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  • 特開-スプレーガンを用いた吹き付け方法 図1
  • 特開-スプレーガンを用いた吹き付け方法 図2
  • 特開-スプレーガンを用いた吹き付け方法 図3
  • 特開-スプレーガンを用いた吹き付け方法 図4
  • 特開-スプレーガンを用いた吹き付け方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172569
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】スプレーガンを用いた吹き付け方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20231129BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20231129BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20231129BHJP
   E04F 21/08 20060101ALI20231129BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231129BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B05D1/02 Z
E04B1/66 A
E04B1/76 400G
E04F21/08 X
B05D3/00 D
E04F15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084475
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】505015587
【氏名又は名称】株式会社日本アクア
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】永田 和久
【テーマコード(参考)】
2E001
2E220
4D075
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DD01
2E001GA06
2E001MA01
2E220AA03
2E220AA07
2E220AA51
2E220AB04
2E220FA11
2E220GB37X
4D075AA01
4D075AA06
4D075AA15
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075CA17
4D075CA38
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC01
4D075DC05
4D075EA05
4D075EA27
(57)【要約】
【課題】スプレーガンの取り回しに際し、吹き付け対象の周囲に障害物が存する作業現場においても、良好な施工性を得る手段を提供する。
【解決手段】スプレーガンAの銃身方向A2から所定角度傾斜させた方向を原料の噴射方向A1とするよう構成し、スプレーガンAが障害物に干渉しないように吹き付け作業を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹き付け対象の周囲に障害物が存する工事現場において、スプレーガンを用いて吹付層を形成するための、吹き付け方法であって、
前記スプレーガンが前記障害物に干渉しないように、前記スプレーガンの銃身の長手方向から所定角度傾斜させた方向を原料の噴射方向として、吹き付け作業を行うことを特徴とする、
スプレーガンを用いた吹き付け方法。
【請求項2】
前記原料の噴射方向を、ノズルの付け替えによって変更可能としたことを特徴とする、
請求項1に記載のスプレーガンを用いた吹き付け方法。
【請求項3】
前記原料の噴射方向を、ノズルに備えた角度調整機構によって変更可能としたことを特徴とする、
請求項1に記載のスプレーガンを用いた吹き付け方法。
【請求項4】
前記原料の噴射方向を、スプレーガンの本体とノズルとの間にアダプタを介在させることによって変更可能としたことを特徴とする、
請求項1に記載のスプレーガンを用いた吹き付け方法。
【請求項5】
前記スプレーガンによって形成される吹付層が、建築物の防水層であることを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のスプレーガンを用いた吹き付け方法。
【請求項6】
前記吹き付け対象が、入隅部を有するベランダまたはバルコニーの排水溝であることを特徴とする、
請求項5に記載のスプレーガンを用いた吹き付け方法。
【請求項7】
前記スプレーガンによって形成される吹付層が、建築物の断熱層であることを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のスプレーガンを用いた吹き付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンを用いた吹き付け方法に関し、より詳細には、吹き付け対象の周囲に障害物が存する作業現場で適用可能な吹き付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレーガンを用いて各原料を吹き付けることで防水層や断熱層などの吹付層を形成する技術として、以下の特許文献1,2に記載の発明が知られている。
スプレーガンには、原料を収容するタンクやコンプレッサーと接続する各種ホースが接続されている。
使用時には、作業員がスプレーガンを手持ちし、スプレーガンを左右に動かして吹き付け作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-102757号公報
【特許文献2】特開2005-200484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスプレーガンは、スプレーガンの先端に設けたノズルからの原料の噴射方向が銃身の長手方向を向いているため、前記ノズルを、吹き付け対象に略正対する位置において吹き付け作業を行うことが一般的である。
しかし、図5に示すように、ベランダやバルコニーなどの排水溝による段差の立上り面を吹き付け対象cとした場合、ノズルを立上り面に正対するように位置させようとしても、スプレーガンaや、スプレーガンaに接続する各種ホースが吹き付け対象cの対向側に位置する手すりなどの障害物dに干渉してしまう場合があった。
【0005】
よって、本発明は、スプレーガンの取り回しに際し、吹き付け対象の周囲に障害物が存する作業現場においても、良好な施工性を得ることが可能な手段を提供することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本発明は、吹き付け対象の周囲に障害物が存する工事現場において、スプレーガンを用いて吹付層を形成するための、吹き付け方法であって、前記スプレーガンが前記障害物に干渉しないように、前記スプレーガンの銃身の長手方向から所定角度傾斜させた方向を原料の噴射方向として、吹き付け作業を行うことを特徴とする。
また、本発明は、前記原料の噴射方向を、ノズルの付け替えによって変更可能としてもよい。
また、本発明は、前記原料の噴射方向を、ノズルに備えた角度調整機構によって変更可能としてもよい。
また、本発明は、前記原料の噴射方向を、スプレーガンの本体とノズルとの間にアダプタを介在させることによって変更可能としてもよい。
また、本発明は、前記スプレーガンによって形成される吹付層を、建築物の防水層とすることができる。
また、本発明は、前記吹き付け対象が、入隅部を有するベランダまたはバルコニーの排水溝であってもよい。
また、本発明は、前記スプレーガンによって形成される吹付層を、建築物の断熱層とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち少なくとも何れか1つの効果を得ることができる。
(1)スプレーガンの取り回しに際し、吹き付け対象の周囲に障害物が存する作業現場においても、良好な施工性を得ることができる。例えば、従来のスプレーガンではノズルを略正対位置におくことが困難な排水溝やサッシ下といった狭い箇所や、構造物の構成部材や配線が入り組んだ箇所等に対しても、原料の凹凸や液だれを生じることなく吹付層を形成することができる。
(2)既設の建築物に対し断熱施工や防水施工のリフォーム工事を行う際において、従来のスプレーガンを用いた施工では作業の支障となる障害物の移動や撤去が難しい現場においてもそのまま施工を実施することができる。
(3)スプレーガンのうち一部のパーツを交換または追加するだけで足りるため、専用のスプレーガンを新たに設計する必要が無く、経済的である。
(4)普段から使用しているスプレーガンをそのまま利用でき、通常の施工の延長上で作業ができるため、作業員が新たに覚える操作も少なく、作業効率に優れる。
(5)噴射方向を任意の角度に調整可能に構成することで、施工箇所に応じて最適な吹き付け作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る方法で使用するスプレーガンの概略図。
図2】本発明に係る方法の適用例1の施工イメージを示す概略図。
図3】本発明に係る方法の適用例2の施工イメージを示す概略図。
図4】本発明に係る方法の適用例3の施工イメージを示す概略図。
図5】従来のスプレーガンを用いた施工イメージを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0010】
<1>概要
始めに、本発明に係る方法を実施する際に使用するスプレーガンの詳細について説明し、その後、本発明に係る方法の手順例と再現試験の結果について順に説明する。
【0011】
<2>スプレーガン(図1
スプレーガンAは、原料を吹き付けるための装置である。
本発明で用いるスプレーガンAの原料供給形式は特段限定せず、一液型、二液混合型など、あらゆる形式が含まれる。
図1に示すスプレーガンAは二液液混合型であって、銃身を有する本体10と、本体10の後方下部に設けるグリップ20と、本体10に接続し、紙面奥行き方向に間隔を空けて配置される二本の原料供給路30と、本体10に接続する一本のエアー供給路40、および、本体10の前方に設けたノズル50を少なくとも設けている。
【0012】
<2.1>原料の噴射方向について
本発明に係るスプレーガンAでは、原料の噴射方向(以下、単に「噴射方向A1」ともいう。)を、本体10の銃身の長手方向(以下、単に「銃身方向A2」ともいう)に対し、所定角度傾斜するよう構成する。
本発明において、噴射方向の傾斜角度は、特段限定しない。
図1に示すスプレーガンAでは、銃身方向A2に対する噴射方向A1の傾斜角度(θ)を、図1における紙面下方向へと約45°傾斜させている。
【0013】
なお、ノズル50から噴射される原料は、ノズル50に設けた噴射孔51から周りに拡散しながら放出されることが一般的である。
したがって、本発明における「ノズル50による噴射方向A1」とは、ノズル50の噴射孔51の向きを示すものであって、ノズル50から噴射された原料が大気中で実際に進行する方向のみを指すものではない。
【0014】
<2.2>噴射方向の変更手段について
スプレーガンAにおいて、噴射方向A1の角度を変える手段として、例えば以下の手段が考えられる。
なお、後述する各手段や構造は複数組み合わせることもできる。
【0015】
(a)ノズル交換式
通常のスプレーガンAは、噴射方向A1を銃身方向A2と同一方向に構成したノズル(以下「通常ノズル」)を設けてあるところ、この通常ノズルを取り外して、噴射方向A1を予め所定方向に傾斜させてあるノズル(以下「傾斜ノズル」)に付け替える方法。
【0016】
(b)角度可変式
スプレーガンAの先端に、噴射孔51の向きを任意の角度に調整可能な機構を備えたノズル(以下「可変ノズル」)を取り付けておき、使用用途に応じて適宜、可変ノズルの噴射孔51の向きを調整しながら使用する方法。
可変ノズルの一例としては、ボールジョイントの一端に通常ノズルを固定したものがある。
【0017】
(c)アダプタ介在式
通常のスプレーガンAを構成する、本体10と通常ノズルとの間に、原料の流路を所定方向に傾斜させてあるか、または原料の流路を任意の角度に調整可能な機構を備えたアダプタを新たに介在させる方法である。
アダプタの一例としては、予め所定の角度に傾斜してある傾斜継手や、自在継手などがある。
【0018】
(d)回転式
また、本発明では、前記(a)~(c)で説明した傾斜ノズル、可変ノズルまたはアダプタそのものを、スプレーガンAの本体10に対し、銃身方向A2を回転軸として360°回転可能とし、任意の回転角度で固定可能な構造を設けておくと、噴射方向A1のバリエーションを更に拡げることもできる。
【0019】
<2.3>ミストの粒径調整について
例えば、超速硬化ウレタンを用いた防水工法で使用される原料の吹き付け作業は、高圧下(80~150bar程度)で行われるため、吹き付け対象に対し、スプレーガンAを近づけすぎると、吹き付け対象の表面に、吹き付け後の原料による凹凸や液垂れが発生する場合がある。
したがって、吹き付け対象の周囲の障害物によって、スプレーガンAと吹き付け対象との距離を十分に確保できない場合には、前記<2.2>で説明した各ノズルに別途フラットチップを装着し、原料のミスト粒径をより細かくして吹き付け圧を緩和させることで、凹凸や液垂れを抑制させてもよい。
<3>障害物の例
本発明に係るスプレーガンを用いた吹き付け方法を実施する際の、障害物の一例を以下に示す。
(1)ベランダやバルコニーの防水施工を行う場合、防水材の吹付作業の支障となる障害物は、周辺の手すり、壁、パラペット、足場部材、配管類などが障害物に相当する。
(2)建築物に対する断熱施工
建築物の壁、天井、床などに断熱施工を行う場合、断熱材の吹付作業の支障となる障害物は、電気・水道・空調などの配管類や、コンセントボックス、入隅部における一方の壁や、床下の根太などが障害物に相当する。
【0020】
<4>適用例1(図2
次に、本発明に係る吹き付け方法をベランダの防水施工に適用した例について説明する。
図2は、本適用例に係る、防水加工を施す対象であるベランダの断面を示している。
ベランダBは、主として平場B1、手すり部B2、排水溝B3で形成されている。
この排水溝B3は、手すり部B2の根本に、平場B1から段差を設けるように形成されている。
この排水溝B3の幅長L1は、通常100mm~150mm程度、高さL2は35mm程度である。
この条件下で、通常のスプレーガンAを用いて、立上り面B4に防水材用の原料を吹き付けようとしても、スプレーガンAが手すり部B2に干渉するため、立上り面B4の面方向に対する噴射方向A1の角度を大きく確保することができない。
一方、本発明に係るスプレーガンAでは、噴射方向A1を銃身方向A2から下側に傾斜させているため、スプレーガンAを手すり側に大きく傾ける必要がない。その結果、スプレーガンAが手すり部B2と干渉することもなく、立上り面B4に対して噴射方向A1の角度を極力確保した状態で原料の吹き付け作業を行うことができ、良好な防水層を形成することができる。
【0021】
<5>適用例2(図3
次に、本発明に係る吹き付け方法をベランダの防水施工に適用したその他の例について説明する。
図3は、本適用例に係る、防水加工を施す対象であるベランダの断面を示しており、前記した適用例1から更に、排水溝B3の上方に、移動や撤去が困難な何らかの障害物Xが存する状態を示している。
この条件下では、スプレーガンAは、手すり部B2だけでなく、障害物Xとの間での干渉も考慮する必要が生じる。
この場合、スプレーガンAでは、噴射方向A1を銃身方向A2から斜め下側に傾斜させておき、当該銃身方向A2を、排水溝B3の長手方向にあわせるように、スプレーガンAを前後に移動させながら立上り面B4への原料の吹き付け作業を行うと、良好な防水層を形成することができる。
【0022】
<6>適用例3(図4
次に、本発明に係る吹き付け方法を、建築物の基礎周辺の断熱施工に適用した例について説明する。
図4は、断熱加工を施す対象である、建築物の基礎周辺の断面を示している。
基礎C1の上端には、土台C2が設置され、この土台C2間に大引C3が設置され、大引C3の上部に間隔を設けて根太C4が配置されている。
この条件下で、通常のスプレーガンAを用いて、基礎C1の隅部周辺に断熱材用の原料を吹き付けようとしても、スプレーガンAが大引C3や根太C4に干渉する恐れがある。
この場合、大引C3や根太C4等と干渉しそうになる場合に、適宜スプレーガンAの噴射方向A1を調整しながら、吹き付け作業を行うなどすれば、良好な断熱層を形成することができる。
【符号の説明】
【0023】
A :スプレーガン
10:本体
20:グリップ
30:原料供給路
40:エアー供給路
50:ノズル
51:噴射孔
A1:噴射方向
A2:銃身方向
B :ベランダ
B1:平場
B2:手すり部
B3:排水溝
B4:立上り面
X :障害物
C1:基礎
C2:土台
C3:大引
C4:根太
C5:隅部
a :スプレーガン
b :ベランダ
c :吹き付け対象
d :障害物
図1
図2
図3
図4
図5