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特開2023-172515コンクリート表層部の品質改良方法及びその撹拌装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172515
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】コンクリート表層部の品質改良方法及びその撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20231129BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20231129BHJP
   E04F 21/24 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E04G21/10 Z
E04G21/02 103Z
E04F21/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084374
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】平間 昭信
(72)【発明者】
【氏名】折田 現太
(72)【発明者】
【氏名】金子 泰明
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩▲朗▼
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172BA11
2E172BA13
2E172DB07
2E172FA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、寒冷期でもコンクリートの凝結時間が大幅に遅れることがなく、これにより現場作業者などの関係者の労働時間を短縮することができ、また、打込んだコンクリート全体に凝結促進材を適用する必要がないため凝結促進材の使用量を削減でき、もってコストの削減にもつながり、さらには撹拌装置を使用することにより、コンクリート表層部の仕上げ可能時間を短縮することができるコンクリート表層部の品質改良方法及びその撹拌装置を提供する。
【解決手段】本発明は、コンクリートの打込み後、該コンクリートの表面に凝結促進材18を散布し、散布した凝結促進材18と前記打込んだコンクリートにつきコンクリートの表面からコンクリートの改質を所望する深さまで撹拌し、撹拌したコンクリートの表面からコンクリートの凝結促進を所望する深さまでのコンクリートの性質を変えることを特徴とする。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打込み後、該コンクリートの表面に凝結促進材を散布し、散布した凝結促進材と前記打込んだコンクリートにつきコンクリートの表面からコンクリートの改質を所望する深さまで撹拌し、撹拌したコンクリートの表面からコンクリートの凝結促進を所望する深さまでのコンクリートの性質を変える、
ことを特徴とするコンクリート表層部の品質改良方法。
【請求項2】
駆動部材と、該駆動部材に連動して回転し、基端部から水平方向に延出する回転軸と、該回転軸の外周面に取り付けられ、回転軸の回転にあわせて軸方向に回転する撹拌羽根群と、前記基端部から水平方向に延出し前記回転軸と平行に設けられ、かつ進行方向に向かって前記回転軸の後ろ側に設けられたガイド板と、を有し、
前記撹拌羽根群は、複数の撹拌羽根で構成され、該複数の撹拌羽根は前記回転軸の軸方向に間隔をあけて、隣り合う撹拌羽根が前記回転軸上で交差するよう取り付けられ、
前記撹拌羽根は、軸方向に対して傾きを有して構成され、前記撹拌羽根が回転すると前記コンクリート表面から所定の深さまで撹拌することができ、
前記ガイド板は、前記撹拌装置の進行方向前方から後方に向かって下り傾斜を有し、該下り傾斜の後方側下端部は前記撹拌後のコンクリート表層部と接触するよう構成され、
該接触した状態で前記撹拌装置が進行方向に進行することにより、前記撹拌後のコンクリート表層部を平滑にできる、
ことを特徴とするコンクリート表層部の撹拌装置。
【請求項3】
前記ガイド板は、前記撹拌羽根群が撹拌するコンクリート表面からの深さを調節する深さ調節部を有し、
前記深さ調節部は、前記撹拌羽根群が、前記コンクリート表面から所定の深さに差し込まれて撹拌する深さ長を調節し、前記調節された所定の深さ長で前記ガイド板の後方側下端部が固定される、
ことを特徴とする請求項2記載のコンクリート表層部の撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌装置は、持ち運び用の把持部を備えており、該把持部を把持して操作可能とした、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のコンクリート表層部の撹拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表層部の品質改良方法及びその撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷期のコンクリート工事ではコンクリートの凝結時間が大幅に遅れるため、スラブなどの仕上げ作業は深夜となる場合がある。また、凝結の開始を正確に予測することは難しいため、現場作業者などの関係者は、仕上げ作業開始までの間、現場で待機することとなり、労働時間が長くなるとの問題が生じていた。
【0003】
これらの問題に対して、従来はコンクリート上面の仕上げ可能時間を短縮する方法として、可溶性の紙袋に梱包された粉末状の凝結促進材(2~6kg/m3)を現場でアジテーター車などに投入し、撹拌する方法が行われている。
【0004】
しかしながら、従来方法のように生コン工場のバッチャープラントやアジテーター車などに凝結促進材を添加する手法では、打込むコンクリート全体に凝結促進材を適用するため使用量が多くなり、コストが増加するとの課題がある。
【0005】
そこで、コンクリート表層部のかぶり部分のみを凝結促進させることができれば、コストを抑えつつ仕上げ可能時間を短縮することができる。すなわち、コンクリート表層部の仕上げ可能時間の短縮を目的とすれば、凝結の促進を必要とする範囲は、コンクリートの表層のみとなるのである。したがって、本発明は打込み直後に凝結促進材を散布し、本発明の撹拌装置を使用して、コンクリート表層部を一様に撹拌し、表層部の仕上げ可能時間を短縮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-63884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、例えば寒冷期のコンクリート工事においてコンクリートの凝結時間が大幅に遅れることがなく、これにより現場作業者などの関係者の労働時間を短縮することができ、また、打込むコンクリート全体に凝結促進材を適用する必要がないため凝結促進材の使用量を削減でき、もってコストの削減にもつながり、さらには撹拌装置を使用することにより、コンクリート表層部の仕上げ可能時間を短縮することができるコンクリート表層部の品質改良方法及びその撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
コンクリートの打込み後、該コンクリートの表面に凝結促進材を散布し、散布した凝結促進材と前記打込んだコンクリートにつきコンクリートの表面からコンクリートの改質を所望する深さまで撹拌し、撹拌したコンクリートの表面からコンクリートの凝結促進を所望する深さまでのコンクリートの性質を変える、
ことを特徴とし、
または、
駆動部材と、該駆動部材に連動して回転し、基端部から水平方向に延出する回転軸と、該回転軸の外周面に取り付けられ、回転軸の回転にあわせて軸方向に回転する撹拌羽根群と、前記基端部から水平方向に延出し前記回転軸と平行に設けられ、かつ進行方向に向かって前記回転軸の後ろ側に設けられたガイド板と、を有し、
前記撹拌羽根群は、複数の撹拌羽根で構成され、該複数の撹拌羽根は前記回転軸の軸方向に間隔をあけて、隣り合う撹拌羽根が前記回転軸上で交差するよう取り付けられ、
前記撹拌羽根は、軸方向に対して傾きを有して構成され、前記撹拌羽根が回転すると前記コンクリート表面から所定の深さまで撹拌することができ、
前記ガイド板は、前記撹拌装置の進行方向前方から後方に向かって下り傾斜を有し、該下り傾斜の後方側下端部は前記撹拌後のコンクリート表層部と接触するよう構成され、
該接触した状態で前記撹拌装置が進行方向に進行することにより、前記撹拌後のコンクリート表層部を平滑にできる、
ことを特徴とし、
または、
前記ガイド板は、前記撹拌羽根群が撹拌するコンクリート表面からの深さを調節する深さ調節部を有し、
前記深さ調節部は、前記撹拌羽根群が、前記コンクリート表面から所定の深さに差し込まれて撹拌する深さ長を調節し、前記調節された所定の深さ長で前記ガイド板の後方側下端部が固定される、
ことを特徴とし、
または、
前記撹拌装置は、持ち運び用の把持部を備えており、該把持部を把持して操作可能とした、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば寒冷期のコンクリート工事においてコンクリートの凝結時間が大幅に遅れることがなく、これにより現場作業者などの関係者の労働時間を短縮することができ、また、打込んだコンクリート全体に凝結促進材を適用する必要がないため凝結促進材の使用量を削減でき、もってコストの削減にもつながり、さらには撹拌装置を使用することにより、コンクリート表層部の仕上げ可能時間を短縮することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の撹拌装置の構成を示した概略構成図(1)である。
図2】本発明の撹拌装置の構成を示した概略構成図(2)である。
図3】本発明の撹拌装置の構成を示した概略構成図(3)である。
図4】本発明の施工方法の概略構成を説明した説明図(1)である。
図5】本発明の施工方法の概略構成を説明した説明図(2)である。
図6】本発明の施工方法により得られた凝結時間(仕上げ時間)の短縮効果を説明した説明図である。
図7】本発明の施工方法によるコンクリート品質に対する影響を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
まず、コンクリート表層部12の撹拌時に用いられる本発明の撹拌装置1につき説明する。
【0012】
図1は、本発明の撹拌装置1を示す斜視図である。前記撹拌装置1は、モーターなどの駆動部2を動力源として作動する。図1から理解されるとおり、前記撹拌装置1は、前記駆動部2の前方側に支持杆3が、後方側に操作杆4が接続されている。そして、前記支持杆3の先端側には撹拌部5が設けられている。また、前記操作杆4の末端側には電力部6を有して構成されており、該電力部6は蓄電池などが用いられ電力を前記駆動部2に供給する。
【0013】
前記撹拌部5は、前記駆動部2の動力に連動して回転する回転軸7と、該回転軸7の基端部側には、該回転軸7の進行方向前方側に略半円アーチ状をしたカバー部材8が取り付けられている。そして、該回転軸7の外周面には複数の撹拌羽根9が取り付けられて撹拌羽根群10を形成している。さらに、前記回転軸7の進行方向後方側には、前記カバー部材8に取り付けられ、該回転軸7と平行に配置された状態で進行方向前方から後方に向かって下り傾斜を有して構成された略方形状のガイド板11が取り付けられている。
【0014】
前記回転軸7は、該回転軸7の基端部と前記支持杆3とが連結されている。該支持杆3には、図示していない動力伝動部材が内蔵されており、前記駆動部2の動力と連動して前記回転軸7が回転可能に接続されている。そのため、駆動部2の動力の強弱の変化に合わせて回転軸7の回転速度を変えることができる。
【0015】
そして、前記回転軸7の外周面には複数の撹拌羽根9からなる撹拌羽根群10が形成されている。前記撹拌羽根9は、少し厚みを有する略長方形状の板状をしており、前記回転軸7の軸方向に間隔をあけて取り付けられている(図2参照)。前記撹拌羽根9の長手方向の長さは、本実施では60mm程度であり、図2に示されるとおり、コンクリート表面から30mm程度の深さを撹拌することができるのである。なお、前記撹拌羽根9の長手方向の長さは、60mm程度に限定されるものではなく、撹拌を所望する深さに応じて適宜変更することができる。
【0016】
図2から理解されるとおり、前記撹拌羽根9は、隣り合う撹拌羽根9が前記回転軸7上で交差するよう取り付けられている。そして、一枚一枚の撹拌羽根9は、前記回転軸7の軸方向に対して傾きを有して構成されており、本実施では、前記一枚一枚の撹拌羽根9の傾きを回転軸7に対して60度程度の傾きを有するように構成されている(図2参照)。この傾きにより、コンクリート表面13から所定の深さ、すなわちコンクリート表層部12を十分かつ効率よく撹拌することできるのである。
【0017】
前記ガイド板11は、前記撹拌装置1の進行方向前方から後方に向かって下り傾斜を有しており、該下り傾斜の後方側下端部14はコンクリート表層部12と接触するように取り付けられている(図1参照)。前記後方側下端部14がコンクリート表面13と接触した状態で撹拌装置1が進行すると、前記撹拌羽根群10によって撹拌混合された後のコンクリート表層部12の表面を平滑にならす役割がある。
【0018】
また、図2および図3から理解されるとおり、前記ガイド板11には、長手方向に延びる直線状の開口長穴16が設けられており、そして、前記カバー部材8の進行方向後方側には、前記ガイド板11に対して垂直に突出した調節部材17が設けられている。
【0019】
前記ガイド板11は、前記開口長穴16に前記カバー部材8から突出された調節部材17が貫挿し、該貫挿した調節部材17に例えばナットなどの連結具がねじ込まれて、前記開口長穴16の所定位置で固定できるようになっている。これを深さ調節部15という。
【0020】
そして、図4(b)に示されるとおり、前記後方側下端部14の下端からは、撹拌羽根群10の撹拌羽根9が露出するよう調整されている。すなわち、露出した撹拌羽根9の長さが撹拌できる深さ(深さ長L)となるのである。前記ガイド板11の開口長穴16のどの位置で前記調節部材17を固定するかによって、撹拌する深さを適宜変えることができる。これは、前記開口長穴16の開口長分だけガイド板11を上下に移動でき、前記後方側下端部14の下端から撹拌羽根群10が露出する長さ、つまり撹拌する深さを調整することができるためである。
【0021】
よって、撹拌する深さに応じて、前記ガイド板11の前記後方側下端部14をコンクリート表面13に接触した状態で、その状態の位置で前記調節部材17を開口長穴16に固定するため、撹拌羽根群10が撹拌する深さを調整しつつ、一定に撹拌混合でき、かつ前記ガイド板11によってコンクリート表面13を平滑することができるものとなる。なお、前記撹拌羽根群10が撹拌する深さ、つまりコンクリート表層部12に撹拌羽根9が差し込まれる長さを深さ長Lとしている(図4(b)参照)。
【0022】
これにより、撹拌羽根群10により撹拌する深さを容易に調節することができ、コンクリート表層部12を所望する深さで均一に撹拌することができる。
【0023】
ここで、前記開口長穴16は50mm程度の直線状の開口長を有して構成されている。すなわち、撹拌羽根9の深さ長Lの調節範囲は、コンクリート表面13を0mmとした場合に、0~50mm程度の深さまで調節することができる。本実施では、深さ長Lを30mmとし、コンクリート表面13から30mmの深さでコンクリート表層部12を撹拌している。なお、図4(a)に示されるとおり、コンクリート構造物には鉄筋が埋設されているため、コンクリート表面13から鉄筋のかぶり部分までの厚さにあわせて、適宜判断され、撹拌することができる。
【0024】
また、本発明の撹拌装置1には、支持杆3上に把持部19が設けられており、前記把持部19を把持することにより容易に撹拌部5を操作することができるのである。
【0025】
次に、本発明の撹拌装置1を用いたコンクリート表層部12の施工方法について図4及び図5に基づいて説明する。なお、図4の撹拌装置1は簡易的に記載している。
【0026】
まず、所定箇所にコンクリートを打込み(図5のフロー100)、該打込んだコンクリートを例えばバイブレーターなどの振動機を使用して締固める(図5のフロー101)。そして、締固めたコンクリート上面のレベル出し、すなわちコンクリート表面13が水平に平らとなるように施工する(図5のフロー102)。
【0027】
その後、図4(a)から理解されるとおり、平らにしたコンクリート表面13に凝結促進材18を均一に散布し(図5のフロー103)、該散布した凝結促進剤18とコンクリート表層部12(かぶり部分)が十分に混ざり合うように前記撹拌装置1を用いて撹拌する(図5のフロー104)。
【0028】
なお、凝結促進材18の散布量は、施工時期や気温、仕上げ作業の短縮を希望する時間等に応じて適宜調整される。後述するが、本発明の施工方法を用いたコンクリートの品質評価では、凝結促進剤18の散布量を200g/m~400g/m散布することで、コンクリートの凝結時間(仕上げ時間)を約2~4時間短縮する効果が確認されている。
【0029】
ここで、前記凝結促進材18は、例えば硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムあるいはリチウム塩などを主成分として配合されているものが使用されている。
【0030】
また、本発明の撹拌装置1は、前述のとおりコンクリート表面13から30mm程度のコンクリート表層部12を撹拌するよう構成されている(図4(a)参照)。つまり、図2に示す撹拌羽根群10を形成する複数の撹拌羽根9がそれぞれ回転することで、凝結促進材18とコンクリート表層部12とを撹拌することができる。さらに、前記複数の撹拌羽根9は、回転軸7に対して60度程度の傾きを有して構成されているため、効率よくかつ十分に撹拌することができ、前記複数の撹拌羽根9が差し込まれる深さまで均等に撹拌することで、コンクリート表層部12の凝結時間にばらつきが生じにくくなるのである。
【0031】
前記撹拌後、前記コンクリート表層部12の凝結を促進した上で、例えば木鏝やプラスチック製の鏝、トンボなどの荒ならし用具を使用してコンクリート表面13を水平に平らとなるように荒ならしを行う(図5のフロー105)。その後、コンクリート表層部12が凝結するのを待つことになるが、前述のとおり凝結にかかる時間(仕上げ作業を行うまでの時間)を本施工方法により約2~4時間短縮することができるのである。
【0032】
その後、コンクリート表層部12が凝結したのを確認した後、最終の仕上げ段階で例えば金ゴテ、機械コテなどの仕上げ用ならし具を用いてコンクリート表面13を水平に平らとなるようにコテ仕上げ作業をおこなう(図5のフロー106)。
【0033】
次に、本発明の撹拌装置1を用いて上記施工方法による凝結時間(仕上げ作業時間)の短縮効果とコンクリート品質の評価結果について、図に基づき簡単に説明する。
【0034】
まず、図6は、凝結促進材18をコンクリート表層部12に添加した場合にかかる凝結時間(仕上げ時間)の短縮を確認した折れ線グラフである。なお、グラフの横軸は凝結促進材18の散布量(g/m)、縦軸は仕上げ短縮時間を表している。
【0035】
そして、図6(a)は、養生温度を5℃とし、コンクリート呼び強度を21、30、45とした場合の各散布量に対する仕上げ時間との関係を示している。同様に図6(b)は、養生温度を10℃とし、コンクリート呼び強度を21、30、45とした場合の各散布量に対する仕上げ時間との関係を示している。
【0036】
図6(a)(b)から、コンクリート表面13に凝結促進材18を200~400g/m散布した場合に、凝結時間(仕上げ時間)は約2~4時間の短縮効果が認められた。また、一定の散布量でコンクリート強度あるいは養生温度に関わらず、同程度の仕上げ時間の短縮効果が得られることが確認された。
【0037】
次いで、図7はコンクリート呼び強度を30とし、ベースコンクリートと、凝結促進材18をコンクリート全体に練り混ぜた試験体と、本施工方法によりコンクリート表面13から30mm深さのコンクリート表層部12に凝結促進材18を添加した試験体とを比較したグラフである。
【0038】
横軸は、各試験体に対する条件を示しており、縦軸はコンクリートの圧縮強度(N/mm)を示している。ここで、横軸における表示構成の意味を簡単に説明する。横軸のF0とは凝結促進材18が添加されていない状態を表し、F2とはセメント量に対する凝結促進材18の添加率(%)が重量比で2%、すなわち凝結促進材18が200g/m相当添加されている状態を表している。また、Sとは凝結促進材18をコンクリート全体に練り混ぜた状態、T30は、凝結促進材18をコンクリート表面から30mmのコンクリート表層部12に練り混ぜた状態、Cは、本発明の施工方法により作製した各試験体(凝結促進材18の添加率を変えたもの)をコア抜きした状態を示している。
【0039】
これらの結果から、凝結促進材18をコンクリート表面13から30mmに添加した場合のコンクリートの圧縮強度は、ベースコンクリート(図7中の「30-F0-S」)と同等の効果が得られることが確認された。また、凝結促進材18をコンクリート全体に練り混ぜた試験体は、凝結促進材18の添加量が多くなるに従って、圧縮強度が増加する傾向にあるが、コンクリート表層部12にのみ凝結促進材18を添加した場合は、コンクリートの圧縮強度に大幅な変化は見られなかった。
【0040】
したがって、凝結促進材18をコンクリート表層部12にのみ添加する本発明の施工方法を用いたとしても、コンクリート構造体が持つべき強度基準である調合管理強度および調合管理強度×0.7を超えるものであり、よってコンクリート品質、特にコンクリート強度及び耐久性に影響ないことが確認された。
【0041】
以上から、本発明の施工方法は、凝結促進材18をコンクリート表層部12にのみ添加するため、コンクリート全体に凝結促進材18を添加する従来技術に比べて凝結促進材18の使用量を減らすことができるのである。したがって、施工に掛かるコストを大幅に抑えると共に、仕上げ時間(凝結時間)の短縮を図ることができる。
【0042】
加えて、本発明の撹拌装置1を用いることで、コンクリート表層部12を十分かつ均一に撹拌することができるものであるから、従来のようにアジテーター車や撹拌機を使用して撹拌する必要がなく、利便性が高いことも本発明の特徴の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上記実施形態では、コンクリート表層部12の凝結を凝結促進材18を用いて促進することで施工コストを抑えつつ、施工時間を短縮する効果を実施例として記載しているが、本施工方法は、凝結促進だけでなくコンクリート表層部12の品質を向上する場合に応用することができるのである。
【符号の説明】
【0044】
1 撹拌装置
2 駆動部
3 支持杆
4 操作杆
5 撹拌部
6 電力部
7 回転軸
8 カバー部材
9 撹拌羽根
10 撹拌羽根群
11 ガイド板
12 コンクリート表層部
13 コンクリート表面
14 後方側下端部
15 深さ調節部
16 開口長穴
17 調節部材
18 凝結促進材
19 把持部
L 深さ長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7