(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172510
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ブランク材及び容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/14 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B65D3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084363
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】陣内 裕継
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐輔
(57)【要約】 (修正有)
【課題】角部の折り返し不良を防止するとともに、折り返しによる座屈が発生しにくい、ブランク材及び容器を提供すること。
【解決手段】両側が接合されて筒状に形成された際に一方の端縁が曲線となる4つの角部形成面123と一方の端縁が直線となる4つの平面部形成面121、122を有するブランク材であって、前記角部形成面123の端縁が、前記平面部形成面121、122における端縁より上方に切り欠かれた切欠部124を有すること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側が接合されて筒状に形成された際に一方の端縁が曲線となる4つの角部形成面と、一方の端縁が直線となる4つの平面部形成面を有するブランク材であって、
前記角部形成面の端縁が、両側が接合されて筒状に形成された際の前記平面部形成面における端縁より上方に切り欠かれた切欠部を有することを特徴とするブランク材。
【請求項2】
前記切欠部が、両端から中央にかけて徐々に深くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブランク材。
【請求項3】
前記切欠部の最も深い部分が、内側に折り返される端部の所定部分の高さの7%から35%であることを特徴とする請求項1に記載のブランク材。
【請求項4】
前記切欠部の最も深い部分が、内側に折り返される端部の所定部分の高さの15%から25%であることを特徴とする請求項1に記載のブランク材。
【請求項5】
両側が接合されて筒状に形成され前記端部の所定部分が内側に折り返された請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のブランク材で形成される胴部と、
前記折り返された前記ブランク材の端部により保持された底部とを備えることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器等に使用されるブランク材及び紙容器等の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紙容器等の容器が生産されている。例えば、特許文献1には、一端部を内側に折り返した筒体(下端部が内側に折り返されて形成された環状脚部(18)を備える胴部材)を胴部に使用した容器(紙カップ)が開示されている。
特許文献1に記載の容器は、断面及び底が円形であるが、容器として底面が略四角形の容器等、少なくとも胴部の底面と接合する部分に1つの平面状の平面部を有する容器も考えられる。
このような容器の製造においても、特許文献1の容器と同様に、胴部を構成する筒体の一端部を底部の形状に合わせて内側に折り返す必要があるが、当該折り返しにより前記の平面部の折り返し部分において座屈が発生する。
このような座屈を抑制するため、特許文献2のように、胴部を形成するブランク材の平面部の折り返し部分のうち、2つの短辺を形成している平面部の一端に短辺の両端部から中央にかけて徐々に深くなる切り欠きを設けたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-276721号公報
【特許文献2】特許第6997786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の容器は、胴部を形成するブランク材を、カールツールを用いて内側へ折り返す際に発生する圧縮力を逃がすことで、座屈の発生頻度を軽減するものであり、特に圧縮度合いが高い2つの短辺を形成している平面部形成面に切り欠きを設けることで達成している。
一方、角部においては、ブランク材の角部形成面の端部を内側へ折り返す際に発生する圧縮力の影響で、
図5、
図6で示すような、折返部の先端部がさらに折られて重なってしまう、折り返し不良がしばしば発生するという問題があった。
【0005】
特に、角部の曲線の半径が30mm以下の場合、折り返し時に巻き込みが発生やすく、折り返す角部の曲線の半径が小さくなるほど折り返し時に巻き込みの発生頻度が増大する。
そこで、本発明は、角部における角部形成面の折り返し不良を防止するとともに、折り返しによる座屈が発生しにくいブランク材及び容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、両側が接合されて筒状に形成された際に一方の端縁が曲線からなる4つの角部形成面と、一方の端縁が直線からなる4つの平面部形成面を有するブランク材であって、前記角部形成面の端縁が、両側が接合されて筒状に形成された際の前記平面部形成面における端縁より上方に切り欠かれた切欠部を有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブランク材によれば、角部形成面に切欠部を有することにより角部形成面の一方の端縁の折返部の面積が小さくなり、カールツールを用いて内側へ折り返す際に、角部形成面の材料が少なくなることで圧縮やシワによる折り返し不良が防止されるとともに、角部形成面に隣接する平面部形成面の圧縮も緩和されて平面部形成面における折り返しによる座屈も抑制できる。
切欠部の最も深い部分は、一端部の所定部分の高さの7%から35%であることが望ましい。
7%より小さいと折り返し不良の発生の防止効果が低く、35%を超えると容器に形成した際の底部との接合面積が小さくなり漏れが発生する虞が生じる。
切欠部の最も深い部分は、一端部の所定部分の高さの15%から25%であればさらに好適である。
また、角部形成面の折返部が切欠部によって切り欠かれる面積は、角部形成面の折返部の高さが平面部形成面と同じである場合の角部形成面の折返部の面積の10%~15%であるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブランク材の展開図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るブランク材を胴部として使用した容器の3面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るブランク材を胴部として使用した容器の底面側の参考写真。
【
図4】本発明の一実施形態に係るブランク材を胴部として使用した容器の底面側の長辺部及び角部の断面参考写真。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るブランク材及び容器について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、本発明の一実施形態に係るブランク材で胴部120を形成した容器100の構造を
図2を参照して説明する。
容器100は、略四角形状の底部110と、底部110近傍で略四角形の断面を有する筒状の胴部120とを有する。ここでの略四角形とは、4つの角が曲線状に形成された四角形をいう。
底部110は、容器100の底となる略四角形状の底板111と、底板111の縁から下方に張り出した張り出し部112とを有し、張り出し部112は、断面が略四角形の筒形状を有する。
本実施形態では底部110及び胴部120は、容器100の内面側に樹脂層を備える紙により形成されているが、樹脂層を有さず、後述する接合時に接着剤を適用するようにしてもよい。
【0011】
胴部120は、
図1に示すブランク材の両側部を重ね合わせて樹脂層を熱融着して接合した筒状に形成され、底部110側の端部部の折返部125を内側に折り返えし底部110の張り出し部112を挟み込んで接合されて底板111と同じ断面形状を有するとともに、底部110と反対側の端部は内容物を充填した後に頂部閉鎖部130によって閉塞された形状を有する。
【0012】
胴部120を構成するブランク材は、底部110側の断面における略四角形の長辺を形成する2つの平面部形成面121と、底部110側の断面における略四角形の短辺を形成する2つの平面部形成面122と、底部110側の断面における略四角形の4つの角それぞれを形成している湾曲した角部形成面123とを有する。
【0013】
容器100の底部110は、
図2の左下拡大断面図に示すように、ブランク材を筒状に形成した胴部120の下端部の折返部125が内側に折り返えされ、底部110の張り出し部112が挟まれることで、胴部120内部に固定される。
なお、
図2の左下拡大断面図では、図面の理解のため、折返部125、張り出し部112等を離間して描いているが、
図4等の断面写真で示すように、これらは実際には接着層を介して接触している。
【0014】
胴部120を構成するブランク材の4つの角部形成面123の下端には弧状の切欠部124が設けられている。
切欠部124は、
図2の下方拡大図に示すように、本来の折返部125の折り返し高さT、切欠部124の切り欠き深さDとすると、
35%≧D/T≧7%
に設定されるのが望ましい。
なお、本実施形態では、T=7.64mm、D=1.5mmであり、D/T=19.6%に設定されている。
また、本実施形態では角部形成面123の折返部125が切欠部124によって切り欠かれた面積Kは22.2mm
2、角部形成面123の折返部125の高さがTである場合の折返部125の面積Sは191.4mm
2であり、切欠部124によって切り欠かれた面積の割合はK/S=11.6%である。
【0015】
上記で説明したように、端部の折返部125は、胴部120を構成するブランク材を筒状にした後、カールツール(図示せず)を用いて内側に折り返される。
この折り返しの過程で、折り返される胴部120の下端部は、その周長が短くなるように圧縮される。
角部形成面123の端部に切欠部124がなく本来の折り返し高さTを有していた場合、しわが発生して内側に折り込まれることがしばしば発生し、底部110の張り出し部112を挟み込んで接合した際に、
図5、
図6に示すように、角部形成面123の中央付近に折返部125がさらに厚み方向に重なるとともに、折返部125が高さ方向に低くなるものがしばしば発生していた。
本実施形態では4つの角部形成面123の端部に最大深さD=1.5mmの円弧状の切欠部124を有することで、折返部125を折り返してもしわが残留することはなく、
図3に示すように、角部において元のブランク材の角部形成面123の端部形状が維持されるとともに、平面部形成面121、122の折返部125における座屈の発生頻度も軽減する。
【0016】
なお、角部形成面の切り欠きのみで、座屈及び折り曲げ不良の解決はできるが、角部の半径が小さく折り返し高さTが高い場合は、角部形成面123の切り欠きに加えて、平面部形成面121、122に角部形成面123の切欠部124の最大深さDを超えない範囲で同様の切り欠きを設けてもよい。
切欠部124の形状は、当該切り欠きにより切り欠かれた深さが、当該切り欠きの幅方向における両端部から中央にかけて徐々に深い形状にすることにより、しわの発生を効果的に低減できる。
なお、切欠部124の両端は両側の端縁と滑らかにつながるよう、小さなR(切欠き部124とは逆方向の円弧)で接続することで、折り曲げ不良の起点となる頂点をなくすのが望ましい。
本実施形態では円弧状としたが、両端から中央にかけて直線的に深くなる三角形状や曲率が変化する曲線形状等、どのようなものであってもよい。
なお、切欠部124の両側の端縁と接続する部分等の異なる直線や曲線が接続する部分については、折り曲げ不良の起点となる屈折する山あるいは谷の頂点が生じないよう、小さなRで滑らかに接続するのが望ましい。
また、底部110を挟み込んで保持・固定するものでなく、単に折り返された部分であってもよい。
さらに、上記実施形態では、容器100を頂部閉鎖部130によって閉塞された形状としたが、上方が開放されたカップ状の容器であってもよい。
また、胴部120の筒体は、少なくとも1つの角部を有するものであればよい。例えば、断面を角部が湾曲した略三角形状、略五角形状、半円状等のものであってもよい。
【符号の説明】
【0017】
100 容器
110 底部
111 底板
112 張り出し部
120 胴部(ブランク材)
121 平面部形成面(長辺)
122 平面部形成面(短辺)
123 角部形成面
124 切欠部
125 折返部
130 頂部閉鎖部
131 接着部
T 折り返し高さ
D 切り欠き深さ