(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172679
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】切片作成装置および支持部材
(51)【国際特許分類】
G01N 1/06 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01N1/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084649
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】509308953
【氏名又は名称】株式会社シンテック
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 佳夫
(72)【発明者】
【氏名】北條 雅史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 光規
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052EC03
2G052EC22
2G052JA04
2G052JA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切片作成装置に関する。切片の種類、作業者の技量等によっては、切片にしわ、破損等が生ずる場合がある。従って、切片を安定してグリッドに載せることができる技術が望まれている。また、作業の効率を可能な限り向上することも望まれている。
【解決手段】試料をスライスして切片を作成する刃3と、切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部2と、液体に浮く切片を載せるためのグリッドGを支持するグリッド支持構造21を有する支持部材20と、を備え、グリッド支持構造21は、液体に浮く切片に向かってグリッドGの上面が下り傾斜を成すようにグリッドGの下面を支持する下側支持面21bと、グリッドGの上面に当接可能に配置された上側支持面21cと、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をスライスして切片を作成する刃と、
前記切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体に浮く前記切片を載せるためのグリッドを支持するグリッド支持構造を有する支持部材と、を備え、
前記グリッド支持構造は、
前記液体に浮く前記切片に向かって前記グリッドの上面が下り傾斜を成すように前記グリッドの下面を支持する下側支持面と、
前記グリッドの上面に当接可能に配置された上側支持面と、
を備えている、切片作成装置。
【請求項2】
前記上側支持面は前記下側支持面と対向している、請求項1に記載の切片作成装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記支持部材を上下方向に貫通する少なくとも1つのスリットおよび/又は少なくとも1つの孔を備え、
前記少なくとも1つのスリットの少なくとも一部および前記少なくとも1つの孔の少なくとも一部は前記グリッド支持構造に支持された前記グリッドの下方に配置される、請求項1又は2記載の切片作成装置。
【請求項4】
前記下側支持面と前記上側支持面との間隔は0.5mm以下又は前記グリッドの外径の1/6以下である、請求項2に記載の切片作成装置。
【請求項5】
試料をスライスして切片を作成する刃と、
前記切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体に浮く前記切片を載せるためのグリッドを支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、
前記支持部材の一端に向かって前記グリッドの上面が下り傾斜を成すように前記グリッドを支持するグリッド支持構造と、
前記支持部材を上下方向に貫通する少なくとも1つのスリットと、
を備え、
前記少なくとも1つのスリットの少なくとも一部は前記グリッド支持構造に支持された前記グリッドの下方に配置される、切片作成装置。
【請求項6】
前記スリットは、前記支持部材における前記一端から、前記グリッド支持構造において前記グリッドを支持する位置に向かって延びている、請求項5に記載の切片作成装置。
【請求項7】
前記支持部材には、互いに略平行な複数の前記スリットが設けられている、請求項5又は6に記載の切片作成装置。
【請求項8】
前記液体貯留部は前記液体の排出手段を備えている、請求項1、2、4、5、および6の何れかに記載の切片作成装置。
【請求項9】
前記支持部材の高さを調整する高さ調整機構をさらに備える、請求項1、2、4、5、および6の何れかに記載の切片作成装置。
【請求項10】
スライスされた切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部を備える切片作成装置と共に用いられる支持部材であって、
前記液体に浮く前記切片を載せるためのグリッドを支持するグリッド支持構造を備え、
前記グリッド支持構造は、
前記液体に浮く前記切片に向かって前記グリッドの上面が下り傾斜を成すように前記グリッドの下面を支持する下側支持面と、
前記グリッドの上面に当接可能に配置された上側支持面と、
を備えている、支持部材。
【請求項11】
スライスされた切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部を備える切片作成装置と共に用いられ、前記液体に浮く前記切片を載せるためのグリッドを支持する支持部材であって、
前記支持部材の一端に向かって前記グリッドの上面が下り傾斜を成すように前記グリッドを支持するグリッド支持構造と、
前記支持部材を上下方向に貫通する少なくとも1つのスリットと、
を備え、
前記少なくとも1つのスリットの少なくとも一部は前記グリッド支持構造に支持された前記グリッドの下方に配置される、支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切片作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡等で試料を観察するために、樹脂等に包埋した試料をミクロトームによって薄くスライスすることが行われている。例えば特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のようにスライスされた切片は、観察、分析等のためにグリッドのメッシュ上又はフォルムバール支持膜上に載置される。当該載置を行うために、スライスされた直後の切片を水等の液面に浮かべると共に、まつ毛ツールを用いて切片をグリッドのメッシュの位置又は支持膜の位置に誘導する。グリッド、切片、およびまつ毛ツールの先端は何れも小さい。このため、切片の種類、作業者の技量等によっては、切片にしわ、破損等が生ずる場合がある。従って、切片を安定してグリッドに載せることができる技術が望まれている。また、大量の切片をグリッドに載せる必要が生ずる場合が少なくないため、作業の効率を可能な限り向上することも望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様の切片作成装置は、試料をスライスして切片を作成する刃と、前記切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部と、前記液体に浮く前記切片を載せるためのグリッドを支持するグリッド支持構造を有する支持部材と、を備え、前記グリッド支持構造は、前記液体に浮く前記切片に向かって前記グリッドの上面が下り傾斜を成すように前記グリッドの下面を支持する下側支持面と、前記グリッドの上面に当接可能に配置された上側支持面と、を備えている。
【0006】
第2の態様の切片作成装置は、試料をスライスして切片を作成する刃と、前記切片を浮かべる液体を貯留する液体貯留部と、前記液体に浮く前記切片を載せるためのグリッドを支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記支持部材の一端に向かって前記グリッドの上面が下り傾斜を成すように前記グリッドを支持するグリッド支持構造と、前記支持部材を上下方向に貫通する少なくとも1つのスリットと、を備え、前記少なくとも1つのスリットの少なくとも一部は前記グリッド支持構造に支持された前記グリッドの下方に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の切片作成装置のボートの斜視図である。
【
図2】第1実施形態の切片作成装置のボートの斜視図である。
【
図3】第1実施形態の切片作成装置のボートの斜視図である。
【
図4】第1実施形態の切片作成装置のボートの斜視図である。
【
図5】第1実施形態の切片作成装置のボートの断面図である。
【
図6】第1実施形態の切片作成装置の支持部材の斜視図である。
【
図7】第1実施形態の切片作成装置の支持部材の断面図である。
【
図8】第1実施形態の切片作成装置の支持部材の要部断面図である。
【
図9】第1実施形態の切片作成装置の支持部材の平面図である。
【
図10】第1実施形態の第1変形例の切片作成装置の支持部材の断面図である。
【
図11】第1実施形態の切片作成装置の要部断面図である。
【
図12】第1実施形態の切片作成装置の平面図である。
【
図13】第1実施形態の切片作成装置の要部の模式図である。
【
図14】第1実施形態の第2変形例の切片作成装置の支持部材の平面図である。
【
図15】第1実施形態の第3変形例の切片作成装置の支持部材の平面図である。
【
図16】第1実施形態の第4変形例の切片作成装置の要部の模式図である。
【
図17】第1実施形態の第5変形例の切片作成装置の要部の模式図である。
【
図18】第2実施形態の切片作成装置の支持部材の斜視図である。
【
図19】第3実施形態の切片作成装置の支持部材の分解斜視図である。
【
図20】第3実施形態の切片作成装置の支持部材の平面図である。
【
図21】第3実施形態の切片作成装置の支持部材の側面図である。
【
図22】第4実施形態の切片作成装置の支持部材の分解斜視図である。
【
図23】第4実施形態の切片作成装置の支持部材の側面図である。
【
図24】第5実施形態の切片作成装置の支持部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1実施形態に係る切片作成装置が、図面を用いながら以下説明されている。
本実施形態の切片作成装置は、試料をスライスし薄い切片を作成するため、ナイフと呼ばれる場合もある。前記薄い切片は、電子顕微鏡、光学顕微鏡、赤外線吸光分析器、X線光電子分光器等による観察、分析等に用いられる。また、切片作成装置の一例は超薄切片(Ultra-thin section)を作製するためにダイヤモンドを用いており、この場合はダイヤモンドナイフとも呼ばれる。切片作成装置は、公知のミクロトームまたはウルトラミクロトームに搭載して使用される。試料は、細菌、ウイルス、動植物の細胞または組織、材料、金属、複合材、遺跡、隕石等であり、その他の試料も対象になり得る。一例では、樹脂等に包埋された状態の試料が切片作成装置によりスライスされる。
【0009】
図1~
図4には支持部材20(
図6)を取り外した状態の切片作成装置1が示されている。切片作成装置1は、上側が開放されたボート(液体貯留部)2と、ボート2に設けられた刃3および排液路4と、ボート2内に配置される基板P(
図5)を支持できる支持台5とを備える。基板Pは、従来から、槽2aの液体(水等)に浮いている切片(
図13)を載せるために用いられている。
【0010】
ボート2は、相互に直交する前後方向、左右方向および上下方向を有し、前後方向および左右方向が水平方向に対応し、上下方向が鉛直方向に対応している。
図1および
図2において、X方向が前後方向、Y方向が左右方向、Z方向が上下方向である。以下、X方向の刃3がある側がボート2の前側として説明され、X方向の他端側がボート2の後側として説明される。ボート2は、金属、プラスチック等から形成される。
【0011】
ボート2は、例えば、前側壁2b、後側壁2c、および一対の側壁2d,2eによって囲まれた槽2aを有し、切片を浮かべるための液体(水等)を槽2a内に貯留することができる。
図5に示すように、ボート2は槽2a内にカバーガラス、スライドガラス、シリコンウエハ等の基板Pを配置可能な公知のものであるが、その他の形状および構造を有するボートを用いることも可能である。
【0012】
ボート2の下側には、切片作成装置をミクロトームまたはウルトラミクロトームに固定するための固定部8が設けられている。
ボート2の前端には刃3が固定されている。一例では刃3の上端部はダイヤモンド製であり、ダイヤモンド製の刃3によってスライスされた切片は槽2a内に貯留された液体に浮かぶ。
【0013】
排出手段としての排液路4は、液体をボート2の内部から外部へ排出するために設けられている。排液路4は、槽2aに連通するように設けられ、より具体的には槽2aの底部、前側壁2b、後側壁2c、側壁2d,2e等に開口している。排液路4の出口には図示しないチューブを接続するための継手7が取付けられ、排液路4は継手7の内部に連通している。
【0014】
本実施形態では、支持台5はX方向に並ぶ第1支持部11および第2支持部12を有するが、槽2a内に第1支持部11および第2支持部12の一方だけが配置されてもよい。支持部11,12は金属、プラスチック等から形成される。
【0015】
一例では、第1支持部11はボート2に固定されている、又は、ボート2と一体に形成されている。第2支持部12は槽2a内のX方向の任意の位置に配置可能である。第1支持部11は、ボート2の後端に向かって漸次低くなる複数のステップ11aを有する。第2支持部12は、ボート2の前側に向かって漸次低くなる複数のステップ12aを有する。支持高さ調整構造である複数のステップ11a,12aのうち任意の段に後述の支持部材20を載せることによって、支持部材20の高さ位置を容易に調整可能である。これは、作業者による設定作業を容易にするために有用である。各ステップ11a,12aの高さ寸法を更に小さくすると、設定作業をより精密に行うことが可能となる。
【0016】
本実施形態の切片作成装置は支持部材20を備える。
図6~
図9に示すように、支持部材20は、グリッドGを支持するグリッド支持構造21を有する。グリッドGは切片Sを載せるためのものであり、その形状や構造は本実施形態に記載したものに限定されない。グリッド支持構造21は、一例では支持部材20の上面に隙間21aを形成することにより設けられ、本実施形態では隙間21aはワイヤカット等によって形成される。
図10に示すように支持部材20に別部材20aを固定することによって隙間21aを形成することも可能であり、他の方法で隙間21aを形成することも可能である。
【0017】
支持部材20は金属製である。支持部材20が他の材料を用いて作られてもよい。本実施形態では支持部材20はアルミニウム製であり、表面にカラーアルマイト処理が施されている。当該カラーアルマイト処理は、ミクロトームの顕微鏡で支持部材20、グリッドG、切片S等を見る時の視認性の向上に寄与する。
以下、支持部材20のX方向の一端側が前側として説明され、支持部材20のX方向の他端側が後側として説明され、支持部材20のY方向が幅方向として説明される場合がある。支持部材20の前記一端側はボート2の刃3に近い側である。
【0018】
隙間21aは前側に向かって斜め下方に延びている。本実施形態では、隙間21aは支持部材20の幅方向の全体に亘って設けられている。なお、
図9および
図10に示すように、グリッドGの一端側(前端側)を隙間21aに挿入すると、グリッドGがグリッド支持構造21によって支持される。グリッド支持構造21は、前側に向かって下り傾斜を成す下側支持面21bと、下側支持面21bと対向する上側支持面21cとを有する。
【0019】
本実施形態では、隙間21aの形成によって下側支持面21bに対向する上側支持面21cが設けられている。グリッドGの下面は下側支持面21bによって支持され、この状態で上側支持面21cはグリッドGの前端側の上面に当接可能である。グリッドGの厚さは一例では0.03mm程度である。本実施形態では、隙間21aにおける下側支持面21bと上側支持面21cとの距離D(
図7)は0.06mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上である。このため、グリッドGの一部(前端側)を隙間21aに容易に挿入可能であり、僅かに湾曲等しているグリッドGでも同様に隙間21aに容易に挿入可能である。また、グリッドGは薄く、ピンセット等のハンドリング器具によって変形し易い。距離DがグリッドGの厚さよりも十分に大きいことは、前記変形の防止のために有用である。
【0020】
本実施形態では、
図11および
図12に示すように、支持部材20はボート2内において支持台5によって支持される。また、
図11に示すように、ボート2の槽2a内に液体が入れられ、支持部材20に支持されたグリッドGの上端側(後端側)が液面WS上に出る。この状態でグリッドGに切片Sが載せられる。
図9に示すように孔Hを有するグリッドGの場合、孔Hにはフォルムバールの支持膜が形成される。当該グリッドGの代わりに、複数の孔Hが設けられた公知のグリッド、孔Hの位置にメッシュが形成された公知のグリッド、又はその他の態様の公知のグリッドを用いることができる。グリッドGとして、ベコ社、ギルダー社等によって製造されたグリッドを用いることが可能である。
【0021】
グリッドGは表面張力現象等によって液体に浮き易い。このため、ハンドリング器具を用いてグリッドGに切片Sを載せる作業者が、グリッドGを液体内で位置決めする際に、グリッドGに液体による浮力が作用してグリッドGの位置が定まり難い場合等がある。本実施形態では、グリッドGがグリッド支持構造21によって支持されると、グリッドGの下面は下側支持面21bによって支持される。また、上側支持面21cはグリッドGの前端側の上面に当接可能な位置に設けられている。つまり、上側支持面21cと下側支持面21bとによってグリッドGの動きが規制される。
【0022】
上記構成によって、グリッドGをグリッド支持構造21によって支持する時に、前述の不具合が発生し難い。当該効果は、下側支持面21bと上側支持面21cとの距離D(
図7)がグリッドGの厚さの5倍以下であれば十分に得られ、10倍以下であっても十分に得られる。ベコ社、ギルダー社等のグリッドGの厚さは0.03mm程度であることが多く、この場合はグリッドGの厚さの5倍は0.15mmとなる。ベコ社、ギルダー社等のグリッドGの外径は3mm程度であり、距離DがグリッドGの外径の1/6以下(0.5mm以下)であれば、上記効果又は同様の効果を奏し得る。なお、距離Dが上記の数値以上であっても前述の効果を得ることができればよい。
【0023】
前述のように距離DがグリッドGの厚さ寸法よりも十分に大きいことにより、グリッドGをグリッド支持構造21に着脱し易くなる。距離DはグリッドGの厚さ寸法以上である必要があるが、グリッドGの着脱を考慮し距離DはグリッドGの厚さ寸法の2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることが更に好ましい。
なお、本実施形態では、隙間21a内にグリッドGの一部がグリッドGの挿入方向に当接する当接部21dが設けられ、これは液面WSからのグリッドGの突出量を一定にするために有用である。
【0024】
例えば、
図13に示すように、刃3によって作成された切片Sはまつ毛ツール(eyelash tool)等と称される切片誘導器具によってグリッドGの所定の位置に載せられる。所定の位置は孔H又はメッシュの位置である。
図13では連なっている複数の切片Sから切り離された1つがグリッドGに載せられているが、連なっている複数の切片SがグリッドGに載せられる場合もある。一例では、
図13に示すように、切片Sの一部又は全部がグリッドGに乗り上げ、これにより切片SがグリッドGに載せられる。
【0025】
ここで、
図10、
図13等に示すように、下側支持面21bによって支持されたグリッドGの上面は、刃3によって作成され液体に浮く切片Sに向かって下り傾斜を成す。このため、切片Sの一部又は全部をグリッドGに乗り上げるように切片Sをスムーズに誘導できる。本実施形態では、
図8および
図10に示すように、Y方向から見た時に、下側支持面21bと支持部材20の下基準面(水平面)20bとが成す角度αは30°である。槽2aに液体が入っている状態でのグリッドGの着脱の容易化等の作業性向上ために、角度αは15°以上であることが好ましい。また、ミクロトームの顕微鏡からグリッドG上の切片Sの状態が見えやすくなるように、角度αは70°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。下基準面20bは、使用状態の支持部材20又はボート2において水平となる面であればよい。また、角度αは、グリッド支持構造21によって支持されたグリッドGの上面が前記水平面となす角度であってもよい。この場合でも上記の角度範囲は同様に適用される。
【0026】
グリッドGが傾斜しているX方向において、グリッドGの一端側の上面に上側支持面21cが当接可能である。本実施形態では、前記一端側は傾斜したグリッドGの低い側である。より具体的に、グリッドGの中心C(
図13)よりも低い側を前記一端側と言うことができ、その何れかの部分の上面に上側支持面21cが当接可能であればよい。つまり、グリッドGのX方向の最先端部が上側支持面21cに当接する場合もあるが、当接しない場合もある。
【0027】
ここで、グリッドGの下面が単一ではなく複数の下側支持面21bによって支持されてもよい。本実施形態でもY方向に分かれた2つの下側支持面21bによって1つのグリッドGが支持される。グリッドGの下面が複数の小さな下側支持面によって支持されてもよい。当該変形は上側支持面21cでも可能である。
【0028】
上側支持面21cによって、グリッドGの浮き上がり、グリッドGの移動等が抑制される。なお、グリッドGの下面が下側支持面21bに接触することも、グリッドGの浮き上がりやグリッドGの移動の抑制に寄与する。
【0029】
前述のように、本実施形態では、グリッドGの着脱が容易であるため作業効率を向上することができる。しかも、下側支持面21bおよび上側支持面21cによってグリッドGの姿勢が一定の姿勢で保持され、これは切片SをグリッドGに載せる作業の容易化、切片Sのしわや破損の防止、切片SのグリッドGへの正確な載置等を可能とする。
また、ボート2において刃3が配置される前側壁2bの側に向かってグリッドGの上面が下り傾斜を成すように、下側支持面21bによってグリッドGが支持される。当該構成は、グリッドGに向かって切片Sをスムーズに誘導するために有用である。
【0030】
なお、
図16に示すように、刃3が配置されていない側壁2eに向かってグリッドGの上面が下り傾斜を成すように下側支持面21bが配置される場合もある。この場合でも、刃3によって作成され液体に浮く切片Sに向かってグリッドGの上面が下り傾斜を成していれば前述の同様の作用効果を奏し得る。
【0031】
また、
図17に示すように、グリッドGの幅方向(Y方向)の一端側の上面だけに上側支持面21cが当接可能であるグリッド支持構造21を設けることも可能である。この場合、作業者はグリッドGのY方向の一端側を隙間21aに挿入する。さらに、グリッド支持構造21の上側支持面21cがグリッドGの上面の他の部分に当接可能に構成されてもよい。これらの場合でも、上記のグリッドGの浮き上がりの抑制、グリッドGの移動の抑制が実現される。
【0032】
作業者は、切片Sが載せられたグリッドGをピンセット等のハンドリング器具を用いてグリッド支持構造21から取外し、同様にハンドリング器具を用いて新たなグリッドGをグリッド支持構造21に取付ける。本実施形態では、グリッドGの上端側(後端側)が液面WS上に出ており、これはハンドリング器具によるグリッドGの正確な保持とグリッドGのハンドリング作業の効率向上に寄与する。このように液面WSを下げずにハンドリング器具によってグリッドGの上端側を保持できる構造は、作業効率の向上に寄与する。
【0033】
一方、グリッドGをグリッド支持構造21から取外す際に槽2a内の液面WSを下げる方法もあり、このためには排液路4から液体が排出される。この場合、グリッドGに切片Sが安定して支持され、これは作業者の技量や切片Sの種類に応じて発生する不具合の防止に有用である。前記不具合は切片Sのしわ、破損等である。
【0034】
支持部材20には、支持部材20を上下方向に貫通する第1スリット22および第2スリット23が形成されている。本実施形態では、第1スリット22および第2スリット23は支持部材20のX方向の一端(前端)から形成され、X方向の他端(後端)に向かって延びている。
【0035】
本実施形態では、第1スリット22は、支持部材20のX方向の一端(前端)からグリッド支持構造21によるグリッドGの支持位置に向かって延びている。また、
図9等に示すように、グリッド支持構造21によって支持されたグリッドGの後端よりも後方まで第1スリット22が形成されている。当該構成では、ハンドリング器具によってグリッドGの上端側を保持する際に、ハンドリング器具の先端を第1スリット22内に入れることが可能であり、これは作業性の向上に寄与する。
【0036】
なお、
図9に破線22cで示す位置まで第1スリット22を設けることも可能である。この場合でも、第1スリット22は、下側支持面21bの後端から下方又は斜め下方に延びる壁21e(
図6および
図9)に開口する。このため、当該開口からハンドリング器具の先端を第1スリット22内に入れ、第1スリット22を用いてハンドリング器具の先端をグリッドGの下方に配置可能である。
【0037】
切片誘導器具によって切片SをグリッドGに載せる際に、切片Sの移動に応じて僅かに液体が流動し、流動した液体が第1スリット22を介して流れる。当該構成は切片SをスムーズにグリッドGに誘導する上で有利である。本実施形態では、流動した液体は第1スリット22に略平行な第2スリット23を介して流れることもあると考えられ、当該構成も切片Sのスムーズな誘導に寄与する。第1スリット22と第2スリット23との成す角度が15°以下であれば、第1スリット22と第2スリット23とは略平行であると言える。
【0038】
なお、本実施形態では、第1スリット22の両側にそれぞれ複数の第2スリット23が設けられているが、第1スリット22の両側又は一方に1つの第2スリット23が設けられた構成を採用することも可能であり、第2スリット23が無い構成を採用することも可能である。
【0039】
本実施形態では、
図9に示すように、第1スリット22の幅W1は1mm以上であり、第2スリット23の幅W2は0.5mm以下である。つまり、幅W1は幅W2の2倍以上である。当該構成は本実施形態では液体のよりスムーズな流動に寄与していると考えられる。幅W1が幅W2の1.5倍以上であれば同様の効果を達成することが可能である。幅W1は0.5mm以上であることが好ましい。また、幅W1は幅W2の3倍以上であることがより好ましい。また、
図13等に示すように幅W1がグリッドGの孔Hの幅寸法に対し同等以上であることは、切片SをスムーズにグリッドGまで誘導するために好ましい場合が多い。
【0040】
前述のように液面WSを下げてグリッドGに切片Sを付着させる際にも、スリット22,23はスムーズな液体の移動に寄与する。液面WSを下げる際に支持部材20上に液体が残り難い構造は、グリッドGへの切片Sの安定した付着に寄与する。
図8に示すように、支持部材20においてグリッド支持構造21よりも前端側の上面25は凸曲面である。凸曲面はX方向および/又はY方向に円弧を描くものである。本実施形態では上面25の例えば70%以上の範囲が前記曲面である。また、下側支持面21bがX方向に傾斜しており、グリッド支持構造21におけるグリッドGの支持位置まで第1スリット22が延びている。このため、液面WSを下げる際に液体は当該支持位置に残り難い。これらの構成は、液面WSを下げる時の液体の残留を防止する上で有利であり、これはグリッドGへの切片Sの安定した付着に寄与する。なお、液体の残留を低減するためにY方向において下側支持面21bを傾斜又は湾曲させることも考えられる。
【0041】
本実施形態では、上記のグリッド支持構造21と第1スリット22があることにより、作業性の向上が可能であり、グリッドGの前述のスムーズ且つ安定した着脱を高いレベルで実現することも可能である。また、液面WSを下げることによりグリッドGに切片Sを付着させる場合でも、グリッドGの周囲に液体が残り難くなるので、作業効率を向上しながら、切片を安定してグリッドGに載せることが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態では、スリット22,23は支持部材20の前端に開口しているが、スリット22,23は支持部材20の後端、Y方向の端等に開口してもよい。スリット22,23が直線状でない場合もあり得る。スリット22,23が互いに略平行でない場合もあり得る。支持部材20に例えば直径3mmの円より大きな孔が設けられ、当該孔が支持部材20を上下方向に貫通している場合は、第1スリット22および/又は第2スリット23が当該孔からグリッドGの支持位置まで延びていてもよい。これらの場合でも前述と同様の効果を奏し得る。
【0043】
なお、
図14に示すように、第1スリット22および第2スリット23の代わりに、支持部材20を上下方向に貫通する中央孔22aおよびサイド孔23aを設けることも可能である。この場合でも前述のように流動する液体が孔22a,23aを介して流れるので、前述と同様の作用効果が達成され得る。ハンドリング器具の先端を中央孔22a内に入れることによって、ハンドリング器具の先端をグリッドGの下方に配置可能である。
【0044】
なお、排液路4から所定の流量で液体を抜きながら槽2aの刃3の近くに所定の流量で液体を供給することによって槽2a内の液体を流動させ、これにより切片SをグリッドGに向かってスムーズに移動させることも可能である。または、特開2007-33312に開示がある方法で槽2a内の液体を流動させることも可能である。これらの場合、スリット22,23や孔22a,23aによって液体の流動がスムーズになる。
【0045】
また、本実施形態ではスリット22,23は支持部材20の上面から下面まで貫通しているが、スリット22,23の位置にそれぞれ支持部材20の下面まで貫通しない溝を形成することも可能である。この場合でも、液面WSを下げた時に液体がグリッドGの周囲からスムーズに排出され、または、溝を介して支持部材20の前端側から後端側に液体がスムーズに流れる。また、ハンドリング器具の先端を溝内に入れることによって、ハンドリング器具の先端をグリッドGの下方に配置可能である。
【0046】
なお、本実施形態において、支持部材20にスリット22,23、孔22a,23a、および溝の何れも設けない構成を採用することも可能である。この場合でも、グリッド支持構造21へのグリッドGの前述のスムーズ且つ安定した着脱を実現できる。
【0047】
本実施形態では、支持部材20の幅方向の両側に切欠き24が形成され、切欠き24は支持部材20を上下方向に貫通している。当該構成によって、液体を収容した槽2a内に支持部材20を配置する際に、液体が切欠き24を介して上下方向に流れるので、支持部材20を配置する時の作業性が向上する。切欠き24の代わりにスリット、孔等が設けられてもよい。
【0048】
図7に示すように、本実施形態では、支持部材20における下側支持面21bの頂部21fよりも前端側には、頂部21fよりも高い部分が無い。つまり、前端側の上面25は頂部21fよりも低い。このため、
図11に示すように上面25を液面WSの下に配置する設定が容易となり、当該設定は切片SのグリッドGへのスムーズな誘導のために重要である。
【0049】
なお、
図15に示すように、支持部材20に複数の第1スリット22を設けることも可能である。この場合、複数のグリッドGをそれぞれ複数の第1スリット22に対応した位置に配置可能である。当該構成では、一度に複数のグリッドGに切片Sを載せることが可能となる。
【0050】
また、
図18に示す第2実施形態のように、支持部材20から下方に延びる単一又は複数の脚部26が設けられてもよい。当該実施形態のボート2等の説明の無い構成は第1実施形態と同様である。支持部材20に脚部26が一体に設けられてもよい。脚部26を設けることによって、支持部材20に固定されている脚部26が槽2aの内部構造、例えば底面等に接触し、支持部材20が支持台5を使うことなく槽2a内に配置される。好ましくは、支持部材20によって支持されたグリッドGの上端側(後端側)が槽2aの液面から少し上に出るように、脚部26の高さ寸法が設定されている。当該構造では、支持台5を用いる必要が無いため、槽2a内における支持部材20の位置および姿勢が安定する傾向がある。また、当該構造では、支持部材20の下面側を液体がX方向に流動できるので、槽2a内で液体が流動し易くなる。これは、液面WS上で切片Sを誘導する際又は液面WSを下げる際に有用である。
【0051】
また、
図19~
図21に示す第3実施形態のように、支持部材20の高さを調整するための高さ調整機構30が設けられてもよい。当該実施形態のボート2等の説明の無い構成は第1実施形態と同様である。高さ調整機構30は、例えば、槽2aの内部構造、例えば底面等によって支持されるベース31と、ベース31に螺合しているネジ部材32と、ネジ部材32を回すことによってベース31に対して上下動する可動部材33と、を有する。本実施形態では可動部材33に支持部材20の後端側がボルト(締結部材)Bによって固定されている。
図19~
図21の支持部材20は前述のものと同様であり、後端側の形状が可動部材33への取付けのために変更されているだけである。このため、支持部材20はここでは詳述しない。
【0052】
ネジ部材32の回転軸線は上下方向に延びている。ネジ部材32は、下端側にベース31の雌ネジ穴31aと螺合する雄ネジ32aを有し、上端側にネジ回し工具が係合する係合部32cが形成されている。本実施形態では係合部32cは直線状の溝であるが、六角レンチが係合する穴であってもよい。ネジ部材32の上下方向の中間部には止め輪等の被載置部材40が取付けられている。例えば、ネジ部材32の前記中間部に全周に亘って溝32bが設けられ、溝32bに被載置部材40が嵌っている。止め輪は公知のEリング等である。被載置部材40として、ネジ部材32の前記中間部に水平方向に突出するフランジ等の突出部を形成してもよく、水平方向に延びる板を前記中間部に固定してもよい。
【0053】
可動部材33は、例えば、下部材34と上部材35とを有し、下部材34と上部材35とはボルト(締結部材)Bによって互いに固定されている。下部材34には、ネジ部材32が上下方向に挿通する貫通孔34aと、ベース31に設けられたガイド部31bに第1の水平方向に係合する係合部34bとが設けられている。ガイド部31bは上下方向に延び、溝、スリット、レール等によって構成可能である。係合部34bにはストッパ部34cが設けられ、本実施形態ではストッパ部34cを構成する部材がボルト(締結部材)Bによって係合部34bに固定されている。
【0054】
ストッパ部34cは、ベース31に前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に係合可能であり、ベース31に下方から係合可能である。これにより、ベース31に対する可動部材33の第1の水平方向および第2の水平方向の移動が規制される。第1の水平方向の移動規制は、後述の可動部材33の上下方向の位置設定作業を容易にするために有用である。
【0055】
上部材35にはネジ部材32が上下方向に挿通する貫通孔35aが設けられている。ネジ部材32は貫通孔34a,35aを介して可動部材33を上下方向に挿通する。上部材35の上面には目印(目盛り)36が設けられ、目印36はネジ部材32の回転位置の目印となる。ネジ部材32の上面に目印37が設けられていると、作業者はネジ部材32の回転位置をより容易に認識できる。
【0056】
下部材34と上部材35とが互いに固定された状態で、下部材34と上部材35との間にはEリングが配置されるスペース33a(
図19)が形成される。スペース33aは、例えば、下部材34の上面および/又は上部材35の下面に形成される座ぐりによって形成される。下部材34と上部材35との間にスペーサによってスペース33aが設けられてもよい。スペース33aは貫通孔34a,35aに連通している。
【0057】
上記構造によって、可動部材33の上部材35は被載置部材40に載った状態となる。これにより、ネジ部材32をその軸線周りに回転させると、ネジ部材32が上下動し、これにより被載置部材40に載っている可動部材33および支持部材20が上下動する。作業者は、槽2a内に高さ調整機構30および支持部材20を配置した状態で、ネジ部材32によって支持部材20の高さを微調整できる。これは調整作業を容易化するために有用である。また、可動部材33が被載置部材40に載っているので、前記微調整の時等に支持部材20が傾き難い。これは調整作業を容易化するために有用であり、グリッドGに正確に切片Sを載せるためにも有用である。なお、可動部材33が下部材34を備えず、スペース33aが無い場合であっても、上部材35が被載置部材40に載るように構成されていれば、前述と同様の作用効果を奏し得る。
【0058】
また、
図22~
図23に示す第4実施形態ように、支持部材20の高さを調整するための高さ調整機構50が設けられてもよい。当該実施形態のボート2等の説明の無い構成は第1実施形態と同様である。高さ調整機構50は、例えば、槽2aの内部構造、例えば底面等によって支持されるベース51と、ベース51にガイド部材52によって上下方向に移動可能に取付けられた可動部材53と、を有する。また、高さ調整機構50は、可動部材53に螺合しており、回すことによってベース51に対して可動部材53を上下動させるネジ部材54を有する。本実施形態では可動部材53に支持部材20の後端側がボルト(締結部材)Bによって固定されている。
図22~
図23の支持部材20は前述のものと同様であり、後端側の形状が可動部材53への取付けのために変更されているだけである。このため、支持部材20はここでは詳述しない。
【0059】
ガイド部材52の下端はベース51に形成された穴51aに挿入され、ガイド部材52の下端は水平方向に軸線を有する止めネジ51bによって穴51aに固定されている。止めネジ51bはベース51に螺合している。本実施形態では穴51aはX方向に長い長孔であり、止めネジ51bによってガイド部材52の下端が穴51aの内周面に押付けられる。
【0060】
可動部材53にはガイド部材52に対応した位置に穴52aが設けられ、ガイド部材52は穴52aを上下方向に挿通している。ガイド部材52はリング部材55を挿通しており、リング部材はガイド部材52の外周面と穴52aの内周面との間に配置される。リング部材55は周方向の一部が切断されたリングである。ガイド部材52の上下方向の中間部又は上端側は、水平方向に軸線を有する止めネジ52bによって穴52aに固定される。本実施形態では止めネジ52bがリング部材55を押し、押されたリング部材55がガイド部材52に抱きつき、これによりガイド部材52が穴52aに固定されるが、リング部材55を用いずに止めネジ52bによってガイド部材52を穴52aに固定してもよい。
【0061】
ネジ部材54の回転軸線は上下方向に延びており、ネジ部材54の下端はベース51の上面に当接する。このため、ガイド部材52又はリング部材55の前記中間部の穴52aへの押付けを止めネジ52bによって緩めた状態で、ネジ部材54を回すと、ベース51に対して可動部材53を上下動させることができる。可動部材53の高さ位置が調整された後に、止めネジ52bによってガイド部材52又はリング部材55を穴52aに押付けると、可動部材53の位置が固定される。止めネジ52bによる上記押付けを用いているので、可動部材53の微妙な傾きの調整も可能である。当該構成でも、作業者は、槽2a内に高さ調整機構50および支持部材20を配置した状態で、ネジ部材54によって支持部材20の高さを微調整できる。
【0062】
なお、ガイド部材52はベース51に対して可動部材53を上下方向に移動可能にガイドすればよい。このため、当該機能を有するレール等の他のガイド部材を用いることも可能である。ガイド部材52が可動部材53の外周面又は内周面に形成された溝に係合し、これにより可動部材53がベース51に上下方向に移動可能に取付けられてもよい。
【0063】
なお、
図24に示す第5実施形態のように、グリッド支持構造21’を支持部材20’の上面に形成された凹部60とすることも可能である。当該実施形態のボート2等の説明の無い構成は第1実施形態と同様である。凹部60における刃3側の内壁60aの下部にグリッドGのX方向の前端(下端)が当接し、凹部60における刃3から離れた側の内壁60bの上端部にグリッドGのX方向の中間部の下面が当接する。
図24のX方向は
図1のX方向と同一である。これにより、刃3によって作成され液体に浮く切片Sに向かって下り傾斜を成すように、グリッドGが凹部60によって支持される。支持部材20’には溝61,62および/又は孔63,64に連通している。凹部60内に連通している。
【0064】
溝61,62および孔63,64は支持部材20’を上下方向に貫通している。
図24において、斜線部は凹部60において溝61,62および孔63,64が設けられていない部分、つまり支持部材20’を上下方向に貫通していない部分を示す。
図24では、溝61は支持部材20’の後端から凹部60まで延びており、溝62は支持部材20’の前端から凹部60まで延びている。これにより、液面WSを下げる際に、凹部60内の液体がスムーズに抜ける。
【0065】
図24では、孔63の一部が凹部60内に配置され孔63の他の部分が凹部60外に配置されている。また、
図24では、孔64の全部が凹部60内に配置されている。溝61,62および孔63,64のサイズにも左右されるが、液面WSを下げる時に孔63,64と比べると溝61,62の方が凹部60内の廃液効率の向上に有効である。溝61,62が支持部材20’のY方向の端に開口していてもよく、支持部材20’に設けられた例えば直径3mm以上の大きな孔に開口していてもよい。これらの構成も同様の作用効果を奏し得る。
【0066】
上記実施形態では支持部材20、脚部26、および高さ調整機構30,50のベース31,51がボート2に取付けられてもよく、ボート2と一体に形成されてもよい。これらの場合でも同様の作用効果が達成され得る。
【符号の説明】
【0067】
2 ボート(液体貯留部)
3 刃
20 支持部材
21 グリッド支持構造
21a 隙間
21b 下側支持面
21c 上側支持面
21d 当接部
22 第1スリット
23 第2スリット
24 切欠き
26 脚部
30,50 高さ調整機構
S 切片
G グリッド
WS 液面