(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172501
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ドア開閉制御システム、及び、ドア開閉制御方法
(51)【国際特許分類】
E05F 15/70 20150101AFI20231129BHJP
E05F 15/75 20150101ALI20231129BHJP
E05F 15/77 20150101ALI20231129BHJP
【FI】
E05F15/70
E05F15/75
E05F15/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084353
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】草川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】本田 亜紀子
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052BA01
2E052BA02
2E052BA04
2E052BA06
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA03
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA02
2E052GA03
2E052GA06
2E052GB12
2E052GB15
2E052GD07
2E052GD09
2E052GD11
(57)【要約】
【課題】ドアを手動操作しているユーザに遠隔制御の指示があったことを認識させることができるドア開閉制御システムを提供する。
【解決手段】ドア開閉制御システム10は、制御部21を備え、制御部21は、ドア80の手動での開閉を補助するためのアシスト制御中に無線通信部44によって遠隔制御情報が取得されると、アシスト制御及び遠隔制御のいずれとも異なる制御を行う、または、電動部22からドア80に与えられる動力を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを手動で開閉するために操作される第一操作部への操作に関する第一情報を取得する第一取得部と、
前記ドアを遠隔から開閉するために操作される第二操作部への操作に関する第二情報を取得する第二取得部と、
前記ドアを開閉するための動力を前記ドアに与える電動部と、
取得された前記第一情報に基づく前記電動部に対する駆動制御である、前記ドアの手動での開閉を補助するための第一制御と、取得された前記第二情報に基づく前記電動部に対する駆動制御である第二制御とを行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記第一制御中に前記第二取得部によって前記第二情報が取得されると、前記第一制御及び前記第二制御のいずれとも異なる第三制御を行う、または、前記電動部から前記ドアに与えられる動力を停止する
ドア開閉制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一制御中に前記第二取得部によって前記第二情報が取得されると、前記電動部から前記ドアに与えられる動力を徐々に減少させた後、前記動力を停止する
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一制御中に前記第二取得部によって前記第二情報が取得されると、前記電動部から前記ドアに与えられる動力を一定時間停止した後、前記第一制御を再開する
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一制御中に前記第二取得部によって前記第二情報が取得されると、前記第三制御を行い、
前記第三制御は、取得された前記第一情報に基づく前記電動部に対する駆動制御であって、前記ドアの手動での開閉を補助するための制御であり、
前記第三制御においては、前記第一制御よりも前記電動部の駆動速度または駆動トルクが小さい
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一制御中に前記第二取得部によって前記第二情報が取得されると、前記第三制御を行い、
前記第三制御は、取得された前記第二情報に基づく前記電動部に対する駆動制御であり、
前記第三制御においては、前記第二制御よりも前記電動部の駆動速度が小さい
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項6】
前記第一取得部は、前記第一情報として、前記ドアに設けられた前記第一操作部に加わる開方向または閉方向の第一操作力を取得し、
前記制御部は、
前記電動部に供給されるトルク電流及び励磁電流の少なくとも一方に基づいて負荷量を算出し、
前記電動部に含まれるモータの回転数に基づいて、前記ドアの位置、及び、前記ドアの移動速度を算出し、
取得された前記第一操作力、算出した前記負荷量、算出した前記ドアの位置、及び、算出した前記ドアの移動速度に基づいて、前記第一制御における制御値を算出する
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、算出した前記負荷量に基づいて、前記ドアの前記第一操作部以外の部分に加わる開方向または閉方向の第二操作力を算出し、
前記第一操作力及び前記第二操作力を合計した操作力、算出した前記負荷量、算出した前記ドアの位置、及び、算出した前記ドアの移動速度に基づいて、前記制御値を算出する
請求項6に記載のドア開閉制御システム。
【請求項8】
さらに、前記ドアを施錠または解錠する電動錠を備え、
前記制御部は、前記電動錠の施錠または解錠の状態に基づいて、前記電動部を制御するタイミングを決定する
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項9】
前記第一取得部は、前記第一情報として、前記ドアに設けられた前記第一操作部に加わる開方向または閉方向の操作力を取得する
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項10】
前記第一取得部は、前記第一情報として、前記ドアのドア枠に設けられた前記第一操作部に加わる開方向または閉方向の操作力を取得する
請求項1に記載のドア開閉制御システム。
【請求項11】
前記ドアは、スライドドアである
請求項1~10のいずれかに記載のドア開閉制御システム。
【請求項12】
前記ドアは、スイングドアである
請求項1~10のいずれかに記載のドア開閉制御システム。
【請求項13】
コンピュータによって実行されるドア開閉制御方法であって、
ドアを手動で開閉するために操作される第一操作部への操作に関する第一情報を取得する第一取得ステップと、
前記ドアを遠隔から開閉するために操作される第二操作部への操作に関する第二情報を取得する第二取得ステップと、
取得された前記第一情報に基づく、前記ドアの手動での開閉を補助するための第一制御中に前記第二情報が取得されると、前記第一制御及び取得された前記第二情報に基づく第二制御のいずれとも異なる第三制御を行う、または、前記ドアに与えられる動力を停止する制御ステップとを含む
ドア開閉制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載のドア開閉制御方法を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉制御システム、及び、ドア開閉制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアの開閉に関する様々な技術が提案されている。特許文献1には、電動スライドドアの駆動装置が開示されている。この駆動装置は、携帯式操作スイッチへの操作によりモータを駆動してスライドドアを自動的に開閉作動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ドアを手動操作しているユーザに、当該ドアの遠隔制御の指示があったことを認識させることができるドア開閉制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るドア開閉制御システムは、ドアを手動で開閉するために操作される第一操作部への操作に関する第一情報を取得する第一取得部と、前記ドアを遠隔から開閉するために操作される第二操作部への操作に関する第二情報を取得する第二取得部と、前記ドアを開閉するための動力を前記ドアに与える電動部と、取得された前記第一情報に基づく前記電動部に対する駆動制御である、前記ドアの手動での開閉を補助するための第一制御と、取得された前記第二情報に基づく前記電動部に対する駆動制御である第二制御とを行う制御部とを備え、前記制御部は、前記第一制御中に前記第二取得部によって前記第二情報が取得されると、前記第一制御及び前記第二制御のいずれとも異なる第三制御を行う、または、前記電動部から前記ドアに与えられる動力を停止する。
【0006】
本発明の一態様に係るドア開閉制御方法は、コンピュータによって実行されるドア開閉制御方法であって、ドアを手動で開閉するために操作される第一操作部への操作に関する第一情報を取得する第一取得ステップと、前記ドアを遠隔から開閉するために操作される第二操作部への操作に関する第二情報を取得する第二取得ステップと、取得された前記第一情報に基づく、ドアの手動での開閉を補助するための第一制御中に前記第二情報が取得されると、前記第一制御及び取得された前記第二情報に基づく第二制御のいずれとも異なる第三制御を行う、または、前記ドアに与えられる動力を停止する制御ステップとを含む。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、前記ドア開閉制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るドア開閉制御システムは、ドアを手動操作しているユーザに、当該ドアの遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るドア開閉制御システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ドアハンドルと操作力センサとの位置関係の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、アシスト制御のフローチャートである。
【
図4】
図4は、アシスト制御における、ドアの移動速度を決定するための関係式の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、遠隔制御における、ドアの位置とドアの移動速度との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、アシスト制御中に遠隔制御が指示されるシチュエーションの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例1のフローチャートである。
【
図9】
図9は、アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例2のフローチャートである。
【
図10】
図10は、アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例3のフローチャートである。
【
図11】
図11は、アシスト制御における制御値の算出例1を説明するための制御ブロック図である。
【
図12】
図12は、ドアの目標速度を制限するための関数の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、トルク電流及び励磁電流の波形と、負荷の種類との一例を示す図である。
【
図14】
図14は、ドアハンドル以外の部分に操作力が加わったときのトルク電流の波形を示す図である。
【
図15】
図15は、アシスト制御における制御値の算出例2を説明するための制御ブロック図である。
【
図16】
図16は、スイングドアに適用される駆動ユニット(変形例に係る駆動ユニット)の構成を示す図である。
【
図17】
図17は、ドア枠に設けられた第一操作部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0012】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係るドア開閉制御システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係るドア開閉制御システムの構成を示す図である。
図1においては、各構成要素の大まかな配置についても模式的に図示されている。
【0013】
図1に示されるように、実施の形態に係るドア開閉制御システム10は、ドア80に関する制御を行うシステムである。ドア80は、住宅などの建物に設置された、いわゆるスライドドアである。ドア80は、例えば、玄関ドアである。なお、ドア80が設置される建物、及び、ドア80の設置位置は特に限定されない。
【0014】
ドア開閉制御システム10は、具体的には、駆動ユニット20と、ドアハンドルユニット30と、電動錠ユニット40と、リモートコントローラ50とを備える。駆動ユニット20は、ドア枠の内部に設置され、ドアハンドルユニット30及び電動錠ユニット40は、ドア80に設置されている。なお、ドアハンドルユニット30は、ドア80の一方の主面(例えば、屋内側)及び他方の主面(例えば、屋外側)のそれぞれに設置される。つまり、ドアハンドルユニット30は、1つのドア80に2つ設置されるが、
図1では、1つのみ図示されている。
【0015】
まず、駆動ユニット20について説明する。駆動ユニット20は、制御部21と、電動部22とを備える。
【0016】
制御部21は、ドア80の開閉に関する制御(情報処理)を行う。制御部21は、例えば、モータ23を駆動するための専用の集積回路(IC:Integrated Circuit)であり、プロセッサ、メモリ、PWM(Pulse Width Modulation)回路、及び、3相インバータ回路などを含む。制御部21の機能は、例えば、プロセッサが、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0017】
電動部22は、ドア80を開閉するための動力をドア80に与える。電動部22は、モータ23と、駆動機構24とを含む。モータ23は、制御部21が出力する制御信号に基づいて、駆動機構24に含まれる駆動プーリを回転させる。
【0018】
駆動機構24は、例えば、減速機、駆動プーリ、従動プーリ、駆動プーリと従動プーリとにわたって巻掛けられたベルト、及び、ベルトとドア80とを連結するハンガーなどによって構成される。モータ23の回転に応じて駆動プーリが回転すると、ベルト及びハンガーを介してドア80へ動力が提供され、ドア80が開閉する。
【0019】
次に、ドアハンドルユニット30について説明する。ドアハンドルユニット30は、ドアハンドル31と、操作力センサ32と、認証部33とを備える。
【0020】
ドアハンドル31は、ドアハンドルの本体であり、ユーザが手動でドア80を開閉するために把持する部位である。ドアハンドル31は、第一操作部の一例である。ドアハンドル31は、例えば、上下方向に延在する長尺状の構造体である。
【0021】
操作力センサ32は、ユーザが手動でドア80を開閉するときにドアハンドル31に加わる、ドア80の開閉方向(スライドドアの場合左右方向)における操作力(荷重)を検出(取得)し、検出した操作力を示す操作力情報を制御部21へ出力する。操作力センサ32は、第一取得部の一例であり、操作力情報は、第一操作部への操作に関する第一情報の一例である。操作力センサ32は、例えば、圧電式のセンサであるが、ひずみゲージ式のセンサであってもよい。
図2は、操作力センサ32の設置例を示す図であり、言い換えれば、ドアハンドル31と操作力センサ32との位置関係の一例を示す図である。
【0022】
図2に示されるように、操作力センサ32は、例えば、ドアハンドル31の左右の両側であって、ドアハンドル31とドアハンドル31の保持部34との間に設けられる。これにより、操作力センサ32は、ユーザがドア80を開けようとするときの操作力、及び、ユーザがドア80を閉じようとするときの操作力を区別して検出することができる。
【0023】
認証部33は、カードキーまたは携帯端末などの認証媒体から認証情報を読み取り、読み取った認証情報を電動錠制御部41に出力する。認証部33は、例えば、認証媒体から認証情報を取得するための無線通信(具体的には、電波通信または光通信)を行う無線通信回路によって実現される。認証部33は、テンキーなどの認証情報(この場合、解錠コード等)を受け付けるユーザインターフェースであってもよい。また、認証部33は、ユーザから当該ユーザの生体認証情報を読み取る生体センサであってもよい。生体センサは、具体的には、指紋センサまたは虹彩センサなどである。
【0024】
次に、電動錠ユニット40について説明する。電動錠ユニット40は、電動錠制御部41と、電動錠42と、検知部43と、無線通信部44とを備える。
【0025】
電動錠制御部41は、認証部33によって読み取られた認証情報が正しい認証情報であるか否かを判定し、正しい認証情報であると判定した場合に電動錠42(ドア80)を施錠または解錠する。電動錠42を施錠するときには、検知部43によってドア80が閉じていることが検知されていることが施錠の要件となる。また、電動錠制御部41は、電動錠42(ドア80)の施錠状態(施錠されているか解錠されているか)、及び、ドア80の開閉状態を示す通知信号を制御部21へ出力する。
【0026】
電動錠制御部41は、プロセッサ及びメモリを含むマイクロコンピュータなどによって実現される。電動錠制御部41の機能は、例えば、プロセッサが、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0027】
電動錠42は、具体的には、デッドボルトと、モータと、電動モータの駆動力をデッドボルトに伝達する伝達機構とを有する。モータは、電動錠制御部41によって出力される駆動信号に基づいて駆動し、モータの駆動力が伝達機構を介してデッドボルトに伝達されることによって、デッドボルトが施錠位置または解錠位置に移動する。
【0028】
検知部43は、ドア80が閉じているか否か(開いているか否か)を検知するセンサである。検知部43は、具体的には、突起の出没に基づいてドア80が閉じているか否かを検知するセンサであるが、マグネット式のドアセンサまたは無線通信方式のドアセンサなどであってもよい。
【0029】
無線通信部44は、リモートコントローラ50から遠隔制御情報を受信する。無線通信部44は、例えば、リモートコントローラ50と電波通信を行う通信回路(通信モジュール)であるが、リモートコントローラ50と赤外線通信を行う通信回路(受光モジュール)であってもよい。なお、
図1では、無線通信部44は、電動錠制御部41(マイクロコンピュータ)に含まれるように図示されている。無線通信部44は、電動錠制御部41に含まれてもよいし、電動錠制御部41とは別体であってもよい。
【0030】
次に、リモートコントローラ50について説明する。リモートコントローラ50は、ドア80を遠隔から開閉するためにユーザによって操作されるリモートコントローラである。リモートコントローラ50は、第二操作部の一例である。リモートコントローラ50は、無線通信部51と、開ボタン52と、閉ボタン53とを備える。
【0031】
無線通信部51は、開ボタン52または閉ボタン53への操作に基づいて、遠隔制御情報を送信する。無線通信部51は、例えば、電波通信によって遠隔制御情報を送信する通信回路(通信モジュール)であるが、赤外線通信によって遠隔制御情報を送信する通信回路(通信モジュール)であってもよい。
【0032】
開ボタン52は、ユーザがドア80を開けたいときに操作されるボタンであり、閉ボタン53は、ユーザがドア80を閉じたいときに操作されるボタンである。なお、リモートコントローラ50には、ユーザがドアの開閉を即座に停止したいときに操作される停止ボタンが設けられてもよい。
【0033】
[アシスト制御]
ドア開閉制御システム10は、ドア80の手動での開閉を補助するためのアシスト制御を行うことができる。
図3は、アシスト制御のフローチャートである。アシスト制御は、第一制御の一例である。
【0034】
ユーザがドア80を開閉するためにドアハンドル31を操作すると、操作力センサ32は、ドアハンドル31に加わる操作力を検出する。言い換えれば、操作力センサ32は、ドアハンドル31に加わる操作力であってドア80の開閉方向における操作力を示す操作力情報を取得する(S11)。操作力情報は、ドアハンドル31への操作に関する情報である。
【0035】
制御部21は、操作力センサ32によって取得された操作力情報に基づいて、ドア80の移動速度を決定する(S12)。
図4は、アシスト制御における、ドア80の移動速度を決定するための関係式の一例を示す図である。
図4において実線で示されるように、アシスト制御におけるドア80の移動速度は、操作力情報が示す操作力(荷重)に応じて変更される。なお、後述のように、ドア80の移動速度はドア80の位置に応じて制限されるが、ここでは説明の簡略化のために移動速度の制限についての説明を省略する。
【0036】
次に、制御部21は、決定した移動速度でドア80を移動させるための制御信号を電動部22へ出力する(S13)。このとき、ドア80の移動方向は、ドアハンドル31に加わる操作力の方向に合わせられる。つまり、ユーザがドア80を開けようとするとドア80は開方向に移動し、ユーザがドア80を閉めようとするとドア80は閉方向に移動する。なお、本アシスト制御では、ユーザがドアハンドル31に操作力を加えている間、制御部21は、継続的に操作力情報をモニタすることでドア80の移動速度を適時に変更する。つまり、ステップS11~S13の処理は、ユーザがドアハンドル31に操作力を加えている間、複数回繰り返され、ユーザがドアハンドル31から手を離すとアシスト制御は停止する。
【0037】
このように、制御部21は、取得された操作力情報に基づく電動部22に対する駆動制御である、ドア80の手動での開閉を補助するためのアシスト制御を行うことができる。
【0038】
なお、ドア80が電動錠42によって施錠されているときには、ドアハンドル31に操作力が加わったとしてもアシスト制御は行われない。制御部21は、電動錠制御部41から取得したドア80の施錠状態を示す通知信号に基づいて、アシスト制御を行うか否かを決定することができる。つまり、制御部21は、電動錠42の施錠または解錠の状態に基づいて、電動部22を制御するタイミングを決定することができる。
【0039】
[遠隔制御]
ドア開閉制御システム10は、リモートコントローラ50へのユーザの操作に基づいて、ドア80の遠隔制御を行うことができる。
図5は、遠隔制御のフローチャートである。遠隔制御は、第二制御の一例である。
【0040】
ユーザがリモートコントローラ50の開ボタン52または閉ボタン53を操作すると、無線通信部51は遠隔制御情報を送信し、無線通信部44は遠隔制御情報を受信する。言い換えれば、無線通信部51は、遠隔制御情報を取得する(S21)。遠隔制御情報は、リモートコントローラ50への操作に関する情報であり、より詳細には、ドア80の開放または閉鎖を指示する情報である。
【0041】
制御部21は、無線通信部51によって取得された遠隔制御情報に基づいて、ドア80を移動させる(S22)。制御部21は、ドア80を移動させるための制御信号を電動部22へ出力することでドア80を移動させる。リモートコントローラ50の開ボタン52が操作されたときにはドア80は開方向に移動し、リモートコントローラ50の閉ボタン53が操作されたときにはドア80は閉方向に移動する。なお、遠隔制御においては、一度開ボタン52が操作されると、全開状態までドア80が移動し、一度閉ボタン53が操作されると、全閉状態までドア80が移動する。
【0042】
遠隔制御において、ドア80の移動速度は、ドア80の位置に応じて異なる。
図6は、遠隔制御における、ドア80の位置とドア80の移動速度との関係を示す図である。なお、ドア80の位置は、モータ23の回転数(回転量)に基づいて制御部21が管理している。モータの回転数は、例えば、ホール素子などによって計測されるが、モータ23において永久磁石と巻線との間に生じる電磁力に基づいてセンサレスに計測することもできる。
【0043】
このように、制御部21は、取得された遠隔制御情報に基づく電動部22に対する駆動制御である遠隔制御を行うことができる。
【0044】
なお、ドア80が電動錠42によって施錠されているときには、無線通信部44が遠隔制御情報を受信したとしても遠隔制御は行われない。制御部21は、電動錠制御部41から取得したドア80の施錠状態を示す通知信号に基づいて、遠隔制御を行うか否かを決定することができる。つまり、制御部21は、電動錠42の施錠または解錠の状態に基づいて、電動部22を制御するタイミングを決定することができる。
【0045】
[アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例1]
ところで、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得するようなシチュエーションが考えられる。
図7は、このようなシチュエーションの一例を示す図であり、
図7では、第一ユーザが手動でドア80を閉じようとしているとき(ドア80の閉方向へのアシスト制御が行われているとき)に、リモートコントローラ50を所持する第二ユーザによって開ボタン52が操作されたシチュエーションを示している。
【0046】
アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得した場合、アシスト制御を優先するか遠隔制御を優先するかについては検討の余地がある。以下、アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例1について説明する。
図8は、このような動作例1のフローチャートである。
【0047】
制御部21は、上述のアシスト制御を行い(S31)、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したか否かを判定する(S32)。制御部21は、無線通信部44が遠隔制御情報を取得していないと判定した場合には(S32でNo)、アシスト制御を継続する(S33)。一方、制御部21は、無線通信部44が遠隔制御情報を取得したと判定した場合には(S32でYes)、アシスト制御を停止する(S34)。つまり、制御部21は、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したことを契機に電動部22からドア80に与えられる動力を停止する。
【0048】
ステップS34において、制御部21は、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したことを契機に電動部22からドア80に与えられる動力を即座に停止してもよいし、電動部22からドア80に与えられる動力を徐々に減少させた後、当該動力を停止してもよい。また、制御部21は、アシスト制御中に無線通信部44によって遠隔制御情報が取得されると、電動部22からドア80に与えられる動力を一定時間停止した後、アシスト制御を再開してもよい。ここでの一定時間は、例えば、数秒程度の時間である。
【0049】
このように、ドア開閉制御システム10においては、アシスト制御中に遠隔制御が指示されたときに遠隔制御の指示を無効化せずに、アシスト制御を少なくとも一時的に停止する。これにより、ドア開閉制御システム10は、遠隔制御の指示があったことを、ドア80を手動操作しているユーザ(
図7の第一ユーザ)に認識させることができる。
【0050】
例えば、第一ユーザがドア80を開閉することが危険であることを第一ユーザが認識しておらず第二ユーザのみが認識しているような場合、第二ユーザは、開ボタン52または閉ボタン53への操作により、ドア80の開閉を停止することができる。また、子供のいたずら等または誤って開ボタン52または閉ボタン53が操作されたときに、第一ユーザは、アシスト制御が停止されることで、これを認識することができる。
【0051】
なお、上述のようにリモートコントローラ50にはドア80の移動を停止するための専用ボタンは設けられておらず、動作例1におけるアシスト制御の停止は、リモートコントローラ50に対してドア80を開ける意図または閉じる意図の操作が行われているにもかかわらずアシスト制御が停止される、という意味である。
【0052】
また、動作例1では、無線通信部44によって取得された遠隔制御情報が、ドア80を開けることを指示する遠隔制御情報であるか、ドア80を閉めることを指示する遠隔制御情報であるかに関わらず、アシスト制御が停止される。つまり、制御部21は、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向との整合性を考慮せずにアシスト制御を停止する。しかしながら、制御部21は、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向とが同じ場合にはアシスト制御を継続し、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向とが異なる場合にアシスト制御を停止してもよい。
【0053】
[アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例2]
次に、アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例2について説明する。
図9は、このような動作例2のフローチャートである。
【0054】
制御部21は、上述のアシスト制御を行い(S41)、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したか否かを判定する(S42)。制御部21は、無線通信部44が遠隔制御情報を取得していないと判定した場合には(S42でNo)、アシスト制御を継続する(S43)。一方、制御部21は、無線通信部44が遠隔制御情報を取得したと判定した場合には(S42でYes)、通常よりもアシスト力が小さいアシスト制御、または、通常よりもドア80の移動速度が遅いアシスト制御を行う(S44)。つまり、制御部21は、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したことを契機に通常のアシスト制御及び通常の遠隔制御のいずれとも異なる制御を行い、この制御は、通常のアシスト制御よりも電動部22(モータ23)の駆動速度または駆動トルクが小さいアシスト制御(以下、他のアシスト制御とも記載される)である。電動部22の駆動速度が小さい(遅い)他のアシスト制御におけるドア80の移動速度は、例えば、
図4の破線のようになる。なお、上述のように、
図4の実線は、通常のアシスト制御におけるドア80の移動速度を示している。
【0055】
このように、ドア開閉制御システム10においては、アシスト制御中に遠隔制御が指示されたときに遠隔制御の指示を無効化せずに、他のアシスト制御を行う。これにより、ドア開閉制御システム10は、遠隔制御の指示があったことを、ドア80を手動操作しているユーザ(
図7の第一ユーザ)に認識させることができる。
【0056】
また、動作例2では、無線通信部44によって取得された遠隔制御情報が、ドア80を開けることを指示する遠隔制御情報であるか、ドア80を閉めることを指示する遠隔制御情報であるかに関わらず、他のアシスト制御が行われる。つまり、制御部21は、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向との整合性を考慮せずに他のアシスト制御を行う。しかしながら、制御部21は、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向とが同じ場合には通常のアシスト制御を継続し、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向とが異なる場合に他のアシスト制御を行ってもよい。
【0057】
[アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例3]
次に、アシスト制御中に遠隔制御が指示された場合の動作例3について説明する。
図10は、このような動作例3のフローチャートである。
【0058】
制御部21は、上述のアシスト制御を行い(S51)、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したか否かを判定する(S52)。制御部21は、無線通信部44が遠隔制御情報を取得していないと判定した場合には(S52でNo)、アシスト制御を継続する(S53)。一方、制御部21は、無線通信部44が遠隔制御情報を取得したと判定した場合には(S52でYes)、通常よりもドア80の移動速度が遅い遠隔制御を行う(S54)。つまり、制御部21は、アシスト制御中に無線通信部44が遠隔制御情報を取得したことを契機に通常のアシスト制御及び通常の遠隔制御のいずれとも異なる制御を行い、この制御は、通常の遠隔制御よりも電動部22(モータ23)の駆動速度が遅い遠隔制御(以下、他の遠隔制御とも記載される)である。他の遠隔制御におけるドア80の移動速度は、例えば、
図6の破線のようになる。なお、上述のように、
図6の実線は、通常の遠隔制御におけるドア80の移動速度である。
【0059】
このように、ドア開閉制御システム10においては、アシスト制御中に遠隔制御が指示されたときに遠隔制御の指示を無効化せずに、他の遠隔制御を行う。これにより、ドア開閉制御システム10は、遠隔制御の指示があったことを、ドア80を手動操作しているユーザ(
図7の第一ユーザ)に認識させることができる。
【0060】
また、動作例3では、無線通信部44によって取得された遠隔制御情報が、ドア80を開けることを指示する遠隔制御情報であるか、ドア80を閉めることを指示する遠隔制御情報であるかに関わらず、他の遠隔制御が行われる。つまり、制御部21は、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向との整合性を考慮せずに他の遠隔制御を行う。しかしながら、制御部21は、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向とが同じ場合には通常のアシスト制御を継続し、アシスト制御におけるドア80の移動方向と、遠隔制御情報によって指示されるドアの移動方向とが異なる場合に他の遠隔制御を行ってもよい。
【0061】
[アシスト制御における制御値の算出例1]
次に、アシスト制御における制御値の算出例1について具体的に説明する。
図11は、アシスト制御における制御値の算出例1を説明するための制御ブロック図である。
【0062】
図11に示されるように、制御部21は、アシスト制御における制御値を算出するための構成要素として、目標決定部21aと、目標制限部21bと、第一算出部21cと、第二算出部21dと、速度PI制御部21eと、電流PI制御部21fと、電圧制限部21gと、負荷算出部21hとを備える。
【0063】
目標決定部21aは、操作力センサ32によって取得された操作力に基づいて、ドア80の目標速度(V
d_ref)を決定する。目標決定部21aは、具体的には、
図4の関係式(または
図4相当のテーブル情報)に基づいて、目標速度を決定する。なお、
図11においてドアの速度はV
d_valと記載されている。
【0064】
目標制限部21bは、現在のドア80の位置(X
d_val)に基づいて、ドア80の目標速度を制限し、さらに、ドア80の目標速度をモータ23の角速度(ω
ref)に変換する。
図12は、ドア80の目標速度を制限するための関数の一例を示す図であり、目標決定部21aによって決定された目標速度が、現在のドア80の位置によって定まる上限値を超える場合には、目標速度は上限値に制限される。なお、ドア80を開くときには
図12の横軸における右側が全開状態に相当する位置を示し、ドア80を閉じるときには
図12の横軸における右側が全閉状態に相当する位置を示す。
【0065】
なお、目標制限部21bは、ドア80の位置に代えてドア80の現在の移動速度に基づいて目標速度を制限してもよい。
【0066】
第一算出部21cは、モータ23の回転数に基づいて、現在のモータ23の角速度(ωval)を算出する。モータ23の回転数は、ホール素子によって検出されてもよいし、センサレスで検出されてもよい。
【0067】
第二算出部21dは、モータ23の回転数に基づいて、現在のドア80の位置、及び、現在のドア80の移動速度を算出する。第二算出部21dによって算出された現在のドア80の位置、及び、現在のドア80の移動速度は、目標制限部21bによる目標速度の制限に用いられる。
【0068】
速度PI制御部21e、及び、電流PI制御部21fは、モータ23の角速度の目標値と現在値の偏差(Δr
m)を低減するような、モータ23(より具体的には、3相インバータ回路)に供給される駆動電圧(V
ref)を算出する。つまり、速度PI制御部21e、及び、電流PI制御部21fは、アシスト制御における制御値を算出する。なお、
図11の例では、モータ23の制御にベクトル制御が採用されており、電流についてはトルク電流(I
qm)、及び、励磁電流(I
dm)に区別される。
【0069】
電圧制限部21gは、電源電圧(Vb)をPWM変調することにより、算出された駆動電圧(Vref)を生成し、モータ23(3相インバータ回路)に供給する。
【0070】
また、
図11の例では省略しているが、励磁電流は常にゼロ値を目標値としてPI制御され、電流PI制御部21fはトルク電流のみを入力することでアシスト制御における制御値を算出していてもよい。これにより、トルク電流を最大化することが可能となりモータの駆動効率を更に向上することができる。また、ドア80が障害物にぶつかるなどして衝撃が発生すると、駆動機構24を通じてモータ23を駆動するトルクに変動が生じる。そのような場合、励磁電流をゼロ値となるよう制御しておくことで、通常駆動のとき励磁電流はゼロ値を維持するように動作するが、ドア80に衝撃が加わったときには、励磁電流は正値もしくは負値に急峻な増減を伴った後に再びゼロ値へ戻る。
【0071】
負荷算出部21hは、モータ23に供給されるトルク電流及び励磁電流を検出し、検出したトルク電流及び励磁電流の少なくとも一方に基づいて、モータ23(ドア)に加わる負荷量を算出する。
図13は、トルク電流及び励磁電流の波形と、負荷の種類との一例を示す図である。
図13において、「駆動負荷」は、モータ23が駆動されるときの電流波形を示し、「衝撃」は、ドア80に衝撃が加わったときの電流波形を示し、「強風」は、ドア80に強風が吹きつけられたときの電流波形を示す。
【0072】
例えば、負荷算出部21hは、励磁電流の立ち上がりの傾き(dI/dt)に基づいて、モータ23に衝撃が加わっているか否か(負荷が衝撃に基づくものであるか通常の駆動負荷であるか)を判定する。また、負荷算出部21hは、モータ23に衝撃が加わっていると判定した場合に、励磁電流のピークレベルに基づいて、衝撃が大きい(負荷量が大きい)か否かを判定する。これにより、ドア開閉制御システム10は、ドアに大きい衝撃が加わったときにアシスト制御を停止する、といったことが可能となる。
【0073】
このように、制御部21は、電動部22に供給されるトルク電流及び励磁電流の少なくとも一方に基づいて負荷量を算出し、電動部22に含まれるモータ23の回転数に基づいて、ドア80の位置、及び、ドア80の移動速度を算出することができる。また、制御部21は、操作力センサ32によって取得された操作力情報、算出した負荷量、算出したドア80の位置、及び、算出したドア80の移動速度に基づいて、アシスト制御における制御値を算出することができる。
【0074】
また、負荷算出部21hは、算出した負荷量に基づいて、ドア80のドアハンドル31以外の部分に加わる操作力を算出することができる。
図14は、ドアハンドル31以外の部分に操作力が加わったときのトルク電流の波形を示す図である。なお、ドアハンドル31以外の部分とは、例えば、ドア80の本体部などの本来操作されるべきではない部分である。
【0075】
図14の(a)に示されるように、例えば、モータ23がドア80の開方向に駆動されているときに、ユーザがドア80のドアハンドル31以外の部分を把持してドア80を閉方向に押すと、モータ23はユーザが閉方向に押した操作力の分だけ駆動機構24を介して負荷を増やすことになり、トルク電流は例えばΔIqだけ増加する。また、
図14の(b)に示されるように、モータ23がドア80の開方向に駆動されているときに、モータ23はユーザが開方向にドア80のドアハンドル31以外の部分を把持してドア80を開方向に押すと、モータ23はユーザが開方向に押した操作力の分だけ駆動機構24を介して助勢され負荷を減らすことになり、トルク電流は例えばΔIqだけ減少する。
【0076】
そこで、負荷算出部21hは、トルク電流ΔIqを算出し、算出したΔIqを所定の関数fに代入することで、ドア80のドアハンドル31以外の部分に加わる操作力f(ΔIq)を算出することができる。
【0077】
そうすると、目標決定部21aは、操作力センサ32によって検出(取得)されたドアハンドル31に加わる第一操作力と、負荷算出部21hによって算出された第二操作力とを合計した操作力に基づいて目標値を決定する。第一操作力及び第二操作力は、いずれもドア80の開方向または閉方向における操作力である。これにより、ドア開閉制御システム10は、ドアハンドル31以外の部分に加わる操作力を考慮してアシスト制御を行うことができる。
【0078】
[アシスト制御における制御値の算出例2]
次に、アシスト制御における制御値の算出例2について具体的に説明する。
図15は、アシスト制御における制御値の算出例2を説明するための制御ブロック図である。
【0079】
図15に示されるように、算出例2において、制御部21は、アシスト制御における制御値を算出するための構成要素として、目標決定部21iと、第一算出部21jと、第二算出部21kと、加速度FF制御部21lと、速度P制御部21mと、電圧制限部21nとを備える。
【0080】
目標決定部21iは、操作力センサ32によって取得された操作力と、軽量、かつ、低摩擦の理想ドアモデルと、現在のドア80の位置と、現在のドア80の移動速度と、モータ23に流れる電流を用いてドア80の目標速度(ωref)と、ドア80の加速度(αref)とを決定する。現在のドア80の位置、及び、現在のドア80の移動速度は、第二算出部21kによって算出される。
【0081】
第一算出部21jは、現在のモータ23の回転数(ωval)を算出する。モータ23の回転数は、ホール素子によって検出されてもよいし、センサレスで検出されてもよい。
【0082】
第二算出部21kは、モータ23の回転数に基づいて、現在のドア80の位置(Xd_val)、及び、現在のドア80の移動速度(Vd_val)を算出する。
【0083】
加速度FF制御部21lは、目標決定部21iによって算出された加速度に基づいて、実際のドア80の重量及び摩擦で必要となるモータトルクを算出する。また、加速度FF制御部21lは、現在のモータ23の回転数で生じる逆起電力を算出する。加速度FF制御部21lは、算出したモータトルク、及び、逆起電力に基づいて駆動電圧を決定する。
【0084】
速度P制御部21mは、ドア80の目標速度と現在のドア80の移動速度との偏差(Δrm)に基づいて、加速度FF制御部21lによって決定された駆動電圧でモータ23を駆動したときの誤差を、速度比例制御によって補助的に低減する。
【0085】
電圧制限部21nは、電源電圧(Vb)をPWM変調することにより、駆動電圧(Vref)を生成し、モータ23(3相インバータ回路)に供給する。
【0086】
ドア開閉制御システム10は、以上のような算出例2を用いて、アシスト制御における制御値(駆動電圧)を算出することができる。
【0087】
なお、
図15(算出例2)では、
図11(算出例1)における負荷算出部21hに相当する構成要素の図示が省略されている。例えば、算出例2においては、目標決定部21iが負荷算出部21hと同様の処理を行えばよい。
【0088】
[駆動ユニットの変形例]
上記実施の形態では、ドア80は、スライドドアであったが、スイングドアであってもよい。
図16は、スイングドアに適用される駆動ユニット(変形例に係る駆動ユニット)の構成を示す図である。
【0089】
図16に示される駆動ユニット20aは、スイングドア80aに設置されている。駆動ユニット20aは、制御部21と、電動部22aとを備える。電動部22aは、モータ23aと、モータ23aの可動子の回転により開閉される開閉アーム24aとを含む。なお、
図16における操作力センサ32は、スイングドア80aの回動方向における操作力を検出(取得)する。
【0090】
ドア開閉制御システム10は、駆動ユニット20に代えて駆動ユニット20aを備えることにより、スイングドア80aに対してアシスト制御及び遠隔制御を行うことができる。また、ドア開閉制御システム10は、スイングドア80aに対して上記動作例1~動作例3を行うことができる。
【0091】
[第一操作部の変形例]
上実施の形態では、アシスト制御の目標速度の決定に、ドアハンドル31への操作力が用いられた。つまり、アシスト制御の目標速度の決定に、ドア80に設けられた第一操作部への操作力が用いられた。しかしながら、アシスト制御の目標速度の決定には、ドア枠に設けられた第一操作部への操作力が用いられてもよい。
図17は、ドア枠に設けられた第一操作部を示す図である。
【0092】
図17の例では、ドア枠81には、第一操作部及び第一取得部の別の一例であるタッチパネル82が設けられている。タッチパネル82は、左右方向(ドア80の開閉方向)に長い長尺状である。タッチパネル82は、例えば、静電容量式であり、ユーザのタッチパネル82へのスライド量(ストローク量)を操作力情報として検出(取得)することができる。例えば、ユーザがタッチパネル82に対してドア80の開方向へスライド操作を行うとドア80は開方向に移動し、スライド量が多いほどドア80の移動速度は大きくなる。同様に、ユーザがタッチパネル82に対してドア80の閉方向へスライド操作を行うとドア80は閉方向に移動し、スライド量が多いほどドア80の移動速度は大きくなる。
【0093】
ドア枠81に設けられる第一操作部は、タッチパネル82に限定されず、ドア枠81には、第一操作部として、ジョイスティック、または、ドアハンドル31と同様のハンドルなどが設けられてもよい。
【0094】
[効果等]
以下、本明細書の開示内容から得られる発明を例示し、当該発明から得られる効果等について説明する。
【0095】
発明1は、ドア80を手動で開閉するために操作される第一操作部への操作に関する第一情報を取得する第一取得部と、ドア80を遠隔から開閉するために操作される第二操作部への操作に関する第二情報を取得する第二取得部と、ドア80を開閉するための動力をドア80に与える電動部22と、取得された第一情報に基づく電動部22に対する駆動制御である、ドア80の手動での開閉を補助するための第一制御と、取得された第二情報に基づく電動部22に対する駆動制御である第二制御とを行う制御部21とを備える。制御部21は、第一制御中に無線通信部44によって第二情報が取得されると、第一制御及び第二制御のいずれとも異なる第三制御を行う、または、電動部22からドア80に与えられる動力を停止する、ドア開閉制御システム10である。
【0096】
第一操作部は、上記実施の形態のドアハンドル31またはタッチパネル82に相当し、第一情報は、上記実施の形態の操作力情報に相当し、第一取得部は、上記実施の形態の操作力センサ32またはタッチパネル82に相当し、第一制御は、上記実施の形態の通常のアシスト制御に相当する。第二操作部は、上記実施の形態のリモートコントローラ50に相当し、第二情報は、上記実施の形態の遠隔制御情報に相当し、第二取得部は、上記実施の形態の無線通信部44に相当する。第一制御は、上記実施の形態の通常のアシスト制御に相当し、第二制御は、上記実施の形態の通常の遠隔制御に相当する。
【0097】
このようなドア開閉制御システム10は、ドア80を手動操作しているユーザに、ドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0098】
発明2は、制御部21は、第一制御中に無線通信部44によって遠隔制御情報が取得されると、電動部22からドア80に与えられる動力を徐々に減少させた後、動力を停止する、発明1のドア開閉制御システム10である。
【0099】
このようなドア開閉制御システム10は、電動部22からドア80に与えられる動力を徐々に減少させた後、動力を停止することで、ドア80を手動操作しているユーザにドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0100】
発明3は、制御部21は、第一制御中に無線通信部44によって遠隔制御情報が取得されると、電動部22からドア80に与えられる動力を一定時間停止した後、第一制御を再開する、発明1のドア開閉制御システム10である。
【0101】
このようなドア開閉制御システム10は、一定時間停止した後、第一制御を再開することで、ドア80を手動操作しているユーザにドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0102】
発明4は、制御部21は、第一制御中に無線通信部44によって遠隔制御情報が取得されると、上記第三制御を行い、第三制御は、取得された第一情報に基づく電動部22に対する駆動制御であって、ドア80の手動での開閉を補助するための制御であり、第三制御においては、第一制御よりも電動部22の駆動速度または駆動トルクが小さい、発明1のドア開閉制御システム10である。この場合の第三制御は、上記実施の形態の他のアシスト制御に相当する。
【0103】
このようなドア開閉制御システム10は、第一制御に類似する第三制御を行うことで、ドア80を手動操作しているユーザにドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0104】
発明5は、制御部21は、第一制御中に無線通信部44によって遠隔制御情報が取得されると、第三制御を行い、第三制御は、取得された遠隔制御情報に基づく電動部22に対する駆動制御であり、第三制御においては、第二制御よりも電動部22の駆動速度が小さい、発明1のドア開閉制御システム10である。この場合の第三制御は、上記実施の形態の他の遠隔制御に相当する。
【0105】
このようなドア開閉制御システム10は、第二制御に類似する第三制御を行うことで、ドア80を手動操作しているユーザにドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0106】
発明6は、操作力センサ32は、第一情報として、ドア80に設けられたドアハンドル31に加わる開方向または閉方向の第一操作力を取得する。制御部21は、電動部22に供給されるトルク電流及び励磁電流の少なくとも一方に基づいて負荷量を算出し、電動部22に含まれるモータ23の回転数に基づいて、ドア80の位置、及び、ドア80の移動速度を算出し、取得された第一操作力、算出した負荷量、算出したドア80の位置、及び、算出したドア80の移動速度に基づいて、第一制御における制御値を算出する、発明1~5のいずれかのドア開閉制御システム10である。
【0107】
このようなドア開閉制御システム10は、ユーザのドア80に対する開方向または閉方向の第一操作力を考慮して第一制御を行うことができる。
【0108】
発明7は、制御部21は、算出した負荷量に基づいて、ドア80のドアハンドル31以外の部分に加わる開方向または閉方向の第二操作力を算出する。制御部21は、第一操作力及び第二操作力を合計した操作力、算出した負荷量、算出したドア80の位置、及び、算出したドア80の移動速度に基づいて、第一制御における制御値を算出する、発明6のドア開閉制御システム10である。
【0109】
このようなドア開閉制御システム10は、第一操作部以外の部分に加わる操作力を考慮して第一制御を行うことができる。
【0110】
発明8は、さらに、ドア80を施錠または解錠する電動錠42を備え、制御部21は、電動錠42の施錠または解錠の状態に基づいて、電動部22を制御するタイミングを決定する、発明1~7のいずれかのドア開閉制御システム10である。
【0111】
このようなドア開閉制御システム10は、電動錠42の施錠または解錠の状態に基づいて第一制御または第二制御の実行可否を判断することができる。
【0112】
発明9は、例えば、第一取得部は、第一情報として、ドア80に設けられた第一操作部に加わる開方向または閉方向の操作力を取得する、発明1~8のいずれかのドア開閉制御システム10である。
【0113】
このようなドア開閉制御システム10は、ドア80に設けられた第一操作部を手動操作しているユーザにドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0114】
発明10は、第一取得部は、第一情報として、ドア80のドア枠81に設けられた第一操作部に加わる開方向または閉方向の操作力を取得する、発明1~8のいずれかのドア開閉制御システム10である。
【0115】
このようなドア開閉制御システム10は、ドア枠81に設けられた第一操作部を手動操作しているユーザにドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0116】
発明11は、ドア80は、スライドドアである、発明1~10のいずれかのドア開閉制御システム10である。
【0117】
このようなドア開閉制御システム10は、スライドドアの開閉を制御することができる。
【0118】
発明12は、ドア80は、スイングドア(スイングドア80a)である、発明1~10のいずれかのドア開閉制御システム10である。
【0119】
このようなドア開閉制御システム10は、スイングドアの開閉を制御することができる。
【0120】
発明13は、ドア開閉制御システム10などのコンピュータによって実行されるドア開閉制御方法である。ドア開閉制御方法は、ドア80を手動で開閉するために操作される第一操作部への操作に関する第一情報を取得する第一取得ステップと、ドア80を遠隔から開閉するために操作される第二操作部への操作に関する第二情報を取得する第二取得ステップと、取得された第一情報に基づく、ドア80の手動での開閉を補助するための第一制御中に第二情報が取得されると、第一制御及び取得された第二情報に基づく第二制御のいずれとも異なる第三制御を行う、または、ドア80に与えられる動力を停止する制御ステップとを含む。
【0121】
このようなドア開閉制御方法は、ドア80を手動操作しているユーザに、ドア80の遠隔制御の指示があったことを認識させることができる。
【0122】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0123】
例えば、上記実施の形態では、ドア開閉制御システムは、複数の装置によって実現された。ドア開閉制御システムが複数の装置によって実現される場合、ドア開閉制御システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。また、ドア開閉制御システムは、単一の装置によって実現されてもよい。例えば、ドア開閉制御システムは、駆動ユニットに相当する単一の装置として実現されてもよい。
【0124】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0125】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0126】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0127】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0128】
例えば、本発明は、上記実施の形態のドア開閉制御システムなどのコンピュータが実行するドア開閉制御方法として実現されてもよい。また、本発明は、ドア開閉制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0129】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
10 ドア開閉制御システム
21 制御部
22、22a 電動部
23、23a モータ
24 駆動機構
24a 開閉アーム(駆動機構)
31 ドアハンドル(第一操作部)
32 操作力センサ(第一取得部)
42 電動錠
44 無線通信部(第二取得部)
50 リモートコントローラ(第二操作部)
80 ドア(スライドドア)
80a スイングドア
81 ドア枠
82 タッチパネル(第一操作部、第一取得部)