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▶ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172615
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20231129BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231129BHJP
   F24F 1/08 20110101ALI20231129BHJP
【FI】
F04B39/12 Z
F04C29/00 Z
F24F1/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084549
(22)【出願日】2022-05-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 椿
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 一▲揚▼
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐一
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB03
3H003AC03
3H003CA02
3H003CD01
3H129AA02
3H129AA14
3H129AB03
3H129BB44
3H129CC09
3H129CC17
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い密閉型圧縮機等を提供する。
【解決手段】スクロール圧縮機100のサブフレーム9は、筒チャンバ1aの下端付近の内周面に密接している圧入部911cを有し、筒チャンバ1aにおいて圧入部911cに密接している部分1eの内径に等しい内径で、当該部分1eの上端から下側に筒チャンバ1aが延びている上下方向の長さL1が、副軸受10の下端からクランク軸3の下端まで又はクランク軸3の段差部までの距離L2よりも短い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、
前記回転子と一体で回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、
前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、
前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、
前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、
前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、
前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差である密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記部分の上端から前記筒チャンバの下端までの内径が前記筒チャンバにおいて一定である構成では、前記長さL1は、前記部分の上端から前記筒チャンバの下端までの上下方向の長さであること
を特徴とする請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記筒チャンバの下端を含む所定領域の内周面が径方向外側に切り欠かれてなる切欠部が設けられた構成では、前記長さL1は、前記部分の上端から前記切欠部の上端までの上下方向の長さであること
を特徴とする請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記底チャンバは、前記筒チャンバの径方向外側に嵌め込まれて、前記筒チャンバに溶接されており、
前記筒チャンバの下端から前記底チャンバの上端までの距離L3よりも前記長さL1の方が短いこと
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
密閉型圧縮機と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を含み、
前記密閉型圧縮機は、
密閉容器と、
固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、
前記回転子と一体で回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、
前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、
前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、
前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、
前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、
前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差である冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型圧縮機等に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型圧縮機の信頼性を高めるための技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。すなわち、特許文献1には、副軸受を収容する副軸受収容部と、密閉容器に圧入される複数の圧入部と、を有するサブフレームを備えた密閉型圧縮機について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/019714号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、サブフレームの変形を抑制することで、このサブフレームに設置される副軸受の変形を抑制するようにしているが、密閉型圧縮機の信頼性をさらに高める余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、信頼性の高い密閉型圧縮機等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る密閉型圧縮機は、密閉容器と、固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、前記回転子と一体で回転するシャフトと、前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差であることとした。
なお、その他については、実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信頼性の高い密閉型圧縮機等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
図2】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、副軸受が設置された状態のサブフレームの斜視図である。
図3】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、サブフレームの付近の寸法関係を示す説明図である。
図4A】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、筒チャンバにクランク軸やフレームが組み付けられる際の状態を示す断面図である。
図4B】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、筒チャンバにサブフレームが圧入される際の状態を示す断面図である。
図4C】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、筒チャンバへのサブフレームの圧入が完了したときの状態を示す断面図である。
図5A】比較例に係るスクロール圧縮機において、サブフレームが筒チャンバに圧入される直前の状態の説明図である。
図5B】第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、サブフレームが筒チャンバに圧入される直前の状態の説明図である。
図6A】比較例に係るスクロール圧縮機におけるサブフレームの付近の断面図である。
図6B】第1実施形態に係るスクロール圧縮機におけるサブフレームの付近の断面図である。
図7A】第1の変形例に係るスクロール圧縮機の部分的な断面図である。
図7B】第2の変形例に係るスクロール圧縮機の部分的な断面図である。
図7C】第3の変形例に係るスクロール圧縮機の部分的な断面図である。
図7D】第4の変形例に係るスクロール圧縮機の部分的な断面図である。
図8】第5の変形例に係るスクロール圧縮機の部分的な断面図である。
図9】第2実施形態に係る空気調和機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<スクロール圧縮機の構成>
図1は、第1実施形態に係るスクロール圧縮機100の縦断面図である。
スクロール圧縮機100(密閉型圧縮機)は、ガス状の冷媒を圧縮する機器である。図1に示すように、スクロール圧縮機100は、密閉容器1と、圧縮機構部2と、クランク軸3(シャフト)と、給油ピース4と、電動機5と、主軸受6aと、旋回軸受6bと、を備えている。また、スクロール圧縮機100は、前記した構成の他に、オルダムリング7と、バランスウェイト8a,8bと、サブフレーム9(支持部材)と、副軸受10と、スラスト軸受11と、遮蔽板12と、脚13と、を備えている。
【0010】
密閉容器1は、圧縮機構部2、クランク軸3、電動機5等を収容する金属製の容器であり、略密閉されている。密閉容器1には、圧縮機構部2や各軸受を潤滑するための潤滑油が封入され、密閉容器1の底部に油溜りR1として貯留されている。密閉容器1は、円筒状の筒チャンバ1aと、この筒チャンバ1aの上側を塞ぐ蓋チャンバ1bと、筒チャンバ1aの下側を塞ぐ底チャンバ1cと、を備えている。
【0011】
図1に示すように、底チャンバ1cは、縦断面視でU字状を呈し、筒チャンバ1aの径方向外側に嵌め込まれて、筒チャンバ1aに溶接されている。より詳しく説明すると、底チャンバ1cの上端部が拡径するように所定の曲げ加工が施され、この上端部の内周面が筒チャンバ1aの下端部の外周面に接触している。そして、サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入されている。このような固定方式をプレスフィット方式という。また、図1の例では、底チャンバ1cの上端部が筒チャンバ1aの径方向外側に嵌め込まれる外被せ仕様の構成になっている。底チャンバ1cの上端は、筒チャンバ1aの外周面に溶接されている。この溶接箇所を溶接部W1という。
【0012】
同様に、密閉容器1の上部のフレーム23も外被せ仕様のプレスフィット方式で固定されている。つまり、フレーム23の周縁を含むフランジ部23aが、蓋チャンバ1bと筒チャンバ1aとで挟み込まれている。また、蓋チャンバ1bが筒チャンバ1aの径方向外側に嵌め込まれて、筒チャンバ1aに溶接されている。なお、図1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、密閉容器1の蓋チャンバ1bには、吸込パイプP1が差し込まれて固定されている。吸込パイプP1は、圧縮機構部2の吸込口J1に冷媒を導く管である。また、密閉容器1の筒チャンバ1aには、吐出パイプP2が差し込まれて固定されている。吐出パイプP2は、圧縮機構部2で圧縮された冷媒をスクロール圧縮機100の外部に導く管である。
【0014】
圧縮機構部2は、クランク軸3(シャフト)の回転に伴って、ガス状の冷媒を圧縮する機構である。圧縮機構部2は、固定スクロール21と、旋回スクロール22と、フレーム23と、を備え、密閉容器1内の上部空間に配置されている。固定スクロール21は、旋回スクロール22とともに圧縮室S1を形成する部材である。固定スクロール21は、フレーム23の上側に設置され、このフレーム23にボルト(図示せず)で固定されている。図1に示すように、固定スクロール21は、台板21aと、固定ラップ21bと、を備えている。
【0015】
台板21aは、平面視で円形状を呈する肉厚の部材である。台板21aには、吸込パイプP1を介して冷媒が導かれる吸込口J1が設けられている。また、台板21aの中心付近の下部には、上側に所定に凹んだ領域S2が設けられている。固定ラップ21bは、下面視で渦巻状を呈し、前記した領域S2において台板21aから下側に延びている。台板21aの下面(領域S2の外側の鏡板面)と固定ラップ21bの歯先とは、略面一になっている。
【0016】
旋回スクロール22は、その移動(旋回)によって固定スクロール21との間に圧縮室S1を形成する部材であり、固定スクロール21とフレーム23との間に設けられている。図1に示すように、旋回スクロール22は、鏡板22aと、旋回ラップ22bと、ボス部22cと、を備えている。鏡板22aは、固定スクロール21の鏡板面との間で摺動する部分であり、円板状を呈している。旋回ラップ22bは、固定ラップ21bとともに圧縮室S1を形成する部材であり、上面視で渦巻状を呈している。ボス部22cは、クランク軸3の偏心部3bに嵌合する部分であり、筒状を呈している。図1に示すように、旋回ラップ22bは、鏡板22aから上側に延びている。一方、ボス部22cは、鏡板22aから下側に延びている。
【0017】
そして、渦巻状の固定ラップ21bと、渦巻状の旋回ラップ22bと、が噛み合うことで、固定ラップ21bと旋回ラップ22bとの間に圧縮室S1が形成されるようになっている。なお、圧縮室S1は、ガス状の冷媒を圧縮する空間であり、旋回ラップ22bの外線側・内線側にそれぞれ形成される。固定スクロール21の台板21aの中心付近には、吐出口J2が設けられている。吐出口J2は、圧縮室S1で圧縮された冷媒を圧縮機構部2の上側の空間S3に導く開口部である。
【0018】
フレーム23は、固定スクロール21を支持する部材である。フレーム23は、概ね回転対称な形状を呈し、筒チャンバ1aの内周壁に固定されている。フレーム23には、クランク軸3が挿通される挿通孔23hが設けられている。
【0019】
クランク軸3(シャフト)は、電動機5の回転子5bと一体で回転する軸であり、上下方向に延びている。図1に示すように、クランク軸3は、主軸部3aと、この主軸部3aから上側に延びる偏心部3bと、を備えている。主軸部3aは、電動機5の回転子5bに同軸で固定され、この回転子5bと一体で回転する。偏心部3bは、主軸部3aに対して偏心しながら回転する部分であり、前記したように、旋回スクロール22のボス部22cに嵌合している。そして、偏心部3bが偏心しながら回転することで、旋回スクロール22が旋回するようになっている。
【0020】
図1に示すように、クランク軸3を上下方向に貫通するように、給油貫通孔3cが設けられている。給油貫通孔3cは、油溜りR1から潤滑油を上側に導く流路であり、クランク軸3の上端で開口している。給油貫通孔3cは、主軸受6aや旋回軸受6b等にも潤滑油が供給されるように所定に分岐している。
【0021】
給油ピース4は、密閉容器1の油溜りR1から潤滑油を吸い上げる遠心ポンプであり、クランク軸3の下端部に設置されている。そして、給油ピース4の回転に伴う遠心力の他、給油貫通孔3cにおける差圧によって、給油ピース4及び給油貫通孔3cを順次に介して潤滑油が吸い上げられるようになっている。なお、クランク軸3と共に回転する所定の金属片(図示せず)がクランク軸3の内部に設けられていてもよい。
【0022】
電動機5は、クランク軸3を回転させる駆動源であり、フレーム23とサブフレーム9との間に設置されている。図1に示すように、電動機5は、固定子5aと、回転子5bと、を備えている。固定子5aは、筒チャンバ1aの内周壁に固定されている。回転子5bは、固定子5aの径方向内側で回転自在に配置されている。回転子5bは、主軸部3aの中心軸線(図示せず)と同軸になるようにクランク軸3に固定されている。
【0023】
主軸受6aは、フレーム23に対して主軸部3aの上部を回転自在に軸支するものであり、フレーム23の挿通孔23hの周壁面に設置されている。旋回軸受6bは、旋回スクロール22のボス部22cに対して偏心部3bを回転自在に軸支するものであり、ボス部22cの内周面に設置されている。このような主軸受6aや旋回軸受6bとして、例えば、すべり軸受が用いられる。
【0024】
オルダムリング7は、クランク軸3の偏心部3bの偏心回転を受けて、旋回スクロール22を自転させることなく旋回させる輪状部材である。オルダムリング7は、旋回スクロール22の下面の溝(図示せず)に装着されるとともに、フレーム23の溝(図示せず)に装着されている。バランスウェイト8a,8bは、スクロール圧縮機100の振動を抑制するための部材である。図1の例では、クランク軸3において、主軸受6aと旋回軸受6bとの間にバランスウェイト8aが設置されている。また、回転子5bの下側に別のバランスウェイト8bが設置されている。なお、バランスウェイト8a,8bの設置箇所は適宜に変更可能である。
【0025】
サブフレーム9(支持部材)は、主軸部3aの下部を回転自在に軸支するための金属部材である。図1に示すように、サブフレーム9は、電動機5の下側で密閉容器1に固定されている。サブフレーム9には、クランク軸3(シャフト)を挿通するための挿通孔9hが設けられている。
【0026】
副軸受10(軸受)は、サブフレーム9に対して主軸部3aの下部を回転自在に軸支する軸受であり、挿通孔9hの周壁面に設置されている。スラスト軸受11は、クランク軸3から軸方向の荷重を受ける円環状の軸受であり、図1の例では、主軸部3aの下側に設置されている。なお、スラスト軸受11の設置位置は、主軸部3aの下側に限定されるものではない。例えば、主軸受6aの上側にスラスト軸受が設置されるようにしてもよい。
【0027】
遮蔽板12は、油溜りR1からの潤滑油の飛散を抑制するための円形状の薄板であり、サブフレーム9の上側に設置されている。そして、サブフレーム9における接続部9b(図2も参照)の間の隙間が、遮蔽板12で塞がれている。複数の脚13は、密閉容器1を支持するものであり、底チャンバ1cに設置されている。
【0028】
電動機5の駆動でクランク軸3が回転すると、これに伴って、旋回スクロール22が旋回する。そうすると、次々に形成される圧縮室S1が縮小し、ガス状の冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、固定スクロール21の吐出口J2を介して、圧縮機構部2の上側の空間S3に吐出される。このように空間S3に吐出された冷媒は、圧縮機構部2と密閉容器1との間の流路(図示せず)を介してモータ室S4に導かれ、さらに、吐出パイプP2を介して外部に吐出される。また、密閉容器1の底に油溜りR1として貯留されている潤滑油は、給油ピース4及び給油貫通孔3cを順次に介して上昇し、副軸受10や主軸受6a、旋回軸受6bの他、圧縮機構部2等を潤滑する。
【0029】
図2は、スクロール圧縮機において、副軸受10が設置された状態のサブフレーム9の斜視図である。
図2に示すように、サブフレーム9(支持部材)は、副軸受設置部9aと、接続部9bと、支持部9cと、を備え、これらが一体的に形成されている。副軸受設置部9aは、その内周面に副軸受10が設置される部分であり、円筒状を呈している。なお、サブフレーム9は、副軸受設置部9aの中心軸線が、クランク軸3(図1参照)の主軸部3a(図1参照)の中心軸線に略一致するように設置される。副軸受設置部9aの内周面には、副軸受10が圧入等で固定されている。このような副軸受10として、例えば、円筒状のすべり軸受が用いられる。すべり軸受は、その構成が簡素であり、また、耐荷重性に優れている他、比較的安価であるという特長を有している。なお、円筒状の副軸受設置部9aの下端から径方向内側に延びるように、上面視で環状の底部91a(図1参照)が設けられている。そして、この底部91aに環状のスラスト軸受11が設置されている。なお、前記したように、主軸受6a(図1参照)の上側にスラスト軸受が設置されるようにしてもよい。
【0030】
複数の接続部9bは、副軸受設置部9aと、この副軸受設置部9aを囲む環状の支持部9cと、を接続する部分であり、径方向に延びている。図2の例では、3つの接続部9bが周方向で等角度間隔に設けられている。支持部9cは、接続部9bを介して副軸受設置部9aを支持する部分であり、平面視で環状を呈している。図2の例では、支持部9cが、肉厚部91cと、この肉厚部91cよりも径方向の肉厚が薄い肉薄部92cと、を3つずつ備えている。
【0031】
肉厚部91cと肉薄部92cとは、周方向で交互に配置されている。また、肉厚部91cと肉薄部92cとは、その内周面が面一(平面視で円形状)になっている。そして、肉薄部92cと筒チャンバ1a(図1参照)との間の隙間を介して、ガス状の冷媒が通流するようになっている。前記したように、接続部9bの間の隙間は、遮蔽板12(図1参照)で塞がれている。
【0032】
肉厚部91cは、周方向の位置が接続部9bに対応するように設けられている。図2の例では、肉厚部91cは、その高さ位置が低くなるにつれて、径方向の肉厚が階段状に厚くなるように形成されているが、これに限定されるものではない。肉厚部91cは、図2のドット表示で示す圧入部911c(密接部)を有する他、フランジ部912cを有している。圧入部911cは、密閉容器1(図1参照)の筒チャンバ1a(図1参照)に圧入される部分である。
【0033】
なお、サブフレーム9が筒チャンバ1a(図1参照)に圧入されていない状態では、副軸受設置部9aの中心軸線から圧入部911cの表面までの径方向の長さが、筒チャンバ1a(図1参照)の内周面の半径よりも若干長くなっている。また、サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入された状態では、圧入部911c(密接部)が筒チャンバ1aの下端付近の内周面に密接した状態になる。ここで、「密接」とは、隙間なく接触していることを意味しているが、隙間を一切許容しないというものでもない。
【0034】
サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入された状態において、圧入部911cよりも肉厚が薄い部分(図2の例では圧入部911cよりも高さ位置が高い部分)は、筒チャンバ1aから若干離れた状態になっている。図2に示すフランジ部912cは、筒チャンバ1a(図1参照)の下端に係止される部分である。フランジ部912cは、圧入部911cの下側に設けられ、圧入部911cの表面よりも径方向外側に延びている。
【0035】
図3は、サブフレーム9の付近の寸法関係を示す説明図である。
なお、図3では、給油ピース4(図1参照)や電動機5(図1参照)の図示を省略している。図3に示す長さL1は、筒チャンバ1aにおいて圧入部911c(密接部)に密接している部分1eの内径に等しい内径で、この部分1eの上端から下側に筒チャンバ1aが延びている上下方向の長さである。要するに、サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入される過程で、圧入部911cが筒チャンバ1aを径方向に押圧しながら進む上下方向の長さが、図3に示す長さL1である。
【0036】
図3に示すように、筒チャンバ1aの部分1eの上端から筒チャンバ1aの下端までの内径が筒チャンバ1aにおいて一定である構成では、長さL1は、図3に示す部分1eの上端(つまり、圧入部911cの上端:図2も参照)から筒チャンバ1aの下端までの上下方向の長さに等しくなる。また、図3に示すように、圧入部911cの下端の高さ位置が、筒チャンバ1aの下端の高さ位置に一致している構成では、長さL1は、圧入部911cの上下方向の長さに等しくなる。
【0037】
図3に示す距離L2は、副軸受10(軸受)の下端からクランク軸3(シャフト)の下端までの上下方向の距離である。要するに、クランク軸3において、副軸受10の下側に出ている部分の上下方向の長さが、図3に示す距離L2である。詳細については後記するが、第1実施形態では、図3に示す長さL1を距離L2よりも短くすることで(L1<L2)、サブフレーム9の圧入が開始される際に、クランク軸3の下端が副軸受10の下側に出た状態になるようにしている。これによって、サブフレーム9が圧入される過程でクランク軸3の下端の角部3eが、副軸受10の内周側の樹脂層を削り取ってしまうことを防止できる。
【0038】
図3に示す距離L3は、筒チャンバ1aの下端から底チャンバ1cの上端までの上下方向の距離である。詳細については後記するが、第1実施形態では、図3に示す長さL1を距離L3よりも短くすることで(L1<L3)、圧入部911cと溶接部W1とが径方向で重ならないようにしている。これによって、溶接で底チャンバ1cが収縮変形した場合でも、その影響が副軸受10に及ぶことを抑制できる。
なお、図3に示す距離L2と距離L3との間の大小関係は、特に限定されない。すなわち、距離L2が距離L3よりも長くてもよいし、また、距離L2が距離L3よりも短くてもよい。また、距離L2と距離L3とが等しくなるようにしてもよい。
【0039】
図4Aは、スクロール圧縮機において、筒チャンバ1aにクランク軸3やフレーム23が組み付けられる際の状態を示す断面図である。
図4Aに示すように、筒チャンバ1aにクランク軸3やフレーム23に組み付ける際には、組付作業を行いやすくするために、これらの各部材を作業員が上下逆向きにするようにしている。なお、筒チャンバ1aの内周面には、電動機5の固定子5aが設置されている。また、クランク軸3の主軸部3aには、電動機5の回転子5bが設置されている。主軸部3aの先端(図4Aでは上端)には、給油ピース4が設置されている。作業員は、フレーム23にクランク軸3を挿通し、さらに、筒チャンバ1aにフレーム23を圧入する。なお、クランク軸3やフレーム23は、ハンドプレス等の圧入機(図示せず)で支持されているものとする。
【0040】
図4Bは、スクロール圧縮機において、筒チャンバ1aにサブフレーム9が圧入される際の状態を示す断面図である(図1も適宜に参照)。
図4Bに示すように、サブフレーム9の挿通孔9hを介して、給油ピース4やクランク軸3が挿通される。そして、作業員は、ハンドプレス等の圧入機(図示せず)を用いて、常温の環境下でサブフレーム9に下向きの圧力を加えて強く押し込むことで、サブフレーム9を筒チャンバ1aに圧入する。
【0041】
図4Cは、スクロール圧縮機において、筒チャンバ1aへのサブフレーム9の圧入が完了したときの状態を示す断面図である。
サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入されると、圧入部911c(図2参照)によって、筒チャンバ1aが径方向外向きに押圧されて弾性変形する。したがって、ねじ等の固定部材を特に用いずとも、サブフレーム9が筒チャンバ1aに強固に固定される。
【0042】
図5Aは、比較例に係るスクロール圧縮機100Gにおいて、サブフレーム9Gが筒チャンバ1aに圧入される直前の状態の説明図である。
図5Aの比較例では、サブフレーム9Gの圧入部G1の高さ位置が、第1実施形態の構成(図5B参照)よりも高く(上下逆の図5Aでは高さ位置が低く)なっている。また、図5Aには図示していないが、サブフレーム9Gが筒チャンバ1aに圧入され、さらに、図1と同様の向きにスクロール圧縮機100Gが載置された状態では、圧入部G1の上端から筒チャンバ1aの下端までの長さ(図3の長さL1に対応)が、副軸受10からクランク軸3の先端が突出している長さ(図3の距離L2に対応)よりも長くなるものとする(L1>L2)。
【0043】
図5Aに示すように、サブフレーム9Gの圧入部G1が筒チャンバ1aの先端に接触する(つまり、圧入が開始される)ときには、クランク軸3の先端(上下逆の図5Aでは、クランク軸3の上端)が副軸受10からまだ出ていない。これは、前記した寸法関係(L1>L2)によるものである。このような状態でサブフレーム9Gが筒チャンバ1aに圧入されると、場合によっては、副軸受10の内径側の樹脂層にクランク軸3の先端が接触し、副軸受10の樹脂層が削り取られる可能性がある。
【0044】
図5Bは、第1実施形態に係るスクロール圧縮機において、サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入される直前の状態の説明図である。
なお、図5Bは、図4Bを部分的に拡大したものになっている。図5Bの構成では、サブフレーム9の圧入部911cが筒チャンバ1aの先端に接触する(つまり、圧入が開始される)ときには、クランク軸3の先端(上下逆の図5Bでは、クランク軸3の上端)が、副軸受10から出た状態になっている。これは、前記した所定の長さL1(図3参照)が距離L2(図3参照)よりも短いことによるものである(L1<L2)。
【0045】
したがって、第1実施形態によれば、サブフレーム9が圧入される際の加圧方向が副軸受10の中心軸線の方向から若干傾いている場合でも、クランク軸3の先端の角部3eが副軸受10の内周面に当たることを防止できる。これによって、副軸受10が損傷を受けることを防止し、ひいては、副軸受10の耐荷重性の低下を抑制できる。
【0046】
図6Aは、比較例に係るスクロール圧縮機100Gにおけるサブフレーム9Gの付近の断面図である。
なお、図6Aは、図5Aの比較例に係るスクロール圧縮機100Gの組付けが完了した状態の部分的な断面図になっている。図6Aの比較例では、圧入部G1(図5Aも参照)の上端から筒チャンバ1aの下端までの長さL1が、筒チャンバ1aの下端から底チャンバ1cの上端までの距離L3よりも長くなっている(L1>L3)。このような構成では、底チャンバ1cの上端付近の溶接部W1と、圧入部G1と、が径方向で重なるため、溶接時に筒チャンバ1aの内径が収縮するように変形した場合、この変形の影響が圧入部G1を介して副軸受10に及びやすくなる。仮に、副軸受10が変形した場合には、副軸受10における荷重が局所的に集中しやすくなるため、スクロール圧縮機100Gの信頼性の低下を招く。
【0047】
図6Bは、第1実施形態に係るスクロール圧縮機におけるサブフレーム9の付近の断面図である。
前記したように、第1実施形態では、圧入部911c(図2も参照)の上端から筒チャンバ1aの下端までの長さL1が、筒チャンバ1aの下端から底チャンバ1cの上端までの距離L3よりも短くなっている(L1<L3)。このような構成によれば、図6Bに示すように、底チャンバ1cの上端付近の溶接部W1と、サブフレーム9の圧入部911cとが径方向で重ならないため、溶接時に筒チャンバ1aの内径が収縮するように変形した場合でも、この変形の影響が副軸受10に及ぶことを抑制できる。
【0048】
<効果>
第1実施形態によれば、図3に示すように、圧入部911cの上端から筒チャンバ1aの下端までの長さL1が、副軸受10の下端からクランク軸3の下端までの上下方向の距離L2よりも短い(L1<L2)。これによって、サブフレーム9が圧入される際、クランク軸3の先端が副軸受10から出た状態になる(図5B参照)。その結果、サブフレーム9が圧入される過程で、クランク軸3の先端の角部3eで副軸受10の内径側の樹脂層が削り取られることを防止できるため、スクロール圧縮機100の信頼性が高められる。また、第1実施形態によれば、作業員がサブフレーム9を圧入する際、クランク軸3の先端が副軸受10に当たらないように注意する必要が特にないため、スクロール圧縮機100の組付作業が容易になる。また、サブフレーム9の圧入は、プラグ溶接に比べて容易である他、製造時のコスト低減を図ることもできる。
【0049】
また、第1実施形態によれば、図3に示すように、圧入部911cの上端から筒チャンバ1aの下端までの長さL1が、筒チャンバ1aの下端から底チャンバ1cの上端までの距離L3よりも短い(L1<L3)。これによって、溶接時に筒チャンバ1aの内径が収縮するように変形した場合でも、この変形の影響が副軸受10に及ぶことを抑制できる。その結果、副軸受10における荷重が局所的に集中することを抑制し、ひいては、スクロール圧縮機100の信頼性を高めることができる。
【0050】
≪第1の変形例≫
図7Aは、第1の変形例に係るスクロール圧縮機100Aの部分的な断面図である。
なお、図7Aでは、説明を分かりやすくするために、長さL1に対応する箇所を太い実線で示している(図7B図7Dも同様)。図7Aに示す第1の変形例では、サブフレーム9Aにおける圧入部911Acの高さ位置が、第1実施形態(図3参照)の場合よりも高くなっている。また、筒チャンバ1Aaの下端を含む所定領域F1の内周面が径方向外側に切り欠かれてなる切欠部1fが設けられている。なお、サブフレーム9Aにおいて、圧入部911Acの下側で切欠部1fに対向している部分は、その外径が圧入部911Acの外径に等しくなっているが、筒チャンバ1Aaには接触していない。
このような構成の場合、筒チャンバ1Aaにおいて圧入部911Acに密接している部分1eの内径に等しい内径で、この部分1eの上端から下側に筒チャンバ1Aaが延びている上下方向の長さL1は、次の長さに等しくなる。つまり、長さL1は、前記した部分1eの上端から切欠部1fの上端までの上下方向の長さに等しくなる。そして、副軸受10の下端からクランク軸3の下端までの上下方向の距離L2(図3参照)よりも長さL1を短くすることで(L1<L2)、サブフレーム9Aの圧入時にクランク軸3の先端が副軸受10に当たることを防止できる。なお、長さL1と距離L3との関係については、第1実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0051】
≪第2の変形例≫
図7Bは、第2の変形例に係るスクロール圧縮機100Bの部分的な断面図である。
図7Bに示す第2の変形例では、サブフレーム9Bにおける圧入部911Bcの高さ位置が、第1実施形態(図3参照)の場合よりも高くなっている。また、サブフレーム9Bにおいて、圧入部911Bcとフランジ部912cとの間には、径方向内側に凹んでなる凹部913cが設けられている。図7Bの構成では、第1実施形態(図3参照)と同様に、筒チャンバ1aにおいて圧入部911Bcに密接している部分1eの上端から筒チャンバ1aの下端までの内径が筒チャンバ1aにおいて一定になっている。このような構成の場合、長さL1は、前記した部分1eの上端から筒チャンバ1aの下端までの上下方向の長さに等しくなる。このような構成でも、副軸受10の下端からクランク軸3の下端までの上下方向の距離L2(図3参照)よりも長さL1を短くすることで(L1<L2)、サブフレーム9Bの圧入時にクランク軸3の先端が副軸受10に当たることを防止できる。
【0052】
≪第3の変形例≫
図7Cは、第3の変形例に係るスクロール圧縮機100Cの部分的な断面図である。
図7Cに示す第3の変形例は、第1の変形例(図7A参照)と第2の変形例(図7B参照)とが組み合わされた構成になっている。つまり、第3の変形例では、筒チャンバ1Caに切欠部1fが設けられ、さらに、サブフレーム9Cに凹部913cが設けられている。このような構成の場合、長さL1は、第1の変形例(図7A参照)と同様に、部分1eの上端から切欠部1fの上端までの上下方向の長さに等しくなる。このような構成でも、副軸受10の下端からクランク軸3の下端までの上下方向の距離L2(図3参照)よりも長さL1を短くすることで(L1<L2)、サブフレーム9Cの圧入時にクランク軸3の先端が副軸受10に当たることを防止できる。
【0053】
≪第4の変形例≫
図7Dは、第4の変形例に係るスクロール圧縮機100Dの部分的な断面図である。
図7Dに示す第4の変形例は、切欠部1fよりも所定距離だけ上側で圧入部911Dcが筒チャンバ1Daに密接している点が、第3の変形例(図7C参照)とは異なっているが、その他については第3の変形例と同様である。このような構成の場合、長さL1は、第1の変形例(図7A参照)や第3の変形例(図7C参照)と同様に、部分1eの上端から切欠部1fの上端までの上下方向の長さに等しくなる。そして、副軸受10の下端からクランク軸3の下端までの上下方向の距離L2(図3参照)よりも長さL1を短くすることで(L1<L2)、サブフレーム9Dの圧入時にクランク軸3の先端が副軸受10に当たることを防止できる。
【0054】
≪第5の変形例≫
図8は、第5の変形例に係るスクロール圧縮機100Eの部分的な断面図である。
図8に示す第5の変形例では、クランク軸3E(シャフト)に段差部3kが設けられている点が、第1実施形態(図3参照)とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。段差部3kは、クランク軸3Eにおいて副軸受10(軸受)に径方向で重なっている重なり部3mよりも下側でクランク軸3Eの外径が短くなる箇所の段差である。このような構成において、圧入部911cの上端から筒チャンバ1aの下端までの長さL1が、副軸受10の下端からクランク軸3Eの段差部3kまでの距離L2よりも短くなるようにすることが好ましい(L1<L2)。これによって、サブフレーム9の圧入時にクランク軸3Eの段差部3kの角部が副軸受10に当たることを防止できる。
なお、クランク軸3(図1参照)の下側に他の部材が設置(連結)される構成では、クランク軸3の下端の角部が「段差部」になることもある。
【0055】
≪第2実施形態≫
第2実施形態では、第1実施形態で説明したスクロール圧縮機100(図1参照)を備える空気調和機M1(冷凍サイクル装置:図9参照)について説明する。
【0056】
図9は、第2実施形態に係る空気調和機M1の構成図である。
なお、図9の実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
一方、図9の破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
空気調和機M1は、冷房や暖房等の空調を行う機器である。図9に示すように、空気調和機M1は、スクロール圧縮機100と、室外熱交換器71と、室外ファン72と、膨張弁73と、四方弁74と、室内熱交換器75と、室内ファン76と、を備えている。図9の例では、スクロール圧縮機100、室外熱交換器71、室外ファン72、膨張弁73、及び四方弁74が、室外機U1に設けられている。また、室内熱交換器75及び室内ファン76は、室内機U2に設けられている。
【0057】
スクロール圧縮機100は、ガス状の冷媒を圧縮する機器であり、第1実施形態(図1参照)と同様の構成を備えている。室外熱交換器71は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン72から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室外ファン72は、室外熱交換器71に外気を送り込むファンである。室外ファン72は、駆動源である室外ファンモータ72aを備え、室外熱交換器71の付近に設置されている。
【0058】
室内熱交換器75は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン76から送り込まれる室内空気(空調室の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室内ファン76は、室内熱交換器75に室内空気を送り込むファンである。室内ファン76は、駆動源である室内ファンモータ76aを備え、室内熱交換器75の付近に設置されている。
【0059】
膨張弁73は、「凝縮器」(室外熱交換器71及び室内熱交換器75の一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。なお、膨張弁73によって減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器71及び室内熱交換器75の他方)に導かれる。
【0060】
四方弁74は、空気調和機M1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(図9の破線矢印を参照)には、冷媒回路Q1において、スクロール圧縮機100、室外熱交換器71(凝縮器)、膨張弁73、及び室内熱交換器75(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。一方、暖房運転時(図9の実線矢印を参照)には、冷媒回路Q1において、スクロール圧縮機100、室内熱交換器75(凝縮器)、膨張弁73、及び室外熱交換器71(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。
【0061】
<効果>
第2実施形態によれば、信頼性の高いスクロール圧縮機100を空気調和機M1が備えている。これによって、空気調和機M1の信頼性を高めることができる。
【0062】
≪他の変形例≫
以上、本発明に係るスクロール圧縮機100や空気調和機M1について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、外被せ仕様のスクロール圧縮機100について説明したが、これに限らない。すなわち、内被せ仕様のスクロール圧縮機にも各実施形態を適用可能である。内被せ仕様のスクロール圧縮機では、図示はしないが、サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入され、さらに、筒チャンバ1aの下端部の内側に底チャンバ1cの上端部が嵌め込まれた状態で、筒チャンバ1aと底チャンバ1cとが溶接される。このような構成でも、第1実施形態と同様に、長さL1(図3参照)を距離L2(図3参照)よりも短くすることで(L1<L2)、サブフレーム9の圧入時にクランク軸3の先端が副軸受10に当たることを防止できる。
【0063】
また、各実施形態では、プレスフィット方式のスクロール圧縮機100について説明したが、これに限らない。すなわち、スクロール圧縮機の組付工程でサブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入されるような構成であれば、他の構成のスクロール圧縮機にも各実施形態を適用できる。
【0064】
また、各実施形態では、副軸受10としてすべり軸受が用いられる場合について説明したが、転がり軸受といった他の種類の軸受を用いることも可能である。
また、各実施形態では、サブフレーム9の挿通孔9h(図1参照)に副軸受10(図1参照)が設置される場合について説明したが、これに限らない。例えば、サブフレーム9の挿通孔9hの内周面に所定の表面加工が施されることで、挿通孔9hの内周面が副軸受として機能する場合にも各実施形態を適用できる。
また、各実施形態では、サブフレーム9が筒チャンバ1aに圧入される場合について説明したが、これに限らない。例えば、焼き嵌め等の他の方法でサブフレーム9が筒チャンバ1aに設置される場合にも、各実施形態を適用できる。
【0065】
また、各実施形態では、クランク軸3の下端に給油ピース4(遠心ポンプ:図1参照)が設置される場合について説明したが、これに限らない。例えば、給油ピース4に代えて、トロコイドポンプ(図示せず)が用いられてもよい。この場合において、トロコイドポンプがサブフレーム9に設置されるようにしてもよい。
また、各実施形態では、「密閉型圧縮機」としてスクロール圧縮機100(図1参照)が用いられる場合について説明したが、これに限らない。例えば、「密閉型圧縮機」として、ロータリ圧縮機等の他の種類の圧縮機を用いることも可能である。
また、各実施形態では、スクロール圧縮機100(図1参照)が縦置きで設置される場合について説明したが、これに限らない。例えば、スクロール圧縮機100が横置きで設置されてもよいし、また、斜め置きで設置されてもよい。このような場合、密閉容器1(図1参照)の蓋チャンバ1b側が「上側」であるものとし、また、底チャンバ1c側が「下側」であるものとする。
【0066】
また、第2実施形態で説明した空気調和機M1(図9参照)は、ルームエアコンやパッケージエアコンの他、ビル用マルチエアコンといったさまざまな種類の空気調和機に適用できる。また、第2実施形態では、スクロール圧縮機100を備える空気調和機M1(冷凍サイクル装置)について説明したが、これに限らない。例えば、冷凍機、給湯機、空調給湯装置、チラー、冷蔵庫といった他の「冷凍サイクル装置」にも第2実施形態を適用できる。
【0067】
また、各実施形態では、スクロール圧縮機100で冷媒を圧縮する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、冷媒以外の所定のガスをスクロール圧縮機100で圧縮する場合にも、各実施形態を適用できる。
【0068】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換を適宜に行うことが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0069】
1 密閉容器
1a,1Aa,1Ca,1Da 筒チャンバ
1b 蓋チャンバ
1c 底チャンバ
1e 部分(筒チャンバにおいて密接部に密接している部分)
1f 切欠部
2 圧縮機構部
3,3E クランク軸(シャフト)
3k 段差部
3m 重なり部
4 給油ピース
5 電動機
5a 固定子
5b 回転子
9,9A,9B,9C,9D サブフレーム(支持部材)
9h 挿通孔
911c.911Ac,911Bc,911Cc,911Dc 圧入部(密接部)
10 副軸受(軸受)
71 室外熱交換器
72 室外ファン
73 膨張弁
74 四方弁
75 室内熱交換器
76 室内ファン
100,100A,100B,100C,100D,100E スクロール圧縮機(密閉型圧縮機)
F1 所定領域
L1 長さ
L2 距離
L3 距離
M1 空気調和機(冷凍サイクル装置)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、
前記回転子と一体で回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、
前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、
前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、
前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、
前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、
前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差であり、
前記筒チャンバの下端を含む所定領域の内周面が径方向外側に切り欠かれてなる切欠部が設けられ、
前記長さL1は、前記部分の上端から前記切欠部の上端までの上下方向の長さである、密閉型圧縮機。
【請求項2】
密閉容器と、
固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、
前記回転子と一体で回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、
前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、
前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、
前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、
前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、
前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差であり、
前記底チャンバは、前記筒チャンバの径方向外側に嵌め込まれて、前記筒チャンバに溶接されており、
前記筒チャンバの下端から前記底チャンバの上端までの距離L3よりも前記長さL1の方が短い、密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記部分の上端から前記筒チャンバの下端までの内径が前記筒チャンバにおいて一定であり、
記長さL1は、前記部分の上端から前記筒チャンバの下端までの上下方向の長さであること
を特徴とする請求項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
密閉型圧縮機と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を含み、
前記密閉型圧縮機は、
密閉容器と、
固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、
前記回転子と一体で回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、
前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、
前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、
前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、
前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、
前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差であり、
前記筒チャンバの下端を含む所定領域の内周面が径方向外側に切り欠かれてなる切欠部が設けられ、
前記長さL1は、前記部分の上端から前記切欠部の上端までの上下方向の長さである、冷凍サイクル装置。
【請求項5】
密閉型圧縮機と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を含み、
前記密閉型圧縮機は、
密閉容器と、
固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、
前記回転子と一体で回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、
前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、
前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、
前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、
前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、
前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、
前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差であり、
前記底チャンバは、前記筒チャンバの径方向外側に嵌め込まれて、前記筒チャンバに溶接されており、
前記筒チャンバの下端から前記底チャンバの上端までの距離L3よりも前記長さL1の方が短い、冷凍サイクル装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る密閉型圧縮機は、密閉容器と、固定子及び回転子を有し、前記密閉容器に収容される電動機と、前記回転子と一体で回転するシャフトと、前記シャフトの回転に伴ってガスを圧縮する圧縮機構部と、前記シャフトの挿通孔を有する支持部材と、前記挿通孔に設置される軸受と、を備え、前記密閉容器は、円筒状の筒チャンバと、前記筒チャンバの上側を塞ぐ蓋チャンバと、前記筒チャンバの下側を塞ぐ底チャンバと、を有し、前記支持部材は、前記筒チャンバの下端付近の内周面に密接している密接部を有し、前記筒チャンバにおいて前記密接部に密接している部分の内径に等しい内径で、当該部分の上端から下側に前記筒チャンバが延びている上下方向の長さL1が、前記軸受の下端から前記シャフトの下端まで又は前記シャフトの段差部までの距離L2よりも短く、前記段差部は、前記シャフトにおいて前記軸受に径方向で重なっている重なり部よりも下側で前記シャフトの外径が短くなる箇所の段差であり、前記筒チャンバの下端を含む所定領域の内周面が径方向外側に切り欠かれてなる切欠部が設けられ、前記長さL1は、前記部分の上端から前記切欠部の上端までの上下方向の長さであることとした。
なお、その他については、実施形態の中で説明する。