IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172678
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】作業進捗管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20231129BHJP
   E01C 19/27 20060101ALI20231129BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20231129BHJP
【FI】
G06Q10/06
E01C19/27
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084646
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 大斗
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】日暮 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】多胡 尚
【テーマコード(参考)】
2D052
5L049
【Fターム(参考)】
2D052AB01
2D052AC01
2D052BB05
2D052CA07
5L049AA06
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】作業の進捗度合と色または模様との対応付けを容易にする作業進捗管理装置を提供する。
【解決手段】作業進捗管理装置は、制御装置を有し、作業の進捗度合を色または模様によって表示する作業進捗管理装置であって、前記制御装置は、前記色または模様の配列を記憶する記憶部と、前記作業の完了を判断する目標値を設定するとともに、特定の進捗度合に到達したことを示す特定の色または模様を、前記記憶部に記憶されている前記配列の中から選択して設定する設定部と、前記配列に沿って、前記特定の色または模様を含むように、前記色または模様と前記作業の進捗度合とを対応付けたテーブルを生成するテーブル生成部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置を有し、作業の進捗度合を色または模様によって表示する作業進捗管理装置であって、
前記制御装置は、
前記色または模様の配列を記憶する記憶部と、
前記作業の完了を判断する目標値を設定するとともに、特定の進捗度合に到達したことを示す特定の色または模様を、前記記憶部に記憶されている前記配列の中から選択して設定する設定部と、
前記配列に沿って、前記特定の色または模様を含むように、前記色または模様と前記作業の進捗度合とを対応付けたテーブルを生成するテーブル生成部と、
を備える、ことを特徴とする作業進捗管理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
建設機械の作業量に基づいて、前記進捗度合を算出する、進捗算出部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の作業進捗管理装置。
【請求項3】
前記建設機械の作業範囲を表す地形図に対して、前記進捗度合に対応付けられた前記色または模様を、重畳して表示する表示部を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の作業進捗管理装置。
【請求項4】
前記建設機械は、締固め機械であり、
前記進捗算出部は、前記締固め機械による締固め作業の前記目標値である目標締固め回数と、実際に締固め作業が行われた実締固め回数とに基づいて、前記作業の進捗度合を算出する、ことを特徴とする請求項2に記載の作業進捗管理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記実締固め回数が前記目標締固め回数に到達したことを示す色または模様を固定し、
前記テーブル生成部は、前記固定された色または模様を基準として前記テーブルを生成する、ことを特徴とする請求項4に記載の作業進捗管理装置。
【請求項6】
前記テーブル生成部は、前記設定部により前記特定の色または模様が変更された場合に、前記配列に沿って、変更後の色または模様を含むように前記テーブルを生成する、ことを特徴とする請求項4に記載の作業進捗管理装置。
【請求項7】
前記色の配列は、隣接する色同士の差分が予め設定されたしきい値よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の作業進捗管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業進捗管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を用いた工事において、掘削機械による掘削作業の進捗度合や、締固め機械による締固め作業の進捗度合など、作業工程の目標に対する現在の進捗度合を管理する作業進捗管理装置がある。作業進捗管理装置において、進捗度合を管理者に提示する方法として、作業範囲を表す立体的もしくは平面的な地形図を、所定の管理ブロックに区切り、目標に対する現在の進捗度合(例えば、掘削作業における目標地形の標高に対する現在の地形の標高の差分や、締固め作業における目標締固め回数に対する現在の締固め回数)を、所定のルールに従って色などの要素に置き換えて、管理ブロックごとに、地形図に重畳して表示する技術がある。これにより、作業範囲全体の進捗度合を、直感的かつ俯瞰的に把握できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業範囲をメッシュ状に区切り、各メッシュ点での設計地形の標高と現況地形の標高との差分を取得し、盛土が必要な部分(現況地形の標高が設計地形の標高よりも低い部分)や、切土が必要な部分(現況地形の標高が設計地形の標高よりも高い部分)を、色や模様で表示する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、作業範囲をメッシュ状に区切り、締固め機械が締固めたメッシュ点の締固め回数を、色で表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6839078号公報
【特許文献2】特許第3362833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような作業進捗管理装置においては、進捗度合を表現する色や模様の種類が一般的に多くなる。例えば、締固め機械の進捗度合を管理する場合においては、目標とする締固め回数が8回だとすると、締固め機械が前輪と後輪とで締固め作業をするような機種の場合、前輪と後輪それぞれ0.5回ずつ締固めたと見なすことが一般的であり、その進捗度合を色で表現しようとすると、16色で管理することが望ましい。
【0007】
また、作業進捗管理装置においては、進捗度合を管理したい作業の種類によって、進捗度合の変化に対応した、色などの変化のパターンが異なる。
【0008】
例えば、掘削作業の進捗度合を管理する場合、一般的に、1回の掘削作業で変化する進捗度合は、掘削作業前の地形や目標地形、掘削作業の内容により、大きく異なる。このため、1回の掘削作業で、どの程度進捗度合が変化したかを、おおよその粒度で表現することが重要であり、系統の近い色の濃淡が連続的に変化するようなパターンで表現されることが、望ましい。
【0009】
一方、締固め作業の進捗度合を管理する場合、一般的に、1回の締固め作業で変化する進捗度合は、1回(もしくは0.5回)単位である。このため、締固め作業の進捗度合は、現在の進捗度合を明確に判断可能なように、系統の異なる色で離散的に変化するようなパターンで表現されることが、望ましい。
【0010】
また、表示する色の種類をユーザの意向で変更可能にすることが望まれる。例えば、進捗度合が目標に到達したことを表現する色として、一般的に正常状態を表す緑系統の色を好むユーザもいれば、それ以上作業が必要ないことを強調するため赤系統の色を好むユーザもいる。このため、色の変化のパターンを維持しつつ、進捗度合を表現する色を、ユーザの意向で変更可能であることが、望ましい。
【0011】
また、締固め機械による締固め作業においては、進捗度合として一般的に締固め回数が用いられ、目標とする締固め回数は、工事の内容ごとに異なることが一般的である。そのため、目標とする締固め回数が変わると、目標に到達したことを表す色も変わってしまうことがある。工事の内容ごとに目標に到達したことを表す色が変わってしまうと、管理する上で混乱を招くおそれがある。
【0012】
また、締固め作業は、日中は太陽光の下で行われ、夜間は照明の下で行われることが一般的である。このため、作業が開始されたことを表す色、作業が完了したことを表す色、作業が途中段階であることを表す色が、操作者に視認されにくい色に設定されていることもある。視認されにくい色が設定されていると、進捗度合を誤認するおそれがある。そのため、工事の内容や周囲の環境に応じて、色の変化のパターンを維持しつつ、作業の進捗を表す色を任意の色に変更できることが、望ましい。
【0013】
しかし、特定の進捗度合を表わす色を変更しようとすると、それ以外の進捗度合を表す多くの色を、色の変化のパターンを満たすように注意を払いつつ、個別に変更する必要があり、非常に煩雑な作業であった。
【0014】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業の進捗度合と色または模様との対応付けを容易にする作業進捗管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る作業進捗管理装置は、制御装置を有し、作業の進捗度合を色または模様によって表示する作業進捗管理装置であって、前記制御装置は、前記色または模様の配列を記憶する記憶部と、前記作業の完了を判断する目標値を設定するとともに、特定の進捗度合に到達したことを示す特定の色または模様を、前記記憶部に記憶されている前記配列の中から選択して設定する設定部と、前記配列に沿って、前記特定の色または模様を含むように、前記色または模様と前記作業の進捗度合とを対応付けたテーブルを生成するテーブル生成部と、を備える、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業の進捗度合と色または模様との対応付けを容易にする作業進捗管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】タイヤローラの一例を示す側面図。
図2図1に示すタイヤローラを上方から視た模式図。
図3】作業進捗管理装置の一例を示す概略構成図。
図4】管理ブロックの一例を示す説明図。
図5a】目標入力画面の一例を示す説明図。
図5b】目標入力画面の一例を示す説明図。
図6】待機画面の一例を示す説明図。
図7】作業画面の一例を示す説明図。
図8】位置情報の取得状態および機能部の稼働状態の正常性判定処理の一例を示すフローチャート。
図9】作業記録処理の一例を示すフローチャート。
図10】作業開始前処理の一例を示すフローチャート。
図11a】色配列の一例を示す説明図。
図11b】目標とする締固め回数の色を終点として選択し、その色に、目標とする締固め回数の数値を割り当てた状態を示す説明図。
図11c】色配列に沿って、一定の方向に数値を減算しながら、色配列に数値を割り当てた状態を示す説明図。
図11d】割り当てる値が0となった色の一つ手前の色を始点として選択し、始点から終点までの色配列および割り当てられた数値により作成された、締固め回数-色換算テーブルを示す説明図。
図12】色配列の中から目標とする色を選択し、残りの2色から上限色と下限色を一定の規則で選択した状態を示す説明図。
図13】本発明に係る制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態に係る作業進捗管理装置について説明する。図13に示すように、作業進捗管理装置は、制御装置500を有し、作業の進捗度合を色または模様によって表示する作業進捗管理装置であって、制御装置500は、色または模様の配列を記憶する記憶部510と、作業の完了を判断する目標値を設定するとともに、特定の進捗度合に到達したことを示す特定の色または模様を、記憶部510に記憶されている配列の中から選択して設定する設定部520と、配列に沿って、特定の色または模様を含むように、色または模様と作業の進捗度合とを対応付けたテーブルを生成するテーブル生成部530と、を備える。本実施形態では、作業進捗管理装置の中でも、管理対象を、締固め機械による締固め作業における締固め回数とした、締固め管理装置100を説明する。締固め管理装置100は、締固め作業の進捗度合を、色または模様によって表示するものである。
【0019】
<機器構成の説明>
(ハードウェアの外観と配置の説明)
図1は、締固め機械としてのタイヤローラ1の一例を示す側面図である。図2は、図1に示すタイヤローラ1を上方から視た模式図である。なお、説明の便宜上、タイヤローラ1の進行方向を基準に運転者から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。本実施形態では、左右方向を車幅方向とも記載する。タイヤローラ1は、締固め作業(転圧作業ともいう)を行う締固め機械である。タイヤローラ1は、図1および図2に示すように、車体2と、車輪3とを備える。
【0020】
車体2は、構造体としてのフレーム内に図示しないエンジン、油圧ポンプ、走行モータといった装置を内蔵する。車輪3は、路面や地面などを転圧して締め固めるための転圧ローラである。車輪3は、車体2の前部側に設けられた前輪3aと、車体2の後部側に設けられた後輪3bとを含む。タイヤローラ1は、図示しない車体用制御装置により、エンジン、油圧ポンプ、走行モータといった各種装置を駆動制御して走行する。
【0021】
(締固め管理装置100)
図3は、実施形態にかかる締固め管理装置100の一例を示す概略構成図である。締固め管理装置100は、通信ユニット4と、車載コントローラ10と、モニタユニット20とを備えている。車載コントローラ10と、モニタユニット20の後述する記憶部24および端末側制御部30とは、締固め管理装置100の制御装置50を構成する。
【0022】
(通信ユニット4)
通信ユニット4は、アンテナ5と、通信装置6とを有する。アンテナ5は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)による測位衛星から測位信号を受信する一対のGNSSアンテナである。アンテナ5は、図1に示すように、車体2に設けられたルーフ2aに設けられている。アンテナ5は、図2に示すように、車体2の中心Aに対して車幅方向の右側に配置された右側アンテナ5Rと、車体2の中心Aに対して車幅方向の左側に配置された左側アンテナ5Lとを含む。
【0023】
通信装置6は、外部との通信を行うための装置である。通信装置6は、例えば、アンテナ5と共に車体2のルーフ2a上に受信アンテナが設けられ、無線通信によってインターネット回線に接続される。なお、図1および図2では、通信装置6の受信アンテナの記載を省略している。
【0024】
(車載コントローラ10)
車載コントローラ10は、車体2に搭載される。車載コントローラ10は、車載側通信部12と、各種の演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)としての位置情報取得部14および車載側制御部16とを備える。なお、位置情報取得部14および車載側制御部16は、一体の中央処理装置であってもよいし、別体の中央処理装置であってもよい。また、車載コントローラ10は、各種の制御プログラムおよび各種のデータを記憶する図示しない記憶部を備える。
【0025】
(車載側通信部12)
車載側通信部12は、通信ユニット4と有線接続により通信する。なお、車載側通信部12は、通信ユニット4と無線通信するものであってもよい。車載側通信部12は、通信ユニット4のアンテナ5で受信したGNSSの測位信号を受け取り、位置情報取得部14へと出力する。また、車載側通信部12は、通信ユニット4の通信装置6を介してインターネット回線に接続される。車載側通信部12は、インターネット回線から、例えば、GNSSの補正情報や現在の時刻情報といった情報を取得し、位置情報取得部14および車載側制御部16へと出力する。また、車載側通信部12は、有線又は無線通信により、後述するモニタユニット20の端末側通信部22と通信し、モニタユニット20との間で各種データをやり取りする。
【0026】
(位置情報取得部14)
位置情報取得部14は、位置計算部142と、位置情報管理部144とを含む。位置計算部142は、アンテナ5からの測位信号に基づいて、タイヤローラ1の位置情報を取得する。位置計算部142は、右側位置計算部142Rと、左側位置計算部142Lとを有する。右側位置計算部142Rは、右側アンテナ5Rで受信したGNSSの測位信号を周知の信号処理手法により処理して、右側アンテナ5Rの地理座標系での座標である右アンテナ位置PR(図2参照)を算出する。左側位置計算部142Lは、左側アンテナ5Lで受信したGNSSの測位信号を周知の信号処理手法により処理して、左側アンテナ5Lの地理座標系での座標である左アンテナ位置PL(図2参照)を算出する。また、位置計算部142は、インターネット回線から右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLを算出するための補正情報を取得し、取得した補正情報に基づいて右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLを補正する。
【0027】
位置情報管理部144は、タイヤローラ1の位置情報の取得状態が正常な状態であるか否かを判定する。位置情報の取得状態が正常な状態であるとは、位置計算部142での右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLの算出精度が十分な状態であることを意味する。例えば、アンテナ5で受信する測位信号が不安定だったり、上記補正情報を取得するためのインターネット回線への接続が完了するまでに時間を要したりすることで、右アンテナ位置PR及び左アンテナ位置PLの算出を、十分な精度で行えないことがある。そのため、タイヤローラ1がキーオンされて締固め管理装置100の始動が開始されてから、位置情報の取得状態が正常となるまで(測位が安定化するまで)には、待機時間が生じ得る。位置情報管理部144は、右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLの算出精度が十分であれば、位置情報の取得状態が正常な状態であると判定し、右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLの算出精度が不十分であれば、位置情報の取得状態が正常な状態でないと判定する。位置情報管理部144は、判定結果を後述するモニタユニット20の情報処理部32へと出力する。
【0028】
(車載側制御部16)
車載側制御部16は、作業記録処理部162と、稼働情報管理部164とを備えている。作業記録処理部162は、位置情報取得部14の位置計算部142から出力された、タイヤローラ1の位置情報に基づいて、タイヤローラ1により締め固めた範囲(転圧範囲)を算出し、該算出した転圧範囲を記録する作業記録処理を実行する。作業記録処理部162は、車両姿勢計算部162Aと、転圧位置計算部162Bと、管理ブロック生成部162Cと、転圧判定部(進捗算出部)162Dと、転圧作業管理部(進捗算出部)162Eとを含む。
【0029】
車両姿勢計算部162Aは、位置計算部142の右側位置計算部142Rから右アンテナ位置PRを取得し、左側位置計算部142Lから左アンテナ位置PLを取得する。ここで、図2に示すように、タイヤローラ1の中心Aに対する右側アンテナ5Rの車幅方向のオフセット量DR1および車両前後方向のオフセット量DR2は、予め定められている。同様に、タイヤローラ1の中心Aに対する左側アンテナ5Lの車幅方向のオフセット量DL1および車両前後方向のオフセット量DL2も、予め定められている。タイヤローラ1の中心Aは、平面視した場合の、タイヤローラ1の前後方向及び左右方向の中心である。車両姿勢計算部162Aは、取得した右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLと、上記オフセット量DR1、DR2、DL1、DL2とに基づいて、タイヤローラ1の地理座標系での座標である現在の中心位置PAと、タイヤローラ1の現在の向きVfを算出する。車両姿勢計算部162Aは、算出したタイヤローラ1の中心位置PAおよび向きVfを転圧位置計算部162Bに出力する。
【0030】
転圧位置計算部162Bは、車両姿勢計算部162Aで算出されたタイヤローラ1の中心位置PAおよび向きVfを取得する。ここで、図2に示すように、タイヤローラ1の中心Aに対する前輪3aの回転軸までのオフセット量LFと、タイヤローラ1の中心Aに対する後輪3bの回転軸までのオフセット量LRとは、予め定められている。また、前輪3aの転圧幅WFおよび後輪3bの転圧幅WRも、予め定められている。転圧位置計算部162Bは、取得した中心位置PAおよび向きVfと、上記オフセット量LFと、転圧幅WFとに基づいて、前輪3aの接地線の地理座標系での座標である接地線位置GLF(図2の太い実線参照)を算出する。同様に、転圧位置計算部162Bは、取得した中心位置PAおよび向きVfと、上記オフセット量LRと、転圧幅WRとに基づいて、後輪3bの接地線の地理座標系での座標である接地線位置GLR(図2の太い実線参照)を算出する。転圧位置計算部162Bは、算出した接地線位置GLF、GLRを転圧判定部162Dに出力する。
【0031】
管理ブロック生成部162Cは、作業範囲M(図7参照)を仮想的に区画した複数の管理ブロックMBを生成する。図4は、管理ブロックMBの一例を示す説明図である。管理ブロック生成部162Cは、図示するように、作業範囲Mをメッシュ状に複数の管理ブロックMBに区切る。なお、作業範囲Mは、締固め作業を行う路面や地面といったマップ上の範囲であり、図示しない記憶部に予め定め記憶されていてもよいし、インターネット回線を通じて取得されるものであってもよい。管理ブロック生成部162Cは、生成した複数の管理ブロックMBを転圧判定部162Dに出力する。
【0032】
転圧判定部162Dは、管理ブロック生成部162Cで生成された複数の管理ブロックMBと、転圧位置計算部162Bで算出された前輪3aの接地線位置GLFおよび後輪3bの接地線位置GLRとを取得する。転圧判定部162Dは、図4にドット模様を付して示すように、タイヤローラ1の移動量(作業量)に基づいて、接地線位置GLF、GLRのいずれかが各管理ブロックMBの四隅の点のいずれかを通過したと判定したとき、当該管理ブロックMBが1回転圧されたと判定する。図4では、実線矢印で示すように、前輪3aの接地線位置GLFの動きのみを例示している。また、図4では、説明のため、タイヤローラ1が複数の管理ブロックMBを斜めに横切る動きを例示している。実際のタイヤローラ1は、管理ブロックMBの配列方向に沿って往復する動きを行うことが多い。なお、転圧判定部162Dは、接地線位置GLF、GLRのいずれかが各管理ブロックMBの中心点といった四隅以外の位置を通過したときに、当該管理ブロックMBが1回転圧されたと判定してもよい。また、タイヤローラ1のように前輪3aと後輪3bの2か所で転圧することを想定している締固め機械の場合は、例えば前輪3aもしくは後輪3bが管理ブロックMBを通過したとき、管理ブロックMBが0.5回転圧されたとみなし、管理ブロックMBを両輪で転圧して初めて1回転圧したと判定しても良い。転圧判定部162Dは、判定結果を転圧作業管理部162Eに出力する。
【0033】
転圧作業管理部162Eは、転圧判定部162Dから転圧されたと判定された管理ブロックMBの情報を取得し、各管理ブロックMBが転圧されたと判定された回数である転圧回数(締固め回数ともいう)を算出する。具体的には、転圧作業管理部162Eは、タイヤローラ1による締固め作業の目標値である目標締固め回数と、実際に締固め作業が行われた実締固め回数とに基づいて、締固め作業の進捗度合を算出する。転圧作業管理部162Eは、算出した各管理ブロックMBの締固め回数を後述する情報処理部32に出力し、記憶部24に記憶させる。
【0034】
(稼働情報管理部164)
稼働情報管理部164は、作業記録処理を行うための機能部、すなわち、車載コントローラ10の位置計算部142および作業記録処理部162が正常に稼働できる状態であるか否かを判定する。以下、位置計算部142および作業記録処理部162を合わせて、単に、機能部とも記載する。上記機能部が正常に稼働できる状態とは、位置計算部142が測位信号を処理可能な状態であり、かつ、車両姿勢計算部162A、転圧位置計算部162B、管理ブロック生成部162C、転圧判定部162Dおよび転圧作業管理部162Eにより各計算を実行することができる状態であることを意味する。
【0035】
ここで、車載コントローラ10は、例えば、始動時に健全性チェックといった付加的な処理が実行されたり、タイヤローラ1に搭載される他の関連機器や周囲環境との相互作用に基づいて、段階的に始動処理が進んだりすることがある。また、車載コントローラ10は、車載側通信部12を介して通信装置6によってインターネット回線に接続され、インターネット回線から現在の時刻情報を取得することで、位置計算部142や作業記録処理部162が正常に稼働できる状態となる。つまり、タイヤローラ1がキーオンされて締固め管理装置100の始動が開始されてから、作業記録処理を正常に実行できる状態となるまでには、待機時間が生じ得る。また、車載コントローラ10は、例えば故障等に起因して作業記録処理を正常に実行できない状態となる可能性もある。
【0036】
そこで、稼働情報管理部164は、車載コントローラ10の各機能部の始動が完了しているか否かの情報、インターネット回線との接続状態の情報、各機能部に故障が発生しているか否かの情報などを取得する。そして、稼働情報管理部164は、取得した上記情報に基づいて、位置計算部142および作業記録処理部162の稼働状態(以下、単に「機能部の稼働状態」と称する)が始動中の状態であるか、正常に稼働できる状態であるか、故障などにより異常な状態であるかを判定する。なお、稼働情報管理部164は、タイヤローラ1がキーオンされて締固め管理装置100が始動する際に、車載コントローラ10の他の機能部よりも速く稼働可能な状態となる。稼働情報管理部164は、判定結果を後述する情報処理部32へと出力する。
【0037】
(モニタユニット20)
モニタユニット20は、タイヤローラ1の操作者が、締固め管理装置100による管理作業を行うための、操作端末である。モニタユニット20は、例えば、タブレット型コンピュータである。モニタユニット20は、タイヤローラ1の運転席に着座した操作者が操作するため、図1に示すように、運転席の近傍に搭載される。モニタユニット20は、図3に示すように、端末側通信部22と、記憶部24と、外部入出力部26と、モニタ28と、端末側制御部30とを備える。
【0038】
(端末側通信部22)
端末側通信部22は、有線又は無線通信により、車載側通信部12と通信し、車載コントローラ10と各種のデータをやり取りする。端末側通信部22は、端末側制御部30に接続されている。なお、車載側通信部12と端末側通信部22との無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)といった周知の通信規格であればよい。なお、モニタユニット20が有線接続可能なコンピュータであれば、車載コントローラ10とモニタユニット20とは、有線接続により通信するものであってもよい。
【0039】
(記憶部24)
記憶部24は、端末側制御部30に接続された記憶領域であり、各種の制御プログラムおよび各種のデータを記憶する図示しない記憶部を有する。記憶部24は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)といったストレージであってもよいし、RAM(Random Access Memory)といった一時的な記憶領域としてのメモリであってもよい。記憶部24は、端末側制御部30と接続されており、端末側通信部22を介して、車載コントローラ10から出力された各種データや端末側制御部30で生成された各種データ等を記憶する。記憶部24は、例えば、作業記録処理部162で生成された作業記録のデータや、後述する情報処理部32で生成された締固め回数-色換算テーブル、後述する帳票生成部34で生成された帳票のデータを記憶する。また、記憶部24は、色または模様の配列を記憶する。本実施形態では、記憶部24に、色の配列が記憶されている場合を説明する。色の配列は、隣接する色同士の差分が予め設定されたしきい値よりも大きく設定されている。一例として、しきい値は、隣接する色同士の波長の差であり、実験等により定めたものである。これにより、色配列は、隣接する色の系統が離散的に変化する。
【0040】
(外部入出力部26)
外部入出力部26は、作業記録のデータや帳票のデータといった、記憶部24に記憶されたデータを、外部へと出力するための出力部でとして機能する。また、外部入出力部26は、例えば帳票の作成に必要となる情報を外部から入力する入力部としても機能することが可能である。外部入出力部26は、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリといった記憶媒体を介してデータの入出力を行う。なお、外部入出力部26は、例えば、インターネット上にクラウドサーバを設けておき、当該クラウドサーバを介して通信に各種データを入出力するものであってもよい。
【0041】
(モニタ28)
モニタ(表示部)28は、タイヤローラ1の操作者に対して、締固め作業に関する種々の画面を表示する表示部として機能するものであり、操作者から締固め作業に関して必要な情報の入力を受け付ける入力部としても機能するものである。本実施形態において、モニタ28は、タッチパネル式のモニタである。なお、モニタ28は、タッチパネル式でなくともよく、モニタユニット20は、例えばキーボードやマウスといった操作者からの情報の入力を受け付ける他の入力部を備えてもよい。モニタ28は、タイヤローラ1の作業範囲Mを表す地形図に対して、進捗度合に対応付けられた色または模様を、重畳して表示する。
【0042】
(端末側制御部30)
端末側制御部30は、各種の演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)である。端末側制御部30は、記憶部24、外部入出力部26およびモニタ28と接続されている。また、端末側制御部30は、端末側通信部22を介して、車載コントローラ10と各種データをやり取りする。端末側制御部30は、情報処理部(設定部、テーブル生成部)32と、帳票生成部34とを備える。
【0043】
(情報処理部32)
情報処理部32は、モニタユニット20の全体を制御する制御部である。情報処理部32は、締固め作業の段階に応じて、締固め作業に関する種々の画面をモニタ28に表示させ、操作者からのデータ入力や指示を受け付ける。情報処理部32は、操作者によって入力されたデータを設定する設定部としての機能と、締固め回数-色換算テーブルを生成するテーブル生成部としての機能を有する。以下、図5aから図7を参照しながら、締固め作業に関する画面と、当該画面に関連して行われる処理について説明する。図5a及び図5bは、目標入力画面V1の一例を示す説明図である。図6は、待機画面V2の一例を示す説明図である。図7は、作業画面V3の一例を示す説明図である。図5aから図7に示す各画面は、情報処理部32が記憶部24に記憶された所定のプログラムを実行することでモニタ28に表示される。
【0044】
(管理設定画面および関連する処理)
図5a及び図5bに示す目標入力画面V1は、帳票を作成するために必要な情報、作業進捗を表示するために必要な目標値、および、特定の進捗度合に到達したことを示す特定の色または模様を入力するための画面である。
【0045】
帳票は、締固め作業に関する情報を複数含んでおり、操作者により入力された情報により、帳票生成部34で生成される。帳票を作成するために必要な情報は、図示するように、例えば、作業を行う現場名、作業を担当する会社名、作業日、層番号、盛り土材の種類、作業時の天気および盛り土材の含水比といった項目の情報を含む。なお、層番号とは、締固め作業を行うにあたり複数回にわけて盛り土部分を締固めていく場合に、今回の作業が何層目の盛り土部分を締固めるものであるかを示す番号である。また、天気は、晴れ、曇り、雨といった一般的な天候情報でよい。また、盛り土材の含水比は、所定の試験方法により、締固め作業の開始前に測定試験が行われる。
【0046】
作業進捗をモニタ28に表示するために必要な目標値は、目標とする締固め回数(目標締固め回数)の情報である。また、特定の進捗度合に到達したことを示す特定の色または模様は、本実施形態では、目標とする締固め回数に到達したことを示す色である。作業進捗は、管理ブロックMBごとに締固め回数を色で表現し、モニタ28を通じて、作業者に提示される。この際、目標とする締固め回数およびその色を指定することにより、作業者は全管理ブロックMBがその色になるまで作業すれば良く、締固め不足の箇所の判断が容易になる。
【0047】
入力画面V1は、図5aにおいて空白の欄で示すように、上記項目を入力するための複数の入力欄51aと、所定の項目から値を選択して入力可能な選択欄51bからなる項目欄51を含む。入力画面V1は、操作者がモニタ28を介して項目欄51にデータを入力可能とされている。項目欄51に入力する項目には、図示するように、“必須”と付記された必須項目が予め設定されている。図5aでは、作業日、層番号、天気、盛り土材の含水比、目標とする締固め回数が必須項目に該当する。情報処理部32は、操作者によって入力された目標とする締固め回数を、締固め作業の完了を判断する目標値として設定する。必須項目は、作業現場ごとに任意に設定してよいが、当該項目には、後で入力すると失念しかねない内容が項目として選択されることが好ましい。例えば、締固め作業時の天気の情報は、作業開始時点の天気を確実に入力しておくことが好ましい。また、目標とする締固め回数も作業開始前に設定しておく。
【0048】
目標とする締固め回数の色は、記憶部24に予め設定された色配列の中から選択される。選択欄51bを押下すると、選択可能な色の一覧が表示される(図5b)。操作者は一覧の中から任意の色を1色選択することができる。情報処理部32は、操作者によって選択された色を、実締固め回数が目標とする締固め回数に到達したことを表す情報として設定する。
【0049】
また、入力画面V1には、操作者が項目欄51への入力が完了した旨を指示するための入力完了ボタン52が含まれる。本実施形態において、入力完了ボタン52は、“必須”と付記された必須項目への入力が完了した場合にのみ、操作者が押すことができるように設定されている。
【0050】
また、入力画面V1には、機能部が正常であるか否かの判定結果を示す機能部状態欄53が含まれる。情報処理部32は、上述した位置情報管理部144および稼働情報管理部164による判定結果を取得し、取得した判定結果を機能部状態欄53に表示させる。位置情報管理部144により、位置情報の取得状態が正常でないと判定された場合には、情報処理部32は、機能部状態欄53に、例えば“FLOAT”と表示させる。位置情報管理部144により、位置情報の取得状態が正常であると判定された場合には、情報処理部32は、機能部状態欄53に、例えば“FIX”(図7参照)と表示させる。
【0051】
また、稼働情報管理部164により、位置計算部142および作業記録処理部162が始動中であると判定された場合には、情報処理部32は、機能部状態欄53に、例えば“始動中”と表示させる。稼働情報管理部164により、位置計算部142および作業記録処理部162が正常に稼働できる状態であると判定された場合には、情報処理部32は、機能部状態欄53に、例えば“正常”(図7参照)と表示させる。なお、図示省略するが、稼働情報管理部164により、位置計算部142および作業記録処理部162が故障などで異常な状態であると判定された場合には、情報処理部32は、機能部状態欄53に、例えば“異常”と表示させる。機能部状態欄53は、図6に示す待機画面V2および図7に示す作業画面V3にも含まれる。
【0052】
以上のように構成される入力画面V1を介して、操作者により項目欄51の各項目にデータが入力されると、情報処理部32は、入力されたデータを帳票生成部34へと出力する。また、情報処理部32は、入力画面V1を介して、操作者により入力完了ボタン52が押された場合に、機能部が正常であれば作業記録処理の実行開始を許可し、機能部が正常でなければ作業記録処理の実行開始を許可しない。作業記録処理の実行開始の許可判定の詳細については、後述する。
【0053】
(待機画面および関連する処理)
図6に示す待機画面V2は、項目欄51への入力が完了した後において、機能部が正常でない場合に、モニタ28に表示される画面である。待機画面V2は、図示するように、例えば、“記録不能 作業せず待機してください”といった、待機指示を操作者に伝えるためのメッセージ欄54を含む。
【0054】
(作業画面および関連する処理)
図7に示す作業画面V3は、締固め作業の実行中に表示される画面である。作業画面V3は、図示するように、作業現場を俯瞰した地形図X、タイヤローラ1の現在位置、作業範囲M、複数の管理ブロックMBの表示欄55を含む。情報処理部32は、入力画面V1で設定された目標とする締固め回数および目標とする締固め回数の色に基づき、後述する締固め回数-色換算テーブル生成アルゴリズムを用いて、締固め回数とそれぞれの締固め回数の色を対応付けした締固め回数-色換算テーブルを生成する。
【0055】
情報処理部32は、管理ブロック生成部162Cから作業範囲Mおよび複数の管理ブロックMBの情報を取得すると共に、転圧作業管理部162Eから各管理ブロックMBの締固め回数の情報を取得する。情報処理部32は、締固め回数-色換算テーブルに基づいて、各管理ブロックMBを色分けさせた画像を生成して、この画像をモニタ28に表示させる。情報処理部32は、さらに、各管理ブロックMBの色が対応する締固め回数を、作業画面V3の凡例欄56に表示させる。なお、図7では、表記の都合上、色の違いを模様(斜線、ドット)で表現しており、管理ブロックMB及び凡例欄56に、締固め回数を色ではなく、模様(斜線、ドット)により示している。
【0056】
また、情報処理部32は、車両姿勢計算部162Aからタイヤローラ1の現在の中心位置PAおよび向きVfを取得する。情報処理部32は、現在の中心位置PAおよび向きVfに基づいて、作業画面V3内にタイヤローラ1を模擬的に示す画像を生成して、この画像を作業画面V3に表示させる。タイヤローラ1を模擬的に示す画像は、接地線位置GLF、GLRに基づいて生成されるものであってもよい。なお、タイヤローラ1の現在位置、作業範囲M、複数の管理ブロックMBの画像は、車載コントローラ10側で生成されてもよい。この場合、を情報処理部32は、車載コントローラ10側で生成された画像を取得して、この画像を作業画面V3に表示させる。
【0057】
また、作業画面V3には、作業記録処理の開始指示および終了指示を操作者が入力するための処理指示ボタン57が含まれる。図7では、処理指示ボタン57に“記録開始”と表示する場合の例を記載している。本実施形態において、処理指示ボタン57は、後述する作業開始前処理において作業記録処理の実行開始が許可された場合にのみ、操作者が押して作業記録処理の開始を指示することができる。なお、図示省略するが、作業記録処理の実行中または終了後には、処理指示ボタン57に、例えば“記録終了”と表示させておく。それにより、操作者が作業記録処理の終了指示を入力することができる。
【0058】
以上のように構成される作業画面V3において、操作者が処理指示ボタン57を押して開始指示または終了指示を行うと、情報処理部32は、開始指示または終了指示を作業記録処理部162へと出力する。また、情報処理部32は、作業記録処理の実行により生成された作業記録、すなわち、転圧回数に応じて各管理ブロックMBを色分けさせた結果を記憶部24に記憶させる。作業記録は、作業記録処理の開始から終了まで動画として記憶されてもよいし、すべての管理ブロックMBの締固めが終了した後の静止画として記憶されてもよい。また、作業記録は、対応する帳票と紐付けて記憶される。
【0059】
(締固め回数-色換算テーブル生成アルゴリズム)
図11aから図11dを参照して、締固め回数-色換算テーブル生成アルゴリズムを説明する。情報処理部32は、図11aに示すような、記憶部24に予め設定された色配列を取得する。記憶部24は、色配列として、隣接する色同士の波長の差分が予め設定されたしきい値よりも大きく設定されたものを記憶する。また、記憶部24は、色配列として、最初の色(色1)と最後の色(色16)を関連付けた、円環状の配列として記憶している(図11a)。関連付けとは、色1と色16が隣り合っていることを、締固め管理装置100に認識させることである。なお、色配列は、円環状の配列でなくてもよく、たとえば、直線状の配列であってもよい。
【0060】
まず、図11bに示すように、情報処理部32は、円環状の色配列の中で、入力画面V1で入力された目標とする締固め回数の色(図11bでは色12)を、終点として選択する。情報処理部32は、その色に入力画面V1で入力された目標とする締固め回数の数値を割り当てる(図11bでは8回)。なお、入力画面V1で目標とする締固め回数の色が未選択の場合は、情報処理部32は、色配列の最後の色(図11bの色16)を、目標とする締固め回数の色として選択する。
【0061】
次に、図11cに示すように、情報処理部32は、円環状の色配列に沿って、一定の方向に数値を減算しながら、色配列に数値を割り当てる(図11c)。この際、減算する値は、締固め回数を管理する最小単位とする。つまり、締固め回数を1回単位で管理する場合は1ずつ減算し(図11c)、締固め回数を0.5回単位で管理する場合は0.5ずつ減算する。
【0062】
そして、図11dに示すように、情報処理部32は、割り当てる値が0となった色の一つ手前の色を始点として選択し、始点から終点までの色配列および割り当てられた数値を、締固め回数-色換算テーブル(図11dの下部参照)として記憶部24に保存する。このように、情報処理部32は、色配列に沿って、目標とする締固め回数の色を含むように、色と締固め回数とを対応付けた締固め回数-色換算テーブル(テーブル)を生成する。
【0063】
ここで、操作者により、目標とする締固め回数が変更されることがある。この場合、情報処理部32は、目標入力画面V1の入力欄51aに入力された数値に基づいて、実締固め回数が目標とする締固め回数に到達したことを示す色を固定する。そして、情報処理部32は、固定された色を基準として締固め回数-色換算テーブルを生成する。例えば、図11cに示す事例では、締固め回数6回には、色10が対応付けされている。この事例において、目標とする締固め回数が8回から6回に変更された場合、情報処理部32は、実締固め回数が目標とする締固め回数に到達したことを示す色、即ち、変更前の目標とする締固め回数8回に対応付けられた色12を固定する。そして、情報処理部32は、この色12に、変更後の目標とする締固め回数6回を対応付け、円環状の色配列に沿って、締固め回数を管理する最小単位で、色配列に割り当てられた数値を減算する。この結果、新たな締固め回数-色換算テーブルにおいて、締固め回数5回に対応する色は、色11となり、締固め回数4回に対応する色は、色10となり、以下、順次減算され、締固め回数1回に対応する色は、色7となる。
【0064】
また、操作者により、目標とする締固め回数に対応付けられた色が変更されることがある。このように、目標とする締固め回数に対応する色が変更された場合、情報処理部32は、色配列に沿って、変更後の色を含むように締固め回数-色換算テーブルを生成する。例えば、図11cに示す事例では、目標とする締固め回数8回には、色12が対応付けされている。この事例において、目標とする締固め回数8回に対応する色が、色12から色10に変更された場合、情報処理部32は、色10を起点にして、円環状の色配列に沿って、締固め回数を管理する最小単位で、色配列に割り当てられた数値を減算する。この結果、新たな締固め回数-色換算テーブルにおいて、締固め回数7回に対応する色は、色9となり、締固め回数6回に対応する色は、色8となり、以下、順次減算され、締固め回数1回に対応する色は、色3となる。
【0065】
なお、記憶部24に予め設定された色配列の色数は、目標とする締固め回数の取りうる最大値の2倍の数以上あることが望ましい。つまり、締固め管理装置100にて管理する目標とする締固め回数が16回の場合、32色以上の配列とすることが望ましい。これにより、1回の締固めで変化する進捗度合を0.5回単位とした場合であっても、作業画面V3で、異なる締固め回数が同色で表現されることを回避できる。なお、色配列の色数が、目標とする締固め回数の取りうる最大値の2倍の数未満の場合、色配列に数値が重複して割り当たる場合があり、作業画面V3で、異なる回数が同色で表現されることになり、操作者に混乱を与えるおそれがある。しかし、実際のタイヤローラ1は、管理ブロックMBの配列方向に沿って往復しながら、作業範囲Mの締固めを進めることが多く、異なる回数が同色で表現されることは少ない。このため、実際には、同色で示された締固め回数は、同じ締固め回数を表現することが多く、誤認される可能性は低い。
【0066】
(帳票生成部34)
帳票生成部34は、目標入力画面V1で操作者により入力された各項目の情報に基づいて、帳票を作成する。帳票は、上述したように、例えば、現場名、会社名、作業日、盛り土部分が何層目であるかを示す層番号、盛り土材の種類、天気および盛り土材の含水比といった項目の情報を含む。帳票生成部34は、情報処理部32を介して、生成した帳票を上記作業記録と紐付けて記憶部24に記憶させる。
【0067】
次に、図8から図10を参照しながら、本実施形態にかかる締固め管理装置100の動作について説明する。図8は、位置情報の取得状態および機能部の稼働状態の正常性判定処理の一例を示すフローチャートである。図9は、作業記録処理の一例を示すフローチャートである。図10は、作業開始前処理の一例を示すフローチャートである。
【0068】
(正常性判定処理)
まず、図8に示す正常性判定処理について説明する。制御装置50は、車載コントローラ10において、タイヤローラ1がキーオンされて締固め管理装置100の始動が開始された後、位置情報管理部144および稼働情報管理部164が始動した後に、図8に示す正常性判定処理を実行する。
【0069】
次に、車載コントローラ10は、ステップS1として、位置情報管理部144により位置情報の取得状態が正常であるか否かを判定すると共に、稼働情報管理部164により機能部(位置計算部142および作業記録処理部162)の稼働状態が正常であるか否かを判定する。上述したように、位置情報管理部144は、右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLの算出精度に応じて、位置情報の取得状態が正常であるか否かを判定する。また、稼働情報管理部164は、車載コントローラ10の各機能部の始動が完了しているか否かの情報、インターネット回線との接続状態の情報、各機能部に故障が発生しているか否かの情報などを取得し、取得した情報に基づいて、機能部の稼働状態が始動中の状態であるか、正常に稼働できる状態であるか、故障などにより異常な状態であるかを判定する。
【0070】
車載コントローラ10は、位置情報管理部144により位置情報の取得状態が正常であると判定され、かつ、稼働情報管理部164により機能部の稼働状態が正常であると判定された場合(ステップS1でYes)、ステップS2として、位置情報管理部144および稼働情報管理部164から、機能部が正常であるという判定結果を、情報処理部32に出力する。
【0071】
一方、車載コントローラ10は、位置情報管理部144により位置情報の取得状態が正常でないと判定された場合、および/または、稼働情報管理部164により機能部の稼働状態が始動中の状態であるか、故障などにより異常な状態であると判定された場合(ステップS1でNo)、位置情報管理部144および稼働情報管理部164から、機能部が正常でないという判定結果を、情報処理部32に出力する(ステップS3)。
【0072】
なお、ここでの判定結果とは、位置情報の取得状態が正常であるか否かの情報と、機能部の稼働状態が始動中の状態であるか、正常に稼働できる状態であるか、故障などにより異常な状態であるかの情報とを含むものとする。車載コントローラ10は、締固め管理装置100が稼働している間、ステップS1以降の処理を繰り返し実行する。
【0073】
(作業記録処理および作業開始前処理)
次に、図9に示す作業記録処理および図10に示す作業開始前処理について説明する。制御装置50は、車載コントローラ10及び情報処理部32において、タイヤローラ1がキーオンされて締固め管理装置100の始動が開始されると、図9に示す作業記録処理の実行を開始する。制御装置50は、図9に示すように、作業記録処理の開始にあたり、まず、情報処理部32において、図10に示す作業開始前処理を実行する(ステップS100)。
【0074】
ステップS100の作業開始前処理について説明する。図10に示すように、情報処理部32は、モニタユニット20の始動が完了したか否かを判定する(ステップS101)。情報処理部32は、モニタユニット20の始動が完了していないと判定した場合(ステップS101でNo)、モニタユニット20の始動が完了するまで待機する。
【0075】
情報処理部32は、モニタユニット20の始動が完了したと判定した場合(ステップS101でYes)、図5aに示す目標入力画面V1をモニタ28に表示させる(ステップS102)。また、情報処理部32は、車載コントローラ10における正常性判定処理の判定結果を、機能部状態欄53に表示させる。図5aに示す例では、この時点で、位置情報の取得状態が正常でなく“FLOAT”の表示がなされ、また、機能部が始動中であり“始動中”の表示がなされている。つまり、この時点では、締固め管理装置100の始動が開始されてから測位が安定化するまでに生じる待機時間中であり、かつ、機能部が作業記録処理を正常に実行できる稼働状態となるまでに生じる待機時間中である。操作者は、この待機時間中に、目標入力画面V1に表示された項目欄51への入力を行うことができる。
【0076】
次に、情報処理部32は、必須項目の入力が完了したか否かを判定する(ステップS103)。すなわち、情報処理部32は、操作者がモニタ28を介して図5aに示す項目欄51の必須項目のすべてについて、データの入力が完了されたか否かを判定する。情報処理部32は、必須項目の入力が完了していないと判定した場合(ステップS103でNo)、必須項目の入力が完了するまで待機する。情報処理部32は、必須項目の入力が完了したと判定した場合(ステップS103でYes)、入力完了ボタン52が押されたか否かを判定する(ステップS104)。情報処理部32は、入力完了ボタン52が押されていない場合(ステップS104でNo)、入力完了ボタン52が押されるまで待機する。
【0077】
情報処理部32は、入力完了ボタン52が押されたと判定した場合(ステップS104でYes)、上述した締固め回数-色換算テーブル生成アルゴリズムを用いて、締固め回数-色換算テーブルを生成する(ステップS108)。続いて、機能部が正常となったか否かが判定される(ステップS105)。すなわち、情報処理部32は、位置情報管理部144から位置情報の取得状態が正常であるという判定結果、および稼働情報管理部164から機能部の稼働状態が正常であるという判定結果を、取得したか否かを判定する。
【0078】
情報処理部32は、機能部が正常となっていないと判定した場合(ステップS105でNo)、作業記録処理の実行開始を許可せず、モニタ28に待機画面V2を表示させる(ステップS106)。このとき、情報処理部32は、車載コントローラ10における正常性判定処理の判定結果を、機能部状態欄53に表示させる。図6に示す例では、この時点で、位置情報の取得状態が正常でなく“FLOAT”の表示がなされ、また、機能部の稼働状態が始動中であり“始動中”の表示がなされる。情報処理部32は、機能部が正常となったと判定されるまで、ステップS105、S106の処理を繰り返し実行し、モニタ28に待機画面V2が表示される状態を維持する。それにより、操作者が待機画面V2を確認して、現在作業待機しなければならない状態であることを、容易に認識することができる。
【0079】
一方、情報処理部32は、機能部が正常となったと判定した場合(ステップS105でYes)、作業記録処理の実行開始を許可し、モニタ28に作業画面V3を表示させる(ステップS107)。このとき、情報処理部32は、車載コントローラ10における正常性判定処理の判定結果を、機能部状態欄53に表示させる。図7に示す例では、この時点で、位置情報の取得状態が正常な状態であることを示す“FIX”の表示がなされ、かつ、機能部が正常に稼働できる状態であることを示す“正常”の表示がなされる。情報処理部32は、ステップS107の後、本処理を終了させる。
【0080】
図9の作業記録処理の説明に戻る。情報処理部32は、作業記録処理の実行開始を許可した後、作業記録処理の開始指示がなされたか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、情報処理部32は、操作者が作業画面V3の処理指示ボタン57を押したか否かを判定する。情報処理部32は、作業記録処理の開始指示がなされていないと判定した場合(ステップS110でNo)、開始指示がなされるまで待機する。
【0081】
情報処理部32は、作業記録処理の開始指示がなされたと判定した場合(ステップS110でYes)、機能部が正常であるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、作業記録処理の開始指示がなされた後にも、位置情報の取得状態が正常でなくなったり、機能部に異常が生じたりする可能性がある。そのため、ステップS120の処理は、作業記録処理の実行中に、機能部が正常な状態に維持されているか否かを監視するために実行される。ステップS120の処理は、図10のステップS105の処理と同様であるため、説明を省略する。なお、作業記録処理の実行開始が許可された後(ステップS107)、ステップS110の処理を省略し、自動的にステップS120の処理に進んでもよいが、少なくともタイヤローラ1が作業範囲Mのスタート地点に到達していることを条件として、ステップS120の処理に進むことが好ましい。
【0082】
情報処理部32において、機能部が正常であると判定された場合(ステップS120でYes)、車載コントローラ10は、位置計算部142および作業記録処理部162により、ステップS130からステップS150の作業記録処理を実行する。すなわち、車載コントローラ10は、位置計算部142により右アンテナ位置PRおよび左アンテナ位置PLを算出し(ステップS130)、車両姿勢計算部162Aおよび転圧位置計算部162Bにより接地線位置GLF、GLRを算出する(ステップS140)。さらに、車載コントローラ10は、転圧判定部162Dにより、管理ブロック生成部162Cで生成された複数の管理ブロックMBごとに、転圧が行われたか否かの転圧判定を実行する(ステップS150)。
【0083】
そして、情報処理部32は、端末側通信部22を介して、車載コントローラ10と通信することにより、作業画面V3に管理ブロックMBごとの締固め回数を、締固め回数-色換算テーブルに基づいて色分けして表示させる(ステップS160)。このとき、情報処理部32は、図7に示すように、タイヤローラ1の現在位置および凡例欄56も、作業画面V3に表示させる。
【0084】
次に、情報処理部32は、作業記録処理の終了指示がなされたか否かを判定する(ステップS170)。すなわち、情報処理部32は、操作者が作業画面V3の処理指示ボタン57を押したか否かを判定する。操作者は、作業画面V3内の作業範囲M内の管理ブロックMBの色が、目標の締固め回数の色となっているかどうかを判断して、処理指示ボタン57により作業記録処理の終了を指示するか否かを判断する。なお、ステップS170の処理を省略し、情報処理部32が、すべての管理ブロックMBに予め定められた締固め回数で締固めが行われたと判断したときに、自動的に次の処理(ステップS180)に進んでもよい。ただし、特に作業範囲M内の端部において、締固めが十分に施されていないと操作者が判断することもあり得る。そのため、操作者に混乱を与えないようにするため、操作者本人が処理指示ボタン57により作業記録処理の終了を指示することが好ましい。
【0085】
情報処理部32は、作業記録処理の終了指示がなされていないと判定した場合(ステップS170でNo)、ステップS120以降の処理を繰り返し実行する。一方、情報処理部32は、作業記録処理の終了指示がなされたと判定した場合(ステップS170でYes)、項目欄51のすべてにデータが入力されたか否かを判定する(ステップS180)。
【0086】
情報処理部32は、項目欄51のすべてにデータが入力されていないと判定した場合(ステップS180でNo)、再び目標入力画面V1をモニタ28に表示させ(ステップS190)、項目欄51のすべてにデータが入力されるまで待機する。それにより、操作者は、未入力の項目欄51へとデータを入力することができる。
【0087】
一方、情報処理部32が、項目欄51のすべてにデータが入力されたと判定した場合(ステップS180でYes)、帳票生成部34は、入力されたデータに基づいて帳票を生成し、さらに、この帳票のデータを記憶部24に記憶させる(ステップS200)。それにより、操作者は、外部入出力部26を介して、生成された帳票を取得することができる。なお、帳票のデータは、例えば、インターネット回線を通じて外部装置に自動的に送信されるものであってもよい。送信された帳票のデータは、作業管理者に届けられる。作業管理者は、帳票に含まれる締固め回数分布図を確認し、目標の締固め回数の色となっていることを確認し、作業が適切に完了したかどうかを判断する。
【0088】
次に、車載コントローラ10は、締固め管理装置100の停止を許可する(ステップS210)。言い換えると、車載コントローラ10は、情報処理部32によって項目欄51のすべてにデータが入力されたと判断されるまで、締固め管理装置100の停止を許可しない。なお、締固め管理装置100の停止の許可は、タイヤローラ1の稼働停止の許可と同一であってもよい。
【0089】
また、情報処理部32は、ステップS120において、機能部が正常でないと判定した場合(ステップS120でNo)、モニタ28に待機画面V2を表示させる(ステップS220)。それにより、図6に例示する待機画面V2を操作者が確認し、機能部のいずれかが正常でないことを把握して、待機しなければならない状態であることを認識することができる。情報処理部32が待機画面V2を表示させた後、本処理は、ステップS170に進む。この場合、操作者は、待機画面V2を確認し、作業記録処理を一度終了させるか否かを判断する。操作者がいったん待機すると判断した場合、即ち、操作者によって作業画面V3の処理指示ボタン57が押されない場合、ステップS170において否定判断(ステップS170のNo)がなされ、ステップS120以降の処理が繰り返し実行される。その結果、機能部が正常となるまでは、待機画面V2がモニタ28に表示された状態が維持される。また、操作者が作業記録処理を一度終了させると判断した場合、操作者は、処理指示ボタン57を押す。それにより、ステップS170で肯定判断(ステップS170のYes)がなされ、ステップS180以降の処理が実行される。
【0090】
なお、例えば、ステップS220の後のステップS170において、予め定められた時間以上にわたって待機画面V2が表示される状態が継続した場合、自動的に作業記録処理を終了してもよい。ただし、機能部が比較的に短い時間で正常な状態に復旧することもあり得るため、作業記録処理を再実行するわずらわしさを操作者に与えないように、予め定められた時間を十分な長さに設定することが好ましい。また、ステップS220を経て作業記録処理を終了した後、機能部が正常に稼働できる状態になった場合、前回の続きから作業記録処理を再開してもよい。
【0091】
(実施形態の効果)
本実施形態に係る締固め管理装置100によれば、情報処理部32は、色配列に沿って、目標とする締固め回数に対応する色を含むように、色と締固め回数とを対応付けたテーブルを生成する。このため、タイヤローラ1の締固め作業の実締固め回数が目標に到達したことを表す色を、目標とする締固め回数によらず、予め定められた色もしくは使用者が望む色に、容易に設定することができる。さらに、隣り合う締固め回数に該当する色の配列を、予め定めた色配列に維持することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る締固め管理装置100によれば、車載コントローラ10は、転圧判定部162D及び転圧作業管理部162Eにおいて、タイヤローラ1の移動量に基づいて、締固め回数を算出する。締固め回数に対応付けられた色は、地形図に重畳して、モニタ28に表示される。このため、操作者は、作業範囲M内の各管理ブロックMBを何回締固めたか、残りの管理ブロックMBを、過転圧を避けながら必要な回数だけ締固めるにはどのように移動すべきかを、モニタ28を通じて、直感的且つ俯瞰的に把握することができる。このように、各管理ブロックMBの1回分の色変化を把握しつつ、最終的な仕上がりの色を目指しながら締固め作業を実施できるので、作業の効率化が図れる。また、熟練の操作者になれば、色配列に慣れることで、モニタ28に表示される凡例欄56を参照することなく締固め作業を実施することができ、管理ブロックMBの色に注目することで、さらなる作業効率化が図れる。
【0093】
また、本実施形態に係る締固め管理装置100によれば、記憶部24は、隣接する色同士の波長の差分が予め設定されたしきい値よりも大きい色配列を記憶している。このため、操作者は、1回(もしくは0.5回)単位で変化する締固め回数を、モニタ28を介して、明確に判断可能となる。また、より多くの種類の色を準備することができるので、締固め作業の進捗を、より細かく表現することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る締固め管理装置100によれば、情報処理部32は、実締固め回数が目標とする締固め回数に到達したことを示す色を固定し、固定された色を基準として、締固め回数-色換算テーブルを生成する。このため、工事の内容に応じて目標とする締固め回数が変わった場合であっても、予め定めた色配列の中で、目標とする締固め回数に対応する色を、工事内容によらず、同じとすることができる。よって、締固め作業の管理上の混乱を回避することができ、作業効率の向上が図られる。
【0095】
また、本実施形態に係る締固め管理装置100によれば、情報処理部32は、目標とする締固め回数に対応する色が変更された場合に、色配列に沿って、変更後の色を含むように締固め回数-色換算テーブルを生成する。このため、予め定めた色配列の中で、ユーザの意向に応じて、目標とする締固め回数に対応する色を変更することができる。
【0096】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る締固め管理装置100に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0097】
例えば、本実施形態では、特定の進捗度合を、目標とする締固め回数と実際の締固め回数とに基づいて算出する場合を説明したが、特定の進捗度合を、作業の開始を表す数値である1により算出してもよいし、作業の途中段階を表す数値により算出してもよい。
【0098】
本実施形態では、上述した通り、締固め機械のタイヤローラ1を題材として、締固め管理装置100を説明したが、締固め機械の適用機種については、これに限定するものではない。同じく盛土の締固め作業に用いられるその他の締固め機械についても、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、締固め管理装置100を適用することが可能である。
【0099】
また、本実施形態では、タイヤローラ1の締固め回数を表現する方法として色を用いたが、締固め回数を識別可能な模様で表現しても良い。締固め回数を模様で表現する場合、ドット、斜線、波線、など、一目で違いが分かる模様が選択されることで、隣り合う模様の系統を離散的に変化させることができる。模様を採用することにより、周囲環境(例えば太陽光)、表示する機器等の影響により、視認性が影響を受けにくくなる。
【0100】
また、本実施形態では作業進捗管理装置の内、タイヤローラ1による締固め作業を管理する締固め管理装置100を題材としたが、作業進捗管理装置は、これに限定するものではない。例えば、本発明に係る作業進捗管理装置は、掘削機械(油圧ショベル等)による掘削作業を管理することもできる。この場合、作業進捗管理装置は、作業現場を俯瞰的に見た地形図を所定の管理ブロック(例えばグリッド状)に区切る。作業進捗管理装置は、各管理ブロックの中心点ごとに、目標とする地形の標高に対する現在の地形の標高の差分(標高差分)を算出する。作業進捗管理装置の進捗算出部は、掘削機械による掘削作業の目標掘削深さ(目標値)と、実際に掘削作業が行われた実掘削深さ(作業量)とに基づいて、掘削作業の進捗度合を算出する。
【0101】
当該作業進捗管理装置において、掘削作業の進捗度合を色で表現する場合、一般的には標高差分が0mの場合に表示される目標とする色(図12の色9)、標高差分が所定の上限値(例えば2m)以上の場合に表示する上限色(図12の色8)、標高差分が所定の下限値(例えば-2m)以下の場合に表示する下限色(図12の色7)の3種類が用いられる。したがって、予め3色以上の色を円環状に並べた色配列を準備し、その中から使用者が目標とする色を選択し、残りの2色から上限色と下限色を一定の規則で選択する(図12)。
【0102】
なお、ここでは目標とする色、上限色、下限色の3色としたが、それらの中間にも色を配置し、上記の円環状に並べた色配列により決定することも可能である。また、目標の色から上限色または下限色までの中間を一定間隔で区切り、その中間色を連続的に変化させることで、目標への接近をより直感的に把握しやすくすることも可能である。つまり、隣り合う色同士の波長が、所定のしきい値よりも小さく設定された色配列が準備されてもよい。これにより、色配列は、系統の近い色の濃淡が連続的に変化するものとなる。中間色の決定方法は、ここでは省略する。このように、使用者は目標とする色以外の色を意識せずに、進捗度合である標高差分の変化に対し、その標高差分を表す色の変化パターンを維持したまま、目標とする色を変更可能である。
【0103】
また、作業進捗管理装置の進捗算出部は、掘削機械による掘削作業の目標土砂重さ(目標値)と、実際に掘削作業が行われた実土砂重さ(作業量)とに基づいて、掘削作業の進捗度合を算出してもよい。なお、掘削作業の進捗度合を模様で表現する場合、模様の密度が連続的に変化するような配列を準備することが好ましい。
【符号の説明】
【0104】
1 タイヤローラ(建設機械、締固め機械)
24 記憶部
28 モニタ(表示部)
32 情報処理部(設定部、テーブル生成部)
50 制御装置
100 締固め管理装置(作業進捗管理装置)
162D 転圧判定部(進捗算出部)
162E 転圧作業管理部(進捗算出部)
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
図13