(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172526
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20231129BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61F13/49 100
A61F13/49 413
A61F13/496
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084405
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200CA03
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA21
3B200DA28
(57)【要約】
【課題】新規な吸収性物品を提供する。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用状態において着用者の腹部側の胴回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の胴回りに位置する後身頃領域が長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、外装面を形成する外装シートと、外装シートよりも着用者側に配置された吸収体と、を、備え、吸収体は、股下領域に設けられて、排出液を吸収し保持する吸収コアを有し、吸収コアの後身頃領域の側の長手方向の端部の収縮度は、幅方向の内側よりも幅方向の外側の方が大きく、外装シートには、吸収コアの後身頃領域の側の幅方向の端部を長手方向に延長した方向に、少なくとも2本の折部が設けられている、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、
着用状態において着用者の腹部側の胴回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の胴回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、
外装面を形成する外装シートと、
前記外装シートよりも着用者側に配置された吸収体と、
を、備え、
前記吸収体は、前記股下領域に設けられて、排出液を吸収し保持する吸収コアを有し、
前記吸収コアの前記後身頃領域の側の前記長手方向の端部の収縮度は、前記幅方向の内側よりも前記幅方向の外側の方が大きく、
前記外装シートには、吸収コアの前記後身頃領域の側の前記幅方向の端部を長手方向に延長した方向に、少なくとも2本の折部が設けられている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記後身頃領域の長手方向端部は、前記後身頃領域の前記股下領域の側と比べると収縮度が大きい、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
流通状態において、前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域とは、互いに係合している、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域とは、前記外装シートに接着された伸縮部材の収縮力によって前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域に形成された襞同士が噛み合うことで係合している、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域とは、接着部により仮接着されることで係合している、請求項3に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品であるパンツ型の使い捨ておむつが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用状態において着用者の腹部側の胴回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の胴回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、外装面を形成する外装シートと、前記外装シートよりも着用者側に配置された吸収体と、を、備え、前記吸収体は、前記股下領域に設けられて、排出液を吸収し保持する吸収コアを有し、前記吸収コアの前記後身頃領域の側の前記長手方向の端部の収縮度は、前記幅方向の内側よりも前記幅方向の外側の方が大きく、前記外装シートには、吸収コアの前記後身頃領域の側の前記幅方向の端部を長手方向に延長した方向に、少なくとも2本の折部が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規な吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつが流通中に折り畳まれた状態を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る折り畳みを展開したおむつを、背面側から見た図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る折り畳みを展開したおむつの係合状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」とい
う)の斜視図である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0010】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る胴開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の脚開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。また、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0011】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。
【0012】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸
収される。
【0013】
おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が発生してもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1を長時間使用できる。
【0014】
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rとを有する。カバーシート4は、おむつ1の非肌面側表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートである。インナーカバーシート5F,5Rは、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rのそれぞれにおいてカバーシート4に貼り合わされるシートであって、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいてカバーシート4を補強する。着用者が着用している状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5F,5Rは着用者側の肌面側に積層されている。カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの間には、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。
【0015】
カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rは、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。以下、吸収体8および吸収体8にバックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rを組み合わせたものに対応する概念として、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rに渡って延在するカバーシート4と、それに付随して糸ゴムが配置されるインナーカバーシート5F,5Rとを合わせて外装シートと表現することがある。外装シートは、前身頃領域1Fから後身頃領域Rに渡って外装面を形成している。
【0016】
なお、カバーシート4は股下領域1Bに設けなくてもよい。例えば、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいて、インナーカバーシート5F,5Rとほぼ重畳する前身頃領域1F側のカバーシートと、後身頃領域1R側のカバーシートとを別体として設けてよい。そして、吸収体8等の延在領域の非肌面側を保護するパッドカバーシートを別途設け、カバーシート4Fと4Rが存在しない股下領域1Bにおいては、当該パッドカバーシートにより、非肌面側のおむつ表面を保護することとしてもよい。おむつの非肌面側は、このような構成によっても、別体の2枚のカバーシートおよびパッドカバーシートによって保護されるため、吸収コア8cは外的要因による損傷を避けることができる。
【0017】
おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。こ
のトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0018】
吸収体8は、1又は複数のマットからなる吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるあるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を取ることができ、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状を取ることができる。本実施形態では、吸収コア8cは中央部付近が括れた砂時計型である。また、本実施形態では、吸収体8は、後身頃領域1B側の端部が長手方向端部により接近するように、やや偏って配置されている。
【0019】
本実施形態に係る吸収コア8cには、股下領域1Bの幅方向中央部に、長手方向に延在する、溝8Hが設けられている。溝8Hは、吸収コア8cの肌面側と非肌面側とを貫通する貫通溝であってよい。溝8Hの延在範囲には、尿道口に対応する位置が含まれている。このため、着用者から発生した尿は、溝8Hに流れ込んで長手方向に広がり、吸収コア8cの広範囲で効率的に吸収される。なお、溝8Hは必須ではなく、これを設けない構成としてもよい。
【0020】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コアの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。本実施形態では、コアラップシート7は矩形状に形成されている。
【0021】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0022】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1
,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R4とが互いに接合され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されることにより、
図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、縁4F4及び縁4R4、縁4F5及び縁4R5の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0023】
バックシート6、コアラップシート7、トップシート9、サイドシート10L,10R、は、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Bにおいて、吸収コア8cよりも長手方向により長く形成されている。このため、剛性の高い吸収コア8cの長手方向端部の更に長手方向一定領域には、上述のシートが積層されることで形成された、中程度の剛性を持つ積層部分が続いている。当該積層部分には、ウェストギャザー3Rを構成する糸ゴム4F2,4R2の一部が重畳し、幅方向内側に付勢されている。
【0024】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4、インナーカバーシート5F,5Rに重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rを補強する。また、エンドシート11F,11Rには接着剤が塗布されており、当該接着剤によりインナーカバーシート5F,5Rと接着している。エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の長手方向端部が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0025】
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。なお、
図3(B)では、サイドシート10L,10Rおよびエンドシート11F,11Rの図示は省略する。カバーシート4は、
図2に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4F1,4F2が伸張状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4R1,4R2が伸張状態で接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。
【0026】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、縁4F4と縁4R4が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、着用者の胴回りを挿通
可能な胴回り開口部である胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、当該胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8のコアラップシート7と重畳する。糸ゴム4F1と糸ゴム4F2、および糸ゴム4R1と糸ゴム4R2の1本あたりの収縮力は、幅方向に一定であってよい。
【0027】
糸ゴム4F1,4R1は、
図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って、一定の間隔を空けて離間して平行に、幅方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、所定の間隔を空けて離間して平行に、幅方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F1,4R1の間隔は狭くなっており、糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を担う。
【0028】
糸ゴム4F2,4R2の間隔は、糸ゴム4F1,4F2よりも広く、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。また、インナーパッドを用いる場合には、インナーパッドのずれを抑制する。すなわち、糸ゴム4F1,4R1による収縮力は、糸ゴム4F2,4R2の収縮力よりも大きい。
【0029】
更に、カバーシート4には糸ゴム4F3と糸ゴム4R3が伸張状態で接着されている。糸ゴム4F3,糸ゴム4R3は、カバーシート4のうち糸ゴム4F2,4R2よりも股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F3,4R3は、カバーシート4の左端から右端まで途切れることなく接着される他の糸ゴムとは異なり、股下領域1Bの方向に湾曲して配置され、砂時計型の吸収コアの括れ部分で、コアラップシート7の一部と重畳している。このように構成することで、糸ゴム4F3,4R3の配置領域をレグギャザー3LL,3LRとして機能させることができる。
【0030】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返されて糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11F,11Rは、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域に設けられ、糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域を補強している。糸ゴム4F2,4R2およびエンドシート11F,11Rは、股下領域1B側の一部が吸収体8と重畳しているが、吸収コア8cの延在領域には重畳していない。
【0031】
本開示におけるおむつ1は、非着用状態において、長手方向端部側に設けられた糸ゴム4F1,4R1の収縮力により、胴開口部2T付近において強く収縮し、幅方向に短くなっている。また、長手方向股下側に設けられた糸ゴム4F2,4R2の配置間隔が広いことにより、前身頃領域および後身頃領域の股下部側では、胴開口部2T付近と比較すると、幅方向に広がっている。糸ゴム4F3,4R3が設けられた領域では、糸ゴム4F2,4R2と糸ゴム4F3,4R3との延在領域が重畳することにより、再び幅方向に短くなっている。このため、本開示におけるおむつ1の糸ゴム4F1,4F2,4F3,4R1,4R2,4R3の延在領域の外装シートは、非着用状態において糸ゴム4F2および4R2の延在領域が、4F1,4R1,4F3,4R3の延在領域よりも幅方向に膨らんだ外観を有することになる。
【0032】
換言すれば、外装シートの前身頃領域1Fと後身頃領域1Rには、幅方向に延在する伸
張状態の伸縮部材である糸ゴム4F1,4F2,4R1,4R2が長手方向に離間して接着されている。糸ゴム4F1,4F2,4R1,4R2の1本あたりの収縮力は略同一であって幅方向に一定であるが、糸ゴム4F1,4R1の長手方向の配置間隔が、糸ゴム4F2,4R2によりも密であることにより、糸ゴム4F1,4R1延在領域の収縮力は、糸ゴム4F2,4R2の延在領域よりも大きい状態になっている。また、股下領域1B側の幅方向両端部において、糸ゴム4F2,4R2は、レグギャザー3LL,3LRを構成する糸ゴム4F3,4R3とその一部が重畳していることにより、糸ゴム4F2,4R2と糸ゴム4F3,4R3の収縮力が一部で重畳した状態となる。
【0033】
完成状態のおむつ1において、サイドシート10L,10Rによって前身頃領域1Fにおける糸ゴム4F1,4F2,4F3と、後身頃領域1Rにおける糸ゴム4R1,4R2,4R3の配置領域の長手方向長さは同じである。一方、本実施形態では、吸収体8は、後身頃領域1B側の端部が長手方向端部により接近するように、やや偏って配置されている。このため、前身頃領域1F側に設けられる糸ゴム4F2は、吸収コア8cとは重畳しないものの、一方後身頃領域1R側に設けられる糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の数本が吸収コア8cと重畳することになる。すなわち、本実施形態における吸収コア8cは、後身頃領域1Rにおいてのみ、ウェストギャザー3Rを構成する糸ゴム4R2の一部によって、幅方向に収縮するように付勢される。このことから、前身頃領域1Fと、後身頃領域1Rにおいて、吸収コア8cが幅方向に受ける付勢力の度合いは異なると言える。
【0034】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5F,5R、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0035】
本開示におけるおむつ1のようなパンツ型の使い捨ておむつは、テープ型の使い捨ておむつと比較すると被装着者自身の運動に追従しやすいため、活動可能な被装着者に適している。一方、パンツ型の使い捨ておむつは、止着テープを操作するだけで着用可能なテープ型に比べると、着用が容易でないという問題がある。本実施形態は、着用が容易な吸収性物品を提供することを目的とする。本実施形態によれば、着用が容易な吸収性物品を提供できる。より具体的には、本実施形態におけるおむつ1は、包装から取り出した状態において胴開口部2Tが開きやすいため、着用者または介助者は、胴開口部2Tを容易に開いて装着できる。
【0036】
図4は、実施形態に係るおむつが流通中に折り畳まれた状態を示す図である。おむつ1は、軽量な吸収性物品ではあるが、着用者の体形に追従し、かつ着用者からの排出物を外部に漏らさない機能を実現するための複雑な構造を有している。また、おむつは、1日数回の交換を要する特性上、数十枚単位で包装されて流通することが一般的である。また、一般に、吸収性物品は嵩高なため流通コストが大きい。このため、おむつを圧縮して流通させることが求められている。
【0037】
図4に示す折り畳まれたおむつ1は、胴開口部2Tを含む前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの幅方向両側の所謂サイドフラップ部分を2本の折部により観音折りして前身頃領域1F側に屈曲させ、更に前身頃領域1Fが股下領域1B側に当接するように屈曲させて二つ折りした状態であり、表面側に露出しているのは後身頃領域1Rである。おむつ1を
図4のように折り畳むと、流通状態におけるおむつ1の表面積を小さくすることができ、流
通が容易になる。この状態で更に厚み方向に内部構造が破壊されない程度の圧力を与えて圧縮をすることにより、流通状態におけるおむつ1の厚みを薄くし、おむつ1の体積を小さくできる。折り畳まれて圧縮されたおむつは、単数または複数枚が包装袋に封入されて流通経路に乗る。
【0038】
製造工場から出荷され、流通経路を流通している流通状態では、おむつ1は、所謂サイドフラップ部分が観音折りされて前身頃領域1F側に屈曲し、更に前身頃領域1Fが股下領域1B側に当接するように屈曲して二つ折り状態となり、厚み方向に圧縮されている。
図4に示す流通状態において、おむつ1の表面積や体積を小さくすることができ、流通が容易になる。このようにおむつ1を折り畳んで圧縮することにより、流通状態、また使用前の状態において、従来のおむつと同じ容量の包装袋により多くのおむつ1を封入することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、吸収コア8cの後身頃領域1R側の長手方向端部に糸ゴム4R2が重畳している。吸収コア8cは十分な剛性を有しているため、糸ゴム4R2の付勢力によって大きく形が変わることはない。しかし、当該重畳部分の幅方向端部付近は糸ゴム4R2の付勢力を強く受けて一定程度収縮する。一方、当該重畳部分の幅方向中央部は、吸収コア8cの剛性が糸ゴム4R2の付勢力を上回るため、幅方向にほとんど収縮しない。この結果、吸収コア8cの後身頃領域1R側の端部の収縮度は、幅方向内側よりも幅方向の外側の方が大きくなり、吸収コア8cは、股下領域1Bから後身頃領域1Rに向かってやや窄んだ形状になる。また、後身頃領域1R側の吸収コア8cの幅方向中央部の収縮度は小さいため、後身頃領域1R側において、吸収コア8cは、非肌面側にやや屈曲した形状となる。
【0040】
吸収コア8cの長手方向端部の更に後身頃領域1Rの長手方向端部側にも吸収体8は延在している(
図4では、コアラップシート7で示した領域)。延在部分では、コアラップシート7のほか、バックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rなどが積層された状態になっており、吸収体8の延在領域は、吸収コア8cよりは低いものの、中程度の剛性を有している。当該延在領域にも、糸ゴム4R2は重畳している。このため、当該積層部分の後身頃領域1R側の長手方向端部は、糸ゴム4R2の付勢力を受けて、吸収コア8cよりも強く収縮する。一方、当該積層部分は吸収コア8cと隣接しており、吸収コア8cの収縮状態からも影響を受け、幅方向中央部よりも幅方向端部において強く収縮する。よって、当該積層部分を含む吸収体8の幅は、当該積層部分において更に後身頃領域1Rに向けて窄んだ形状になる。また、当該積層部分においても、幅方向中央部の収縮度が小さいため、非肌面側にやや屈曲した形状となる。
【0041】
流通状態における後身頃領域1R側の観音折りの起点は、当該積層部分を含む吸収体8の幅方向端部となる。このため、所謂サイドフラップ部分でおむつを幅方向に折り畳む際の後身頃領域1R側において、長手方向に形成される折部は、おむつ1の長手方向端部における胴開口部2Tに向けて、幅方向に窄んだ状態で延在することになる。
【0042】
図5は、実施形態に係る折り畳みを展開したおむつを背面側から見た図である。おむつ1の着用者または介助者は、包装から
図4の状態で折り畳まれたおむつ1を取り出した際、まず、長手方向の折り畳みを展開し、更に、所謂サイドフラップ部分の2本の折部を観音開き状に展開することで、折り畳みを展開する。
【0043】
上述の通り、おむつ1の後身頃領域1R側では、所謂サイドフラップ部を折り畳むために長手方向についた折り癖である12L,12Rは、股下領域1B側における吸収体8の幅方向端部の屈曲に沿って、胴開口部2Tに向けて幅方向に窄んだ状態で形成される。また、後身頃領域1R側において、吸収体8の幅方向中央部が非肌面側に膨らんでいるため
、折り癖12L,12Rで挟まれた後身頃領域1Rの胴開口部2T付近も、非肌面側にやや屈曲した形状となる。
【0044】
一方、前身頃領域1F側では、吸収コア8cに対して糸ゴム4F2が重畳していないことから、吸収体8の幅方向端部の窄みは緩やかになる。前身頃領域1F側における折り癖は、前身頃領域1F側の吸収体8の幅方向端部をほぼそのまま延長した形で形成されるため、長手方向端部における胴開口部2Tに対して略直角に形成される。また、前身頃領域1Fにおいては、吸収体8が厚み方向にそれほど強くは屈曲しないため、折り癖12L,12Rの中間部分も吸収体8の影響を受けて屈曲することはない。
【0045】
このように、本実施形態に係るおむつ1の胴開口部2T近傍において、折り癖12L,12Rの形成方向は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいて異なっており、非肌面側への屈曲の度合いも異なっている。このため、胴開口部2Tにおいて、おむつ1の前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとの間には隙間が形成されやすい。この特性により、本実施形態におけるおむつ1は、包装から取り出して折り畳みを展開した状態において胴開口部2Tが開きやすいため、着用者または介助者は、胴開口部2Tを容易に開いて装着可能である。
【0046】
図6は、実施形態に係る折り畳みを展開したおむつの係合状態を示す図である。
図6(A)は、折り畳み部分を展開したおむつ1を前身頃領域1F側から見た図である。
図6(A)に示すおむつは、長手方向に加えて幅方向の折り畳みも展開されているため、股下領域1Bと、前身頃領域1Fに対応する部分のみが表面に露出している。
図6(A)では、包装状態のおむつ1に形成されていた折り目は全て展開されているが、サイドフラップ部分に折り目が形成されていたことにより、長手方向端部近傍における幅方向左右に折り癖12L,12Rが残存している。折り癖12R,12Lは、後身頃領域1R側に凸になるように残存している。一方、折り癖12R,12Lの間に挟まれた領域は、幅方向中央部の凸部2Sを中心として、前身頃領域1F側に屈曲している状態となる。
【0047】
図6(B)は、前身頃領域1Fにおける、長手方向端部近傍の構造を示す図である。
図6(B)は、折り癖12L,12Rの間に挟まれた領域の一部である、太い破線で囲まれた領域の拡大図である。なお、後身頃領域1R側の構造も同一である。
図6(B)の上側には、長手方向端部であって、その更に上側には胴開口部2Tが存在している。
図6(B)の下側は、股下領域1B側である。胴開口部2T側には、糸ゴム4F1が存在しており、股下領域1B側には、糸ゴム4F2が存在している。
【0048】
図6(C)は、
図6(B)に示す構造を、厚み方向から見た断面図である。
図6(B)に示す領域に存在するカバーシート4等のシートは、幅方向に延在する糸ゴム4F1,4F2の収縮力によって収縮し、糸ゴム4F1,4F2同士の間に、略長手方向に皺が形成されている。長手方向における糸ゴム4F1の存在間隔は短い。このため、糸ゴム4F1が存在する領域では、カバーシート4等のシートには、小さな皺14が形成されている。一方、長手方向における糸ゴム4F2の存在間隔は、糸ゴム4F1の延在領域と比較すると長い。このため、糸ゴム4F2が存在する領域では、カバーシート4等のシートには、大きな皺15が形成されている。
【0049】
図6(D)は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおける皺15同士が噛み合った状態を示す図である。おむつ1は、厚みを低減し、効率的な流通を実現するために、流通状態において厚み方向に圧縮されていることがある。また、おむつ1の厚みを低減するためには、糸ゴムによってカバーシート4等に形成される皺同士が噛み合っていることが好適である。糸ゴム4F2,4R2によって形成される皺15は比較的大きい。このため、例えば、幅方向に伸ばした状態のカバーシート4等を、厚み方向に一定の圧力をかけながら、
糸ゴム4F2,4R2の収縮力に任せた状態に戻すと、糸ゴム4F2,4R2の収縮力によって、カバーシート4等の前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rに形成される皺15同士が噛み合う。当該噛み合いにより、糸ゴム4F2,4R2延在領域における、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1R部分のカバーシート4等同士は、係合した状態になる。すなわち、流通状態において、糸ゴム4F2,4R2が存在する外装シートの前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとは、互いに係合している。
【0050】
このように、前身頃領域1Fと後身頃領域1R部分のカバーシート4等同士が係合させることにより流通状態におけるおむつの厚みをより薄くすることができる。なお、係合は、人体刺激性を有さず、使用時には容易に剥離する接着剤を、おむつの肌面側(胴側)となるカバーシート4等に薄く塗布することで接着部を設け、当該接着部により仮接着することにより実現されてもよい。また、皺15同士を噛み合わせ、更に接着部で仮接着することで係合状態としてもよい。
【0051】
図6(E)は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいて、皺14同士が噛み合っていない状態を示す図である。糸ゴム4F1,4R1によって形成される、胴開口部2T側の皺14は、糸ゴム4F1,4R1の長手方向における存在間隔が狭いために、皺15と比べると小さくなる。このため、おむつ1が厚み方向に圧縮されて、皺15同士が噛み合って前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが係合している場合でも、糸ゴム4F1,4R1の周囲に形成されている皺14同士が噛み合うことがない。このため、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが係合している状態であっても、胴開口部2T近傍の領域は係合しない。
【0052】
このように、本実施形態に係るおむつ1は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの肌面側(胴側)を係合させて折り畳むことで、流通時の嵩を小さくすることができる。その一方、胴開口部2T近傍では前身頃領域1Fと後身頃領域1Rは係合していない。また、使用前のおむつ1には、流通状態に起因し、胴開口部2T近傍から長手方向に延在する折り癖12R,12Lが形成されており、折り癖12R,12Lの間に挟まれた領域は、幅方向中央部の凸部2Sを中心として、前身頃領域1F側に屈曲している。
【0053】
前身頃領域1F端部と後身頃領域1R端部は係合しておらず、更に胴開口部2T近傍が前身頃領域1F側に屈曲した凸部となっているため、着用者または介助者がおむつ1を包装から取り出した際、おむつ1の長手方向両端部には、指が挿入可能な隙間が形成されている。このため、着用者または介助者は、当該隙間に指を挿入し、おむつ1を広げるように力を加えることで、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの股下領域1B近傍に形成されている係合を解消し、おむつ1を容易に装着可能な状態にすることができる。
【0054】
このように、本実施形態に係るおむつ1は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rを係合させることで流通時の体積を小さくして流通を容易にすることができると共に、着用前には容易に係合を解くことができるため装着も容易である。また、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが係合されているかどうかによっても使用済みかどうかの判別が可能であり、取り回しも容易になるため、好適である。
【0055】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。例えば、襞同士が噛み合うことで係合を実現する場合に、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいて、糸ゴムの色を変えてよい。前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが係合状態であれば、後身頃領域1R側から前身頃領域1F側の糸ゴムの色が視認可能であり、前身頃領域1F側から後身頃領域1R側の糸ゴムの色が視認可能である。このため、着用者または介助者は、おむつ1が使用済みであって係合が解かれている状態か、使用前であって係合がなされている状態かを、容易に判断することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、大人用のパンツ型おむつを例に挙げて説明したが、本発明は、子供用のパンツ型おむつにも適用可能である。
【0057】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・おむつ
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
2R・・右下肢開口部
2L・・左下肢開口部
2S・・凸部
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
3LL,3LR・・レグギャザー
4・・カバーシート
4F1,4F2,4F3,4R1,4R2,4R3・・糸ゴム
4F4,4R4,4F5,4R5・・縁
4FF,4RF・・折り返し線
5F,5R・・インナーカバーシート
6・・バックシート
7・・コアラップシート
8・・吸収体
8H・・導流溝
9・・トップシート
10L,10R・・サイドシート
10L1,10R1・・糸ゴム
10L2,10R2・・折り返し線
10LB,10RB・・接着領域
11F,11R・・エンドシート
12L,12R・・折り癖
14,15・・皺