(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172614
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】油中水型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20231129BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20231129BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20231129BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231129BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20231129BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231129BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20231129BHJP
C08L 71/08 20060101ALI20231129BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231129BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231129BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20231129BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/891
A61Q17/04
A61K8/06
C08L71/08
C08K3/013
C08K3/22
C08K5/101
C08L83/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084547
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 祐理子
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】赤田 昌
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
(72)【発明者】
【氏名】荘司 涼佳
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AB242
4C083AB332
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC212
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC532
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD662
4C083BB13
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083FF01
4J002CH022
4J002CP031
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002EH017
4J002FB086
4J002FD050
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD310
4J002GB00
4J002HA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紫外線防御効果が高められており、べたつかず、乾燥した肌にも全身に塗り広げることができ、こすれに強い化粧膜を形成する油中水型日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)を0.5~10質量%、成分(B)を5~35質量%、成分(C)を1~30質量%、成分(D)を5~35質量%含む油中水型日焼け止め化粧料。(A)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体、(B)紫外線散乱剤、(C)25℃で液状のエステル油、(D)25℃での動粘度が1~20mm
2/sの直鎖状シリコーン油
(式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を、EOはオキシエチレン基を示し、aは0~50の数を、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)を0.5~10質量%、成分(B)を5~35質量%、成分(C)を1~30質量%、成分(D)を5~35質量%含む油中水型日焼け止め化粧料。
(A)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
【化1】
(式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基の付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基との両方を有するとき、前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基とは、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。)
(B)紫外線散乱剤
(C)25℃で液状のエステル油
(D)25℃での動粘度が1~20mm
2/sの直鎖状シリコーン油
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、紫外線ダメージから肌を守る働きを持ち、顔や首、手、腕や足等、全身の広い範囲に適用される。そのため、きしみの無さやべたつきの無さ、塗り広げやすさ等の心地よい感触や使用感、良好な紫外線防御効果とそれを持続させる耐水性や耐摩擦性が求められる。油中水型日焼け止め化粧料は、外相が油であることから、きしみにくい、耐水性に優れる等の利点がある。しかし、油中水型日焼け止め化粧料はべたつきやすく、特に、高い紫外線防御効果を得るため、紫外線防御剤の配合量を多くするほど、べたつきが強くなったり、塗り広げにくくなったりすることがあった。また、べたつきを少なくするために低粘度の油剤で構成された日焼け止めは、冬場の空気やエアコンの風によって乾燥した肌への塗布時に引っかかりが生じ、特に塗り広げにくくなるという課題があった。
【0003】
例えば、特許文献1では、有機紫外線防御剤、酸化亜鉛、N-アシルアルキレンイミンを繰り返し単位とする親水性セグメントと、オルガノポリシロキサンセグメントとを構成単位とするポリマー、アクリル酸エステル系樹脂粉体、シリコーン樹脂、シリコーン油、水を含有することで、紫外線防御効果に優れ、かつ、べたつきの無さ、油っぽさの無さに優れた油中水型乳化化粧料を提案している。
【0004】
特許文献2では、特定のベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤と界面活性剤、電解質及び特定のシリコーン化合物を含有することで、高い紫外線防御力を持ちながら、塗布時ののびが良く、べたつきを生じない油中水型乳化日焼け止め化粧料を提案している。
【0005】
紫外線防御効果を持続させる方法の1つとして、日焼け止め化粧料の耐摩擦性を向上させることが挙げられる。近年では、伝染病の感染症対策にマスクを着用する機会が増加しており、マスクの有無によって顔の日焼けの程度に差がつくことを防ぐため、マスクの下にも日焼け止めを塗布する事が求められる。しかし、マスクのずれを直す時や着脱時に、マスクの上から指で押さえたり、顔にフィットしやすい密着型マスクを着用したりすると、マスクと顔がこすれやすくなり、日焼け止め化粧料が落ちてしまうことがあった。そのため、こすれに対して強い化粧膜を形成できることが要求されている。
【0006】
特許文献3では、融点60℃以上のアルキル変性シリコーンワックス、疎水化処理紫外線散乱剤、水を組み合わせることで、べたつきが少なく、耐摩擦性に優れた日焼け止め用油中水型乳化化粧料を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-69282号公報
【特許文献2】特開2008-247897号公報
【特許文献3】特開2020-97576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2では、べたつきを少なくした油中水型日焼け止め化粧料が提案されている。しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1で提案された油中水型乳化化粧料は、塗り広げやすさについては不十分だった。また、特許文献2で提案された油中水型乳化日焼け止め化粧料は、乾燥した肌への塗り広げやすさ、高い紫外線防御効果の持続性の面では不十分だった。
【0009】
また、特許文献3では、べたつきを少なくし、かつ耐摩擦性の向上により持続性の向上も見込まれる日焼け止め用油中水型乳化化粧料が提案されている。しかし、本発明者らの検討によると、特許文献3で提案された日焼け止め用油中水型乳化化粧料は、塗り広げやすさの面では不十分だった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、SPF向上成分により紫外線防御効果が高められており、べたつかず、乾燥した肌にも全身に塗り広げることができ、こすれに強い化粧膜を形成する油中水型日焼け止め化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、紫外線散乱剤、特定の油剤、特定構造を持つアルキレンオキシド誘導体を所定の配合量で組み合わせることにより、上記課題を解決できる油中水型日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記成分(A)を0.5~10質量%、成分(B)を5~35質量%、成分(C)を1~30質量%、成分(D)を5~35質量%含む油中水型日焼け止め化粧料に関する。
(A)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
【0013】
【0014】
式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基の付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基との両方を有するとき、前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基とは、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。)
(B)紫外線散乱剤
(C)25℃で液状のエステル油
(D)25℃での動粘度が1~20mm2/sの直鎖状シリコーン油
【発明の効果】
【0015】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料によれば、SPF向上成分により紫外線防御効果が高められており、べたつかず、乾燥した肌にも全身に塗り広げることができ、こすれに強い化粧膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
【0018】
本発明の日焼け止め化粧料は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
【0019】
〔成分(A)〕
成分(A)は、式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体である。
【0020】
【0021】
式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。
【0022】
aを50以下とすることで、SPF向上効果および塗り広げやすさを向上させ、べたつきを軽減させ、化粧膜のこすれに対する強さを向上させることができる。そのため、aは0~50とするが、0~40が好ましく、0~30が最も好ましい。
【0023】
bを1以上とすることで、SPF向上効果および乾燥した肌への塗り広げやすさ、化粧膜のこすれに対する強さを向上させ、またべたつきを軽減することができる。また、bを50以下とすることで、べたつきを軽減させ、化粧膜のこすれに対する強さを向上させることができる。そのため、bは1~50とするが、10~40が好ましく、10~30が最も好ましい。
【0024】
a+bを10以上とすることで、乾燥肌への塗り広げやすさ、化粧膜のこすれに対する強さを向上させることができる。また、SPF向上効果を向上させる。そのためa+bは10以上とするが、20以上が最も好ましい。a+bの上限は特に限定されないが、SPF向上効果を向上させ、べたつきを軽減させ、化粧膜のこすれに対する強さを向上させる観点から、50以下とすることが好ましい。
【0025】
aが0より大きい場合、炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加している。ブロック状に付加している場合の配列順は問わない。aが0より大きい場合、炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基は、ランダム状に付加していることが好ましい。
【0026】
a/bを2以下とすることで、べたつきを軽減させ、SPF向上効果、化粧膜のこすれに対する強さ、塗り広げやすさを向上させることができる。そのため、a/bは2以下とするが、1.2以下が最も好ましい。a/bの下限値は0であるが、0.3以上としてもよい。
【0027】
炭素数3~4のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基やオキシブチレン基が挙げられるが、オキシプロピレン基が最も好ましい。なお、式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基のいずれか一方のみを有してもよいし、これらの双方を有してもよい。これらの双方を有するとき、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、ランダム状およびブロック状のいずれであってもよい。ブロック状に付加している場合の配列順は問わない。
【0028】
成分(A)は、グリセリンの三つの水酸基のうち、一位の水酸基にアルキレンオキシドが付加したモノエーテル構造を有する。モノエーテル体純度は80%以上であり、90%以上が好ましく、95%以上が更に好ましい。モノエーテル体純度の上限は特に限定されないが、100%以下とすることができる。
【0029】
モノエーテル体純度は1H-NMR測定で得られるピーク積分値を使用して、下記式より算出できる。
【0030】
【0031】
xは、モノエーテル体のみに検出されるグリセリン2位メチン基に由来する約3.3ppmのビーク積分値を1とした際の、エチレンオキシドが付加したグリセリン1,3位メチレン基に由来する約2.4ppm付近のピーク積分値を示す。但し、モノエーテル体のグリセリン2位メチン基に由来する約3.3ppmのピーク積分値が検出できない場合は、モノエーテル体純度を0とする。
【0032】
式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。アルキルアルコール、例えばグリセリンの一位水酸基以外を保護したイソプロピリデングリコールに、アルカリ触媒下、50~160℃、0.5MPa(ゲージ圧)以下にてアルキレンオキシドを付加重合する。2種類以上のアルキレンオキシドを使用する場合、ランダム体の場合はあらかじめ2種類以上のアルキレンオキシドを混合した後に付加重合し、ブロック体の場合は、AOを重合した後にEOを重合しても、EOを重合した後にAOを重合してもよい。その後、塩酸、リン酸、酢酸などの酸を添加し、脱アセタール化を行い、過剰の酸を水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基にて中和し、さらに水分および中和塩を除去することでアルキレンオキシド誘導体を得ることができる。
【0033】
成分(A)の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して0.5~10質量%であり、好ましくは1~8質量%、さらに好ましくは1.5~5質量%である。成分(A)の含有量を多くすることで、十分なSPF向上効果、肌への塗り広げやすさを向上させることができる、成分(A)の含有量を過剰としないことで、ムラができにくくなり、かつべたつきが生じにくく、こすれに対して弱くなりにくくなる。
【0034】
〔成分(B)〕
成分(B)は、紫外線散乱剤である。紫外線散乱剤とは、紫外線を反射・散乱させて皮膚等を紫外線から防御することができる物質を指す。本発明で使用し得る紫外線散乱剤の材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等があげられる。また、紫外線散乱剤としてこれらの材料を微粒子化したものや、複合化したものがあげられる。紫外線散乱剤は、酸化チタン及び酸化亜鉛から選択される1種又は2種を含むことが好ましい。
【0035】
紫外線散乱剤として用いられる酸化チタン及び酸化亜鉛は、化粧料に通常用いられている酸化チタン及び酸化亜鉛であってよい。好ましくはより分散性に優れたもの、例えば必要に応じて公知の方法で表面を表面処理、具体的には疎水化処理したものを肌用組成物中に含有することができる。
【0036】
表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン処理;レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等があげられる。
【0037】
成分(B)は、平均一次粒子径8~80nmのサイズに微粒子化したものが好ましく、10~20nmがさらに好ましい。
【0038】
紫外線散乱剤の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して5~35質量%であり、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。成分(B)の含有量を多くすることで、日焼け止めとして、十分な紫外線防御効果が得られ、成分(B)の含有量を過剰としないことで、塗り広げやすさが良好となり、ムラができにくくなり、きしみや白浮き等、使用感への悪影響が生じにくくなる。
【0039】
〔成分(C)〕
成分(C)は、25℃で液状のエステル油である。本発明に用いられる25℃で液状のエステル油としては、炭素数8~28の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸と、炭素数2~28の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のアルコールとのエステル油が好ましく、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸エチル、エルカ酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル等が挙げられる。
【0040】
好ましくは、炭素数8~10の飽和又は不飽和の脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸と炭素数3~10の飽和アルコール又は不飽和アルコールとを反応させた、ミリスチン酸イソプロピル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニルであり、化粧膜のこすれに対する強さを高める観点からさらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシルである。
【0041】
25℃で液状のエステル油の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して1~30質量%であり、好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。成分(C)の含有量を多くすることで、広範囲への塗り広げやすさ、化粧膜のこすれに対する強さを十分なものにすることができ、成分(C)の含有量を過剰としないことで、べたつきを生じにくくし、塗り広げやすくすることができる。
【0042】
〔成分(D)〕
成分(D)は、25℃での動粘度が1~20mm2/sの直鎖状シリコーン油である。で、25℃での動粘度が1~20mm2/sの直鎖状シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、ジメチルポリシロキサンが用いられる。
【0043】
25℃での動粘度が1~20mm2/sの直鎖状シリコーン油の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して5~35質量%であり、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。成分(D)の含有量を多くすることで、広範囲への塗り広げやすさを十分なものにすることができ、成分(D)の含有量を過剰としないことで、こすれに対する強さを高めたり、化粧料の安定性を高めたりすることができる。
【0044】
本発明における成分(C)と成分(D)との添加濃度は、合計で、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して10~45質量%が好ましく、20~35質量%がさらに好ましい。また、成分(C)/[成分(C)+成分(D)]で計算される値が0.10~0.70であることが好ましく、0.15~0.60であることがさらに好ましい。成分(C)/[成分(C)+成分(D)]の値が0.10以上だと、こすれに対する強さおよび乾燥肌への塗り広げやすさが十分に高まり、0.60以下だと、べたつきが生じにくくなり、塗り広げやすくなる。
【0045】
〔他の成分〕
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、上記成分(A)~(D)に加え、通常、水を含有する。水としては、例えば、精製水、水道水、工業用水、脱イオン水等が挙げられる。本発明における水の添加濃度は、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対して、通常、5~60質量%であり、好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは15~50質量%である。
【0046】
本発明の日焼け止め化粧料は、上記成分(A)~(D)および水に加え、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される添加剤を含有してもよい。
【0047】
かかる添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、パラジメチル安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、サリチル酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アリニノ]-1,3,5-トリアジン、オクトクリレン、4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ビスエチルへキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられ、好ましくは、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アリニノ]-1,3,5-トリアジン、オクトクリレン、4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルへキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである。更に好ましくは、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、及びビスエチルへキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンである。これらの紫外線吸収剤は、必要に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0048】
界面活性剤としては、HLB3~7の界面活性剤が良く、例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-10ジメチコン、ステアリン酸ポリグリセリル―2等が挙げられる。好ましくはPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。
【0049】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料がその他の成分を含有する場合、油中水型日焼け止め化粧料の全質量に対するその他の成分の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%~20質量%である。
【0050】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、油性成分と水相成分とが乳化されて形成され、通常用いられている方法に従って製造することができる。例えば、(C)成分および(D)成分などの油性成分を混合溶解し、それを攪拌しながら(B)成分を添加し、次に、(A)成分等を水に混和溶解させた水相成分を添加して乳化させることにより製造することができる。
【0051】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料は、様々な用途に応じた形態で提供することができ、例えば、乳液、クリーム、ジェル等として提供される。
【実施例0052】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0053】
〔実施例1~11、比較例1~8〕
<合成例1:実施例化合物A-1>
イソプロピリデングリコール100gと触媒としてカリウムtert-ブトキシド0.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら130℃で触媒を溶解した。引続き、130℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置によりエチレンオキシド866gを滴下し、1時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸でpH3とし、脱アセタール化を行った。その後、水酸化カリウムで中和し、減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で3時間処理することで含有する水分を除去し、濾過を行い、実施例化合物A-1を得た。
【0054】
<合成例2~4:実施例化合物A-2、比較例化合物A’-1~A’-2>
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドの各付加量を変更したこと以外は、合成例1と同様の方法にて、実施例化合物A-2、比較例化合物A’-1~A’-2を得た。ただし、比較例化合物A’-1のようなランダム付加体の場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドをあらかじめ混合し、滴下装置により滴下し反応を行った。また、実施例化合物A-2のようなブロック付加体の場合、プロピレンオキシドを所定の付加モル数になるよう滴下装置により滴下することにより反応させた後、エチレンオキシドを所定の付加モル数になるよう滴下装置により滴下することにより反応を行った。
【0055】
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量から式(1)におけるa、bの値を特定した。実施例化合物A-1~A-2、比較例化合物A’-1~A’-2の、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各平均付加モル数の合計などを表1に示す。なお、表1の「AO」は式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が有するオキシアルキレン基(AO)の種類を示し、「PO」はオキシプロピレン基をそれぞれ表す。表1には、上述した方法で算出したモノエーテル体純度も示す。
【0056】
【0057】
〔評価方法〕
成分(A)~(D)、(A′)、(D′)、その他成分を、表2、表3(実施例)、および表4、表5(比較例)に示す組成で、油中水型日焼け止め化粧料として調製し、(1)SPF向上効果(2)べたつきの無さ、(3)乾燥肌への塗り広げやすさ、(4)こすれに対する化粧膜の強さについて、下記評価基準にて、評価を行った。
【0058】
(1)SPF向上効果
各処方に対し、成分(A)無添加のブランクを調整し、各試料を、PMMAプレート(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cm2塗布後、暗所で20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行い、前記プレート上を9点測定し、平均値から[SPFブランク]を得た。実施例および比較例の各組成物も同様に[SPF試料]を測定した。下記式よりブランクに対するSPFの変化率を求めた。
【0059】
ブランクに対するSPFの変化率=[SPF試料]/[SPFブランク]×100
【0060】
求めたブランクに対するSPFの変化率を下記の基準で評価し、125%以上の場合、SPF向上効果のある日焼け止め化粧料と判断した。
【0061】
<評価基準>
◎:変化率が150%以上
○:変化率が125%以上、150%点未満
△:変化率が110%以上、125%未満
×:変化率が110%未満
【0062】
(2)べたつきの無さ
20名の女性(23~55才)をパネラーとし、顔と、手・腕・足の全体に日焼け止め化粧料を塗布した後のべたつきを、下記評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上の場合、べたつきの少ない日焼け止め化粧料と判断した。
【0063】
<評価基準>
2点:べたつきを感じなかった。
1点:わずかにべたつきを感じた。
0点:べたつきを感じた。
【0064】
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0065】
(3)乾燥肌への塗り広げやすさ
20名の女性(23~55才)をパネラーとし、エタノールを手・腕・足の全体に塗布した後、一定湿度の部屋に20分間待機させ、その後、日焼け止め化粧料を塗布する時の塗り広げやすさを、下記評価基準により点数化した。パネラー20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上の場合、乾燥肌でも塗り広げやすい日焼け止め化粧料と判断した。
【0066】
<評価基準>
2点:乾燥した肌にのばす途中、ひっかかりを感じることなく塗り広げることができた。
1点:乾燥した肌にのばす途中、わずかにひっかかりを感じたが塗り広げることができた。
0点:乾燥した肌にのばす途中、ひっかかりを感じ、塗り広げにくかった。
【0067】
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0068】
(4)こすれに対する化粧膜の強さ
各日焼け止め化粧料を、PMMAプレート(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cm2塗布後、暗所で20分静置し、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いてSPF測定を行った。その後、同じプレート上に紙ワイパー(日本製紙クレシア(株)製 キムワイプS-200)を挟むように85gのおもりを置き、プレート上で、紙ワイパーごとおもりを動かしてこすり、同様にSPF測定を行った。下記式より紙ワイパーでこする前後のSPFの変化率を計算した。変化率が20%未満の時、こすれに対して強い化粧膜を形成できる日焼け止め化粧料と判断した。
【0069】
こすれによるSPF変化率(%)={([こする前のSPF]―[こすった後のSPF])/[こする前のSPF]}×100
【0070】
◎:変化率が0%以上10%未満
○:変化率が10%以上20%未満
△:変化率が20%以上30%未満
×:変化率が30%以上100%以下
【0071】
実施例1~11および比較例1~8の組成および評価結果を表2~表5に示す。なお、表2~表5に記載した組成は、全体の質量を100質量部としたときの各成分の比率(質量部)を示す。また、「C+D」には、成分(C)、成分(D)および成分(D’)の合計量を、「C/(C+D)」には上記合計量に対する成分(C)の量の割合を、それぞれ示す。また、日焼け止め化粧料に共通する成分の組成を表6に示す。なお、表6に記載した組成は、表2~表5に記載した組成の全体の質量を100質量部としたときの、各成分の比率(質量部)を示す。
【0072】
なお、日焼け止め化粧料に使用した材料は以下の通りである。
酸化チタン:脂肪酸処理微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製「MTー10EX」、平均一次粒子径10nm)
酸化亜鉛:シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(テイカ株式会社製「MZY-505M」、平均一次粒子径25nm)
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:信越化学工業株式会社製「KF-6028」、HLB4.0)
【0073】
また、成分(C)として使用したミスチリン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル及びヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、およびイソノナン酸イソノニルはいずれも、25℃で液状のエステル油である。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
実施例1~11については、いずれのサンプルにおいても、十分なSPF向上効果を有し、べたつかず、乾燥した肌にも全身に塗り広げることができ、こすれに強い化粧膜を形成することができた。
【0080】
一方、比較例1~8については、十分な効果は得られなかった。
【0081】
すなわち、比較例1では、成分(A)が含まれていなかったため、SPF向上効果は無く、こすれに対する強さもさほど高まってはおらず、乾燥肌への塗り広げやすさの面で不十分だった。比較例2および比較例3では、成分(A)と異なるアルキレンオキシド誘導体を配合したため、SPF向上効果、乾燥肌への塗り広げやすさ、べたつきの無さで不十分であり、こすれに対するもさほど高まっていなかった。比較例4では、成分(C)が含まれていなかったため、乾燥した肌への塗り広げやすさ、こすれに対する強さの面で不十分だった。比較例5では、成分(D)が含まれていなかったため、特に乾燥肌への塗り広げやすさの面で不十分であり、こすれに対する強さもさほど高まっていなかった。比較例6では、成分(A)の配合量が過剰であり、べたつきの無さ、乾燥肌への塗り広げやすさが不十分であった。比較例7では、成分(B)の配合量が過剰であり、べたつきの無さ、乾燥肌への塗り広げやすさが不十分であり、すれに対する強さもさほど高まっていなかった。比較例8では、成分(D)とは異なるシリコーン油を配合したため、べたつきの無さ、乾燥肌への塗り広げやすさ、こすれに対する強さが不十分であった。
本発明の油中型日焼け止め化粧料は、顔や肌などの皮膚に適用することができ、従来の日焼け止め化粧料では得られない特有の効果、具体的には、乾燥した肌への塗り広げやすさ、べたつきの無さ、化粧膜のこすれに対する強さを併せて奏することができるため、広く日焼け止め化粧料への応用が期待できる。