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  • 特開-液体供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172545
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20231129BHJP
【FI】
C02F1/00 J
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084437
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】前田 臨太郎
(57)【要約】
【課題】循環する液体を効率的に冷却または加熱してユースポイントに供給する。
【解決手段】液体供給装置1は、液体を貯留するタンク2と、タンク2からユースポイント3に液体を供給する供給ラインL21と、供給ラインL21に設けられ、タンク2内の液体を供給ラインL21に流通させるポンプ21と、ポンプ21の下流側の供給ラインL21に設けられ、ユースポイント3に供給されて使用される液体を、タンク2内の液体とは異なる温度に冷却または加熱する熱交換器22と、供給ラインL21を通じてユースポイント3に供給された液体のうちユースポイント3で使用されなかった液体をポンプ21の上流側の供給ラインL21に還流させる還流ラインL22と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
前記タンクからユースポイントに液体を供給する供給ラインと、
前記供給ラインに設けられたポンプと、
前記ポンプの下流側の前記供給ラインに設けられ、前記ユースポイントに供給されて使用される液体を、前記タンク内の液体とは異なる温度に冷却または加熱する熱交換器と、
前記供給ラインを通じて前記ユースポイントに供給された液体のうち前記ユースポイントで使用されなかった液体を前記ポンプの上流側の前記供給ラインに還流させる還流ラインと、を有する液体供給装置。
【請求項2】
前記還流ラインの下流端部に近接する位置で該還流ラインに接続され、前記供給ラインおよび前記還流ライン内の液体を外部に排出する排出ラインを有する、請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記還流ラインを流れる液体を前記供給ラインに還流させる循環運転を行うために、前記還流ラインと前記供給ラインとを連通させる第1の状態と、前記供給ラインおよび前記還流ライン内の液体を前記排出ラインから外部に排出する排水運転を行うため、または、前記排水運転が行われた後に、前記供給ラインから前記還流ラインに液体を供給して前記供給ラインおよび前記還流ライン内の空気を前記排出ラインから外部に排出する空気抜き運転を行うために、前記還流ラインと前記排出ラインとを連通させる第2の状態とに切り替え可能な流路切替手段を有する、請求項2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記循環運転では、前記タンク内の圧力と前記供給ライン内の圧力との差圧により、または、前記ポンプの吸込圧力により、前記タンク内の液体が前記供給ラインに供給され、前記還流ラインから還流される液体と合流される、請求項3に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記空気抜き運転時に前記還流ラインの内部が液体で満たされたことが検知されたときに、前記流路切替手段を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える制御手段を有する、請求項3または4に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記流路切替手段を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えた後に、前記熱交換器を作動させて前記冷却または加熱を開始させる、請求項5に記載の液体供給装置。
【請求項7】
流量センサ、圧力センサ、または、温度センサからなり、前記還流ラインの内部が液体で満たされたか否かを検知する満水検知手段を有する、請求項5に記載の液体供給装置。
【請求項8】
前記還流ラインを流れる液体の流量を検知する流量検知手段と、
前記還流ラインを流れる液体の流量を調整する流量調整手段と、を有し、
前記制御手段は、前記循環運転時に、前記流量検知手段により検知された流量に基づいて、前記還流ラインを流れる液体の流量が一定になるように前記流量調整手段を制御する、請求項5に記載の液体供給装置。
【請求項9】
前記供給ラインまたは前記還流ラインに設けられ、前記供給ラインまたは前記還流ラインを流れる液体を所定温度以上に加熱し、前記供給ラインおよび前記還流ラインを殺菌するための熱水を生成する熱交換器を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項10】
前記タンクと前記供給ラインと前記還流ラインとの滅菌処理を実行するために、前記タンクを通じて前記供給ラインと前記還流ラインとに蒸気を導入する蒸気導入手段を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項11】
前記タンクから前記ユースポイントに液体を供給する別の供給ラインと、
前記別の供給ラインに設けられた別のポンプと、
前記別の供給ラインを通じて前記ユースポイントに供給された液体のうち前記ユースポイントで使用されなかった液体を前記タンクに還流させる別の還流ラインと、を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造に使用される精製水をユースポイントに供給する装置として、精製水の滞留による生菌発生を抑制するために、ユースポイントでの需要の有無にかかわらず、タンクとユースポイントとの間で精製水を常時循環させる循環運転を行うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-095479号公報
【特許文献2】特開2017-196587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置の中には、常温よりも低く、あるいは高く設定されたユースポイントでの要求温度に対応するために、循環経路上に冷却または加熱機構を有する熱交換器を備えたものがある。この場合、精製水を貯留するタンクには、ユースポイントでの要求温度に冷却または加熱された精製水が還流する一方、常温の精製水が必要に応じて補充されるため、その都度、タンク内の精製水の温度はユースポイントでの要求温度からずれてしまう。そして、そのようなタンク内の精製水をユースポイントでの要求温度に冷却または加熱することは、余計なエネルギーの消費につながる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、循環する液体を効率的に冷却または加熱してユースポイントに供給する液体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の液体供給装置は、液体を貯留するタンクと、タンクからユースポイントに液体を供給する供給ラインと、供給ラインに設けられ、タンク内の液体を供給ラインに流通させるポンプと、ポンプの下流側の供給ラインに設けられ、ユースポイントに供給されて使用される液体を、タンク内の液体とは異なる温度に冷却または加熱する熱交換器と、供給ラインを通じてユースポイントに供給された液体のうちユースポイントで使用されなかった液体をポンプの上流側の供給ラインに還流させる還流ラインと、を有している。
【0007】
このような液体供給装置によれば、タンクを介さずに液体を循環させることが可能になるため、必要最小限のエネルギーで、循環する液体を冷却または加熱することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によれば、循環する液体を効率的に冷却または加熱してユースポイントに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る精製水供給装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、本発明の液体供給装置として、医薬品製造に使用される精製水をユースポイントに供給する精製水供給装置を例示するが、本発明はこれに限定されず、例えば、医薬品製造に用いられる、脱イオン水、限外ろ過水(精製水や脱イオン水を限外ろ過膜で処理した水)、注射用水などの水(液体)をユースポイントに供給する装置にも適用可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る精製水供給装置の構成を示す概略図である。なお、図示した精製水供給装置の構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではない。
【0012】
精製水供給装置1は、精製水を貯留するタンク2と、常温水供給部10と、低温水供給部20とを有している。本実施形態では、ユースポイント3での要求温度として、常温(例えば25℃)とそれより低温(例えば5℃)の2種類が設定されている。そのため、詳細は後述するが、常温水供給部10は、タンク2内の精製水をそのまま常温でユースポイント3に供給するように構成され、低温水供給部20は、タンク2内の精製水を常温よりも低温に冷却してユースポイント3に供給するように構成されている。以下では、ユースポイント3に供給される2種類の精製水を区別するために、常温の精製水を「常温水」といい、低温の精製水を「低温水」という場合がある。さらに、精製水供給装置1は、精製水供給装置1の運転を制御する制御部(制御手段)4を有している。
【0013】
常温水供給部10は、常温水を循環させる常温水循環ラインL10と、常温水循環ラインL10に設けられた常温水ポンプ11とを有している。常温水循環ラインL10は、タンク2とユースポイント3の入口3aとを接続し、常温水ポンプ11が設けられた常温水供給ラインL11と、ユースポイント3の出口3bとタンク2とを接続する常温水還流ラインL12とを含んでいる。なお、ユースポイント3には、開閉弁V1を介して常温水循環ラインL10に接続された常温水送水ラインL1が設けられている。常温水送水ラインL1の数は1つに限定されず、複数であってもよい。
【0014】
このような構成により、タンク2内の常温水は、常温水ポンプ11により常温水供給ラインL11を通じてユースポイント3に供給され、ユースポイント3で使用されなかった常温水は、常温水還流ラインL12を通じてタンク2に還流される。こうして、タンク2を介して常温水を循環させる循環運転が行われ、必要に応じてユースポイント3で常温水が消費される。
【0015】
低温水供給部20は、低温水を循環させる低温水循環ラインL20と、低温水循環ラインL20に設けられた低温水ポンプ21と、同じく低温水循環ラインL20に設けられた熱交換器22とを有している。低温水循環ラインL20は、タンク2とユースポイント3の入口3cとを接続し、低温水ポンプ21と熱交換器22とが設けられた低温水供給ラインL21と、ユースポイント3の出口3dと低温水ポンプ21の上流側の低温水供給ラインL21とを接続する低温水還流ラインL22とを含んでいる。熱交換器22は、低温水供給ラインL21を流通する精製水を所定の温度に冷却して低温水を生成する機能を有している。なお、ユースポイント3には、開閉弁V2を介して低温水循環ラインL20に接続された低温水送水ラインL2が設けられている。低温水送水ラインL2の数は1つに限定されず、複数であってもよい。
【0016】
このような構成により、低温水ポンプ21により送水されて熱交換器22で所定の温度に冷却された低温水は、低温水供給ラインL21を通じてユースポイント3に供給され、ユースポイント3で使用されなかった低温水は、低温水還流ラインL22を通じて低温水供給ライン21に還流される。こうして、タンク2を介さずに低温水を循環させる循環運転が行われ、必要に応じてユースポイント3で低温水が消費される。このような低温水の循環運転では、低温水還流ラインL22からの低温水は、上述したようにタンク2には還流されず、必要に応じてタンク2から供給される常温水と合流されて熱交換器22に供給される。すなわち、ユースポイント3での使用量に応じて低温水供給ラインL21の流量が変動すると、それに応じて、タンク2から低温水供給ラインL21に常温水が供給され、その常温水に低温水還流ラインL22からの低温水が合流されて熱交換器22に供給される。なお、タンク2からの常温水の供給は、タンク2内の圧力と低温水供給ラインL21内の圧力との差圧、または、ポンプの吸込圧力により行われる。こうして、熱交換器22に供給される低温水の温度上昇を最小限に抑えることができ、低温水を生成するためのエネルギーを最小限に抑えることができる。このことは、冷却能力の小さい熱交換器22を採用することができ、コストダウンにつながる点でも好ましい。
【0017】
常温水還流ラインL12には、紫外線殺菌器12と熱交換器(図示せず)が設けられている。紫外線殺菌器12は、常温水還流ラインL12を流れる常温水を紫外線照射により殺菌するために使用される。熱交換器は、通常運転の合間に定期的に行われる熱水殺菌工程において使用され、常温水循環ラインL10に沿って循環する精製水を所定温度以上、例えば80~90℃に加熱して熱水を生成し、その熱水によりタンク2や常温水循環ラインL10を殺菌するために使用される。なお、常温水の循環運転は、例えば夜間や休日など、ユースポイント3で常温水の需要がない期間にも行われるが、それが長期間にわたると、常温水ポンプ11や紫外線殺菌器12の発熱などにより、常温水の温度が上昇してユースポイント3での要求温度以上になるおそれがある。そのために、上述した熱水殺菌用の熱交換器が冷却機能を備えていてもよく、それとは別の冷却機能を備えた熱交換器が常温水循環ラインL10に設けられていてもよい。
【0018】
常温水還流ラインL12のうち紫外線殺菌器12の下流側には開閉弁V11が設けられ、その開閉弁V11と紫外線殺菌器12との間には、開閉弁V12を介して常温水排出ラインL13が接続されている。常温水の循環時、常温水還流ラインL12の開閉弁V11が開放され、常温水排出ラインL13の開閉弁V12が閉鎖されるため、常温水排出ラインL13のうち開閉弁V12の上流側の部分には常温水が滞留しやすくなる。一方、常温水の排水時には、常温水還流ラインL12の開閉弁V11が閉鎖され、常温水排出ラインL13の開閉弁V12が開放されるため、常温水還流ラインL12のうち常温水排出ラインL13との接続点から開閉弁V11までの部分には常温水が滞留しやすくなる。このようなデッドレグによる影響を極力排除するためには、例えば、主管の中心から枝管の先の閉止機構までの距離が枝管内径の6倍以内にすることが好ましい。すなわち、常温水排出ラインL13との接続点における常温水還流ラインL12の中心から開閉弁V12の閉止位置までの距離は、常温水排出ラインL13の内径の6倍以内であることが好ましい。同様に、常温水還流ラインL12との接続点における常温水排出ラインL13の中心から開閉弁V11の閉止位置までの距離も、常温水還流ラインL12の内径の6倍以内であることが好ましい。
【0019】
低温水還流ラインL22には、常温水還流ラインL12と同様に、紫外線殺菌器23が設けられている。紫外線殺菌器23は、低温水還流ラインL22を流れる低温水を紫外線照射により殺菌するために使用される。ただし、生菌の繁殖速度は、常温水に比べて低温水では遅く、低温水供給部20の取水源でもあるタンク2内の常温水が殺菌済みであれば、必ずしも低温水の紫外線殺菌を行わなくてもよいため、紫外線殺菌器23は省略されてもよい。また、低温水循環ラインL20においても、常温水循環ラインL10の場合と同様の熱水殺菌工程が行われる。したがって、低温水循環ラインL20に沿って循環する精製水を上記所定温度以上に加熱して熱水を生成するために、上述した熱交換器22が加熱機能を備えていてもよく、それとは別の加熱機能を備えた熱交換器が低温水循環ラインL20に設けられていてもよい。なお、低温水供給部10には冷却用の熱交換器22が必ず設けられているため、低温水の循環運転が長期間にわたる場合でも、低温水ポンプ21や紫外線殺菌器22の発熱などによる低温水の温度上昇の懸念はない。
【0020】
また、低温水還流ラインL22には、圧力センサ24と、温度センサ25と、流量センサ26とが設けられている。これらは、ユースポイント3での低温水の使用状況を把握する目的の他、後述するように、制御部4による精製水供給装置1の運転制御のために使用される。
【0021】
低温水還流ラインL22は、開閉弁V21を介して低温水供給ラインL21に接続されているが、その接続点の上流側、具体的には、低温水還流ラインL22の下流端部に近接する位置には、開閉弁V22を介して低温水排出ラインL23が接続されている。低温水の循環時、低温水還流ラインL22の開閉弁V21が開放され、低温水排出ラインL23の開閉弁V22が閉鎖される(すなわち、流路切替手段としての開閉弁V21,V22が第1の状態に切り替えられる)ことで、低温水還流ラインL22と低温水供給ラインL21が連通される。そのため、低温水排出ラインL23のうち開閉弁V22の上流側の部分には低温水が滞留しやすくなる。一方、低温水の排水時には、低温水還流ラインL22の開閉弁V21が閉鎖され、低温水排出ラインL23の開閉弁V22が開放される(すなわち、流路切替手段としての開閉弁V21,V22が第2の状態に切り替えられる)ことで、低温水還流ラインL22と低温水排出ラインL23が連通される。そのため、低温水還流ラインL22のうち、低温水排出ラインL23との接続点から開閉弁V21までの部分と、開閉弁V21の下流側の部分には低温水が滞留しやすくなる。このようなデッドレグによる影響を極力排除するためには、上述したように、例えば、主管の中心から枝管の先の閉止機構までの距離が枝管内径の6倍以内にすることが好ましい。すなわち、低温水排出ラインL23との接続点における低温水還流ラインL22の中心から開閉弁V22の閉止位置までの距離は、低温水排出ラインL23の内径の6倍以内であることが好ましい。同様に、低温水還流ラインL22との接続点における低温水供給ラインL21の中心から開閉弁V21の閉止位置までの距離と、低温水還流ラインL22との接続点における低温水排出ラインL23の中心から開閉弁V22の閉止位置までの距離も、それぞれ低温水還流ラインL22の内径の6倍以内であることが好ましい。
【0022】
なお、タンク2には、精製水補給ラインL3が接続され、例えば、水位センサ(図示せず)により検知されたタンク2内の水位に応じて、精製水製造装置(図示せず)から精製水が補給される。具体的には、タンク2内の水位が所定の下限水位以下になると、精製水補給ラインL3を通じてタンク2に精製水が補給され、タンク2内の水位が所定の上限水位に達すると、タンク2への精製水の補給は停止される。
【0023】
制御部4は、低温水ポンプ21の回転数を制御するインバータ(図示せず)を含み、精製水供給装置1の通常運転(精製水の循環運転)時、低温水ポンプ21の回転数を制御することで低温水の流量制御を実行する。具体的には、流量センサ26により検知された低温水の流量に基づいて、低温水還流ラインL22を流れる低温水の流量が一定になるように低温水ポンプ21の回転数を制御する。このような低温水の流量制御により、熱交換器22に供給される低温水の流量を安定させることができ、熱交換器22の冷却能力を安定して発揮させ、ユースポイント3に安定した温度で低温水を供給することが可能になる。低温水の流量検知手段としては、流量センサ26の代わりに圧力センサ24を用いてもよく、したがって、その検知圧力が一定になるように低温水ポンプ21の回転数を制御してもよい。また、低温水の流量調整手段としては、低温水ポンプ21に限定されず、低温水還流ラインL22に流量調整弁が設けられていてもよい。なお、ここでは詳細に説明しないが、制御部4は、常温水還流ラインL12に設けられた流量センサまたは圧力センサ(いずれも図示せず)の検知結果に基づいて常温水ポンプ11の回転数を制御し、常温水還流ラインL12を流れる常温水の流量を一定に維持する常温水流量制御も実行する。
【0024】
なお、低温水の循環運転時、低温水還流ラインL22の戻り圧力(圧力センサ24の検出圧力)は、タンク2からポンプ21に常温水を円滑に送れるように、かつ低温水還流ラインL22が負圧にならないように調整される。これにより、タンク2から低温水供給ラインL21と低温水還流ラインL22との合流点までの間にバルブやポンプなどを設けなくても、タンク2から低温水供給ラインL21に常温水が自動的に供給される。圧力センサ24の検知圧力は、例えば、0.01~0.2MPaの範囲に調整されるのが好ましく、0.05~0.15MPaの範囲に調整されるのがより好ましい。これは、圧力センサ24の検知圧力を0.01MPa未満に制御しようとすると、ユースポイント3での低温水の使用時に制御が追いつかず、低温水還流ラインL22が負圧になってしまう可能性があるためである。また、低温水還流ラインL22の戻り圧力が高くなりすぎると、タンク2からのポンプ21に常温水を円滑に送れなくなり、最終的には圧力センサ24の検知圧力が乱れる可能性があるためである。ただし、タンク2からポンプ21への常温水の送りやすさは、タンク2からの水頭圧や開閉弁V21の圧力損失(開閉弁V21の開度)によっても変わるため、上述した圧力範囲は本発明を制限するものではない。
【0025】
ところで、医薬品製造に使用される精製水を扱う精製水供給装置1では、菌や微生物の発生を阻止するために、タンク2や各循環ラインL10,20を含む精製水供給装置1の系内を蒸気によって滅菌することが好ましい。そのために、タンク2には、蒸気を導入する蒸気導入ライン(蒸気導入手段)L4が接続され、制御部4は、通常運転の合間に、蒸気による滅菌処理を定期的に実行する。以下、この蒸気滅菌工程について説明する。
【0026】
蒸気滅菌工程が開始されると、精製水供給装置1の運転(精製水の循環)が停止され、系内の精製水を外部に排出する排水運転が行われる。具体的には、熱交換器22の作動が停止され、直前にユースポイント3で精製水が使用されていた場合には、各送水ラインL1,L2の開閉弁V1,V2が閉鎖される。そして、精製水補給ラインL3の図示しない開閉弁が閉鎖されてタンク2への精製水の補給が停止され、常温水還流ラインL12の開閉弁V11と低温水還流ラインL22の開閉弁V21とが閉鎖されるとともに、常温水排出ラインL13の開閉弁V12と低温水排出ラインL23の開閉弁V22とが開放される。これにより、タンク2に貯留されていた精製水が、ポンプ11,21の作動によって、常温水循環ラインL10から常温水排出ラインL13を通じて外部に排出され、同様に低温水循環ラインL20から低温水排出ラインL23を通じて外部に排出される。その後、タンク2内の水位がある程度まで低下すると、ポンプ11,21の作動が停止し、タンク2内に清浄空気が導入され、その圧力により、各循環ラインL10,L20内の精製水も押し出されて外部に排出される。
【0027】
系内の精製水が外部に排出されると、常温水還流ラインL12の開閉弁V11と低温水還流ラインL22の開閉弁V21とが開放されると同時に、蒸気導入ラインL4の開閉弁V3が開放される。こうして、蒸気がタンク2を通じて各循環ラインL10,20に導入され、精製水供給装置1の系内が滅菌される。なお、このときの蒸気は、系内を適切に滅菌できる温度および圧力で導入される。例えば、121℃以上の蒸気を導入するには、ゲージ圧で0.11MPa(絶対圧で0.21MPa)程度の圧力であればよい。また、121℃以上の蒸気を導入するにあたり、蒸気滅菌の対象となる配管長が長い場合、蒸気滅菌の対象となるタンク2が大きい場合、蒸気滅菌の対象となる機器が多い場合、各循環ラインL10,L20から分岐する配管の数が多い場合、蒸気の供給源から遠い箇所まで確実に蒸気を供給しようとする場合には、ゲージ圧で0.15~0.19MPaの圧力に調整されればよい。一方、開閉弁V21,V22が開放された状態では系内圧力が保持されにくいため、必要に応じて開閉弁V21,V22の二次側に、蒸気凝縮水のみを排出し、系内圧力を保持するための穴開きバルブや溝付きバルブを設置してもよい。
【0028】
蒸気の導入が一定時間行われた後、蒸気導入ラインL4の開閉弁V3が閉鎖され、蒸気の導入が停止される。こうして蒸気滅菌工程が終了すると、精製水供給ラインL3の図示しない開閉弁が開放されてタンク2への精製水の補給が開始され、常温水供給部10および低温水供給部20でそれぞれ精製水の循環運転が再開される。具体的には、常温水供給部10では、常温水排出ラインL13の開閉弁V12が閉鎖され、常温水ポンプ11が作動することで、タンク2内の精製水が常温水供給ラインL11から常温水還流ラインL12を通じてタンク2に還流される。こうして、常温水循環ラインL10に沿った精製水(常温水)の循環運転が再開される。一方で、低温水供給部20では、低温水循環ラインL20内の空気を外部に排出する空気抜き運転が行われた後、精製水の循環運転が再開される。具体的には、低温水還流ラインL22の開閉弁V21が閉鎖され、低温水ポンプ21が作動することで、タンク2内の精製水が低温水供給ラインL21から低温水還流ラインL22を流れた後、低温水供給ラインL21には還流せずに、低温水排出ラインL23を通じて外部に排出される。このような精製水の排水により、蒸気滅菌工程の終了後に低温水循環ラインL20内を満たしていた空気が精製水と共に外部に排出される。その後、低温水還流ラインL22の開閉弁V21が開放されるとともに、低温水排出ラインL23の開閉弁V22が閉鎖され、低温水還流ラインL22を流れる精製水が低温水供給ライン21に還流されることで、低温水循環ラインL20に沿って精製水が循環される。
【0029】
ただし、このとき、低温水循環ラインL20内の空気が十分に抜けきらないと、その空気が低温水ポンプ21に還流してしまい、キャビテーションを発生させて低温水ポンプ21を損傷させるおそれがある。また、低温水循環ラインL20内の空気が十分に抜けきらない状態で精製水の循環を再開して熱交換器22を作動させても、精製水(低温水)の温度が安定するまでにかなりの時間を要し、余計なエネルギーや冷媒を消費することになる。
【0030】
したがって、このときの精製水の排水は、低温水循環ラインL20内の空気が抜けきったことが確認されるまで、すなわち、低温水循環ラインL20のうち下流側の低温水還流ラインL22の内部が精製水で満たされたことが確認されるまで行われることが好ましい。これにより、その後の熱交換器22の作動による精製水の冷却を効率的に行うことができ、精製水(低温水)の温度が安定するまでの時間(立ち上げ時間)を短縮することができる。低温水還流ラインL22の内部が精製水で満たされたか否かは、例えば、低温水還流ラインL22を流れる精製水の圧力または流量が定常状態に達したか否かによって、具体的には、圧力センサ24または流量センサ26の検知値が所定値以上になってから所定時間経過したか否かによって判定することができる。なお、低温水還流ラインL22の満水検知手段としては、圧力センサ24または流量センサ26に限定されず、温度センサ25を用いてもよい。すなわち、温度センサ25により検知された精製水の温度変化から、低温水還流ラインL22の内部が精製水で満たされたか否かを判定してもよい。
【0031】
このように、低温水循環ラインL20の内部が精製水で満たされたことが確認されると、低温水循環ラインL20の空気抜き運転が終了し、上述したように循環運転に切り替えられる。そして、熱交換器22が作動して精製水の冷却が開始され、循環する精製水(低温水)の温度が安定した時点で、低温水循環ラインL20に沿った低温水の循環運転の再開となり、すなわち、精製水供給装置1の通常運転の再開となる。
【0032】
なお、精製水の滞留抑制といった配管上の制約が許せば、蒸気滅菌工程の終了後に、低温水供給部20では、低温水循環ラインL20内の空気抜きを行うために、低温水還流ラインL22を流れる精製水を外部に排出する代わりに、タンク2に還流させることで低温水循環ラインL20内の空気をタンク2に戻すようになっていてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、常温とそれより低温の2種類の精製水をユースポイントに供給する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、常温とそれより高温の2種類の精製水をユースポイントに供給する場合にも適用可能である。すなわち、本発明の液体供給装置には、低温水供給部の代わりに、加熱機構を備えた熱交換器を有し、循環する精製水をタンク内の精製水の温度(常温)よりも高温に加熱してユースポイントに供給する高温水供給部が設けられていてもよい。この場合にも、高温水供給部では、低温水供給部と同様の構成により、タンクを介さずに高温の精製水を循環させる循環運転が可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 精製水供給装置(液体供給装置)
2 タンク
3 ユースポイント
4 制御部(制御手段)
10 常温水供給部
11 常温水ポンプ
12 紫外線酸化器
20 低温水供給部
21 低温水ポンプ
22 熱交換器
23 紫外線酸化器
24 圧力センサ(流量検知手段、満水検知手段)
25 温度センサ(満水検知手段)
26 流量センサ(流量検知手段、満水検知手段)
L1,L2 送水ライン
L3 蒸気導入ライン(蒸気導入手段)
L10 常温水循環ライン
L11 常温水供給ライン
L12 常温水還流ライン
L13 常温水排出ライン
L20 低温水循環ライン
L21 低温水供給ライン
L22 低温水還流ライン
L23 低温水排出ライン
V1~V3,V11,V12 開閉弁
V21,V22 開閉弁(流路切替手段)
図1