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特開2023-172621三次元モデル生成装置、三次元モデル生成方法、および、三次元モデル生成プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172621
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】三次元モデル生成装置、三次元モデル生成方法、および、三次元モデル生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/579 20170101AFI20231129BHJP
   G06V 10/145 20220101ALI20231129BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G06T7/579
G06V10/145
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084563
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】500063228
【氏名又は名称】田中 成典
(71)【出願人】
【識別番号】511121768
【氏名又は名称】今井 龍一
(71)【出願人】
【識別番号】502235692
【氏名又は名称】中村 健二
(71)【出願人】
【識別番号】519113745
【氏名又は名称】Intelligent Style株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591074161
【氏名又は名称】アジア航測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】田中 成典
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄平
(72)【発明者】
【氏名】塚田 義典
(72)【発明者】
【氏名】梅原 喜政
(72)【発明者】
【氏名】中原 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】新名 恭仁
(72)【発明者】
【氏名】政木 英一
(72)【発明者】
【氏名】松林 豊
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD03
2F065FF05
2F065FF67
2F065GG02
2F065HH02
2F065HH07
2F065JJ03
2F065MM07
2F065MM26
2F065PP02
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065QQ38
2F065UU05
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA04
5L096CA17
5L096DA02
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA01
(57)【要約】
【課題】テクスチャが少ない対象物の場合であっても、より高精度な三次元点群データを容易に生成することができる三次元モデル生成装置、三次元モデル生成方法、および、三次元モデル生成プログラムを得る。
【解決手段】対象物20の三次元点群データを生成する三次元モデル生成装置であって、対象物20に対し、該対象物20の補色のコルク柄画像CSPを投影するプロジェクタ10と、プロジェクタ10により補色のコルク柄画像CSPを投影した状態で、撮影位置PhPを変えながら対象物20を撮影するカメラ12と、カメラ12で撮影された対象物20の多視点の撮影データに基づいて、該対象物20の三次元点群データを算出するPC30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対し、前記対象物の補色の特定模様を投影する投影器と、
前記投影器により前記補色の特定模様を投影した状態で、撮影位置を変えながら前記対象物を撮影する撮影器と、
前記撮影器で撮影された前記対象物の撮影データに基づいて、前記対象物の三次元点群データを算出する点群データ算出部と、
を備えることを特徴とする三次元モデル生成装置。
【請求項2】
前記補色の特定模様は、コルク柄画像であることを特徴とする請求項1に記載の三次元モデル生成装置。
【請求項3】
前記投影器は、前記対象物に対して異なる前記補色の特定模様を多方向より投影することを特徴とする請求項1に記載の三次元モデル生成装置。
【請求項4】
前記点群データ算出部は、複数の撮影位置より取得した多視点の前記撮影データにSfM/MVS処理を施すことにより、前記対象物の三次元点群データを算出することを特徴とする請求項1に記載の三次元モデル生成装置。
【請求項5】
前記対象物を撮影し、そのRGB値を算出することにより、前記対象物の補色の特定模様を自動生成する補色画像生成部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の三次元モデル生成装置。
【請求項6】
前記点群データ算出部によって取得されるタイポイント数や前記点群データ算出部によって算出される前記三次元点群データへの面フィッティング処理によるRMS誤差に基づいて、前記点群データ算出部によって算出される前記三次元点群データの品質を、投影の鮮明度として指標化する指標化部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の三次元モデル生成装置。
【請求項7】
対象物に対し、投影器により前記対象物の補色の特定模様を投影する工程と、
前記投影器により前記補色の特定模様を投影した状態で、撮影器の撮影位置を変えながら前記対象物を撮影する工程と、
前記撮影器で撮影された前記対象物の撮影データに基づいて、点群データ算出部により前記対象物の三次元点群データを算出する工程と、
を備えることを特徴とする三次元モデル生成方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の三次元モデル生成装置を、コンピュータによって実現するための三次元モデル生成プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記対象物に対し、投影器により補色の特定模様を投影した状態で、撮影器の撮影位置を変えながら撮影された前記対象物の撮影データに基づいて、前記対象物の三次元点群データを算出する点群データ算出部、
として機能させることを特徴とする三次元モデル生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定模様の投影によって、より高精度な三次元点群データ(三次元モデル)を生成するための三次元モデル生成装置、三次元モデル生成方法、および、三次元モデル生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる産業において、技術のICT(Information and Communication Technology)化が進み、特に、土木や建設などの業界にあっては、「i-Construction」の提唱により、現場の生産性向上を実現すべく各種の取り組みが行われている。
【0003】
また、さらなる取り組みとして、「建設DX(Digital Transformation)」の推奨により、現場のみでなく、全社(全業務)を挙げてのサプライチェーンの見直しの強化が図られている。
【0004】
例えば、測量の分野においては、業務の効率化につながるICT機器やツールの現場での活用を「建設DX」として捉え、高精度(高品質)に対象物を三次元モデル化した三次元点群データを建設分野の設計、施工から維持管理にまで役立てる取り組みが浸透しつつある。
【0005】
対象物の精緻な三次元モデル化はレーザスキャナを用いるのが一般的だが、近年は画像を用いたSfM(Structure from Motion)による対象物の三次元モデル化が盛んになってきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】森谷 亮太他:Structure from Motionによる効率的で高品質なas-isモデル生成のための最適撮影計画,2018年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,pp.62-63,2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は、SfMによる高品質なas-is(現況)モデルの生成において、例えば、Bundle調整から得られるカメラの位置・姿勢および三次元特徴点群のみを用いて、Dense Matching後に生成されるSfMモデルの品質を予測し、品質低下が予想される部分の改善が行える最適な撮影位置を、計算機支援により算出しようとするものであった。
【0008】
即ち、as-isモデルの品質向上のために、撮影位置の最適化による撮影画像の追加を可能としたものであるが、テクスチャ画像(例えば、ランダムドットマーカー画像)をプロジェクタにより対象物に投影したとしても、テクスチャが少ない対象物のSfMによる復元はテクスチャ画像の投影だけでは十分でないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、テクスチャが少ない対象物の場合であっても、対象物の色によらず、より高精度な三次元点群データを容易に生成することができる三次元モデル生成装置、三次元モデル生成方法、および、三次元モデル生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、対象物に対し、前記対象物の補色の特定模様を投影する投影器と、前記投影器により前記補色の特定模様を投影した状態で、撮影位置を変えながら前記対象物を撮影する撮影器と、前記撮影器で撮影された前記対象物の撮影データに基づいて、前記対象物の三次元点群データを算出する点群データ算出部と、を備えることを要旨とする。
【0011】
本発明の他の実施形態は、対象物に対し、投影器により前記対象物の補色の特定模様を投影する工程と、前記投影器により前記補色の特定模様を投影した状態で、撮影器の撮影位置を変えながら前記対象物を撮影する工程と、前記撮影器で撮影された前記対象物の撮影データに基づいて、点群データ算出部により前記対象物の三次元点群データを算出する工程と、を備えることを要旨とする。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、三次元モデル生成装置を、コンピュータによって実現するための三次元モデル生成プログラムであって、前記コンピュータを、前記対象物に対し、投影器により補色の特定模様を投影した状態で、撮影器の撮影位置を変えながら撮影された前記対象物の撮影データに基づいて、前記対象物の三次元点群データを算出する点群データ算出部、として機能させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、テクスチャが少ない対象物の場合であっても、対象物の色によらず、より高精度な三次元点群データを容易に生成することができる三次元モデル生成装置、三次元モデル生成方法、および、三次元モデル生成プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る三次元モデル生成装置の概略構成を示すもので、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib線方向の側面図である。
図2】対象物を撮影した際の画像(撮影データ)を例示する図である。
図3】三次元モデル生成装置のPCの構成例を示すブロック図である。
図4】三次元モデル生成装置の検証時の動作を説明するために示すフローチャートである。
図5】コルク柄画像(デフォルト画像)を例示する概略図である。
図6】補色のコルク柄画像を自動生成する場合を例示するフローチャートである。
図7】マネキンを対象物として、補色のコルク柄画像を自動生成する場合を例示するもので、(a)は、対象物撮影・RGB値算出の例を、(b)は、補色計算の例を、(c)は、補色コルク(柄)画像作成の例を、それぞれ示す図である。
図8】撮影データのパターンを例示する図である。
図9】RMS誤差の算出について、マネキンを対象物とした場合を例に示すもので、(a)は、比較する点群データとの位置合わせの例を、(b)は、評価箇所の切り抜き(切り抜き箇所)の例を、(c)は、曲面フィット/RMS誤差の算出例を、それぞれ示す図である。
図10】色ごとに、RMS誤差を比較した結果を例示する図である。
図11】RMS誤差の算出について、カラーコーン(登録商標)を対象物とした場合を例に示すもので、(a)は、比較する点群データとの位置合わせの例を、(b)は、評価箇所の切り抜き(切り抜き箇所)の例を、(c)は、曲面フィット/RMS誤差の算出例を、それぞれ示す図である。
図12】赤色のカラーコーン(登録商標)について、RMS誤差を比較した結果を例示する図である。
図13】タイポイント数について、赤色のマネキンを対象物とした場合を例に示すもので、(a)は、対象物投影・撮影の例を、(b)は、SfM/MVS処理の例を、(c)は、タイポイント数比較の例を、それぞれ示す図である。
図14】タイポイント数を比較する場合を例示するフローチャートである。
図15】色ごとに、タイポイント数を比較した結果を例示する図である。
図16】ごみ箱を対象物として、補色のコルク柄画像を自動生成する場合を例示するもので、(a)は、対象物撮影の例を、(b)は、RGB値算出の例を、(c)は、補色計算の例を、(d)は、補色コルク(柄)画像作成の例を、それぞれ示す図である。
図17】SfMによる点群データとレーザデータ(点群データ)との投影の法線方向の差分を求めるためのフローチャートである。
図18】SfMによる点群データとレーザデータ(点群データ)とを比較した結果を例示するもので、(a)は、SfMによる点群データであり、(b)は、FAROレーザによる点群データである。
図19】SfMによる点群データとレーザデータ(点群データ)とを比較するためのフローチャートである。
図20】点群データの断面を対比して示すもので、(a)は、視点を上面とした場合の点群データであり、(b)は、(a)のA-A′線に沿う断面図、(c)は、(a)のB-B′線に沿う断面図、(d)は、(a)のC-C′線に沿う断面図、(e)は、(a)のD-D′線,E-E′線に沿う断面図である。
図21】第2の実施形態に係る三次元モデル生成装置の概略構成を示すもので、二方向から補色のコルク柄画像の投影を行うようにした場合を例示する平面図である。
図22】タイポイント数を比較する場合を例示するフローチャートである。
図23】SfM処理の結果(高密度クラウド構築後)を例示すもので、(a)は、視点を上面とした場合の点群データであり、(b)は、(a)の(A)方向を視点とした場合の点群データ、(c)は、(a)の(B)方向を視点とした場合の点群データ、(d)は、(a)の(C)方向を視点とした場合の点群データ、(e)は、(a)の(D)方向を視点とした場合の点群データである。
図24】補色のコルク柄画像の投影有り時と投影無し時の、点群データを比較した結果を例示する図である。
図25】第3の実施形態に係る三次元モデル生成装置の適用例を示す概略図である。
図26】三次元モデル生成装置の動作を説明するためのもので、(a)は、投影面のイメージ図であり、(b)は、撮影画像である。
図27】第3の実施形態に係る三次元モデル生成装置の他の適用例を示す概略図である。
図28】損傷部位のヒートマップを求める際の動作を説明するためのもので、(a)は、粘土貼り付けのイメージ画像であり、(b)は、ヒートマップのイメージ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想(構造、配置)を具体化するための装置や方法を例示するものであって、発明の技術的思想は、下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、種々の変更を加えることができる。また、図面は模式的なものであり、装置やシステムの構成などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0016】
なお、本実施形態に係る三次元モデル生成装置においては、SfM(Structure from Motion)による高品質なas-is(現況)モデルの生成を可能とする最適撮影計画を、「建設DX(Digital Transformation)」の一環として捉え、対象物の撮影時に、該対象物の補色の特定模様(例えば、補色のコルク(柄)画像)を投影するものとして説明する。
【0017】
また、ここでは、タイポイント(SfM処理時に取得される画像間の対応点)数や、点群のばらつき具合を示すRMS(Root Mean Square)誤差などに基づいて、算出される点群データの品質を投影の鮮明度として指標化することによって、対象物の補色の特定模様の投影により生成される三次元点群データの精度を検証することが可能な構成とした場合について説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る三次元モデル生成装置の概略構成を示すもので、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib線に沿う方向の側面図である。
【0019】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の三次元モデル生成装置は、例えば、対象物20に当該対象物20の補色のコルク柄画像(特定模様)CSPをテクスチャ画像として一方向より投影するプロジェクタ(投影器)10と、補色のコルク柄画像CSPが投影された対象物20を撮影するカメラ(撮影器)12と、カメラ12により撮影された画像(撮影データ)に基づいて三次元点群データの生成や投影の鮮明度の指標化により生成される三次元点群データの精度の検証などを行うPC(Personal Computer)30と、を備えて構成されている。
【0020】
プロジェクタ10は、三次元点群データを生成する対象物20に対して、例えば対象物20までの距離が2m程度とされた、所定の投影位置PrPより補色のコルク柄画像CSPを投影するようになっている。
【0021】
カメラ12は、プロジェクタ10によって補色のコルク柄画像CSPが投影された状態において、例えば、その撮影位置PhPを徐々に横方向(一方向)に平行移動させながら、対象物20を繰り返し撮影するようになっている。
【0022】
なお、カメラ12は、例えば、投影位置PrPからの投影距離が1mほどとされた複数(多視点)の撮影位置PhPにおいて、撮影データがそれぞれ80%程度オーバーラップするようにして撮影(多重ラップ撮影)が行われる。
【0023】
また、カメラ12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)機能や9軸センサーなどを備え、各撮影データに、撮影位置PhPや撮影時の姿勢などに関する各種のパラメータを付帯させることが可能となっている。
【0024】
本実施形態においては、撮影の対象物20として、例えば図2に示すように、三角コーン20Cと、マネキン(頭部のみ)20Mと、ごみ箱20Sと、を用意し、少なくとも三角コーン20C、マネキン20M、または、ごみ箱20Sのいずれかを用いて、三次元点群データの生成と生成される三次元点群データの精度の検証とを行うものとする。また、対象物20には、位置合わせのための標定点21が貼り付けられている。対象物20としては、三角コーン20C、マネキン20M、および、ごみ箱20S以外に、塩化ビニール管(塩ビ管とも略称する)などを用いることも可能である。
【0025】
図3は、PC30の概略構成(機能ブロック)を例示するものである。
【0026】
即ち、PC30は、例えば図3に示すように、制御部30a、記憶部30b、画像入力部30c、タイポイント数比較部30d、点群データ算出部としてのSfM/MVS(Multi-View Stereo)処理部30e、補色画像生成部30f、PJ駆動部30g、面フィッティング部30h、および、RMS誤差算出部30iなどを備えている。
【0027】
なお、便宜上、図示を省略しているが、PC30としては、入力操作を行うキーボードやマウス、表示装置、または、外部との通信を行う通信装置などを備えた周知のシステムを適用できる。
【0028】
PC30において、制御部30aは、例えば、記憶部30bに記憶された各種のデータやプログラム(演算処理ソフトウエア)などにしたがって各部を制御し、三次元点群データの生成のほか、投影の鮮明度の指標化による三次元点群データの精度の検証などを行うことが可能とされている。
【0029】
なお、制御部30aは、例えばFAROの、3D方式のレーザスキャナによるレーザデータ(点群データ)の取得、または、ヒートマップの形成などが可能な構成とすることもできる。
【0030】
記憶部30bは、三次元点群データの生成に必要な各種のデータや演算処理ソフトウエアとして、例えば、市販のSfM/MVSソフトウエアなどを記憶するものである。
【0031】
また、記憶部30bには、検証のための、例えば、補色のコルク柄画像CSPを生成するための元のコルク柄画像(デフォルト画像)SPや、デフォルトのコルク柄画像SPのテクスチャ画像としての投影により生成された三次元点群データなどを記憶するようにしても良い。
【0032】
画像入力部30cは、例えば、カメラ12により撮影された対象物20の多視点の撮影データや、補色のコルク柄画像CSPを生成するための、対象物20の撮影画像などを取り込むものである。
【0033】
タイポイント数比較部30dは、周知の画像マッチング技術により自動的に取得される撮影データ間の対応点(タイポイント)の数を比較するものであって、例えば、テクスチャ画像の投影(投影有り)時と非投影(投影無し)時のタイポイント数を比較することが可能とされている。
【0034】
SfM/MVS処理部30eは、例えば、市販のSfM/MVSソフトウエアにより、対象物20の多視点の撮影データに対してSfM/MVS処理を施すもので、タイポイントの自動取得とともに、点群データとして、対象物20の三次元モデル的な形状の再現(復元)などを行うものである。
【0035】
補色画像生成部30fは、撮影画像から対象物20のRGB値を算出することによって、デフォルトのコルク柄画像SPから補色のコルク柄画像CSPを自動生成するものである。
【0036】
PJ駆動部30gは、プロジェクタ10を駆動させて、対象物20に補色画像生成部30fで生成された補色のコルク柄画像CSPを投影させるものである。
【0037】
面フィッティング部30hは、点群データを処理するための所定のソフトウエア(例えば、Cloud Compare)のフィット機能を用いて、点群データにRMS誤差を求めるための平面フィットや曲面フィットなどのフィット処理を施すものである。
【0038】
RMS誤差算出部30iは、例えば、テクスチャ画像の投影(投影有り)時と非投影(投影無し)時のRMS誤差を比較するもので、投影の鮮明度の指標化による、三次元点群データの精度の検証などを行うことが可能とされている。
【0039】
ここで、三次元モデル生成装置は、例えば、周知の自動モデリング技術(写真測量とほぼ同じ原理)により、三次元点群データを生成するものである。即ち、市販のSfM/MVSソフトウエアによって、対象物20の多視点の撮影データ間で一致する対応点を自動的に取得し、バンドル法により対応点から撮影データの撮影位置(カメラ位置)PhPや姿勢などを推定するとともに、地球上の座標として示されるカメラ位置や姿勢を基に対象物20の表面の点群データを取得して、対象物20の表面を構成する三角形メッシュを構築し、その三角形メッシュにテクスチャ画像の貼り付けなどを行うものである。
【0040】
したがって、三次元モデル生成装置のPC30としては、本来、タイポイント数比較部30d、面フィッティング部30h、および、RMS誤差算出部30iは、必須の構成ではなく、投影の鮮明度の指標化による検証用として用意されている。
【0041】
即ち、三次元モデル生成装置において、例えば、対象物20の三次元点群データを生成する場合、まずは、制御部30aが記憶部30bに記憶されたプログラムを実行することによって、補色画像生成部30fにて補色のコルク柄画像CSPが自動生成された後、PJ駆動部30gが制御される。これにより、プロジェクタ10からは、その対象物20の補色のコルク柄画像CSPが対象物20に対して投影される。
【0042】
この状態において、カメラ12の撮影位置PhPを徐々に変えながら対象物20を撮影した多視点の撮影データがPC30へと送られることにより、画像入力部30cによって取り込まれる。
【0043】
そして、複数の撮影位置PhPで撮影された多視点の撮影データは、SfM/MVS処理部30eにおいて、例えば、市販のSfM/MVSソフトウエアが実行されることにより、タイポイント数の算出や、より精密な三次元モデル化を可能とする高密度(高精細)な点群データの取得などに供される。
【0044】
このように、本実施形態に係る三次元モデル生成装置によれば、対象物20の補色のコルク柄画像CSPをテクスチャ画像として投影することによって、より高精度な三次元点群データの生成が容易に可能となる。
【0045】
また、面フィッティング部30hにおいて、点群データにフィット処理を施すことによって、RMS誤差算出部30iでのRMS誤差の算出が可能かどうかにより、生成される三次元点群データの精度を検証できる。
【0046】
図4は、三次元モデル生成装置において、投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順を説明するフローチャートである。
【0047】
図4に示すように、まずは、例えばカメラ12によって対象物20の撮影が行われることにより(ステップSt1)、制御部30aは、画像入力部30cを介して、その対象物20の撮影画像を取得する(ステップSt2)。
【0048】
次いで、記憶部30bに予め記憶されたデフォルトのコルク柄画像SPを読み出し(ステップSt3)、補色画像生成部30fにおいて、取得した対象物20の撮影画像に基づいて、対象物20の補色のコルク柄画像CSPを自動生成する(ステップSt4)。
【0049】
こうして、対象物20の補色のコルク柄画像CSPを得た後(ステップSt5)、その補色のコルク柄画像CSPを、PJ駆動部30gを介して、プロジェクタ10により対象物20に投影させる(ステップSt6)。
【0050】
次いで、対象物20にプロジェクタ10からの補色のコルク柄画像CSPを投影させた状態において、カメラ12による対象物20の多重ラップ撮影が行われる(ステップSt7)。
【0051】
そして、画像入力部30cを介して、対象物20の多視点の撮影データを得た後(ステップSt8)、SfM/MVS処理部30eにおいて、市販のSfM/MVSソフトウエアを用いてのSfM/MVS処理が行われる(ステップSt9)。これにより、対象物20がテクスチャレスな場合であっても、高精細な点群データの取得が可能となる(ステップSt10)。
【0052】
したがって、対象物20の色に関わらず、より高精度な三次元点群データの生成が容易に可能となる。
【0053】
一方、点群データの評価に際しては、例えば、ステップSt11に示すように、面フィッティング部30hおよびRMS誤差算出部30iにおいて、点群データの任意の範囲での切り抜き(ステップSt11a)、切り抜いた点群データの面フィッティング処理(ステップSt11b)、点群データと面フィッティング処理の結果とからRMS誤差の算出(ステップSt11c)が行われる。
【0054】
即ち、対象物20に、その補色のコルク柄画像CSPを投影した際の、任意の範囲の点群データと面フィッティング処理の結果とのRMS誤差を算出することによって、投影の鮮明度の指標化が可能となる。これにより、得られる三次元点群データの精度について、投影の鮮明度の指標化による検証を行うことが可能とされる。
【0055】
ここで、図5から図7(a)~(c)を参照して、対象物20の補色のコルク柄画像CSPを自動生成する場合の手順(ステップSt4)について、さらに説明する。
【0056】
図5は、デフォルトのコルク柄画像SPを例示するものであり、図6は、デフォルトのコルク柄画像SPから対象物20の補色のコルク柄画像CSPを自動生成する際の手順を示すフローチャートであり、図7(a)~(c)は、マネキン(頭部のみ)20Mを例に、補色のコルク柄画像CSPを自動生成する際の手順を示す概略図である。なお、対象物20であるマネキン20Mを、赤色のマネキン20MRと、緑色のマネキン20MGと、黄色のマネキン20MYとした場合ついて説明する。
【0057】
即ち、図5に示すデフォルトのコルク柄画像SPから対象物20の補色のコルク柄画像CSPを自動生成する場合、まずは、例えば図7(a)に示すように、各マネキン20MR,20MG,20MYの撮影画像を取得する(図6のステップSt4a)。そして、取得した撮影画像からRGB値を算出する(図6のステップSt4b)。その後、例えば図7(b)に示すように、算出したRGB値に応じて、補色計算により、各マネキン20MR,20MG,20MYの補色RGBを算出する(図6のステップSt4c)。最後に、算出した補色RGBに基づいて、例えば図7(c)に示すように、各マネキン20MR,20MG,20MYの色に対応した、補色のコルク柄画像CSP/20MR,CSP/20MG,CSP/20MYの自動生成が行われる(図6のステップSt4d)。
【0058】
これにより、対象物20が赤色のマネキン20MRの場合には、プロジェクタ10により補色のコルク柄画像CSP/20MRが、対象物20が緑色のマネキン20MGの場合には、プロジェクタ10により補色のコルク柄画像CSP/20MGが、また、対象物20が黄色のマネキン20MYの場合には、プロジェクタ10により補色のコルク柄画像CSP/20MYが、それぞれ投影されることになる。
【0059】
次に、対象物20の補色のコルク柄画像CSPの投影により生成される高精度な三次元点群データについて、具体的に検証する。
【0060】
検証1
以下は、投影の鮮明度の指標化において、例えば、複雑な形状を有するマネキン20Mを対象に、補色のコルク柄画像CSPを投影するとともに、その点群データにフィット処理を施すことによって、RMS誤差の算出が可能か否かを検証した結果について示すものである。
【0061】
ここで、三次元モデル生成装置の検証時の条件として、照度を12luxとし、カメラ12にキャノン製のEOS R5(解像度:7280×5464)を用い、例えば図1(b)に示すように、投影位置PrPから撮影位置PhPまでの投影距離を約1mに保ちつつ、その撮影位置PhPを一方向に平行移動させながら、対象物20の多視点での撮影を行った。
【0062】
また、対象物20として、赤色のマネキン20MRと緑色のマネキン20MGと黄色のマネキン20MYとを用意するとともに、プロジェクタ10にはBenQ製のMH550を用いた(例えば、投影方式はDLP、明るさは3500lm、コントラスト比は2万:1、解像度は1920×1080)。
【0063】
そして、投影位置PrPより約2m先のマネキン20MR,20MG,20MYに対し、例えば図8に示すように、投影無しパターンと、デフォルトのコルク柄画像SPの投影有りパターンと、補色のコルク柄画像CSPの投影有りパターンと、について、パターンごとに3回ずつ撮影を行った。
【0064】
図9(a)~(c)は、上記した投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順の説明において(図4のフローチャート参照)、点群データの評価を行うステップSt11での処理について、さらに説明するために示すものである。
【0065】
即ち、ステップSt11aにおいては、赤色のマネキン20MRの点群データ(パターンR1,R2,R3)の平均値を求めるために、例えば図9(a)に示すように、比較する点群データが位置合わせされた後、例えば図9(b)に示すように、評価箇所となる任意の範囲の点群データの切り抜きが行われる。その後、例えば図9(c)に示すように、ステップSt11bにおいては、面フィッティング部30hによる、切り抜いた箇所の点群データの曲面フィット処理が行われるとともに、ステップSt11cにおいては、RMS誤差算出部30iによる、点群データと曲面フィット処理の結果とからRMS誤差の算出が行われる。
【0066】
具体的な説明は省略するが、他の色のマネキン20MG,20MYについても同様にして行われる。
【0067】
図10は、RMS誤差算出部30iによって算出されたRMS誤差を比較した結果を示すもので、この結果からも明らかなように、いずれの色についても、補色のコルク柄画像CSPを投影した場合のRMS誤差(平均値)が最も小さく、高精度(高密度)であった。
【0068】
即ち、各色のマネキン20MR,20MG,20MYにそれぞれの補色のコルク柄画像CSP/20MR,CSP/20MG,CSP/20MYを投影した場合において、RMS誤差が最も小さくなることから、SfM/MVS処理により生成される点群データの、エッジの明確化、形状の乱れの軽減、点群密度の向上などが可能となり、より高精細な点群データの取得が可能となる。
【0069】
しかも、点群データの同一の個所を切り抜くことで、フィット機能を用いたRMS誤差の算出が可能であり、補色のテクスチャ画像の投影は、たとえマネキン20MR,20MG,20MYのような複雑な形状の対象物20の場合であっても、点群データのみでの投影の鮮明度の指標化を可能とするものであり、三次元点群データの精度を検証するのに有効(最適)であることが分かる。
【0070】
検証2
以下は、投影の鮮明度の指標化において、例えば図11(a)~(c)に示すように、三角コーン20Cである赤色のカラーコーン(登録商標)20CRを対象に、補色のコルク柄画像CSPを投影するとともに、その点群データにフィット処理を施すことによって、RMS誤差の算出が可能か否かを検証した結果について示すものである。
【0071】
なお、三次元モデル生成装置の検証時の条件などは、検証1の場合と同様とした。
【0072】
即ち、カラーコーン(登録商標)20CRの点群データ(パターンR1,R2,R3)の平均値を求めるために、例えば図11(a)に示すように、比較する点群データが位置合わせされた後、例えば図11(b)に示すように、評価箇所となる任意の範囲の点群データの切り抜きが行われる。その後、例えば図11(c)に示すように、面フィッティング部30hによる、切り抜いた箇所の点群データの曲面フィット処理が行われるとともに、RMS誤差算出部30iによる、点群データと曲面フィット処理の結果とからRMS誤差の算出が行われる。
【0073】
図12は、RMS誤差算出部30iによって算出されたRMS誤差を比較した結果を示すもので、この結果からも明らかなように、補色のコルク柄画像CSPを投影した場合のRMS誤差(平均値)が最も小さく、高精度(高密度)であった。
【0074】
即ち、赤色のカラーコーン(登録商標)20CRに補色のコルク柄画像CSP/20CR(図示省略)を投影した場合において、RMS誤差が最も小さくなることから、SfM/MVS処理により生成される点群データの、エッジの明確化、形状の乱れの軽減、点群密度の向上などが可能となり、より高精細な点群データの取得が可能となる。
【0075】
しかも、点群データの同一の個所を切り抜くことで、フィット機能を用いたRMS誤差の算出が可能であり、補色のテクスチャ画像の投影は、たとえカラーコーン(登録商標)20CRのような形状の対象物20の場合であっても、点群データのみでの投影の鮮明度の指標化を可能とするものであり、三次元点群データの精度を検証するのに有効(最適)であることが分かる。
【0076】
特に、検証1および検証2によれば、対象物20の色に影響されることもなく、また、レーザスキャナなどを用いずとも、十分に高精度な三次元点群データの生成を実現し得る。
【0077】
検証3
以下は、投影の鮮明度の指標化において、例えば図13(a)~(c)に示すように、赤色のマネキン20MRを対象に、補色のコルク柄画像CSPとデフォルトのコルク柄画像SPとを投影するとともに、それぞれの点群データより求められるタイポイント数を比較することによって、RMS誤差の算出が可能か否かを検証した結果について示すものである。
【0078】
なお、三次元モデル生成装置の検証時の条件などは、検証1の場合と同様とした。
【0079】
図14は、投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順を説明するフローチャートである。
【0080】
まずは、タイポイント数(パターンR1,R2,R3)の平均値を求めるために、例えば図13(a)に示すように、画像入力部30cによって、赤色のマネキン20MRに、デフォルトのコルク柄画像SPを投影した場合の撮影データと、補色のコルク柄画像CSP/20MRを投影した場合の撮影データと、が取り込まれる(ステップSt21,St22)。
【0081】
次いで、SfM/MVS処理部30eによって、それぞれの撮影データにSfM/MVS処理が施されて、例えば図13(b)に示すように、デフォルトのコルク柄画像SPを投影した場合のデフォルト三次元点群データが求められるとともに(ステップSt23,St24)、補色のコルク柄画像CSP/20MRを投影した場合の補色三次元点群データが求められる(ステップSt23,St25)。
【0082】
そして、タイポイント数比較部30dによって、例えば図13(c)に示すように、デフォルト三次元点群データ生成時に取得されるタイポイント数と補色三次元点群データ生成時に取得されるタイポイント数とが比較される(ステップSt26)。
【0083】
具体的な説明は省略するが、他の色のマネキン20MG,20MYについても同様にして行われる。
【0084】
図15は、タイポイント数を比較した結果を示すもので、この結果からも明らかなように、いずれの色についても、デフォルトの場合に比べ、補色のコルク柄画像CSPを投影した場合のタイポイント数(平均値)が増加しており、高精度(高密度)であった。
【0085】
即ち、補色のコルク柄画像CSPを投影することによって、タイポイント数を増加させることが可能となり、点群データの、曲面の表現性を向上できるとともに、表面の粗さや点のばらつきを軽減できるなど、対象物20を点群データによってより緻密に再現できるようになる。
【0086】
なお、図15において、投影無しの場合のタイポイント数が大きいのは、周囲の対象物20以外の特徴点も含まれているためと考えられる。
【0087】
このように、補色のテクスチャ画像の投影は、点群データ生成時に取得されるタイポイント数の増加を可能とするものであり、タイポイント数の増加はデータ撮影時のカメラの位置や姿勢を推定する上で有効となることから、その結果として、三次元点群データの精度を検証するのに最適であることが分かる。
【0088】
検証4
以下は、対象物20であるごみ箱20Sを対象に、補色のコルク柄画像CSPを投影するとともに、例えば3D方式のレーザスキャナによるレーザデータ(点群データ)との重ね合わせにより法線方向の差分を求めることが、投影の鮮明度の指標化において、指標として有用か否かを検証するようにした場合の結果について示すものである。
【0089】
図16(a)~(d)は、ごみ箱20Sを例に、補色のコルク柄画像CSPを自動生成する際の手順を示す概略図であり、図17は、投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順を説明するフローチャートである。なお、対象物20であるごみ箱20Sを、黄色のごみ箱20SYと、緑色のごみ箱20SGと、青色のごみ箱20SYとした場合ついて説明する。
【0090】
ここで、三次元モデル生成装置の検証時の条件としては、例えば、レーザデータ取得時の条件と一致するように、照度を18luxとし、カメラ12にキャノン製のEOS R5(解像度:7280×5464)を用い、投影位置PrPから撮影位置PhPまでの距離を約1mに保ちつつ、その撮影位置PhPを一方向に平行移動させながら、対象物20の多視点での撮影を行った。
【0091】
また、対象物20として、例えば図16(a)に示すように、黄色のごみ箱20SYと緑色のごみ箱20SGと青色のごみ箱20SBとを用意するとともに、プロジェクタ10にはBenQ製のMH550を用いた(例えば、投影方式はDLP、明るさは3500lm、コントラスト比は2万:1、解像度は1920×1080)。
【0092】
そして、投影位置PrPより約1m先のごみ箱20SY,20SG,20SBに対し、投影無しパターンと、デフォルトのコルク柄画像SPの投影有りパターンと、補色のコルク柄画像CSPの投影有りパターンと、について、パターンごとに3回ずつ撮影を行った。
【0093】
こうして、三次元モデル生成装置において、レーザデータ取得時の条件を再現させることにより、データ間の座標値(スケールなど)を一致させることができるとともに、レーザデータと点群データとを重ね合わせることが可能となる。
【0094】
即ち、ごみ箱20Sを対象に、補色のコルク柄画像CSPを用いて、投影の鮮明度の指標化を検証する場合、まずは、例えば図16(a)に示すように、各ごみ箱20SY,20SG,20SBの撮影画像を取得する(図17のステップSt51)。そして、例えば図16(b)に示すように、取得した撮影画像からRGB値を算出する。その後、例えば図16(c)に示すように、算出したRGB値に応じて、補色計算により、各ごみ箱20SY,20SG,20SBの補色RGBを算出する(図17のステップSt52)。最後に、算出した補色RGBに基づいて、例えば図16(d)に示すように、各ごみ箱20SY,20SG,20SBの色に対応した、補色のコルク柄画像CSP/20SY,CSP/20SG,CSP/20SBの自動生成が行われる(図17のステップSt53)。
【0095】
次いで、黄色のごみ箱20SYに補色のコルク柄画像CSP/20SYを投影した場合の撮影データと、緑色のごみ箱20SGに補色のコルク柄画像CSP/20SGを投影した場合の撮影データと、青色のごみ箱20SBに補色のコルク柄画像CSP/20SBを投影した場合の撮影データと、が取り込まれる(図17のステップSt54)。
【0096】
次いで、SfM/MVS処理部30eによって、それぞれの撮影データにSfM/MVS処理が施されて(図17のステップSt55)、補色のコルク柄画像CSPを投影した場合の三次元点群データが求められる(図17のステップSt56)。
【0097】
一方、この三次元点群データとは別に、既成の方法、例えば、3D方式のレーザスキャナを用いて、対象物20のレーザデータ(点群データ)の取得が行われる(図17のステップSt57)。
【0098】
次いで、三次元点群データとレーザデータとの位置合わせなどが行われた後(図17のステップSt58)、M3C2法による計算が行われて(図17のステップSt59)、投影の法線方向の差分が求められる(図17のステップSt60)。
【0099】
こうして、M3C2法によって求められる法線方向の差分は、いずれの色の場合も、補色のコルク柄画像CSPを投影した場合が最も小さく、三次元点群データが高精度となることから、例えば法線方向の差分が1cm未満となるか否かを判定することで、指標として有用と思われる。
【0100】
ただし、黄色のごみ箱20SBの場合においては、点群データの生成時に算出されるタイポイント数が増加しやすい傾向にあり、必ずしもタイポイント数が多いと差分が小さいという関係性に当てはまらない。そのため、法線方向の差分による投影の鮮明度の指標化においては、タイポイント数が増加しているか(例えば、デフォルトの1.2倍程度以上)と、法線方向の差分が小さいか(例えば、デフォルトの1/2程度)と、によって評価するのが望ましい。
【0101】
検証5
以下は、投影の鮮明度の指標化において、例えば図18(a),(b)に示すように、3D方式のレーザスキャナによる点群データ(レーザデータ)との比較により、生成される三次元点群データの精度について検証した場合の結果を示すものである。
【0102】
図19は、投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順について説明するフローチャートであり、図20(a)~(e)は、投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順について説明するための概略図である。
【0103】
ここでは、SfM処理により生成される点群データの精度を、対象物20に補色のコルク柄画像CSPを投影することによって、どの程度まで3D方式のレーザスキャナにより取得される点群データの精度に近付けることができるかを検証する。
【0104】
なお、対象物20として、赤色の三角コーン20Cと、白色のごみ箱20Sと、肌色のマネキン20Mと、灰色の塩ビ管20Eと、を用いた。
【0105】
図19に示すように、まずは、補色のコルク柄画像CSPを、プロジェクタ10により三角コーン20C、ごみ箱20S、マネキン20M、および、塩ビ管20Eに投影させた状態において、カメラ12による全方位にわたる多重ラップ撮影が行われる(ステップSt41)。
【0106】
そして、三角コーン20C、ごみ箱20S、マネキン20M、および、塩ビ管20Eの多視点の撮影データを得た後、SfM/MVS処理部30eにおいて、市販のSfM/MVSソフトウエアを用いてのSfM/MVS処理が行われる(ステップSt42)。これにより、三角コーン20C、ごみ箱20S、マネキン20M、および、塩ビ管20Eがテクスチャレスな場合であっても、例えば図18(a)に示すように、高精細な点群データの取得が可能となる(ステップSt43)。
【0107】
この後、点群データの座標値変換(ステップSt44)が行われるとともに、その一方で、例えば図18(b)に示すように、3D方式のレーザスキャナによる計測データの取得が行われる(ステップSt45)。
【0108】
そして、座標値変換された点群データと3D方式のレーザスキャナによる計測データとの重ね合わせが行われた後(ステップSt46)、三角コーン20C、ごみ箱20S、マネキン20M、および、塩ビ管20Eごとの、断面比較(ステップSt47)と、上記検証4で説明した法線方向の差分計算(ヒストグラムからの平均値および標準偏差の算出)および最近傍点間距離の算出(ステップSt48)と、密度比較(ステップSt49)と、が行われる。
【0109】
図20(a)~(e)は、ステップSt47での、断面比較の結果を例示するものである。この図からも明らかなように、補色のコルク柄画像CSPを投影させることで、三角コーン20C、ごみ箱20S、マネキン20M、および、塩ビ管20Eの各断面を、3D方式のレーザスキャナによる計測データとほぼ同程度の精度により再現できる。
【0110】
特に、ステップSt49での密度比較の結果としては、例えば、三角コーン20C、ごみ箱20S、および、マネキン20Mについて、補色のコルク柄画像CSPの投影により得られる点群データを、3D方式のレーザスキャナによる計測データと同等以上の均一性のある点群密度とすることができた。
【0111】
<第2の実施形態>
図21は、第2の実施形態に係る三次元モデル生成装置の概略構成を示すものである。なお、第1の実施形態に係る三次元モデル生成装置と共通する部分については同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0112】
図21に示すように、本実施形態の三次元モデル生成装置は、例えば、対象物20に当該対象物20の補色のコルク柄画像(特定模様)CSP1,CSP2をテクスチャ画像として二方向(多方向)より投影するプロジェクタ(投影器)10a,10bと、補色のコルク柄画像CSP1,CSP2が投影された対象物20を全方位(360度)より撮影することが可能なカメラ(撮影器)12と、カメラ12により撮影された画像(撮影データ)に基づいて三次元点群データの生成や投影の鮮明度の指標化により生成される三次元点群データの精度の検証などを行うPC(Personal Computer)30と、を備えて構成されている。
【0113】
本実施形態においては、プロジェクタ10a,10bにより、対象物20に対して、コルク柄(樹皮パターン)の異なる二種類の補色のコルク柄画像CSP1,CSP2が投影されるようになっている。
【0114】
また、各プロジェクタ10a,10bから対象物20までの投影距離は約2m程度、カメラ12による対象物20までの撮影距離は約1m程度とされて、複数(多視点)の撮影位置PhPを徐々に移動させながら、対象物20を全方位にわたって繰り返し撮影するようになっている。
【0115】
図22は、三次元モデル生成装置において、投影の鮮明度の指標化による検証を行うための手順を説明するフローチャートである。
【0116】
ここでは、三次元モデル生成装置の検証時の条件として、照度を30luxとし、カメラ12にキャノン製のEOS R5(解像度:7280×5464)を用い、撮影位置PhPから対象物20までの撮影距離を約1mに保ちつつ、その撮影位置PhPを全方位にわたって移動させながら、対象物20の多視点での撮影を行った。
【0117】
また、対象物20として、三角コーン、マネキン(頭部のみ)、ごみ箱、および、塩ビ管を用意するとともに、プロジェクタ10aにはEPSON製のEB-1780(例えば、投影方式はDLP、明るさは3000lm、コントラスト比は1万:1、解像度は1280×800)を用い、プロジェクタ10bにはEPSON製のEB-1771(例えば、投影方式はDLP、明るさは3000lm、コントラスト比は2千:1、解像度は1280×800)を用いた。
【0118】
そして、対象物20までのそれぞれの投影距離を約2mとし、二方向からの補色のコルク柄画像CSP1,CSP2の投影による点群データの生成への影響を検証することとした。
【0119】
図22に示すように、まずは、対象物20の補色のコルク柄画像CSP1,CSP2を、プロジェクタ10a,10bにより対象物20に投影させた状態において、カメラ12による対象物20の多重ラップ撮影が行われる(ステップSt31)。
【0120】
そして、対象物20の多視点の撮影データを得た後、SfM/MVS処理部30eにおいて、市販のSfM/MVSソフトウエアを用いてのSfM/MVS処理が行われる(ステップSt32)。これにより、対象物20がテクスチャレスな場合であっても、例えば図23(a)~(e)に示すように、各方向について、高精細な点群データの取得が可能となる(ステップSt33)。
【0121】
この後、点群データのスケール合わせ(ステップSt34)と位置合わせ(ステップSt35)とが行われるとともに、例えば、補色のコルク柄画像CSP1,CSP2が投影された投影有りの場合の点群データと、投影されない投影無しの場合の点群データと、のタイポイント数の比較が行われる(ステップSt36)。
【0122】
図24は、対象物20に対して、補色のコルク柄画像CSP1,CSP2が投影された投影有りの場合の点群データと、投影されない投影無しの場合の点群データと、を対比して示すものでる。
【0123】
この図からも明らかなように、投影無しの場合の点群データに比べ、点のばらつきを抑え、形状も明確に表現できるなど、投影有りの場合には、対象物の形状に近い高精度な点群データ(高密度クラウドポイント)を高密度に取得することができる。
【0124】
即ち、対象物20に対して、少なくとも二方向からコルク柄の異なる補色のコルク柄画像CSP1,CSP2を投影させることによって、点群データ生成時に取得されるタイポイント数の増加が可能となり、より高精度な三次元点群データを生成できるようになる。
【0125】
<第3の実施形態>
適用例1
図25は、第3の実施形態に係る三次元モデル生成装置の概略構成を示すもので、ここでは、道路RDの法面20HCを対象物とした場合を模擬的に示している。なお、第1の実施形態に係る三次元モデル生成装置と共通する部分については同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0126】
即ち、本実施形態の三次元モデル生成装置は、例えば図26(a),(b)に示すように、モルタルを模擬した粘土cが貼り付けられた法面20HCを対象に、補色のコルク柄画像CSPを投影するとともに、点群データの取得を行うことによって、粘土cの厚さの計測を可能としたものである。
【0127】
法面20HCの計測時の条件としては、照度を27lux(夜間)とし、カメラ12にキャノン製のEOS R5(解像度:7280×5464)を用い、例えば図25に示すように、撮影位置PhP1から法面20HCまでの撮影距離を約4mに、撮影位置PhP2から法面20HCまでの撮影距離を約0.5mに、それぞれ保ちつつ、その撮影位置PhP1,PhP2を一方向に平行移動させながら、法面20HCの多視点での撮影を行った。
【0128】
また、プロジェクタ10にはBenQ製のMH550を用い(例えば、投影方式はDLP、明るさは3500lm、コントラスト比は2万:1、解像度は1920×1080)、法面20HCまでの投影距離を約4mとした。
【0129】
本適用例1によれば、例えば、粘土有りの場合と無しの場合とについて、補色のコルク柄画像CSPを投影して点群データを取得し、その断面図および平面図を重ね合わせることによって、ほぼ実際の粘土cの厚さを計測できることが分かった。
【0130】
適用例2
なお、本実施形態においては、法面20HCを対象物とする場合に限らず、例えば図27に示すように、トンネル51内の内壁(覆工)51aを対象物として、三次元モデル生成装置によるひび割れや傷などの計測を行うことも可能である。
【0131】
即ち、トンネル51の内壁51aの計測は、例えば、路面52に沿う歩道53上にプロジェクタ10を配置し、内壁51aまでの投影距離を約6.6mとするとともに、カメラ12の撮影位置PhPから内壁51aまでの撮影距離を約6.6mに保ちつつ、プロジェクタ10の投影位置PrPと撮影位置PhPとを歩道53に沿うように一方向に移動させながら、内壁51aの撮影を連続的に行った。
【0132】
本適用例2によれば、例えば、300インチ角程度の補色のコルク柄画像CSPを繰り返し投影しながら、連続的に撮影した撮影データより点群データの生成を行うことによって、内壁51a上のひび割れや傷などの損傷部位の検出も可能である。
【0133】
なお、内壁51aの損傷部位は、例えば図28(a),(b)に示すように、過去の点群データと現在の点群データとを位置合わせし、二時期の点群データ上における差分(変位分布)として、ヒートマップHM化することも可能である。
【0134】
上記したように、各実施形態によれば、テクスチャが少ない対象物の場合であっても、対象物の色によらず、より高精度な三次元点群データを容易に生成できるようになる。
【0135】
即ち、対象物に、その補色の特定模様を投影することによって、SfMにより生成される点群データの高密度化が可能となる。したがって、レーザスキャナのような高価な機材や複雑な処理などを必要とすることなく、より高精度な三次元点群データを容易に取得することができる。
【0136】
特に、現場において、点群データの精度を、投影の鮮明度として簡単に指標化できることから、常に、最適な補色の特定模様を用いての三次元点群データの生成が可能となるものである。
【0137】
なお、補色の特定模様としては、コルク柄画像に限らず、例えば、不規則的な画像であれば種々用いることができる。
【0138】
また、プロジェクタは、汎用のPCによって別途に駆動される構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0139】
10 プロジェクタ(投影器)
12 カメラ(撮影器)
20 対象物
30 PC
30a 制御部
30d タイポイント数比較部(指標化部)
30e SfM/MVS処理部(点群データ算出部)
30f 補色画像生成部
30i RMS誤差算出部(指標化部)
CSP 補色のコルク柄画像(補色の特定模様)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28