(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172529
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01H 3/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084412
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】内田 匠
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA14
2G064DD08
2G064DD15
2G064DD21
(57)【要約】
【課題】測定装置の異常の自動検出に資する技術の提供。
【解決手段】マイクロホン11の感度の個体差を調整すべく、記憶部14は異なる時点での音響校正により得られた調整値を記憶する。制御部13は、今回の調整値Aと前回の調整値Bとの差分の絶対値が閾値Th1より小さく(S14:Yes)、かつ今回の調整値Aと製造時の調整値Cとの差分の絶対値が閾値Th2より小さければ(S17:Yes)、正常と判定するのに対し(S18)、今回の調整値Aと前回の調整値Bとの差分の絶対値が閾値Th1以上であるか(S14:No)、今回の調整値Aと製造時の調整値Cとの差分の絶対値が閾値Th2以上であれば(S17:No)、異常と判定し(S19)、表示部15を用いて警告表示を行う(S20)。このような判定により、マイクロホン感度が徐々にずれていくような異常も検出することができ、いかなるユーザも測定器に問題があることを容易に認識できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音測定、騒音ばく露測定、又はその他の音圧に関する測定を行うための測定装置であって、
音が入力するマイクロホンと、
前記音に対応する信号に基づいて音響校正の実行を制御する制御部と、
前記マイクロホンの感度の個体差を調整する調整値として、前記測定装置の製造時に所定の演算又は音響校正により得られた第1調整値と、前回実行された音響校正により得られた第2調整値とを記憶する記憶部と
を備えた測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記制御部は、
音響校正を実行して第3調整値を取得し、前記第3調整値と前記第2調整値との比較に基づいて前記測定装置が正常であるか否かを判定する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置において、
前記制御部は、
さらに前記第3調整値と前記第1調整値との比較に基づいて前記測定装置が正常であるか否かを判定する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の測定装置において、
前記記憶部は、
前記測定装置の内部に設けられ、又は、前記測定装置に接続されている
ことを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音測定、騒音ばく露測定、又はその他の音圧に関する測定を行うための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音測定に際しては、測定前に騒音計や騒音ばく露計等の測定装置の音響校正を実施することが求められている。音響校正は通常、基準音を安定して発生させる音響校正器を測定装置のマイクロホンに取り付けて実施され、マイクロホンに入力した基準音に関する評価値が測定装置で算出される。そして、評価値が所定の基準値に対してずれがあり、評価値のずれが所定の範囲内にある場合には、評価値を基準値に合わせる調整が行われる。一方、評価値のずれが所定の範囲を超える場合には、異常と判断し、その測定装置は測定に用いない。
【0003】
また、音響校正は、測定後にも再度実施することが推奨されている。測定後の音響校正においては、測定前の評価値と測定後の評価値とのずれが正常と判断される範囲内にあるか否かを確認し、測定前後の評価値のずれがその範囲を超えている場合に、測定装置の故障と判断する。
【0004】
しかしながら、工事現場等の騒音測定は、測定に不慣れな現場の作業者が行うことも多く、測定装置に示された数値の見間違いや不慣れであることに起因するミスにより異常を見落とす虞がある。このような課題に関して、音響校正を自動化する技術が開示されている。(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-94620号公報
【特許文献2】国際公開第2005/071371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された技術によれば、人為ミスを発生することなく測定装置の音響校正を実施することができると考えられる。しかしながら、この技術は、正確で確実な音響校正の自動化に主眼を置いたものであり、マイクロホンの異常を検出することはできない。また、特許文献2には、音響校正の実施時に音響校正器に関する情報や校正日時等を記録することが開示されているが、それらの情報の具体的な利用方法については触れられていない。
【0007】
一方、特許文献1に記載された技術は、基準音を感知してマイクロホンが出力する信号に対し、周波数成分毎の音圧レベルの分布から音圧の閾値を求め、前回の閾値との比較からマイクロホンの故障を判断しようとするものであり、人為ミスを発生することなくマイクロホンの異常を検出することができると考えられる。しかしながら、この技術では、入力信号の周波数成分毎に分布関数を求めるため複雑な処理を要する。また、この技術によっても、時間経過とともに徐々にずれていくような異常を検出することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、測定装置の異常の自動検出に資する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の測定装置を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
すなわち、本発明の測定装置は、騒音測定、騒音ばく露測定、又はその他の音圧に関する測定を行うための測定装置であって、音が入力するマイクロホンと、音に対応する信号に基づいて音響校正の実行を制御する制御部と、測定装置の内部に設けられ又は測定装置に接続されており、マイクロホンの感度の個体差を調整する調整値として、測定装置の製造時に所定の演算又は音響校正により得られた第1調整値と、前回実行された音響校正により得られた第2調整値とを記憶する記憶部とを備えている。
【0011】
マイクロホンは、同じ型式のものであってもその感度に個体差がある。また、マイクロホンの感度は時間の経過とともに徐々にずれていく(マイクロホンの感度と本体内の回路の特性との関係が経時変化によって徐々にずれていく)場合があるが、そのような異常は一般的な音響校正では検出が困難である。
【0012】
これに対し、上述した態様の測定装置においては、記憶部が、測定装置の製造時になされた所定の演算(製造時にマイクロホン及び本体内の回路に関してそれぞれ単体で確認される特性に基づいた演算)、又は、製造時に実行された音響校正により得られた第1調整値と、前回実行された音響校正により得られた第2調整値とを記憶している。したがって、上述した態様の測定装置によれば、制御部が音響校正の実行を制御する際に、これらの調整値を参照することで、調整値の変化を確認することができ、時間の経過とともに徐々にずれていくような異常も検出が可能となるため、測定装置の異常の自動検出に資することができる。
【0013】
より好ましくは、上述した態様の測定装置において、制御部は、音響校正を実行して第3調整値を取得し、第3調整値と第2調整値との比較に基づいて測定装置が正常であるか否かを判定する。
【0014】
この態様の測定装置においては、第3調整値(今回の音響校正により得られた調整値)と第2調整値(前回の音響校正により得られた調整値)との比較に基づいて、より具体的には、第3調整値と第2調整値との差分の絶対値(|第3調整値-第2調整値|)、又は、第3調整値と第2調整値との比(第3調整値/第2調整値)が正常範囲内であるか否かに応じて、測定装置が正常であるか否かが判定される。
【0015】
さらに好ましくは、上述した態様の測定装置において、制御部は、さらに第3調整値と第1調整値との比較に基づいて測定装置が正常であるか否かを判定する。
【0016】
この態様の測定装置においては、第3調整値(今回の音響校正により得られた調整値)と第1調整値(製造時の音響校正により得られた調整値)との比較に基づいて、より具体的には、第3調整値と第1調整値との差分の絶対値(|第3調整値-第1調整値|)、又は、第3調整値と第1調整値との比(第3調整値/第1調整値)が正常範囲内であるか否かに応じて、測定装置が正常であるか否かが判定される。
【0017】
したがって、これらの態様の測定装置によれば、異なる時点での音響校正により得られた2つの調整値を比較した結果に基づいて客観的に判定がなされるため、測定装置の異常を自動的に検出することができる。また、異常と判定された場合に警告を発することで、測定に不慣れなユーザでもその測定装置に問題があることを容易に認識することができるため、問題があることに気付かずにその測定装置を用いて測定を行うことにより生じうる測定ミスを未然に防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、測定装置の異常の自動検出に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】測定器1の主要な構成を示すブロック図である。
【
図2】音響校正に伴って実行される処理の第1形態の手順例を示すフローチャートである。
【
図3】音響校正に伴って実行される処理の第2形態の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0021】
〔測定器の構成〕
図1は、実施形態の測定器1の主要な構成を示すブロック図である。
測定器1は、例えば、マイクロホン11、プリアンプ12、制御部13、記憶部14、表示部15、操作入力部16等を備えている。測定器1には、例えば、騒音計や騒音ばく露計が該当する。すなわち、測定器1は、騒音測定、騒音ばく露測定、又はその他の音圧に関する測定を行う装置であり、これを測定器(測定装置)とするのか計測器(計測装置)とするのかは、単なる呼称の違いに過ぎない。
【0022】
マイクロホン11は、入力する音を電気信号に変換して出力する。プリアンプ12は、マイクロホン11の出力信号を必要に応じてインピーダンス変換して出力する。プリアンプ12の出力信号は、制御部13に入力する。なお、MEMSマイクロホン(半導体マイクロホン)には、MEMSチップ内にプリアンプ相当の回路が内蔵されているものや、MEMSチップからデジタル信号が出力されるものもある。このようなMEMSマイクロホンをマイクロホン11に採用する場合には、プリアンプ12を別途設ける必要はない。そこで、以下の説明においては、プリアンプ12から制御部13に入力する信号や、プリアンプ12を経由せずにマイクロホン11から直接制御部13に入力する信号を総括して、「入力信号」と称する。言い換えると、入力信号は、マイクロホン11に入力する音に対応して制御部13に入力する信号である。制御部13は、例えばCPUやDSP(Digital Signal Processor)等で構成され、入力信号に基づいて規格や法律等で定められた所定の評価値を算出する。
【0023】
ところで、マイクロホン11は、同じ型式のものであっても、同じ強さの音に対するマイクロホンの出力にはばらつきがある。そこで、測定器1においては、このようなばらつき(マイクロホンの感度の個体差)を調整する係数を設けている。以下の説明においては、調整係数の数値を「調整値」と称する。
【0024】
記憶部14は、例えば内部メモリであり、各種の閾値等を予め記憶するとともに、音響校正時に算出された評価値を調整して得られた調整値を記憶する。具体的には、記憶部14は、測定器1の製造段階での音響校正時に得られた調整値を「調整値C」として予め記憶している。なお、測定器1の製造時には、マイクロホン11の特性や本体内に搭載される回路(制御部13等)の特性がそれぞれ単体で確認されるため、これらを組み立ててなる測定器1で音響校正を行った場合に調整値がどのような値になるのかは、単体で確認された各部品の特性に基づいて理論的に算出することができる。そこで、そのような演算により得られた値を調整値Cとして予め記憶させてもよい。
【0025】
また、記憶部14は、前回の音響校正時に得られた調整値を「調整値B」として記憶するとともに、音響校正の実行中に変更する調整値を「調整値A」として記憶する。なお、測定器1の出荷時には、出荷時の音響校正により得られた調整値を調整値Bとして記憶させてもよいし、調整値Cをもとに算出した値又は調整値Cをコピーした値を調整値Bとして記憶させてもよい。また、調整値A~Cとして記憶する値は、制御部13により算出される評価値に合わせてdB単位の値としてもよいし、内部演算で用いる値そのもの(例えば、小数点を含む数値)としてもよい。
【0026】
音響校正に伴って、制御部13は、記憶部14に記憶された複数種類の調整値及び閾値を用いて、測定器1(マイクロホン11)が正常であるか否かを判定する。表示部15は、例えば液晶画面やランプ等で構成され、制御部13により算出された評価値を表示する。また、異常と判定された場合には、表示部15は、液晶画面やランプを用いて警告表示を行う。なお、判定処理の具体的な内容については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。
【0027】
操作入力部16は、例えば複数の操作ボタンであり、測定器1に対する操作(例えば、測定の開始や終了、音響校正時の調整における値の上げ下げ等)を受け付けて制御部13に入力する。これを受けて、制御部13は、受け付けた操作に応じた制御を行う。
【0028】
また、図示を省略しているが、測定器1は有線又は無線によりPC等の外部機器に接続可能とされている。そのような外部機器にインストールされた専用のソフトウェアを介して、測定データの管理やレポートの作成等を行うことができる。音響校正時に測定器1が外部機器に接続されていれば、専用のソフトウェアを介して評価値の表示や警告表示を行うことができる。測定器1が騒音ばく露計である場合には、装着者の負担を考慮して本体が小型に設計されていることが多く表示部15が液晶画面を備えていないことがあるが、その場合には、専用のソフトウェアを介して基準音に対する評価値を表示したりその調整を受け付けたりすることが可能である。
【0029】
なお、上述した記憶部14は測定器1の内部に設けられているが、測定器1の外部に設けられた記憶領域を記憶部として用いることも可能である。例えば、測定器1を外部機器に接続した状態で使用する場合には、上述した調整値A~Cを外部機器の内部に設けられた記憶領域に記憶させてもよい。
【0030】
〔判定処理(第1形態)〕
図2は、測定器1の音響校正に伴って実行される処理の第1形態の手順例を示すフローチャートである。手順例のうち、冒頭の音響校正は人手を介して実行されるが、それ以降の全ての処理(判定処理)は測定器1により自動的に実行される。以下、手順例に沿って説明する。
【0031】
ステップS11:測定器1を用いた測定の前後、又は、測定器1の動作チェック時に、音響校正が実行される。具体的には、先ず、測定器1のマイクロホンに指定された音響校正器を取り付け、音響校正器から基準音を発生させてマイクロホンに基準音圧を与え、測定器1で算出された評価値が基準値(例えば、94.0dB)になっているか否かを確認する。評価値が基準値からずれている場合には、測定器1の操作ボタン(例えば、上下キー)を用いて、評価値が基準値になるように調整を行う。このとき、記憶部14に記憶されている調整値Bと同じ値を初期値として調整値Aが変更され、調整を終えると調整値Aが確定する。
【0032】
ステップS12~S14:制御部13は、ステップS11で実行した音響校正により確定した調整値Aを取得し(ステップS12)、記憶部14から調整値Bを取得して(ステップS13)、調整値Aと調整値Bとの差分の絶対値が所定の閾値Th1より小さいか否かを確認する(ステップS14)。確認の結果、差分の絶対値が閾値Th1より小さい場合には(ステップS14:Yes)、制御部13はステップS16に進む。一方、差分の絶対値が閾値Th1以上である場合には(ステップS14:No)、制御部13はステップS19に進む。
【0033】
ステップS16,S17:続いて、制御部13は、記憶部14から調整値Cを取得して(ステップS16)、調整値Aと調整値Cとの差分の絶対値が所定の閾値Th2より小さいか否かを確認する(ステップS17)。確認の結果、差分の絶対値が閾値Th2より小さい場合には(ステップS17:Yes)、制御部13はステップS18に進む。一方、差分の絶対値が閾値Th2以上である場合には(ステップS17:No)、制御部13はステップS19に進む。
【0034】
ステップS18:制御部13は、正常と判定する。
【0035】
ステップS19、S20:制御部13は、異常と判定し(ステップS19)、警告処理を実行する(ステップS20)。警告処理では、制御部13は、表示部15の液晶画面やランプを用いて警告表示を行い、測定器1に外部機器が接続されている場合には、専用のソフトウェアの画面にも警告表示を行う。
【0036】
ステップS21:制御部13は、記憶部14に記憶されている調整値Bを調整値Aで更新(上書き保存)する。
【0037】
なお、上述した手順はあくまで一例であり、状況に応じて適宜変更が可能である。例えば、調整値Bの更新(ステップS21)は、調整値Aと調整値Bとの比較を行った直後(ステップS14の直後)に実行してもよい。また、調整値Aと調整値Bとの比較に基づく判定(ステップS14)を調整値Aと調整値Cとの比較に基づく判定(ステップS17)の後に実行してもよい。
【0038】
このように、判定処理の第1形態においては、今回の調整値Aと前回の調整値Bとの差分の絶対値が閾値Th1以上である場合、又は、今回の調整値Aと製造時の調整値Cとの差分の絶対値が閾値Th2以上である場合には、測定器1が故障している可能性があるため、異常と判定されて警告が発せられる。したがって、どのようなユーザでも、測定器1に問題があること、ひいてはその測定器1を測定に用いるべきでないことを容易に認識することができる。
【0039】
〔判定処理(第2形態)〕
図3は、測定器1の音響校正に伴って実行される処理の第2形態の手順例を示すフローチャートである。上述した判定処理の第1形態においては、正常であるか否かの判定が調整値の差分の絶対値に基づいて行われるのに対し、判定処理の第2形態においては、調整値の比に基づいて判定が行われる。以下、手順例に沿って、第1形態と共通する内容については省略しながら説明する。
【0040】
ステップS31:測定器1の音響校正が実行される。
ステップS32~S34:制御部13は、ステップS31で実行した音響校正により確定した調整値Aを取得し(ステップS32)、記憶部14から調整値Bを取得して(ステップS33)、調整値Aと調整値Bとの比(調整値A/調整値B)が所定の閾値Th3以上かつ所定の閾値Th4以下であるか否かを確認する(ステップS34)。例えば、閾値Th3は0.93(約-0.3dB)、閾値Th4は1.07(約0.3dB)である。
【0041】
確認の結果、調整値Aと調整値Bとの比が閾値Th3以上かつ閾値Th4以下である場合には(ステップS34:Yes)、制御部13はステップS36に進む。一方、比が閾値Th3より小さいか、閾値Th4より大きい場合には(ステップS34:No)、制御部13はステップS39に進む。
【0042】
ステップS36,S37:続いて、制御部13は、記憶部14から調整値Cを取得して(ステップS36)、調整値Aと調整値Cとの比(調整値A/調整値C)が所定の閾値Th5以上かつ所定の閾値Th6以下であるか否かを確認する(ステップS37)。例えば、閾値Th5は0.8(約-1.0dB)、閾値Th6は1.25(約1.0dB)である。
【0043】
確認の結果、調整値Aと調整値Cとの比が閾値Th5以上かつ閾値Th6以下である場合には(ステップS37:Yes)、制御部13はステップS38に進む。一方、比が閾値Th5より小さいか、閾値Th6より大きい場合には(ステップS37:No)、制御部13はステップS39に進む。
【0044】
ステップS38:制御部13は、正常と判定する。
【0045】
ステップS39、S40:制御部13は、異常と判定し(ステップS39)、警告処理を実行して、表示部15の液晶画面やランプ、測定器1に接続された外部機器の画面に警告表示を行う(ステップS40)。
【0046】
ステップS41:制御部13は、記憶部14に記憶されている調整値Bを調整値Aで更新(上書き保存)する。
【0047】
このように、判定処理の第2形態においては、今回の調整値Aと前回の調整値Bとの比が閾値Th3より小さいか閾値Th4より大きい場合、又は、今回の調整値Aと製造時の調整値Cとの比が閾値Th5より小さいか閾値Th6より大きい場合には、測定器1が故障している可能性があるため、異常と判定されて警告が発せられる。したがって、どのようなユーザでも、測定器1に問題があること、ひいてはその測定器1を測定に用いるべきでないことを容易に認識することができる。
【0048】
以上に説明したように、測定器1によれば、以下の効果が得られる。
【0049】
(1)測定器1によれば、今回の調整値、前回の調整値、製造時の調整値の3種類の調整値を用いて、正常であるか否か(測定器1に問題がないか否か)の判定を自動的に実行し、異常と判定すると警告を発するため、測定に不慣れなユーザでも、測定器1に問題があることを容易に認識することができ、その測定器1を用いて測定を行うべきでないことが分かるため、故障している可能性のある測定器1を用いて測定を行うことにより生じうる測定ミスを未然に防ぐことができる。
【0050】
(2)出荷時(製造時)のマイクロホン感度から徐々にずれていくような異常は、一般的な音響校正では検出が困難であり、校正機関等による型式承認の定期検査の際に検出される場合が多い。そのようにして異常が検出された場合には、前回の定期検査以降にその測定器を用いて行われた測定の信頼性に疑問が生じ、それらの測定データは使用できなくなる可能性が生じる。これに対し、測定器1によれば、上記のような異常も見落とすことなく自動的に検出することができ、異常を検出すると警告を発するため、測定に不慣れなユーザでも、音響校正時に警告が発せられた測定器を用いない(音響校正時に警告が発せられなかった測定器を用いる)ことで、測定を安全に実施することが可能となる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態及びその変形例に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0052】
上述した実施形態においては、表示部15を構成する液晶画面やランプ、測定器1に接続されている外部機器の専用ソフトウェアの画面に警告表示を行っているが、測定器1や外部機器がスピーカを備えている場合には、上記のような警告表示とともに、スピーカから警告音を出力してもよい。
【0053】
上述した実施形態に関して判定処理の2つの形態を示しているが、測定器1には、いずれか一方の形態の判定処理を実装してもよいし、或いは、両方の形態の判定処理を実装して、測定器1の判定モードの設定等によりいずれかの形態をユーザが選択可能な構成としてもよい。
【0054】
その他、測定器1に関する説明の過程で挙げた構成や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 測定器
11 マイクロホン
12 プリアンプ
13 制御部
14 記憶部
15 表示部
16 操作入力部