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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172647
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】鉄筋架台および壁の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
E04G21/12 105D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084600
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 武彦
(72)【発明者】
【氏名】中釜 法茂
(72)【発明者】
【氏名】生野 賢一朗
(72)【発明者】
【氏名】森本 一生
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 裕也
(57)【要約】
【課題】壁の横筋を容易に配筋可能な鉄筋架台を提供すること。
【解決手段】鉄筋架台10は、鉄筋コンクリート造の壁1に埋設される横筋4を配筋するためのものである。鉄筋架台10は、床面2上に所定距離離れて配置された少なくとも一対の支柱20と、支柱20同士を連結する水平連結材21および斜めブレース12と、を備える。支柱20は、それぞれ、床面2上から上方に延びる溝形鋼23と、溝形鋼23に上下方向に複数並んで設けられて横筋4が係止される鉄筋受け材24と、を備える。鉄筋受け材24は、横筋4の脱落を防止するためにかぎ型状である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の壁に埋設される横筋を配筋するための鉄筋架台であって、
床面上に所定距離離れて配置された少なくとも一対の支柱と、前記支柱同士を連結する水平連結材および斜めブレースと、を備え、
前記支柱は、それぞれ、前記床面上から上方に延びる形鋼と、前記形鋼に上下方向に複数並んで設けられて前記横筋が係止される鉄筋受け材と、を備え、
前記鉄筋受け材は、前記横筋の脱落を防止するためにかぎ型状であることを特徴とする鉄筋架台。
【請求項2】
前記鉄筋受け材は、鉄筋材または形鋼で形成されており、前記基端側が支柱に固定された水平部と、前記水平部の先端から上方に延びる鉛直部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋架台。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄筋架台を用いて、鉄筋コンクリート造の壁を構築する方法であって、
床面上の前記壁を構築する位置に前記鉄筋架台を設置する工程と、
前記鉄筋架台の鉄筋受け材に前記壁の横筋を係止する工程と、
前記壁の縦筋を前記横筋に当接させて配置し、前記縦筋を前記横筋に仮固定する工程と、
前記鉄筋架台を存置または撤去する工程と、
前記横筋および前記縦筋を挟んで一対の壁型枠を建て込んで、前記一対の壁型枠の内側にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とする壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造の壁の横筋を配筋するための鉄筋架台、および、この鉄筋架台を用いた壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋を配筋するための鉄筋架台が提案されている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、鉄筋組立用足場と、この鉄筋組立用足場のスライド定規に建込まれた一対のメッシュ鉄筋と、メッシュ鉄筋同士の間に取り付けられた継ぎ材および水平垂直筋違筋と、鉄筋組立用足場の下端に固着された幅調節用兼吊り治具と、を備える立体ユニット鉄筋が示されている。
【0003】
特許文献2には、枠材と、この枠材の受材に縦横に配筋されて針金で結束された鉄筋と、を備えるメッシュパネルが示されている。このメッシュパネルを現場に並べて、突き合わされる鉄筋の端部同士を針金で結束することで、壁の鉄筋を配筋する。
特許文献3には、アングル材である支柱と、この支柱の下部に直交して溶接された短鉄筋と、支柱の上部にV字に組み合わせて角状に溶接された短鉄筋と、を備える鉄筋架台が示されている。この鉄筋架台の下部の短鉄筋は、下鉄筋の主筋と配力筋に沿わせて結束し、上部の短鉄筋は、上鉄筋を支承する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-321467号公報
【特許文献2】特開平6-81473号公報
【特許文献3】特開2012-7330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、壁の横筋を容易に配筋可能な鉄筋架台、および、壁の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鉄筋コンクリート造の壁の横筋を配筋するための鉄筋架台を、床面上に所定距離離れて配置される少なくとも一対の支柱と、これら支柱同士を連結する水平連結材および斜めブレースと、を含んで構成するとともに、支柱に複数の鉄筋受け材を設けることで、鉄筋受け材に横筋を係止させて、容易に配筋できる点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の鉄筋架台(例えば、後述の鉄筋架台10)は、鉄筋コンクリート造の壁(例えば、後述の壁1)に埋設される横筋(例えば、後述の横筋4)を配筋するための鉄筋架台であって、床面(例えば、後述の床面2)上に所定距離離れて配置された少なくとも一対の支柱(例えば、後述の支柱20)と、前記支柱同士を連結する水平連結材(例えば、後述の水平連結材21)および斜めブレース(例えば、後述の斜めブレース12)と、を備え、前記支柱は、それぞれ、前記床面上から上方に延びる形鋼(例えば、後述の溝形鋼23)と、前記形鋼に上下方向に複数並んで設けられて前記横筋が係止される鉄筋受け材(例えば、後述の鉄筋受け材24)と、を備え、前記鉄筋受け材は、前記横筋の脱落を防止するためにかぎ型状であることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、鉄筋架台のかぎ型(L字)状の鉄筋受け材に横筋を係止することで、横筋を上下方向に所定間隔置きに配筋し、次に、これら横筋に当接させて縦筋を配置して結束線等で仮固定することで、縦筋を配筋する。よって、壁の横筋が太径であっても、この横筋を容易に配筋できる。
また、支柱を構成する形鋼に上下方向に複数並んで設けられた鉄筋受け材を用いて、横筋を所定の高さ位置に配筋することができる。また、鉄筋受け材をかぎ型(L字)状としたので、横筋の脱落を防止できる。
また、鉄筋架台を、少なくとも一対の支柱と、これら支柱同士を連結する水平連結材および斜めブレースと、を含んで構成した。よって、鉄筋架台は簡素な構成であり、鉄筋架台を低コストで容易に製作できる。
【0008】
第2の発明の鉄筋架台は、前記鉄筋受け材は、鉄筋材または形鋼で形成されており、前記基端側が支柱に固定された水平部(例えば、後述の水平部30)と、前記水平部の先端から上方に延びる鉛直部(例えば、後述の鉛直部31)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、鉄筋受け材としては、かぎ型(L字)状に折り曲げられた鉄筋材や、山型鋼が挙げられる。
この発明によれば、支柱に設けられた鉄筋受け材を、基端側が支柱に固定された水平部と、この水平部の先端から上方に延びる鉛直部と、を含んで構成した。よって、横筋を鉄筋受け材に上方から差し込んで水平部上に載置するだけで、水平部により横筋が支持されるとともに、鉛直部により横筋の脱落が容易に防止される。
【0010】
第2の発明の壁の構築方法は、上述の鉄筋架台を用いて、鉄筋コンクリート造の壁を構築する方法であって、床面上の前記壁を構築する位置に前記鉄筋架台を設置する工程(例えば、後述のステップS1)と、前記鉄筋架台の鉄筋受け材に前記壁の横筋を係止する工程(例えば、後述のステップS2)と、前記壁の縦筋を前記横筋に当接させて配置し、前記縦筋を前記横筋に仮固定する工程(例えば、後述のステップS3)と、前記鉄筋架台を存置または撤去する工程(例えば、後述のステップS4)と、前記横筋および前記縦筋を挟んで一対の壁型枠(例えば、後述の壁型枠8)を建て込んで、前記一対の壁型枠の内側にコンクリートを打設する工程(例えば、後述のステップS4)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、鉄筋架台を用いて壁の横筋を配筋し、この状態で、横筋に当接させて縦筋を配筋する。よって、横筋や縦筋が太径であっても、横筋および縦筋を容易に配筋でき、施工費を低減できる。
また、壁を構築する位置に鉄筋架台を設置したので、横筋をユニット化するスペースが不要であり、建設敷地が狭隘な場合でも、容易に横筋を配筋できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、壁の横筋を容易に配筋可能な鉄筋架台、および、壁の構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄筋架台を用いて構築された壁の正面図である。
図2】実施形態に係る壁のA-A断面図およびB-B断面図である。
図3】実施形態に係る鉄筋架台の正面図である。
図4】実施形態に係る鉄筋架台を構成する架台ユニットの正面図およびC-C断面図である。
図5】実施形態に係る鉄筋架台を用いて壁を構築する手順のフローチャートである。
図6】実施形態に係る壁の構築手順の説明図(その1、鉄筋架台に横筋を配筋した状態)である。
図7】実施形態に係る壁の構築手順の説明図(その2、縦筋吊上げ治具に縦筋を仮固定した状態)である。
図8】実施形態に係る壁の構築手順の説明図(その3、縦筋吊上げ治具により縦筋を横筋に取り付けている状態)である。
図9】実施形態に係る壁の構築手順の説明図(その4、壁型枠を建て込んでコンクリート体を構築した状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、鉄筋コンクリート造の壁の横筋を配筋するための鉄筋架台、および、この鉄筋架台を用いた鉄筋コンクリート造の壁の構築方法である。具体的には、鉄筋架台は、少なくとも一対の支柱と、これら支柱同士を連結する水平連結材および斜めブレースと、を備え、支柱は、床面上に設置されて上方に延びる形鋼と、この形鋼に上下方向に複数並んで設けられて横筋が係止される鋼製の鉄筋受け材と、を含んで構成される(図1図4)。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄筋架台10を用いて構築された壁1の正面図である。図2(a)は、壁1のA-A断面図である。図2(b)は、壁1のB-B矢視図である。図3は、鉄筋架台10の正面図である。
壁1は、床面2上に構築されており、コンクリート体3と、このコンクリート体3の内部に埋設されてダブル配筋された横筋4および縦筋5と、を備える。横筋4は、太径(例えば、D25以上D41以下)の鉄筋であり、上下方向に所定間隔pおきに配筋されている。縦筋5は、水平方向に所定間隔pおきに配筋されている。
【0015】
鉄筋架台10は、鉄筋コンクリート造の壁1の横筋4を配筋するためのものである。
鉄筋架台10は、床面2上に壁長さ方向に所定距離Lだけ離れて配置された複数の架台ユニット11と、水平に対して傾斜して延びて架台ユニット11同士を連結する斜めブレース12と、を備える。
【0016】
図4(a)は、架台ユニット11の正面図であり、図4(b)は、架台ユニット11のC-C矢視図である。
架台ユニット11は、所定距離Dだけ離れて配置されて上方に延びる一対の支柱20と、水平方向に延びて支柱20同士を連結する水平連結材21と、を備える。
支柱20は、それぞれ、床面2上に固定される一対のベースプレート22と、これらベースプレート22上に設けられた一対の溝形鋼23と、各溝形鋼23に上下方向に所定間隔pおきに設けられて横筋4が係止される鉄筋受け材24と、溝形鋼23に設けられたブレース連結ピース25と、を備える。
【0017】
ベースプレート22には、図示しない貫通孔が形成されており、この貫通孔に床面2に埋設されたアンカーボルト6が挿通されて、ナット7が締め付けられている。
ブレース連結ピース25には、斜めブレース12が連結されている。この斜めブレース12には、ターンバックル13が設けられており、このターンバックル13を回転させることにより、斜めブレース12の長さを調整可能となっている。
鉄筋受け材24は、鉄筋材をかぎ型(L字)状に折り曲げて形成されている。この鉄筋受け材24は、基端側が溝形鋼23に溶接固定された水平部30と、水平部30の先端から上方に延びる鉛直部31と、を備える。
【0018】
以上の鉄筋架台10を用いて鉄筋コンクリート造の壁1を構築する手順について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図6に示すように、床面2上の壁1を構築する位置に、鉄筋架台10を設置する。具体的には、予め、床面2上の壁1の位置にアンカーボルト6を埋設しておくとともに、架台ユニット11を組み立てておく。架台ユニット11を揚重機で吊り上げて、床面2上の壁1の位置に吊り下ろし、アンカーボルト6に固定する。次に、架台ユニット11同士を斜めブレース12で連結する。
ステップS2では、図6に示すように、鉄筋架台10を用いて横筋4を配筋する。具体的には、鉄筋架台10の鉄筋受け材24に上方から横筋4を差し込んで係止する。このとき、壁1の地表面から所定高さh以下の部分については、作業員が人力で横筋4を持ち上げて、鉄筋受け材24に差し込む。一方、壁1の所定高さhを超える部分については、高所作業車やクレーン等を用いて、横筋4を揚重し、鉄筋受け材24に差し込む。
【0019】
ステップS3では、縦筋吊上げ治具40を用いて縦筋5を配筋する。具体的には、まず、図7に示すように、縦筋吊上げ治具40を用意する。縦筋吊上げ治具40には、縦筋5(ねじ鉄筋)が挿通される貫通孔41が所定間隔pおきに形成されている。床面2上にて、縦筋吊上げ治具40の貫通孔41に縦筋5を挿通して、鉄筋の定着具(例えば、東京鉄鋼株式会社製のプレートナット)で仮固定しておく。この状態で、図8に示すように、揚重機42で縦筋吊上げ治具40を吊り上げて、縦筋吊上げ治具40に仮固定された縦筋5が横筋4の内側に当接するように吊り下ろす。このようにして、壁1の縦筋5を横筋4の内側に当接させて配置する。次に、図示しない結束線等で縦筋5を横筋4に仮固定することで、縦筋5を配筋する。その後、縦筋5から縦筋吊上げ治具40を取り外して撤去する。
ステップS4では、図9に示すように、鉄筋架台10を存置した状態で、横筋4および縦筋5を挟んで一対の壁型枠8を建て込んで、一対の壁型枠8の内側にコンクリートを打設して、コンクリート体3を構築する。
【0020】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)鉄筋架台10の鉄筋受け材24に横筋4を係止することで、横筋4を上下方向に所定間隔p置きに配筋し、次に、これら横筋4に当接させて縦筋5を配置して結束線等で仮固定することで、縦筋5を配筋する。よって、横筋4および縦筋5を容易に配筋できる。
また、鉄筋架台10を、複数の支柱20と、これら支柱20同士を連結する水平連結材21および斜めブレース12と、を含んで構成した。よって、鉄筋架台10は簡素な構成であり、鉄筋架台10を低コストで容易に製作できる。
【0021】
(2)支柱20に設けられた鉄筋受け材24を、基端側が支柱20に固定された水平部30と、この水平部の先端から上方に延びる鉛直部31と、を含んで構成した。よって、横筋4を鉄筋受け材24に上方から差し込んで水平部30上に載置するだけで、水平部30により横筋が支持されるとともに、鉛直部31により横筋4の脱落が容易に防止される。
(3)鉄筋架台10を用いて壁1の横筋4を配筋し、この状態で、横筋4に当接させて縦筋5を配筋する。よって、横筋4に太径鉄筋が用いられる場合であっても、横筋4および縦筋5を安定して配筋でき、施工費を低減できる。
また、壁1を構築する位置に鉄筋架台10を設置したので、横筋4をユニット化するスペースが不要であり、建設敷地が狭隘な場合でも、容易に横筋4を配筋できる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態では、鉄筋受け材24をかぎ型(L字)状に折り曲げられた鉄筋材としたが、これに限らず、山型鋼としてもよい。
また、上述の実施形態では、ステップS4にて、鉄筋架台10を存置した状態で壁型枠8を建て込んだが、これに限らず、鉄筋架台10を撤去し、この状態で壁型枠8を建て込んでもよい。
【符号の説明】
【0023】
1…壁 2…床面 3…コンクリート体 4…横筋 5…縦筋
6…アンカーボルト 7…ナット 8…壁型枠
10…鉄筋架台 11…架台ユニット 12…斜めブレース 13…ターンバックル
20…支柱 21…水平連結材 22…ベースプレート 23…溝形鋼
24…鉄筋受け材 25…ブレース連結ピース
30…水平部 31…鉛直部
40…縦筋吊上げ治具 41…貫通孔 42…揚重機

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9