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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172506
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】エレベーター点検システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20231129BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B5/00 G
B66B11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084358
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 尊之
(72)【発明者】
【氏名】星崎 哲郎
【テーマコード(参考)】
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA22
3F304BA24
3F304BA25
3F304EB15
3F304ED16
3F306AA02
3F306AA11
3F306CB06
(57)【要約】
【課題】部品コスト、取り付け工数をできるだけ増やすことなく、乗りかご点検作業柵を正規に組み立てたことを確認できるエレベーター点検システムを提供する。
【解決手段】乗りかご点検作業柵を正規に組み上げた時にだけ形成される二次元コードを携帯端末によって読み取り、この読み取られた二次元コード情報をサーバーに送信し、サーバーは予め定めた二次元コード判定情報と受信した二次元コード情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、点検運転許可要求情報を受信すると点検運転を許可する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター制御装置、サーバー、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムであって、
乗りかごの外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵が、組み上げられた時に形成される二次元コード情報を前記携帯端末によって読み取って前記サーバーに送信し、
前記サーバーは読み取られた前記二次元コード情報を受信し、前記サーバーは予め定めた二次元コード判定情報と受信した前記二次元コード情報を比較し、前記二次元コード情報と前記二次元コード判定情報が一致すると前記エレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、
前記エレベーター制御装置は、前記サーバーからの前記点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーターの前記乗りかごの点検運転をするエレベーター点検システム。
【請求項2】
エレベーター制御装置、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムであって、
乗りかごの外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵が、組み上げられた時に形成される二次元コード情報を携帯端末によって読み取り、
前記携帯端末は、読み取られた前記二次元コード情報と予め定めた二次元コード判定情報を比較し、前記二次元コード情報と前記二次元コード判定情報が一致すると前記エレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、
前記エレベーター制御装置は、前記携帯端末からの前記点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーターの前記乗りかごの点検運転をするエレベーター点検システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーター点検システムであって、
前記乗りかご点検作業枠は、前記乗りかごの前記外側天井面に乗り込んだ保守作業者により、前記外側天井面に組み立てられ、
前記乗りかご点検作業柵の構成部材の一部に、前記乗りかご点検作業柵を正規に組み上げた時にだけ形成される二次元コードが設けられているエレベーター点検システム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーター点検システムであって、
前記乗りかご点検作業柵は、内側に折り畳み可能な一対の側方柵、並びに一対の側方柵に端部が取り付けられた一対の背面バー部材により構成されており、
前記保守作業者によって、折り畳まれた状態の一対の前記側方柵が引き起こされて立設された状態とされ、
この状態で一対の前記側方柵の間に一対の前記背面バー部材を掛け渡しして係合され、この係合された部分の夫々の前記背面バー部材に分割された前記二次元コードが設けられ、一対の前記背面バー部材が係合されている状態において、正規の前記二次元コードが形成されるエレベーター点検システム。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベーター点検システムであって、
前記サーバーは、
前記乗りかご点検作業柵に形成される前記二次元コード情報を判別するための前記二次元コード判定情報を記憶する記憶手段と、
前記二次元コード判定情報と前記前記乗りかご点検作業柵に形成される前記二次元コード情報を比較し、一致していると判別すると前記エレベーター制御装置に前記点検運転許可要求情報を送信する点検運転許可要求情報判別手段とを備えているエレベーター点検システム。
【請求項6】
請求項2に記載のエレベーター点検システムであって、
前記携帯端末は、
前記乗りかご点検作業柵に形成される前記二次元コード情報を判別するための前記二次元コード判定情報を記憶する記憶手段と、
前記二次元コード判定情報と前記前記乗りかご点検作業柵に形成される前記二次元コード情報を比較し、一致していると判別すると前記エレベーター制御装置に前記点検運転許可要求情報を送信する点検運転許可要求情報判別手段とを備えているエレベーター点検システム。
【請求項7】
請求項2に記載のエレベーター点検システムであって、
前記二次元コード情報はエレベーターの識別子を含み、前記携帯端末が読み取られた前記二次元コード情報と予め定めた前記二次元コード判定情報を比較し、前記二次元コード情報と前記二次元コード判定情報が一致すると判定したとき前記エレベーターの識別子に対応する前記エレベーター制御装置に前記点検運転許可要求情報を送信するエレベーター点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの乗りかごの天井面に設けられた乗りかご点検作業柵を使用して昇降路の点検を行うエレベーター点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、昇降路内に配設された乗りかごを巻上機によって昇降動作させるものであり、多くの構成機器、及び構成部品から造られている。このため、稼働しているエレベーターにおいては、これらの構成機器や構成部品に不具合があってはならない。したがって、定期的、又は不定期的に構成機器や構成部品の点検作業が実施されることが必要である。
【0003】
そして、この点検作業を実施する際には、保守作業者が乗りかごの外側天井面の上に乗って、乗りかごを低速走行しながら昇降路の各所を点検することがある。このため、保守作業者の安全確保(転落防止等)のために、乗りかごの外側天井面には、保守作業者を取り囲む乗りかご点検作業柵を設けることが必要である。
【0004】
ところで、乗りかごが最上階に移動しているときに、乗りかごの天井面と昇降路の最頂部との距離が十分確保できないエレベーターでは、乗りかご上の乗りかご点検作業柵は、折り畳んだ乗りかご点検作業柵を起立して組み立てる方式となっている。
【0005】
そして、このような組み立て式の乗りかご点検作業柵を利用して点検作業を行う際は、点検前に転落防止のために乗りかご点検作業柵を組み立て、乗りかご点検作業柵が機能する状態であることを確認するための安全確認スイッチを操作して点検作業にはいるルーチンとされている。しかしながら、このようなシステムでは、安全確認スイッチを物理的に強制解除し、乗りかご点検作業柵を組み立てない状態で点検作業を行うことができるという課題を有している。
【0006】
このようなシステムの課題を解決するために、例えば、特開2009-214957号公報(特許文献1)には、作業者が、安全スイッチをオフにしてから乗りかごのかご上に乗り込み、内側に折り畳まれた状態になっている乗りかご点検作業柵を起こして組み立て、組立が正規に完了すると、係合保持部に取り付けられている乗りかご点検作業柵組立完了検出スイッチをオンして組立完了検出信号を出力させ、その後に安全スイッチをオンにすると表示灯が点灯され、更に作業者は、点検運転モード選択スイッチをオンにすることによって携帯操作器で乗りかごを点検運転することができるシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-214957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、スイッチ類等の新たな構成部品の追加が必要となり、多くの乗りかごに対応するのは、部品コスト、取り付け工数が増えるため、現実的で無いという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、部品コスト、取り付け工数をできるだけ増やすことなく、乗りかご点検作業柵を正規に組み立てられたことを確認できるエレベーター点検システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、エレベーター制御装置、サーバー、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムであって、乗りかごの外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵が、正規に組み上げられた時にだけ形成される二次元コード情報を携帯端末によって読み取ってサーバーに送信し、サーバーは読み取られた二次元コード情報を受信し、サーバーは予め定めた二次元コード判定情報と受信した二次元コード情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、サーバーからの点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーターの乗りかごの点検運転を許可する、ところにある。
【0011】
本発明の他の特徴は、エレベーター制御装置、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムであって、乗りかごの外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵が、正規に組み上げられた時にだけ形成される二次元コード情報を携帯端末によって読み取り、携帯端末は読み取られた二次元コード情報と予め定めた二次元コード判定情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、携帯端末からの点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーターの乗りかごの点検運転を許可する、ところにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品コスト、取り付け工数をできるだけ増やすことなく、乗りかご点検作業柵を正規に組み立てられたことを確認できるエレベーター点検システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態になるエレベーターシステムの構成図である。
図2】本発明の実施形態における二次元コードを設置した乗りかご点検作業柵の組み立て工程を説明する説明図である。
図3】本発明の実施形態におけるサーバーを用いた点検作業の処理フローを説明するフローチャートである。
図4】本発明の実施形態におけるサーバーを用いない点検作業の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態になるエレベーターシステムの構成を示してる。図1において、エレベーターの点検時に保守作業者が携帯する携帯端末10には、図2で述べる二次元コードを撮影することで、画像情報として取り込むことのできる撮像部11と、各種情報を記憶する記憶部12と、各種の演算処理を行う処理部13と、外部機器(ここでは、サーバー)と通信を行う通信部14を備えている。
【0016】
記憶部12には、撮像部11で撮影された二次元コードの画像情報を記憶する撮像画像記憶部12Aを備えている。また、処理部13には記憶された画像情報が二次元コードであるか否かを判別し、二次元コードと判別された場合にサーバー20と通信することを許可する二次元コード判別部13Aを備えている。
【0017】
二次元コードが判別されると、通信部14は、撮影された二次元コード画像情報、或いは画像情報から変換された二次元コード情報を、通信ネットワーク40を介してサーバー20に送信する。尚、本実施形態では、二次元コード情報を使用するものとする。
【0018】
遠隔地に設置されているサーバー20には、各種情報を記憶する記憶部21と、各種の演算処理を行う処理部22と、外部機器(ここでは、携帯端末とエレベーター制御装置)と通信を行う通信部23を備えている。
【0019】
記憶部21には、携帯端末10から受信した二次元コードが、予め定めた正規の二次元コードか否かを判定するため、画像情報である二次元コード画像判定情報、或いは画像情報から変換された二次元コード判定情報が記憶された判定情報記憶部21Aを備えている。尚、本実施形態では、二次元コード判定情報を使用するものとする。
【0020】
また、処理部22には、記憶された二次元コード判定情報と受信した二次元コード情報とを比較し、これらが一致した場合は、この一致情報を通信ネットワーク40を介してエレベーター制御装置30に送信する二次元コード判別部23Aを備えている。
【0021】
また、エレベーターに設置され、エレベーターの運行制御を行うエレベーター制御装置30には、保守作業者が点検運転を実行する際に、点検操作切換えスイッチを操作したことを検出する点検操作切替え検出部31と、各種の演算処理を行う処理部32と、外部機器(ここではサーバー)と通信を行う通信部33を備えている。
【0022】
処理部32には、サーバー20から受信した要求にしたがって、点検運転の操作を有効にすることを判定する操作有効判定部32Aを備えている。
【0023】
また、携帯端末10とサーバー20、及びサーバー20とエレベーター制御装置30は、夫々の通信ネットワーク40により接続されている。通信ネットワーク40としては、「LAN(Local Area Network)」、「WAN(Wide Area Network)、「インターネット(Internet)」、「携帯電話回線網」、及びこれらの組み合わせた通信ネットワーク等が使用できる。
【0024】
ここで、先に述べた二次元コード画像情報と画像情報から変換された二次元コード情報は、実質的に同じ情報であるので、二次元コード情報と表記されている場合でもあっても、二次元コード画像情報に読み替えることができる。判定情報も同様である。
【0025】
このように、本実施形態では、エレベーター制御装置、サーバー、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムを対象にして、乗りかご点検作業柵を正規に組み上げた時にだけ形成される二次元コードを携帯端末によって読み取り、この読み取られた二次元コード情報をサーバーに送信し、サーバーは予め定めた二次元コード判定情報と受信した二次元コード情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、点検運転許可要求情報を受信すると点検運転を許可する、という構成を提案するものである。これらの具体的な処理動作は、図3を用いて詳細に説明する。
【0026】
次に乗りかご点検作業柵(以下、安全柵と表記する)について説明する。図2は、二次元コードを設置した安全柵の組み立て工程を示している。本実施形態では、乗りかごの外側天井面に乗り込んだ保守作業者により、外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵の構成部材の一部に、乗りかご点検作業柵を正規に組み上げた時にだけ形成される二次元コードが設けられていることを特徴としている。
【0027】
図2の(A)~(D)に示すように、エレベーターの乗りかごの外側天井面UFの上には、安全柵50が折り畳まれている。安全柵50は、内側に折り畳み可能な一対の側方柵50R、50L、並びにこの一対の側方柵50R、50Lに端部が取り付けられた前面バー部材(図示せず)、及び背面バー部材50Bにより構成されている。
【0028】
側方柵50L、50Rは、前側支柱50SF、後側支柱50SRと、これらを連結する上側バー部材50BU、中間バー部材50BMを備えている。また、上側バー部材50BU、中間バー部材50BM、外側天井面UFの間には、以下に説明するように左背面バー部材50BL、右背面バー部材50BRが、回動自在に配置されている。
【0029】
背面バー部材50Bは、左側の側方柵50Lの後側支柱50SRにヒンジによって連結された左背面バー部材50BLと、右側の側方柵50Rの後側支柱50SRにヒンジによって連結された右背面バー部材50BRとから構成されている。組み立て完了時には、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50Rとは、互いに向き合って棒状の背面バー部材50Bを形成することになる。
【0030】
次に図2の(B)及び(C)に示すように、点検作業時には保守作業者が、折り畳まれた状態の一対の側方柵50R、50Lを起立して立設する。外側天井面UFと一対の側方柵50R、50Lの根元部分は、ヒンジによって連結されているので側方柵50R、50Lは容易に引き起こすことが可能である。この時、背面バー部材50Bも同時に引き起こされている。
【0031】
最後に図2の(D)に示すように、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRとを夫々の後側支柱50SRのヒンジを中心として回転させ、左背面バー部材50BLの端部と右背面バー部材50BRの端部とが対面するように、掛け渡した状態で係合する。これによって、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRとが、あたかも1本の背面バー部材50Bとして機能するようになる。
【0032】
ここで、左背面バー部材50BLの端部と右背面バー部材50BRの端部の対面部分には、二分割された二次元コード51L、51Rが設けられている。図2の(D)に示した吹き出しにあるように、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRの対面部分には、それぞれ二次元コード51を二分割した半分の二次元コード51L、51Rが設置されている。
【0033】
そして、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRの端部を連結することにより、分割された二次元コード51L、51Rが一体化されて、読み取り可能な二次元コード51が表面に形成される。二次元コード51L、51Rの分割割合は任意であるが、二次元コード51が読み取れることが必要である。
【0034】
この二次元コード51は、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRにプリントして形成しても良く、またシールのような形態に制作して貼り付けて形成しても良いものであり、その形成方法は問わないものである。ただ、この種の安全柵50では、点検回数が多くなると二次元コード51に汚染や破損を生じる恐れがあるので、貼り換えが可能なシールからなる二次元コード51を用いた方が有利である。
【0035】
この場合は、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRの端部を対面させた状態で、二次元コード51が印刷された一枚のシールが、端部の突き合わせ部分を跨いで貼り付けられ、その後に突き合わせ部分を刃物で切断して、二分割された二次元コード51L、51Rを形成することができる。
【0036】
二次元コード51は、例えば「QRコード(登録商標)」を使用することができる。QRコードは、QRコードに汚れやゆがみがあっても、これを補正できる機能が付与されているので、この種の安全柵50に適用することは特に有利となる。また、携帯端末10による撮像のし易さの観点から、二次元コード51は、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRの内側の側面、或いは左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRの上面に形成するのが望ましい。
【0037】
そして、この二次元コード51を基に、エレベーター制御装置によって点検運転が実行されるようにエレベーター点検システムが構築される。この点検システムは図1に示した通りであり、具体的な処理フローは図3で説明する。
【0038】
このように、左背面バー部材50BLと右背面バー部材50BRの端部を連結することは、安全柵50を正規に組み立てた状態で可能となる。このため、分割された二次元コード51L、51Rが、一体化されて二次元コード51が形成されない限り点検作業ができなくなり、安全柵50を組み立てないで点検作業を行うことができないものとなる。
【0039】
次に、図2に示した二次元コードを利用してエレベーターの点検作業を実行する場合の処理フローについて図3を用いて説明する。尚、この処理フローは図1に示すエレべーターの点検システムによって実行される。
【0040】
≪ステップS10≫
エレベーターの点検に際して、保守作業者は乗りかごの外側天井面に乗ると、点検操作開始スイッチを操作して、乗りかごの天井で点検作業を行うことをエレベーター制御装置30に通知する。
【0041】
この時、保守作業者は安全柵50を図2に示す順序で組み立て、二次元コード51が読み取れる状態に組み上げる。これによって携帯端末で二次元コード51を読み取る準備が完了する。
【0042】
≪ステップS11≫
ステップS11においては、エレベーター制御装置30の点検操作切替え検出部31は、保守作業者によって点検操作切換えスイッチが操作されたことを検知し、通信部33を介し、サーバー20へ点検作業開始を通知する。この通知後エレベーター制御装置30の処理部32の点検操作有効判定部32Aは、サーバー20からの返信通知があるまで待機する。
【0043】
≪ステップS12≫
ステップS11における通信があると、サーバー20は通信部23を介して、点検作業の開始通知を受信する。この受信があるとステップS13の処理を実行する。
【0044】
≪ステップS13≫
ステップS13においては、通信部23を介して携帯端末10へ二次元コード51の読み取り要求を送信する。送信後は、記憶部21の判定状態記憶部21Aは携帯端末10からの返信通知があるまで待機する。
【0045】
≪ステップS14≫、≪ステップS15≫
ステップS13における通信があると、携帯端末10は通信部14を介して、二次元コード読み取り要求を受信する。ここで、保守作業者によって、携帯端末10の撮像部11で安全柵50を正規に組み立てることで形成された二次元コード51を撮影すると、この画像情報は記憶部12の撮像画像記憶部12Aに記憶される。尚、ステップS15は、撮像画像が得られるまで待機している。画像情報が得られるとステップS16の処理を実行する。
【0046】
≪ステップS16≫
ステップS16においては、撮影された画像が撮像画像記憶部12Aに保存されると、処理部13の二次元コード判別部13Aは、画像情報が二次元コード51であるか否かを判定する。QRコードの場合は、切り出しシンボルを検出することでQRコードと判定することができる。二次元コード51でない場合は、保守作業者に再度の二次元コード51の撮影を行うことを促す情報を報知して再びステップS16に戻る。一方、二次元コード51であった場合は次のステップS17の処理を実行する。
【0047】
≪ステップS17≫
ステップS17においては、撮影された画像が二次元コード51であった場合は、二次元コード判別部131は、その二次元コード51の二次元コード情報が有効か否か判定する。二次元コード情報が有効でない場合は、保守作業者に再度の二次元コード51の撮影を行うことを促す情報を報知して再びステップS16に戻る。一方、二次元コード情報が有効であった場合は次のステップS18の処理を実行する。
【0048】
≪ステップS18≫
ステップS18においては、二次元コード情報が有効であった場合は、処理部13の二次元コード判別部13Aは、通信部14を介して、サーバー20へ二次元コード情報を送信する。二次元コード情報の送信が終了すると、携帯端末10での処理は終了することになる。
【0049】
≪ステップS19≫
サーバー20で実行されるステップS19においては、携帯端末10から二次元コード情報が、通信部23を介して受信された(返信あり)か否かを判断する。この返信の判断は、ステップS13の要求に対する返信の有無の判断である。二次元コード情報を受信していなと判断されると、ステップS19に戻り、返信に待機する。一方、返信あり(二次元コード情報を受信)と判断されるとステップS20の処理を実行する。
【0050】
≪ステップS20≫
ステップS20においては、処理部22の二次元コード判別部22Aで、受信された二次元コード情報が正規の二次元コード情報か否を判断する。この判断は、判定情報記憶部21Aに記憶されてる二次元コード判定情報と、受信した二次元コード情報とを比較して行うことができる。
【0051】
そして、二次元コード判定情報と二次元コード情報が一致しない場合は、安全柵50が正規に組み立てられていないとして、再びステップS13に戻って、二次元コード情報の読み取りを携帯端末10に要求する。
【0052】
一方、二次元コード判定情報と二次元コード情報が一致した場合は、安全柵50が正規に組み立てられて、保守作業者の安全が確保されたと見做される。この安全柵50が正規に組み立てられたという判定結果は、判定情報記憶部21Aに記憶される。この処理が終了すると次のステップS21の処理を実行する。
【0053】
≪ステップS21≫
ステップS21においては、判定情報記憶部21Aに記憶された判定結果に基づき、通信部23を介して点検運転許可要求情報をエレベーター制御装置30に送信する。点検運転許可要求情報の送信が終了すると次のステップS22の処理を実行する。点検運転許可要求情報の送信が終了すると、サーバー20での処理は終了することになる。
【0054】
≪ステップS22≫
エレベーター制御装置30におけるステップS22においては、サーバー20から点検運転許可要求情報が、通信部33を介して受信された(返信あり)か否かを判断する。この返信の判断は、ステップS11の通知に対する返信の有無の判断である。点検運転許可要求情報を受信していなと判断されると、ステップS22に戻り、返信に待機する。一方、返信あり(点検運転許可要求情報を受信)と判断されると、ステップS23の処理を実行する。
【0055】
≪ステップS23≫
ステップS23においては、サーバー20から点検運転許可要求情報を受信すると、処理部32の点検操作有効判定部32Aは、エレベーターに対して点検運転を許可する。点検運転が許可されると、エレベーター制御装置は、保守作業者の指示に対応して乗りかごを制御して、保守作業による点検動作を可能とする。この処理が終了すると、エレベーター制御装置30での処理は終了することになる。
【0056】
以上のような構成のエレベーター点検システムによれば、必要な作業は、安全柵50に分割した二次元コードの設置と、エレベーター制御装置30、サーバー20、及び携帯端末に組み込むプログラムの一部の書き換えのみである。このため特許文献1のような、スイッチ類等の新たな構成部品の追加が必要となる、多くの乗りかごに対応するための部品コスト、取り付け工数が増えるという課題を生じることがなくなる。
【0057】
したがって、部品コスト、取り付け工数をできるだけ増やすことなく、乗りかご点検作業柵を正規に組み立てられたことを確認できるエレベーター点検システムを得ることができる。
【0058】
尚、上述した実施形態ではエレベーター点検システムとして、携帯端末10、サーバー20、エレベーター制御装置30とで構成し、携帯端末10とエレベーター制御装置30の間の各種情報のやり取りをサーバー20が介して行っているが、携帯端末10とエレベーター制御装置30との間で、直接行うことも可能である。この場合、サーバー20の機能は、携帯端末10で実行するようにプログラムを構成すれば良い。
【0059】
つまり、エレベーター制御装置、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムであって、乗りかごの外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵が、組み上げられた時に形成される二次元コード情報を携帯端末によって読み取り、携帯端末は読み取られた二次元コード情報と予め定めた二次元コード判定情報と二次元コード情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、携帯端末からの点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーターの乗りかごの点検運転を許可する構成とすることができる。この場合は、以下に示す図4に示す処理フローを実行することになる。
【0060】
≪ステップS30≫
エレベーターの点検に際して、保守作業者は乗りかごの外側天井面に乗ると、点検操作開始スイッチを操作して、乗りかごの天井で点検作業を行うことをエレベーター制御装置30に通知する。
【0061】
この時、保守作業者は安全柵50を図2に示す順序で組み立て、二次元コード51が読み取れる状態に組み上げる。これによって携帯端末で二次元コード51を読み取る準備が完了する。
【0062】
≪ステップS31≫
ステップS31においては、エレベーター制御装置30の点検操作切替え検出部31は、保守作業者によって点検操作切換えスイッチが操作されたことを検知し、通信部33を介し、携帯端末10へ点検作業開始を通知する。この通知後エレベーター制御装置30の処理部32の点検操作有効判定部32Aは、携帯端末10からの返信通知があるまで待機する。
【0063】
≪ステップS32≫
携帯端末10は、点検作業の開始通知を受信するとステップS32の処理を実行する。ステップS32においては、二次元コードの読み取りを実行する。ここでは、保守作業者によって、携帯端末10の撮像部11で安全柵50を正規に組み立てることで形成された二次元コード51を撮影すると、この画像情報は記憶部12の撮像画像記憶部12Aに記憶される。画像情報が得られるとステップS33の処理を実行する。
【0064】
≪ステップS33≫
ステップS33においては、撮影された画像が撮像画像記憶部12Aに保存されると、処理部13の二次元コード判別部13Aは、画像情報が二次元コード51であるか否かを判定する。QRコードの場合は、切り出しシンボルを検出することでQRコードと判定することができる。二次元コード51でない場合は、保守作業者に再度の二次元コード51の撮影を行うことを促す情報を報知して再びステップS32に戻る。一方、二次元コード51であった場合は次のステップS34の処理を実行する。
【0065】
≪ステップS34≫
ステップS34においては、撮影された画像が二次元コード51であった場合は、二次元コード判別部131は、その二次元コード51の二次元コード情報が有効か否か判定する。二次元コード情報が有効でない場合は、保守作業者に再度の二次元コード51の撮影を行うことを促す情報を報知して再びステップS32に戻る。一方、二次元コード情報が有効であった場合は次のステップS35の処理を実行する。
【0066】
≪ステップS35≫
ステップS35においては、二次元コード情報が正規の二次元コード情報か否を判断する。この判断は、記憶されてる二次元コード判定情報と、二次元コード情報とを比較して行うことができる。そして、二次元コード判定情報と二次元コード情報が一致しない場合は、安全柵50が正規に組み立てられていないとして、保守作業者に再度の二次元コード51の撮影を行うことを促す情報を報知して再びステップS32に戻る。
【0067】
一方、二次元コード判定情報と二次元コード情報が一致した場合は、安全柵50が正規に組み立てられて、保守作業者の安全が確保されたと見做される。この安全柵50が正規に組み立てられたという判定結果が得られると、次に述べるステップS36が実行される。
【0068】
≪ステップS36≫
ステップS36においては、二次元コード情報のエレベーター識別子に対応するエレベーター制御装置30へ点検運転許可信号を送信する。サーバーを使用しない場合は、ステップS35での判定情報に加えてエレベーター号機に固有の識別子を持たせることにより、該当するエレベーター号機の点検運転要求が可能となる。
【0069】
≪ステップS37≫
エレベーター制御装置30におけるステップS37においては、携帯端末10から点検運転許可要求情報が受信された(返信あり)か否かを判断する。この返信の判断は、ステップS31の通知に対する返信の有無の判断である。点検運転許可要求情報を受信していなと判断されると、ステップS37に戻り、返信に待機する。一方、返信あり(点検運転許可要求情報を受信)と判断されると、ステップS38の処理を実行する。
【0070】
≪ステップS38≫
ステップS38においては、携帯端末10から点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーター制御装置30はエレベーターに対して点検運転を許可する。点検運転が許可されると、エレベーター制御装置30は、保守作業者の指示に対応して乗りかごを制御して、保守作業による点検動作を可能とする。
【0071】
上述の説明は携帯端末にサーバーの機能を持たせたものであるが、逆にサーバー20の機能をエレベーター制御装置30で実行するようにプログラムすることもできる。
【0072】
この場合は、エレベーター制御装置30でステップS13の処理を実行し、携帯端末10でステップS13の要求を受信すると、ステップS14~S18の処理を実行する。そして、エレベーター制御装置30は、ステップS18の返信を受信すると、ステップS19~S23を実行するように構成することができる。
【0073】
また、二次元コード51をエレベーター号機毎に固有のものとし、サーバー20には夫々の号機に点検作業か否かが判別できる作業計画データを備えることによって、二次元コードの号機と作業計画データを照らし合わせて、該当する号機の点検作業計画が当初予定に無い場合、サーバー20では点検運転の許可を行わず、保守作業者の携帯端末10や、管理者等が保有する情報機器に警報を出力するような構成とすることもできる。
【0074】
以上述べた通り本発明は、乗りかご点検作業柵を正規に組み上げた時にだけ形成される二次元コードを携帯端末によって読み取り、この読み取られた二次元コード情報をサーバーに送信し、サーバーは予め定めた二次元コード判定情報と受信した二次元コード情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、点検運転許可要求情報を受信すると点検運転を許可する、ことを特徴としている。
【0075】
また、本発明は、エレベーター制御装置、及び携帯端末を通信ネットワークで接続したエレベーター点検システムであって、乗りかごの外側天井面に組み立てられる乗りかご点検作業柵が、正規に組み上げられた時にだけ形成される二次元コード情報を携帯端末によって読み取り、携帯端末は読み取られた二次元コード情報と予め定めた二次元コード判定情報を比較し、二次元コード情報と二次元コード判定情報が一致するとエレベーター制御装置に点検運転許可要求情報を送信し、エレベーター制御装置は、携帯端末からの点検運転許可要求情報を受信すると、エレベーターの乗りかごの点検運転を許可する、ことを特徴としている。
【0076】
これによれば、部品コスト、取り付け工数をできるだけ増やすことなく、乗りかご点検作業柵を正規に組み立てられたことを確認できるエレベーター点検システムが得られる。
【0077】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
10…携帯端末、11…撮像部、12…記憶部、12A…撮像画像記憶部、13…処理部、13A…二次元コード判別部、14…通信部、20…サーバー、21…記憶部、21A…判定コード情報記憶部、22…処理部、22A…二次元コード判別部、23…通信部、30…エレベーター制御装置、31…点検操作切替え検出部、32…処理部、32A…点検操作有効判定部、33…通信部、40…ネットワーク、50…安全柵、50L…左側の側方柵、50R…右側の側方柵、50BL…左側の背面バー部材、50BR…右側の背面バー部材、51…二次元コード、51L…左側の分割された二次元コード、51R…右側の分割された二次元コード。
図1
図2
図3
図4