(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172523
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】触覚呈示装置及び触覚呈示システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20231129BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20231129BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 480
G06F3/03 400Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084388
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩田 沙織
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 仁紀
(72)【発明者】
【氏名】梅田 大瑶
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA77
5E555AA80
5E555BA01
5E555BA04
5E555BB01
5E555BB04
5E555BC04
5E555CA14
5E555CA44
5E555CB12
5E555CB19
5E555CB20
5E555CB59
5E555DA24
5E555DC84
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】操作感を向上させることができる触覚呈示装置及び触覚呈示システムを提供する。
【解決手段】触覚呈示装置1は、ユーザによって把持されるとともに、ユーザに触覚を呈示する。触覚呈示装置1は、筐体2と、筐体2に搭載されるとともに、個別に制御可能な複数の振動子3R,3Lとを備える。触覚呈示システム100は、触覚呈示装置1と、触覚呈示装置1によるポインティング操作の対象となる操作対象10とを備えるとともに、振動制御部5を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって把持されるとともに、前記ユーザに触覚を呈示する触覚呈示装置であって、
筐体と、
前記筐体に搭載されるとともに、個別に制御可能な複数の振動子と、を備える
触覚呈示装置。
【請求項2】
前記複数の振動子のそれぞれの振動を受けて振動するとともに、前記筐体から露出するよう設けられた複数の振動伝達部材をさらに備える、
請求項1に記載の触覚呈示装置。
【請求項3】
前記複数の振動伝達部材は、周方向の複数箇所に配されている、
請求項2に記載の触覚呈示装置。
【請求項4】
前記複数の振動伝達部材のそれぞれへの前記ユーザの接触を検出する接触検出部をさらに備え、
前記複数の振動子のそれぞれは、前記ユーザが接触している前記振動伝達部材のみを振動させるよう振動動作が制御される、
請求項2に記載の触覚呈示装置。
【請求項5】
前記触覚呈示装置の傾きを検出する傾き検出部をさらに備え、
前記複数の振動子のそれぞれは、前記傾き検出部の検出結果に基づいて振動動作が制御される、
請求項1に記載の触覚呈示装置。
【請求項6】
ユーザによって把持されるとともに前記ユーザに触覚を呈示する触覚呈示装置と、前記触覚呈示装置によるポインティング操作の対象となる操作対象とを備え、
前記触覚呈示装置は、筐体と、前記筐体に搭載されるとともに、個別に制御可能な複数の振動子と、を備え、
前記複数の振動子のそれぞれの振動動作を個別に制御する振動制御部を備える
触覚呈示システム。
【請求項7】
前記振動制御部は、時間差をもって前記複数の振動子を振動開始させることができるよう構成されている、
請求項6に記載の触覚呈示システム。
【請求項8】
前記振動制御部は、前記時間差を可変に構成されている、
請求項7に記載の触覚呈示システム。
【請求項9】
前記振動制御部は、前記触覚呈示装置を用いて所定領域へのポインティング操作がなされたとき、前記所定領域へのポインティング方向に基づいて前記複数の振動子を個別に制御する、
請求項6に記載の触覚呈示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚呈示装置及び触覚呈示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動発生部を作動することでユーザに触覚を呈示する、触覚呈示装置としてのスタイラスペンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスタイラスペンにおいては、より多くのパターンの振動をユーザに呈示することで操作感を向上させる観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、操作感を向上させることができる触覚呈示装置及び触覚呈示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、ユーザによって把持されるとともに、前記ユーザに触覚を呈示する触覚呈示装置であって、筐体と、前記筐体に搭載されるとともに、個別に制御可能な複数の振動子と、を備える触覚呈示装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、ユーザによって把持されるとともに前記ユーザに触覚を呈示する触覚呈示装置と、前記触覚呈示装置によるポインティング操作の対象となる操作対象とを備え、前記触覚呈示装置は、筐体と、前記筐体に搭載されるとともに、個別に制御可能な複数の振動子と、を備え、前記複数の振動子のそれぞれの振動動作を個別に制御する振動制御部を備える触覚呈示システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作感を向上させることができる触覚呈示装置及び触覚呈示システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態における、触覚呈示システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第1の実施の形態における、触覚呈示装置の断面及び触覚呈示装置を把持するユーザの右手を示す模式図である。
【
図3】(a)は、2つの振動子の振動パターンの第1例を示すタイムチャートである。(b)は、2つの振動子の振動パターンの第2例を示すタイムチャートである。(c)は、2つの振動子の振動パターンの第3例を示すタイムチャートである。(d)は、2つの振動子の振動パターンの第4例を示すタイムチャートである。
【
図4】第2の実施の形態における、触覚呈示システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本形態における、触覚呈示装置1及び操作対象10を有する触覚呈示システム100の構成を示す模式図である。
図2は、触覚呈示装置1の断面及び触覚呈示装置1を把持するユーザの右手RHを示す模式図である。
【0012】
触覚呈示装置1は、ユーザの手によって把持されて使用され、操作対象10へのタッチ操作に供されるポインティングデバイスである。触覚呈示装置1は、個別に制御される2つの振動子3R,3Lを備える。そして、本形態の触覚呈示装置1は、2つの振動子3R,3Lの振動タイミングや振動パターン等を種々変えることで、ユーザに多様な触覚を呈示することを可能としている。また、本形態において、触覚呈示装置1は、タッチパネル101を備えるタブレット、スマートフォンなどの操作対象10をタッチ操作するために用いられる例を説明する。
【0013】
触覚呈示装置1は、一方向に(すなわち
図1の上下方向)に長尺に形成されるとともに筆記具を模した外観を有するスタイラス(タッチペンとも呼ばれる。)である。以後、触覚呈示装置1の径方向を単に「径方向」といい、径方向の一方側であって、触覚呈示装置1の中心軸Cに近い側を「内周側」とし、その反対側を「外周側」とする。また、触覚呈示装置1の中心軸Cを中心とした円周方向を「周方向」という。なお、触覚呈示装置1の外観は、筆記具を模した外観に限られない。
【0014】
触覚呈示装置1は、筐体2、2つの振動子3R,3L、2つの振動伝達部材4R,4L、振動制御部5及び通信部6を備える。筐体2は、触覚呈示装置1の各種構成部品を保持している。筐体2の先端部21は、例えば静電容量方式のタッチパネルへのタッチ操作を可能とすべく、導電性の樹脂、ゴム、繊維、金属等からなる部材が設けられていてもよいし、超音波表面弾性波方式のタッチパネルへのタッチ操作を可能とすべく、超音波表面弾性波を吸収可能な部材が設けられていてもよい。また、筐体2は、電磁誘導方式のタッチパネルへのタッチ操作を可能とすべく、電磁誘導コイルを内蔵してもよい。
【0015】
詳細な図示は省略するが、筐体2は、後述の2つの振動伝達部材4R,4Lのうちの一方にユーザの右手RHの親指以外の指が配置されることを誘導するとともに、他方にユーザの親指が配置されることを誘導するよう、外形が人間の手に沿って凹んだ形状を有していてもよい。これにより、触覚呈示装置1が、所望の姿勢にてユーザに把持されることが促される。
図2においては、触覚呈示装置1がユーザの右手RHで把持されている場合を図示している。以後においては、触覚呈示装置1がユーザに右手RHで把持されて使用される例を前提に説明を行う。
【0016】
図2に示すごとく、筐体2には、内周側に凹んだ2つの凹部22が形成されている。2つの凹部22は、互いに反対側に開口するよう形成されており、各凹部22内に互いに別の振動子3R,3Lが固定されている。
【0017】
2つの振動子3R,3Lのそれぞれは、振動を発生可能である。一例として、振動子3R,3Lは、ボイスコイル、圧電素子、偏心モータ等とすることができる。振動子3R,3Lは、触覚呈示装置1を把持しているユーザに振動を伝えやすくすべく、径方向に振動可能なものとすることが好ましい。振動子3R,3Lは、内周側の面が、筐体2(例えば凹部22の底部)に固定されている。そして、振動子3R,3Lは、外周側の面が筐体2に対して径方向に変位するよう振動可能である。振動子3R,3Lへの配線は、筐体2を貫通して筐体2の内側まで配されているが、これについての
図2への図示は省略している。各振動子3R,3Lには、互いに異なる振動伝達部材4R,4Lが固定されている。
【0018】
振動伝達部材4R,4Lは、固定された振動子3R,3Lの振動を受けて振動する。2つの振動伝達部材4R,4Lは、周方向の2箇所に配されている。より具体的には、2つの振動伝達部材4R,4Lは、触覚呈示装置1の中心軸Cを挟んで互いに反対側に位置している。振動伝達部材4R,4Lは、振動子3R,3Lに直接固定されてもよいし、別部材(例えば振動を和らげる部材)を介して振動子3R,3Lに固定されてもよい。そして、振動伝達部材4R,4Lは、筐体2に対しては固定されておらず、筐体2に対して振動子3R,3Lの振動方向(すなわち触覚呈示装置1の径方向)に振動可能である。
【0019】
振動伝達部材4R,4Lは、少なくとも外周面41R,41Lが筐体2から露出しており、ユーザが接触可能である。そして、振動伝達部材4R,4Lは、振動子3R,3Lに生じた振動をより広い面積でユーザに伝える役割を有する。また、各振動伝達部材4R,4Lは、ユーザの指が接触しやすいよう、周方向の広い範囲に形成されていることが好ましい。一例として、触覚呈示装置1の中心軸Cに直交する断面において、各振動伝達部材4R,4Lの外周面41R,41Lは、周方向の一端と中心軸Cとを結ぶ仮想直線L1と、周方向の他端と中心軸Cとを結ぶ仮想直線L2との間になす角度θを45°以上とすることができる。
【0020】
以後、2つの振動伝達部材4R,4Lのうち、触覚呈示装置1がユーザによって把持されて使用されている状態において、ユーザから見て右側に位置する振動伝達部材を右振動伝達部材4R、他方を左振動伝達部材4Lということもある。また、右振動伝達部材4Rに振動を伝える振動子を右振動子3R、左振動伝達部材4Lに振動を伝える振動子を左振動子3Lということもある。ユーザが右手RHで触覚呈示装置1を把持して使用したとき、右振動伝達部材4Rにはユーザの右手RHの人差し指、中指、薬指及び小指のいずれかが接触し、左振動伝達部材4Lにはユーザの右手RHの親指が接触する。各振動伝達部材4R,4Lについても、筐体2と同様、各振動伝達部材4R,4Lに所望の指が配置されるようにすべく手の形に沿って凹んだ形状を設けてもよい。或いは、筐体2及び各振動伝達部材4R,4Lに手に沿った凹みがないような場合であっても、例えば右振動伝達部材4Rの外周面41Rに人差し指、中指、薬指、小指の少なくともいずれかの配置を誘導するための表示(例えば「人差し指」等の文字を表示する等)をし、左振動伝達部材4Lの外周面41Lに親指の配置を誘導するための表示(例えば「親指」との文字を表示する等)をしてもよい。2つの振動子3R,3Lの振動動作は、振動制御部5にて制御される。
【0021】
振動制御部5は、2つの振動子3R,3Lの振動動作を個別に制御する。一例として、振動制御部5は、異なるタイミングで2つの振動子3R,3Lを振動させたり、互いに異なる振幅の振動を2つの振動子3R,3Lに生じさせたり、互いに異なる周波数の振動を2つの振動子3R,3Lに生じさせたりできるよう構成されている。2つの振動子3R,3Lの振動パターンのいくつかの例は後述する。振動制御部5は、操作対象10から振動指令信号を受け、振動指令信号に応じて2つの振動子3R,3Lに個別に振動駆動信号を送り、2つの振動子3R,3Lを個別に振動させる。振動制御部5は、例えばプロセッサと、プロセッサ動作時の演算領域となるRAM(Random Access Memory)と、プロセッサが実行するプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)とによって実現され得る。ROMは、例えば各振動子3R,3Lの振動の波形情報を記憶している。振動指令信号は、通信部6を通じて振動制御部5に受信される。
【0022】
通信部6は、操作対象10と通信可能なインタフェースである。通信部6は、操作対象10の操作対象通信部103と通信を行い、操作対象10から振動指令信号を受信する。通信部6は、操作対象通信部103と無線により通信するものであってもよいし、有線により通信するものであってもよい。無線通信の場合は、例えば触覚呈示装置1の各部の電源としてバッテリが筐体2内に配置されてもよい。有線通信の場合は、触覚呈示装置1が操作対象10から電源供給を受けてもよく、この場合は筐体2内にバッテリを配置する必要がない。また、本形態においては触覚呈示装置1が振動制御部5を備える例を示すが、例えば触覚呈示装置1と操作対象10とが有線にて接続されている場合等においては、操作対象10が振動制御部5を備えていてもよい。
【0023】
次に、触覚呈示装置1によるポインティング操作の対象となる操作対象10につき説明する。
【0024】
図1に示すごとく、本形態においては、操作対象10が、タッチパネル101を備えたタブレット、スマートフォン等の機器である例につき説明する。タッチパネル101は、ディスプレイ101aとタッチセンサ101bとを有する。ディスプレイ101aは、画像を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイとすることができる。タッチセンサ101bは、ディスプレイ101aのおもて面側に配されており、触覚呈示装置1によるポインティング位置P(
図2参照)を特定可能な構成を有していればよい。一例として、相互容量型の静電容量方式である場合は、タッチセンサ101bは、第1電極と第2電極とを網の目状に交互に配置し、隣り合う電極同士が容量結合した構成とし得る。
【0025】
また、操作対象10は、触覚呈示装置1によるポインティング操作に応じて所定の処理を行う操作対象制御部102を備える。操作対象制御部102は、タッチセンサ101bからセンシング情報を受信し、受信したセンシング情報を基にポインティング位置Pを特定する。また、操作対象制御部102は、ポインティング位置Pの移動方向も検出できるよう構成されている。一例として、操作対象制御部102は、所定のオブジェクト11がディスプレイ101aに表示されている場合において、オブジェクト11へのポインティング操作の進入方向(例えば
図2にて右向き矢印にて示す方向)を検出可能である。そして、詳細は後述するが、操作対象制御部102は、ポインティング位置Pが所定のオブジェクト11に進入したことを検出したとき、ポインティング位置Pの所定領域への進入方向に基づいた振動指令信号を触覚呈示装置1の振動制御部5に送信する。操作対象制御部102は、例えばプロセッサと、プロセッサ動作時の演算領域となるRAMと、プロセッサが実行するプログラムを記憶したROMとによって実現され得る。
【0026】
次に、触覚呈示装置1及び操作対象10を備える触覚呈示システム100において実行される処理の例について説明する。
【0027】
まず、触覚呈示システム100において実行される処理の一例として、
図2に示すごとく、ポインティング位置Pがオブジェクト11を左側から右側へ通過したときに、触覚呈示装置1がその右側に位置するオブジェクト11に衝突したような触覚をユーザに呈示すべく、2つの振動子3R,3Lのそれぞれの振動のさせ方を工夫した例を説明する。
【0028】
図2に示すように触覚呈示装置1を右方向へ移動させてポインティング位置Pがオブジェクト11に到達したときに2つの振動子3R,3Lに生じさせる振動パターンの4例を
図3(a)~(d)に示している。まず、
図2に示すように触覚呈示装置1を右方向へ移動させてポインティング位置Pがオブジェクト11に到達したとき、例えば
図3(a)に示すごとく右振動子3Rのみを振動させてもよい。これにより、触覚呈示装置1がその右方向に位置するオブジェクト11に衝突したような触覚をユーザに呈示することが可能となる。
【0029】
また、他の例として、
図3(b)に示すごとく、右振動子3Rと左振動子3Lとを、時間差ΔTをもって振動開始させてもよい。すなわち、ポインティング操作時の触覚呈示装置1の移動方向(右方向)にある右振動子3Rの振動開始時刻TRを、左振動子3Lの振動開始時刻TLよりも早い時刻とすることで、触覚呈示装置1がその右方向に位置するオブジェクト11に衝突したような触覚をユーザに呈示することが可能となる。
【0030】
さらに他の例として、
図3(c)に示すごとく、右振動子3Rと左振動子3Lとの振動の周波数を異ならせてもよい。すなわち、ポインティング操作時の触覚呈示装置1の移動方向(右方向)にある振動子3R,3Lの振動の周波数を比較的高い周波数とし、他方の振動子3R,3Lの振動の周波数を比較的低い周波数とすることで、触覚呈示装置1がその右方向に位置するオブジェクト11に衝突したような触覚をユーザに呈示することが可能となる。
【0031】
またさらに他の例として、
図3(d)に示すごとく、右振動子3Rと左振動子3Lとの振幅を異ならせてもよい。すなわち、ポインティング操作時の触覚呈示装置1の移動方向(右方向)にある振動子3R,3Lの振動の振幅を比較的大きくし、他方の振動子3R,3Lの振動の周波数を例えば比較的低い周波数とすることで、触覚呈示装置1がその右方向に位置するオブジェクト11に衝突したような触覚をユーザに呈示することが可能となる。
【0032】
なお、
図3(a)~(d)に示す例においては、触覚呈示装置1を右方向へ移動させているときにポインティング位置Pがオブジェクト11に到達した場合を示したが、例えば触覚呈示装置1を左方向へ移動させているときにポインティング位置Pがオブジェクト11に到達した場合は、例えば
図3(a)~(d)に示す右振動子3Rと左振動子3Lとの振動パターンを逆にすればよい。これにより、触覚呈示装置1がその左方向に位置するオブジェクト11に衝突したような触覚をユーザに呈示することが可能となる。さらに、
図3(b)~(d)に示したような2つの振動子3R,3Lの振動パターンを適宜組み合わせてもよい。例えば、
図3(c)及び(d)に示す振動パターンを組み合わせて、右振動子3Rと左振動子3Lとの振動の周波数を異ならせるとともに振動の振幅を異ならせてもよい。
【0033】
図3(a)~(d)に示す例において、オブジェクト11上へ触覚呈示装置1の先端部21がタッチしたこと、及びオブジェクト11上へ先端部21が向かうまでのポインティング操作の方向は、タッチパネル101及び操作対象制御部102にて検出される。そして、操作対象制御部102は、ポインティング位置Pのオブジェクト11上への進入方向に応じて2つの振動子3R,3Lのそれぞれが所定の振動動作を行うよう振動指令信号を生成し、操作対象通信部103及び通信部6を通じて触覚呈示装置1の振動制御部5に送信する。振動制御部5は、受信した振動指令信号に従い、2つの振動子3R,3Lの振動動作を個別に制御する。
【0034】
図2に示したオブジェクト11としては、例えば、操作対象10が、例えば特開2022-12375号公報の
図2に開示されているようなレーシングゲームを行うために用いられる場合は、サーキットコースを区画する壁とすることができる。その他、オブジェクト11は、ボタンアイコンであってもよい。この場合は、例えばボタンアイコンの外側からボタンアイコンの輪郭位置を通過してボタンアイコンの内側に移動するようポインティング操作がなされたときや、ボタンアイコンの内側からボタンアイコンの輪郭位置を通過してボタンアイコンの外側へ移動するようポインティング操作がなされたときに、
図3(a)~(d)に示すような振動を生じさせてもよい。或いは、ボタンアイコンの外部からボタンアイコンの内部に移動するようなポインティング操作を行った際に、ボタンアイコンの輪郭位置にて仮想的な段差を登るような感触をユーザに想起させるよう2つの振動子3R,3Lを振動させてもよい。そして、反対に、ボタンアイコンの内部からボタンアイコンの外部に移動するようなポインティング操作を行った際に、仮想的な段差を下るような触感をユーザに想起させるよう2つの振動子3R,3Lを振動させてもよい。その他、オブジェクト11としては、操作対象10の用途等に応じて種々のものを採用し得る。また、2つの振動子3R,3Lへの振動の発生のさせ方についても、操作対象10の用途等に応じて種々の変更が可能である。
【0035】
また、2つの振動子3R,3Lを
図3(b)に示す振動パターンで振動させる場合において、時間差ΔTを可変に構成してもよい。一例として、オブジェクト11として前述のようなサーキットコースの壁を想定している場合は、オブジェクト11が金属等の比較的硬い素材からなる壁であるのか、木材等の比較的柔らかい素材からなる壁であるのかによって、時間差ΔTを変更してもよい。すなわち、ポインティング位置Pが硬い壁のオブジェクト11へ到達したときは、時間差ΔTを比較的短くすることで、触覚呈示装置1が硬い壁に衝突した触覚をユーザに呈示する。一方、ポインティング位置Pが柔らかい壁のオブジェクト11へ到達したときは、時間差ΔTを比較的長くすることで、触覚呈示装置1が柔らかい壁に衝突した触覚をユーザに呈示する。また、2つの振動子3R,3Lを
図3(c)に示す振動パターンで振動させる場合において、右振動子3Rと左振動子3Lとの振動数を可変に構成してもよい。さらに、2つの振動子3R,3Lを
図3(d)に示す振動パターンで振動させる場合において、右振動子3Rと左振動子3Lとの振幅の差を可変に構成してもよい。
【0036】
またさらに、一例として、ポインティング位置Pがオブジェクト11へ到達したときのポインティング操作の速度に応じて、2つの振動子3R,3Lの振動パターンを変えてもよい。一例として、2つの振動子3R,3Lを
図3(b)に示す振動パターンで振動させる場合、比較的早い速度のポインティング操作でポインティング位置Pがオブジェクト11上へ到達したとき、時間差ΔTを短くすることで衝突時の衝撃が大きいことをユーザに呈示することができる。また、比較的遅い速度のポインティング操作でポインティング位置Pがオブジェクト11上へ到達したとき、時間差ΔTを長くすることで衝突時の衝撃が小さいことをユーザに呈示することができる。また、2つの振動子3R,3Lを
図3(c)に示す振動パターンで振動させる場合は、右振動子3Rと左振動子3Lとの振動数の差を、オブジェクト11へのポインティング操作の速度に応じて変更してもよい。さらに、2つの振動子3R,3Lを
図3(d)に示す振動パターンで振動させる場合は、右振動子3Rと左振動子3Lとの振幅の差をオブジェクト11へのポインティング操作の速度に応じて変更してもよい。
【0037】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態の触覚呈示装置1は、個別に制御可能な複数の振動子3R,3Lを備える。それゆえ、ユーザに多様なパターンの振動をユーザに呈示することが可能となり、その結果、操作感が向上する。
【0038】
また、本形態の触覚呈示装置1は、複数の振動子3R,3Lのそれぞれの振動を受けて振動するとともに、筐体2から露出するよう設けられた複数の振動伝達部材4R,4Lを備える。それゆえ、振動子3R,3Lの振動をユーザに一層伝えやすい。一例として、振動子3R,3Lの振動を、点ではなく振動伝達部材4R,4Lの外周面41R,41Lから面でユーザに伝えることができる。
【0039】
また、複数の振動伝達部材4R,4Lは、周方向の複数箇所に配されている。それゆえ、周方向の複数箇所の振動伝達部材4R,4Lの振動の仕方を工夫することで、方向性を持った操作感を振動によりユーザに呈示することができる。
【0040】
また、振動制御部5は、時間差ΔTをもって複数の振動子3R,3Lを振動開始させることができるよう構成されている。それゆえ、より多様な操作感を振動によりユーザに呈示することが可能となる。
【0041】
また、振動制御部5は、時間差ΔTを可変に構成されている。それゆえ、より一層多様な操作感を振動によりユーザに呈示することが可能となる。
【0042】
また、振動制御部5は、触覚呈示装置1を用いて所定領域へのポインティング操作がなされたとき、所定領域へのポインティング方向に基づいて複数の振動子3R,3Lを個別に制御する。それゆえ、ポインティング操作時の触覚呈示装置1の動作に合わせた操作感をユーザに呈示することが可能となる。
【0043】
以上のごとく、本形態によれば、操作感を向上させることができる触覚呈示装置及び触覚呈示システムを提供することができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
図4は、本形態における、触覚呈示装置1及び操作対象10を有する触覚呈示システム100の構成を示す模式図である。
【0045】
本形態は、第1の実施の形態に対し、触覚呈示装置1に、接触検出部7及び傾き検出部8を追加した形態である。
【0046】
接触検出部7は、各振動伝達部材4R,4Lに対応して1つずつ設けられており、各振動伝達部材4R,4Lにユーザの手が接触しているか否かを検出する。触覚呈示装置1の振動制御部5は、各振動伝達部材4R,4Lへのユーザの手の接触状態を検知し、ユーザの手が触れている振動伝達部材4R,4Lにのみ振動を伝えるべく、2つの振動子3R,3Lを制御する。ユーザの手が触れていない振動伝達部材4R,4Lは振動させないことで、消費電力量の低減を図っている。
【0047】
接触検出部7は、例えばユーザが各振動伝達部材4R,4Lに触れたときに振動伝達部材4R,4Lに生じる押圧力を検出可能な圧力センサでもよい。一例として、振動子3R,3Lを圧電素子とした場合、振動子3R,3Lが接触検出部7を兼ねることも可能である。また、接触検出部7は、各振動伝達部材4R,4Lの加速度を検出可能な加速度センサを用い、振動伝達部材4R,4Lの振動状況から、振動伝達部材4R,4Lにユーザの手が触れているか否かを判断するものであってもよい。つまり、振動伝達部材4R,4Lにユーザの手が触れている場合は、振動がユーザに手にて吸収されるため、振動伝達部材4R,4Lにユーザの手が触れていない場合と比べて振動の仕方が変わるところ、この変化を検出することで振動伝達部材4R,4Lにユーザの手が触れているか否かを判断してもよい。
【0048】
その他、接触検出部7は、振動伝達部材4R,4Lへのユーザの手の接触が検出できればその構成は限定されず、例えば振動伝達部材4R,4Lへのユーザの手の接触によって状態が変わるスイッチ等を用いて機械的に判断するものであってもよいし、タッチセンサ101bを用いて電気的に判断するものであってもよいし、歪みセンサ等を用いるものであってもよい。そして、振動制御部5は、ユーザの手が触れている振動伝達部材4R,4Lに接続された振動子3R,3Lにのみ振動を生じさせ、ユーザの手が触れていない振動伝達部材4R,4Lに接続された振動子3R,3Lには振動を生じさせない。
【0049】
傾き検出部8は、触覚呈示装置1の傾きを検出する。傾き検出部8は、筐体2内に収容されており、触覚呈示装置1の傾きを検出する。傾き検出部8は、例えば加速度センサやジャイロセンサ等にて構成することができる。触覚呈示装置1の傾きを検出することで、触覚呈示装置1の使用時において、2つの振動伝達部材4R,4Lのうちのいずれがユーザから見て右側に位置し、いずれが左側に位置するか(すなわち触覚呈示装置1の中心軸C周りの回転方向の姿勢)を判断することができる。
【0050】
触覚呈示装置1は、第1の実施の形態と同様に、ポインティング操作の方向に応じて、ユーザから見て右側に位置する右振動伝達部材4Rと左側に位置する左振動伝達部材4Lの振動の仕方を工夫している。そのため、2つの振動子3R,3Lのうちのいずれがユーザから見て右側に位置し、いずれが左側に位置するかが重要となる。第1の実施の形態においては、前述したように、筐体2や振動伝達部材4R,4L等に手に沿った凹みを設ける、又は振動伝達部材4R,4Lの外周面に所定の指の配置を誘導する記載をする等により、触覚呈示装置1の使用時において2つの振動伝達部材4R,4Lのいずれがユーザからみて右側、左側となるかを判断可能とした。一方、本形態においては、触覚呈示装置1において手の配置を誘導するような構成を設けなくとも、触覚呈示装置1の使用時において2つの振動伝達部材4R,4Lのいずれがユーザからみて右側、左側となるかが検出できるため、筐体2及び振動伝達部材4R,4Lの構造を簡素化することができる。
【0051】
また、本形態においては、あるときに右振動子3Rとして機能していた振動子は、触覚呈示装置1がそのときの姿勢から中心軸周りに180°回転した姿勢で把持されて使用された場合は左振動子3Lとして機能することとなる。つまり、本形態においては、2つの振動子3R,3Lのそれぞれが、ユーザによる触覚呈示装置1の把持の仕方によって、右振動子3Rにもなり得るし左振動子3Lにもなり得る。
【0052】
本形態のその他の構成は、第1の実施の形態の構成と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0053】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、複数の振動伝達部材4R,4Lのそれぞれへのユーザの接触を検出する接触検出部7を備え、複数の振動子3R,3Lのそれぞれは、ユーザが接触している振動伝達部材4R,4Lのみを振動させるよう振動動作が制御される。それゆえ、ユーザが接触していない振動伝達部材4R,4Lを振動させることによる消費電力量の無駄を削減できる。
【0054】
また、本形態においては、触覚呈示装置1の傾きを検出する傾き検出部8を備え、複数の振動子3R,3Lのそれぞれは、傾き検出部8の検出結果に基づいて振動動作が制御される。それゆえ、使用時における触覚呈示装置1の姿勢に基づいた所望の振動をユーザに呈示することが可能となる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0055】
[その他の変形例]
前記各実施の形態において、振動子及び振動伝達部材は2つずつ設けたが、これに限られず、3つ以上ずつ設けてもよい。
【0056】
また、前記各実施の形態において、複数の振動伝達部材は、触覚呈示装置の周方向の複数箇所に設けたが、これに限られず、例えば触覚呈示装置の軸方向に複数設けてもよい。
【0057】
また、前記各実施の形態において、操作対象はタッチパネルを有するタブレット、スマートフォン等の機器である例を示したが、これに限られず、特開2022-12375号公報の
図4に示されているような書籍に印字されたメディアコンテンツであってもよい。この場合、前記公報に記載されているように、触覚呈示装置が、メディアコンテンツ上の所定の位置に配された識別IDを光学的に読み取り可能に構成されていればよい。すなわち、操作対象は、触覚呈示装置にてポインティング操作がなされたときにポインティング位置の情報を触覚呈示装置が取得可能であれば、特に限定されない。
【0058】
また、操作対象としてのタッチパネル等に触覚呈示装置を用いて文字や絵などを描画できるシステムに、触覚呈示装置を用いてもよい。この場合、仮想の筆記具(筆、ペン等)を選択可能とし、各筆記具のよりリアルな書き心地をユーザに呈示するよう2つの振動子の振動のさせ方を工夫してもよい。このような場合は、タッチパネルを触覚呈示装置でなぞっている間、2つの振動子で互いに異なる振動を継続的に発生させることとなる。また、このようなシステムにおいて、描画対象の種類(和紙、洋紙等)を選択可能とし、描画対象の種類に応じて複数の振動子の振動の仕方を工夫してもよい。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…触覚呈示装置、2…筐体、3R,3L…振動子、4R,4L…振動伝達部材、5…振動制御部、7…接触検出部、8…傾き検出部、10…操作対象、ΔT…時間差