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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172601
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分析装置及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/12 20060101AFI20231129BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20231129BHJP
   G01N 11/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01N11/12
G01N35/00 A
G01N11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084524
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058GA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リアルタイムで試料の粘弾性を測定することができるようにすることである。
【解決手段】実施形態の分析装置は、測定装置と、演算部と、を持つ。測定装置は、試料を流通させる流路内の測定領域に配置された測定素子及び前記測定素子の挙動を検出する検出部を備える。演算部は、前記測定素子の挙動に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を流通させる流路内の測定領域に配置された測定素子及び前記測定素子の挙動を検出する検出部を備える測定装置と、
前記測定素子の挙動に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する演算部と、を備える、
分析装置。
【請求項2】
前記測定素子の挙動は、前記流路内における前記測定素子の位置、前記測定素子の移動速度、または前記測定素子が所定位置まで移動する移動時間のうち少なくともいずれか1つを含む、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記測定領域は、鉛直方向に沿った成分を有して形成され、
前記測定領域内における前記測定素子の落下速度に基づいて、前記試料の粘弾性を算出する、
請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記測定領域内における前記測定素子を上方に搬送する搬送部を更に備える、
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記測定素子は磁性体を含み、
前記搬送部は、前記磁性体を誘導する磁石を含む、
請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記磁石を移動させる磁石移動部を更に備える、
請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記測定素子は、第1磁石を含み、
前記搬送部は、第1磁石と反発する第2磁石を含む、
請求項4に記載の分析装置。
【請求項8】
前記測定素子は、前記測定領域内における前記試料の流動に伴い、上方に搬送される、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
前記測定素子の移動方向を前記試料の流動方向に沿った方向にガイドするガイド部材を更に備える、
請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記測定領域における前記試料の流入口と流出口とで断面積が異なる、
請求項8に記載の分析装置。
【請求項11】
前記測定領域は、水平方向に沿った成分を有して形成され、
前記測定素子を前記流路の上流側から下流側に付勢する付勢部を備える、
請求項2に記載の分析装置。
【請求項12】
前記測定素子は、前記流路を形成する管体の内面との間で前記試料を流通させる流通路を形成する流通路形成部を更に備える、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項13】
前記流通路形成部は、前記測定素子の外側に突出する突出部を含む、
請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記流通路形成部は、前記測定素子の外周に形成されたらせん部を含む、
請求項12に記載の分析装置。
【請求項15】
試料を流通させる流路内の測定領域に配置された測定素子を前記測定領域で移動させ、
移動させた前記測定素子の挙動を検出し、
検出した前記測定素子の挙動に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を評価する、
分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の血液を分析して血液の粘弾性を測定する測定装置がある。従来の測定装置では、リアルタイムでの測定ができず、試料を測定装置に設置してから、粘弾性を測定した結果が得られるまでに時間がかかる。さらに、使用された試料は、廃棄され、結果として消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-152663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、リアルタイムで試料の粘弾性を測定することができるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の分析装置は、測定装置と、演算部と、を持つ。測定装置は、試料を流通させる流路内の測定領域に配置された測定素子及び前記測定素子の挙動を検出する検出部を備える。演算部は、前記測定素子の挙動に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性に関する指標のうち少なくともいずれか一方を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の分析装置100の構成の一例を示す図。
図2】測定装置120の概要を示す説明図。
図3】第1の実施形態の測定器1の一例を示す図。
図4】第1の実施形態の測定器1の試料の分析を開始する前の状態を示す図。
図5】第2の実施形態の測定器1の一例を示す図。
図6】測定素子22が第2位置に上昇した状態を示す図。
図7】第3の実施形態の測定器1の一例を示す図。
図8】測定素子32が測定領域の最上段に到達した状態を示す図。
図9】第4の実施形態の測定器1の一例を示す図。
図10】測定素子43が上昇している状態を示す図。
図11】第5の実施形態の測定器1の一例を示す図。
図12】第1の変形例の測定素子62の一例を示す図。
図13】第2の変形例の測定素子72の一例を示す図。
図14】第2の変形例の測定素子72の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態の分析装置及び分析方法について説明する。
【0008】
[第1の実施形態]
図1は、実施形態の分析装置100の構成の一例を示す図である。分析装置100は、例えば、操作部110と、測定装置120と、オンライン部130と、表示部140と、印刷部150と、処理回路160と、メモリ170と、を備える。分析装置100は、測定装置120の検出結果に基づいて人体の血液(以下、試料)の粘弾性を算出する。
【0009】
操作部110は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力インターフェースを備える。なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0010】
操作部110では、様々な操作が行われる。操作部110で行われる操作としては、例えば、分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検体の被検試料毎の測定項目の選択、各項目のキャリブレーション操作、被検試料分析操作などが挙げられる。
【0011】
測定装置120は、人体の試料の粘弾性を算出するためのデータ(以下、算出要素データ)を検出する。図2は、測定装置120の概要を示す説明図である。測定装置120は、例えば、測定器1と、廃棄瓶2と、チューブ3と、を備える。チューブ3は、例えば、図示しない注射器を介して被検体Mの血管と流通可能とされ、血管内の試料Lの一部がチューブ3内に供給される。チューブ3に供給された試料Lは、測定器1に運搬される。
【0012】
測定器1は、運搬された試料Lの算出要素データを検出し、試料Lの一部を被検体Mに還元し、他の一部を廃棄瓶2に排出して廃棄物とする。測定器1は、試料Lの全部を廃棄瓶2に排出してもよいし、試料Lの全部を被検体Mに還元してもよい。廃棄瓶2に排出された試料Lは、所定の処理が施された後に廃棄される。測定器1の具体的な構成については、後に複数の例を挙げて更に説明する。
【0013】
被検体Mから測定器1に試料Lを供給する側のチューブ3には、第1抗凝固剤収容体4及び第2抗凝固剤収容体5が接続されている。第1抗凝固剤収容体4には、低濃度の抗凝固剤が収容され、第2抗凝固剤収容体5には、高濃度の抗凝固剤が収容されている。チューブ3で運搬される試料Lに所定量の抗凝固剤を添加することで、流路の詰まりを防止してもよい。抗凝固剤を添加する場合は、分析装置100は、添加した抗凝固剤の量をユーザに報告してよい。
【0014】
さらに、チューブ3の途中に抗凝固剤と試料Lを混合するための混合用の領域を設けてもよい。抗凝固剤が異なる2つの試料Lの粘弾性測定を行うことで、抗凝固剤が対象試料の粘弾性に与える影響を測定してもよい。これにより患者試料が所定の粘弾性(凝固能)になる抗凝固剤の量を取得することが可能となる。
【0015】
オンライン部130は、処理回路160により算出された試料Lの粘弾性などの情報を外部の情報システムなどに出力する。表示部140は、処理回路160により算出された試料Lの粘弾性などの情報を表示する。印刷部150は、処理回路160により算出された試料Lの粘弾性などの情報を印刷する。
【0016】
処理回路160は、例えば、システム制御機能161と、測定制御機能162と、演算機能163と、を備える。処理回路160は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ(記憶回路)170に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0017】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。メモリ170にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ170に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が分析装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ170にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0018】
システム制御機能161は、操作部110により出力される操作者のコマンド信号、分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を取得する。システム制御機能161は、取得した情報に基づいて、測定制御機能162を介した測定装置120の制御やキャリブレーションテーブルの作成、分析データの算出と出力に関する制御などシステム全体を制御する。
【0019】
測定制御機能162は、システム制御機能161の指示に従い、測定装置120における各部材を制御する。測定制御機能162における制御は、以下に説明する複数の測定装置120ごとに異なる。このため、測定制御機能における制御は、個別の測定装置120の説明に合わせて説明する。
【0020】
演算機能163は、測定装置120により検出された各情報を取得する。演算機能163は、取得した各情報に基づいて、被検体の試料Lの粘弾性を算出する。演算機能163は、算出した粘弾性の情報をオンライン部130、表示部140、及び印刷部150にそれぞれ出力する。
【0021】
分析装置100は、測定装置120により算出要素データを検出する前に、演算機能163において、粘弾性が既知である標準試料を用いて検量線を作成する。演算機能163が検量線を作成した後、測定装置120は、被検体から採取した試料Lの算出要素データを検出し、演算機能163により試料Lの粘弾性を算出する。演算機能163は、さらに、算出した粘弾性を評価する。なお、演算機能163は、により算出する値としては、粘弾性の値そのものに替えて、粘弾性と相関を有する他の指標、例えば、動的弾性率などでもよい。
【0022】
検量線の作成により発生した廃棄物(標準試料)は、算出要素データの検出時に廃棄される試料Lと同様に、廃棄瓶2に排出されて廃棄物となる。廃棄瓶2の排出された廃棄物が所定量を超えた場合、システム制御機能161は、その旨を示す廃棄物超過情報を作成し、オンライン部130、表示部140、または印刷部150により廃棄物超過情報をユーザに報告する。
【0023】
なお、測定器1やチューブ3内に残存する標準試料が患者に影響しない場合、測定に用いた試料Lは患者に還元してもよい。また、患者から取得した試料Lに抗凝固剤を添加し、試料Lの抗凝固剤に対する影響を測定してもよい。抗凝固剤としては、例えば、ヘパリンが挙げられるが、抗凝固剤は、他のものでもよい。抗凝固剤を含む試料に対して、抗凝固剤の中和剤、例えば、ヘパリナーゼを添加してもよい。抗凝固剤の中和剤は、他のものでもよい。
【0024】
続いて、第1の実施形態の測定装置120における測定器1について説明する。図3は、第1の実施形態の測定器1の一例を示す図である。測定器1は、例えば、取付流路11と、駆動装置12と、磁石13と、測定素子14と、接触センサ15と、バルブ16と、を備える。
【0025】
取付流路11は、測定器1に対して、取付及び取外しが可能とされている。取付流路11は、上下方向に延在する。取付流路11の内部には、試料Lが流通する流路が形成されている。流路の一部は、算出要素データ、この例では、測定素子14の移動速度、例えば落下速度を検出する測定領域となっている。測定領域は、鉛直方向に沿った成分を有して形成されている。このため、測定素子14などの物体は、取付流路11内を上下動可能とされている。
【0026】
取付流路11における下端部には、試料Lが流入する流入口が形成され、上端部には、試料Lが流入する流出口が形成されている。取付流路11の流入口及び流出口には、それぞれチューブ3が取り付けられており、被検体Mに接続されたチューブ3を介して、試料Lが取付流路11に循環供給される。チューブ3から循環供給される試料Lは、測定器1内において、取付流路11に形成された流路のみを通過する。
【0027】
駆動装置12は、取付流路11の側方に取付流路11に沿って設けられている。駆動装置12が設けられた高さ範囲は、取付流路11に形成された測定領域の高さ範囲を含む範囲である。駆動装置12には、磁石13が取り付けられている。駆動装置12は、測定制御機能162の制御に応じて、磁石13を高さ方向に移動させる。
【0028】
磁石13は、例えば、電流が供給されることにより磁力を発生するいわゆる電磁石である。磁石13には、図示しない電源からの電流が供給される。分析装置100における測定制御機能162は、電源から磁石13に電流を供給したり供給を停止したりする信号を送信する。磁石13は、測定制御機能162の制御に応じて電流が供給されたり電流の供給が停止されたりして磁力を発生させたり消滅させたりする。磁石13は、磁力によって測定素子14を誘導する。
【0029】
測定素子14は、例えば、磁性体を含む略球形の部材である。測定素子14は、例えば金属により形成され、磁石13の磁力に引き付けられる。測定素子14は、磁性体を含んでいればよく、例えば、被磁性体の樹脂製の球体に金属のコーティングが施されたものでもよい。駆動装置12は、磁石13を上昇させて移動させる。駆動装置12は、磁石移動部の一例である。駆動装置12は、磁石13を上昇させることにより、測定素子14を上方に搬送する。駆動装置12及び磁石13は、搬送部の一例である。
【0030】
接触センサ15は、測定素子14と接触したことを検出するセンサである。接触センサ15は、取付流路11の底部に設けられている。接触センサ15は、測定領域内を落下した測定素子14が接触した際に、接触データを処理回路160に送信する。分析装置100の演算機能163は、磁石13の磁力を消滅させて測定素子14の落下を開始させた落下開始時刻と、接触センサ15により送信された接触データを取得した落下終了時刻により、測定素子14が測定領域を落下したときの落下時間を計測する。演算機能163は、落下時間と測定領域の距離に基づいて、測定素子14の落下速度を算出する。落下速度は、算出要素データとなる。接触センサ15は、検出部の一例である。分析装置100における演算機能163は、演算部の一例である。
【0031】
バルブ16は、チューブ3における取付流路11の流入口の近傍位置に設けられる。バルブ16は、測定制御機能162により送信される開閉信号に応じて開閉する。バルブ16が開放されることにより、チューブ3から取付流路11に試料Lが供給される。バルブ16が閉鎖されることにより、チューブ3からの取付流路11への試料Lの供給が停止される。
【0032】
次に、第1の例の測定器1を用いて、試料Lの粘弾性を算出する手順について説明する。試料Lの粘弾性の算出にあたり、粘弾性が既知の標準試料を用いた場合に測定素子14が測定領域を落下する際の落下速度を算出して検量線を作成する。検量線を作成するにあたり、測定制御機能162は、まず、取付流路11に対して標準試料を循環供給する。標準試料を循環供給する際の標準試料の供給速度は、例えば、被検体の鼓動により試料Lが取付流路11に循環供給される供給速度と想定される速度とする。あるいは、バルブ16を閉鎖して測定領域に標準試料が滞留する状態としてもよい。このとき、磁石13及び測定素子14は、下端に位置し、測定素子14は接触センサ15と接触した状態にある。
【0033】
続いて、測定制御機能162は、電源に対して磁石13に向けて電力を供給させて、磁石13に磁力を発生させる。続いて、測定制御機能162は、駆動装置12により磁石13を上昇させる。磁石13が上昇すると、磁石13の磁力に引き付けられて測定素子14も上昇する。
【0034】
測定制御機能162は、駆動装置12により磁石13を測定領域の上方位置、例えば最上端にまで移動させた後、駆動装置12を停止させる。続いて、測定制御機能162は、磁石13の磁力を消滅させる信号を電源に送信する。磁石13による磁力が消滅することにより、測定素子14は、標準試料で満たされた測定領域を落下し、測定領域の下方位置、例えば最下端に到達する。上方位置は、下方位置よりも上方に設定されていればよく、上方位置は、最上端でなくてもよく、下方位置は、最下端でなくてもよい。上方位置と下方位置の間の距離は、測定素子14が落下した速度により粘弾性を算出できる長さ以上であればよい。
【0035】
測定素子14が測定領域の最下端に到達すると、接触センサ15は、測定素子14の接触を検出し、接触データを処理回路160に送信する。分析装置100では、演算機能163において、測定素子14の落下速度を算出し、測定素子14の落下速度と既知の標準試料の粘弾性を対応付け検量線を作成する。
【0036】
その後、測定制御機能162は、バルブ16を閉鎖させるとともに、駆動装置12により、磁石13を下方位置まで移動させる。そして、取付流路11にチューブ3を接続して、取付流路11に試料Lを流通可能な状態とする。その後、測定制御機能162は、バルブ16を開放させて、取付流路11内が試料Lで満たされた状態とする。図4は、第1の実施形態の測定器1の試料Lの分析を開始する前の状態を示す図である。
【0037】
この状態から、測定制御機能162は、バルブ16を開放させ、被検体Mの試料Lを測定器1内に流入させる。測定器1内の測定領域が試料Lで満たされたら、測定制御機能162は、電源に対して磁石13に向けて電力を供給させて、磁石13に磁力を発生させ、続いて、駆動装置12を駆動させて磁石13及び測定素子14を上昇させる。
【0038】
その後、測定制御機能162は、測定素子14を測定領域の上方位置まで移動させ、磁石13を消磁させて測定素子14を落下させ、測定素子14は、接触センサ15に接触する。接触センサ15は、測定素子14の接触を検出し、接触データを処理回路160に送信する。分析装置100では、演算機能163において、測定素子14の落下速度を算出する。接触センサ15により測定素子14の接触が検出された後、取付流路11接続されたチューブ3は、流路の少なくとも1部を閉鎖し、流路内の試料が排出しない状態にした後に取り外される。
【0039】
演算機能163は、算出した測定素子14の落下速度を、先に作成した検量線に参照する。演算機能163は、その結果に基づいて、試料の粘弾性を算出する。測定制御機能162は、演算機能163により算出された試料の粘弾性を、オンライン部130、表示部140、または印刷部150によりユーザに報告してよい。
【0040】
測定制御機能162は、例えば、試料の粘弾性に予め規定の範囲を設定しておいてもよい。この場合、測定制御機能162は、演算機能163により算出された粘弾性が予め規定した範囲から外れる場合に、その旨をオンライン部130、表示部140、または印刷部150によりユーザに報告してよい。
【0041】
あるいは、測定制御機能162は、演算機能163により算出される試料の粘弾性を用いて試料の粘弾性の変化量を算出し、粘弾性の変化量から所定の時間内に粘弾性の値が範囲外になるかを判断してよい。この場合、測定制御機能162は、粘弾性の変化量から所定の時間内に粘弾性の値が範囲外になると判断した場合、その旨をオンライン部130、表示部140、または印刷部150によりユーザに報告してよい。ここでの粘弾性の範囲及び判断に利用する時間は、予め分析装置100により記憶されていてもよいし、ユーザが設定してもよい。
【0042】
第1の実施形態の分析装置100において測定器1は、測定領域内を試料で満たした後、測定領域を落下する測定素子14の落下速度を算出し、算出した測定素子14の落下速度に基づいて、試料の粘弾性を算出する。このため、試料を測定器1に流入させた状態で試料の粘弾性を算出できるので、リアルタイムで試料の粘弾性を測定することができる。
【0043】
また、被検体Mから供給された試料は、チューブ3及び取付流路11の流路内のみを移動する。このため、使用済の試料を被検体Mに還元することができるとともに、測定器1を汚染させないようにすることができる。
【0044】
上記の第1の実施形態では、演算機能163は、測定領域における測定素子14の落下速度に基づいて検量線を作成したが、他の算出要素データに基づいて検量線を作成してもよい。演算機能163は、例えば、測定素子14の位置、測定素子14が所定位置まで移動する移動時間、例えば、測定領域の上方位置から下方位置まで移動する時間を算出要素データとして検量線を作成してもよい。この場合、測定領域を試料で満たした後に測定素子14を測定領域の上方位置から下方位置まで落下させた場合に要した時間を検量線に参照して粘弾性を測定してよい。
【0045】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態と比較して、測定器1の構成が主に異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第2の実施形態の分析装置100について説明する。図5は、第2の実施形態の測定器1の一例を示す図である。
【0046】
第2の実施形態の測定器1は、例えば、取付流路21と、測定素子22と、磁力発生器23と、第1位置センサ24と、第2位置センサ25と、バルブ26と、を備える。このうち、取付流路21及びバルブ26は、第1の実施形態の取付流路11及びバルブ16とそれぞれ同様の構成を有する。
【0047】
測定素子22は、例えば、永久磁石を備える直方体の角部が面取りされた形状の部材である。測定素子22は、例えば全体が永久磁石により構成されている。測定素子22は、第1磁石の一例である。測定素子22は、下部に永久磁石が設けられて構成されていてもよい。測定素子22は、その他の形状でもよい。
【0048】
磁力発生器23は、取付流路11の下端部に設けられている。磁力発生器23は、電流が供給されることにより、測定素子22と反発する磁力を発生するいわゆる電磁石である。磁力発生器23には、図示しない電源からの電流が供給される。分析装置100における測定制御機能162は、電源から磁力発生器23に電流を供給したり供給を停止したりする信号を送信する。磁力発生器23は、測定制御機能162の制御に応じて電流が供給されたり電流の供給が停止されたりして、磁力を発生されたり消滅されたりする。磁力発生器23は、第2磁石の一例である。
【0049】
第1位置センサ24は、測定素子22が測定領域における第1位置にあることを検出するセンサである。第2位置センサ25は、測定素子22が測定領域における第2位置にあることを検出するセンサである。第2位置は、第1位置よりも高い位置である。第1位置センサ24及び第2位置センサ25は、どのようなセンサでもよい。
【0050】
第1位置センサ24及び第2位置センサ25は、例えば、光を投射し、投影した光が測定素子22に反射した反射光を受光することにより、測定素子22が第1位置または第2位置にあることを検出するセンサである。この場合。測定素子22には、例えば、第1位置センサ24及び第2位置センサ25により投射される光を反射する反射部が設けられていてもよい。第1位置センサ24及び第2位置センサ25は、異なるセンサでもよい。
【0051】
第2の実施形態の分析装置100において、測定制御機能162は、測定領域を試料で満たした後、測定素子22が第1位置に位置される。このとき、第1位置センサ24は、測定素子22を検出する。測定制御機能162は、この状態から、磁力発生器23により磁力を発生させて、測定素子22と磁力発生器23を反発させて測定素子22を上昇させる。その後、第2位置センサ25が測定素子22を検出する。
【0052】
演算機能163は、磁力発生器23に磁力を発生させて測定素子22の上昇を開始させた上昇開始時刻と、第2位置センサ25により測定素子22が第2位置に到達したことを検出した上昇終了時刻により、測定素子14が測定領域を上昇したときの上昇時間を計測する。演算機能163は、上昇時間、及び第1位置と第2位置との間の距離に基づいて、測定素子14の上昇速度を算出する。上昇速度は、算出要素データとなる。
【0053】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、まず、測定領域が標準試料により満たされる。続いて、測定制御機能162は、磁力発生器23に磁力を発生させて測定素子22を第1位置から第2位置まで上昇させる。演算機能163は、このときの測定素子22の上昇速度を算出して、検量線を作成する。検量線は、測定素子22の上昇時間に基づいて作成してもよい。
【0054】
続いて、取付流路11にチューブ3が取り付けられ、被検体Mの試料Lが取付流路11に供給され、取付流路11の測定領域が試料Lにより満たされる。続いて、測定制御機能162は、磁力発生器23に磁力を発生させて測定素子22を第1位置から第2位置まで上昇させる。図6は、測定素子22が第2位置に到達した状態を示す図である。演算機能163は、この時の測定素子22の上昇速度を算出し、算出した上昇速度を、先に作成した検量線に参照して試料Lの粘弾性を算出する。
【0055】
第2の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態の分析装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第2の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態のような測定素子を機械的に上昇させるための駆動装置を設ける必要がない。したがって、その分装置の簡素化を図ることができ、低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0056】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態と比較して、測定器1の構成が主に異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第3の実施形態の分析装置について説明する。図7は、第3の実施形態の測定器1の一例を示す図である。
【0057】
第3の実施形態の測定器1は、例えば、取付流路31と、測定素子32と、接触センサ33と、バルブ34と、を備える。このうち、取付流路31、接触センサ33、及びバルブ34は、第1の実施形態の取付流路11、接触センサ15、及びバルブ16とそれぞれ同様の構成を有する。
【0058】
測定素子32は、球形の物体である。測定素子32は、試料Lや標準試料よりも比重が大きい素材であれば、どのような素材で形成されていてもよい。測定素子32は、例えば、金属製でもよいし、樹脂製でもよし、複数の素材が組み合わされていてもよい。測定素子32の形状は、球形以外の形状でもよい。
【0059】
第3の実施形態の分析装置100において、測定制御機能162は、測定領域を試料Lで満たした後、バルブ34に閉信号を送信してバルブ34を閉じて測定領域内の試料Lの流動を停止させ、測定素子32を測定領域の最下端に位置させる。測定制御機能162は、この状態から、バルブ34に開信号を送信してバルブ34を開放して、測定領域内に試料Lを流入させる。測定素子32は、測定領域内において、試料Lの流動に伴って上方に搬送され、測定領域の最上端に到達する。その後、測定制御機能162は、バルブ34を閉鎖して、測定領域内の試料Lの流動を停止させる。測定領域内の試料Lの流動が停止することにより、測定素子32は、測定領域内を落下する。接触センサ33は、落下した測定素子32が接触したことを検出する。
【0060】
演算機能163は、測定素子32が測定領域の最上端に位置した後、測定制御機能162がバルブ34を閉鎖させて測定素子32の落下を開始させた落下開始時刻と接触センサ33により測定素子32が測定領域の最下端に到達したことを検出した落下終了時刻により、測定素子14が測定領域を落下したときの落下時間を計測する。演算機能163は、算出した落下時間、及び測定領域の高さに基づいて、測定素子32の落下速度を算出する。落下速度は、算出要素データとなる。
【0061】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、まず、測定領域が標準試料により満たされる。続いて、測定制御機能162は、測定領域に標準試料を更に流入させて測定素子32を測定領域の最上端まで移動させる。続いて、測定制御機能162は、標準試料の流入を停止させ、測定素子32を測定領域の最下端まで落下させる。演算機能163は、このときの測定素子32の落下速度を算出して、検量線を作成する。検量線は、測定素子32の落下時間に基づいて作成してもよい。
【0062】
続いて、取付流路11にチューブ3が取り付けられ、被検体Mの試料Lが取付流路11に供給され、取付流路11の測定領域が試料Lにより満たされてバルブ34が閉鎖される。続いて、測定制御機能162は、バルブ34を開放させて、測定領域内において、測定素子32を試料Lの流速により測定領域の最上端まで上昇させる。図8は、測定素子32が測定領域の最上段に到達した状態を示す図である。続いて、測定制御機能162は、バルブ34を閉鎖して、測定領域内への試料Lの流入を停止させ、測定素子32を測定領域の最下端まで落下させる。演算機能163は、このときの測定素子32の落下速度を算出し、算出した落下速度を、先に作成した検量線に参照して試料Lの粘弾性を算出する。
【0063】
第3の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態の分析装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第3の実施形態の分析装置100は、第2の実施形態のような磁力発生器などを設ける必要がない。したがって、その分装置のさらなる簡素化を図ることができ、低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0064】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態と比較して、測定器1の構成が主に異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第4の実施形態の分析装置について説明する。図9は、第4の実施形態の測定器1の一例を示す図である。
【0065】
第4の実施形態の測定器1は、例えば、取付流路41と、ガイド部材42と、測定素子43と、バルブ44と、を備える。このうち、バルブ44は、第1の実施形態のバルブ16と同様の構成を有する。
【0066】
取付流路41は、上面の径が下面の径よりも長い円錐台形状をなしている。取付流路41における下端部には、試料Lが流入する流入口が形成され、上端部には、試料Lが流入する流出口が形成されている。流入口及び流出口には、それぞれチューブ3が取り付けられており、被検体Mに接続されたチューブ3を介して、試料Lが取付流路41に循環供給される。
【0067】
ガイド部材42は、取付流路41に形成された測定領域おいて、鉛直方向に延在して取り付けられる棒状の部材である。ガイド部材42は、取付流路41における上面及び下面の円形の中心点を繋いで配置されている。ガイド部材42は、取付流路41の上面及び下面にそれぞれ固定されている。ガイド部材42は、測定素子43の移動方向を試料Lの流動方向に沿った方向にガイドする。
【0068】
測定素子43は、球形をなし、平面視した中央部分にガイド部材42が貫通する貫通穴が形成されている。測定素子43は、試料Lや標準試料よりも比重が大きい素材であれば、どのような素材で形成されていてもよい。測定素子43は、例えば、金属製でもよいし、樹脂製でもよし、複数の素材が組み合わされていてもよい。測定素子43の形状は、球形以外の形状でもよい。測定素子43は、測定領域内において、ガイド部材42に沿って上下動可能とされている。
【0069】
第4の実施形態の分析装置100では、第3の実施形態の分析装置100と同様にして演算機能163において検量線を作成する。第4の実施形態の分析装置100は、検量線を作成した後、第3の実施形態の分析装置100と同様の手順で測定素子43の落下時間を検出する。図10は、測定素子43が上昇している状態を示す図である。演算機能163は、算出した落下時間を検量線に参照して試料Lの粘弾性を算出する。
【0070】
あるいは、第4の実施形態の分析装置100では、以下の手順で試料Lの粘弾性を算出してもよい。なお、分析装置100では、粘弾性を算出するにあたり、以下の手順の処理を、試料Lを標準試料に代えて実行することにより、演算機能163により、予め検量線を作成しておく。
【0071】
まず、測定領域が試料Lにより満たされた状態で、測定制御機能162は、試料Lを一定速度で測定領域に流入させ測定素子43を上方に移動させる。ここで、取付流路41は、流入口側の断面積と流出口側の断面積が異なり、流入口側の断面積が流出口側の断面積よりも大きい形状をなしている。流路が狭い箇所では流路が広い箇所に比べ、測定粒子にかかる上昇方向の力が大きくなるため、流速が一定の場合、測定素子43の降下方向の力と上昇方向の力が釣り合う箇所で測定素子43は停止状態となる。
【0072】
取付流路41には、図示しない距離センサが設けられている。距離センサは、取付流路41における上端面または下端面から測定素子43までの距離を検出するセンサである。距離センサは、測定素子43までの距離を検出し、処理回路160に送信する。分析装置100では、演算機能163により、距離センサにより検出された距離を、予め作成した検量線に参照して、試料Lの粘弾性を算出する。
【0073】
第4の実施形態の分析装置100は、第3の実施形態の分析装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第4の実施形態の分析装置100は、測定素子43の移動方向がガイド部材42により規制される。このため、測定領域内における測定素子43の軌道が安定するので、その分粘弾性を精度良く算出することができる。
【0074】
また、第4の実施形態の分析装置100では、取付流路41は、流入口側の面積が流出口側の面積よりも大きい形状をなしており、測定器1(取付流路41)に試料Lを循環供給させた状態で試料Lの粘弾性を算出することができる。したがって、試料Lの粘弾性をリアルタイムで算出しやすくすることができる。
【0075】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の分析装置100は、第1の実施形態と比較して、測定器1の構成が主に異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第5の実施形態の分析装置について説明する。図11は、第5の実施形態の測定器1の一例を示す図である。
【0076】
第5の実施形態の測定器1は、取付流路51と、ガイド部材52と、測定素子53と、スプリング54と、を備える。このうち、取付流路51、ガイド部材52、及び測定素子53は、第4の実施形態における取付流路41、ガイド部材42、及び測定素子43をそれぞれ90度回転させた向きに配置されている。このため、例えば、取付流路51及びガイド部材52は、水平方向に沿って配置される。また、取付流路51における流入口及び流出口にそれぞれ取り付けられるチューブ3は、鉛直方向に沿って配置されている。チューブ3における第5取付流路の流入口側の近傍には、第4の実施形態と同様のバルブが設けられている。
【0077】
スプリング54は、取付流路51における流入口側の面(紙面右側の面)と測定素子53にそれぞれ接続されており、測定素子53を取付流路51における流入口側に引張する引っ張りスプリングである。スプリング54は、測定素子53を流路の上流側から下流側に付勢する。スプリング54は、付勢部の一例である。図11には、スプリング54が伸長した状態を示している。
【0078】
第5の実施形態の分析装置100では、上記第4の実施形態で説明した手順で試料の粘弾性を算出してよい。この場合、第4の実施形態において、測定素子43にかかる重力に代えて、測定素子53には、スプリング54による引っ張り力がかかるものとして、第4測定素子の挙動を検出してよい。
【0079】
第5の実施形態の分析装置100は、第3の実施形態の分析装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第5の実施形態の分析装置100は、スプリング54によって第5測定素子を引張している。このため、取付流路51が延在する向きを、重力によらずどのようにしてもよい。したがって、測定器1の形状等に応じて、載置位置などを調整しやすくすることができる。
【0080】
なお、第1の実施形態から第3の実施形態においても、測定素子14,22,32に対して、スプリングにより一方向に付勢力を与えることにより、スプリングによる付勢力を重力に見立てて、試料の粘弾性を算出することができる。この場合、スプリングによって付勢力が付与される方向に沿って取付流路11,21,31を配置することができ、例えば、水平方向に沿った成分を有した方向、例えば水平方向に沿って取付流路11,21,31を配置してもよい。スプリングによって付勢力が付与される方向は、水平方向以外の方向、例えば、鉛直方向に対して傾斜する傾斜方向としてもよい。
【0081】
[第1の変形例]
次に、上記の各実施形態の第1の変形例について説明する。上記の各実施形態における測定素子の形状は、球形等であるが、変形例で示す以下のような形状の測定素子としてもよい。図13は、第1の変形例の測定素子62の一例を示す図である。第1の変形例において、測定器1は、取付流路61を備え、取付流路61の測定領域に測定素子62が設けられている。測定素子62は、球形を上下方向に引き伸ばしたいわばカプセル形状をなしており、その外側に突出する突出部材63が取り付けられている。
【0082】
突出部材63は、測定素子62の外周部分に一定間隔を空けて複数、この変形例では4つ配置されている。突出部材63は、互いに同一の形状をなし、上下方向(試料Lが流通する方向)に沿って延在している。突出部材63同士の間には、取付流路61の内面との間で試料Lまたは標準試料を流通させる流通路が形成される。取付流路61は、管体の一例である。突出部材63は、流通路形成部の一例である。突出部材63における取付流路61の内面に面する側は、断面曲線状をなしている。このため、突出部材63は、測定素子62が測定領域内で回転する場合に、その回転を邪魔しにくくしている。
【0083】
被検体Mから供給される使用には、フィブリン塊などの固形物が含まれることがある。このような固形物が試料Lに含まれていると、取付流路61を流通する固形物により、取付流路61と測定素子62の間で詰まりが生じる懸念がある。この点、複数の突出部材63の間の流通路が形成されている。この流通路を固形物が通過することにより、
取付流路61と測定素子62の間の詰まりを回避することができる。
【0084】
[第2の変形例]
図14及び図15は、第2の変形例の測定素子72の一例を示す図である。第2の変形例において、測定器1は、取付流路71を備え、取付流路71の測定領域に測定素子72が設けられている。測定素子72は、測定素子62と同様に、球形を上下方向に引き伸ばしたいわばカプセル形状をなしており、その外周にらせん形突出部材73が形成されている。らせん形突出部材73は、らせん部の一例である。
【0085】
らせん形突出部材73は、測定素子72の外周部分にらせん状に形成されている。図14に示す例では、らせん形突出部材73は、複数回旋回する形状をなしている。らせん形突出部材73の重なり合う部分の隙間には、試料Lまたは標準試料を流通させるらせん状の流路(流通穴)が形成される。らせん状の流路(流通穴)が形成されることにより、測定素子72を回転しながら低速で移動させることができる。このため、測定素子72の回転運動による運動の安定化および移動の低速化による測定の精度と分解能の向上を図ることができる。測定素子72の外周部分のらせん形突出部材73は、図15に示すように、1周のみでもよい。
【0086】
上記各実施形態では、分析装置100における演算機能163が粘弾性を算出するが、演算機能163は、粘弾性に代えて、粘性を算出してもよいし、粘性に関する指標、例えば、粘性自体のほか、粘性係数、粘性率、動粘度などを算出してもよい。演算機能163は、粘弾性及び粘性または粘弾性及び粘性に関する指標の一部または全部を算出してもよい。
【0087】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、試料を流通させる流路内の測定領域に配置された測定素子及び前記測定素子の挙動を検出する検出部を備える測定装置と、前記測定素子の挙動に基づいて、前記試料の粘弾性または粘性のうち少なくともいずれか一方に関する指標を算出する演算部と、を持つことにより、リアルタイムで試料の粘弾性を測定することができる。
【0088】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1…測定器
2…廃棄瓶
3…チューブ
4…第1抗凝固剤収容体
5…第2抗凝固剤収容体
11,21,31,41,51,61,71…取付流路
12…駆動装置
13…磁石
14,22,32,43,53,62,72…測定素子
15,33…接触センサ
16,26,34,44…バルブ
23…磁力発生器
24…第1位置センサ
25…第2位置センサ
42,52…ガイド部材
54…スプリング
63…突出部材
73…形突出部材
100…分析装置
110…操作部
120…測定装置
130…オンライン部
140…表示部
150…印刷部
160…処理回路
161…システム制御機能
162…測定制御機能
163…演算機能
170…メモリ
M…被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14