(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017268
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】苗箱掬い上げ運搬装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20230131BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20230131BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
A01G9/02 610D
B62B3/00 E
A01G9/14 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121397
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000161600
【氏名又は名称】宮野 武義
(74)【代理人】
【識別番号】100110537
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮野 武義
【テーマコード(参考)】
2B029
2B327
3D050
【Fターム(参考)】
2B029GA06
2B327ND03
2B327TC17
3D050AA12
3D050BB02
3D050BB29
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
(57)【要約】
【課題】本発明は、農用ハウスに準備された植え付け状態の育苗箱を掬い上げて所定の位置まで運搬できる苗箱掬い上げ運搬装置を提供する。
【解決手段】苗箱荷台部1の長さ方向中央に左右一対軸着され、前記苗箱荷台部1をシーソーのように昇降できる位置に設けた主車輪8と、苗箱荷台部1の前方に軸支されたロール状前輪14と、前記苗箱荷台部1の後端部の荷台フレーム昇降部7に可動固定された一対の補助車輪9と前記苗箱荷台部1の後方に構築された小枠体15に取り付けられた方向自在車輪6とを備える。前記苗箱荷台部1の前端に設けた苗箱掬い上げ部4の回転ロール33によって育苗箱の段差部35が掬い上げられ、苗箱掬い上げ運搬装置Aの押し進めによって育苗箱は順次に一対の搬送ベルト3に載せられて腰までの位置に移送され、上端のリミットスイッチ12を叩くまで移送され、トラック荷台に架設された苗箱運搬コンテナへ移し替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱を複数枚載せることができる苗箱荷台部と、該苗箱荷台部をシーソーのように昇降できる位置に設けた主車輪と、苗箱の段差部を掬い上げできるように前記苗箱荷台部の前端に設けた苗箱掬い上げ部と、前記苗箱荷台部の後端の荷台フレーム昇降部に固定された方向自在車輪および可動固定された補助車輪を備え、苗箱の掬い上げ状態と運搬状態とに姿勢変更できるようにしてなるようにした荷台フレーム昇降部とを備えてなることを特徴とする苗箱掬い上げ運搬装置。
【請求項2】
前記苗箱荷台部は、左右一対の軽量C形鋼の縦フレームと、該縦フレーム間に複数接合する中間軽量C形鋼の横フレームと、前記縦フレーム間に架け渡された複数の案内ロールと、前記苗箱荷台部の前後に架け渡され、複数個の案内ロールに案内される左右一対の搬送ベルトとからなることを特徴とする請求項1記載の苗箱掬い上げ運搬装置。
【請求項3】
前記苗箱掬い上げ部は、縦フレームの突端に接合された支持金を介して案内座が架け渡し固定され、前記案内座が左右一対の搬送ベルトを案内すると共に、前記案内座に固定された軸受けに支持軸が軸支され、該支持軸にベルト案内車と一体の回転ロールが固定されることを特徴とする請求項1記載の苗箱掬い上げ運搬装置。
【請求項4】
前記荷台フレーム昇降部は、苗箱荷台部の後方に構築された小枠体に可動固定された補助車輪と、該補助車輪の支軸に回転自在に軸支された固定フレームと、該固定フレームに対して立設される支持骨に軸支されたピンを設け、該ピンを中心にペダルの踏込みによって持ち上がる足踏みレバーとからなり、前記小枠体内に立設された案内板に設けた回転駒に前記足踏みレバーを係合させ、ペダルの踏込みによって小枠体及び苗箱荷台部の後端部全体を上昇させることを特徴とする請求項1記載の苗箱掬い上げ運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用ハウスに準備された植え付け状態の苗箱を掬い上げて所定の位置まで運搬できる苗箱掬い上げ運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年来、稲作は田植機の発明によってその軽減化が図られて来たが、その一方で勤勉な態勢で支えられてきた労力も、高齢化によって弱体化され、育苗箱の田植機までの供給に多大な労力と経費を要していたものであり、これらの作業の軽減化が要望されていたものである。
従来、育苗箱の運搬車として、左右の側板を設けた荷台下に一輪又は二輪を備えると共に、荷台後部にハンドルを設け、該ハンドルにストッパー本体を操作するハンドルレバーを設けた手押し車が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
この公知技術は、予め苗箱が整列した農用ハウスに移動した後、ハンドルを持ち上げて手押し車の先端を接地させ、そして、ハンドルレバーを操作することによりストッパー本体を側板から後退させて、このハンドルレバーを握ったまま前進すると左右の側板に案内されながら苗箱が荷台に乗り移る。このようにして苗箱を所定枚数積み込んでハンドルレバーから手を離すとストッパー本体が側板から突出して、これにより荷台上の苗箱は固定されて滑り落ちることはなくなる。そして、ハンドルを下ろして荷台をほぼ水平に保った状態で農用ハウスより苗箱を従来の一輪車と同様に搬出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3073987号公報(
図3、0022~0024を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、農用ハウスに準備された植え付け状態の苗箱を掬い上げて所定の位置まで運搬できる苗箱掬い上げ運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の苗箱掬い上げ運搬装置は、苗箱を複数枚載せることができる苗箱荷台部と、該苗箱荷台部をシーソーのように昇降できる位置に設けた主車輪と、苗箱底部の段差部を掬い上げできるように前記苗箱荷台部の前端に設けた苗箱掬い上げ部と、前記苗箱荷台部の後端の荷台フレーム昇降部に固定された方向自在車輪および可動固定された補助車輪を備え、苗箱の掬い上げ状態と運搬状態とに姿勢変更できるようにした荷台フレーム昇降部とを備えてなる。
前記苗箱荷台部は、左右一対の軽量C形鋼の縦フレームと、該縦フレーム間に複数接合する中間軽量C形鋼の横フレームと、前記縦フレーム間に架け渡された複数の案内ロールと、前記苗箱荷台部の前後に架け渡され、複数個の案内ロールに案内される左右一対の搬送ベルトとからなる。
前記苗箱掬い上げ部は、縦フレームの突端に接合された支持金を介して案内座が架け渡し固定され、前記案内座が左右一対の搬送ベルトを案内すると共に、前記案内座に固定された軸受けに支持軸が軸支され、該支持軸にベルト案内車と一体の回転ロールが固定される。
前記荷台フレーム昇降部は、苗箱荷台部の後方に構築された小枠体に可動固定された補助車輪と、該補助車輪の支軸に回転自在に軸支された固定フレームと、該固定フレームに対して立設される支持骨に軸支されたピンを設け、該ピンを中心にペダルの踏込みによって持ち上がる足踏みレバーとからなり、前記小枠体内に立設された案内板に設けた回転駒に前記足踏みレバーを係合させ、ペダルの踏込みによって小枠体及び苗箱荷台部の後端部全体を上昇させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の苗箱掬い上げ運搬装置は、苗箱荷台部の前端に設けた苗箱掬い上げ部の回転ロールに形成された掬い上げ突起によって苗箱底部の段差部が掬い上げられ、人力による苗箱掬い上げ運搬装置の押し進めによって苗箱は順次に一対の搬送ベルトに載せられて苗箱荷台部上を人の腰までの位置に移送され、上端のリミットスイッチを叩くまで移送されるため、従来から、きつい稲作農作業の一つとされていた腰を屈めて育苗箱の所定位置までの移送(搬送)作業を軽微にかつ能率的にトラック荷台に架設された苗箱運搬コンテナへ移し替えることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る苗箱掬い上げ運搬装置の右側面図である。
【
図2】本発明に係る苗箱掬い上げ運搬装置の平面図である。
【
図3】荷台フレーム昇降部の左側面の部分拡大説明図である。
【
図5】回転ロールの(a)一側面図、(b)正面図、平面視門型すくい刃の(c)一側面図、(d)正面図である。
【
図6】本発明に係る苗箱掬い上げ運搬装置の(a)苗箱の掬い上げ状態の動作説明図、(b)苗箱の運搬状態の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の苗箱掬い上げ運搬装置の一実施例を添付図面により、以下に説明する。
図1の右側面図に示すように、本発明の苗箱掬い上げ運搬装置Aは、前記苗箱荷台部1の前後に架け渡され、複数個の案内ロール2に案内される左右一対の搬送ベルト3と、該搬送ベルト3の前端に設けた苗箱掬い上げ部4と、前記搬送ベルト3を介して苗箱掬い上げ部4に動力を供給するモーター5及び方向自在車輪6を備える荷台フレーム昇降部7とから成る。
前記苗箱掬い上げ運搬装置Aは、苗箱を複数枚載せることができる苗箱荷台部1と、該苗箱荷台部1をシーソーのように昇降できる位置に設けた主車輪8と、苗箱底部の段差部を掬い上げできるように前記苗箱荷台部1の前端に設けた苗箱掬い上げ部4と、前記苗箱荷台部1の後端の荷台フレーム昇降部7に固定された方向自在車輪6および可動固定された補助車輪9を備え、苗箱の掬い上げ状態と運搬状態とに姿勢変更できるようにする。
【0010】
図2の平面図に示すように、前記苗箱荷台部1は、左右一対の軽量C形鋼の縦フレーム10と、該縦フレーム10間に複数接合する中間軽量C形鋼の横フレーム11と、前記縦フレーム10間に架け渡された複数の案内ロール2とからなる。さらに、前記苗箱荷台部1の前端に接続される苗箱掬い上げ部4と、前記苗箱荷台部1の後端に接続されるリミットスイッチ12とを備える。また、前記苗箱荷台部1の後端から延出させた門形のハンドル部13を備える。
【0011】
前記主車輪8は、前記苗箱荷台部1の長さ方向中央に左右一対軸着され、前記苗箱荷台部1をシーソーのように昇降できる位置に設ける。
図1に示すように、前記苗箱荷台部1の前方に軸支されたロール状前輪14と、前記苗箱荷台部1の後端部の荷台フレーム昇降部7に可動固定された一対の補助車輪9と前記苗箱荷台部1の後方に構築された小枠体15に取り付けられた方向自在車輪6と、を備える。
【0012】
図3の部分拡大説明図に示すように、前記搬送ベルト3は、前記苗箱荷台部1の後方に構築された小枠体15に外設されたバッテリー16により駆動され、モーター5と減速機17を介して制御されたチェーン(図外)に連動する歯車(図外)によって回転駆動される。
前記荷台フレーム昇降部7は、前記苗箱荷台部1の後方に構築された小枠体15に可動固定された補助車輪9と、該補助車輪9の支軸18に回転自在に軸支された固定フレーム19と、該固定フレーム19に対して立設される支持骨20に軸支されたピン21を設け、該ピン21を中心にペダル22の踏込みによって持ち上がる足踏みレバー23とからなる。前記小枠体15内に立設された案内板24に設けた回転駒25に前記足踏みレバー23を係合させ、ペダル22の踏込みによって小枠体15全体、すなわち前記苗箱荷台部1の後端部全体を上昇させる。
【0013】
前記荷台フレーム昇降部7は、苗箱の掬い上げ時に使用するものであり、前記苗箱荷台部1への苗箱の移乗作業時には、前記小枠体15の内部に備えられる方向自在車輪6は浮いた状態であることが要求され、移乗作業終了後は、前記小枠体15は方向自在車輪6を着地させて反対に補助車輪9を浮き上がらせて、主車輪8と方向自在車輪6との共働で横移動を簡単に行うことができる。
前記苗箱荷台部1と固定フレーム19との間に張設されたスプリング(図外)には張力がかかり、つっかえ棒27の解除時の前記足踏みレバー23の戻り動作に作用する。
このスプリングに代えてゴム製のバネ材を使用することも考えられる。
【0014】
図4の拡大説明図に示すように、前記苗箱掬い上げ部4は、前記縦フレーム10の突端に接合された支持金28を介して案内座29が架け渡し固定され、前記案内座29が左右一対の搬送ベルト3を案内すると共に、前記案内座29に固定された軸受け30に支持軸31が軸支され、該支持軸31にベルト案内車32と一体の回転ロール33が固定される。
【0015】
種籾(図外)を蒔いた育苗箱(図外)を腰の位置から地表まで静かに移送することも考えられ、このときは、
図5(c)、(d)に示すように、回転ロール33に代えて案内座29にビス止めされる門型のすくい刃37が採用される。これだと、育苗箱が着地する際にバタンバタンと地表を叩くこともなく、種籾が蒔かれた育苗箱からはね落ちることがない。
また、ベルト案内車32と回転ロール33との関係は、ベルト案内車32の側に介在させた接着剤38によって回転ロール33を一体化するものである。
【0016】
次に、本発明の苗箱掬い上げ運搬装置の操作動作を添付図面により、以下に説明する。
図6(b)の苗箱の運搬状態の動作説明図において、苗箱荷台部1の荷台フレーム昇降部7では、方向自在車輪6が接地し補助車輪9が浮いている状態で、
図3に示す足踏みレバー23のペダル22を足で踏むと、補助車輪9の支軸18に回転自在に軸支される固定フレーム19に立設した支持骨20に軸支されたピン21を中心に足踏みレバー23の右端が上方へはね上がる。このときに支点36を中心に小枠体15が回転して補助車輪9は接地し、足踏みレバー23の右端は上方へ回転し小枠体15に立設された案内板24に設けた回転駒25に案内された小枠体15を上昇させる。その結果、前記小枠体15を一体とする苗箱荷台部1は、主車輪8を中心に回転し、苗箱荷台部1と荷台フレーム昇降部7とは浮き上がり、一方ロール状前輪14が着地するまでその先端の苗箱掬い上げ部4が下がって
図6(a)の苗箱の掬い上げ状態になる。
【0017】
図6(a)の苗箱の掬い上げ状態の動作説明図において、苗箱の移乗状態では、
図5(a)に示すように、苗箱掬い上げ部4の回転ロール33に形成された掬い上げ突起34によって苗箱底部の段差部35が掬い上げられ、
図6(a)の矢印に示すように、人力による苗箱掬い上げ運搬装置Aの押し進めによって苗箱は順次に一対の搬送ベルト3に載せられて矢印に示すように苗箱荷台部1上を人の腰までの位置に移送され、
図3に示す上端のリミットスイッチ12を叩くまで移送される。
そこから田植機(図外)の苗載せ台(図外)或いはトラック荷台に架設された苗箱運搬コンテナまで順次に移設されることになる。一方、ハンドル部13に設けられたスイッチ(図外)の逆作動を考えると、種籾(図外)を蒔いた育苗箱(図外)を腰の位置から地表まで静かに移送することも考えられ、このときは回転ロール33に代えて案内座29にビス止めされる
図5(c)、(d)に示す門型のすくい刃37が採用される。これだと、育苗箱が着地する際にバタンバタンと地表を叩くこともなく、種籾が蒔かれた育苗箱からはね落ちることがない。
【0018】
そして、苗箱の移乗作業が終了後は、つっかえ棒解除ペダル39を踏むとつっかえ棒27の下端が解除されて、バネ(図外)の復元力で足踏みレバー22の戻り動作が働き、前記足踏みレバー22のペダル23側が上昇し、前記足踏みレバー22の右端が下降し、引き続いて小枠体15が降下する。前記小枠体15の降下により方向自在車輪6が接地すると共に補助車輪9が浮いて、主車輪8を中心に
図6(b)に示すように、苗箱荷台部1の前端の苗箱掬い上げ部4が上昇して育苗箱の運搬状態にセットされる。
このとき、主車輪8と方向自在車輪6の接地により苗箱荷台部1の横移動が自在となり、その配列姿勢を適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、稲作農業の分野で、マンパワーの高齢化により衰退している今日において、育苗箱を田植機の必要とする位置に省力的に提供できることは、農作業における人で不足の解消と効率化で多大に貢献できるものである。
【符号の説明】
【0020】
1 苗箱荷台部
2 案内ロール
3 搬送ベルト
4 苗箱掬い上げ部
5 モーター
6 方向自在車輪
7 荷台フレーム昇降部
8 主車輪
9 補助車輪
10 縦フレーム
11 横フレーム
12 リミットスイッチ
13 ハンドル部
14 ロール状前輪
15 小枠体
16 バッテリー
17 減速機
18 支軸
19 固定フレーム
20 支持骨
21 ピン
22 ペダル
23 足踏みレバー
24 案内板
25 回転駒
26 ピン
27 つっかえ棒
28 支持金
29 案内座
30 軸受け
31 支持軸
32 ベルト案内車
33 回転ロール
34 掬い上げ突起
35 段差部
36 支点
37 すくい刃
38 接着剤
39 つっかえ棒解除ペダル