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特開2023-172495活性光線硬化型樹脂組成物および脱離層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172495
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】活性光線硬化型樹脂組成物および脱離層
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/54 20060101AFI20231129BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08F2/54
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084343
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本橋 隼
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA01
4J011CC10
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA22
4J011QA24
4J011SA04
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA84
4J011UA03
4J011VA01
4J011WA02
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AM21Q
4J100BA04Q
4J100BA15P
4J100BA16P
4J100BC27Q
4J100BC43Q
4J100BC53Q
4J100BC58Q
4J100BC79Q
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA09
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、プラスチック基材から印刷層を容易に除去可能とする層(脱離層)を形成するための樹脂組成物に関するものであって、アルカリ水溶液処理によって容易にプラスチック基材から印刷層を分離することが可能で、印刷層の印刷性が良好、且つ基材への密着性が高い脱離層を形成するための無溶剤系活性光線硬化型樹脂剤組成物、及びその硬化物からなる脱離層を提供する。
【解決手段】
カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)、カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)、カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)を含有する活性光線硬化型樹脂組成物であって、活性光線硬化型樹脂組成物総量中、前記成分(A)の含有量は43重量%以上65重量%以下であり、前記成分(A)は2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(A-1)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸(A-2)、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸(A-3)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである、無溶剤系の活性光線硬化型樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)、カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)、カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)を含有する活性光線硬化型樹脂組成物であって、活性光線硬化型樹脂組成物総量中、前記成分(A)の含有量は43重量%以上65重量%以下であり、前記成分(A)は2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(A-1)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸(A-2)、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸(A-3)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである、無溶剤系の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(A)総量中、前記成分(A-1)~(A-3)の総含有量が50重量%以上100重量%以下である、請求項1に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
活性光線硬化型樹脂組成物総量中、前記成分(B)の含有量が18重量%以上45重量%以下であり、前記成分(C)の含有量が5重量%以上20重量%以下である、請求項1または2に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(B)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、(2―メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、から選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項3に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
電子線硬化性樹脂組成物である、請求項1または2に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性プラスチック基材の脱離層を形成するためのコーティング組成物である、請求項1または2に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性プラスチック基材の基材がポリエステル又はポリオレフィン基材である、請求項6に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の活性光線硬化型樹脂組成物により形成された脱離層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型樹脂組成物および脱離層に関する。
【0002】
近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて廃プラスチック発生抑制、及び高度リサイクルに向けた取り組みが盛んに検討されている。廃プラスチックのリサイクル方法としては、廃プラスチックを化学的に分解して化学製品の原料として再利用するケミカルリサイクルや、廃プラスチックを粉砕洗浄して再度プラスチック製品の原料として使用するマテリアルリサイクル等が挙げられる。
【0003】
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性プラスチックはその成型性、軽量、耐衝撃性、透明性等の特徴から包装材料として広く使用されている。またプラスチック包装材料は意匠性付与、情報記録を目的にインキなどにより印刷が施されることが多く、主に有機溶剤を使用したインクが用いられている。しかし、インキに含まれる有機溶剤は大気を汚染する物質として問題となっており、さらに印刷工程で揮発する有機溶剤の無害化処理に必要なエネルギー、及びCO発生量が大きいことから、無溶剤系、または水系インキへの置き換えが望まれている。
【0004】
一方で、プラスチック製品のリサイクル率の向上、及びリサイクル回数を増やすためにはプラスチック廃棄物自体の品質の向上が不可欠であり、リペレットなどの再生処理を行う前段階で、いかに汚れや不純物が混ざっていない高品質な廃プラスチック原料を得るかが重要となる。プラスチック基材に付着した印刷層はリサイクルの観点では不純物であり、印刷層が付着したプラスチック基材をそのまま再生処理すると、再生後のプラスチックの外観不良や機械強度の低下などの不具合を引き起こす場合があるため、再生処理を行う前処理としてプラスチック基材に付着した印刷層をアルカリ水溶液で除去する試みが行われてきた。インキ自体のアルカリ可溶性を向上させて脱墨性を向上させた場合、印刷層の耐久性、及び印刷層除去工程でのプラスチックの再染色、再汚染等が課題となる。そのため、プラスチック基材と印刷層の間にアルカリ水溶液処理によって除去可能な脱離層を設ける取り組みが行われている。
【0005】
たとえば、特許文献1ではアルカリ水溶液で処理することによりプラスチック基材の表面の印刷の除去に加え、ラミネート積層体における印刷層を除去する技術が提案されている。しかしながら、この技術では、脱離層を形成する工程で揮発する有機溶剤の無害化処理が必要となるという課題があった。
【0006】
特許文献2、特許文献3では、アルカリ処理によってプラスチック容器から印刷層やラベルの脱離を可能とする溶剤を含まない活性光線硬化性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、これら技術では、硬化物層上に印刷層を形成する際に印刷不良が発生したり、プラスチック基材との密着性が不十分であったり、アルカリ水溶液で処理した際のプラスチック基材からの印刷層および脱離層の脱離が不十分となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6638802号公報
【特許文献2】特許第6742879号公報
【特許文献3】特許第2999334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プラスチック基材から印刷層を容易に除去可能とする層(脱離層)を形成するための樹脂組成物に関するものであって、アルカリ水溶液処理によって容易にプラスチック基材から印刷層を分離することが可能で、印刷層の印刷性が良好、且つ基材への密着性が高い脱離層を形成するための無溶剤系活性光線硬化型樹脂剤組成物、及びその硬化物からなる脱離層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明を完成した。即ち、本発明は、下記(1)~(8)に関する。なお、本願において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。
(1)カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)、カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)、カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)を含有する活性光線硬化型樹脂組成物であって、活性光線硬化型樹脂組成物総量中、前記成分(A)の含有量は43重量%以上65重量%以下であり、前記成分(A)は2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(A-1)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸(A-2)、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸(A-3)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである、無溶剤系の活性光線硬化型樹脂組成物。
(2)前記成分(A)総量中、前記成分(A-1)~(A-3)の総含有量が50重量%以上100重量%以下である、前項(1)に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
(3)活性光線硬化型樹脂組成物総量中、前記成分(B)の含有量が18重量%以上45重量%以下であり、前記成分(C)の含有量が5重量%以上20重量%以下である、前項(1)または(2)に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
(4)前記成分(B)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、(2―メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、から選ばれる少なくとも1種を含有するものである前項(1)~(3)のいずれか一項に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
(5)電子線硬化性樹脂組成物である、前項(1)~(4)のいずれか一項に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
(6)熱可塑性プラスチック基材の脱離層を形成するためのコーティング組成物である、前項(1)~(5)のいずれか一項に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
(7)前記熱可塑性プラスチック基材の基材がポリエステル又はポリオレフィン基材である、前項(6)に記載の活性光線硬化型樹脂組成物。
(8)前項(6)または(7)に記載の活性光線硬化型樹脂組成物により形成された脱離層。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、アルカリ水溶液処理によって容易にプラスチック基材から印刷層を分離することが可能で、印刷性が良好、且つ基材への密着性が高い脱離層を形成するための無溶剤系活性光線硬化型樹脂剤組成物、及びその硬化物からなる脱離層を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においては、「(メタ)アクリレート」との用語は、アクリレートおよびメタクリレートのいずれか又は両方を指す用語である。また、「(メタ)アクリロイル基」との用語は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のいずれかまたは両方を指す用語である。例えば、「イソボルニル(メタ)アクリレート」との用語は、イソボルニルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレートのいずれか又は両方を指す。また、「硬化物」とは、樹脂組成物に活性光線を照射することにより硬化した、活性光線硬化型組成物の硬化物を指す。
【0012】
本発明においては、「無溶剤」との用語は、実質的に無溶剤であることを示す用語である。すなわち、本発明において、無溶剤系の活線光線硬化性樹脂組成物とは、活線光線樹脂組成物総量中の溶剤の含有量が2重量%未満である活線光線硬化性樹脂組成物を言い、活線光線硬化性組成物の配合成分の合成時、或いは組成物の調製時に用いた溶剤が残存していてもよいが、極力除去されていることが好ましく、実質的に溶剤を含まないことがより好ましい。
【0013】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)を含有する。カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)とは、1分子内にカルボキシ基を1個以上、好ましくは1~5個含有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個含有する化合物である。本発明の活性光線硬化型組成物総量中におけるカルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)の重量割合は43重量%以上65重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50重量%以上63質量%以下であり、特に好ましくは51重量%以上62質量%以下である。65質量%より多いと樹脂硬化物からなる脱離層への印刷適正が悪化する場合があり、43質量%より少ないとアルカリ水溶液処理時の脱離性が悪化する場合がある。
【0014】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)として、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(A-1)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸(A-2)、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸(A-3)から選ばれる少なくとも1種を含有する。カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)としては、成分(A-1)~(A-3)のいずれかを単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。また、成分(A-1)~(A-3)以外のカルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)を含んでもよい。成分(A)総量中の成分(A-1)~(A-3)の総含有量は50重量%以上100重量%以下であることが好ましく、75重量%以上100重量%以下であることが更に好ましく、100重量%であることが特に好ましい。成分(A)総量中の成分(A-1)~(A-3)の総含有量を50重量%以上100重量%以下とすることで、基材への密着性、耐ブロッキング性、印刷適正、アルカリ水溶液処理時の脱離性が良好な脱離層を形成可能な活性光線硬化型樹脂組成物を得ることができる。また、基材への密着性とアルカリ水溶液処理時の脱離性の観点から、カルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)として2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(A-1)を含有することが好ましい。
【0015】
成分(A-1)~(A-3)以外のカルボキシ基含有単官能(メタ)アクリレート(A)としては、特には限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0016】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)を含有する。カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)は、1分子内にカルボキシ基を有さず、且つ1分子内に環状の骨格を有し、さらに1分子内に(メタ)アクリロイル基を1個含有する化合物である。本発明の活性光線硬化型樹脂組成物総量中のカルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は10重量%以上57重量%未満であることが好ましく、さらに好ましくは18重量%以上45重量%以下であり、特に好ましくは23重量%以上40重量%以下である。57重量%よりも多いとアルカリ水溶液処理時の脱離性が悪化する恐れがあり、10重量%より少ないと基材への密着性不良、脱離層への印刷性低下、ポリオレフィン系基材からの脱離性低下の恐れがある。カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)は単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0017】
カルボキシ基を有しない環状骨格を持つ単官能(メタ)アクリレート(B)としては、特に限定されないが、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンカーボネートアクリレートなどが挙げられる。中でも、アルカリ水溶液処理時の脱離性の観点からイソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートが好ましく、基材への密着性とアルカリ水溶液処理時の脱離性の両立の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0018】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)を含有する。カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)は、1分子内にカルボキシ基を有さず、且つ1分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する化合物である。本発明の活性光線硬化型樹脂組成物総量中のカルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)の含有量は0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5重量%以上20重量%以下であり、特に好ましくは5重量%以上15重量%以下である。30重量%よりも多いと、基材への密着性不良やアルカリ水溶液処理時の脱離性が悪化する恐れがあり、0.1重量%よりも少ないと耐ブロッキング性不良や脱離層への印刷性低下の恐れがある。カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)は単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0019】
カルボキシ基を有しない2官能以上の(メタ)アクリレート(C)としては、特に限定されないが、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールC2~C10アルカントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールC2~C10アルカンポリアルコキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクロイルオキシエチル]イソシアヌレ-ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、基材への密着性や硬化膜の耐擦傷性、耐ブロッキング性付与の観点から、3官能(メタ)アクリレートが好ましく、3官能(メタ)アクリレートの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0020】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、前記の各成分に加え、必要に応じて成分(A)~(C)以外の(メタ)アクリレート(D)を含有することができる。成分(A)~(C)以外の成分を含有するときは、硬化物の特性を使用できない程度に低下させない物質が好ましい。
【0021】
成分(A)~(C)以外の(メタ)アクリレート(D)としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー等を含有してもよい。光重合性オリゴマーとしては、特に限定されないが、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0022】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは多価アルコール、ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
【0023】
多価アルコールとしては、例えば、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール、水添ポリイソプレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1、5-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール等の炭素数1~10のアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のトリオール、トリシクロデカンジメチロール、ビス-〔ヒドロキシメチル〕-シクロヘキサン等の環状骨格を有するアルコール等;及びこれら多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、多価アルコールとε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、ポリカーボネートポリオール(例えば1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)又はポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等)等が挙げられる。
【0024】
有機ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート又はジシクロペンタニルイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2~C4アルキル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0026】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、グリシジルエーテル型エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られたものであればいずれも使用できるが、好ましく使用されるエポキシ(メタ)アクリレートを得るためのグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールF或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、へキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げられる。
【0027】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて光重合開始剤(F)を含有してもよい。光重合開始剤(F)を含む場合、本発明の活性光線硬化型樹脂組成物総量中における光重合開始剤(F)の含有量は0.05重量%以上10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1重量%以上5重量%以下である。10重量%より多いと、樹脂硬化物層の透明性の悪化や、硬化物に含まれる開始剤分解物が他基材などに移行して基材や内容物を汚染してしまうおそれがある。0.05質量%より少ないと、硬化性、接着性が劣ってしまう。光重合開始剤は単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0028】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物に含有される光重合開始剤(F)としては、特に限定されないが、例えば、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(エサキュアONE;ランバルティ製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュアー2959;BASF製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(イルガキュアー127;BASF製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュアー651;BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(DAROCUR1173;BASF製)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(イルガキュアー907;BASF製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX-S:日本化薬社製)、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE01:BASF社製)、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステルとの混合物(イルガキュアー754:BASF製)等を挙げることができる。
【0029】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて酸化防止剤、チクソ性付与剤、消泡剤、表面張力調整剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、蛍光増白剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン化合物等)等の添加剤を加えてもよい。尚、溶剤については、本発明では活性光線硬化型樹脂組成物総量中、2重量%未満である。これは、溶剤を多量に含有すると、成膜工程にて有機溶剤の揮発及び無害化設備が必要となる上、硬化性に悪影響を与えるためである。ここで、溶剤は活性光線硬化型樹脂組成物総量中1重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましい。
【0030】
上記の各種添加剤を活性光線硬化型樹脂組成物に含有する場合、各種添加剤の活性光線硬化型樹脂組成物総量中における含有量は0.01重量%以上3重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01重量%以上1重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以上0.5重量%以下である。
【0031】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、上記各成分を常温~80℃で混合溶解して得ることができ、必要により夾雑物をろ過等の操作により取り除いてもよい。本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、25℃の粘度が1~10000mPa・sの範囲となるように、成分の配合比を適宜調節することが好ましい。さらに、基材への塗布性の観点から、25℃の粘度が1~6000mPa・sの範囲となるように成分の配合比を適宜調節することがより好ましく、25℃の粘度が1~300mPa・sの範囲であることがさらに好ましく、25℃の粘度が1~100mPa・sの範囲であることがより好ましい。粘度が10000mPa・sよりも高いと、基材への塗布性が悪くなる場合がある。
【0032】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物を基材に塗工する方法としては、特に限定されないが、シルクスクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、ローラーコーター方式、刷毛塗り方式、スプレー方式、ナイフジェットコーター方式、インクジェット印刷方式、パッド印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、ダイコーター方式、バーコーター方式、スピンコーター方式、コンマコーター方式、含浸コーター方式、ディスペンサー方式、メタルマスク方式等が挙げられる。
【0033】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物は、電子線(EB)や紫外線(UV)などの活性光線を照射することにより硬化することができる。活性光線の照射手段としては特に限定されないが、メタルハライド光源、高圧水銀光源、低圧水銀光源、UV-LED光源や電子線照射装置が挙げられる。硬化物の臭気や基材等への成分マイグレーションリスクを下げられるという観点からは、活性光線硬化型樹脂組成物に光重合開始剤を含有させず、且つ電子線(EB)の照射によって硬化することが好ましい。また、表面硬化性向上の観点から、窒素雰囲気下で活性光線を照射することが好ましい。
【0034】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる脱離層をプラスチック基材から脱離(除去)するには、アルカリ水溶液中に浸漬することが好ましい。プラスチック基材から脱離層ならびに印刷層を除去するための条件としては、アルカリ水溶液の濃度としては1~10重量%であることが好ましく、1~5重量%であることがなお好ましい。濃度が10重量%よりも高いと、プラスチック基材自体が加水分解などによるダメージが大きくなってしまう。1重量%よりも低いと、脱離に要する時間が長くなってしまったり、十分な脱離性が得られなくなってしまう恐れがある。浸漬温度は20~80℃が好ましく、より好ましくは30~60℃である。浸漬時間としては1分~24時間、更に好ましくは1分~12時間である。その後水洗・乾燥したときの印刷層の除去率は好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上である。また、効率向上のために循環式の洗い流し、印刷物または積層体の粉砕、撹拌、超音波などによる物理的刺激を加えてもよい。
【0035】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる脱離層をプラスチック基材に設けることにより、アルカリ水溶液中に浸漬することでプラスチック基材から印刷層等の不純物を除去することが可能となり、その後水洗・乾燥することより、リサイクルに適した高品質な再生プラスチック基材を得ることができる。
【0036】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物を適用できる基材としては、熱可塑性プラスチック基材が好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレートおよびポリ乳酸等のポリエステル基材、ポリカーボネート基材、ポリスチレン基材、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものが挙げられる。中でも、ポリオレフィン基材、ポリエステル基材が好ましい。また、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材などのシーラント用の基材であってもよい。
【0037】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよい。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0038】
複数の基材を積層し積層体を得る場合、必要に応じて接着剤層を設けてもよい。接着剤層としては特に限定されないが、アンカー剤層、溶融樹脂層、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層等が挙げられる。リサイクル性の観点から、アルカリ水溶液に浸漬することにより接着剤層が溶解、もしくは膨潤することにより接着剤層と接着剤層に隣接する基材とが脱離する接着剤層であることが好ましい。接着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、押出ラミネート法、ドライラミネート法等、ノンソルベントラミネート法などが挙げられる。環境対応の観点からはノンソルベントラミネート法が好ましい。
【0039】
本発明の活性光線硬化型樹脂組成物を硬化することで得られる脱離層が形成された基材およびその積層体の構成としては、特に限定されないが、たとえば以下の構成を挙げることができる。「基材/脱離層/基材」、「基材/脱離層/印刷層」、「基材/脱離層/接着剤層/基材」、「基材/脱離層/印刷層/接着剤層/基材」、「基材/脱離層/印刷層/接着剤層/脱離層/基材」、「基材/脱離層/接着剤層/脱離層/基材」、「基材/脱離層/印刷層/脱離層/基材」、「基材/脱離層/印刷層/脱離層/接着剤層/基材」、「基材/脱離層/印刷層/接着剤層/脱離層/基材」。
【0040】
印刷層の形成に使用される有色または無色(クリア)インキとしては、特に限定されないが、水系インキ、溶剤系インキ、UV硬化性インキ、電子線硬化性インキ等が挙げられる。印刷層の形成方法としては、特には限定されないが、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などの印刷法が挙げられる。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
【0042】
(活性光線硬化型樹脂組成物の調製)
表1、2に示す配合比率で80℃にて加熱混合し、実施例1~19及び比較例1~13の樹脂組成物を調製した。樹脂組成物作成に用いた各成分は表3に示す。また、得られた樹脂組成物の粘度をE型粘度計(TV-25:東機産業(株)製、測定コーン:1°34×R24、回転数20~1rpm)を用いて25℃で測定した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
得られた実施例1~19及び比較例1~13の組成物を用いて以下評価を行った。
【0047】
(工程A:脱離層付きPETフィルムの作成)
実施例1~19及び比較例1~13の樹脂組成物を、バーコーター#3を用いて東洋紡(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムE5102のコロナ処理面に塗工した。
実施例1~16及び比較例1~13の樹脂組成物の塗工面に、窒素雰囲下で高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cmで積算光量500mJ/cmの紫外線を照射し樹脂組成物を硬化させ、実施例1~16及び比較例1~13の樹脂組成物の硬化物からなる脱離層付きのPETフィルムを得た。また、実施例17~19の樹脂組成物に対しては浜松ホトニクス社製電子線(EB)照射装置を用いて加速電圧100kV、線量50kGyの電子線(EB)を照射し樹脂組成物を硬化させ、実施例17~19の樹脂組成物の硬化物からなる脱離層付きのPETフィルムを得た。
【0048】
(工程B:水性インキを用いた印刷物の作成)
工程Aにより得られた脱離層付きPETフィルムの脱離層に、特開2020-125382号の実施例1に記載の水性インキをバーコーター#3にて塗工し、70℃で3分間乾燥させ、「PET基材/脱離層/印刷層(水性インキ使用)」の印刷物を作成した。
【0049】
(工程C:油性インキを用いた印刷物の作成)
工程Aにより得られた脱離層付きPETフィルムの脱離層に三菱鉛筆(株)製PX-30(着色剤:カーボンブラック、主溶剤:キシレン)のインキをバーコーター#3にて塗工し、70℃で3分間乾燥させ、「PET基材/脱離層/印刷層(油性インキ使用)」の印刷物を作成した。
【0050】
(工程D:脱離層付きOPPフィルムの作成)
実施例1~19及び比較例1~13の樹脂組成物を、バーコーター#3を用いて東洋紡(株)製二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムP2102のコロナ処理面に塗工した。
実施例1~16及び比較例1~13の樹脂組成物の塗工面に、窒素雰囲下で高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)を用いて照射強度200mW/cmで積算光量500mJ/cmの紫外線を照射し樹脂組成物を硬化させ、実施例1~16及び比較例1~13の樹脂組成物の硬化物からなる脱離層付きのOPPフィルムを得た。また、実施例17~19の樹脂組成物に対しては浜松ホトニクス社製電子線(EB)照射装置を用いて加速電圧100kV、線量50kGyの電子線(EB)を照射し樹脂組成物を硬化させ、実施例17~19の樹脂組成物の硬化物からなる脱離層付きのOPPフィルムを得た。
【0051】
(工程E:水性インキを用いた印刷物の作成)
工程Dにより得られた脱離層付きOPPフィルムの脱離層に、特開2020-125382号の実施例1に記載の水性インキをバーコーター#3にて塗工し、70℃で3分間乾燥させ、「OPP基材/脱離層/印刷層(水性インキ使用)」の印刷物を作成した。
【0052】
(工程F:油性インキを用いた印刷物の作成)
工程Dにより得られた脱離層付きOPPフィルムの脱離層に三菱鉛筆(株)製PX-30(着色剤:カーボンブラック、主溶剤:キシレン)のインキをバーコーター#3にて塗工し、70℃で3分間乾燥させ、「OPP基材/脱離層/印刷層(油性インキ使用)」の印刷物を作成した。
【0053】
(基材密着性:PET密着性)
工程Aにより得られた脱離層付きPETフィルムの脱離層面にセロテープ(登録商標)を密着させた後に勢いよくはがし、剥がれの有無を確認した。接着面積に対して剥がれた面積の比率から、接着性を評価した。
〇:脱離層が全く剥がれなかった。
△:脱離層が剥がれる面積が20%未満であった。
×:脱離層が剥がれる面積が20%以上、80%未満であった。
××:脱離層が剥がれる面積が80%以上であった。
【0054】
(基材密着性:OPP密着性)
工程Dにより得られた脱離層付きOPPフィルムの脱離層面にセロテープ(登録商標)を密着させた後に勢いよくはがし、剥がれの有無を確認した。接着面積に対して剥がれた面積の比率から、接着性を評価した。
〇:脱離層が全く剥がれなかった。
△:脱離層が剥がれる面積が20%未満であった。
×:脱離層が剥がれる面積が20%以上であった。
××:脱離層が剥がれる面積が80%以上であった。
【0055】
(耐ブロッキング性)
工程Aにより得られた脱離層付きPETフィルムを5cm×5cmのサイズに切り出し、脱離層が向き合うように折り合わせ、500g/cmの荷重を加えながら40℃環境下に12時間静置したのち、荷重を取り除いた際の様子から耐ブロッキング性を評価した。結果を表2に示す。
〇:荷重を取り除いてから1分未満に折り合わされた面が分離した
△:荷重を取り除いてから10分未満に折り合わされた面が分離した
×:荷重を取り除いてから10分以上間折り合わされた面が密着していた
【0056】
(インキ印刷適正:水性インキ)
工程Bにより得られた印刷層の外観から脱離層の印刷適正を評価した。結果を表4、5に示す。
〇:外観不良が観察されなかった
×:ハジキ、面荒れ、光沢度の低下などの外観不良が観察された
【0057】
(インキ印刷適正:油性インキ)
工程Cにより得られた印刷層の外観から脱離層の印刷適正を評価した。結果を表4、5に示す。
〇:外観不良が観察されなかった
×:ハジキ、面荒れ、光沢度の低下などの外観不良が観察された
【0058】
(脱離性:PET基材・水性インキ)
工程Bにより得られた印刷物を、2cm×2cmに切り出し、2%の水酸化ナトリウム水溶液20gに浸し、120分間50℃にて静置し、基材からの脱離層及び印刷層の脱離性を評価した。すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離した時間と判定結果を、表4、5に示す。
尚、印刷層が脱離層から脱離しても基材に脱離層が残存していた場合は試験を継続し、すべての脱離層が基材から脱離するまでの時間を計測した。
〇:60分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
△:120分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
×:すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離しなかった。
【0059】
(脱離性:PET基材・油性インキ)
工程Cにより得られた印刷物を、2cm×2cmに切り出し、2%の水酸化ナトリウム水溶液20gに浸し、120分間50℃にて静置し、基材からの脱離層及び印刷層の脱離性を評価した。すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離した時間と判定結果を、表4、5に示す。
尚、印刷層が脱離層から脱離しても基材に脱離層が残存していた場合は試験を継続し、すべての脱離層が基材から脱離するまでの時間を計測した。
〇:60分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
△:120分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
×:すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離しなかった。
【0060】
(脱離性:OPP基材・水性インキ)
工程Eにより得られた印刷物を、2cm×2cmに切り出し、2%の水酸化ナトリウム水溶液20gに浸し、120分間50℃にて静置し、基材からの脱離層及び印刷層の脱離性を評価した。すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離した時間と判定結果を、表4、5に示す。
尚、印刷層が脱離層から脱離しても基材に脱離層が残存していた場合は試験を継続し、すべての脱離層が基材から脱離するまでの時間を計測した。
〇:60分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
△:120分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
×:すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離しなかった。
【0061】
(脱離性:OPP基材・油性インキ)
工程Fにより得られた印刷物を、2cm×2cmに切り出し、2%の水酸化ナトリウム水溶液20gに浸し、120分間50℃にて静置し、基材からの脱離層及び印刷層の脱離性を評価した。すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離した時間と判定結果を、表4、5に示す。
尚、印刷層が脱離層から脱離しても基材に脱離層が残存していた場合は試験を継続し、すべての脱離層が基材から脱離するまでの時間を計測した。
〇:60分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
△:120分以内にすべての脱離層と印刷層が基材から脱離した
×:すべての脱離層及び印刷層が基材から脱離しなかった。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】