(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172710
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両用ランプシステム、その制御方法、ランプ制御プログラム、および、車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20231129BHJP
B60Q 1/24 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084698
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大束 英雄
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA14
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA03
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA05
3K339EA05
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA03
3K339HA04
3K339KA02
3K339KA07
3K339KA09
3K339KA10
3K339KA29
3K339LA06
3K339LA35
3K339MA01
3K339MA07
3K339MC01
3K339MC03
3K339MC13
3K339MC17
3K339MC26
3K339MC36
3K339MC39
(57)【要約】
【課題】車両の運転者が歩行者を認識しやすく、雨天であっても、歩行者は眩しさを感じにくい車両用ランプシステムを提供する。
【解決手段】ランプユニットの光の投影範囲の一部をオンオフまたは減光させるドライバを有する。ランプユニットの光の投影範囲のうち、歩行者の頭部に光を直接投影する第1の投影範囲と、投影した光が路面で正反射して、歩行者の頭部を除いた体に到達する第2の投影範囲とを求める。第1の投影範囲に対応するセグメントを消灯または減光させるとともに、第2の投影範囲に対応するセグメントから予め定めた強調光を投影させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を所定の範囲に投影するランプユニットと、前記ランプユニットの光の投影範囲の一部をオンオフまたは減光させるドライバと、前記ドライバを制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記ランプユニットの光の投影範囲のうち、歩行者の頭部に光を直接投影する第1の投影範囲を消灯または減光させるとともに、投影した光が路面で正反射して、前記歩行者の頭部を除いた体に到達する第2の投影範囲に予め定めた強調光を投影させることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、前記制御部は、投影した光が路面で正反射して前記歩行者の頭部に到達する第3の投影範囲を消灯または減光させることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、前記ランプユニットは、一対であって、車両の中心軸を挟んで左右方向に離れて配置され、
前記制御部は、前記一対のランプユニットのうち、前記歩行者から遠い側のランプユニットの光の投影範囲のうち、前記歩行者に光を直接投影する第4の投影範囲を消灯または減光させることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、前記制御部は、自車両から前記歩行者を撮影した画像を処理して、前記第1の投影範囲および第2の投影範囲を求めることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用ランプシステムであって、前記制御部は、自車両から前記歩行者を撮影した画像を処理して、前記路面から前記歩行者の首までの高さhpと、前記自車両と前記歩行者との距離dpを求め、
前記高さhpと前記距離dpから、前記ランプユニットから投影した光が前記路面で正反射されて前記歩行者の首に照射される前記路面上の位置Tを算出し、算出した前記位置Tから前記歩行者の足元までの範囲を、前記第2の投影範囲とすることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のランプシステムであって、前記位置Tから前記自車両までの範囲を前記第3の投影範囲とすることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、前記制御部は、前記路面が濡れているかどうかを判定し、路面が濡れていると判定した場合にのみ、前記第2の投影範囲に前記強調光を投影することを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、前記ランプユニットは、縦横にマトリクス状に配列された発光素子を含み、
前記ドライバは、前記発光素子を単位として、オンオフまたは減光させることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、
前記制御部は、前記第2の投影範囲のみならず、投影した光が直接、前記歩行者の頭部を除いた体に到達する第5の投影範囲にも前記強調光を投影させることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項10】
請求項1に記載の車両用ランプシステムであって、前記制御部は、投影した光が路面で正反射して前記歩行者の頭部に到達する第3の投影範囲を通常点灯させることを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項11】
光を所定の範囲に投影するランプユニットと、前記ランプユニットの光の投影範囲を所定サイズの一部をオンオフまたは減光させるドライバとを有するランプの制御方法であって、
前記ランプユニットの光の投影範囲のうち、歩行者の頭部に光を直接投影する第1の投影範囲と、投影した光が路面で正反射して、前記歩行者の頭部を除いた体に到達する第2の投影範囲とを求めるステップと、
前記第1の投影範囲を消灯または減光させるとともに、前記第2の投影範囲から予め定めた強調光を投影させるステップと
を含むことを特徴とする車両用ランプシステムの制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の車両用ランプシステムの制御方法であって、前記路面が濡れているかどうかを判定するステップをさらに有し、
前記予め定めた強調光を投影させるステップは、路面が濡れていると判定された場合のみ、前記第2の投影範囲に前記強調光を投影することを特徴とする車両用ランプシステムの制御方法。
【請求項13】
コンピュータに、
ランプユニットの光の投影範囲のうち、歩行者の頭部に光を直接投影する第1の投影範囲と、投影した光が路面で正反射して、前記歩行者の頭部を除いた体に到達する第2の投影範囲とを求めるステップと、
前記ランプユニットの前記第1の投影範囲を消灯または減光させるとともに、前記第2の投影範囲から予め定めた強調光を投影させるステップと
を実行させるランプ制御プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のランプ制御プログラムであって、
前記路面が濡れているかどうかを判定するステップをさらに前記コンピュータに実行させ、
前記予め定めた強調光を投影させるステップは、路面が濡れていると判定された場合のみ、前記第2の投影範囲に前記強調光を投影するステップである、
ランプ制御プログラム。
【請求項15】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のランプシステムを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のランプシステムに関し、特にヘッドランプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対向車の位置を検出し、自車両のヘッドライトの光が対向車の運転者に対して照射されないように、ヘッドライトを部分的に消灯するADB(Adaptive Driving Beam)技術が用いられている。これにより、対向車の運転者が眩惑されるのを防止することができる。
【0003】
また、特許文献1には、自車両の近くに歩行者がいる場合、自車両と歩行者との間の路面に、自車両から歩行者へ向かう線状の照射パターンや、歩行者の足元に点状の照射パターンを前照灯から投影する前照灯制御装置が開示されている。ことによって、歩行者に自車両を認知させることのできる前照灯制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によって、自車両から歩行者へ向かって路面に線状の照射パターンを投影した場合、歩行者の顔へは直接照射されないように照射方向を制御したとしても、路面での反射光が、歩行者の顔部分に当たり、歩行者にグレア(眩しさ)を与えてしまうという問題が生じ得る。
【0006】
また、歩行者は、自車両が走行している道路の左右いずれかの路肩や歩道を歩いているため、自車両の両側の前照灯から線状パターンを照射すると、両側の前照灯のいずれか一方から照射した光は、自車両の前を横切る。そのため、雨が降っている場合には、自車両の前に落ちてくる雨滴によって、自車両の前を横切る照射光の一部が反射され、自車両の前に光幕が生じ、運転者の前方視界を見えづらくするという問題がある。
【0007】
さらに、自車両の両側の前照灯から歩行者に向かってそれぞれ光を照射すると、両側の前照灯から照射された光が、歩行者の近くで交差する。運転者は、光路の交点を探してしまうため、歩行者の位置が瞬時に把握しにくいことがある。
【0008】
本発明の目的は、車両の運転者が歩行者を認識しやすく、雨天であっても、歩行者は眩しさを感じにくい車両用ランプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、光を所定の範囲に投影するランプユニットと、ランプユニットの光の投影範囲を所定の単位でオンオフまたは減光させるドライバと、ドライバを制御する制御部とを有する車両用ランプシステムが提供される。制御部は、ランプユニットの光の投影範囲のうち、歩行者の頭部に光を直接投影する第1の投影範囲を消灯または減光させるとともに、投影した光が路面で正反射して、歩行者の頭部を除いた体に到達する第2の投影範囲に予め定めた強調光をランプユニットから投影させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強調光が路面で正反射して、歩行者の頭部を除いた体に到達するため、車両の運転者が歩行者を認識しやすく、歩行者は眩しさを感じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1のランプシステム100および車両200のブロック図。
【
図2】(a)実施形態1のランプシステム100の左側ヘッドランプ10のマトリクス状に配列されたLED13の投影範囲(セグメント)を示す図、(b)右側ヘッドランプ20のマトリクス状に配列されたLED23の投影範囲(セグメント)を示す図、(c)左右のヘッドランプ10,20の合成された投影範囲(セグメント)を示す図。
【
図3】実施形態1の車両200の側面方向から見た、歩行者50に近い側のヘッドランプ20の投影範囲31~35と、歩行者50との関係を示す図。
【
図4】実施形態1のランプシステム100の動作を示すフローチャート。
【
図5】実施形態1の路面の正反射光が歩行者50の首に当たる位置(クリティカルポイント)Tの求め方を説明する図。
【
図6】(a)実施形態2のランプシステム100の左側ヘッドランプ10のマトリクス状に配列されたLED13の投影範囲(セグメント)を示す図、(b)右側ヘッドランプ20のマトリクス状に配列されたLED23の投影範囲(セグメント)を示す図、(c)左右のヘッドランプ10,20の合成された投影範囲(セグメント)を示す図。
【
図7】実施形態2の車両200の側面方向から見た、歩行者50に近い側のヘッドランプ20の投影範囲31~35と、歩行者50との関係を示す図。
【
図8】(a)実施形態3のランプシステム100の左側ヘッドランプ10のマトリクス状に配列されたLED13の投影範囲(セグメント)を示す図、(b)右側ヘッドランプ20のマトリクス状に配列されたLED23の投影範囲(セグメント)を示す図、(c)左右のヘッドランプ10,20の合成された投影範囲(セグメント)を示す図。
【
図9】実施形態3の車両200の側面方向から見た、歩行者50に近い側のヘッドランプ20の投影範囲31~35と、歩行者50との関係を示す図。
【
図10】(a)実施形態4のランプシステム100の左側ヘッドランプ10のマトリクス状に配列されたLED13の投影範囲(セグメント)を示す図、(b)右側ヘッドランプ20のマトリクス状に配列されたLED23の投影範囲(セグメント)を示す図、(c)左右のヘッドランプ10,20の合成された投影範囲(セグメント)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を用いて以下に説明する。
【0013】
<<<実施形態1>>>
実施形態1の車両用のランプシステム100について説明する。
図1は、ランプシステム100の全体構成を示す。
図2(a)、(b)は、左右のヘッドランプ10、20のマトリクス状に配置されたLED13、23の投影範囲を示す図であり、
図2(c)は、左右のヘッドランプ10,20の投影範囲が重なり合った状態を示す。
図3は、左右のヘッドランプ10、20の投影範囲を、車両200の側面から見た図である。
【0014】
ランプシステム100は、車両のヘッドランプシステムである。ランプシステム100は、
図1にその構成を示したように、左側ヘッドランプ10および右側ヘッドランプ20と、それらを制御するランプECU(電子コントロールユニット: electronic control unit)30とを備えている。
【0015】
左側ヘッドランプ10は、ヘッドランプユニット11と、LEDドライバ12とを備えている。ヘッドランプユニット11は、縦横にマトリクス状に配列され複数のLED(発光素子)13を備えている。複数のLED13からの光は、
図2(a)に示したように、不図示の光学レンズによりそれぞれ車両の前方の所定の範囲に投影される。LEDドライバ12は、マトリクス状に配列されたLED(発光素子)13を予め定めた個数の単位で個別に制御し、ヘッドランプユニット11の光の投影範囲を所定サイズのセグメント単位でオンオフまたは減光・増光させることができる。LEDドライバ12は、光の投影範囲を所定のセグメント単位で制御できれば、LED13を個別に制御してもよいし、複数のLED13で構成されるグループ単位で制御してもよい。本実施形態では、一例としてLEDドライバ12は、LED13を1個ずつ制御し、個々のLED13の光が投影される略矩形のセグメントをそれぞれオンオフまたは減光・増光することができる構成とする。
【0016】
同様に、右側ヘッドランプ20は、ヘッドランプユニット21と、LEDドライバ22を含む。ヘッドランプユニット21内には、複数のLED23が縦横にマトリクス状に配列されている。LEDドライバ22は、一例として複数のLED23を個別に制御し、
図2(b)に示したように、個々のLED23の光が投影される略矩形のセグメントをそれぞれオンオフまたは減光・増光することができる。
【0017】
ランプECU30は、LEDドライバ12,22を制御する。これにより、ランプECU30は、左右のヘッドランプ10、20のうち、歩行者50に近い側のヘッドランプ(
図2では右側ヘッドランプ20)のヘッドランプユニット21の光の投影範囲を以下のように制御する。すなわち、
図2(b)および
図3に示したように、歩行者50の頭部50aに光を直接投影する第1の投影範囲31、および、投影した光が路面130で正反射して歩行者50の頭部50aに到達する第3の投影範囲32のセグメントを消灯または減光させる。さらに、ランプECU30は、投影した光が路面130で正反射して、歩行者50の頭部50aを除いた体50bに到達する第2の投影範囲33に予め定めた強調光を投影させる。
【0018】
これにより、歩行者50の頭部50aに当たる光を低減することができるため、歩行者に与えるグレア(眩しさ)を軽減することができる。同時に、歩行者50の体50bには、路面130で反射した強調光が投影されるため、運転者にとって歩行者50の体50bの明るさが増し視認しやすくなる。
【0019】
ランプECU30は、左右のヘッドランプ10、20のうち、歩行者50から遠い側のヘッドランプ(
図2では左側ヘッドランプ10)のヘッドランプユニット11の光の投影範囲のうち、歩行者50に光を直接投影する第4の投影範囲34を消灯または減光させる。
【0020】
これにより、左右のヘッドランプ10,20の光が交錯することがなくなり、運転者が歩行者50の位置を把握しやすくなるとともに、歩行者50から遠い側のヘッドランプの光が車両の前を横切らないため、雨天で雨量が多い場合に雨粒で光が反射されて運転者の視界に光幕が形成される現象を防止できる。よって、雨天であっても運転者の前方の視界を見やすくできる。
【0021】
ランプECU30は、車両200の車載カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダー、雨滴認識装置、ワイパースイッチ等を含むセンサ40に接続されており、センサ40の出力を受け取る。ランプECU30は、受け取ったセンサ40の出力に基づいて、LEDドライバ12,22を制御する。すなわち、センサ40で検出された歩行者50の位置情報やサイズをもとに、第1の投影範囲31から第4の投影範囲34を求め、LED13,23を消灯または減光または増光させる。これにより、車両のランプシステム100によるアダプティブドライビングビーム(ADB)への付加機能を実現する。
【0022】
なお、ヘッドランプユニット11,21は、光の投影範囲を所定サイズのセグメント単位でオンオフまたは減光・増光させることができるものであればどのようなものでもよく、マトリクス状に配列したLED13,23を制御する構成に限定されるものではない。横方向にのみ配置されたLEDを点消灯し、レンズで縦方向に拡大して投影するLEDセグメント方式ADBシステム、LEDを光源として液晶素子によりエリアごとに光の通過をON/OFFして配光を形成するLCD(Liquid Crystal Display)ヘッドランプシステムや、レーザー光源の光をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーによりスキャニングしながら光学レンズにより投影し配光形成するシステム、多数の微小鏡面(マイクロミラー)を可動させるDMD(Digital Micromirror Device)を使ってLEDを光源の光を投影し配光形成するシステム、などを用いることが可能である。
【0023】
<<実施形態1>>
以下、実施形態1の車両用ランプシステムの動作について説明する。
【0024】
実施形態1では、歩行者50の頭部50aだけでなく、体50bについても光を直接投影せず、路面130で反射された強調光が体50bに当たるように制御する。
【0025】
ランプECU30の制御動作を、
図4のフローを用いて説明する。
【0026】
なお、ランプECU30は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、プロセッサーが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、ランプECU30の機能を実現する。なお、ランプECU30の一部または全部をハードウエアにより構成することもできる。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、ランプECU30の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0027】
(ステップ101)
まず、ランプECU30は、車両200のセンサ40のうち車載カメラから画像を取り込む。
【0028】
(ステップ102)
ランプECU30は、ステップ101で取り込んだ画像の輝度が所定値以下である場合、夜間であると判断する。なお、ランプECU30は、時刻から夜間であるかどうかを判断してもよい。
【0029】
(ステップ103)
ランプECU30は、ステップ102で夜間であると判断した場合、LEDドライバ12、22にヘッドランプユニット11、21を点灯させるように指示する。
【0030】
(ステップ104)
LEDドライバ12、22は、ヘッドランプユニット11,21のすべてのLED13、23に電力を供給し、LED13、23を点灯させる。
【0031】
(ステップ105)
ランプECU30は、車載カメラから画像を取り込んで処理し、画像に歩行者50が含まれているかどうかを判定する。
【0032】
(ステップ106)
対向車2が存在する場合、ランプECU30は、車載カメラから画像を取り込んだ画像から自車両200に対する歩行者50の位置を検出する。具体的には、自車両200に対する歩行者50の距離dpと方向、頭部50aの位置(頭部50aの最上部と首の位置)と、歩行者50の足元の位置(体50bの最下端)と、体50bの幅を検出する。例えば、頭部50aの最上部と足元の位置は、画像処理により歩行者50の最上部の画素と最下部の画素を画像処理により抽出することにより検出できる。体の幅は、左右方向の歩行者の画素を画像処理により抽出することにより検出できる。首の位置は、頭部50aの最上部の位置と路面130の位置から身長を算出し、予め定めておいた係数を身長に掛けることにより算出することができる。また、歩行者の輪郭を画像処理により抽出し、輪郭形状から首の位置を検出してよい。
【0033】
(ステップ107)
ランプECU30は、ステップ106で検出した歩行者50の頭部50a(頭部50aの最上部と首の位置)に光を直接投影する第1の投影範囲31と、体50bに光を直接投影する第5の投影範囲35とを足し合わせた第4の投影範囲34を特定する。さらに、ランプECU30は、第4の投影範囲34に体の幅で光を投影するセグメントを、左右のヘッドランプユニット11、21においてそれぞれ特定し、これらセグメントに対応するLED13,23を消灯または減光するように、LEDドライバ12,22に指示する。
【0034】
これにより、
図2(a),(b)のように、ランプシステムの光が歩行者50の頭部50aおよび体50bに直接照射されないようにし、歩行者50にグレア(眩しさ)を与えないようにする。
【0035】
(ステップ108)
つぎに、ランプECU30は、センサ40のうちワイパースイッチのオンかオフかの出力、および/または、フロントガラスに雨滴があるかどうかを認識する雨滴認識装置の出力を受け取る。ランプECU30は、ワイパースイッチがオン、または、雨滴認識装置からフロントガラスに雨滴がある場合、路面がぬれていると判定する。路面が濡れていない場合、ステップ105に戻る。
【0036】
(ステップ109)
ランプECU30は、ステップ108で路面が濡れていると判定した場合、ランプECU30は、路面から歩行者の首までの高さh
pと、自車両200と歩行者50との距離d
pと、予め求めておいたヘッドランプ10,20の路面からの高さh
HLから、
図5のように、歩行者50に近い側のヘッドランプ20から投影した光が路面130で正反射されて歩行者50の首に到達される路面上の位置(クリティカルポイント)Tの自車両からの距離d
Tを算出する。
【0037】
ランプECU30は、算出した位置Tから歩行者50の足元までの範囲を、投影した光が路面で正反射して、歩行者50の頭部50aを除いた体50bに到達する第2の投影範囲33として設定する。また、算出した位置Tから自車両200までの範囲を、投影した光が路面で正反射して歩行者の頭部に到達する第3の投影範囲32として設定する。
【0038】
具体的な、位置Tの距離dTの算出方法としては、まず、ランプECU30は、ヘッドランプ20から出射された光が路面で正反射されて首の位置に光が到達する角度θCPを下式(1)により算出し、さらに、角度θCPから式(2)により位置Tの距離dTを算出する。
θCP=tan-1((hHL+hp)/dP) ・・・(1)
dT=hHL/tanθCP ・・・(2)
【0039】
(ステップ110)
ランプECU30は、歩行者50に近い側のヘッドランプ20に対して、第2の投影範囲33に対応するセグメントから予め定めた強調光を投影するよう指示する。例えば、通常の投影光よりも強度の強い光や、通常の投影光とは異なる波長の光を強調光として、LED23から照射させる。これにより、第2の投影範囲33に投影された光が、路面130で正反射して、歩行者50の頭部50aを除いた体50bに到達する。
【0040】
同時に、ランプECU30は、歩行者50に近い側のヘッドランプ20の、第3の投影範囲32に対応するセグメントを消灯または減光させる。これにより、ヘッドランプ20から投影した光が、路面130で正反射して歩行者50の頭部50aに到達してグレア(眩しさ)を与えるのを防ぐことができる。
【0041】
さらに、同時に、ランプECU30は、歩行者50から遠い側のヘッドランプ10の、歩行者50の足元からヘッドランプ10までの第6の投影範囲36のセグメントを消灯または減光させる。これにより、ヘッドランプ10から投影した光が、自車両200の前を横切って、雨滴に反射されて光幕を形成するのをさらに抑制することができる。
【0042】
(ステップ111)
ランプECU30は、再び車載カメラから画像を取り込んで処理し、歩行者50がいるかどうかを判定し、歩行者がいる場合、ステップ108に戻って、ステップ108~110を繰り返す。歩行者50がいない(通り過ぎた)場合、ステップ112に進む。
【0043】
(ステップ112)
ランプECU30は、まだ夜間であるかどうかステップ102と同様に判定し、まだ夜間である場合は、ステップ105に戻って、ステップ105~111を繰り返す。夜間ではなくなった(夜が明けた)場合、ステップ113に進む。
【0044】
(ステップ113)
ランプECU30は、ヘッドライトを消灯するようにLEDドライバ12,22に指示する。LEDドライバ12,13は、ヘッドランプユニット11,12の全体を消灯する。
【0045】
上述してきたように、実施形態1によれば、
図2(b)に示したように、歩行者50の頭部50aに光を直接投影する第1の投影範囲31、および、投影した光が路面130で正反射して歩行者50の頭部50aに到達する第3の投影範囲32のセグメントを消灯または減光させることができる。さらに、ランプECU30は、投影した光が路面130で正反射して、歩行者50の頭部50aを除いた体50bに到達する第2の投影範囲33のセグメントからに予め定めた強調光を投影させることができる。
【0046】
また、ランプECU30は、
図2(a)のように、左右のヘッドランプ10、20のうち、歩行者50から遠い側のヘッドランプ10の光の投影範囲のうち、歩行者50に光を直接投影する第4の投影範囲34、および、歩行者50の足元からヘッドランプ10までの第6の投影範囲36に対応するセグメントを消灯または減光させる。
【0047】
これにより、
図2(c)に示したように、歩行者50の頭部50aに当たる光を低減することができるため、歩行者に与えるグレア(眩しさ)を軽減することができる。同時に、歩行者50の体50bには、路面130で反射した強調光が投影されるため、運転者にとって歩行者50の体50bの明るさが増し視認しやすくなる。
【0048】
さらに、左右のヘッドランプ10,20の光が交錯することがなくなり、運転者が歩行者50の位置を把握しやすくなるとともに、歩行者50から遠い側のヘッドランプ10の光が車両の前を横切らないため、雨天で雨量が多い場合に雨粒で光が反射されて運転者の視界に光幕が形成される現象を防止できる。よって、雨天であっても運転者の前方の視界を見やすくできる。
【0049】
また、実施形態1では、歩行者50の頭部50aだけでなく、体50bについても光を直接投影せず、路面130で反射された強調光が体50bに当たるように制御したことにより、歩行者50のグレア防止の効果が高い。
【0050】
<<<実施形態2>>>
実施形態2のランプシステム100について説明する。
【0051】
実施形態2のランプシステム100は、
図6(b)~(c)および
図7に示したように、歩行者50に近い側のヘッドランプ20は、第2の投影範囲33に加えて、歩行者50の首から下の体50bの部分に光を直接投影する第5の投影範囲35に対応するセグメントからも強調光を照射する。
【0052】
また、歩行者50から遠い側のヘッドランプ10は、
図6(a)に示したように、歩行者50の首から下の体50bの部分に光を直接投影する第5の投影範囲35に対応するセグメントを、消灯または減光せず、通常の強度で光を投影させる。
【0053】
これにより、歩行者50の首から下の体50bの部分を強調して明るくすることができるため、歩行者50の位置をより視認しやすくする。
【0054】
このような動作は、実施形態1の
図4ステップ110において、歩行者50に近い側のヘッドランプ20の第2の投影範囲33に加えて第5の投影範囲35のセグメントからも強調光を照射するとともに、遠い側のヘッドランプ10の第5の投影範囲35に対応するセグメントを点灯させることにより、実現できる。
【0055】
他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0056】
<<<実施形態3>>>
実施形態3のランプシステム100について説明する。
【0057】
実施形態3のランプシステム100は、
図8(a)~(c)および
図9に示したように、左右両方のヘッドランプ10、20は、位置Tより自車両200側の第3の投影範囲32に対応するセグメントを通常点灯させる。
【0058】
これにより、運転者は、自車両200の手前の領域の視認性が確保できるというメリットがある。
また、第3の投影範囲32に投影された光は、濡れた路面130で反射し、歩行者50の頭部50aや頭上に向かうが、第3の投影範囲32は、車両200に最も近い範囲であり、歩行者50までの距離が最も遠い。また、濡れた路面130における反射光は、拡散しやすく、しかも強調照射ではなく通常点灯である。このため、歩行者50に与えるグレアは強くない。
【0059】
実施形態3の動作は、実施形態1の
図4ステップ110において、ヘッドランプ10および20の第3の投影範囲32を消灯または減光させず、通常点灯のままにすることにより、実現できる。
【0060】
他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0061】
なお、実施形態3の第3の投影範囲32を消灯または減光させない構成を、実施形態2のランプシステムに適用することももちろん可能である。
【0062】
<<<実施形態4>>>
実施形態4のランプシステムについて
図10を用いて説明する。
【0063】
実施形態4において、消灯または減光する投影範囲および強調光を照射する投影範囲は、実施形態1と同様である。
【0064】
ただし、
図10(a)に示した左側ヘッドランプ10の配光パターンと、
図10(b)に示した右側ヘッドランプ20の配光パターンは、中央寄りの領域のみが重なり合うように投影され、
図10(c)のように左右方向に広範囲にヘッドライトを照射する構成である。
【0065】
このため、
図10(a)のように左側ヘッドランプ10では消灯または減光する投影範囲に対応するセグメントは右寄りになり、
図10(b)の右側ヘッドランプ20では消灯または減光するセグメントおよび強調光を照射するセグメントは左寄りになる。
【0066】
このように、左右のヘッドライトの配光パターンを一部のみが重なり合わせて、全体の配光パターンを生成する場合でも、消灯位置を対向車の位置に従って左右のヘッドライトでそれぞれ調整することにより、実施形態1と同様な効果を節制することができる。
【0067】
これまでの実施形態では、ヘッドランプユニット11は、縦横にマトリクス状に配列され複数のLED(発光素子)13を使い、不図示の光学レンズによりそれぞれ車両の前方の所定の範囲に投影し、LEDドライバ12は、マトリクス状に配列されたLED(発光素子)13を予め定めた個数の単位で個別に制御し、ヘッドランプユニット11の光の投影範囲を所定サイズのセグメント単位でオンオフまたは減光・増光させた。しかし、セグメントのない区分けで投影範囲を制御できるMEMSミラーのようなミラーを2次元的に回転させることにより、所望の投影範囲をシームレス(セグメント区画のない)に点消灯または減光・増光できる光学系もある(例えば、特開2016-081831)。光学系は、光源(青色レーザーまたは青色LED)、MEMSミラー、波長変換層および投影レンズを備えており、光源の光を集光させながらMEMSミラーに出射し、上下方向と左右方向へ走査できるようにMEMSミラーが2次元的駆動しながら波長変換層へ反射し、矩形状の黄色発光の波長変換層全体を蛇行しながら走査し、レーザが当たった箇所は黄色の光が発光し、レーザの青色の光と黄色の光が混ざって白色の光が投影レンズ向かい、集光または拡散しながら車両前方に照射される。光学系が違うだけで実施形態1~4に記載の制御を行えばよいが、ステップ110の歩行者への照射方法が、実施形態1~4とは異なり、点灯したい投影範囲は光源をオンする。消灯または減光したい投影範囲は、その投影範囲に相当する波長変換層の部分を走査中の青色のレーザー光をオフまたは減光することにより、実現することができる。MEMSミラーを使った光学系の場合、セグメントという単位はなくなる。言い換えると、投影範囲は、光学系が違えば、当該投影範囲内がセグメント単位に区分されて場合もあれば、当該投影範囲内がセグメント区分のない1つのシームレスな単位の場合も含んでいる。
【0068】
<<<製品への適用>>>
本実施形態のランプシステムは、自動車用ヘッドランプに用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 左側ヘッドランプ
11 ヘッドランプユニット
12 LEDドライバ
13 LED
20 右側ヘッドランプ
21 ヘッドランプユニット
22 LEDドライバ
23 LED
30 ランプECU
31 第1の投影範囲
32 第3の投影範囲
33 第2の投影範囲
34 第4の投影範囲
35 第5の投影範囲
36 第6の投影範囲
40 センサ
50 歩行者
50a 頭部
50b 体
100 ランプシステム
130 路面
200 車両