(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172666
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】トイレサポートステップ
(51)【国際特許分類】
A47K 17/02 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A47K17/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084628
(22)【出願日】2022-05-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1. ウェブサイト https://www.richell.co.jp/,https://www.richell.co.jp/newitem,https://www.richell.co.jp/shop/baby/detail/120258,ウェブサイトの掲載日 令和4年1月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000107066
【氏名又は名称】株式会社リッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】谷田 泉穂
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】番匠 香純
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037BA14
(57)【要約】
【課題】洋式トイレの便座までの高さを補うとともに、足の踏ん張りを補助しやすく、コンパクトなトイレサポートステップの提供を目的とする。
【解決手段】平面視で便座に座って両足を載せる高面部に形成した左右一対の足載せ部と、前記一対の足載せ部の間に配設され正面側から乗り降り可能であって前記高面部より高さの低い低面部とを一体的に備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で便座に座って両足を載せる高面部に形成した左右一対の足載せ部と、
前記一対の足載せ部の間に配設され正面側から乗り降り可能であって前記高面部より高さの低い低面部とを一体的に備えることを特徴とするトイレサポートステップ。
【請求項2】
前記高面部は基部を介して前記左右一対の足載せ部が連設され、全体として平面視で略コ字形状又は略U字形状であり、
前記略コ字形状又は略U字形状の正面内側に前記低面部を形成してあることを特徴とする請求項1に記載のトイレサポートステップ。
【請求項3】
前記基部の奥行き寸法(D2)は前記低面部の奥行き寸法(D1)よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のトイレサポートステップ。
【請求項4】
前記低面部の奥行き寸法(D1)が15~20cmで、前記足載せ部の奥行き寸法(D3)が15~30cmであることを特徴とする請求項3に記載のトイレサポートステップ。
【請求項5】
前記左右一対の足載せ部は前記低面部の上に左右に分離して形成してあることを特徴とする請求項1に記載のトイレサポートステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式トイレで使用するトイレサポートステップに関する。
【背景技術】
【0002】
背が低い幼児や小柄な人は、洋式トイレで踏み台(ステップ)を使用することがある。
例えば、特許文献1の幼児用プラスチック製踏み台は、階段状に1段目と2段目の踏み面を有して便座までの高さを補うものであり、階段状構造であることで1段の段差が小さく、幼児が無理なく段差を跨いで乗り降りでき、2段目を用便中の足載せ部としても利用できる。
しかし、このような2段構造を利用して高さを補うには、各踏み面に安定して幼児が乗るための広さが必要で、2つの踏み面を合せた踏み台の奥行きが大きくなり、コンパクト性に欠けてしまう。
特許文献2のトイレ用踏み台は、排便時の足の踏ん張りを補助するための足置き部を備えた踏み台であるが、便座に座った状態から足を置くためのものであって、便座までの高さを補う目的で使用するには安定性に問題がある。
また、特許文献3に開示する洋式トイレ用踏み台は、便座に着座した状態で踏ん張りを補助するための左右一対のブロックと、この一対のブロックの上に登るためのブロックが天板上に載置されてあり、幼児が載るための大きさを要する各ブロックや天板が別体で、踏み台全体のサイズがやはり大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3136256号公報
【特許文献2】特開2019-107076号公報
【特許文献3】実用新案登録第3217150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、洋式トイレの便座までの高さを補うとともに、足の踏ん張りを補助しやすく、コンパクトなトイレサポートステップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るトレイサポートステップは、平面視で便座に座って両足を載せる高面部に形成した左右一対の足載せ部と、前記一対の足載せ部の間に配設され正面側から乗り降り可能であって前記高面部より高さの低い低面部とを一体的に備えることを特徴とする。
ここで、低面部が一対の足載せ部の間に配設されているとは、例えば、前記高面部は基部を介して前記左右一対の足載せ部が連設され、全体として平面視で略コ字形状又は略U字形状であり、前記略コ字形状又は略U字形状の正面内側に前記低面部を形成してあることをいう。
これにより、幼児等が低面部を利用して便座に座った後、その左右外側で低面部よりも高さのある足載せ部に両足を載せて踏ん張ることができる。
そのため、従来の2段構造を有するステップよりも奥行きがコンパクトであっても、低面部で便座までの高さを補えるとともに、高面部で排便時の踏ん張りを補助できる。
このように高面部は排便時に利用可能でありながら、幼児等が低面部から便座に座る際や排尿時には妨げとならず、ステップの使い勝手がよい。
【0006】
本発明において、前記基部の奥行き寸法(D2)は前記低面部の奥行き寸法(D1)よりも小さいことが好ましい。
例えば、低面部の奥行き寸法(D1)は幼児が体勢を反転や変更しやすいように約15~20cmであることが好ましいが、この低面部の奥行き寸法(D1)よりも基部の奥行き寸法(D2)が小さいことで、ステップ本体の奥行き寸法(D)をコンパクトにできる。
また、足載せ部の奥行き寸法(D3)は足を踏ん張りやすいように約15~30cmであることが好ましい。
本発明において、低面部が一対の足載せ部の間に配設されている別の例として、前記左右一対の足載せ部が前記低面部の上に左右に分離して形成してあってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るトイレサポートステップは、左右一対の足載せ部の間にこれよりも高さの低い低面部を一体的に備えてあり、従来の2段構造を有するステップよりも奥行きがコンパクトでありながら、低面部で便座までの高さを補えるとともに、高さのある足載せ部で足の踏ん張りを補助でき、ステップを目的に合せて利用しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るトイレサポートステップの構造例として、(a)に実施例1の正面斜視図を、(b)にその背面斜視図を示す。
【
図2】実施例1について、(a)に正面図を、(b)にその平面図を示す。
【
図5】実施例2について、(a)に正面斜視図を、(b)にその平面図を示す。
【
図6】実施例3について、(a)に正面斜視図を、(b)にその平面図を示す。
【
図7】実施例4について、(a)に正面斜視図を、(b)にその平面図を示す。
【
図8】実施例5について、(a)に正面斜視図を、(b)にその平面図を示す。
【
図9】補助便座に座った状態の幼児7人に対し、床面から浮いた踵までの距離等を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るトイレサポートステップについて、図に基づいて説明する。
図1~3に、実施例1のトイレサポートステップ(以下、ステップ本体10という)の構造例を示し、
図5~8に実施例2~5を、
図4に洋式トイレでの使用例を示す。
図4に示すように、ステップ本体10をトイレ1に近接するように床面Fに配置した際に、トイレと対向する側をステップ本体の背面とする。
以下、ステップ本体の正面から背面までを奥行き寸法D、床面Fから平面までを高さ寸法H、洋式トイレについては、床面Fから便座1aの座面までを便座高さ寸法Tとする。
また、
図2(b)に示すように、ステップ本体の右側面から左側面までを幅寸法W、左右側面間の略中央をステップ本体の中央として説明し、各寸法値は床面とおよそ水平又は垂直に測定した値をいう。
【0010】
図1(a)、(b)に示すように、ステップ本体10は下部を開放した筒状の外壁11と、外壁11に支持された平面視略U字形状の高面部31と、高面部31の正面内側に内壁16を介して連設された低面部21とが一体的に成形されている。
低面部21は、ステップ本体の正面側に位置して幼児等が乗り降り可能な踏み面であり、この低面部よりも上方に高面部31が配設されてある。
高面部31のうち、低面部21の左右外側に便座1aに座った状態で両足を載せられる一対の足載せ部32、32を有し、この一対の足載せ部が背面側で基部33に連結されている。
なお、本実施例はステップ本体が樹脂製の例であるが、幼児等が安定して足を載せられるように低面部及び/又は高面部に滑り止め加工が施されていてもよい。
【0011】
外壁11は、前壁12及び後壁13が右壁14a,左壁14bを介して連設された略四角形の筒状であり、下側の各角部が脚部15a~15dとなって床面Fに接地している。
前壁12は、
図2(a)に示すように中央部12aの左右両側に側部12b、12bが垂設された正面視略凹状であり、下端部にやや外側に膨出させたリブ12cを有する。
後壁13は、
図2(b)に示すように正面側に緩やかに凹んだ凹部13aが中央側に形成され、この凹部13aがトイレ1に沿って対向することで、トイレに接近した状態でステップ本体を使用できる。
本実施例は、低面部21が平面視略半円状の例である。
低面部21は、
図1(a)に示すように略直線状の前縁部21aから前壁の中央部12aが垂設され、略半円弧状の周縁部21bに沿って内壁16が立設されている。
高面部31は、その内周縁部31aが略半円弧状の内壁16に連設されている。
さらに外壁11に対しては、前壁12の側部12bに足載せ部32の前縁部32aが、後壁13及び左右壁14a,14bに外周縁部31bが連設支持されている。
なお、外壁や内壁は、高面部や低面部に対してほぼ垂直に連設されてあってもよいが、傾斜を有していてもよい。
例えば、
図3に示すように低面部21に立設された内壁16が、背面側に5°程度倒れるように傾斜を有して基部33に連設されていてもよい。
これにより、低面部21上で幼児が体勢を変える際に内壁16が妨げとなりづらい。
また、筒状である外壁11が、本実施例のように平面(高面部31)側よりも底面(脚部15a~15d)側に裾広がりとなっていてもよい。
【0012】
本発明者らは、幼児7人に実際に便座に座ってもらった。
具体的には、
図9に示すように年齢が約2~5歳の幼児7人に対して、便座高さTが約41~47cmの一般的な洋式トイレの便座上に、さらに平均高さ2cmの市販されている補助便座を載置し、この補助便座に座ってもらっている。
補助便座に座った状態で、各幼児の踵から床面までの距離をメジャーで測定したところ、床面から約17~24cm踵が浮いていることがわかった。
なお、各幼児の平均膝下身長(両足の膝下身長の平均)は18~25cmであった。
この膝下身長の値は、「平成20年度機械製品の安全性向上のための子どもの身体特性データベースの構築及び人体損傷状況の可視化シミュレーション技術の調査研究報告書」(発行者:社団法人 日本機械工業連合会、平成21年2月発行、p58「項目:10.脛骨上縁高」、「男女計」)に記載の2~4歳までの平均値(2歳:18cm、3歳:22cm、4歳:24cm)と一致していた。
このことから、
図2(a)に示すように、床面Fから足載せ部32までの高さ(ステップ本体の高さ)寸法Hは、幼児が便座に座った状態で足を載せやすいように約17~31cmが好ましく、25cm程度がより好ましい。
一方、低面部21の高さ寸法H
1は、幼児が一人で乗り降りしやすいように約9~15cm程度であってもよい。
【0013】
図2(b)に示すように、前壁12と後壁13間の最大奥行きがステップ本体の奥行きであり、このステップ本体の奥行き寸法Dが約25~30cmであってもよい。
これにより、従来よりもステップの奥行きがコンパクトである。
また、左右壁14a、14b間の最大幅(ステップ本体の幅)寸法Wは、トイレ空間でステップ本体を利用しやすいように洋式トイレの幅よりも小さいことが好ましく、例えば35~40cmであってもよい。
低面部21の奥行き寸法D
1は、前縁部21aから周縁部21bまでの最大寸法であり、幼児が体勢を反転や変更しやすいように約15~20cmが好ましく、6歳頃の足の平均サイズが17~18cmであることから、足がしっかり乗るように18~20cmがより好ましい。
また、低面部21の幅寸法W
1も、同様に約15~20cmであってもよい。
低面部21の形状は、
図5、6に示す実施例2、3のように略円状や略楕円状であってもよく、
図7に示す実施例4のように略四角形状であってもよい。
一方、高面部31の形状も、
図5~7に示すように略コ字形状であってもよく、これに合せて内壁16も略コ字形状であってもよい。
図2(b)に示すように、足載せ部32の奥行き寸法D
3は、踏ん張り方がよくわからない3歳頃の足の平均サイズが約15cmであることから、約15cm以上であることが好ましいが、ステップ本体の奥行きをコンパクトにするためにはD
3は約30cm以下であることが好ましい。
また、D
1を背面側に延長した基部33の奥行き寸法D
2も、ステップ本体の奥行きをコンパクトにするために、例えばD
1の半分以下であることが好ましく、
図6に示すように約1/3、
図7に示すように1/5程度であってもよい。
なお、足載せ部32の幅寸法W
2は、4歳頃の足の平均幅が約6cmであることから、約6cm以上であることが好ましく、例えば6~12cmであってもよい。
これにより、低面部で幼児が体勢を変えやすく、かつ便座に座った状態で足載せ部に足を載せて踏ん張りやすくなる。
本実施例のようにステップ本体の中央側に低面部21を、その両外側に一対の足載せ部32を有することで、幼児が低面部に乗って便座に座った後、両足を外側に広げるように足載せ部に載せることができる。
このようにすると、足載せ部をステップ本体の背面側に設けた場合に比べて、ステップ本体の奥行き寸法Dがコンパクトになる。
【0014】
さらに
図8に、実施例5を示す。
実施例5は、左右一対の足載せ部32,32が低面部21の上に左右に分離して形成された例である。
すなわち、高面部が基部を有しない例である。
この例では、低面部21の背面側に2つの内壁16a、16bを介して足載せ部32,32が連設され、低面部の奥行き寸法D
1が足載せ部の奥行き寸法D
3よりも大きい。
例えば、D
1が25cm、D
3が15cm程度で、ステップ本体の奥行き寸法Dが30cm以下であってもよい。
これにより、便座までの高さを補うことが可能で、かつ排便時の踏ん張りを補助でき、ステップ本体もコンパクトである。
【符号の説明】
【0015】
10 ステップ本体
11 外壁
16 内壁
21 低面部
31 高面部
32 足載せ部
【手続補正書】
【提出日】2022-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明に係るトイレサポートステップは、平面視で便座に座って両足を載せる高面部に形成した左右一対の足載せ部と、前記一対の足載せ部の間に配設され正面側から乗り降り可能であって前記高面部より高さの低い低面部とを一体的に備えることを特徴とする。
ここで、低面部が一対の足載せ部の間に配設されているとは、例えば、前記高面部は基部を介して前記左右一対の足載せ部が連設され、全体として平面視で略コ字形状又は略U字形状であり、前記略コ字形状又は略U字形状の正面内側に前記低面部を形成してあることをいう。
これにより、幼児等が低面部を利用して便座に座った後、その左右外側で低面部よりも高さのある足載せ部に両足を載せて踏ん張ることができる。
そのため、従来の2段構造を有するステップよりも奥行きがコンパクトであっても、低面部で便座までの高さを補えるとともに、高面部で排便時の踏ん張りを補助できる。
このように高面部は排便時に利用可能でありながら、幼児等が低面部から便座に座る際や排尿時には妨げとならず、ステップの使い勝手がよい。