(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172512
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】循環型空気殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20231129BHJP
F24F 8/22 20210101ALI20231129BHJP
F24F 8/158 20210101ALI20231129BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20231129BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20231129BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61L9/20
F24F8/22
F24F8/158
F24F8/80 200
A61L9/00 C
A61L9/014
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084366
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】509182135
【氏名又は名称】ホロニクス・インターナショナル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522204669
【氏名又は名称】株式会社七椿
(71)【出願人】
【識別番号】511250910
【氏名又は名称】大日工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦明
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CC03
4C180CC04
4C180CC13
4C180DD03
4C180DD09
4C180EA14X
4C180EA34X
4C180HH06
4C180HH17
(57)【要約】
【課題】殺菌効果及び殺菌効率が非常に高く、装置構成が簡単であり、安価に製造することができ、流速の高い空気流を外部へ放出して循環させることが可能であり、運転音も低い循環型空気殺菌装置を提供する。
【解決手段】循環型空気殺菌装置は、殺菌室と、この殺菌室内に設けられ、254nmの波長帯の光を含むUV-C紫外線を放射する環状光源と、空気流入口を介して殺菌室内に流入し空気流出口を介して殺菌室の外部へ流出する空気の流れを形成する送風機と、殺菌室の内壁面から突出して設けられ、空気流入口を介して殺菌室の外部から流入した空気の流れを空気流出口を介して殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と、殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部と、殺菌室の内壁面から突出して設けられ、突出部によって分岐された第2の空気流の方向を環状光源の方向に方向変換する方向変換部とを備えている。環状光源から放射されるUV-C紫外線が第1の空気流及び第2の空気流に直接照射されるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌室と、該殺菌室内に設けられUV-C紫外線を放射する環状光源と、前記殺菌室の内壁面から突出して設けられ、前記殺菌室の外部から流入する空気の流れを前記殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と前記殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部とを備えており、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線が前記第1の空気流及び前記第2の空気流に直接照射されるように構成されていることを特徴とする循環型空気殺菌装置。
【請求項2】
前記第2の空気流の少なくとも一部が、前記環状光源と交差して該環状光源の回りを周回するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項3】
前記第2の空気流の流速が該第1の空気流の流速より遅い速度となるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項4】
殺菌室と、該殺菌室内に設けられ、254nmの波長帯の光を含むUV-C紫外線を放射する環状光源と、空気流入口を介して該殺菌室内に流入し空気流出口を介して該殺菌室の外部へ流出する空気の流れを形成する送風機と、前記殺菌室の内壁面から突出して設けられ、前記空気流入口を介して前記殺菌室の外部から流入した前記空気の流れを前記空気流出口を介して前記殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と前記殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部と、前記殺菌室の前記内壁面から突出して設けられ、前記突出部によって分岐された前記第2の空気流の方向を前記環状光源の方向に方向変換する方向変換部とを備えており、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線が前記第1の空気流及び前記第2の空気流に直接照射されるように構成されていることを特徴とする循環型空気殺菌装置。
【請求項5】
前記第2の空気流の少なくとも一部が、前記環状光源と交差して該環状光源の回りを周回するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項6】
前記第2の空気流の流速が該第1の空気流の流速より遅い速度となるように構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項7】
前記空気流入口が、前記突出部の上流位置における前記内壁面近傍に設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項8】
前記突出部が、前記内壁面から頂辺に向かって突出する第1の傾斜面と、前記頂辺から前記内壁面に向かって後退する第2の傾斜面とを備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項9】
前記突出部が前記環状光源に対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項10】
前記空気流出口が、前記突出部及び前記方向変換部の下流位置における前記内壁面近傍に設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項11】
前記方向変換部が、前記第2の空気流の方向を前記殺菌室の前記内壁面の方向に変換するように構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項12】
前記方向変換部が、頂辺から前記内壁面に向かって滑らかに傾斜する傾斜面と、前記頂辺から前記空気流出口の方向に向かう案内面とを備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項13】
前記環状光源が環状の発光管を備えており、前記発光管の管軸を含む平面が前記内壁面と平行となるように前記環状光源が設置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項14】
前記殺菌室の前記内壁面の少なくとも一部が、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線を反射する鏡面状の反射面で構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項15】
前記殺菌室の前記空気流入口の外部及び前記空気流出口の外部に、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線を遮蔽して外部へ放射されることを抑止する遮蔽部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項16】
前記空気流入口の外部に、外部から流入する空気をろ過するエアフィルタが設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項17】
前記殺菌室が、前記空気流入口及び前記空気流出口を除いて密閉されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項18】
前記光源が、矩形環状の無電極放電ランプであることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項19】
前記殺菌室の前記空気流出口の上流に、空気の脱臭機能を有する脱臭用フィルタが設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の循環型空気殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取込んだ空気をUV-C紫外線により殺菌して放出する循環型の空気殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空気殺菌装置として、特許文献1には、殺菌する空気が流れるダクトの中心部の軸方向に紫外線ランプを設け、紫外線ランプの周りに、平行に配置された複数の導風板の組を2組と、第1組の導風板と第2組の導風板との間を、空気の流出入口となる部分を残して、部分的に仕切る複数の仕切り板とを設けることにより、空気が紫外線ランプの周りを螺旋状に流れて行く構造を有する紫外線照射空気殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている空気殺菌装置によれば、紫外線ランプの周りを空気が螺旋状に流れるように制御されるため、流れる空気をある程度殺菌することが可能である。
【0005】
しかしながら、この空気殺菌装置は、複数の導風板と複数の仕切り板とを組み合わせて空気の流れを制御しているため、装置構成がかなり複雑となってしまうのみならず、多数の部品を使用しているので装置の製造コスト増大を招いてしまう。また、空気を複数の導風板や複数の仕切り板に当接させて制御しているため、放出される空気流の流速を高めることが難しく、さらに、流速を高めた場合は風切り音が高まって運転音が上昇するという問題が生じてしまう。特にこの種の空気殺菌装置は、ランプから放射される紫外線が、複数の導風板や複数の仕切り板によって遮蔽されてしまうので殺菌効果がその分低減し、殺菌の効率が悪いという大きな問題点を有している。さらにまた、導風板の紫外線の当たっていない部分に、殺菌されないウィルスが付着したままとなってしまう問題点をも有している。
【0006】
従って本発明の目的は、殺菌効果及び殺菌効率が非常に高い循環型空気殺菌装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、装置構成が簡単であり、安価に製造することができる循環型空気殺菌装置を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、流速の高い空気流を外部へ放出して循環させることが可能であり、運転音も低い循環型空気殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、循環型空気殺菌装置は、殺菌室と、殺菌室内に設けられUV-C紫外線を放射する環状光源と、殺菌室の内壁面から突出して設けられ、殺菌室の外部から流入する空気の流れを殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部とを備えている。環状光源から放射されるUV-C紫外線が第1の空気流及び第2の空気流に直接照射されるように構成されている。
【0010】
殺菌室の外部から流入した空気の流れは、殺菌室の内壁面から突出して設けられた分岐部によって、殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐される。環状光源から放射されるUV-C紫外線は第1の空気流及び第2の空気流に直接照射される。このように、空気流の分岐を行う分岐部が殺菌室の内壁面に設けられており、環状光源と第1の空気流及び第2の空気流との間の空間には障害物が設けられていないので、環状光源から放射されるUV-C紫外線は、分岐部及び障害物によって遮蔽されることなく、殺菌室内を流れる第1の空気流及び第2の空気流に直接的にかつ確実に照射される。また、導風板等の障害物が存在しないため、障害物に殺菌されないウィルスが付着する問題は発生しない。その結果、殺菌効果及び殺菌効率が非常に高くなる。殺菌室内に分岐部を設けるのみで、空気流の制御を行っているため、装置構成が簡単となり、安価に製造することができる。また、流速の高い空気流を外部へ放出して循環させることが可能であり、運転音を低くすることが可能である。
【0011】
第2の空気流の少なくとも一部が、環状光源と交差してこの環状光源の回りを周回するように構成されていることが好ましい。空気流が環状光源と交差すると共にその回りを周回するように構成されているので、環状光源近傍の強力なUV-C紫外線が、より長時間にわたって空気流に照射される。その結果、細菌やウィルスの滅菌効果及び不活性化効果がより強力となる。
【0012】
第2の空気流の流速が第1の空気流の流速より遅い速度となるように構成されていることも好ましい。第1の空気流はその一部がその速度で外部へ排出されるので、速度を高速とすることにより空気殺菌装置が設置された室内の循環効果が向上する。これに対して、環状光源の方向に進む第2の空気流は、第1の空気流より遅い低速とすることにより長時間にわたってUV-C紫外線に照射されるので殺菌効果が向上する。
【0013】
また、本発明によれば、循環型空気殺菌装置は、殺菌室と、この殺菌室内に設けられ、254nmの波長帯の光を含むUV-C紫外線を放射する環状光源と、空気流入口を介して殺菌室内に流入し空気流出口を介して殺菌室の外部へ流出する空気の流れを形成する送風機と、殺菌室の内壁面から突出して設けられ、空気流入口を介して殺菌室の外部から流入した空気の流れを、空気流出口を介して殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部と、殺菌室の内壁面から突出して設けられ、突出部によって分岐された第2の空気流の方向を環状光源の方向に方向変換する方向変換部とを備えている。環状光源から放射されるUV-C紫外線が第1の空気流及び第2の空気流に直接照射されるように構成されている。
【0014】
殺菌室の外部から空気流入口を介して流入した空気の流れは、殺菌室の内壁面から突出して設けられた分岐部によって、殺菌室の外部へ空気流出口を介して流出する第1の空気流と殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐される。分岐された第2の空気流の方向は、殺菌室の内壁面から突出して設けられた方向変換部によって環状光源の方向に方向変換される。また、環状光源から放射されるUV-C紫外線は第1の空気流及び第2の空気流に直接照射される。このように、空気流の分岐及び方向変換を行う分岐部及び方向変換部が殺菌室の内壁面に設けられており、環状光源と第1の空気流及び第2の空気流との間の空間には障害物が設けられていないので、環状光源から放射されるUV-C紫外線は、分岐部及び方向変換部並びに障害物によって遮蔽されることなく、殺菌室内を流れる第1の空気流及び第2の空気流に直接的にかつ確実に照射される。その結果、殺菌効果及び殺菌効率が非常に高くなる。殺菌室内に分岐部及び方向変換部を設けるのみで、空気流の制御を行っているため、装置構成が簡単となり、安価に製造することができる。また、流速の高い空気流を外部へ放出して循環させることが可能であり、運転音を低くすることが可能である。
【0015】
第2の空気流の少なくとも一部が、環状光源と交差して環状光源の回りを周回するように構成されていることが好ましい。空気流が環状光源と交差すると共にその回りを周回するように構成されているので、環状光源近傍の強力なUV-C紫外線が、より長時間にわたって空気流に照射される。その結果、細菌やウィルスの滅菌効果及び不活性化効果がより強力となる。
【0016】
第2の空気流の流速が第1の空気流の流速より遅い速度となるように構成されていることも好ましい。第1の空気流はその一部がその速度で外部へ排出されるので、速度を高速とすることにより空気殺菌装置が設置された室内の循環効果が向上する。これに対して、環状光源の方向に進む第2の空気流は、第1の空気流より遅い低速とすることにより長時間にわたってUV-C紫外線に照射されるので殺菌効果が向上する。
【0017】
空気流入口が、突出部の上流位置における内壁面近傍に設けられていることも好ましい。これにより、空気流入口から殺菌室に流入した空気は内壁面に沿って進み、突出部に達して効率よく分岐する。
【0018】
突出部が、内壁面から頂辺に向かって突出する第1の傾斜面と、頂辺から内壁面に向かって後退する第2の傾斜面とを備えていることも好ましい。殺菌室の外部から空気流入口を介して流入した空気の流れは、第1の傾斜面に沿って高速で流れ、頂辺近傍において急激に曲がり、その一部が第2の傾斜面に沿って流れ、空気流出口を介して高速で外部へ排出される第1の空気流と、急激な減速が行われて殺菌室の内部方向へ進む低速の第2の空気流とに分岐される。
【0019】
この場合、突出部が環状光源に対向する位置に配置されていることがより好ましい。環状光源に対向する位置で上述した急激な方向変化及び流速変化が行われて分岐されることにより、第1の空気流及び第2の空気流が最適の方向に制御される。
【0020】
空気流出口が、突出部及び方向変換部の下流位置における内壁面近傍に設けられていることも好ましい。これにより、空気流は突出部及び方向変換部を介して内壁面に沿って進み空気流出口から外部へ高速で流出する。
【0021】
方向変換部が、第2の空気流の方向を殺菌室の内壁面の方向に変換するように構成されていることも好ましい。第2の空気流が殺菌室の内壁面の方向に方向変換されるため、これら空気流は内壁面に沿って環状光源の近傍を流れることとなる。その結果、より強いUV-C紫外線に長時間照射されるので、殺菌効果及び殺菌効率がより高くなる。
【0022】
方向変換部が、頂辺から内壁面に向かって滑らかに傾斜する傾斜面と、頂辺から空気流出口の方向に向かう案内面とを備えていることも好ましい。
【0023】
環状光源が環状の発光管を備えており、発光管の管軸を含む平面が、内壁面と平行となるようにこの環状光源が設置されていることも好ましい。内壁面に沿って流れる空気流が環状光源の光軸の近傍を流れることとなるので、より強いUV-C紫外線に長時間照射され、殺菌効果及び殺菌効率がより高くなる。
【0024】
殺菌室の内壁面の少なくとも一部が、環状光源から放射されるUV-C紫外線を反射する鏡面状の反射面で構成されていることも好ましい。環状光源から放射されるUV-C紫外線に加えて内壁面から反射されるUV-C紫外線が存在するので、殺菌室内の殺菌効果及び殺菌効率がより高くなる。
【0025】
殺菌室の空気流入口の外部及び空気流出口の外部に、環状光源から放射されるUV-C紫外線を遮蔽して外部へ放射されることを抑止する遮蔽部材がそれぞれ設けられていることも好ましい。空気流入口及び空気流出口を介して殺菌室の外部へ放射される紫外線は、これら遮蔽部材によって確実に遮断される。
【0026】
空気流入口の外部に、外部から流入する空気をろ過するエアフィルタが設けられていることも好ましい。これにより、塵やほこりなどを含まない空気が殺菌室内に吸入されることとなる。
【0027】
殺菌室が、空気流入口及び空気流出口を除いて密閉されていることも好ましい。殺菌室が空気流入口及び空気流出口を除いて密閉されているため、殺菌室内に吸入された空気は確実に殺菌されて外部に排出される。
【0028】
光源が、矩形環状の無電極放電ランプであることも好ましい。無電極放電ランプは、管軸の断面方向に均一な放射分布を有しており、しかも、その形状が矩形環状であることから、UV-C紫外線は互いに重複してあらゆる方向に放射される。
【0029】
殺菌室の空気流出口の上流に、空気の脱臭機能を有する脱臭用フィルタが設けられていることも好ましい。このような脱臭用フィルタを設けることにより、空気中に残存する臭い原因物質が効果的に吸収される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、環状光源から放射されるUV-C紫外線は、分岐部及び障害物によって遮蔽されることなく、殺菌室内を流れる第1の空気流及び第2の空気流に直接的にかつ確実に照射される。また、導風板等の障害物が存在しないため、障害物に殺菌されないウィルスが付着する問題は発生しない。その結果、殺菌効果及び殺菌効率が非常に高くなる。殺菌室内に分岐部及び方向変換部を設けるのみで、空気流の制御を行っているため、装置構成が簡単となり、安価に製造することができる。また、流速の高い空気流を外部へ放出して循環させることが可能であり、運転音を低くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外して側面方向から見た状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外しかつ
図1とは異なる角度で側面方向から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の実施形態の循環型空気殺菌装置の殺菌室及びその外部の具体的な寸法を示す図である。
【
図4】
図1の実施形態の環型空気殺菌装置における環状光源の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図1の実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外して側面方向から見た場合の空気流の流れを説明する斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外して側面方向から見た状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は本発明の一実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外して側面方向から見た状態を示しており、
図2は本実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外しかつ
図1とは異なる角度で側面方向から見た状態で示しており、
図3は本実施形態の循環型空気殺菌装置の殺菌室及びその外部の具体的な寸法を示している。
【0033】
これらの図に示すように、本実施形態の循環型空気殺菌装置は、角筒形状(本実施形態では四角筒形状)を有する金属製(例えばステンレス製)の筐体10と、筐体10の外側の底面に設けられた複数(本実施形態では4つ)のキャスタ11と、筐体10の底面に設けられ、全面に多数の貫通孔が例えばパンチングで形成された吸気口カバー10aを含む吸気口12と、筐体10の内部に設けられ、吸気口12を介して吸入される空気をろ過するためのエアフィルタ13と、筐体10の内部に設けられ、エアフィルタ13を介して吸入される空気を付勢して空気流を形成する送風ファン14(本発明の送風機に対応する)と、送風ファン14によって送り込まれた空気流を殺菌する殺菌室15と、殺菌室15から送り出される空気をこの循環型空気殺菌装置の外部へ排出する排気口16(
図3参照)とを備えている。筐体10の上面には、全面に多数の貫通孔が例えばパンチングで形成された排気口カバー10bが設けられており、その下に排気口16が設けられている。筐体10の外形寸法は、単なる一例であるが、(横方向)約280mm×(奥行方向)約210mm×(高さ方向)約710mmである。なお、本明細書において、「横方向」とは
図1~
図3及び
図5上で前後方向、「奥行方向」とは
図1~
図3及び
図5上で左右方向、「高さ方向」とは
図1~
図3及び
図5上で上下方向にそれぞれ対応する。因みに、
図1~
図3上で、左側が本実施形態の循環型空気殺菌装置の前側となる。
【0034】
殺菌室15内には、254nmの波長帯の光を含むUV-C紫外線を放射する環状光源17と、殺菌室15の外部から空気流入口15aを介して流入した空気の流れを殺菌室15の外部へ空気流出口15bを介して流出する第1の空気流と、殺菌室15の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部18と、突出部18によって分岐された第2の空気流の方向を環状光源17の方向に方向変換する方向変換部19とが設けられている。本実施形態において、重要なポイントは、突出部18及び方向変換部19が殺菌室15の内壁面15cから突出して設けられている点にある。即ち、突出部18及び方向変換部19は、内壁面15cの一部を構成するように、この内壁面15cと連通しており、殺菌室15内の空間には、環状光源17から放射されるUV-C紫外線を遮蔽するような障害物は設けられていない。従って、環状光源17から放射されるUV-C紫外線は、殺菌室15内を流れる第1の空気流及び第2の空気流に直接的にかつ確実に照射される。その結果、殺菌効果及び殺菌効率が非常に高くなる。また、殺菌室15内の空間に導風板等の障害物が存在しないため、障害物に殺菌されないウィルスが付着する問題は発生しない。さらに、殺菌室15内に、分岐部18及び方向変換部19を設けるのみで、このような空気流の制御を行っているため、装置構成が簡単となり、安価に製造することができる。
【0035】
図4は本実施形態の環型空気殺菌装置における環状光源17の一例を示している。同図から分かるように、本実施形態では、環状光源17として、矩形環状のスクウェア型無電極放電ランプを用いている。この無電極放電ランプ(環状光源)17は、希ガス及びアマルガム状態の微量の水銀が封入された矩形環状の石英ガラス管17aと、石英ガラス管17aの途中の2か所に巻回されたフェライトコア型励磁巻線17bとを備えている。石英ガラス管17aの径は45~60mm程度である。図示しない安定器からこれら励磁巻線17bに高周波電流(例えば140kHz)を流すことにより、石英ガラス管17a内に磁界・電界が発生し、放出された電子が石英ガラス管17a内のアマルガム粒子と融合することによって254nmの波長帯の光を主成分とするUV-C紫外線が放出される。環状光源17が無電極放電ランプであるため、石英ガラス管17aの管軸の断面方向に均一な放射分布で放射が行われる。また、矩形環状であるため、UV-C紫外線は互いに重複してあらゆる方向に放射される。なお、環状光源17が環状の発光管(石英ガラス管17a)を備えており、この発光管の管軸を含む平面が殺菌室15の内壁面15と平行となるようにこの環状光源が設置されている。これにより、内壁面15cに沿って流れる空気流が環状光源17の光軸の近傍を流れることとなるので、その空気流に対してより強いUV-C紫外線に長時間照射され、殺菌効果及び殺菌効率がより高くなる。
【0036】
本実施形態で用いた環状光源17は、具体的には、株式会社七椿製の120Wのスクウェア型無電極放電ランプ(SVI-UVC-254)であるが、本発明の環状光源はこれに限定されるものではない。その他の出力のスクウェア型無電極放電ランプ、例えば、250Wのスクウェア型無電極放電ランプを用いても良い。また、スクウェア型に限定されることなく、その他の形状の環状光源を用いても良い。例えば、丸型(サークル型)、楕円型、多角形型、星型、その他の管形状の無電極放電ランプを用いても良い。
【0037】
突出部18は、前述したように、殺菌室15の内壁面15cから後方(
図1~
図3及び
図5にて左方向)に突出して設けられている。この突出部18は、内壁面15cからこの突出部18の頂辺18aに向かって直線的に又は滑らかに突出する第1の傾斜面18bと、頂辺18aから内壁面15cに向かって直線的に又は滑らかに後退する第2の傾斜面18cとを備えている。本実施形態において、突出部18は、内壁面15cに対して直線的に35度傾斜した第1の傾斜面18bと、内壁面15cに対して直線的に35度傾斜した第2の傾斜面18cとからなる頂角110度の二等辺三角断面形状を有している。殺菌室15の外部から空気流入口15aを介して流入した空気の流れは、第1の傾斜面18bに沿って高速で流れ、頂辺18a近傍において急激に曲がり、その一部が第2の傾斜面18cに沿って流れ、空気流出口15bを介して高速で外部へ排出される第1の空気流と、急激な減速が行われて殺菌室15の内部方向へ進む低速の第2の空気流とに分岐される。また、突出部18は、環状光源17に対向する位置に配置されている。このように、環状光源17に対向する位置で分岐を行っているため、第1の空気流及び第2の空気流を最適の方向に制御することが可能となる。なお、第1の傾斜面18bの傾斜角度、第2の傾斜面18cの傾斜角度、及び頂角は単なる一例であり、これに限定されるものではなく、殺菌室15内の第1の空気流及び第2の空気流の流れが最適となるように適宜選択され、決定される。
【0038】
殺菌室15の空気流入口15aは、突出部18の上流位置において、突出部18が設けられた内壁面15cが一辺となる矩形形状を有している。空気流入口15aをこのような内壁面15cの近傍に設けることにより、空気流入口15aから殺菌室15に流入した空気は内壁面15cに沿って進んで突出部18に達して効率よく分岐する。この空気流入口15aの寸法は、単なる一例であるが、(奥行方向)約48mm×(横方向)約278mmである。
【0039】
方向変換部19は、殺菌室15の内壁面15cから下方に突出して設けられている。この方向変換部19は、頂辺19aから内壁面15cに向かって直線的に又は滑らかに傾斜する傾斜面19bと、頂辺19aから殺菌室15の空気流出口15bの方向に直線的に向かう案内面19cとを備えている。本実施形態において、方向変換部19は、頂辺19aから内壁面15cに向かって直線的に又は滑らかに傾斜する傾斜面19bと、頂辺19aから殺菌室15の空気流出口15bの方向に向かう案内面19cとからなる直角三角断面形状を有している。方向変換部19により、第2の空気流が殺菌室15の内壁面15cの方向に方向変換されるため、これら空気流は内壁面15cに沿って環状光源17の近傍を流れることとなる。その結果、より強いUV-C紫外線に長時間照射されるので、殺菌効果及び殺菌効率がより高くなる。
【0040】
殺菌室15の空気流出口15bは、突出部18及び方向変換部19の下流位置において、突出部18が設けられた内壁面15cが一辺となり、方向変換部19の案内面19cがその対向辺となる矩形形状を有している。空気流出口15bをこのような内壁面15cの近傍に設けることにより、空気流は突出部18及び方向変換部19を介して内壁面15cに沿って進み、空気流出口15bから外部へ高速で流出する。この空気流出口15bの寸法は、単なる一例であるが、(奥行方向)約48mm×(横方向)約278mmである。
【0041】
殺菌室15は、空気流入口15a及び空気流出口15bを除いて密閉されている。密閉されていることにより、殺菌室15内に吸入された空気は外部に漏れることなく確実に殺菌されて排出される。また、殺菌室15は、その内壁面15aが鏡面状(鏡面仕上げ)のステンレス板で形成されている。これにより、環状光源17から放射されるUV-C紫外線に加えて内壁面15aから反射されるUV-C紫外線が存在するので、殺菌室内の殺菌効果及び殺菌効率がより高くなる。殺菌室15は、本実施形態では、突出部18及び方向変換部19を除いて略直方体形状の空間となるように形成されている。殺菌室15の内部寸法は、単なる一例であるが、(横方向)約278mm×(奥行方向)約220mm×(高さ方向)約319mmである。
【0042】
エアフィルタ13は、外部から流入する空気をろ過するためのものであり、吸気口12とエアフィルタ13との間に取り外し可能に設けられている。エアフィルタ13を設けることにより、塵やほこりなどを含まない空気が殺菌室15内に吸入される。
【0043】
殺菌室15の空気流入口15aの外部には、環状光源17から放射されるUV-C紫外線を遮蔽して外部へ放射されることを抑止すると共に、送風ファン14から送り込まれた空気流の方向を制御するための第1の風向制御板20(本発明の遮蔽部材に対応する)及び第2の風向制御板21(本発明の遮蔽部材に対応する)が設けられている。これら第1の風向制御板20及び第2の風向制御板21は正反射防止のための粗面仕上げされたステンレス板で構成されており、その面が異なる方向を向くように互い違いに配置されている。これら第1の風向制御板20及び第2の風向制御板21により、吸気口12、エアフィルタ13及び送風ファン14を介して外部から吸気された空気流は、90度の方向変換を3回行って空気流入口15aから殺菌室15内に流入される。また、正反射防止処置が施されたこれら第1の風向制御板20及び第2の風向制御板21を設けることにより、空気流入口15aを介して殺菌室17の外部へ放射される紫外線は確実に遮断される。
【0044】
殺菌室15の空気流出口15bの外部には、環状光源17から放射されるUV-C紫外線を遮蔽して外部へ放射されることを抑止すると共に、空気流出口15bを介して排出される空気流の方向を制御するための第3の風向制御板22(本発明の遮蔽部材に対応する)及び第4の風向制御板23(本発明の遮蔽部材に対応する)が設けられている。これら第3の風向制御板22及び第4の風向制御板23は正反射防止のための粗面仕上げされたステンレス板で構成されており、櫛歯状に互い違いに配置されている。これら第3の風向制御板22及び第4の風向制御板23により、空気流出口15bを介して排出される空気流は、90度の方向変換を4回行って排気口16から装置外部へ高速で排出される。また、正反射防止処置が施されたこれら第3の風向制御板22及び第4の風向制御板23を設けることにより、空気流出口15bを介して殺菌室15の外部へ漏れ出る紫外線は確実に遮断される。
【0045】
図5は本実施形態の循環型空気殺菌装置における空気流を示しており、以下同図を用いて、空気の流れを説明する。
【0046】
送風ファン14が作動することにより、筐体10の吸気口12及びエアフィルタ13を介して、外部の空気が取り込まれる。この取り込まれた空気の流れAは、第1の風向制御板20及び第2の風向制御板21によってその向きが変えられた後、空気流入口15aを介して殺菌室15内に流入する。
【0047】
殺菌室15内に流入した空気の流れBは、内壁面15cに沿って流れ、突出部18の第1の傾斜面18bに当接する。これにより、空気の流れBは、この第1の傾斜面18bに沿って高速で流れ、頂辺18aの近傍において急激に曲がり、分岐されてその約35%が高速の第1の空気流Cとなる。この第1の空気流Cは、第2の傾斜面18cに沿って流れ、内壁面15cに沿って流れ、方向変換部19の案内面19c及び内壁面15cに沿って進み、空気流出口15bを介して高速で殺菌室15の外部へ排出される。また、空気の流れBは、突出部18の頂辺18aの近傍において急激な減速が行われ、その約65%が殺菌室15の内部方向へ進む低速(例えば、3m/秒以下の流速)の第2の空気流Dに分岐される。この第2の空気流Dは、方向変換部19の傾斜面19bに当接して、方向変換され、この傾斜面19bに沿って流れ、内壁面15cに沿って流れる空気流Eとなる。この空気流Eの一部は、環状光源17の回りを周回する空気流Fや環状光源17と交差するようにその内側を通過する空気流Gとなる。環状光源17の回りを周回し、また、環状光源17と交差した空気流は、最終的に第1の空気流Cと合流し殺菌室15の外部へ排出される。
【0048】
一方、空気流出口15bを介して高速で殺菌室15の外部へ排出された高速の空気流Hは、第3の風向制御板22及び第4の風向制御板23によってその向きが変えられた後、排気口16を介して高速の空気流Iとして循環型空気殺菌装置の外部へ排出される。
【0049】
このように、本実施形態によれば、流速の遅い第2の空気流の一部が、ランプ管壁をなめるように環状光源17の回りを周回する空気流Fや環状光源17とランプ管壁をなめるように交差してその内側を通過する空気流Gとなることにより、環状光源17の近傍の強力なUV-C紫外線がより長時間にわたって照射される。例えば、これら空気流は、1秒間あたり、平均で20mW/cm2の254nmのUV-C紫外線を受ける。その結果、細菌やウィルスの滅菌効果及び不活性化効果がより強力となり、ほぼ99.99%の不活化が可能となる。前にも述べたが、殺菌室15内に、分岐部18及び方向変換部19を設けるのみで、このような空気流の制御を行っているため、装置構成が簡単となり、安価に製造することができる。さらに、このような分岐部18及び方向変換部19によって空気流を制御することにより、風切り音が小さくなるので、装置の運転音を低くすることが可能である。また、第1の空気流Cは高速であり空気流出口15bを介して殺菌室15から外部へ、さらに、排出口16を介して循環型空気殺菌装置の外部へ空気流Iとして高速で排出されるため、この循環型空気殺菌装置が設置された室内の循環効果が向上する。
【0050】
なお、本発明の循環型空気殺菌装置における、殺菌室15の形状及び大きさ、環状光源17の位置、形状及び寸法、突出部18の位置、形状及び寸法、突出部18の第1の傾斜面18b及び第2の傾斜面18cの角度及び傾斜形状、方向変換部19の位置、形状及び寸法、方向変換部19の傾斜面19b及び案内面19cの角度及び傾斜形状、空気流入口15a及び空気流出口15bの位置、形状及び寸法、環状光源17と突出部18及び方向変換部19との相対位置及び相対寸法等は、上述した実施形態の例に限定されるものではなく、種々の態様が適用可能であることは言うまでもない。
【0051】
本発明の循環型空気殺菌装置について、ウィルス不活性化効果を実験により確認した。
【0052】
即ち、
図1の実施形態に示す循環型空気殺菌装置を用い、日本電機工業会の規定する空気清浄機の浮遊ウィルス不活性化試験方法(JEM1467)に準拠して試験を行った。この試験は、専門の試験機関により行われ、試験ウィルスとしてインフルエンザAウィルス(H3N2型)噴霧した閉鎖空間に本循環型空気殺菌装置を設置し、0分、20分、40分、及び60分それぞれ作動させた際のウィルス力価を定量的に測定した。試験チャンバのサイズは23m
3であった。試験は、試験機関の標準的な手順に基づいて行われた。試験チャンバ内の温度平均値は21.0℃、湿度平均値は73%であった。
【0053】
試験測定結果からTCID
50法によりウィルス感染価を算出した。その算出結果を表1に示す。
【表1】
【0054】
表1より、インフルエンザAウィルス(H3N2型)に対する本発明の循環型空気殺菌装置の感染価減少値は、運転時間20分で、2.50-0.66(logTCID50/mL)=1.84(logTCID50/mL)となるため98.55%の減少値であり、運転時間40分で、2.50-0.00(logTCID50/mL)=2.54(logTCID50/mL)となるため99.68%の減少値であり、運転時間60分で、2.50-0.00(logTCID50/mL)=2.54(logTCID50/mL)となるため99.68%の減少値であった。
【0055】
このように、本発明の循環型空気殺菌装置によれば、噴霧20分後には、インフルエンザAウィルスの減少値が98.55%となり、噴霧40分以降には、減少値が検出限界に近い99.68%となることが実証された。試験チャンバのサイズが23m3であるため、一般的な介護施設などの一人部屋(6畳間)における本発明の循環型空気殺菌装置によるインフルエンザウィルスの不活性化効果は非常に高いことが分かる。新型コロナウィルスのUV-C耐性がインフルエンザAウィルスのUV-C耐性より比較的低いため、本発明の循環型空気殺菌装置によれば、新型コロナウィルスの減少値が噴霧20分後には99.9%以上となるものと推測できる。
【0056】
図6は本発明の他の実施形態の循環型空気殺菌装置について側面カバーを外して側面方向から見た状態を示している。
【0057】
本実施形態の循環型空気殺菌装置は、
図1~
図5に示した実施形態の循環型空気殺菌装置の殺菌室17内に脱臭用フィルタ24を追加したものであり、脱臭用フィルタ24を追加したことを除いて、本実施形態の構成及び作用効果は
図1~
図5に示した実施形態の場合と全く同様である。従って、本実施形態において、同一部分の詳細な説明は省略し、同一の構成要素については同一の参照番号を使用している。
【0058】
図6に示すように、本実施形態の循環型空気殺菌装置において、殺菌室15の空気流出口15bの上流には、脱臭用フィルタ24が設けられている。具体的には、本実施形態において、脱臭用フィルタ24は、方向変換部19の頂辺19aと、突出部18の第2の傾斜面18cとの間に架設されており、これによって第1の空気流がこの脱臭用フィルタ24を通過するように構成されている。さらに、環状光源17からのUV-C紫外線がこの脱臭用フィルタ24に照射されるように構成されている。
【0059】
脱臭用フィルタ24は、活性炭ハニカム構造を有する矩形板状のフィルタであり、その多孔質構造により、通過する空気の臭い原因物質を吸収する。吸収した臭い原因物質は、照射されるUV-C紫外線によって殺菌される。脱臭用フィルタ24として、活性炭ハニカムに、例えばTiO2等の光触媒がコーティングされたものを用いても良い。光触媒がコーティングされていれば、UV-C紫外線によって光触媒が活性化され、臭い原因物質の分解効果がより向上する。活性炭ハニカムに代えて、セラミックハニカム構造を有する矩形板状のフィルタを用いても良い。即ち、活性炭ハニカム、光触媒付活性炭ハニカム、セラミックハニカム又は光触媒付セラミックハニカム等のハニカム構造を有する矩形板状のフィルタを用いても良い。ハニカム構造として、孔が板面に対して垂直な垂直孔ハニカムを用いても良いし、孔が板面に対して傾斜している傾斜孔ハニカムを用いても良い。
【0060】
ハニカム構造の脱臭用フィルタ24を用いることにより、約50%程度の開口率を得ることができ、その結果、高速の第1の空気流を、流速を大幅に低下させずに通過させることができる。なお、ハニカム構造の孔の軸方向が空気流の方向と平行となるように構成すれば、空気流に対する抵抗が小さくなり、流速の低下は小さくなる。また、ハニカム構造による開口率を調整することによって、低速の第2の空気流の流速をさらに遅くし、滅菌効果又は不活性化効果をより高めることが可能となる。
【0061】
上述したように、脱臭用フィルタ24はハニカム構造を有しており、このハニカム構造が環状光源17からのUV-C紫外線に効率良く照射される位置に設けられていることが望ましい。ハニカムに光触媒がコーティングされている場合には、その光触媒にUV-C紫外線に効率良く照射される位置及び角度で脱臭用フィルタ24が取付けられていることが望ましい。また、ハニカムの内面に光触媒がコーティングされている場合には、その内面にもUV-C紫外線が入り込むように構成すれば、殺菌効果が最大となる。
【0062】
本実施形態の循環型空気殺菌装置は、
図1~
図5に示した実施形態の場合と同様の作用効果を有しており、さらに、脱臭用フィルタ24を備えることによって、細菌やウィルスが滅菌及び不活性化された空気中に残存する臭い原因物質が吸収され、UV-C紫外線によって殺菌され、光触媒がコーティングされている場合には、UV-C紫外線によってその光触媒が活性化されて臭い原因物質の分解が促進されるという効果をも有している。
【0063】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 筐体
10a 吸気口カバー
10b 排気口カバー
11 キャスタ
12 吸気口
13 エアフィルタ
14 送風ファン
15 殺菌室
15a 空気流入口
15b 空気流出口
15c 内壁面
16 排気口
17 環状光源
17a 石英ガラス管
17b 励磁巻線
18 突出部
18a、19a 頂辺
18b 第1の傾斜面
18c 第2の傾斜面
19 方向変換部
19b 傾斜面
19c 案内面
20 第1の風向制御板
21 第2の風向制御板
22 第3の風向制御板
23 第4の風向制御板
24 脱臭用フィルタ
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌室と、該殺菌室内に設けられUV-C紫外線を放射する環状光源と、前記殺菌室の内壁面から突出して設けられ、前記殺菌室の外部から流入する空気の流れを前記殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と前記殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部とを備えており、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線が前記第1の空気流及び前記第2の空気流に直接照射されるように構成されており、前記第2の空気流の流速が該第1の空気流の流速より遅い速度となるように構成されていることを特徴とする循環型空気殺菌装置。
【請求項2】
前記第2の空気流の少なくとも一部が、前記環状光源と交差して該環状光源の回りを周回するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項3】
殺菌室と、該殺菌室内に設けられ、254nmの波長帯の光を含むUV-C紫外線を放射する環状光源と、空気流入口を介して該殺菌室内に流入し空気流出口を介して該殺菌室の外部へ流出する空気の流れを形成する送風機と、前記殺菌室の内壁面から突出して設けられ、前記空気流入口を介して前記殺菌室の外部から流入した前記空気の流れを前記空気流出口を介して前記殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と前記殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部と、前記殺菌室の前記内壁面から突出して設けられ、前記突出部によって分岐された前記第2の空気流の方向を前記環状光源の方向に方向変換する方向変換部とを備えており、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線が前記第1の空気流及び前記第2の空気流に直接照射されるように構成されており、前記第2の空気流の流速が該第1の空気流の流速より遅い速度となるように構成されていることを特徴とする循環型空気殺菌装置。
【請求項4】
前記第2の空気流の少なくとも一部が、前記環状光源と交差して該環状光源の回りを周回するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項5】
前記空気流入口が、前記突出部の上流位置における前記内壁面近傍に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項6】
前記突出部が、前記内壁面から頂辺に向かって突出する第1の傾斜面と、前記頂辺から前記内壁面に向かって後退する第2の傾斜面とを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項7】
前記突出部が、前記環状光源に対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項8】
前記空気流出口が、前記突出部及び前記方向変換部の下流位置における前記内壁面近傍に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項9】
前記方向変換部が、前記第2の空気流の方向を前記殺菌室の前記内壁面の方向に変換するように構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項10】
前記方向変換部が、頂辺から前記内壁面に向かって滑らかに傾斜する傾斜面と、前記頂辺から前記空気流出口の方向に向かう案内面とを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項11】
前記環状光源が環状の発光管を備えており、前記発光管の管軸を含む平面が前記内壁面と平行となるように前記環状光源が設置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項12】
前記殺菌室の前記内壁面の少なくとも一部が、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線を反射する鏡面状の反射面で構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項13】
前記殺菌室の前記空気流入口の外部及び前記空気流出口の外部に、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線を遮蔽して外部へ放射されることを抑止する遮蔽部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項14】
前記空気流入口の外部に、外部から流入する空気をろ過するエアフィルタが設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項15】
前記殺菌室が、前記空気流入口及び前記空気流出口を除いて密閉されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項16】
前記光源が、矩形環状の無電極放電ランプであることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項17】
前記殺菌室の前記空気流出口の上流に、空気の脱臭機能を有する脱臭用フィルタが設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の循環型空気殺菌装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌室と、該殺菌室内に設けられUV-C紫外線を放射する環状光源と、前記殺菌室の内壁面から突出して設けられ、前記殺菌室の外部から流入する空気の流れを前記殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と前記殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部と、前記殺菌室の前記内壁面から突出して設けられ、前記突出部によって分岐された前記第2の空気流の方向を前記環状光源の方向に方向変換する方向変換部とを備えており、前記突出部、前記方向変換部及び前記殺菌室の前記内壁面は、前記第1の空気流が前記突出部により前記殺菌室の内壁面に沿って前記殺菌室の外部へ高速で流出すると共に前記環状光源から放射されるUV-C紫外線に直接照射され、前記第2の空気流が前記突出部において急激に減速され前記方向変換部によって方向変換されて前記殺菌室の内部へ向かい前記殺菌室の前記内壁面に沿って流れることにより前記第1の空気流の流速より遅い流速で流れると共に前記環状光源から放射されるUV-C紫外線に直接照射されるように構成されていることを特徴とする循環型空気殺菌装置。
【請求項2】
前記第2の空気流の少なくとも一部が、前記環状光源と交差して該環状光源の回りを周回するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項3】
殺菌室と、該殺菌室内に設けられ、254nmの波長帯の光を含むUV-C紫外線を放射する環状光源と、空気流入口を介して該殺菌室内に流入し空気流出口を介して該殺菌室の外部へ流出する空気の流れを形成する送風機と、前記殺菌室の内壁面から突出して設けられ、前記空気流入口を介して前記殺菌室の外部から流入した前記空気の流れを前記空気流出口を介して前記殺菌室の外部へ流出する第1の空気流と前記殺菌室の内部へ向かう第2の空気流とに分岐する突出部と、前記殺菌室の前記内壁面から突出して設けられ、前記突出部によって分岐された前記第2の空気流の方向を前記環状光源の方向に方向変換する方向変換部とを備えており、前記突出部、前記方向変換部及び前記殺菌室の前記内壁面は、前記第1の空気流が前記突出部により前記殺菌室の内壁面に沿って前記殺菌室の外部へ高速で流出すると共に前記環状光源から放射されるUV-C紫外線に直接照射され、前記第2の空気流が前記突出部において急激に減速され前記方向変換部によって方向変換されて前記殺菌室の内部へ向かい前記殺菌室の前記内壁面に沿って流れることにより前記第1の空気流の流速より遅い流速で流れると共に前記環状光源から放射されるUV-C紫外線に直接照射されるように構成されていることを特徴とする循環型空気殺菌装置。
【請求項4】
前記第2の空気流の少なくとも一部が、前記環状光源と交差して該環状光源の回りを周回するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項5】
前記空気流入口が、前記突出部の上流位置における前記内壁面近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項6】
前記突出部が、前記内壁面から頂辺に向かって突出する第1の傾斜面と、前記頂辺から前記内壁面に向かって後退する第2の傾斜面とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項7】
前記突出部が、前記環状光源に対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項8】
前記空気流出口が、前記突出部及び前記方向変換部の下流位置における前記内壁面近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項9】
前記方向変換部が、頂辺から前記内壁面に向かって滑らかに傾斜する傾斜面と、前記頂辺から前記空気流出口の方向に向かう案内面とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項10】
前記環状光源が環状の発光管を備えており、前記発光管の管軸を含む平面が前記内壁面と平行となるように前記環状光源が設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項11】
前記殺菌室の前記内壁面の少なくとも一部が、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線を反射する鏡面状の反射面で構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項12】
前記殺菌室の前記空気流入口の外部及び前記空気流出口の外部に、前記環状光源から放射されるUV-C紫外線を遮蔽して外部へ放射されることを抑止する遮蔽部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項13】
前記空気流入口の外部に、外部から流入する空気をろ過するエアフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項14】
前記殺菌室が、前記空気流入口及び前記空気流出口を除いて密閉されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項15】
前記光源が、矩形環状の無電極放電ランプであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。
【請求項16】
前記殺菌室の前記空気流出口の上流に、空気の脱臭機能を有する脱臭用フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の循環型空気殺菌装置。