(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172658
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】医療装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20231129BHJP
A61M 60/585 20210101ALI20231129BHJP
A61M 60/113 20210101ALI20231129BHJP
A61M 60/37 20210101ALI20231129BHJP
A61M 60/279 20210101ALI20231129BHJP
H01H 19/06 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61M1/14 110
A61M60/585
A61M60/113
A61M60/37
A61M60/279
H01H19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084616
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 康二
(72)【発明者】
【氏名】青山 勇貴
【テーマコード(参考)】
4C077
5G219
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD07
4C077KK17
4C077KK25
5G219GS31
5G219HT02
5G219HU05
5G219KS01
5G219KS07
5G219NS25
(57)【要約】
【課題】操作つまみから装置内部への液体の浸入を抑制しつつ、医療装置の静電気放電に対する耐性を確保する。
【解決手段】操作つまみ120は、仮想軸Aを中心に回転可能に筐体100に取り付けられている。筐体100および操作つまみ120の一方は、筐体100および操作つまみ120の他方に向かって仮想軸Aの周りに突出する環状突起部122を有する。他方には、環状突起部122に隙間をあけて沿いつつ環状突起部122を収容する環状凹部150が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を有する装置本体と、
仮想軸を中心に回転可能に前記筐体に取り付けられた操作つまみとを備え、
前記筐体および前記操作つまみの一方は、前記筐体および前記操作つまみの他方に向かって前記仮想軸の周りに突出する環状突起部を有し、
前記他方には、前記環状突起部に隙間をあけて沿いつつ前記環状突起部を収容する環状凹部が設けられている、医療装置。
【請求項2】
前記操作つまみは、前記環状突起部を有し、
前記筐体には、前記環状凹部が設けられている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記環状突起部を有し、
前記操作つまみには、前記環状凹部が設けられている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記環状突起部の内周面と前記環状凹部との最小隙間は、前記環状突起部の外周面と前記環状凹部との最小隙間より小さい、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化装置の構成を開示した先行技術文献として、特開2005-304681号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された血液浄化装置は、血液回路と、操作入力手段とを備える。操作入力手段は、ロータリエンコーダからなるダイアル式の操作手段である。操作入力手段は、つまみ部を含む。つまみ部が操作されて回転することにより、血液回路に配設されたポンプの駆動速度が任意に設定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療装置の運転条件を操作する操作つまみの上方に、薬液などの液体が配置される場合がある。この場合、特許文献1に記載された血液浄化装置においては、操作つまみに垂れ落ちた液体が、操作つまみと操作つまみが設けられる筐体との間の隙間へ入り込むことにより、装置内部に液体が浸入するおそれがある。また、医療装置は、静電気が発生しやすい環境下に配置される場合が多い。この場合、静電気が上記の隙間を通じて装置内部に印加されるおそれがあるため、医療装置は静電気放電に対する耐性が確保されていることが必要となる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、操作つまみから装置内部への液体の浸入を抑制しつつ、静電気放電に対する耐性を確保することができる、医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく医療装置は、装置本体と、操作つまみとを備える。装置本体は、筐体を有する。操作つまみは、仮想軸を中心に回転可能に筐体に取り付けられている。筐体および操作つまみの一方は、筐体および操作つまみの他方に向かって仮想軸の周りに突出する環状突起部を有する。他方には、環状突起部に隙間をあけて沿いつつ環状突起部を収容する環状凹部が設けられている。
【0007】
本発明の一形態においては、操作つまみは、環状突起部を有する。筐体には、環状凹部が設けられている。
【0008】
本発明の一形態においては、筐体は、環状突起部を有する。操作つまみには、環状凹部が設けられている。
【0009】
本発明の一形態においては、環状突起部の内周面と環状凹部との最小隙間は、環状突起部の外周面と環状凹部との最小隙間より小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作つまみから装置内部への液体の浸入を抑制しつつ、医療装置の静電気放電に対する耐性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る医療装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1におけるII部を拡大して医療装置が備える操作つまみ周辺の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2の操作つまみ周辺の構成をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【
図4】
図3におけるIV部を拡大して筐体と操作つまみとの間の隙間の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る医療装置が備える操作つまみ周辺の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態に係る医療装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
以下の実施の形態の説明においては、医療装置である血液浄化装置について説明する。各実施の形態に係る血液浄化装置は、持続緩徐式血液浄化療法(Continuous Renal Replacement Therapy:CRRT)に用いられる。ただし、血液浄化装置は、持続的血液濾過透析法(continuous hemodiafiltration:CHDF)、持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration:CHF)、および、持続的血液透析法(continuous hemodialysis:CHD)のいずれかに用いられる血液浄化装置であってもよい。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る医療装置の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る医療装置1は、装置本体10と、取付部20とを備える。
【0015】
装置本体10には、患者の血液などの体液、または、血液浄化器からの排液などが流れる回路を取り付けることができる。また、装置本体10は、図示しない制御部を収容している。制御部は、これらの回路に取り付けられたポンプおよびバルブの動作を制御する。
【0016】
装置本体10は、ディスプレイ部11を含む。ディスプレイ部11は、装置本体10のうちの上方に設けられている。ディスプレイ部11のスクリーンに医療装置1に関する情報が出力される。
【0017】
取付部20は、ディスプレイ部11より上方に薬液を収容した薬液バッグなどの収容体を取り付け可能である。このため、医療装置1は、IPX1(JIS C 0920:2003)以上の防水性能を有していることが好ましい。
【0018】
図2は、
図1におけるII部を拡大して医療装置が備える操作つまみ周辺の構成を示す斜視図である。
図3は、
図2の操作つまみ周辺の構成をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【0019】
図2および
図3に示すように、ディスプレイ部11は、筐体100を有する。筐体100には、操作部110が設けられている。操作部110は、操作つまみ120と、シャフト130と、エンコーダ140とを有する。
【0020】
操作つまみ120は、仮想軸Aを中心に回転可能に筐体100に取り付けられている。
図3に示すように、操作つまみ120は、本体部121と、環状突起部122とを有する。操作つまみ120は、樹脂により構成されている。
【0021】
本体部121は、その外周部を操作者が把持する部分である。本体部121には、環状突起部122を嵌め込むための内径部およびシャフト130を嵌め込むための穴が設けられている。
【0022】
環状突起部122は、本体部121の筐体100側の内径部に嵌め込まれている。環状突起部122は、筐体100および操作つまみ120の一方から、筐体100および操作つまみ120の他方に向かって仮想軸Aの周りに突出している。本実施の形態における環状突起部122は、操作つまみ120から筐体100に向かって仮想軸A周りに突出している。
【0023】
シャフト130は、一端において操作つまみ120の穴と接続されている。シャフト130は、操作つまみ120を軸支している。シャフト130は、外周の一部がDカットされている。シャフト130は、たとえば、真鍮などの金属により構成されている。なお、シャフト130は、金属に限定されず、樹脂などであってもよい。
【0024】
シャフト130は、内部が中空である筒形状を有している。シャフト130が筒形状であることによって径方向に弾性変形しやすいため、シャフト130に対して操作つまみ120の穴と嵌合しやすくすることができる。シャフト130は、仮想軸A方向において筐体100に挿通されている。
【0025】
エンコーダ140は、シャフト130の他端と接続されている。エンコーダ140は、筐体100に内蔵されている。エンコーダ140は、機械式、光学式、磁気式または電磁誘導式などのいずれの検出方式であってもよい。
【0026】
筐体100には、環状凹部150が設けられている。環状凹部150は、環状突起部122に隙間をあけて沿いつつ環状突起部122を収容している。
【0027】
操作つまみ120が仮想軸Aを中心に回転することによって、操作つまみ120とともにシャフト130およびエンコーダ140が回転する。これにより、医療装置1の運転条件を変更することができる。本実施の形態においては、操作つまみ120の操作によって、医療装置1における図示しない血液ポンプの流量を調整することができる。なお、操作つまみ120による医療装置1の運転条件の操作は、血液ポンプの流量の調整に限定されない。
【0028】
図4は、
図3におけるIV部を拡大して筐体と操作つまみとの間の隙間の構成を示す断面図である。
【0029】
図4に示すように、筐体100および操作つまみ120の間に隙間が設けられている。当該隙間は、操作つまみ120の外側から内側にかけて曲折した、いわゆるラビリンス構造により構成されている。
【0030】
環状突起部122の内周面122aと環状凹部150との最小隙間G1は、環状突起部の外周面122bと環状凹部150との最小隙間G2より小さい。このように、本実施の形態における筐体100および操作つまみ120の間の隙間は、環状突起部122および環状凹部150との間において操作つまみ120の内側へ向かうにしたがって小さくなっている。
【0031】
本実施の形態における操作つまみ120は、取付部20に取り付けられた薬液バッグに収容された薬液などの液体が上方に配置される。医療装置1の使用などによって、この液体が操作つまみ120に垂れ落ちる場合がある。この場合、液体が操作つまみ120と筐体100との間の隙間へ入り込むことにより、装置内部に液体が浸入するおそれがある。
【0032】
上述した操作つまみ120の外側から当該隙間へ液体が入り込んだ場合、液体の浸入経路は、
図4中の隙間内の矢印方向となる。この経路は、操作つまみ120の外周から内部構造に至るまでの距離が直線状である場合と比較して長い。これにより、操作つまみ120から装置内部への液体の浸入が抑制される。
【0033】
また、医療装置1は、ローラポンプなどを有する医療機器の駆動または医療従事者などの帯電によって静電気が発生しやすい環境下に配置される場合が多い。この場合、静電気が装置内部に印加されるおそれがあるため、医療装置1は静電気放電に対する耐性が確保されていることが必要となる。
【0034】
上述した操作つまみ120において静電気が発生した場合、静電気の伝播する経路は、液体が浸入する場合と同様に、
図4中の隙間内の矢印方向となる。この経路は、操作つまみ120の外部から内部構造に至るまでの距離が直線状である場合と比較して長い。これにより、操作つまみ120における静電気に対する沿面距離が長くなる。
【0035】
一般に、静電気放電に対する耐性を確保するために、絶縁すべき導体同士は直線距離で1kVあたり1mmの沿面距離をあける必要がある。本実施の形態における医療装置1においては、15kVの静電気放電に対する耐性を満足する必要があるため、直線距離で15mm以上の距離を必要とする。本実施の形態においては、当該隙間がラビリンス構造を構成し、沿面距離が長くなることによって、この直線距離を15mm以下にすることができる。これにより、15kVの静電気放電に対する耐性を確保しつつ、操作つまみ120を小型化することができる。
【0036】
本発明の実施の形態1に係る医療装置1においては、操作つまみ120が有する環状突起部122と筐体100に設けられた環状凹部150との間に隙間をあけつつ、環状凹部150が環状突起部122を収容することによって、当該隙間がラビリンス構造を構成することができる。これにより、隙間が直線状である場合と比較して、当該隙間を通る液体の浸入経路および静電気の沿面距離を長くすることができるため、操作つまみ120から装置内部への液体の浸入を抑制しつつ、医療装置1の静電気放電に対する耐性を確保することができる。
【0037】
本発明の実施の形態1に係る医療装置1においては、環状突起部122と環状凹部150との間の隙間を装置内部に向かうにしたがって狭くすることによって、当該隙間が同じ幅である場合と比較して、装置内部への液体の浸入を抑制することができる。
【0038】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る医療装置について説明する。本発明の実施の形態2に係る医療装置は、環状突起部および環状凹部の構成が本発明の実施の形態1に係る医療装置1と異なるため、本発明の実施の形態1に係る医療装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態2に係る医療装置が備える操作つまみ周辺の構成を示す斜視図である。
【0040】
図5に示すように、本発明の実施の形態2に係る医療装置1Aが備える筐体200は、本体部201と、環状突起部202を有する。
【0041】
本体部201には、環状突起部202を嵌め込むための内径部が設けられている。環状突起部202は、本体部201の内径部に嵌め込まれている。
【0042】
筐体200には、操作部210が設けられている。操作部210は、操作つまみ220と、シャフト130と、エンコーダ140とを有する。
【0043】
本実施の形態における環状突起部202は、筐体200から操作つまみ220に向かって仮想軸A周りに突出している。操作つまみ210には、環状凹部250が設けられている。環状凹部250は、環状突起部202に隙間をあけて沿いつつ環状突起部202を収容している。
【0044】
筐体200および操作つまみ220の間に隙間が設けられている。当該隙間は、操作つまみ220の外側から内側にかけて曲折したラビリンス構造を構成している。操作つまみ220の外側から当該隙間へ液体が入り込んだ場合、液体の浸入経路は、
図5中の隙間内の矢印方向となる。また、操作つまみ220において静電気が発生した場合、静電気の伝播する経路は、液体が浸入する場合と同様に、
図5中の隙間内の矢印方向となる。これにより、隙間が直線状である場合と比較して、当該隙間を通る液体の浸入経路および静電気の沿面距離を長くすることができる。
【0045】
本発明の実施の形態2に係る医療装置1Aにおいては、筐体200が有する環状突起部202と操作つまみ220に設けられた環状凹部250との間に隙間をあけつつ、環状凹部250が環状突起部202を収容することによって、当該隙間がラビリンス構造を構成することができる。これにより、隙間が直線状である場合と比較して、当該隙間を通る液体の浸入経路および静電気の沿面距離を長くすることができるため、操作つまみ220から装置内部への液体の浸入を抑制しつつ、医療装置1Aの静電気放電に対する耐性を確保することができる。
【0046】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,1A 医療装置、10 装置本体、11 ディスプレイ部、20 取付部、100,200 筐体、110,210 操作部、120,220 操作つまみ、121,201 本体部、122,202 環状突起部、122a 内周面、122b 外周面、130 シャフト、140 エンコーダ、150,250 環状凹部、A 仮想軸、G1,G2 隙間。