IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2023-172502可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム
<>
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図1
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図2
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図3
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図4
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図5
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図6
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図7
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図8
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図9
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図10
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図11
  • 特開-可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172502
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/46 20060101AFI20231129BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20231129BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231129BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20231129BHJP
【FI】
B29C45/46
B29C45/76
B33Y30/00
B29C64/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084354
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渕井 理司
【テーマコード(参考)】
4F206
4F213
【Fターム(参考)】
4F206AP10
4F206AP16
4F206AR08
4F206AR09
4F206AR14
4F206JA07
4F206JD05
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN03
4F206JP01
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL74
(57)【要約】
【課題】ホッパー内の材料の姿勢によらずにホッパー内の材料の粘度に関する値を正確に計測できる可塑化装置を提供する。
【解決手段】可塑化装置は、ペレット状の材料を貯留する材料貯留部と、材料貯留部から供給された材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、可塑化材料を外部に射出するノズルと、材料貯留部内の異なる位置に存在する材料の粘度に関する値を材料に接触することなく計測し、材料貯留部内の材料の粘度に関する値の代表値を求める、粘度計測部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット状の材料を貯留する材料貯留部と、
前記材料貯留部から供給された前記材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、
前記可塑化材料を外部に射出するノズルと、
前記材料貯留部内の異なる位置に存在する前記材料の粘度に関する値を前記材料に接触することなく計測し、前記材料貯留部内の前記材料の粘度に関する値の代表値を求める、粘度計測部と、を備える、
可塑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記粘度計測部は、前記材料貯留部内の異なる位置に存在する前記材料の粘度に関する値を光学的に計測する、
可塑化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記材料が前記材料貯留部に貯留されている時間を計測する貯留時間計測部を備える、
可塑化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記材料が可塑化された際に発生するガスを検出するガス検出部を備える、
可塑化装置。
【請求項5】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記材料貯留部から前記可塑化部へ供給される前記材料の量を調節する供給調節部と、
制御部と、を備え、
前記可塑化部は、
溝が形成された溝形成面を有し、回転するフラットスクリューと、
前記溝形成面と対向する対向面を有し、前記ノズルに連通する連通孔が前記対向面に形成されたバレルと、
前記フラットスクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、を有し、
前記制御部は、
前記フラットスクリューの回転速度を遅くした場合、前記供給調節部を制御して単位時間当たりに前記材料貯留部から前記可塑化部へ供給される前記材料の量を減少させる、
可塑化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記粘度計測部において計測された前記材料の前記粘度に関する値が、予め定められた閾値を下回っているかを判定する判定部を備える、
可塑化装置。
【請求項7】
請求項6に記載の可塑化装置であって、
制御部を備え、
前記可塑化部は、
溝が形成された溝形成面を有し、回転するフラットスクリューと、
前記溝形成面と対向する対向面を有し、前記ノズルに連通する連通孔が前記対向面に形成されたバレルと、
前記フラットスクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、を有し、
前記制御部は、
前記判定部において前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値を下回っていると判定された場合、
前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値以上の場合と比べて、前記フラットスクリューの回転速度を速くする、または、前記バレルの温度を高くする、
可塑化装置。
【請求項8】
請求項6に記載の可塑化装置であって、
前記可塑化材料が流れる流路と、
前記流路に接続された吸引送出シリンダーと、
前記吸引送出シリンダー内に移動可能に設けられ、前記可塑化材料を前記吸引送出シリンダー内に吸引、または、前記吸引送出シリンダー内に吸引した前記可塑化材料を前記ノズルに向けて送出する、プランジャーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記判定部において前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値を下回っていると判定された場合、
前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値以上の場合と比べて、前記プランジャーの射出速度を速くする、
可塑化装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記ノズルから射出された前記可塑化材料が注入される成形型が配置される型締装置と、を備える、
射出成形システム。
【請求項10】
請求項9に記載の射出成形システムであって、
前記成形型に前記可塑化材料が注入されることにより成形された成形品の品質を検査する検査装置と、
前記検査装置による前記成形品の検査結果と、前記成形品の成形に使用された前記材料の前記粘度に関する値と、を対応付けて記憶する記憶部と、を備える、
射出成形システム。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の可塑化装置と、
前記ノズルから射出された前記可塑化材料が堆積される造形面を有する造形ステージと、を備える、
三次元造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可塑化装置、射出成形システム及び三次元造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貯留ホッパー内に設けられた物性センサーにより貯留ホッパー内の粉粒体の物性データを計測し、粉粒体の物性データが良好と判定された場合に粉粒体を成形機に供給する、粉粒体供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-240246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホッパー内のペレット状の材料の物性データを材料に接触することなく計測する場合、ホッパー内の材料の姿勢によって、材料の粘度に関する値である含水率や温度を正確に計測することが難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、ペレット状の材料を貯留する材料貯留部と、前記材料貯留部から供給された前記材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、前記可塑化材料を外部に射出するノズルと、前記材料貯留部内の異なる位置に存在する前記材料の粘度に関する値を前記材料に接触することなく計測し、前記材料貯留部内の前記材料の粘度に関する値の代表値を求める、粘度計測部と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、射出成形システムが提供される。この射出成形システムは、前記可塑化装置と、前記ノズルから射出された前記可塑化材料が注入される成形型が配置される型締装置と、を備える。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、三次元造形システムが提供される。この三次元造形システムは、前記可塑化装置と、前記ノズルから射出された前記可塑化材料が堆積される造形面を有する造形ステージと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における射出成形システムの概略構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態における射出成形システムの概略構成を示す斜視図である。
図3】供給調節部の概略構成を示す断面図である。
図4】供給調節部の概略構成を示す断面図である。
図5】可塑化部の概略構成を示す断面図である。
図6】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図である。
図7】バレルの概略平面図である。
図8】材料の含水率と反射光強度の関係を示す検量線である。
図9】第1実施形態における射出成形システムによる成形品の製造工程を説明する工程図である。
図10】第2実施形態における射出成形システムの概略構成を示す斜視図である。
図11】第2実施形態における射出成形システムによる成形品の製造工程を説明する工程図である。
図12】第5実施形態における三次元造形システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態における、射出成形システム100の概略構成を示す説明図である。図2は、本実施形態における、射出成形システム100の概略構成を示す斜視図である。図1および図2には、互いに直交するX,Y,Z方向を表す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向である。Z方向は、鉛直方向に平行な方向である。図1および図2におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を指し示している。向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。
【0010】
射出成形システム100は、可塑化装置10と、型締装置20と、検査装置30と、を備える。射出成形システム100は、可塑化装置10によって生成された可塑化材料を、型締装置20に配置された成形型21に射出することで、成形品を成形する。可塑化装置10と型締装置20は、可塑化装置10が備える制御部180によって動作が制御される。検査装置30は、成形型21に可塑化材料が注入されることにより成形された成形品の品質を検査する。
【0011】
型締装置20は、固定部24と、型駆動部25と、ボールネジ26と、を備える。
【0012】
成形型21は、固定型22と可動型23から構成される。固定型22は、可塑化装置10に取り付けられている。可動型23は、固定部24に取り付けられている。可動型23は、型締装置20により固定型22に対して型締め方向に進退可能に設けられている。ここで、型締め方向は-Y方向である。可塑化装置10によって生成された可塑化材料は、固定型22と可動型23によって区画されるキャビティーに射出される。成形型21は、金属製でもよいし、樹脂製でもよいし、セラミック製でもよい。金属製の成形型21を金型とも呼ぶ。
【0013】
型駆動部25は、モーターやギア等によって構成され、ボールネジ26を介して可動型23に接続されている。型駆動部25は、制御部180の制御下で駆動される。ボールネジ26は、型駆動部25の駆動による動力を可動型23に伝達する。型締装置20は、型駆動部25およびボールネジ26によって可動型23を移動させることにより、可動型23を固定型22に対して移動させて成形型21を開閉させる。
【0014】
可塑化装置10は、材料貯留部110と、粘度計測部120と、貯留時間計測部130と、供給調節部140と、可塑化部150と、ノズル160と、ガス検出部170と、制御部180と、を備える。
【0015】
材料貯留部110は、ペレット状の成形品の材料を貯留する。材料貯留部110は、赤外線を透過する素材から形成されていることが好ましい。成形品の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)などの熱可塑性樹脂が用いられる。材料貯留部110を、ホッパーとも呼ぶ。
【0016】
粘度計測部120は、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の粘度に関する値を、材料に接触することなく計測し、材料貯留部110内の材料の粘度に関する値の代表値を求める。本実施形態において、材料の粘度に関する値は、材料の含水率である。本実施形態では、代表値として平均値を求める。粘度計測部120は、材料貯留部110の外周に設けられている。粘度計測部120の詳細については後述する。
【0017】
貯留時間計測部130は、材料が材料貯留部110に貯留されている時間を計測する。貯留時間計測部130は、例えば、時間を計測するタイマーである。材料が材料貯留部110に貯留されている時間は、例えば、材料が材料貯留部110に供給された際に、タイマーによる時間の計測をユーザーが開始することによって計測される。
【0018】
供給調節部140は、材料貯留部110の-Z方向側に設けられている。供給調節部140は、材料貯留部110から可塑化部150へ供給される材料の量を調節する。供給調節部140の詳細については後述する。
【0019】
可塑化部150は、材料貯留部110から供給された材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する。本明細書において「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。可塑化部150の詳細については後述する。
【0020】
ノズル160は、可塑化部150において生成された可塑化材料を外部に射出する。本実施形態では、ノズル160は、可塑化部150において生成された可塑化材料を成形型21のキャビティーに射出する。
【0021】
ガス検出部170は、可塑化部150で材料が可塑化された際に発生するガスを検出する。ガス検出部170は、例えば、検出対象となるガスを検出して、検出対象となるガスの存在を報知するガス検出器である。ガス検出部170は、可塑化部150から材料貯留部110へ逆流するガスを検出する。
【0022】
制御部180は、CPU181と記憶部186を備えるコンピューターによって構成されている。CPU181は、1つ又は複数のプロセッサーおよび主記憶装置を備えている。記憶部186は、ハードディスクドライブなどの補助記憶装置により構成される。なお、制御部180は、回路によって構成されていてもよい。
【0023】
CPU181は、判定部182を備える。判定部182は、CPU181が記憶部186に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
【0024】
判定部182は、粘度計測部120において計測された材料の粘度に関する値を取得し、粘度計測部120において計測された材料の粘度に関する値が予め定められた閾値を下回っているかを判定する。
【0025】
記憶部186には、材料の粘度に関する値の予め定められた閾値が予め記憶されている。本実施形態において、材料の粘度に関する値の予め定められた閾値とは、材料の含水率の上限閾値である。また、記憶部186は、検査装置30による成形品の検査結果と、成形品の成形に使用された材料の粘度に関する値を、対応付けて記憶する。
【0026】
制御部180には、検査装置30と、表示部510と、報知部520が接続されている。制御部180は、材料が材料貯留部110に貯留されている時間を貯留時間計測部130から取得し、材料が材料貯留部110に貯留されている時間を表示部510に表示する。また、制御部180は、ガス検出部170でガスが検出された場合、報知部520を動作させる。報知部520は、例えば、アラームである。
【0027】
図3および図4は、供給調節部140の概略構成を示す断面図である。供給調節部140は、ガイドケース210と、接続路220と、材料切出板230と、エアーシリンダー240と、ピストンロッド250と、第1空気圧ポート260と、第2空気圧ポート270と、を備える。
【0028】
ガイドケース210は、内部に空洞を有する略直方体形状の部材である。ガイドケース210は、材料入口211と、材料出口212を備える。材料入口211は、材料貯留部110とガイドケース210を連通させるように、ガイドケース210の上面に設けられた穴である。材料出口212は、ガイドケース210と接続路220を連通させるように、ガイドケース210の下面に設けられた穴である。
【0029】
接続路220は、ガイドケース210と可塑化部150を接続する、内部に空洞を有する部材である。
【0030】
材料切出板230は、ガイドケース210の内部に設けられた板状の部材である。材料切出板230は、Z方向に形成された穴である切出穴231を有する。
【0031】
エアーシリンダー240は、ガイドケース210の-Z方向側に設けられている。エアーシリンダー240は、内部に空洞を有する略円柱形状の部材である。
【0032】
ピストンロッド250は、その一部がエアーシリンダー240の内部に設けられており、その一端が材料切出板230に固定されている。ピストンロッド250は、仕切板251を有する。仕切板251は、ピストンロッド250の、エアーシリンダー240の内部に位置する部分の外周に設けられた、円盤形状の部材である。仕切板251は、エアーシリンダー240の内部の空間を、X方向に2つの空間に区切る。
【0033】
第1空気圧ポート260および第2空気圧ポート270は、エアーシリンダー240の-Z方向側に設けられている。第1空気圧ポート260は、仕切板251よりも+X方向側に設けられており、第2空気圧ポート270は、仕切板251よりも-X方向側に設けられている。第1空気圧ポート260および第2空気圧ポート270は、それぞれ、図示しない電磁弁を介して、圧縮空気を供給する配管に接続されている。制御部180が電磁弁を開閉することにより、第1空気圧ポート260または第2空気圧ポート270を介して、エアーシリンダー240の内部に圧縮空気が供給される。
【0034】
第1空気圧ポート260を介してエアーシリンダー240の内部に圧縮空気が供給された場合、ピストンロッド250は、-X方向に移動する。このとき、材料切出板230は、ピストンロッド250と連動して-X方向に移動する。第2空気圧ポート270を介してエアーシリンダー240の内部に圧縮空気が供給された場合、ピストンロッド250は、+X方向に移動する。このとき、材料切出板230は、ピストンロッド250と連動して+X方向に移動する。図3は材料切出板230が-X方向に移動した場合を、図4は材料切出板230が+X方向に移動した場合を示している。以上で説明したようにして、材料切出板230がガイドケース210の内部でX方向に往復移動する。
【0035】
材料切出板230が-X方向に移動すると、材料貯留部110と接続路220が切出穴231を介して連通する。材料切出板230が+X方向に移動すると、材料貯留部110と接続路220は、連通しないように材料切出板230によって閉鎖される。したがって、材料切出板230が-X方向に移動し、その後+X方向に移動することによって、材料貯留部110に貯留された材料の一部が接続路220へ投入される。接続路220へ投入される材料の量は、制御部180が材料切出板230のX方向に往復移動する回数を制御することによって制御される。
【0036】
図5は、可塑化部150の概略構成を示す断面図である。可塑化部150は、フラットスクリュー310と、バレル320と、加熱部330と、吸引送出部340と、を備える。
【0037】
フラットスクリュー310は、スクリューケース311とバレル320によって囲まれた空間に収納されている。フラットスクリュー310は、駆動軸312に接続されている。フラットスクリュー310は、駆動モーター313が駆動軸312に駆動力を与えることによって、駆動軸312と一体として回転する。フラットスクリュー310の回転軸RXは、駆動軸312の軸線と一致する。フラットスクリュー310の回転軸RXの軸線方向は、Y方向に沿う方向である。フラットスクリュー310の回転速度は、制御部180が駆動モーター313の回転速度を制御することによって制御される。なお、フラットスクリュー310は、減速機を介して駆動モーター313によって駆動されてもよい。フラットスクリュー310は、ローター、あるいは、スクリューとも呼ばれる。
【0038】
バレル320は、フラットスクリュー310の+Y方向側に設置されている。バレル320は、バレルケース321とフラットスクリュー310によって囲まれた空間に収納されている。バレル320の中心には、連通孔322が形成されている。連通孔322は、流路323に連通している。流路323には、後述する吸引送出シリンダー341およびノズル160が接続されている。流路323内には、吸引送出シリンダー341よりも上流側に逆止弁324が設けられている。逆止弁324は、ノズル160側からフラットスクリュー310側への可塑化材料の逆流を防止する。
【0039】
加熱部330は、バレル320の内部に設けられている。加熱部330は、バレル320および吸引送出シリンダー341を加熱する。加熱部330の温度は、制御部180によって制御される。加熱部330は、例えば、ヒーターである。
【0040】
図6は、フラットスクリュー310の概略構成を示す斜視図である。フラットスクリュー310は、回転軸RXに沿った方向における長さが回転軸RXに垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー310の、バレル320に対向する溝形成面315には、中央部316を中心に、渦状の溝317が形成されている。溝317は、フラットスクリュー310の側面に形成された材料投入口314に連通している。供給調節部140の接続路220から供給される材料は、材料投入口314を通じて溝317に供給される。溝317は、凸条部318によって隔てられることにより形成されている。図6には、溝317が3本形成されている例を示しているが、溝317の数は、1本でもよいし、2本以上であってもよい。なお、溝317は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部316から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0041】
図7は、バレル320の概略平面図である。バレル320は、駆動軸312に沿った方向において、フラットスクリュー310の溝形成面315に対向する対向面325を有している。対向面325の中央には、流路323に連通する連通孔322が形成されている。対向面325には、連通孔322に接続され、連通孔322から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝326が形成されている。なお、バレル320には案内溝326は設けられていなくてもよい。また、案内溝326は、連通孔322に接続されていなくてもよい。
【0042】
フラットスクリュー310の溝317に供給された材料は、フラットスクリュー310の回転と加熱部330の加熱とによって、フラットスクリュー310とバレル320との間において可塑化されながら、フラットスクリュー310の回転によって溝317及び案内溝326に沿って流動し、フラットスクリュー310の中央部316へと導かれる。中央部316に流入した材料は、バレル320の中心に設けられた連通孔322に流出する。
【0043】
図5に示すように、吸引送出部340は、吸引送出シリンダー341と、プランジャー342と、プランジャー駆動部343と、を備える。吸引送出部340は、吸引送出シリンダー341内の可塑化材料を、成形型21のキャビティーに射出注入する機能を有する。吸引送出シリンダー341は、流路323に接続された円筒形状の部材である。プランジャー342は、その一部が吸引送出シリンダー341の内部に設けられた、略円柱形状の部材である。プランジャー342は、吸引送出シリンダー341の内部を流路323から離れる方向に移動して、吸引送出シリンダー341内に可塑化材料を吸引して計量する。その後、プランジャー342は、吸引送出シリンダー341の内部を流路323に近づく方向に移動して、流路323に可塑化材料を送出する。流路323に送出された可塑化材料は、ノズル160に圧送され、ノズル160から成形型21のキャビティーに射出される。プランジャー342は、モーターによって構成されるプランジャー駆動部343によって駆動される。ノズル160から射出される可塑化材料の射出量や射出速度、射出圧力は、制御部180がプランジャー駆動部343を制御することによって制御される。
【0044】
本実施形態では、粘度計測部120は、含水率計測部121を備える。含水率計測部121は、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の含水率を、材料に接触することなく計測する。含水率計測部121は、図2に示すように、第1含水率センサー122aと、第2含水率センサー122bと、第3含水率センサー122cと、を備える。第1含水率センサー122aと、第2含水率センサー122bと、第3含水率センサー122cは、それぞれ、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の含水率を光学的に計測する。以下において各含水率センサーを区別なく呼ぶときは、単に、含水率センサー122という。本実施形態では、含水率計測部121は、3つの含水率センサー122に限らず、2つの含水率センサー122、あるいは4つ以上の含水率センサー122を備えていてもよい。含水率センサー122は、材料貯留部110の外周にアレイ状に配置されていてもよい。
【0045】
含水率センサー122は、材料貯留部110内の材料の含水率を分光分析によって計測する装置である。含水率センサー122は、例えば、近赤外分光計である。含水率センサー122は、材料貯留部110内の材料に近赤外線を照射し、材料に吸収されずに反射された光を測定する。含水率計測部121は、1900nmから1940nm付近の波長の近赤外線を材料に照射した際に反射された光を測定することにより、1900nmから1940nm付近の波長の近赤外線の反射光強度を求める。ここで、1900nmから1940nm付近の波長の近赤外線を水分吸収帯とも呼ぶ。含水率計測部121は、複数の含水率センサー122によって測定された、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の水分吸収帯の反射光強度から、材料貯留部110内の材料の水分吸収帯の反射光強度の平均値を求める。なお、含水率計測部121は、水分吸収帯以外の波長の近赤外線を材料に照射して反射された光を測定してもよい。
【0046】
図8には、材料の含水率と反射光強度の関係を示す検量線が示されている。図8に示すグラフは、横軸が材料貯留部110内の材料の含水率を、縦軸が材料貯留部110内の材料の水分吸収帯の反射光強度の平均値を示している。図8に示す検量線は、含水率計測部121が、材料貯留部110に貯留された予め含水率の判明している材料を測定し、その水分吸収帯の反射光強度の平均値を求めることによって作成される。含水率計測部121は、射出成形システム100が材料貯留部110内の材料を用いて成形品を成形する前に、上述した検量線を作成する。
【0047】
図9は、第1実施形態における、射出成形システム100による成形品の製造工程を説明する工程図である。
【0048】
まず、図9のステップS10において、成形品の成形に使用される材料が乾燥される。材料は、例えば、乾燥機によって乾燥される。
【0049】
次に、図9のステップS20において、乾燥された材料が材料貯留部110に投入される。
【0050】
次に、図9のステップS30において、貯留時間計測部130において計測された、材料が材料貯留部110に貯留されている時間が、表示部510に表示される。
【0051】
次に、図9のステップS40において、含水率計測部121が材料貯留部110内の材料の含水率を計測する。具体的には、含水率計測部121は、材料貯留部110内の材料の水分吸収帯の反射光強度の平均値を求め、図8に示す検量線を用いて、材料貯留部110内の材料の含水率の平均値を求める。
【0052】
次に、図9のステップS50において、判定部182が、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値と、含水率の上限閾値とを比較する。判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の上限閾値を超えていると判定された場合は、材料貯留部110内の材料は再び乾燥される。判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の上限閾値を下回っていると判定された場合は、材料は材料貯留部110から供給調節部140を介して可塑化部150へ移送される。
【0053】
次に、図9のステップS60において、可塑化部150へ移送された材料が可塑化される。
【0054】
次に、図9のステップS70において、ガス検出部170が、材料が可塑化された際に発生したガスを検出した場合、図9のステップS80において、報知部520がガスの発生を報知する。
【0055】
次に、図9のステップS90において、吸引送出部340が可塑化材料を成形型21のキャビティーに射出する。
【0056】
次に、図9のステップS100において、検査装置30によって成形品の検査が行われる。
【0057】
最後に、図9のステップS110において、検査装置30による成形品の検査結果と、成形品の成形に使用された材料の含水率が対応づけられて記憶部186に記憶される。
【0058】
上述した図9のステップS60からステップS110までの一連の工程は、予め定められた数の成形品の成形が完了するまで繰り返し実施される。
【0059】
なお、材料貯留部110は、その内部に貯留された材料を乾燥させる装置を有していてもよい。材料貯留部110がその内部に貯留された材料を乾燥させる装置を有している場合、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の上限閾値を下回っていると判定された場合は、材料貯留部110で材料を乾燥させてもよい。
【0060】
以上で説明した第1実施形態の射出成形システム100によれば、含水率計測部121は、複数の含水率センサー122によって測定された材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の水分吸収帯の反射光強度から、材料貯留部110内の材料の水分吸収帯の反射光強度の平均値を求め、材料の含水率と反射光強度の関係を示す検量線を用いて、材料貯留部110内の材料の含水率の平均値を求める。そのため、材料貯留部110内の材料の姿勢によらずに、材料貯留部110内の材料の含水率をより正確に計測することができる。
【0061】
また、第1実施形態の射出成形システム100は、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の上限閾値を下回っていると判定された材料のみ成形品の成形に使用するため、成形品に気泡が発生することによる成形品の外観不良や、成形型21のキャビティーへの可塑化材料の充填不足による不良品の生産を抑制することができる。
【0062】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態における、射出成形システム100aの概略構成を示す斜視図である。本実施形態において、材料の粘度に関する値は、材料の含水率および温度である。第2実施形態では、粘度計測部120aは、含水率計測部121と、温度計測部126を備える。温度計測部126は、材料貯留部110内の予め定められた領域に存在する材料の温度を、材料に接触することなく計測する。温度計測部126は、図10に示すように、第1温度センサー127aと、第2温度センサー127bと、第3温度センサー127cと、を備える。第1温度センサー127aと、第2温度センサー127bと、第3温度センサー127cは、それぞれ、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の温度を光学的に計測する。以下において各温度センサーを区別なく呼ぶときは、単に、温度センサー127という。本実施形態では、温度計測部126は、3つの温度センサー127に限らず、2つの温度センサー127、あるいは4つ以上の温度センサー127を備えていてもよい。温度センサー127は、材料貯留部110の外周にアレイ状に配置されていてもよい。
【0063】
温度センサー127は、材料貯留部110内の材料の温度を材料に接触することなく計測する装置である。温度センサー127は、例えば、放射温度計である。温度センサー127は、材料から放射される赤外線や可視光線の強度を計測することにより、材料の温度を計測する。温度計測部126は、複数の温度センサー127によって測定された、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の温度から、材料貯留部110内の材料の温度の平均値を求める。
【0064】
第2実施形態では、記憶部186には、材料の粘度に関する値の予め定められた閾値として、材料の含水率の下限閾値と、材料の温度の下限閾値が記憶されている。
【0065】
図11は、第2実施形態における、射出成形システム100aによる成形品の製造工程を説明する工程図である。
【0066】
図11のステップS200において、含水率計測部121が、材料貯留部110内の材料の含水率の平均値を計測する。また、温度計測部126が、材料貯留部110内の材料の温度の平均値を計測する。
【0067】
次に、図11のステップS210において、判定部182が、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値と、含水率の下限閾値とを比較する。判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を下回っていると判定された場合は、粘度調整処理が実行される。
【0068】
図11のステップS210で、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を超えていると判定された場合は、図11のステップS220において、判定部182が、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値と、温度の下限閾値とを比較する。判定部182において、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を下回っていると判定された場合は、粘度調整処理が実行される。判定部182において、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を超えていると判定された場合は、粘度調整処理は実行されない。
【0069】
判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を下回っていると判定された場合、または、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を下回っていると判定された場合は、図11のステップS230において、粘度調整処理が実行される。第2実施形態の粘度調整処理では、制御部180は、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を超えていると判定され、かつ、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を超えていると判定された場合と比べて、フラットスクリュー310の回転速度を速くする。
【0070】
以上で説明した第2実施形態の射出成形システム100aによれば、判定部182において、粘度計測部120aによって計測された材料貯留部110内の材料の含水率または温度の平均値のいずれか一方がその下限閾値を下回っていると判定された場合、粘度調整処理が実行される。材料貯留部110内の材料の含水率または温度のいずれか一方の平均値がその下限閾値を下回っている場合は、可塑化材料の粘度が高くなる。そのため、粘度調整処理を実行し、フラットスクリュー310の回転速度を速くすることによって、可塑化材料の粘度を低下させることができる。
【0071】
C.第3実施形態:
第3実施形態における射出成形システム100aの構成は、第2実施形態と同じである。第3実施形態における射出成形システム100aによる成形品の製造工程は、粘度調整処理の内容を除いて、図11に示した第2実施形態における射出成形システム100aによる成形品の製造工程と同じである。
【0072】
判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を下回っていると判定された場合、または、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を下回っていると判定された場合は、図11のステップS230において、粘度調整処理が実行される。第3実施形態では、図11のステップS230に示した粘度調整処理において、制御部180は、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を超えていると判定され、かつ、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を超えていると判定された場合と比べて、バレル320の温度を高くする。
【0073】
以上で説明した第3実施形態の射出成形システム100aによれば、判定部182において、粘度計測部120によって計測された材料貯留部110内の材料の含水率または温度の平均値のいずれか一方がその下限閾値を下回っていると判定された場合、粘度調整処理を実行し、バレル320の温度を高くすることによって、可塑化材料の粘度を低下させることができる。
【0074】
D.第4実施形態:
第4実施形態における射出成形システム100aの構成は、第2実施形態と同じである。第4実施形態における射出成形システム100aによる成形品の製造工程は、粘度調整処理の内容を除いて、図11に示した第2実施形態における射出成形システム100aによる成形品の製造工程と同じである。
【0075】
判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を下回っていると判定された場合、または、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を下回っていると判定された場合は、図11のステップS230において、粘度調整処理が実行される。第4実施形態では、図11のステップS230に示した粘度調整処理において、制御部180は、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を超えていると判定され、かつ、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を超えていると判定された場合と比べて、プランジャー342の射出速度を速くする。具体的には、制御部180は、プランジャー342が可塑化材料をノズル160に向けて送出するように移動する速度を速くする。
【0076】
以上で説明した第4実施形態の射出成形システム100aによれば、判定部182において、粘度計測部120によって計測された材料貯留部110内の材料の含水率または温度の平均値のいずれか一方がその下限閾値を下回っていると判定された場合、粘度調整処理を実行し、プランジャー342の射出速度を速くすることによって、可塑化材料の粘度が高い場合でも可塑化材料を成形型21のキャビティーに射出しやすくできる。
【0077】
E.第5実施形態:
図12は、第5実施形態における三次元造形システム400の概略構成を示す説明図である。三次元造形システム400は、可塑化装置10bと、造形ステージ410と、移動機構420と、を備える。
【0078】
可塑化装置10bは、材料貯留部110と、粘度計測部120と、貯留時間計測部130と、供給調節部140と、可塑化部150bと、ノズル160と、ガス検出部170と、制御部180bと、を備える。第5実施形態における可塑化装置10bは、可塑化部150bの構成を除いて、第1実施形態における可塑化装置10と同様である。
【0079】
可塑化部150bは、フラットスクリュー310と、バレル320と、加熱部330と、吸引送出部340と、を備える。本実施形態では、バレル320の連通孔322とノズル160とを接続する流路323中に、逆止弁324ではなく、ノズル160からの可塑化材料の吐出量あるいは吐出の有無を切り替えるバルブ430が設けられている。バルブ430は、制御部180bの制御下で駆動される。可塑化部150bのその他の構成は第1実施形態における可塑化部150と同様である。
【0080】
造形ステージ410は、ノズル160に対向している。ノズル160から吐出された可塑化材料は、ステージ上の造形面411に堆積される。本実施形態では、造形面411は、水平方向に沿っている。造形ステージ410は、移動機構420によって支持されている。
【0081】
移動機構420は、ノズル160と造形ステージ410との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構420は、造形ステージ410を移動させることによって、ノズル160と造形ステージ410との相対的な位置を変化させる。本実施形態における移動機構420は、3つのモーターが発生させる動力によって、造形ステージ410をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成されている。各モーターは、制御部180の制御下で駆動される。なお、移動機構420は、造形ステージ410を移動させずに、可塑化装置10bを移動させることによって、ノズル160と造形ステージ410との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。また、移動機構420は、造形ステージ410と可塑化装置10bとの両方を移動させることによって、ノズル160と造形ステージ410との相対的な位置を変化させるように構成されてもよい。
【0082】
三次元造形システム400は、制御部180bの制御下で、ノズル160と造形ステージ410との相対的な位置を変化させつつノズル160から可塑化材料を吐出させることによって、造形ステージ410上に可塑化材料の層を積層して所望の形状の三次元造形物を造形する。制御部180bは、バルブ430を用いてノズル160から一時的に可塑化材料の吐出を停止させる際には、吸引送出部340に備えられたプランジャー342を駆動して吸引送出シリンダー341内に、ノズル周辺の可塑化材料を吸引する。そして、吐出再開時に、プランジャー342を駆動して吸引送出シリンダー341からノズル160に向けて可塑化材料を圧送する。
【0083】
粘度計測部120は、含水率計測部121を備える。含水率計測部121は、第1実施形態と同様に、複数の含水率センサー122によって測定された材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の水分吸収帯の反射光強度から、材料貯留部110内の材料の水分吸収帯の反射光強度の平均値を求め、材料の含水率と反射光強度の関係を示す検量線を用いて、材料貯留部110内の材料の含水率の平均値を求める。
【0084】
判定部182は、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値と、含水率の上限閾値とを比較する。判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の上限閾値を超えていると判定された場合は、材料貯留部110内の材料は再び乾燥される。
【0085】
以上で説明した第5実施形態の三次元造形システム400によれば、第1実施形態と同様に含水率計測部121を有しており、含水率計測部121は、材料貯留部110内の材料の含水率の平均値を計測する。そのため、材料貯留部110内の材料の姿勢によらずに、材料貯留部110内の材料の含水率をより正確に計測することができる。
【0086】
本実施形態において、粘度計測部120は、温度計測部126を有していてもよい。温度計測部126は、第2実施形態や、第3実施形態、第4実施形態と同様に、複数の温度センサー127によって測定された、材料貯留部110内の異なる位置に存在する材料の温度から、材料貯留部110内の材料の温度の平均値を求める。また、制御部180bの記憶部186には、第2実施形態や、第3実施形態、第4実施形態と同様に、材料の粘度に関する値の予め定められた閾値として、材料の含水率の下限閾値と、材料の温度の下限閾値が記憶されていてもよい。
【0087】
本実施形態において、粘度計測部120によって計測された材料貯留部110内の材料の含水率または温度の平均値のいずれか一方がその下限閾値を下回っていると判定部182で判定された場合、第2実施形態における粘度調整処理や、第3実施形態における粘度調整処理、第4実施形態における粘度調整処理が実行されてもよい。すなわち、制御部180bは、判定部182において、含水率計測部121によって計測された材料の含水率の平均値が含水率の下限閾値を超えていると判定され、かつ、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を超えていると判定された場合と比べて、フラットスクリュー310の回転速度を速くする、または、バレル320の温度を高くする、または、プランジャー342の射出速度を速くしてもよい。制御部180bは、フラットスクリュー310の回転速度を速くした場合、供給調節部140を制御して、単位時間当たりに材料貯留部110から可塑化部150へ供給される材料の量を増加させてもよい。
【0088】
F.他の実施形態:
(F-1)第1実施形態において、材料の粘度に関する値は、材料の温度であってもよい。材料の粘度に関する値が材料の温度である場合、粘度計測部120は、第2実施形態で説明した温度計測部126を備えてもよく、記憶部186には、材料の粘度に関する値の予め定められた閾値として、材料の温度の下限閾値が予め記憶されていてもよい。材料を加熱することによって乾燥させる場合は、判定部182において、温度計測部126によって計測された材料の温度の平均値が温度の下限閾値を下回っていると判定された場合、材料貯留部110内の材料は再び乾燥されてもよい。
【0089】
(F-2)上記実施形態において、含水率計測部121は、複数の含水率センサー122ではなく一つの含水率センサー122を備えていてもよい。含水率計測部121が一つの含水率センサー122を備える場合、一つの含水率センサー122を移動させて材料貯留部110内の複数箇所に位置する材料の水分吸収帯の反射光強度を求めることにより、材料貯留部110内の材料の水分吸収帯の反射光強度の平均値を求め、検量線を用いて材料貯留部110内の材料の含水率の平均値を求めてもよい。含水率センサー122は、ユーザーが移動させてもよいし、装置によって移動させてもよい。
【0090】
(F-3)上記実施形態において、温度計測部126は、複数の温度センサー127ではなく一つの温度センサー127を備えていてもよい。温度計測部126が一つの温度センサー127を備える場合、一つの温度センサー127を移動させて材料貯留部110内の複数箇所に位置する材料の温度を測定し、材料貯留部110内の材料の温度の平均値を求めてもよい。温度センサー127は、ユーザーが移動させてもよいし、装置によって移動させてもよい。
【0091】
(F-4)上記実施形態において、温度計測部126は、一つの温度センサー127によって、材料貯留部110内の予め定められた範囲に位置する材料の温度の平均値を計測してもよい。温度センサー127は、例えば、サーモグラフィーであってもよい。
【0092】
(F-5)上記実施形態において、制御部180は、フラットスクリュー310の回転速度を遅くした場合、供給調節部140を制御して単位時間当たりに材料貯留部110から可塑化部150へ供給される材料の量を減少させてもよい。
【0093】
(F-6)上記実施形態において、粘度計測部120は、材料貯留部110内の材料の粘度に関する値の平均値ではなく、例えば、材料貯留部110内の材料の粘度に関する値の最大値や最小値、中央値を求めてもよい。すなわち、粘度計測部120が含水率計測部121を備える場合は、含水率計測部121は、材料貯留部110内の材料の含水率の平均値ではなく、例えば、材料貯留部110内の材料の含水率の最大値や最小値、中央値を求めてもよい。粘度計測部120が温度計測部126を備える場合は、温度計測部126は、材料貯留部110内の材料の温度の平均値ではなく、例えば、材料貯留部110内の材料の温度の最大値や最小値、中央値を求めてもよい。
【0094】
(F-7)上記実施形態において、可塑化装置10は、貯留時間計測部130と、供給調節部140と、ガス検出部170と、の一部または全部を備えていなくてもよい。
【0095】
G.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0096】
(1)本開示の一形態によれば、可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、ペレット状の材料を貯留する材料貯留部と、前記材料貯留部から供給された前記材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、前記可塑化材料を外部に射出するノズルと、前記材料貯留部内の異なる位置に存在する前記材料の粘度に関する値を前記材料に接触することなく計測し、前記材料貯留部内の前記材料の粘度に関する値の代表値を求める、粘度計測部と、を備える。このような形態によれば、材料貯留部内の材料の姿勢によらずに材料貯留部内の材料の粘度に関する値をより正確に計測できる。
【0097】
(2)上記形態において、前記粘度計測部は、前記材料貯留部内の異なる位置に存在する前記材料の粘度に関する値を光学的に計測してもよい。
【0098】
(3)上記形態において、前記材料が前記材料貯留部に貯留されている時間を計測する貯留時間計測部を備えてもよい。このような形態によれば、材料が材料貯留部に貯留されている時間をユーザーが知ることができる。
【0099】
(4)上記形態において、前記材料が可塑化された際に発生するガスを検出するガス検出部を備えてもよい。このような形態によれば、材料が可塑化された際にガスが発生したことをユーザーが知ることができる。
【0100】
(5)上記形態において、前記材料貯留部から前記可塑化部へ供給される前記材料の量を調節する供給調節部と、制御部と、を備え、前記可塑化部は、溝が形成された溝形成面を有し、回転するフラットスクリューと、前記溝形成面と対向する対向面を有し、前記ノズルに連通する連通孔が前記対向面に形成されたバレルと、前記フラットスクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、を有し、前記制御部は、前記フラットスクリューの回転速度を遅くした場合、前記供給調節部を制御して単位時間当たりに前記材料貯留部から前記可塑化部へ供給される前記材料の量を減少させてもよい。このような形態によれば、フラットスクリューの回転速度が低下した場合に、材料貯留部から可塑化部に材料が移送される際に材料が詰まることを抑制することができる。
【0101】
(6)上記形態において、前記粘度計測部において計測された前記材料の前記粘度に関する値が、予め定められた閾値を下回っているかを判定する判定部を備えてもよい。このような形態によれば、材料貯留部内の材料を用いて成形品を成形した場合に不良品の生産を抑制できるかを判定することができる。
【0102】
(7)上記形態において、制御部を備え、前記可塑化部は、溝が形成された溝形成面を有し、回転するフラットスクリューと、前記溝形成面と対向する対向面を有し、前記ノズルに連通する連通孔が前記対向面に形成されたバレルと、前記フラットスクリューと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱する加熱部と、を有し、前記制御部は、前記判定部において前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値を下回っていると判定された場合、前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値以上の場合と比べて、前記フラットスクリューの回転速度を速くする、または、前記バレルの温度を高くしてもよい。このような形態によれば、可塑化材料の粘度が高い場合に、可塑化材料の粘度を低下させることができる。
【0103】
(8)上記形態において、前記可塑化材料が流れる流路と、前記流路に接続された吸引送出シリンダーと、前記吸引送出シリンダー内に移動可能に設けられ、前記可塑化材料を前記吸引送出シリンダー内に吸引、または、前記吸引送出シリンダー内に吸引した前記可塑化材料を前記ノズルに向けて送出する、プランジャーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定部において前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値を下回っていると判定された場合、前記材料の前記粘度に関する値が前記予め定められた閾値以上の場合と比べて、前記プランジャーの射出速度を速くしてもよい。このような形態によれば、可塑化材料の粘度が高い場合でも、ノズルから成形型のキャビティーに可塑化材料を射出しやすくできる。
【0104】
(9)本開示の第2の形態によれば、射出成形システムが提供される。この射出成形システムは、前記可塑化装置と、前記ノズルから射出された前記可塑化材料が注入される成形型が配置される型締装置と、を備える。
【0105】
(10)上記形態において、前記成形型に前記可塑化材料が注入されることにより成形された成形品の品質を検査する検査装置と、前記検査装置による前記成形品の検査結果と、前記成形品の成形に使用された前記材料の前記粘度に関する値と、を対応付けて記憶する記憶部と、を備えてもよい。このような形態よれば、成形品の品質と成形品の成形に使用された材料の粘度に関する値との関係を示すデータを蓄積することができる。
【0106】
(11)本開示の第3の形態によれば、三次元造形システムが提供される。この三次元造形システムは、前記可塑化装置と、前記ノズルから射出された前記可塑化材料が堆積される造形面を有する造形ステージと、を備える。
【符号の説明】
【0107】
10…可塑化装置、20…型締装置、21…成形型、22…固定型、23…可動型、24…固定部、25…型駆動部、26…ボールネジ、30…検査装置、100…射出成形システム、110…材料貯留部、120…粘度計測部、121…含水率計測部、122…含水率センサー、126…温度計測部、127…温度センサー、130…貯留時間計測部、140…供給調節部、150…可塑化部、160…ノズル、170…ガス検出部、180…制御部、181…CPU、182…判定部、186…記憶部、210…ガイドケース、211…材料入口、212…材料出口、220…接続路、230…材料切出板、231…切出穴、240…エアーシリンダー、250…ピストンロッド、251…仕切板、260…第1空気圧ポート、270…第2空気圧ポート、310…フラットスクリュー、311…スクリューケース、312…駆動軸、313…駆動モーター、314…材料投入口、315…溝形成面、316…中央部、317…溝、318…凸条部、320…バレル、321…バレルケース、322…連通孔、323…流路、324…逆止弁、325…対向面、326…案内溝、330…加熱部、340…吸引送出部、341…吸引送出シリンダー、342…プランジャー、343…プランジャー駆動部、400…三次元造形システム、410…造形ステージ、411…造形面、420…移動機構、430…バルブ、510…表示部、520…報知部、RX…フラットスクリューの回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12