(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017266
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】曲線引金具の流れ量測定方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
B60M 1/28 20060101AFI20230131BHJP
B60M 1/234 20060101ALI20230131BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230131BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20230131BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230131BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B60M1/28 R
B60M1/234 K
G06T7/60 150Z
G06T7/70 A
G06T7/00 350B
G06T7/00 300D
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121395
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松村 周
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA09
2F065CC34
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ17
2F065QQ25
2F065QQ38
5L096AA06
5L096BA08
5L096BA18
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA16
5L096FA69
5L096HA04
5L096HA08
5L096JA09
(57)【要約】
【課題】 光学撮像手段としてエリアカメラを用いて撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定するシステム及びその方法の提供。
【解決手段】 走行する車両の屋根上に設置された光学撮像手段により撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定する方法である。画像は、所定速度で走行する車両の屋根上に固定されたエリアカメラからなる光学撮像手段により所定のフレームレートにて電柱を含む架線周囲を撮像されたものであって、所定間隔で撮像された2フレーム以上の画像を重ね合わせ、曲線引金具のイヤー及び根元の画像上でのそれぞれの座標の移動から曲線引金具の流れ量を算出することを特徴とする。流れ量測定システムは、上記の流れ量測定方法を処理するシステムであって、車両から撮像された画像を走行速度とともに保存するデータベースを含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する車両の屋根上に設置された光学撮像手段により撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定する方法であって、
前記画像は、所定速度で走行する前記車両の前記屋根上に固定されたエリアカメラからなる前記光学撮像手段により所定のフレームレートにて電柱を含む架線周囲を撮像されたものであって、
所定間隔で撮像された2フレーム以上の前記画像を重ね合わせ、前記曲線引金具のイヤー及び根元の前記画像上でのそれぞれの座標の移動から前記曲線引金具の流れ量を算出することを特徴とする曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項2】
前記イヤー及び前記根元のそれぞれの移動のベクトルから流れ量を算出する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項3】
撮像された1フレームの前記画像から前記曲線引金具を特定する工程と、更に、前記イヤー及び前記根元を特定する工程と、からなる画像解析を含み、前記座標を決定することを特徴とする請求項1記載の曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項4】
前記電柱及び/又はこれに取り付けられる器具に基づいて前記曲線引金具を含む画像範囲を抽出した上で、前記曲線引金具を特定することを特徴とする請求項3記載の曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項5】
前記車両の走行区間に基づいて、前記画像に撮像される曲線引金具の形態を機械学習させておくことを特徴とする請求項4記載の曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項6】
前記電柱、及び、これに取り付けられる前記器具の形態を合わせて機械学習させておくことを特徴とする請求項5記載の曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項7】
前記曲線引金具、前記イヤー及び前記根元について、マッチングスコアを伴ったテンプレートマッチング法で特定することを特徴とする請求項3乃至6のうちの1つに記載の曲線引金具の流れ量測定方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちの1つに記載の流れ量測定方法を処理するシステムであって、
前記車両から撮像された前記画像を走行速度とともに保存するデータベースを含むことを特徴とする流れ量測定システム。
【請求項9】
前記データベースは、前記画像の撮像位置を合わせて保存することを特徴とする請求項8記載の流れ量測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する車両の屋根上に設置された光学撮像手段により撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定する方法及びそのシステムに関し、特に、光学撮像手段としてエリアカメラを用いて撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定する方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
架空電車線(架線)は、一般的に、その両端部に自動張力調整装置を設置され、架線を構成する各線条につき1~2t程度の張力を印加されて空中に架設されている。これにより外気温の変化などで伸縮したとしても、一定の張力が維持されることになる。一方、架線の線条に固定されこれを支持する可動ブラケットや曲線引金具などの架線との接続部は、架線の伸縮とともに線路方向へと移動する。このとき、曲線引金具においては、移動量(流れ量)が一定値に達すると、ストッパにより移動規制が働くため、架線に沿った張力の伝達が阻害され、架線の架設構成が崩れてしまうことも生じ得る。また、可動ブラケットにおいては、電柱を中心に回動するために線路方向への移動に伴って架線との接続部のまくらぎ方向への移動も生じ、架線の架設構成の崩れを生じ得る。そこで、作業員による架線の架設状態や架線金具の状態などの日常的な目視点検が行われているが、長大な路線に沿った目視作業は容易ではなく、これを省力化すべく、自動化が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、架線金具の検査において、走行する車両上に設置された2台のラインカメラを用いて撮像される画像から架線金具の状態を画像解析によって検出する方法を開示している。ラインカメラによって取得した画像からまず架線を除去し、残った構造物を検出することで、架線設備を枕木方向から見た際に、架線と異なる方向に延伸している架線金具を検出できる。かかる方法を用いれば、車両の走行速度と連動した画像から架線金具の向きを求めてその流れ量を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、曲線引金具について、その流れ量は上記したようなライン上に素子を並べて移動方向にスキャンするようにして画像を取得できるラインカメラを用いて測定できるが、装置が煩雑で高価である。そこで、平面に素子を並べた安価なエリアカメラを用いて、流れ量が一定値を超えていないかどうかを判定できる程度の測定をし、かかる判定に基づいて当該箇所を作業員により目視点検を行うことが検討される。一方で、走行する車両からのエリアカメラによる画像では、曲線引き金具を含むフレーム内に映り込む位置(画角)がシャッタータイミングによって変化するため、流れ量を得ることは難しい。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、光学撮像手段としてエリアカメラを用いて撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定するシステム及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による流れ量を測定する方法は、走行する車両の屋根上に設置された光学撮像手段により撮像される画像から曲線引金具の流れ量を測定する方法であって、前記画像は、所定速度で走行する前記車両の前記屋根上に固定されたエリアカメラからなる前記光学撮像手段により所定のフレームレートにて電柱を含む架線周囲を撮像されたものであって、所定間隔で撮像された2フレーム以上の前記画像を重ね合わせ、前記曲線引金具のイヤー及び根元の前記画像上でのそれぞれの座標の移動から前記曲線引金具の流れ量を算出することを特徴とする。
【0008】
かかる特徴によれば、光学撮像手段としてエリアカメラを用いたときであっても簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0009】
上記した発明において、前記イヤー及び前記根元のそれぞれの移動のベクトルから流れ量を算出する工程を含むことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0010】
上記した発明において、撮像された1フレームの前記画像から前記曲線引金具を特定する工程と、更に、前記イヤー及び前記根元を特定する工程と、からなる画像解析を含み、前記座標を決定することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0011】
上記した発明において、前記電柱及び/又はこれに取り付けられる器具に基づいて前記曲線引金具を含む画像範囲を抽出した上で、前記曲線引金具を特定することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、画像からの部材の特定精度を高め、結果として、特定測定精度を高めつつ簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0012】
上記した発明において、前記車両の走行区間に基づいて、前記画像に撮像される曲線引金具の形態を機械学習させておくことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、画像からの部材の特定精度を高め、結果として、測定精度を高めつつ簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記電柱、及び、これに取り付けられる前記器具の形態を合わせて機械学習させておくことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、画像からの部材の特定精度を高め、結果として、簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0014】
上記した発明において、前記曲線引金具、前記イヤー及び前記根元について、マッチングスコアを伴ったテンプレートマッチング法で特定することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0015】
上記した発明である流れ量測定方法を処理するシステムであって、前記車両から撮像された前記画像を走行速度とともに保存するデータベースを含むことを特徴とする。
【0016】
かかる特徴によれば、光学撮像手段としてエリアカメラを用いた画像であっても、簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【0017】
上記した発明において、前記データベースは、前記画像の撮像位置を合わせて保存することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、簡便に曲線引金具の流れ量を測定できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による1つの実施例における曲線引金具の流れ量測定方法のフロー図である。
【
図2】エリアカメラと曲線引金具の位置関係を示す車両の正面図である。
【
図3】曲線引金具の画像範囲を長方形で抽出した全体画像である。
【
図4】曲線引金具の画像範囲において根元の座標を決定する画像である。
【
図5】2フレームの曲線引金具の像を重ね合わせた全体画像である。
【
図6】曲線引金具の流れ量の測定を処理するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による曲線引金具の流れ量測定方法及びかかる方法を処理するシステムの実施例について、
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0020】
図1に
図2を併せて参照すると、まず、曲線引金具5を撮影した画像を準備する(S1)。かかる画像は、鉄道軌道上を走行する鉄道車両などの車両1の屋根2の上に固定された光学撮像手段により撮像された画像である。光学撮像手段としてはエリアカメラ9を用い、電柱3やその他の器具4に取り付けられた曲線引金具5を画角に納めるように設置される。これにより、電柱を含む架線周囲を撮像することで曲線引金具5を撮像できるようにする。
【0021】
また、後述する画像解析において、テンプレートマッチング法によって曲線引金具5のイヤー及び根元を特定するため、撮像される曲線引金具5の向きを一定にして、テンプレートマッチングを容易に行い得るようにすることが好ましい。
【0022】
例えば、
図2(a)に示すように、曲線引金具5が車両1の紙面右側の取付け位置から中央に向けて延びている場合、右上を向くようにエリアカメラ9を車両1の左側に取り付ける。そして、同図(b)に示すように、曲線引金具5が車両1の紙面左側の取付け位置から中央に向けて延びている場合に、左上を向くようにエリアカメラ9を車両1の紙面右側に取り付ける。これによって曲線引金具5が左右どちらにあっても、曲線引金具5を先端側から撮像することができ、テンプレートマッチングを容易とし得る。予めエリアカメラ9を左右両側に取り付けておいて、曲線引金具5の位置によって左右を切り替えるようにすることが好ましい。
【0023】
撮像にあたっては、1つの曲線引金具5を複数の画像に含めるように、車両を所定の速度で走行させるとともに、エリアカメラ9の撮像間隔を所定のフレームレートに設定する。速度及びフレームレートは一定とされることが好ましいが、後述する画像の重ね合わせ(S5)に必要な複数フレームの画像で1つの曲線引金具5を撮像できればこの限りではない。このようにして車両1の走行する方向に所定間隔で撮像された画像を準備する。
【0024】
なお、各画像は、電柱3や器具4との位置関係を特定されていることが好ましい。例えば、予め電柱3を検出できるセンサを設置しておき、かかるセンサからの信号を記録しながら撮像を行い、電柱3の位置と画像を対応させ、その位置情報を付与しておくとよい。これにより各画像と個々の曲線引金具5との対応が明確になる。
【0025】
次に、準備した画像から電柱3や器具4の付近の画像を選択する(S2)。1つの電柱3(又は器具4)付近の画像から2フレーム以上の画像を選択し、かかる1つの電柱3に対応する一連の画像全てに1つの曲線引金具5の像が含まれているようにする。これによって後述する画像解析を必要とする画像の数を少なくして、簡便な手順とできる。なお、上記したように、撮像において電柱3や器具4との位置関係の情報を各画像に付与しておくことで画像の選択を容易とする。
【0026】
そして、
図3に示すように、選択した1フレームずつの画像から、画像解析を行って曲線引金具5を含む画像範囲8を抽出する(S3)。ここでは、画像中の曲線引金具5を特定した上で、曲線引金具5の像を囲う長方形を生成し、かかる長方形を画像範囲8とする。このとき、画像範囲8における長方形の左上の角の座標を画像のピクセルで示して記録する。なお、同図において、座標の原点は全体画像の左上の角とした。その結果、抽出した画像範囲8の左上の角の座標は(1556,188)であった。なお、座標(X,Y)は、X方向を車両1の幅方向、Y方向を車両1の進行方向としている。
【0027】
さらに、
図4に示すように、抽出した画像範囲8の左上を原点として、曲線引金具5の架線との接続部であるイヤー5a及び根元5bの座標を決定する(S4)。イヤー5a及び根元5bは、画像解析により特定し、その座標を決定する。この画像解析には、テンプレートマッチング法を用いることが好ましい。ここで、例えば、根元5bの座標5b-1は(1181,352)であった。画像範囲8の原点の座標は、全体画像において(1556,188)であったから(
図3参照)、全体画像において根元5bの座標はこれらの和から(2737、540)となる。
【0028】
なお、イヤー5a及び根元5bは、曲線引金具5の画像範囲8を抽出せずとも特定し得て、その座標を決定し得る。一方、上記したように曲線引金具5の画像範囲8の抽出(S3)と、イヤー5a及び根元5bの座標の決定(S4)との二つの工程からなる画像解析を含むことで、座標の特定が簡便になり好ましい。
【0029】
図5に示すように、1つの曲線引金具5を撮像した複数フレームの画像を重ね合わせる(S5)。ここでは2フレーム分の画像を重ね合わせているが、3フレーム以上としてもよい。重ね合わせたそれぞれの画像において、イヤー5a及び根元5bの座標は、全て全体画像の左上角を原点とした場合の座標として表示されている。なお、ここでは、上記した例とは別の曲線引金具5についての画像を重ね合わせた例を示しており、座標の数値は上記と異なる。
【0030】
そして、イヤー5a及び根元5bのそれぞれの画像上での座標の移動から曲線引金具5の流れ量を算出する(S6)。例えば、イヤー5aの画像上での移動について、重ねた画像の1フレーム目を示す時刻t=0のとき、座標は(1718,1884)である。同様に2フレーム目となるt=1のとき(1720,802)である。これらから、画像内での速度を一定であると仮定した上で、Y方向(紙面上下方向)の移動についての式、Y1=-1082t+1884、を得る。なお、この式は3フレーム以上の画像を重ねた複数の点から例えば直線に近似するなどして得てもよい。同様に、根元5bの画像上での移動について、Y2=-736t+1474を得る。
【0031】
エリアカメラ9から得た画像上において、曲線引金具5を進行方向となるY方向に移動させるとイヤー5aと根元5bとの移動量が異なる。これは、イヤー5aと根元5bとの車両1からの高さが異なり、エリアカメラ9からの距離も異なるためである。そこで、本実施例においては、曲線引金具5の根元5bを鉛直下方から見た場合の位置を想定し、このときのイヤー5aと根元5bとのY方向のずれを流れ量として算出する。
【0032】
そのため、エリアカメラ9は、その光軸を車両1の進行方向に対して垂直な平面内に向けていることが好ましい。本実施例においてはそのように設置したエリアカメラ9によって画像を得ており、画像のY方向の中央をエリアカメラ9の鉛直上方としている。
【0033】
そこで、上記したY2の式において、根元5bが画像の中央にある時刻tを求める。画像の上下の距離は2160ピクセルなので、Y2=1080として、t=0.5353が求まる。これをY1の式に代入することで、Y1=1305が算出される。そして、曲線引金具5の画像上での流れ量は、根元5bに対するイヤー5aの進行方向のずれなので、|Y1―Y2|=225(pix)として算出される。
【0034】
画像上でのピクセル値による流れ量から実際の流れ量を推定するために、所定の係数を乗じてmm単位などの長さに換算する。係数としては、予め定めておいてもよいが、画像上での架線の太さや曲線引金具5や器具4の特定の部位の寸法などから換算するようにしてもよい。これによれば、架線の高さが変わっても対応可能となる。ここでは、架線の直径に基づき、84pixが40mm相当との換算値を得ており、流れ量は225pixを換算して約107mmとなった。
【0035】
ところで、2地点間を移動する物体の任意の時刻の位置は、等速直線運動の場合、その移動を表すベクトルから求められる。上記した実施例においても、任意の時刻の曲線引金具5におけるイヤー5a及び根元5bのそれぞれの位置は、時刻t=0及び時刻t=1の2点間のベクトルから求められる。但し、本実施例においては、車両1に固定したエリアカメラ9を略直進させて得た画像を用い、車両1の進行方向をY方向としたので、画像のX方向の移動は無視できる。そのため、Y方向の移動のみを対象として移動ベクトルを数式化し、流れ量の算出に用いることとした。
【0036】
また、上記では2地点間の移動を数式化したが、3地点以上であってもよい。同様に画像は略直進するエリアカメラ9から得たものであるから、曲線引金具5の複数地点の移動は直線で近似できる。そして、上記と同様に移動ベクトルを数式化できて、流れ量を算出し得る。つまり、画像の重ね合わせ(S5)においては、上記したように、3フレーム以上の画像を重ね合わせることとしてもよい。
【0037】
以上のようにして、エリアカメラ9を用いた場合でも曲線引金具5の流れ量を簡便に測定することができる。得られた流れ量に基づき、作業員による目視検査を行う曲線引金具5を選択することで、曲線引金具5の保守を簡便に行うことができる。また、可動ブラケットについても同様の方法で流れ量を測定できる。
【0038】
なお、上記したように画像解析にはテンプレートマッチング法を用い得る。テンプレートマッチングにおいては、マッチングスコアを伴って行われることが好ましい。マッチングスコアを用いることで、最終的に得られた曲線引金具5の流れ量の信頼度を相対的に表示でき、その結果、目視検査を必要とする箇所の取捨選択を簡便に行い得る。
【0039】
ところで、
図6に示すように、上記した流れ量測定方法を処理するシステム10は、記憶装置からなる記憶部12を備えるパーソナルコンピュータ(PC)11を含む。記憶部12には市販の画像解析ソフトや流れ量を算出するプログラムが保存されている。これらのプログラムを図示しないCPUやメモリ等を備える制御部19で実行することでPC11を、画像解析部13、演算部14として機能させることができる。画像解析部13は、上記したテンプレートマッチング法を用い得るものとすることが好ましい。また、記憶部12は、さらにデータベース15としての記憶領域を備え、エリアカメラ9で撮像された画像が記憶させられる。このような構成で、上記した曲線引金具5の流れ量測定方法を処理することができる。
【0040】
上記した画像解析では曲線引金具5を特定できて画像範囲8を抽出できればよいが、車両1の走行区間に設置されている曲線引金具5の形態を機械学習させてその結果をデータベース15に保存して画像解析部13に反映させ得ることが好ましい。これによって、曲線引金具5の特定精度を高め得る。また、電柱3や器具4などの周辺部材の形態も併せて機械学習させておくことで、部材の特定精度を高め得て、結果として流れ量の測定を容易とし得る。
【0041】
データベース15は、上記したようにエリアカメラ9で撮像された画像を保存するが、かかる画像を撮像した時刻の車両1の走行速度とともに保存することにすることも好ましい。これによって、電柱3付近の画像を選択する際に、選択する画像の数や間隔を適宜定め得て、画像解析を簡便にし得る。
【0042】
さらに、データベース15は、キロ程などの画像の撮像位置を合わせて保存することも好ましい。画像に写った曲線引金具5を取り付けた電柱3や器具4を容易に特定し得て、画像の選択など、流れ量の測定を簡便にし得る。
【0043】
以上、本発明の代表的な実施例及びこれに伴う変形例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 屋根
3 電柱
4 器具
5 曲線引金具
5a イヤー
5b 根元
8 画像範囲
9 エリアカメラ
10 システム