(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172655
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】屋内空間の安全監視装置、屋内空間の安全監視方法及び屋内空間の安全監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/10 20060101AFI20231129BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G08B25/10 A
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084610
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】渋川 文哉
(72)【発明者】
【氏名】小椋 優
(72)【発明者】
【氏名】山崎 峻一
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA21
5C086CA25
5C086DA14
5C086FA17
5C087AA03
5C087AA09
5C087BB18
5C087BB74
5C087DD13
5C087EE18
5C087FF03
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG10
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】移動体が走行する屋内空間の安全を監視する際に、屋内空間を通行する作業者に対して、監視内容に応じた作業者毎のイベントを提供する。
【解決手段】
屋内空間の安全監視装置は、上空の電波から遮られた屋内空間100において走行する移動体30に設けられ、屋内空間100を通行する作業者110が保持する発信タグ27からのタグIDを含む測位信号28を無線により受信する複数の基地局36,37と、複数の基地局36,37がそれぞれ受信した同一のタグIDを含む測位信号28を用いて、移動体30に対する発信タグ27の相対位置を検出する位置検出部31と、相対位置が移動体30の周辺に設定された警報エリア140の内側である場合に、相対位置の検出に用いた測位信号28に含まれるタグIDの発信タグ27を保持する作業者110を宛先とする警報信号を無線により送信する警報送信部32,33と、を備える。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空の電波から遮られた屋内空間において走行する移動体に設けられ、前記屋内空間を通行する作業者が保持する発信タグからの前記発信タグを識別するタグIDを含む測位信号を無線により受信する複数の基地局と、
前記複数の基地局がそれぞれ受信した同一の前記タグIDを含む前記測位信号を用いて、前記移動体に対する前記発信タグの相対位置を検出する位置検出部と、
前記相対位置が前記移動体の周辺に設定された警報エリアの内側である場合に、前記相対位置の検出に用いた前記測位信号に含まれる前記タグIDの前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする警報信号を無線により送信する警報送信部と、
を備える、
屋内空間の安全監視装置。
【請求項2】
前記警報エリアは、前記移動体の進行方向に沿って設定される請求項1に記載の屋内空間の安全監視装置。
【請求項3】
前記警報エリアは、前記移動体の走行速度が高いほど前記移動体の進行方向において広い範囲に設定される請求項1に記載の屋内空間の安全監視装置。
【請求項4】
前記警報エリアは、前記屋内空間の作業者専用の安全通路を除く範囲に設定される請求項1に記載の屋内空間の安全監視装置。
【請求項5】
前記基地局は、前記移動体の進行方向における前方に配置される請求項1に記載の屋内空間の安全監視装置。
【請求項6】
前記警報信号は、前記宛先の前記作業者に通知する警報レベルの情報を含んでおり、前記警報送信部は、前記移動体から前記相対位置までの距離に応じた警報レベルの情報を含む前記警報信号を送信する請求項1に記載の屋内空間の安全監視装置。
【請求項7】
前記移動体に設けられたセンサを用いて、前記移動体の進行方向における前方に存在する最寄りの前記作業者までの距離を、前記基地局による前記測位信号の受信周期よりも短い周期で測定する測距部をさらに備え、前記相対位置が前記警報エリアの内側である前記発信タグが存在する場合に、前記警報送信部は、前記警報エリアの前記相対位置が前記移動体に最も近い前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする前記警報信号を、前記測距部が測定した前記距離が更新される度に、更新された前記距離に応じた前記警報レベルの情報を含めて送信する請求項6に記載の屋内空間の安全監視装置。
【請求項8】
前記位置検出部が検出した前記相対位置の情報を出力するユーザインタフェース部をさらに備える請求項1~7のいずれか1項に記載の安全監視装置。
【請求項9】
上空の電波から遮られた屋内空間において走行する移動体の複数の基地局により、前記屋内空間を通行する作業者が保持する発信タグからの前記発信タグを識別するタグIDを含む測位信号を無線により受信し、
前記複数の基地局がそれぞれ受信した同一の前記タグIDを含む前記測位信号を用いて、前記移動体に対する前記発信タグの相対位置を検出し、
検出した前記相対位置が前記移動体の周辺に設定された警報エリアの内側である場合に、前記相対位置の検出に用いた前記測位信号に含まれる前記タグIDの前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする警報信号を無線により送信する、
屋内空間の安全監視方法。
【請求項10】
上空の電波から遮られた屋内空間を通行する作業者が保持し、識別用のタグIDを含む測位信号を送信する発信タグと、
前記測位信号を無線により受信する請求項1~7のいずれか1項に記載の安全監視装置と、
前記安全監視装置の警報送信部が送信する警報信号が、前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする場合に、前記屋内空間において走行する移動体の接近を通知する警報を出力する警報ユニットと、
を備える屋内空間の安全監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋内空間の安全監視装置、屋内空間の安全監視方法及び屋内空間の安全監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建設機械の周辺に作業者がいる場合に、建設機械の動作モード次第で建設機械の動作を停止させる制御を行う技術が記載されている。この技術では、携帯装置のRFID(Radio Frequency Identification)機能を有する応答部が、建設機械からの磁界信号を受信した場合に電波を出力する。建設機械は、磁界信号に応答した作業者の携帯装置から出力された電波を受信すると、建設機械の周辺に作業者がいることを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術において、建設機械の動作モード次第で行われる建設機械の動作を停止させる制御は、建設機械の周辺に複数の作業者がいる場合、どの作業者にとっても共通のイベントとなる。例えば、作業者が通行する空間の安全を監視する際に、作業者毎のイベントを行うことは有用である。しかし、特許文献1の技術は、建設機械の周辺にいる作業者に対して作業者毎のイベントを行う環境を提供するものではない。
【0005】
本開示は前記事情に鑑みなされたもので、本開示の目的は、移動体が走行する屋内空間の安全を監視する際に、屋内空間を通行する作業者に対して、監視内容に応じた作業者毎のイベントを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る屋内空間の安全監視装置は、
上空の電波から遮られた屋内空間において走行する移動体に設けられ、前記屋内空間を通行する作業者が保持する発信タグからの前記発信タグを識別するタグIDを含む測位信号を無線により受信する複数の基地局と、
前記複数の基地局がそれぞれ受信した同一の前記タグIDを含む前記測位信号を用いて、前記移動体に対する前記発信タグの相対位置を検出する位置検出部と、
前記相対位置が前記移動体の周辺に設定された警報エリアの内側である場合に、前記相対位置の検出に用いた前記測位信号に含まれる前記タグIDの前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする警報信号を無線により送信する警報送信部と、
を備える。
【0007】
本開示に係る屋内空間の安全監視装置において、前記警報エリアは、前記移動体の進行方向に沿って設定されてもよい。前記警報エリアは、前記移動体の走行速度が高いほど前記移動体の進行方向において広い範囲に設定されてもよい。前記警報エリアは、前記屋内空間の作業者専用の安全通路を除く範囲に設定されてもよい。
【0008】
本開示に係る屋内空間の安全監視装置において、前記基地局は、前記移動体の進行方向における前方に配置されてもよい。
【0009】
本開示に係る屋内空間の安全監視装置において、前記警報信号は、前記宛先の前記作業者に通知する警報レベルの情報を含んでおり、前記警報送信部は、前記移動体から前記相対位置までの距離に応じた警報レベルの情報を含む前記警報信号を送信してもよい。
【0010】
本開示に係る屋内空間の安全監視装置は、前記移動体に設けられたセンサを用いて、前記移動体の進行方向における前方に存在する最寄りの前記作業者までの距離を、前記基地局による前記測位信号の受信周期よりも短い周期で測定する測距部をさらに備え、前記相対位置が前記警報エリアの内側である前記発信タグが存在する場合に、前記警報送信部は、前記警報エリアの前記相対位置が前記移動体に最も近い前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする前記警報信号を、前記測距部が測定した前記距離が更新される度に、更新された前記距離に応じた前記警報レベルの情報を含めて送信してもよい。
【0011】
本開示に係る屋内空間の安全監視装置は、前記位置検出部が検出した前記相対位置の情報を出力するユーザインタフェース部をさらに備えてもよい。
【0012】
本開示に係る屋内空間の安全監視方法は、
上空の電波から遮られた屋内空間において走行する移動体の複数の基地局により、前記屋内空間を通行する作業者が保持する発信タグからの前記発信タグを識別するタグIDを含む測位信号を無線により受信し、
前記複数の基地局がそれぞれ受信した同一の前記タグIDを含む前記測位信号を用いて、前記移動体に対する前記発信タグの相対位置を検出し、
検出した前記相対位置が前記移動体の周辺に設定された警報エリアの内側である場合に、前記相対位置の検出に用いた前記測位信号に含まれる前記タグIDの前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする警報信号を無線により送信する。
【0013】
本開示に係る屋内空間の安全監視システムは、
上空の電波から遮られた屋内空間を通行する作業者が保持し、識別用のタグIDを含む測位信号を送信する発信タグと、
前記測位信号を無線により受信する請求項1~7のいずれか1項に記載の安全監視装置と、
前記安全監視装置の警報送信部が送信する警報信号が、前記発信タグを保持する前記作業者を宛先とする場合に、前記屋内空間において走行する移動体の接近を通知する警報を出力する警報ユニットと、
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、移動体が走行する屋内空間の安全を監視する際に、屋内空間を通行する作業者に対して、監視内容に応じた作業者毎のイベントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、一実施形態に係る屋内空間の安全監視システムにおける作業者が着用するヘルメット側の構成を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、一実施形態に係る屋内空間の安全監視システムにおける移動体側の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1A及び
図1Bの安全監視システムのヘルメット、無線中継局、移動体の屋内空間における配置例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の移動体における測位信号の検知エリアを説明する図である。
【
図4A】
図4Aは、
図1Bの移動体のタグ受信器が
図1Aのヘルメットの発信タグの相対位置を検出する方式の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、
図1Bの移動体のタグ受信器が
図1Aのヘルメットの発信タグの相対位置を検出する方式の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1Bの移動体のタグ受信器が検出した相対位置から警報処理器が特定した
図2の屋内空間の警報エリアにいる作業者に、選択的に警報を通知する運用状態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1Bの移動体の警報処理器が生成する警報信号により警報エリアの作業者に通知する警報レベルと移動体からの距離との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、
図1Bの集中管理ユニットのUI部に表示される管理画面の内容の一例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、
図1Aのヘルメットのタグユニット及び警報制御器の各マイクロコントローラがそれぞれ実行する処理を示すフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、
図1Bの移動体のタグ受信器及び警報処理器の各マイクロコントローラがそれぞれ実行する処理を示すフローチャートである。
【
図8C】
図8Cは、
図1Bの集中管理システムのマイクロコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1A及び
図1Bは、一実施形態に係る屋内空間の安全監視システムにおける作業者が着用するヘルメット側及び移動体側の構成をそれぞれ示す図である。
【0017】
図1A及び
図1Bに示す実施形態の屋内空間の安全監視システム10は、例えば、作業者が装着するヘルメット20と移動体30とに跨がって構築することができる。移動体30からヘルメット20への通信は、例えば、無線LAN回線を通じて行うことができる。安全監視システム10は、移動体30からヘルメット20への無線による通信を中継する無線中継局40と、移動体30の周辺の状況を集中管理する集中管理ユニット50とを有していてもよい。
【0018】
本実施形態の屋内空間の安全監視システム10は、例えば、
図2に示す、上空の電波から遮られた屋内空間100における安全の監視に用いることができる。屋内空間100は、例えば、トンネルの掘削現場であってもよい。屋内空間100では、移動体30が走行することができ、また、作業者110が通行することができる。
【0019】
移動体30は、例えば、トンネルの掘削作業に用いる作業車両、あるいは、掘削した壁面に取り付けるセグメント等の資材の運搬車であってもよい。移動体30は、屋内空間100の底部の路面120を走行することができる。
【0020】
作業者110は、屋内空間100の路面120を通行することもでき、屋内空間100の壁面上部の安全通路130を通行することもできる。安全通路130は、屋内空間100の作業者専用の通路である。安全通路130の作業者110は、路面120を走行する移動体30と接触せずに屋内空間100を安全に通行することができる。屋内空間100の作業者110は、ヘルメット20をそれぞれ装着している。
【0021】
図1Aに示すように、ヘルメット20は、タグユニット21、無線通信機22、警報制御器23、バッテリ24、バイブレーションモータ25及びスピーカ26を備えている。
【0022】
タグユニット21は、発信タグ27及び不図示のマイクロコントローラを有している。発信タグ27は、発信タグ27を識別するタグIDを発信することができるICタグであり、タグIDを記憶したICチップ(図示せず)を有している。作業者110は、ヘルメット20を装着することで、発信タグ27を保持することができる。マイクロコントローラは、CPU(Central Processing Unit )及びメモリを備える。メモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。
【0023】
タグユニット21のマイクロコントローラは、メモリに記憶させたプログラムをCPUが実行することで、複数の情報処理回路を仮想的に構築することができる。構築される情報処理回路の一つは、タグIDを含む測位信号の電波を発信タグ27から定期的に発信させることができる。発信タグ27は、電源を有するアクティブタグ又はセミアクティブタグであってもよく、RF(Radio Frequency )タグのような、電源を有しないパッシブタグであってもよい。タグユニット21は、発信タグ27に固有のID情報等を一定時間間隔で発信するビーコンとして機能することができる。
【0024】
図2のA,Bの各作業者110から移動体30に向かう矢印は、A,Bの各作業者110のヘルメット20に設けたタグユニット21から移動体30に発信される測位信号を示す。
【0025】
図1Aの無線通信機22は、移動体30との間で無線LAN回線を通じた通信を行うことができる。無線通信機22は、移動体30から送信された警報信号を受信する。無線通信機22は、移動体30から送信された警報信号を、直接受信してもよく、無線中継局40を介して受信してもよい。
図2の移動体30から無線中継局40に向かう矢印は、無線中継局40を介して無線通信機22が受信する警報信号を示す。
【0026】
警報制御器23は、バッテリ24の電力で作動する不図示のマイクロコントローラを有している。警報制御器23のマイクロコントローラは、タグユニット21のマイクロコントローラと同じく、CPU及びメモリを備える。メモリは、ROM及びRAMを含み、各ヘルメット20に固有の識別用IDの情報を記憶している。
【0027】
警報制御器23のマイクロコントローラは、メモリに記憶させたプログラムをCPUが実行することで、複数の情報処理回路を仮想的に構築することができる。構築される情報処理回路は、無線通信機22で受信した警報信号を処理し、バイブレーションモータ25を動作させ、あるいは、スピーカ26を動作させることができる。警報信号の処理、バイブレーションモータ25及びスピーカ26の動作は、個別の情報処理回路で行ってもよく、個別の情報処理回路で行う場合よりも少ない数の情報処理回路で行ってもよい。
【0028】
バイブレーションモータ25は、ヘルメット20を装着した作業者110に伝わる振動をヘルメット20に発生させることができる。スピーカ26は、ヘルメット20を装着した作業者110が聴取できる音声を出力することができる。
【0029】
図1Bに示すように、移動体30は、タグ受信器31、警報処理器32及び無線通信機33を有している。本実施形態の屋内空間の安全監視装置は、例えば、タグ受信器31、警報処理器32及び無線通信機33を用いて構成することができる。本実施形態の屋内空間の安全監視方法は、例えば、タグ受信器31、警報処理器32及び無線通信機33を用いて実行することができる。本開示に係る屋内空間の安全監視装置は、後述する集中管理ユニット50をさらに有していてもよい。
【0030】
タグ受信器31は、受信部及びマイクロコントローラ(いずれも図示せず)を有している。
【0031】
タグ受信器31の不図示の受信部は、例えば、移動体30の進行方向における前方側に配置され、進行方向の前方に展開される検知エリア内に存在するタグユニット21が発信する測位信号を受信する。
図3に示す例では、移動体30の進行方向における前方側と後方側とに不図示の受信部がそれぞれ配置され、各受信部に対応する検知エリア34,35が、移動体30の進行方向における前方及び後方にそれぞれ設定された場合を示している。
【0032】
図3の例では、1~3番の作業者110が装着したヘルメット20のタグユニット21が検知エリア34,35の内側にあり、4,5番の作業者110が装着したヘルメット20のタグユニット21が検知エリア34,35の外側にある。
図3の例では、1~3番の作業者110のタグユニット21が発信した測位信号は、タグユニット21が検知エリア34,35の内側にあるので、タグ受信器31の受信部で受信される。4,5番の作業者110が装着したヘルメット20のタグユニット21が発信した測位信号は、タグユニット21が検知エリア34,35の外側にあるので、タグ受信器31の受信部で受信されない。
【0033】
検知エリア34,35内のタグユニット21が発信し、タグ受信器31の受信部が受信した測位信号は、移動体30に対する発信タグ27の相対位置を検出する測位に用いられる。
図3の例では、1~3番の作業者110について発信タグ27の測位が行われる。4,5番の作業者110については、発信タグ27の測位が行われない。
【0034】
タグ受信器31は、タグユニット21の測位信号を用いて発信タグ27の測位を行うために、複数の受信部を有している。複数の受信部は、タグユニット21の測位信号を受信する複数の基地局として機能することができる。
【0035】
タグ受信器31の不図示のマイクロコントローラは、CPU及びメモリを備える。メモリは、ROM及びRAMを含む。タグ受信器31のマイクロコントローラは、メモリに記憶させたプログラムをCPUが実行することで、複数の情報処理回路を仮想的に構築することができる。構築される情報処理回路の一つは、位置検出部として機能することができる。
【0036】
位置検出部は、複数の受信部が受信した測位信号を用いて発信タグ27の測位を行い、移動体30に対する発信タグ27の相対位置を検出することができる。測位信号を用いた発信タグ27の測位は、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、TOB(Time of Arrival )、AoA(Angle of Arrival)のいずれかを利用した方式で行うことができる。
【0037】
RSSI又はTOBを利用した方式では、タグ受信器31は、受信部を3つ以上用いる。
図4Aは、タグ受信器31の位置検出部が移動体30に対する発信タグ27の相対位置を、RSSI又はTOBを利用した方式で検出する例を示している。
図4Aの例では、タグ受信器31が3つの受信部36を用いて、タグユニット21の測位信号をそれぞれ受信する。移動体30における各受信部36の位置は既知であり、各受信部36が内蔵する時計IC(Integrated Circuit)は互いに同期している。
【0038】
タグ受信器31は、同一のタグIDを含み同一時刻に発信された測位信号の各受信部36による受信強度の差により、各受信部36から発信タグ27までの距離を、RSSIを利用した方式でそれぞれ算出することができる。タグ受信器31は、同一のタグIDを含み同一時刻に発信された測位信号の各受信部36による受信時刻の差により、各受信部36から発信タグ27までの距離を、TOBを利用した方式でそれぞれ算出することができる。タグ受信器31は、発信タグ27までの距離に応じた半径r1~r3の円が、移動体30の外で交わる交点を、移動体30に対する発信タグ27の相対位置として検出する。
【0039】
AoAを利用した方式では、タグ受信器31は、受信部を2つ以上用いる。
図4Bは、タグ受信器31の位置検出部が移動体30に対する発信タグ27の相対位置を、AoAを利用した方式で検出する例を示している。
図4Bの例では、タグ受信器31が2つの受信部37を用いて、タグユニット21の測位信号をそれぞれ受信する。各受信部37は、測位信号の受信強度を方向別に検出することができる。各受信部37は、測位信号の方向別受信強度を、例えば、受信方向別の複数の指向性アンテナを用いて検出することができる。移動体30における各受信部37の位置及び受信部37間の距離Lは既知であり、各受信部37が内蔵する時計ICは互いに同期している。
【0040】
タグ受信器31は、同一のタグIDを含み同一時刻に発信された測位信号の各受信部37による受信方向θ1,θ2と、2つの受信部37,37間の距離Lとにより、移動体30に対する発信タグ27の相対位置を検出することができる。
【0041】
ヘルメット20のタグユニット21から移動体30のタグ受信器31への測位信号の無線通信には、例えば、UWB(Ultra Wide Band )、BLE(Bluetooth Low Energy。注;「Bluetooth 」は登録商標)、Quuppa(登録商標)等の技術を用いることができる。Quuppaとは、Bluetooth の無線技術を利用して高精度の測位を実現する屋内測位システムで、正式にはQuuppa Intelligent Locating Systemと呼ばれる。測位信号の無線通信において重要なのは、測位信号を用いてタグ受信器31が検出する移動体30に対する発信タグ27の相対位置の精度である。発信タグ27の測位に必要な精度が担保される限り、UWB、BLE、Quuppa以外の通信技術を測位信号の無線通信に用いてもよい。
【0042】
図1Bの警報処理器32は、不図示の電源の電力で作動するマイクロコントローラ(図示せず)を有している。警報処理器32のマイクロコントローラは、CPU及びメモリを備える。メモリは、ROM及びRAMを含み、発信タグ27のタグIDと発信タグ27をタグユニット21に有するヘルメット20の識別用IDとを関連付けたテーブルを記憶している。
【0043】
警報処理器32のマイクロコントローラは、メモリに記憶させたプログラムをCPUが実行することで、複数の情報処理回路を仮想的に構築することができる。構築される情報処理回路の一つは、タグ受信器31が検出した移動体30に対する発信タグ27の相対位置に基づいて、警報信号の宛先とする作業者110を決定する。
【0044】
マイクロコントローラは、
図5の警報エリア140を移動体30の周辺に設定する。警報エリア140は、例えば、移動体30の進行方向に沿って設定することができる。マイクロコントローラは、タグ受信器31が検出した発信タグ27の相対位置を、タグ検出位置とし、移動体30の周辺に設定される警報エリア140と照合する。
【0045】
マイクロコントローラは、タグ検出位置が警報エリア140の内側であるか否かで、発信タグ27のタグユニット21を有するヘルメット20を装着した作業者110が、移動体30の接近を通知する警報の対象となる位置に進入したか否かを判断する。
【0046】
図5の例では、図中左側に前進する移動体30の前方に警報エリア140が設定されている。移動体30の進行方向が変われば、マイクロコントローラは、変わった後の移動体30の進行方向に沿って警報エリア140を設定することができる。マイクロコントローラは、タグ検出位置が警報エリア140の内側である場合に、警報信号を生成する。
【0047】
マイクロコントローラが生成する警報信号は、警報信号の宛先と、警報信号により作業者110に通知する警報レベルの情報とを含んでいてもよい。警報レベルは、移動体30の接近を作業者110に警報するレベルである。
【0048】
マイクロコントローラは、警報信号の警報レベルを、警報エリア140の内側にあるタグ検出位置の移動体30からの距離に応じたレベルとすることができる。
図6は、移動体30の警報処理器32が生成する警報信号により警報エリア140の作業者110に通知する警報レベルと、移動体30からタグ検出位置までの距離との関係を示すグラフである。
【0049】
図6に示す例では、警報エリア140の内側にあるタグ検出位置の移動体30からの距離を、複数の範囲に区切って、短い距離の範囲ほど高い警報レベルを割り当ててある。警報処理器32のマイクロコントローラは、移動体30が宛先の作業者110に近づきタグ検出位置までの距離が短くなるほど、警報信号によって宛先の作業者110に通知する警報レベルを高くする。
【0050】
マイクロコントローラは、警報信号の宛先を、例えば、警報エリア140の内側にあるタグ検出位置を検出するのにタグ受信器31が用いた測位信号のタグIDに対応する、ヘルメット20の識別用IDとすることができる。測位信号のタグIDに対応するヘルメット20の識別用IDは、マイクロコントローラのメモリのテーブルから割り出すことができる。
【0051】
図1Bの無線通信機33は、ヘルメット20との間で無線LAN回線を通じた通信を行うことができる。無線通信機33は、警報処理器32のマイクロコントローラが生成した警報信号を無線LAN回線に送信する。
【0052】
本実施形態では、警報処理器32のマイクロコントローラが構築する情報処理回路と、無線通信機33のマイクロコントローラが構築する情報処理回路とが協働して、警報送信部として機能することができる。
【0053】
無線中継局40は、無線通信機41を備えている。無線通信機41は、ヘルメット20の無線通信機22と移動体30の無線通信機33との間の通信信号を中継する。
【0054】
集中管理ユニット50は、不図示のマイクロコントローラとユーザインタフェース(UI)部51とを有している。
【0055】
集中管理ユニット50のマイクロコントローラは、CPU及びメモリを備える。メモリは、ROM及びRAMを含む。マイクロコントローラは、メモリに記憶させたプログラムをCPUが実行することで、複数の情報処理回路を仮想的に構築することができる。構築される情報処理回路の一つは、UI部51に管理画面を表示させることができる。
【0056】
UI部51は、移動体30のタグ受信器31が検出したタグ検出位置に基づいて、例えば、
図7に示す、屋内空間100内にいる作業者110の状況を示す管理画面を表示することができる。
【0057】
集中管理ユニット50のマイクロコントローラは、管理画面をUI部51に表示するのに必要なデータを、有線又は無線の通信回線によって、警報処理器32のマイクロコントローラから取得することができる。管理画面の表示に必要なデータは、例えば、座標原点を移動体30上においたローカル座標系における、タグ検出位置に当たる発信タグ27の座標位置、発信タグ27のタグIDに対応するヘルメット20の識別用IDを含む。
【0058】
図7の例の管理画面には、上方から見下ろした屋内空間100に、路面120と安全通路130とが模式的に表示され、路面120上に移動体30が表示される。管理画面における路面120上の移動体30の位置は、移動体30の実際の位置ではない。移動体30が路面120上で実際に移動しても、管理画面における路面120上の移動体30の位置は変わらない。移動体30が路面120上で実際に移動し、移動体30の周辺にいる作業者110の移動体30に対する相対位置が変わると、管理画面における作業者110の位置が路面120又は安全通路130上で移動する。
【0059】
図7の例の管理画面には、移動体30に対する測位信号の検知エリア34,35の相対位置が表示される。管理画面には、測位信号を受信したタグ受信器31が検出したタグ検出位置で、発信タグ27を有するタグユニット21のヘルメット20を着用している、検知エリア34,35内の作業者110の、移動体30に対する相対位置も表示される。
【0060】
集中管理ユニット50のUI部51は、屋内空間100の外に配置してもよく、移動体30の運転室(図示せず)に配置してもよい。
【0061】
本実施形態では、タグユニット21、警報制御器23、タグ受信器31、警報処理器32、集中管理ユニット50の各マイクロコントローラに構築される複数の情報処理回路を、ソフトウェアによって実現する例を示す。もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、タグユニット21、警報制御器23、タグ受信器31、警報処理器32、集中管理ユニット50において、それぞれのマイクロコントローラに構築される複数の情報処理回路を、個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0062】
次に、タグユニット21、警報制御器23、タグ受信器31、警報処理器32、集中管理ユニット50の各マイクロコントローラにおいて実行される処理の手順を説明する。
【0063】
タグユニット21のマイクロコントローラは、マイクロコントローラの稼働中、
図8Aに示すように、発信タグ27のタグIDを含む測位信号28を、無線通信機22から定期的に発信させる(ステップS11)。
【0064】
タグ受信器31のマイクロコントローラの位置検出部は、マイクロコントローラの稼働中、
図8Bに示すように、タグ受信器31の各受信部36,37が同一のタグIDを含む測位信号28を受信する度に、発信タグ27の測位を行う(ステップS21)。位置検出部は、発信タグ27の測位によって、移動体30に対する発信タグ27の相対位置を検出し、タグ検出位置として警報処理器32に引き渡す。
【0065】
警報処理器32のマイクロコントローラは、マイクロコントローラが稼働している間、
図8Bに示す処理を実行する。警報処理器32のマイクロコントローラは、タグ受信器31から引き渡されたタグ検出位置を警報エリア140と照合し(ステップS31)、タグ検出位置にいる作業者110が、移動体30の接近を通知する警報の対象となる位置に進入したか否かを判断する。作業者110が警報の対象位置に進入していない場合は(ステップS31で「進入なし」)、ステップS31をリピートする。作業者110が警報の対象位置に進入した場合は(ステップS31で「進入あり」)、警報処理器32のマイクロコントローラは、警報信号で通知する警報強度を計算する(ステップS32)。
【0066】
警報信号で通知する警報強度は、移動体30上に座標原点をおいたローカル座標系におけるタグ検出位置の座標位置の移動体30からの距離に基づいて、
図6のグラフを用いて警報レベルを割り出すことで、計算することができる。
【0067】
警報処理器32のマイクロコントローラは、計算した警報強度及び進入ID38を、無線通信機33から発報する(ステップS33)。進入IDは、ステップS31で警報の対象となる位置に進入したと判断した作業者110に対応するIDである。進入IDは、例えば、警報処理器32のマイクロコントローラのメモリに記憶させたテーブルにおいて、タグ検出位置の発信タグ27のタグIDに関連付けられたヘルメット20の識別用IDとすることができる。発報した警報強度及び進入ID38は、ヘルメット20の無線通信機22で受信され、警報制御器23に引き渡される。
【0068】
警報処理器32のマイクロコントローラは、集中管理ユニット50のUI部51における管理画面の表示に必要なデータを、集中管理ユニット50と共有する(ステップS34)。集中管理ユニット50と共有するデータは、ローカル座標系におけるタグ検出位置の座標位置、発信タグ27のタグIDに対応するヘルメット20の識別用ID39を含んでいる。タグ検出位置の座標位置、ヘルメット20の識別用ID39は、集中管理ユニット50に引き渡される。
【0069】
警報制御器23のマイクロコントローラは、マイクロコントローラが稼働している間、
図8Aに示す処理を実行する。警報制御器23のマイクロコントローラは、無線通信機22が受信した最新の警報信号に含まれる進入IDを、自己のヘルメット20の識別用IDと照合する(ステップS41)。最新の進入IDが自己の識別用IDと一致した場合は(ステップS41で「自己IDと一致」)、警報制御器23のマイクロコントローラは、警報制御を行って(ステップS42)、ステップS41にリターンする。
【0070】
警報制御器23のマイクロコントローラは、警報制御において、最新の警報信号における警報レベルに応じたパターンで、バイブレーションモータ25、スピーカ26を動作させて、移動体30の接近を通知する警報を作業者110に向けて出力することができる。警報制御器23のマイクロコントローラは、警報制御において、バイブレーションモータ25とスピーカ26とを両方動作させてもよく、どちらか一方だけを動作させてもよい。警報制御器23は、無線通信機33が受信した警報信号が、警報制御器23を有するヘルメット20を装着した作業者110を宛先とする場合に、警報ユニットとして機能し、屋内空間100を走行する移動体30の接近を通知する警報を出力することができる。
【0071】
警報レベルに応じたパターンは、バイブレーションモータ25の動作の場合、例えば、ヘルメット20に間欠的に発生させる振動間の振動停止期間を、警報レベルが高いほど短くするパターンとすることができる。警報レベルに応じたパターンは、スピーカ26の動作の場合、例えば、スピーカ26から出力する音声の音量を、警報レベルが高いほど大きくするパターンとすることができる。
【0072】
最新の進入IDが自己の識別用IDと一致しない場合は(ステップS41で「自己IDと不一致」)、警報制御器23のマイクロコントローラは、警報停止処理を行って(ステップS43)、ステップS41にリターンする。
【0073】
警報制御器23のマイクロコントローラは、警報停止処理において、現在行っているバイブレーションモータ25あるいはスピーカ26の動作を停止させる。
【0074】
本実施形態の屋内空間の安全監視システム10では、屋内空間100の底部の路面120を走行する移動体30に、複数の基地局として機能する受信部36,37を複数有するタグ受信器31を設けた。また、屋内空間100の路面120あるいは安全通路130を通行する作業者110が装着するヘルメット20のタグユニット21に、固有のID情報等を一定時間間隔で発信するビーコンとして機能する発信タグ27を設けた。
【0075】
タグ受信器31のマイクロコントローラは、検知エリア34,35内のタグユニット21が発信した測位信号28を複数の受信部36,37で受信し、受信した測位信号28を用いて発信タグ27の測位を行う。発信タグ27の測位では、移動体30に対する発信タグ27の相対位置を検出し、タグ検出位置とする。警報処理器32のマイクロコントローラは、移動体30の進行方向の前方に設定される警報エリア140の内側に発信タグ27のタグ検出位置があるタグユニット21のヘルメット20を装着した作業者110を宛先とする警報信号を、無線通信機33から送信する。
【0076】
警報信号は、宛先の作業者110が装着するヘルメット20の識別用IDと、移動体30からタグ検出位置までの距離に応じた警報レベルの情報とを含んでいる。自己の識別用IDと一致する識別用IDを含む警報信号を無線通信機22で受信したヘルメット20の警報制御器23のマイクロコントローラは、警報信号の警報レベルに応じたパターンで、バイブレーションモータ25、スピーカ26を動作させる。
【0077】
本実施形態の屋内空間の安全監視システム10によれば、移動体30が路面120を走行する屋内空間100の安全を監視する際に、屋内空間100を通行する作業者110に対して、監視内容に応じた作業者毎のイベントを提供することができる。監視内容に応じた作業者毎のイベントとして、例えば、警報信号を無線通信機22で受信できるヘルメット20を装着した作業者110のうち、移動体30との距離が近い作業者110に、移動体30との距離に応じた警報レベルで警報を通知することができる。
【0078】
警報処理器32のマイクロコントローラは、警報エリア140を、移動体30の進行方向に沿って移動体30の前方に設定したが、例えば、移動体30の側方を含む領域に設定してもよい。
【0079】
警報処理器32のマイクロコントローラは、移動体30の走行速度が高いほど、警報エリア140を移動体30の進行方向において広い範囲に設定してもよい。
図5の例の場合は、移動体30の走行速度が高いほど、マイクロコントローラが設定する警報エリア140の先端位置が、図中の左方にずれて移動体30から遠ざかる。
【0080】
移動体30の走行速度が高いほど、単位時間当たりに移動体30が作業者110に近づく距離は多くなる。移動体30の走行速度が高いほど、移動体30の接近を警報信号によって知らせる対象を遠くの作業者110まで拡げれば、移動体30の走行速度が早い場合に、警報信号により移動体30の接近を早めのタイミングで作業者110に知らせることができる。
【0081】
警報処理器32のマイクロコントローラは、警報エリア140を、屋内空間100の安全通路130を除く範囲に限定して設定してもよい。安全通路130の作業者110は、移動体30が近づいても移動体30と接触しない。屋内空間100に設定する警報エリア140を、安全通路130を除く範囲に限定すれば、移動体30からの距離が近い安全通路130の作業者110が、受け取る必要のない警報信号の宛先に含まれるのを抑制することができる。
【0082】
ヘルメット20のタグユニット21が測位信号28を定期的に出力する周期は、例えば、屋内空間の安全監視システム10の運用時間とバッテリ24の消費との兼ね合いで、短くするのに限界がある。測位信号28の出力周期が長いと、移動体30に対する発信タグ27の相対位置の変化に、移動体30の接近を作業者110に通知する警報信号の警報レベルの変化を追従させるのが困難になる可能性がある。
【0083】
そこで、例えば、
図6に示すように、タグ受信器31の受信部36,37による測位信号28の受信周期よりも短い周期で測定する測距部60を移動体30に設けてもよい。測距部60は、警報エリア140の内側にいる移動体30の最寄りの作業者110までの距離を非接触で測定するセンサ(図示せず)を有している。このセンサは、例えば、レーザレーダであるライダ(LiDAR )センサとすることができる。
【0084】
移動体30に設けた測距部60は、例えば、移動体30の不図示の電源の電力を用いるので、ヘルメット20のバッテリ24の電力でタグユニット21が測位信号28を出力する周期よりも頻繁に、最寄りの作業者110までの距離を測定することができる。
【0085】
警報処理器32のマイクロコントローラは、タグ検出位置が移動体30から最も近いタグユニット21のヘルメット20を宛先とする警報信号の警報レベルを、測距部60が測定する最寄りの作業者110までの距離を用いて、短い周期で更新することができる。
【0086】
本開示は、トンネルの掘削現場に限らず、例えば、施設内、地下等、上空の電波から遮られてGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)等を利用した測位が行えない屋内空間100における安全の監視に、広く利用できる。
【0087】
以上にいくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 屋内空間の安全監視システム
20 ヘルメット
21 タグユニット
22 無線通信機
23 警報制御器
27 発信タグ
28 測位信号
30 移動体
31 タグ受信器(位置検出部)
32 警報処理器(警報送信部)
33 無線通信機(警報送信部)
36,37 受信部(基地局)
50 集中管理ユニット
51 ユーザインタフェース(UI)部
60 測距部
100 屋内空間
110 作業者
120 路面
130 安全通路
140 警報エリア