。
(付記5)
前記第二のコンデンサを具備しない前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数f0に対し、
前記第二のコンデンサを具備する前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数は前記共振周波数f0より低周波数の第一の共振周波数f1と、前記共振周波数f0より高周波数の第二の共振周波数f2とを有し、
前記共振周波数f0における共振経路のインピーダンスZ0よりも前記第一の共振周波数f1における共振経路のインピーダンスZ1及び前記第二の共振周波数における共振経路のインピーダンスZ2は大きい、付記1から4のいずれか1つの付記に記載の電力変換装置。
(付記6)
前記第二のコンデンサを具備しない前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数f0に対し、
前記第二のコンデンサを具備する前記電力変換装置における複数の前記パワーモジュールが並列接続された主回路での共振周波数は前記共振周波数f0より低周波数の第一の共振周波数f1と、前記共振周波数f0より高周波数の第二の共振周波数f2とを有し、
(2n-0.5)×f1≦f2≦(2n+0.5)×f1(nは自然数)を満たす、付記1から5のいずれか1つの付記に記載の電力変換装置。
(付記7)
複数の前記パワーモジュールは半導体スイッチング素子を含んでおり、前記半導体スイッチング素子は、炭化珪素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、及びダイヤモンドのいずれか1つのワイドバンドギャップ半導体で構成される、付記1から6のいずれか1つの付記に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0068】
1:直流電源、 2:平滑用コンデンサ、 3~8:半導体スイッチング素子群、 3a,3b,4a,4b:パワーモジュール、 9:モータ、 10:制御部、 11:ゲートドライバ回路、 20:電圧センサ回路(SV1)、 21a~21c:電流センサ回路(SC1~3)、 30:回転角センサ(Sns)、 31a~31d,31f:信号線、 32a~32f:制御線、 42a,42b:信号線、 50:電力変換器、 100C:コンデンサ、 110a,110b:主回路の端子、 111a~111d:制御端子、112a,112b:端子、 113:フレーム、114:基板、 1000:プロセッサ、 2000:記憶装置