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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172636
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/66 20060101AFI20231129BHJP
   H01H 3/42 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01H13/66
H01H3/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084587
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000236780
【氏名又は名称】不二電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】河合 光太
(72)【発明者】
【氏名】川勝 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 高司
【テーマコード(参考)】
5G025
5G206
【Fターム(参考)】
5G025AA05
5G025AA07
5G025BA04
5G025CA04
5G025CA06
5G025DA06
5G025EA01
5G025FA02
5G206AS27H
5G206AS27J
5G206AS27Z
5G206AS33H
5G206AS33J
5G206AS33Z
5G206FS01J
5G206FS23J
5G206GS21
5G206HW03
5G206HW33
5G206JS02
5G206JU39
5G206KS03
5G206KS37
5G206KU05
5G206KU13
5G206KU23
5G206NS02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】押し間違いを防止でき、耐久性が高く、かつ、押し込み方向寸法を短く設計できる押しボタンスイッチを提供する。
【解決手段】二つの接点片が接触状態又は離間状態のいずれか一方の状態で切り替わる第1接点及び第2接点と、案内面をそれぞれ有した第1カム及び第2カムと、前記押しボタンの直線運動を回転運動に変換して前記各カムに伝達する変換機構とを具備し、前記第1接点の一方の接点片が、回転する前記第1カムの案内面に追従動作し、この第1接点を切り替えるように構成し、前記第2接点の一方の接点片が、回転する前記第2カムの案内面に追従動作し、この第2接点を切り替えるように構成し、前記押しボタンを押し込む過程において、前記第1カムによって引き起こされる前記押しボタンの押し込み負荷増加量よりも、前記第2カムによって引き起こされる前記押しボタンの押し込み負荷増加量の方が大きくなるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの接点片が接触状態又は離間状態のいずれか一方の状態である切替前状態と他方の状態である切替後状態との間で切り替わる第1接点及び第2接点と、
前記第1接点及び前記第2接点のいずれもが切替前状態になる初期位置から所定方向への押し込み動作により、前記第1接点が切替後状態になる第1接点位置、前記第2接点が切替後状態になる第2接点位置へ順次直線移動可能に設けられた押しボタンと、
案内面をそれぞれ有した第1カム及び第2カムと、
前記押しボタンの直線運動を回転運動に変換して前記各カムに伝達する変換機構とを具備し、
前記第1接点の一方の接点片が、回転する前記第1カムの案内面に追従動作し、前記第1接点位置において、この第1接点を切り替えるように構成されており、
前記第2接点の一方の接点片が、回転する前記第2カムの案内面に追従動作し、前記第2接点位置において、この第2接点を切り替えるように構成されており、
前記押しボタンを押し込む過程において、前記第1接点位置の手前で前記第1カムによって引き起こされる前記押しボタンの押し込み負荷増加量よりも、前記第2接点位置の手前で前記第2カムによって引き起こされる前記押しボタンの押し込み負荷増加量の方が大きくなるように構成されていることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記第1カムの案内面(以下、第1案内面ともいう。)に当接する第1従動節及びこの第1従動節を前記第1案内面へ付勢する第1弾性体と、
前記第2カムの案内面(以下、第2案内面ともいう。)に当接する第2従動節及びこの第2従動節を前記第2案内面へ付勢する第2弾性体とをさらに備え、
前記第1従動節に前記第1接点の一方の接点片が設けられており、
前記第2従動節に前記第2接点の一方の接点片が設けられている請求項1記載の押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記第2案内面には、前記第2接点位置の手前での押し込み負荷の増加を引き起こす第2凸部が形成されており、この第2凸部は、前記第2従動節が付勢方向と反対方向へ移動しなければ乗り越えられない高さのものであり、
前記第1案内面には、前記第1接点位置の手前での押し込み負荷の増加を引き起こす第1凸部が形成されており、この第1凸部は、前記第2凸部よりも低いものである請求項2記載の押しボタンスイッチ。
【請求項4】
前記第1凸部は、前記第1従動節が付勢方向と反対方向へ移動せずとも乗り越えられる高さのものである請求項3記載の押しボタンスイッチ。
【請求項5】
前記第1従動節が前記第1凸部を乗り越えたときに、前記第1カムが同一方向に一定角度空転するように構成されており、この空転によって、前記第1弾性体から付勢されている当該第1従動節が急動し、前記第1接点の一方の接点片が他方の接点片に衝突して報知するように構成されている請求項3記載の押しボタンスイッチ。
【請求項6】
前記第2従動節が前記第2凸部を乗り越えたときに、前記第2カムが同一方向に一定角度空転するように構成されており、この空転によって、前記第2弾性体から付勢されている当該第2従動節が急動し、前記第2接点の一方の接点片が他方の接点片に衝突して報知するように構成されている請求項5記載の押しボタンスイッチ。
【請求項7】
前記変換機構は、前記各カムを支持する回転軸を備えており、
前記各カムが、前記一定角度の範囲で前記回転軸に正逆回転可能に支持されている請求項6記載の押しボタンスイッチ。
【請求項8】
前記第1カムの前記一定角度よりも前記第2カムの前記一定角度の方が大きい請求項6記載の押しボタンスイッチ。
【請求項9】
自然状態において、前記押しボタンを前記初期位置に戻すための第3弾性体をさらに備えている請求項1乃至8記載の押しボタンスイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年旅客車両において、乗客乗降時の事故を防止すべく、扉を開閉する前に警告音を鳴らして乗客に注意喚起することが義務付けられた。これに伴って旅客車両には、乗降スイッチとして扉開閉スイッチに加えてもう一つ発報スイッチが設置されるようになった。
【0003】
ところが、発報スイッチが新たに加わったことで、特に鉄道車両では、乗降時の操作ミスが目立つようになった。その理由は次のとおりである。
【0004】
すなわち、鉄道車両は、扉の数が多く、かつ、駆け込み乗車など急な乗降も多い。そこで、車掌は、全ての扉を見渡せる乗務員室の窓から顔を出し、かつ、扉を閉めるまで扉付近を注視しながら乗降スイッチを操作する。つまり、車掌は、乗降中に乗降スイッチを見ていない。このため、発報スイッチが加わったことで、車掌は、発報スイッチを操作した後、その次に操作する扉開閉スイッチを手探りで探さなければならなくなった。
【0005】
また、鉄道車両は、乗降が頻繁に行われる。このため、乗降スイッチには、車掌の負担を軽減すべく、操作が簡単な押しボタンタイプのものが採用されることが多い。ところが、この押しボタンスイッチは、手で握ったり指で摘まんだりしなくても操作できるため、手探りで探す場合、例え形状を変えたとしてもその違いに気付き難い。これらの理由により、スイッチの押し間違えが起こり易くなったからである。
【0006】
なお、鉄道車両は、運営会社毎に統一性があり、乗降スイッチも同じタイプのスイッチで統一されている。このため、乗降スイッチを使い慣れたタイプから別のタイプに変えることは非常に嫌われる。
【0007】
このため、出願人は、押しボタンタイプでありながら操作ミスを防止できるスイッチの開発を進めた。そして、その開発の中で、例えば特許文献1に開示された従来の押しボタンスイッチのように、押しボタンの押し込み量に応じて順次別の接点が開閉する構成にすれば、押しボタンから手を離すことなく、一連の乗降操作を行うことができることに気が付いた。
【0008】
しかしながら、前記従来の押しボタンスイッチを乗降スイッチに適用すると、次の問題が生じる。
【0009】
すなわち、この押しボタンスイッチを乗降スイッチに使用した場合、押しボタンを一気に最後まで押し込むと、警告音が鳴った直後に扉が閉まってしまい非常に危険である。このため、前記従来の押しボタンスイッチでは、警告音を鳴らした後、一時的に押し込み動作を止めることができるように、両接点が開閉するタイミングを板バネの反発力を利用して報知するように構成されている。しかし、板バネは、耐久性が低く直ぐにへたってしまうため、鉄道車両の乗降スイッチのように使用頻度が高いスイッチには向かない。
【0010】
また、近年鉄道車両は、乗車定員を増やすため、乗務員室の省スペース化が進んでおり、操作台もスリム化が進み奥行きが狭くなっている。ところが、前記従来の押しボタンスイッチは、押しボタンに対し二つの接点が直列に配置された構造になっており、押し込み方向寸法が長く、奥行きが狭い操作台に設置できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2-192630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、前記各問題を一挙に解決すべく、押しボタンタイプのスイッチでありながら、押し間違いを防止でき、耐久性が高く、かつ、押し込み方向寸法を短く設計できる押しボタンスイッチを提供することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る押しボタンスイッチは、二つの接点片が接触状態又は離間状態のいずれか一方の状態である切替前状態と他方の状態である切替後状態との間で切り替わる第1接点及び第2接点と、前記第1接点及び前記第2接点のいずれもが切替前状態になる初期位置から所定方向への押し込み動作により、前記第1接点が切替後状態になる第1接点位置、前記第2接点が切替後状態になる第2接点位置へ順次直線移動可能に設けられた押しボタンと、案内面をそれぞれ有した第1カム及び第2カムと、前記押しボタンの直線運動を回転運動に変換して前記各カムに伝達する変換機構とを具備し、前記第1接点の一方の接点片が、回転する前記第1カムの案内面に追従動作し、前記第1接点位置において、この第1接点を切り替えるように構成されており、前記第2接点の一方の接点片が、回転する前記第2カムの案内面に追従動作し、前記第2接点位置において、この第2接点を切り替えるように構成されており、前記押しボタンを押し込む過程において、前記第1接点位置の手前で前記第1カムによって引き起こされる前記押しボタンの押し込み負荷増加量よりも、前記第2接点位置の手前で前記第2カムによって引き起こされる前記押しボタンの押し込み負荷増加量の方が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
このような構成によれば、押しボタンを所定方向に押し込むだけで異なる二つの接点が順次切り替わるので、例えば一連の乗降操作を押しボタンから手を離すことなく行える。その結果、スイッチの押し間違いを防止できる。また、第1接点位置の手前における押し込み負荷増加量よりも第2接点位置の手前における押し込み負荷増加量の方が大きいので、第1接点位置と第2接点位置との間で手応えが大きく変わる。その結果、操作者が、第2接点位置の手前で押し込み動作を止め易くなり、一気に第2接点位置まで押し込む操作ミスを防止できる。また、押しボタンの直線運動を機械式のリンク機構によって伝達する構成としたので、耐久性が高くなる。その結果、使用頻度が高いスイッチに使用してもへたり難くなる。また、押しボタンの直線運動を回転運動に変換して伝達しているので、両接点を押しボタンと直列に設置しなくてもよくなり、押し込み方向寸法を短く設計できる。その結果、奥行きが狭いスペースにも設置できる。
【0015】
また、前記第1カムの案内面(以下、第1案内面ともいう。)に当接する第1従動節及びこの第1従動節を前記第1案内面へ付勢する第1弾性体と、前記第2カムの案内面(以下、第2案内面ともいう。)に当接する第2従動節及びこの前記第2従動節を前記第2案内面へ付勢する第2弾性体とをさらに備え、前記第1従動節に前記第1接点の一方の接点片が設けられており、前記第2従動節に前記第2接点の一方の接点片が設けられているものであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、両従動節を直接接点に設けたので、部品点数が減り、構造を簡略化できる。その結果、小型化でき、設計も容易となる。
【0017】
また、前記第2案内面には、前記第2接点位置の手前での押し込み負荷の増加を引き起こす第2凸部が形成されており、この第2凸部は、前記第2従動節が付勢方向と反対方向へ移動しなければ乗り越えられない高さのものであり、前記第1案内面には、前記第1接点位置の手前での押し込み負荷の増加を引き起こす第1凸部が形成されており、この第1凸部は、前記第2凸部よりも低いものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、両案内面の形状を変更するだけで、押し込み負荷の増加量を変更できる。その結果、設計が容易となる。
【0019】
また、前記第1凸部は、前記第1従動節が付勢方向と反対方向へ移動せずとも乗り越えられる高さのものであってもよい。
【0020】
このような構成によれば、両カムで引き起こされる押し込み負荷増加量の違いが大きくなる。これにより、操作者が、第2接点位置の手前に達したことをより明確に感知できる。その結果、一気に第2接点位置まで押し込む操作ミスを防止できる。
【0021】
また、前記第1従動節が前記第1凸部を乗り越えたときに、前記第1カムが同一方向に一定角度空転するように構成されており、この空転によって、前記第1弾性体から付勢されている当該第1従動節が急動し、前記第1接点の一方の接点片が他方の接点片に衝突して報知するように構成してもよい。
【0022】
このような構成によれば、第1接点の一方の接点片が他方の接点片に衝突したとき、すなわち、第1接点位置に達したときに、両接点片の衝突によって音又は振動が生じる。これにより、操作者は、第1接点位置に達したことを知覚できる。その結果、操作者が、第2接点位置の手前で押し込み動作を止め易くなる。また、専用部品を追加しなくても報知できるので、構造を簡略化できる。その結果、小型化でき、製造コストも抑えられる。
【0023】
また、前記第2従動節が前記第2凸部を乗り越えたときに、前記第2カムが同一方向に一定角度空転するように構成されており、この空転によって、前記第2弾性体から付勢されている当該第2従動節が急動し、前記第2接点の一方の接点片が他方の接点片に衝突して報知するように構成してもよい。
【0024】
このような構成によれば、第2接点の一方の接点片が他方の接点片に衝突したとき、すなわち、第2接点位置に達したときに、両接点片の衝突によって音又は振動が生じる。これにより、操作者は、第2接点位置に達したことを知覚できる。また、専用部品を追加しなくても報知できるので、構造を簡略化できる。その結果、小型化でき、製造コストも抑えられる。
【0025】
また、前記変換機構は、前記各カムを支持する回転軸を備えており、各カムには前記回転軸が挿通する挿通孔が形成されており、この挿通孔の形状によって、前記各カムが、前記一定角度の範囲で前記回転軸に正逆回転可能に支持してもよい。
【0026】
このような構成によれば、簡単な構造で報知できる。
【0027】
第2接点が第1接点よりも後で切り替わるようにするための具体的な態様としては、前記第1カムの前記一定角度よりも前記第2カムの前記一定角度の方が大きくすればよい。
【0028】
このような構成によれば、簡単な構造でタイミングをずらすことができる。
【0029】
また、自然状態において、前記押しボタンを前記初期位置に戻すための第3弾性体をさらに備えているものであってもよい。
【0030】
このような構成によれば、押しボタンを押した後、手を放すだけで初期位置に戻るようになる。ここで、自然状態とは、押しボタンが押されていない状態のことである。
【発明の効果】
【0031】
このように本発明に係る押しボタンスイッチであれば、押しボタンタイプのスイッチでありながら押し間違いを防止でき、耐久性が高く、かつ、押し込み方向の全長を短く設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態の押しボタンスイッチを模式的に示す斜視図。
図2】実施形態の押しボタンスイッチの第1接点周りを模式的に示す正面図。
図3】実施形態の押しボタンスイッチの第2接点周りを模式的に示す正面図。
図4】実施形態の押しボタンスイッチの変換機構を模式的に示す正面図。
図5】実施形態の押しボタンスイッチの第1接点周りの動作を模式的に示す説明図。
図6】実施形態の押しボタンスイッチの第2接点周りの動作を模式的に示す説明図。
図7】実施形態の押しボタンスイッチの押しボタンの位置と押し込み負荷との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施形態に係る押しボタンスイッチについて図1図7を参照しながら説明する。
【0034】
<実施形態> 本実施形態の押しボタンスイッチ100は、図1図4に示すように、筐体Hと、第1接点10及び第2接点20と、押しボタンBと、変換機構30、第1カム機構40、第2カム機構50とを備えている。なお、本実施形態の押しボタンスイッチ100は、鉄道車両の乗降時に使用されるものであるが、これに限定されない。例えば乗降時以外で使用されるものであってもよく、鉄道車両以外の車両やその他の機器に使用されるものであってもよい。
【0035】
前記筐体Hは、略立方体状のものであり、内部空間を有している。筐体Hの所定面には、取付孔hが貫通している。
【0036】
前記第1接点10は、図2に示すように、筐体H内に設置されてり、乗降時に警告音を鳴らすための発報装置(図示せず)に接続される。第1接点10は、第1固定接点片11と、第1固定接点片11と接触・離間する第1可動接点片12とを備えている。そして、両接点片11,12が、接触状態と離間状態との間で切り替わることで発報装置が作動する。本実施形態では、離間状態から接触状態に切り替わることで発報装置が作動する。なお、第1可動接点片12が、請求項における一方の接点片に該当し、第1固定接点片11が、請求項における他方の接点片に該当する。
【0037】
前記第2接点20は、図3に示すように、筐体H内に設置されてり、乗降時に扉を開閉するための扉開閉装置(図示せず)に接続される。第2接点20は、第1接点10と並列させて設置されている。第2接点20は、第2固定接点片21と、第2固定接点片21と接触・離間する第2可動接点片22とを備えている。そして、両接点片21,22が、接触状態と離間状態との間で切り替わることで扉開閉装置が作動する。本実施形態では、離間状態から接触状態に切り替わることで扉開閉装置が作動する。なお、第2可動接点片22が、請求項における一方の接点片に該当し、第2固定接点片21が、請求項における他方の接点片に該当する。
【0038】
前記押しボタンBは、図1に示すように、棒状のものであり、取付孔hに挿し込んで筐体Hに取り付けられている。押しボタンBは、取付孔hから外方へ突出する一端を所定方向(押し込み方向)へ押し込むことで直線運動可能になっている。なお、押しボタンBは、第1接点10及び第2接点20と並列するように配置されている。したがって、押しボタンB、第1接点10及び第2接点20は、所定方向と直交する方向に並列している。
【0039】
そして、前記押しボタンBは、所定方向への押し込み動作により、第1接点10及び第2接点20を順次切り替える。具体的には、押しボタンBは、第1接点10及び第2接点20のいずれもが離間状態である初期位置から所定方向への押し込み動作により、第1接点10のみが接触状態となる第1接点位置、第1接点10及び第2接点20のいずれもが接触状態となる第2接点位置へ順次直動する。
【0040】
前記変換機構30は、押しボタンBの押し込み動作を回転運動に変換するものであり、具体的には所謂スライダクランク機構である。変換機構30は、図4に示すように、筐体H内に回転可能に設置された回転軸31と、回転軸31とともに回転するクランク32と、クランク32と押しボタンBとを連結するロッド33とを備えている。以下において、押しボタンBの押し込み時における回転軸31の回転を正回転(図中、時計回り)とする。なお、変換機構30は、スライダクランク機構に限定されない。
【0041】
前記第1カム機構40は、図2に示すように、変換機構30と第1可動接点片12との間に介在し、回転軸31の回転運動を直線運動に変換して第1可動接点片12に伝達するものである。第1カム機構40は、第1案内面41aを有する第1カム41と、回転する第1カム41の第1案内面41aに追従動作する第1従動節42と、第1従動節42を第1案内面41aへ付勢する第1弾性体43とを備えている。
【0042】
前記第1カム41は、板カムであり、回転中心から側面に設けられる周面までの距離が一定ではない偏心形状を有する。この周面が、第1案内面41aになる。第1カム41は、回転軸31に遊びを持たせて支持されている。具体的には、第1カム41は、回転中心を幅方向に貫通する第1挿通孔41hを有しており、この第1挿通孔41hに挿し込まれた回転軸31に支持されている。第1挿通孔hの内周面は、回転軸31が正回転した場合に接触する第1正回転面41xと、逆回転した場合に接触する第1逆回転面41yとを有している。そして、第1カム41は、回転軸31が第1正回転面41x又は第1逆回転面41yのいずれか一方に接触した状態から一定角度空転した後、他方に接触する。つまり、第1カム41は、回転軸31に一定角度αの範囲で空転可能に支持されている。そして、前記第1カム41は、初期位置で第1逆回転面41yが回転軸31に接触している。
【0043】
前記第1従動節42は、棒状のものであり、第1案内面41aに当接する先端部が先細り状に形成されている。そして、第1従動節42の他端部には、第1可動接点片12が固定されている。第1従動節42は、第1可動接点片12の第1固定接点片11側を向く面に固定されている。
【0044】
前記第1弾性体43は、コイルバネである。第1弾性体43は、第1従動節42と筐体Hの間に保持されている。本実施形態では、第1従動節42に固定された第1可動接点片12と筐体Hとの間に保持されている。そして、第1弾性体43は、自然状態で圧縮されており、その反発力によって第1従動節42を第1案内面41aへ付勢している。なお、第1弾性体43は、コイルバネに限定されない。
【0045】
前記第2カム機構50は、図3に示すように、変換機構30と第2可動接点片22との間に介在し、回転軸31の回転運動を直線運動に変換して第2可動接点片22に伝達するものである。第2カム機構50は、第2案内面51aを有する第2カム51と、回転する第2カム51の第2案内面51aに追従動作する第2従動節52と、第2従動節52を第2案内面51aへ付勢する第2弾性体53とを備えている。
【0046】
前記第2カム51は、板カムであり、回転中心から側面に設けられる周面までの距離が一定ではない偏心形状を有する。この周面が、第2案内面51aになる。第2カム51は、回転軸31に遊びを持たせて支持されている。具体的には、第2カム51は、回転中心を幅方向に貫通する第2挿通孔51hを有しており、この第2挿通孔51hに挿し込まれた回転軸31に支持されている。第2挿通孔51hの内面には、回転軸31が正回転した場合に接触する第2正回転面51xと、逆回転した場合に接触する第2逆回転面51yとを有している。そして、第2カム51は、回転軸31が第2正回転面51x又は第2逆回転面51yのいずれか一方に接触した状態から一定角度空転した後、他方に接触する。つまり、第2カム51は、回転軸31に一定角度βの範囲で空転可能に支持されている。そして、第2カム51は、初期位置で第2逆回転面51yが回転軸31に接触している。したがって、第2カム51及び第1カム41は、初期位置で位相が一致しており、回転軸31に対する空転によって位相がずれるようになっている。
【0047】
ここで、前記一定角度βは、一定角度αよりも大きく設定されている。したがって、第2カム51は、第1カム41よりも遅く回転し始める。より具体的には、回転軸31が初期位置から第1接点位置までに回転する角度を第1接点角度γとした場合、一定角度βは、この第1接点角度γよりも大きく設定されている。したがって、第2カム51は、第1接点位置を過ぎてから回転し始める。
【0048】
前記第2従動節52は、棒状のものであり、第2案内面51aに当接する先端部が先細り状に形成されている。そして、第2従動節52の他端部には、第2可動接点片22が固定されている。第2従動節52は、第2可動接点片22の第2固定接点片21側を向く面に固定されている。
【0049】
前記第2弾性体53は、コイルバネであり、第1弾性体43と同一長さ及び同一弾性率を有している。第2弾性体53は、第1従動節52と筐体Hの間に保持されている。本実施形態では、第2従動節52に固定された第2可動接点片22と筐体Hとの間に保持されている。そして、第2弾性体53は、自然状態で圧縮されており、その反発力によって第2従動節52を第2案内面51aへ付勢している。なお、第2弾性体53は、コイルバネに限定されない。
【0050】
しかして、本実施形態の押しボタンスイッチ100は、初期位置から第2接点位置まで押し込み負荷の線形的な増加を引き起こす第3弾性体60をさらに備えている。また、第1案内面41aには、第1接点位置の手前での押し込み負荷の増加を引き起こす第1凸部41bが形成されており、第2案内面51aには、第2接点位置の手前での押し込み負荷の増加を引き起こす第2凸部51bが形成されている。なお、図7の押し込み負荷は、第3弾性体60、第1凸部41b及び第2凸部51bで引き起こされる押し込み負荷の合算を示している
【0051】
前記第3弾性体60は、図1に示すように、コイルバネであり、第1弾性体43及び第2弾性体53よりも弾性率が大きい。第3弾性体60は、筐体Hと押しボタンBとの間に介在するコイルバネであり、押しボタンBを所定方向と反対方向へ付勢する。第3弾性体60は、押しボタンBの一端部と筐体Hの所定面との間に挟まれ圧縮されている。そして、第3弾性体60は、自然状態において、押しボタンBを初期位置に戻す。したがって、初期位置から手が離されるまでの間、第3弾性体60は、常に押しボタンBを押し返し、押し込み負荷の線形的な増加を引き起こす。
【0052】
前記第1凸部41bは、第1従動節42が付勢方向と反対方向へ移動せずとも乗り越えられる高さになっている。これに対し、前記第2凸部51bは、第2従動節52が付勢方向と反対方向へ移動しなければ乗り来られない高さになっている。ここで、第1案内面41aの形状と第2案内面51aの形状とは、これら凸部41b,51bの形状以外は一致している。
【0053】
次に、本実施形態に係る押しボタンスイッチの動作を説明する。なお、図5は、第1接点10周りの動作を時系列に示し、図6は、第2接点20周りの動作を時系列に示している。そして、図5及び図6の括弧内の数は、図7の数値と互いに対応関係にあり、押しボタンBの位置を示している。なお、(0)は初期位置、(3)は第1接点位置、(6)は第2接点位置をそれぞれ示している。
【0054】
初期位置では、図5(0)及び図6(0)に示すように、回転軸31が、両カム41,51の逆回転面41y,51yにそれぞれ接触している。また、両従動節42,52は、それぞれ案内面41a,51aへ付勢されている。
【0055】
次に、押しボタンBを初期位置から押し込むと、図5(1)に示すように、回転軸31が、第1カム41に対して一定角度αだけ空転して第1正回転面41xに接触し、その後第1カム41とともに回転し始める。
【0056】
さらに押し込むと、図5(2)に示すように、第1従動節42が、回転する第1カム41に追従動作して第1凸部41bを乗り越えようとする。この時、第1従動節42は、第1凸部41bが低いことから、付勢方向と反対方向へ移動しなくとも乗り越えられ、第1弾性体43を縮めない。このため、第1従動節42が第1凸部41bを乗り越える途中、すなわち、第1接点位置の手前で、第1カム41による押し込み負荷の増加は殆ど引き起こされない。
【0057】
さらに押し込むと、図5(3)に示すように、第1従動節42が第1凸部41bを乗り越えた瞬間、第1カム41は、回転軸31に対して正回転方向へ空転し、これに伴って第1従動節42が、付勢方向へ急動する。その結果、第1可動接点片12が、第1固定接点片11に勢い良く衝突して音や振動が生じ、発報装置が作動する。なお、操作者は、この音や振動によって第1接点位置に達したことを感知できる。また、第1従動節42は、第1案内面41bに届かなくなり、第1接点位置からさらに押し込まれても、図5(7)に示すように、この状態が維持される。したがって、第1接点位置以降は、第1カム41による押し込み負荷の増加は引き起こされない。
【0058】
一方、初期位置から第1接点位置までの間、回転軸31は、第2カム51に対して空転し続ける。このため、初期位置から第1接点位置までの間における押し込み負荷の増加は、殆ど第3弾性体60のみによって引き起こされ、略線形となる(図7参照)。
【0059】
次に、第1接点位置からさらに押し込むと、図6(4)に示すように、回転軸31が、第2カム51に対して初期位置から一定角度βだけ空転して第2正回転面51xに接触し、その後第2カム51とともに回転し始める。
【0060】
さらに押し込むと、図6(5)に示すように、第2従動節52が、回転する第2カム51に追従動作して第2凸部51bを乗り越えようとする。この時、第2従動節52は、第2凸部51bが高いことから、付勢方向と反対方向へ移動しながら乗り越え、第2弾性体53を縮める。このため、第2従動節52が第2凸部51bを乗り越える途中、すなわち、第2接点位置の手前で、第2カム51による押し込み負荷の急増が引き起こされる。詳述すると、第2弾性体53は、縮む(図6中、「A」「B」の長さ参照)それに伴って反発力が増加する。このため、第2従動節52は、第2弾性体53をこの増加する反発力に抗して押さなければならず、これにより、押し込み負荷の急激な増加が引き起こされる。したがって、第2接点位置の手前では、第3弾性体60による押し込み負荷の線形的な増加に加えて、第2カム51による押し込み負荷の急増が引き起こされる。このため、操作者は、押し込み負荷の急激な増加を手応えとして感知し、一旦押し込み動作を止める。
【0061】
続いて、乗降がないことを確認し、さらに押し込むと、図6(6)に示すように、第2従動節52が第2凸部51bを乗り越えた瞬間、第2カム51は、回転軸31に対して正回転方向へ空転し、これに伴って第2従動節52が、付勢方向へ急動する。その結果、第2可動接点片22が、第2固定接点片21に勢い良く衝突して音や振動が生じ、扉開閉装置が作動する。なお、操作者は、この音や振動によって第2接点位置に達したことを感知できる。また、第2従動節52は、第2案内面51bに届かなくなり、第2接点位置からさらに押し込まれても、図6(7)に示すように、この状態が維持される。したがって、第2接点位置以降は、第2カム51による押し込み負荷の増加は起こらない。
【0062】
そして、押しボタンBから手を離すと、押しボタンBは、第3弾性体60に押し返されて初期位置へ戻る。
【0063】
本実施形態の押しボタンスイッチ100によれば、押しボタンBを所定方向に押し込むだけで第1接点10及び第2接点20を順次切り替えられる。このため、押しボタンBから手を離すことなく発報装置及び扉開閉装置を順次操作できる。その結果、スイッチの押し間違いを防止できる。また、第1接点位置の手前における押し込み負荷増加量よりも第2接点位置の手前における押し込み負荷増加量の方が大きいので、第1接点位置と第2接点位置との間で手応えが大きく変わる。その結果、操作者が、第2接点位置の手前で押し込み動作を止め易くなり、一気に第2接点位置まで押し込む操作ミスを防止できる。また、押しボタンBの直線運動をスライダクランク機構及びカム機構によって伝達する構成としたので、耐久性が高くなる。また、押しボタンBの直線運動を回転運動に変換し、両接点を押しボタンと並列に設置したので、押し込み方向寸法が短くなる。その結果、奥行きが狭いスペースにも設置できる。また、両カム41,51の位相を回転軸31に対する空転でずらし、初期位置における位相を一致させたので、凸部41b、51bの設計が容易となる。
【0064】
<その他の実施形態> 前記実施形態では、第1凸部を第1従動節が付勢方向と反対方向へ移動せずとも乗り越えられる高さとしたが、第2凸部よりも低ければ、第1従動節が付勢方向と反対方向へ移動しなければ乗り越えられない高さにしてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、変換機構をスライダクランク機構としたが、直線運動を回転運動に変換できるものであればよく、例えばラックアンドピニオン機構であってもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、両従動節が対応する凸部を乗り越え始めるタイミングを、両カムの回転軸に対する空転によってずらしているが、例えば両カムを回転軸に対して位相をずらして支持することでずらしてもよい。この場合、両カムは、初期位置における位相がずれることになる。
【0067】
また、前記実施形態では、第1接点及び第2接点のいずれも離間状態から接触状態に切り替わるようにしたが、接触状態から離間状態に切り替わるようにしてもよく、また、一方が接触状態から離間状態に切り替わり、他方が離間状態から接触状態に切り替わるようにしてもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、両案内面の凸部以外の形状を一致させたが、一致させなくてもよい。但し、一致させた方が、両凸部の形状に違いを出すだけで、押し込み負荷の増加量に違いを出せるので、設計し易い。
【0069】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや、変形等を行っても構わない。
【符号の説明】
【0070】
100:押しボタンスイッチ
H :筐体
10 :第1接点
11 :第1固定接点片(他方の接点片)
12 :第1可動接点片(一方の接点片)
20 :第2接点
21 :第2固定接点片(他方の接点片)
22 :第2可動接点片(一方の接点片)
B :押しボタン
30 :変換機構
40 :第1カム機構
41 :第1カム
41a:第1案内面
41b:第1凸部
41h:第1挿通孔
42 :第1従動節
43 :第1弾性体
50 :第2カム機構
51 :第2カム
51a:第2案内面
51b:第2凸部
51h:第2挿通孔
52 :第2従動節
53 :第2弾性体
60 :第3弾性体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7