(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172642
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】線材スタイル取り構造および線材スタイル取り方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/08 20060101AFI20231129BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20231129BHJP
H05K 7/00 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
H02G3/08 030
H02G3/22
H05K7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084595
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏之
【テーマコード(参考)】
4E352
5G361
5G363
【Fターム(参考)】
4E352AA01
4E352BB02
4E352CC01
4E352DD05
4E352DR02
4E352DR45
4E352FF07
4E352GG12
5G361AA06
5G361AC03
5G361AC09
5G361AD01
5G363AA07
5G363AA16
5G363BA01
5G363CB01
(57)【要約】
【課題】スタイル取りの作業性を向上すること。
【解決手段】コネクタ(第一固定部)6と接続部(第二固定部)5Aとに亘って設けられる線材7と、線材7と共にコネクタ6および接続部5Aを収容する筐体2を構成する前板(板部材)2Fと、前板2Fに設けられコネクタ6と接続部5Aとの間に挿入されて線材7に当接可能な舌片8と、舌片8の線材7に当接する先端に設けられ、舌片8の挿入に際して線材7に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端8Aと、を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一固定部と第二固定部とに亘って設けられる線材と、
前記線材と共に前記第一固定部および前記第二固定部を収容する筐体を構成する板部材と、
前記板部材に設けられ前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入されて前記線材に当接可能な舌片と、
前記舌片の前記線材に当接する先端に設けられ、前記舌片の挿入に際して前記線材に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端と、
を含む、線材スタイル取り構造。
【請求項2】
前記舌片の前記傾斜端に沿って斜めに折り曲げられて形成された斜面部をさらに含む、請求項1に記載の線材スタイル取り構造。
【請求項3】
前記板部材の前記舌片が設けられた近傍に貫通して形成された窓孔をさらに含む、請求項1に記載の線材スタイル取り構造。
【請求項4】
前記第一固定部および前記第二固定部とともに設けられ前記線材が掛け止められる掛止部をさらに含む、請求項1に記載の線材スタイル取り構造。
【請求項5】
第一固定部と第二固定部とに亘って設けられる線材と、
前記線材と共に前記第一固定部および前記第二固定部を収容する筐体を構成する板部材と、
前記板部材に設けられ前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入されて前記線材に当接可能な舌片と、
前記舌片の前記線材に当接する先端に設けられ、前記舌片の挿入に際して前記線材に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端と、
を含む、線材スタイル取り構造を適用する線材スタイル取り方法であって、
前記筐体の一部を構成して前記第一固定部および前記第二固定部を収容しつつ前記第一固定部と前記第二固定部とに亘り余長をもって前記線材を設ける工程と、
前記板部材を前記筐体に取り付けて前記舌片を前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入する工程と、
前記舌片の挿入に伴って前記傾斜端によって前記第一固定部と前記第二固定部との間の最短経路に近づくように前記線材を誘導する工程と、
を含む、線材スタイル取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材スタイル取り構造および線材スタイル取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材をスタイル取りするため、例えば、特許文献1に記載のケーブルの配線構造や、特許文献2に記載の線材引き回し構造が示されている。特許文献1のケーブルの配線構造は、プリント基板の一方の面上に配線するケーブルを、プリント基板に設けたスリットおよび片持舌片で掛け合わせて配線する構造である。また、特許文献2の線材引き回し構造は、筐体の内壁に線材を引き回し通過させる位置を示す複数のリブを備える構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-082982号公報
【特許文献2】特開2021-061304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線材の差し込み部と基板上のコネクタとを結合する場合、作業性を考慮して線材に余長を取る必要がある。そして、線材をコネクタに結合した後は、線材の余長をスタイル取りする必要がある。線材のスタイル取りは、可動部を有する電子機器では、可動部品と線材の余長部分が接触して可動部品が動作する際に擦れ音が発生したり、可動部品が線材の余長部分を噛みこんでしまったりする不具合を防止するために行う。また、線材のスタイル取りは、車両に搭載する電子機器では、車両の走行によって振動が加わった場合、線材の余長が周辺部品を叩き、ラトルが発生したり、周辺部品が破損してしまったりする不具合を防止するためでもある。
【0005】
スタイル取りの方法としては、例えば、特許文献1または特許文献2に示すように、線材を掛け合わせたり引き回したりする部分を設けることが一般的である。しかし、線材を掛け合わせたり引き回したりする時、線材の長さ公差の影響によって、線材の配索がし難かったり、コネクタのターミナル付近に想定以上の負荷が加わって断線してしまったりする懸念を含んでいるため、スタイル取りは、難作業であるとともに、多くの工数を必要としている。
【0006】
本発明は、スタイル取りの作業性を向上することのできる線材スタイル取り構造および線材スタイル取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の線材スタイル取り構造は、第一固定部と第二固定部とに亘って設けられる線材と、前記線材と共に前記第一固定部および前記第二固定部を収容する筐体を構成する板部材と、前記板部材に設けられ前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入されて前記線材に当接可能な舌片と、前記舌片の前記線材に当接する先端に設けられ、前記舌片の挿入に際して前記線材に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端と、を含む。
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の線材スタイル取り方法は、第一固定部と第二固定部とに亘って設けられる線材と、前記線材と共に前記第一固定部および前記第二固定部を収容する筐体を構成する板部材と、前記板部材に設けられ前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入されて前記線材に当接可能な舌片と、前記舌片の前記線材に当接する先端に設けられ、前記舌片の挿入に際して前記線材に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端と、を含む、線材スタイル取り構造を適用する線材スタイル取り方法であって、前記筐体の一部を構成して前記第一固定部および前記第二固定部を収容しつつ前記第一固定部と前記第二固定部とに亘り余長をもって前記線材を設ける工程と、前記板部材を前記筐体に取り付けて前記舌片を前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入する工程と、前記舌片の挿入に伴って前記傾斜端によって前記第一固定部と前記第二固定部との間の最短経路に近づくように前記線材を誘導する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スタイル取りの作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の線材スタイル取り構造の適用例の電気機器の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の線材スタイル取り構造の適用例の電気機器の正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の線材スタイル取り構造を表す部分斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の線材スタイル取り構造を表す部分斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態の線材スタイル取り構造および方法を表す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態の線材スタイル取り方法を表す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態の線材スタイル取り方法を表す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態の線材スタイル取り方法を表す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態の線材スタイル取り方法を表す斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態の線材スタイル取り方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
実施形態の線材スタイル取り構造は、例えば、
図1に示す電気機器1に適用される。電気機器1は、移動体である車両(自動車)の車室内部に搭載されるものであって、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムである。電気機器1は、筐体2と、表示パネル3と、を有する。
【0013】
筐体2は、上側、下側、右側、左側、および後側が板金で塞がれた構造である。従って、筐体2は、その外殻を構成する外筐部材である上板2Aと、下板2Bと、右板2Cと、左板2Dと、後板2Eと、を有し、全体として直方形状に形成される。ここで、電気機器1の前側、上側、下側、右側、左側、および後側は、電気機器1を車両の運転席前方に搭載した状態で各方向を定義する。即ち、運転席側に向く側を「前側」、車両前方のウインドシールド側に向く側を「後側」とし、右側および左側は、電気機器1を前側から視た方向である。筐体2は、前側が車両クラスター(ダッシュボードともいう)の外部に表れるように、車両クラスターの内部に配置される。
【0014】
また、筐体2は、
図3から
図5に示す前板2Fを有する。前板2Fは、右板2Cおよび左板2Dに固定される。右板2Cは、前板2Fを固定するため、前端において左側に向けて90度折り曲げられた固定片2CAが形成される。固定片2CAは、ネジ孔2CAaと、係止孔2CAbと、が設けられる。また、左板2Dは、前板2Fを固定するため、前端において右側に向けて90度に折り曲げられた固定片2DAが形成される。固定片2DAは、ネジ孔2DAaと、係止孔2DAbと、が設けられる。これら右板2Cおよび左板2Dに固定される前板2Fは、ネジ孔2CAa,2DAaの前側で合致してネジ9が挿入される挿入孔2Faと、係止孔2CAb,2DAbに前側から挿通して係止される係止片2Fbと、が設けられる。
【0015】
表示パネル3は、パネル面を前側に向けて筐体2の前板2Fの前側に設置される。表示パネル3は、パネル枠3Aと、パネル面をなす表示部3Bと、を有する。パネル枠3Aは、筐体2の前側を覆う。パネル枠3Aは、本実施形態では、筐体2よりも上下方向および左右方向で若干大きい。表示部3Bは、パネル枠3Aの上下方向および左右方向において小さく、パネル枠3Aの上下方向および左右方向の内側に収納される。表示部3Bは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイで構成される。表示部3Bは、タッチパネルとして構成できる。なお、図には明示しないが、パネル枠3Aは、上下方向や左右方向に、電気機器1の各種操作を行うための操作ボタンを設けることができる。
【0016】
電気機器1は、
図1および
図2に示すように、筐体2の内部に複数の基板4が収容される。基板4は、板面を上下方向に向け、上板2Aおよび下板2Bと平行に配置される。言い換えると、基板4は、右板2Cと左板2Dと後板2Eと前板2Fとに対して垂直に配置され向きが異なる。基板4は、図には明示しないが、電気部品が固定される。
【0017】
基板4は、配線などの線材7の一端が接続されるコネクタ(第一固定部ともいう)6が固定される。コネクタ6は、基板4の前端付近に左寄りに配置される。線材7は、他端が基板4とは別の部分に接続される。実施形態の電気機器1では、下板2Bの筐体2の内側に表示部3Bを開閉する開閉機構5が設けられており、この開閉機構5の接続部(第二固定部ともいう)5Aに線材7の他端が接続される。開閉機構5は、筐体2の下板2Bに設置され、接続部5Aは、コネクタ6よりも右側に配置される。開閉機構5は、基板4が設置される以前に下板2Bに設置され、接続部5Aに線材7の他端が接続されている。そして、その後の基板4の設置時においてコネクタ6に線材7の一端が接続される。線材7は、コネクタ6に一端が接続される際、配索作業性向上や負荷による断線防止のために余長が設けられる。
【0018】
また、基板4は、溝孔4Aが形成される。溝孔4Aは、基板4の前端に設けられて前側に開口して形成される。溝孔4Aは、コネクタ6の近傍に設けられ、コネクタ6に接続された線材7の一端側が挿入され掛け止められる。即ち、溝孔4Aは、線材7の配索を支持するために設けられる。溝孔4Aは、線材7を支持するように掛け止められる掛止部を構成する。掛止部は、溝孔形状以外に、線材7を掛け止めるフックなどのように構成されていてもよい。また、開閉機構5にも、線材7の他端側が掛け止められる掛止部としてのフック5Bが設けられる。開閉機構5の掛止部も線材7を支持するように掛け止める構成であればよく、例えば溝孔であってもよい。
【0019】
筐体2の前側に設けられる前板2Fは、
図4に示すように、舌片8が形成される。舌片8は、前板2Fの下端の左側に設けられ、前板2Fの下端の一部が後側に向けて90度折り曲げられて形成される。舌片8は、前板2Fを筐体2の前側に固定した場合、基板4と下板2Bとの間に差し込まれるように設けられる。舌片8は、基板4と下板2Bとの間に差し込まれたとき、
図7から
図9に示すように、左側端8Cが基板4の溝孔4Aよりも左側に位置し、右側端8Dがコネクタ6と接続部5Aとの間で開閉機構5のフック5Bよりも左側に位置するように設けられる。舌片8は、左側端8Cと右側端8Dとの前後方向の寸法が異なって形成され、左側端8Cが右側端8Dよりも長くなっており、後側に向く先端が平面視において左後側から右前側に向けて漸次傾斜する傾斜端8Aが設けられる。また、舌片8は、後側に向く先端が傾斜端8Aに沿って下側に斜めに折り曲げられて形成された斜面部8Bが設けられる。
【0020】
また、舌片8が形成される前板2Fは、
図4に示すように、舌片8が設けられた近傍に窓孔2Fcが前後方向に貫通して形成される。窓孔2Fcは、実施形態では、舌片8が折り曲げられた基端部の上側において舌片8の左右方向に沿う長孔として形成される。従って、舌片8は、前板2Fの前上側から窓孔2Fcを通して一部を見ることができる。
【0021】
上述した実施形態の線材スタイル取り構造を用いた線材スタイル取り方法を、
図5から
図10を参照して説明する。
【0022】
実施形態の線材スタイル取り方法は、
図10に示すように、前側以外の筐体2を組み立てる工程(ステップS1:
図5)と、前板2Fを筐体2に取り付ける工程(ステップS2:
図5および
図6)と、前板2Fを筐体2に固定する工程(ステップS6:
図6)と、を含む、また、実施形態の線材スタイル取り方法は、ステップS2からステップS6の間、線材7のスタイル取りをする工程(ステップS3からステップS5:
図7から
図9)を含む。
【0023】
ステップS1では、前側以外の筐体2を組み立てて、線材7をフック5Bに掛け、かつ線材7をコネクタ6に接続して溝孔4Aに挿入する(
図5および
図7参照)。即ち、ステップS1では、筐体2の一部を構成してコネクタ6および接続部5Aを収容しつつコネクタ6と接続部5Aとに亘り余長をもって線材7を設ける。
【0024】
次に、ステップS2では、前板2Fの一側部(右側部)を筐体2の右板2Cに取り付ける。即ち、ステップS2では、前板2Fの右側の係止片2Fbを右板2Cの係止孔2CAbに挿入させ、前板2Fの右側を筐体2の右板2Cに対して位置決めする(
図6参照)。
【0025】
次に、ステップS3では、前板2Fの他側部(左側端)を筐体2の左板2Dに向けて移動する。即ち、ステップS3では、前板2Fを筐体2の一部に取り付けつつ、前板2Fの移動に伴い、舌片8をコネクタ6と接続部5Aとの間に挿入する。このステップS3では、前板2Fの移動に伴い、舌片8の傾斜端8Aの一部を線材7に接触させる(
図8参照)。ステップS3では、前板2Fの右側が筐体2の右板2Cに対して位置決めされており、かつ上述したように、舌片8の左側端8Cが基板4の溝孔4Aよりも左側に位置し、右側端8Dがコネクタ6と接続部5Aとの間で開閉機構5のフック5Bよりも左側に位置するように設けられることから、後側に長い左側端8C側の傾斜端8Aが先に線材7に接触する。また、ステップS3では、斜面部8Bによって線材7への傾斜端8Aのエッジ当たりを防ぎつつ傾斜端8Aを線材7の下側に潜り込ませるようにすくい上げる。
【0026】
次に、ステップS4では、前板2Fの他側部(左側端)を筐体2の左板2Dに向けてさらに移動する。このステップS4では、前板2Fのさらなる移動に伴い、舌片8の傾斜端8Aをさらに線材7に接触させる。具体的に、ステップS4では、ステップS3で左側端8C側の傾斜端8Aが線材7の下側に潜り込んでいるため、傾斜端8Aの右側が線材7に漸次接触し、線材7を右側に案内しながら、線材7を押し上げる。
【0027】
次に、ステップS5では、前板2Fの他側部(左側端)を筐体2の左板2Dに向けてさらに移動させて筐体2の左板2Dに取り付ける。即ち、ステップS5では、前板2Fの左側の係止片2Fbを左板2Dの係止孔2DAbに挿入させ、前板2Fの左側を筐体2の左板2Dに対して位置決めする(
図6参照)。このステップS5では、前板2Fのさらなる移動に伴い、舌片8の傾斜端8Aをさらに線材7に接触させる。具体的に、ステップS5では、ステップS4よりも傾斜端8Aの右側が線材7に接触し、線材7を右側にさらに案内しながら、線材7をさらに押し上げる。そして、ステップS5において、線材7は、舌片8によって右上側に案内され、
図2に示すように、前側視でコネクタ6と接続部5Aとを結ぶ最短経路Dに近づくようにスタイル取りされることとなる。このように、ステップS4およびステップS5では、舌片8の挿入に伴って傾斜端8Aによってコネクタ6と接続部5Aとの間の最短経路Dに近づくように線材7を誘導する。
【0028】
次に、ステップS6では、ネジ9を前板2Fの挿入孔2Faを介して右板2Cおよび左板2Dのネジ孔2CAa,2DAaに締め付け、前板2Fを筐体2に固定する(
図5および
図6参照)。
【0029】
なお、上述した実施形態では、第一固定部であるコネクタ6と、第二固定部である接続部5Aが上下に配置されて線材7が上下に配索される構成を例に説明したが、この限りではない。例えば、第一固定部と第二固定部とが左右に配置されて線材7が左右に配索される構成で、舌片8が第一固定部と第二固定部との間に挿入される構成であってもよい。この場合、舌片8の傾斜端8Aは、上下方向で漸次斜めに形成され、斜面部8Bは左右方向に折れ曲がって形成される。
【0030】
このように、実施形態の線材スタイル取り構造は、コネクタ(第一固定部)6と接続部(第二固定部)5Aとに亘って設けられる線材7と、線材7と共にコネクタ6および接続部5Aを収容する筐体2を構成する前板(板部材)2Fと、前板2Fに設けられコネクタ6と接続部5Aとの間に挿入されて線材7に当接可能な舌片8と、舌片8の線材7に当接する先端に設けられ、舌片8の挿入に際して線材7に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端8Aと、を含む。
【0031】
この線材スタイル取り構造によれば、傾斜端8Aが舌片8の挿入に際して線材7に漸次接触することで、線材7を徐々に押し上げ、コネクタ6と接続部5Aとの間の最短経路Dに近づくように線材7を誘導できる。この結果、実施形態の線材スタイル取り構造は、スタイル取りの作業性を向上できる。
【0032】
また、実施形態の線材スタイル取り構造では、舌片8の傾斜端8Aに沿って斜めに折り曲げられて形成された斜面部8Bをさらに含む。
【0033】
この線材スタイル取り構造によれば、斜面部8Bによって傾斜端8Aが線材7にエッジ当たりすることを防ぎつつ線材7をすくい上げることができる。
【0034】
また、実施形態の線材スタイル取り構造では、前板2Fの舌片8が設けられた近傍に貫通して形成された窓孔2Fcをさらに含む。
【0035】
この線材スタイル取り構造によれば、窓孔2Fcによって舌片8と線材7との様子を目視で確認できる。
【0036】
また、実施形態の線材スタイル取り構造では、コネクタ6および接続部5Aとともに設けられ線材7が掛け止められる溝孔(掛止部)4Aおよびフック(掛止部)5Bをさらに含む。
【0037】
この線材スタイル取り構造によれば、掛止部である溝孔4Aおよびフック5Bによって線材7の配索を支持でき、舌片8の挿入によって傾斜端8Aが接触する線材7の位置を規定できる。
【0038】
また、実施形態の線材スタイル取り方法は、実施形態の線材スタイル取り構造を用い、筐体2の一部を構成してコネクタ6および接続部5Aを収容しつつコネクタ6と接続部5Aとに亘り余長をもって線材7を設ける工程と、前板2Fを筐体2に取り付けて舌片をコネクタ6と接続部5Aとの間に挿入する工程と、舌片8の挿入に伴って傾斜端8Aによってコネクタ6と接続部5Aとの間の最短経路Dに近づくように線材7を誘導する工程と、を含む。
【0039】
この線材スタイル取り方法によれば、実施形態の線材スタイル取り構造によってスタイル取りを行うことができ、その作業性を向上できる。
【0040】
本実施形態は以下の発明を包含する。
[発明1]
第一固定部と第二固定部とに亘って設けられる線材と、
前記線材と共に前記第一固定部および前記第二固定部を収容する筐体を構成する板部材と、
前記板部材に設けられ前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入されて前記線材に当接可能な舌片と、
前記舌片の前記線材に当接する先端に設けられ、前記舌片の挿入に際して前記線材に漸次接触するように斜めに形成された傾斜端と、
を含む、線材スタイル取り構造。
[発明2]
前記舌片の前記傾斜端に沿って斜めに折り曲げられて形成された斜面部をさらに含む、発明1に記載の線材スタイル取り構造。
[発明3]
前記板部材の前記舌片が設けられた近傍に貫通して形成された窓孔をさらに含む、発明1または2に記載の線材スタイル取り構造。
[発明4]
前記第一固定部および前記第二固定部とともに設けられ前記線材が掛け止められる掛止部をさらに含む、発明1から3のいずれか1つに記載の線材スタイル取り構造。
[発明5]
発明1から4のいずれか1つに記載の線材スタイル取り構造を適用する線材スタイル取り方法であって、
前記筐体の一部を構成して前記第一固定部および前記第二固定部を収容しつつ前記第一固定部と前記第二固定部とに亘り余長をもって前記線材を設ける工程と、
前記板部材を前記筐体に取り付けて前記舌片を前記第一固定部と前記第二固定部との間に挿入する工程と、
前記舌片の挿入に伴って前記傾斜端によって前記第一固定部と前記第二固定部との間の最短経路に近づくように前記線材を誘導する工程と、
を含む、線材スタイル取り方法。
【符号の説明】
【0041】
2 筐体
2F 前板(板部材)
2Fc 窓孔
4A 溝孔(掛止部)
5A 接続部(第二固定部)
5B フック(掛止部)
6 コネクタ(第一固定部)
7 線材
8 舌片
8A 傾斜端
8B 斜面部