IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友理工株式会社の特許一覧

特開2023-172725筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド
<>
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図1
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図2
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図3
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図4
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図5
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図6
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図7
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図8
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図9
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図10
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図11
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図12
  • 特開-筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172725
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】筒形防振装置とそれを用いたトルクロッド
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20231129BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F16F15/08 W
F16F15/08 A
B60K5/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084732
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】安田 恭宣
(72)【発明者】
【氏名】永田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】中原 悠太
【テーマコード(参考)】
3D235
3J048
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB18
3D235EE24
3D235EE26
3D235FF22
3D235FF34
3D235HH42
3D235HH44
3J048AA01
3J048BA19
3J048DA08
3J048EA01
(57)【要約】
【課題】本体ゴム弾性体のゴムボリュームを入力荷重に応じて設定して小型化や軽量化を図ることができる、新規な構造の筒形防振装置を提供する。
【解決手段】筒状の本体ゴム弾性体42がアウタ部材12の筒状部22の内周に配された構造を有する筒形防振装置60であって、本体ゴム弾性体42は、軸方向寸法が大きいゴム長尺部48と、軸方向寸法が小さいゴム短尺部50とを、周方向で相互にずれた位置に備えており、アウタ部材12の筒状部22は、周方向におけるゴム長尺部48と対応する部位が軸方向寸法が大きいアウタ長尺部24とされており、周方向におけるゴム短尺部50と対応する部位が軸方向寸法が小さいアウタ短尺部26とされている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体ゴム弾性体がアウタ部材の筒状部の内周に配された構造を有する筒形防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体は、軸方向寸法が大きいゴム長尺部と、軸方向寸法が小さいゴム短尺部とを、周方向で相互にずれた位置に備えており、
前記アウタ部材の前記筒状部は、周方向における該ゴム長尺部と対応する部位が軸方向寸法が大きいアウタ長尺部とされており、周方向における該ゴム短尺部と対応する部位が軸方向寸法が小さいアウタ短尺部とされている筒形防振装置。
【請求項2】
前記本体ゴム弾性体の軸方向寸法が前記ゴム長尺部から前記ゴム短尺部へ向けて周方向で連続的に変化している請求項1に記載の筒形防振装置。
【請求項3】
前記本体ゴム弾性体の径方向両側に前記ゴム長尺部と前記ゴム短尺部との各一方が設けられている請求項1又は2に記載の筒形防振装置。
【請求項4】
前記筒状部の軸方向寸法が前記アウタ長尺部から前記アウタ短尺部へ向けて周方向で連続的に変化している請求項1又は2に記載の筒形防振装置。
【請求項5】
前記本体ゴム弾性体がインナ軸部材の外周面に固着されており、
該インナ軸部材と前記アウタ部材の前記筒状部とを周方向で位置決めする位置決め部が設けられている請求項1又は2に記載の筒形防振装置。
【請求項6】
インナ軸部材とアウタ部材の筒状部との間に介装される本体ゴム弾性体を備えた筒形防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体は、径方向一方から他方に向けて軸方向寸法が次第に小さくされている筒形防振装置。
【請求項7】
前記本体ゴム弾性体の軸方向外側には、前記筒状部の軸方向端面に重ね合わされるフランジ状の抜止部が該本体ゴム弾性体と一体的に設けられている請求項1又は6に記載の筒形防振装置。
【請求項8】
請求項1に記載の筒形防振装置を備えるトルクロッドであって、
前記アウタ部材がロッド本体とされて、該ロッド本体のロッド長さ方向の端部に設けられた前記筒状部に前記本体ゴム弾性体が取り付けられており、
該本体ゴム弾性体の前記ゴム長尺部と該筒状部の前記アウタ長尺部とが、該ロッド本体のロッド長さ方向の外側に位置していると共に、該本体ゴム弾性体の前記ゴム短尺部と該筒状部の前記アウタ短尺部とが、該ロッド本体のロッド長さ方向の内側に位置しているトルクロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の本体ゴム弾性体を備える筒形防振装置と、筒形防振装置が設けられたトルクロッドとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車両に取り付けられるトルクロッドの端部には、筒形防振装置が設けられている。筒形防振装置は、特開2001-200892号公報(特許文献1)に開示されているように、トルクロッドのロッド本体等で構成されるアウタ部材の筒状部の内周に配される筒状の本体ゴム弾性体を備えている。そして、本体ゴム弾性体の内周に挿入状態で配されるインナ軸部材と本体ゴム弾性体の外周面に取り付けられるアウタ部材との間への振動荷重が、本体ゴム弾性体の内部摩擦等によって低減されることで、防振効果を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-200892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているような一般的な筒形防振装置において、本体ゴム弾性体の軸方向長さは周方向で略一定とされている。
【0005】
しかしながら、例えばトルクロッドに用いられる筒形防振装置では、ロッド本体の長さ方向の内側と外側では入力荷重の大きさに差があることから、入力荷重が小さい内側では本体ゴム弾性体のゴムボリュームが必要以上に大きく、筒形防振装置の大型化の一因となっている場合もあった。このことは、トルクロッド用の筒形防振装置だけでなく、入力荷重の大きさが周方向で異なる筒形防振装置全般について同様であった。
【0006】
本発明の解決課題は、本体ゴム弾性体のゴムボリュームを入力荷重に応じて設定して小型化や軽量化を図ることができる、新規な構造の筒形防振装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明は、上記のような筒形防振装置を備えるトルクロッドを提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第一の態様は、筒状の本体ゴム弾性体がアウタ部材の筒状部の内周に配された構造を有する筒形防振装置であって、前記本体ゴム弾性体は、軸方向寸法の大きいゴム長尺部と、軸方向寸法の小さいゴム短尺部とを、周方向で相互にずれた位置に備えており、前記アウタ部材の前記筒状部は、周方向における該ゴム長尺部と対応する部位が軸方向寸法の大きいアウタ長尺部とされており、周方向における該ゴム短尺部と対応する部位が軸方向寸法の小さいアウタ短尺部とされているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、本体ゴム弾性体への入力荷重が大きい周方向部位にゴム長尺部を配すると共に、本体ゴム弾性体への入力荷重が小さい周方向部位にゴム短尺部を配することにより、入力荷重に対する本体ゴム弾性体の耐荷重性能を確保しながら、本体ゴム弾性体の小型化及び軽量化を実現することができる。
【0011】
アウタ部材の筒状部には、本体ゴム弾性体のゴム長尺部に対応するアウタ長尺部と、本体ゴム弾性体のゴム短尺部に対応するアウタ短尺部とが設けられている。これにより、アウタ部材を含む筒形防振装置の小型化及び軽量化が実現される。
【0012】
第二の態様は、第一の態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体の軸方向寸法が前記ゴム長尺部から前記ゴム短尺部へ向けて周方向で連続的に変化しているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、本体ゴム弾性体の軸方向寸法が段階的に変化する場合に比して、本体ゴム弾性体の軸方向端面における段差の形成が回避されることから、振動荷重の入力時に本体ゴム弾性体の軸方向端面における応力集中を防いで、本体ゴム弾性体の耐久性の向上を図ることができる。
【0014】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体の径方向両側に前記ゴム長尺部と前記ゴム短尺部との各一方が設けられているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、径方向両側で入力荷重の大きさが異なる場合に、本体ゴム弾性体の耐荷重性能を径方向両側において確保しながら、入力荷重の小さい径方向一方の側にゴム短尺部を設けることで小型化と軽量化を図ることができる。
【0016】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記筒状部の軸方向寸法が前記アウタ長尺部から前記アウタ短尺部へ向けて周方向で連続的に変化しているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、筒状部の軸方向端面に段差が形成されるのを防ぎつつ、軸方向寸法が相互に異なるアウタ長尺部とアウタ短尺部を設けることができる。また、本体ゴム弾性体の軸方向寸法がゴム長尺部からゴム短尺部へ向けて周方向で連続的に変化する第二の態様と組み合わせて本態様を採用すれば、本体ゴム弾性体の軸方向寸法の変化と筒状部の軸方向寸法の変化とを対応させて、筒形防振装置の小型化及び軽量化を効率的に実現することができる。
【0018】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体がインナ軸部材の外周面に固着されており、該インナ軸部材と前記アウタ部材の前記筒状部とを周方向で位置決めする位置決め部が設けられているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、ゴム長尺部とゴム短尺部を有することで本体ゴム弾性体を周方向において特定の向きで設ける必要がある場合に、本体ゴム弾性体が固着されたインナ軸部材を位置決め部によって筒状部に対して位置決めすることで、本体ゴム弾性体を周方向において特定の向きで設けることができる。
【0020】
第六の態様は、インナ軸部材とアウタ部材の筒状部との間に介装される本体ゴム弾性体を備えた筒形防振装置であって、前記本体ゴム弾性体は、径方向一方から他方に向けて軸方向寸法が次第に小さくされているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、例えば、本体ゴム弾性体への入力荷重が大きい径方向一方において本体ゴム弾性体の軸方向寸法を大きく設定すると共に、本体ゴム弾性体への入力荷重が小さい径方向他方において本体ゴム弾性体の軸方向寸法を小さく設定することにより、入力荷重に対する本体ゴム弾性体の耐荷重性能を確保しながら、本体ゴム弾性体の小型化及び軽量化を実現することができる。
【0022】
本体ゴム弾性体の軸方向寸法を径方向一方から他方に向けて次第に変化させることにより、本体ゴム弾性体の軸方向端面において荷重入力時の応力集中を防ぐことができて、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。
【0023】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体の軸方向端部には、前記筒状部の軸方向端面に重ね合わされるフランジ状の抜止部が設けられているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、本体ゴム弾性体の筒状部からの抜けが、抜止部と筒状部との係止によって防止される。
【0025】
第八の態様は、第一の態様に記載された筒形防振装置を備えるトルクロッドであって、前記アウタ部材がロッド本体とされて、該ロッド本体のロッド長さ方向の端部に設けられた前記筒状部に前記本体ゴム弾性体が取り付けられており、該本体ゴム弾性体の前記ゴム長尺部と該筒状部の前記アウタ長尺部とが、該ロッド本体のロッド長さ方向の外側に位置していると共に、該本体ゴム弾性体の前記ゴム短尺部と該筒状部の前記アウタ短尺部とが、該ロッド本体のロッド長さ方向の内側に位置しているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされたトルクロッドによれば、入力荷重が大きくなるロッド本体のロッド長さ方向の外側にゴム長尺部及びアウタ長尺部を配置することにより、振動入力に対する耐荷重性能を確保することができる。また、トルクロッドにおいて入力荷重が小さくなるロッド本体のロッド長さ方向の内側には、ゴム短尺部及びアウタ短尺部を配置することにより、ロッド本体を筒状部において小型化することができて、それによる軽量化も実現される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、筒形防振装置及びそれを用いたトルクロッドにおいて、本体ゴム弾性体のゴムボリュームを入力荷重に応じて設定して小型化や軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一の実施形態としてのトルクロッドの斜視図
図2図1に示すトルクロッドの底面図
図3図1に示すトルクロッドの正面図
図4図1に示すトルクロッドの右側面図
図5図1に示すトルクロッドの右端部の断面図であって、図3のV-V断面に相当する図
図6図1に示すトルクロッドを構成する第二ブッシュの斜視図
図7図6に示す第二ブッシュの平面図
図8図6に示す第二ブッシュの底面図
図9図6に示す第二ブッシュの右側面図
図10図6に示す第二ブッシュの左側面図
図11図6に示す第二ブッシュの正面図
図12図7のXII-XII断面図
図13図12のXIII-XIII断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1図5には、本発明の第一の実施形態としてのトルクロッド10が示されている。トルクロッド10は、アウタ部材としてのロッド本体12の両端部に、第一ブッシュ14と第二ブッシュ16とが取り付けられた構造を有している。以下の説明において、前後方向とは図2中の上下方向を、左右方向とは図2中の左右方向を、上下方向とは図3中の上下方向を、それぞれ言う。
【0031】
ロッド本体12は、鉄やアルミニウム合金といった金属、繊維補強された合成樹脂などで形成された高剛性の部材とされている。ロッド本体12は、左右方向に延びるロッド部18と、ロッド部18の一方の端部(左端部)に設けられた第一筒状部20と、ロッド部18の他方の端部(右端部)に設けられた筒状部としての第二筒状部22とを、一体的に備えている。
【0032】
本実施形態のロッド部18は、矩形柱状乃至は矩形板状とされており、上下寸法が左右寸法よりも大きくされている。尤も、ロッド部18の具体的な形状は特に限定されず、例えば左右方向に延びる円柱状や多角柱状等であってもよい。
【0033】
第一筒状部20は、上下方向に延びる略円筒形状とされており、上下寸法がロッド部18の上下寸法と略同じとされていると共に、前後寸法がロッド部18の前後寸法よりも大きくされている。ロッド部18と第一筒状部20は、前後両面が滑らかに連続しており、ロッド本体12の長さ方向一方の外側(図2中の左側)へ向けて前後方向の厚さ寸法が大きくなっている。
【0034】
第二筒状部22は、前後方向に延びる略円筒形状とされており、上下寸法がロッド部18の上下寸法よりも僅かに大きくされている。ロッド部18と第二筒状部22は、上下両面が滑らかに連続しており、ロッド本体12の長さ方向他方の外側(図3中の右側)へ向けて上下方向の厚さ寸法が大きくなっている。第二筒状部22は、第一筒状部20に比して小径とされている。
【0035】
第二筒状部22は、図2に示すように、軸方向寸法である前後寸法が、ロッド部18の長さ方向と略一致する径方向の一方から他方へ向けて連続的に変化して次第に小さくなっている。これにより、第二筒状部22は、径方向一方側が軸方向寸法の大きいアウタ長尺部24とされていると共に、径方向他方側が軸方向寸法の小さいアウタ短尺部26とされている。本実施形態では、第二筒状部22の径方向の一方がロッド部18側(ロッド本体12の内側)とされていると共に、第二筒状部22の径方向の他方がロッド部18と反対側(ロッド本体12の外側)とされている。また、第二筒状部22は、軸方向両端面が径方向一方から他方へ向けて相互に接近するように傾斜するアウタ傾斜面28,28とされており、前後方向の中央を通る軸直平面に関する対称形状とされている。
【0036】
ロッド本体12の第一筒状部20には、第一ブッシュ14が取り付けられている。第一ブッシュ14は、第一インナ軸部材30と中間スリーブ32とが第一本体ゴム弾性体34によって弾性連結された構造を有している。
【0037】
第一インナ軸部材30は、金属や合成樹脂で形成された硬質の部材であって、上下方向に貫通するボルト孔を備えた略円筒形状とされている。中間スリーブ32は、円筒形状とされて、内径寸法が第一インナ軸部材30の外径寸法よりも大きくされており、第一インナ軸部材30の周囲を離隔状態で囲んで配されている。第一本体ゴム弾性体34は、全体として略円筒形状とされて、内周面が第一インナ軸部材30の外周面に加硫接着されていると共に、外周面が中間スリーブ32の内周面に加硫接着されている。また、第一本体ゴム弾性体34には、外側すぐり部36と内側すぐり部38がそれぞれ第一ブッシュ14の軸方向(図2中の紙面直交方向)に貫通して形成されている。外側すぐり部36は、内側すぐり部38よりも周方向の長さが短くされており、外側すぐり部36の周方向端部が第一インナ軸部材30よりも前後方向の内側に位置していると共に、内側すぐり部38の周方向端部が第一インナ軸部材30よりも前後方向の外側に位置している。このような外側すぐり部36と内側すぐり部38とが形成されていることによって、第一本体ゴム弾性体34は、前後方向両側へ延び出す一対の腕状とされており、前後方向の両外側へ行くに従って左方へ傾斜して延びている。
【0038】
そして、第一ブッシュ14は、中間スリーブ32がロッド本体12の第一筒状部20に圧入固定されることによって、ロッド本体12に取り付けられている。なお、第一ブッシュ14の第一筒状部20に対する周方向の向きを位置決めする位置決め構造を設けることにより、第一ブッシュ14を第一筒状部20に対して適切な向きで容易に組付け可能とすることもできる。
【0039】
ロッド本体12の第二筒状部22には、第二ブッシュ16が取り付けられている。第二ブッシュ16は、図6図13に示すように、インナ軸部材としての第二インナ軸部材40の外周面に本体ゴム弾性体としての第二本体ゴム弾性体42が加硫接着された構造を有している。
【0040】
第二インナ軸部材40は、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材であって、全体として円筒形状とされている。第二インナ軸部材40は、図11図13に示すように、外周面に一対の平面部44,44を備えている。平面部44,44は、互いに略平行に広がっており、上下方向で対向して設けられている。第二インナ軸部材40の外径寸法は、平面部44,44が設けられた上下方向において部分的に小さくされており、それら平面部44,44によって二面幅が構成されている。
【0041】
下側の平面部44には、下方へ突出する突起46が設けられている。突起46は、第二インナ軸部材40の周方向における下側の平面部44の端部に設けられており、略一定の断面形状で第二インナ軸部材40の軸方向全長に亘って連続的に延びている。突起46は、突出先端に向けて幅狭となる先細の山形状とされている。突起46が設けられることによって、下側の平面部44は、上側の平面部44よりも、第二インナ軸部材40の周方向の幅寸法が小さくされている。
【0042】
第二本体ゴム弾性体42は、図6図10及び図12図13に示すように、全体として円筒形状とされており、内周面が第二インナ軸部材40の外周面に固着されている。第二本体ゴム弾性体42は、図7図10に示すように、径方向の一方から他方へ向けて軸方向寸法L(図7参照)が周方向で連続的に変化して次第に小さくなっている。これにより、第二本体ゴム弾性体42は、径方向一方側が軸方向寸法の大きいゴム長尺部48とされていると共に、径方向他方側が軸方向寸法の小さいゴム短尺部50とされている。本実施形態では、第二本体ゴム弾性体42の軸方向寸法が、周方向で略一定の変化率をもって変化しているが、第二本体ゴム弾性体42の軸方向寸法の変化率は、周方向で一定でなくてもよい。本実施形態では、ゴム長尺部48の中央とゴム短尺部50の中央は、第二本体ゴム弾性体42の軸方向において互いに略同じ位置にある。
【0043】
第二本体ゴム弾性体42は、軸方向両端部に逃し溝52,52が設けられており、軸方向両端部において軸方向中央部分よりも小径とされている。逃し溝52は、外周面に開口しながら周方向に全周に亘って連続して設けられている。逃し溝52の溝底面は、軸方向両側へ向けて大径となる湾曲形状とされている。逃し溝52は、ゴム長尺部48側からゴム短尺部50側へ向けて軸方向内側へ傾斜しながら周方向に延びている。逃し溝52の溝幅寸法(軸方向寸法)は、周方向において略一定とされている。
【0044】
第二本体ゴム弾性体42の軸方向両側には、フランジ状の抜止部54がそれぞれ設けられている。抜止部54は、ロッド本体12の第二筒状部22への装着孔の内径寸法よりも大きな外径寸法とされており、抜止部54の軸方向内面は、装着孔の開口端面に対して重ね合わされるように、軸直角方向に広がる段差状面とされている。本実施形態において、抜止部54は、装着孔への組付前の第二本体ゴム弾性体42と略同じ外径寸法とされているが、第二本体ゴム弾性体42における逃し溝52が設けられた軸方向端部よりも大径の環状とされて、第二本体ゴム弾性体42の軸方向端部から外周へ突出することで段差状端面58が形成されている。段差状端面58は、周方向においてゴム長尺部48からゴム短尺部50に向けて軸方向内側へ傾斜して環状に延びている。抜止部54は、第二本体ゴム弾性体42に対して軸方向の外側に配されている。本実施形態では、第二本体ゴム弾性体42と抜止部54が軸方向で連続して一体形成されており、第二本体ゴム弾性体42において逃し溝52,52で小径化された軸方向両端部につながって抜止部54,54が設けられている。本実施形態において、逃し溝52の溝幅寸法は、全周に亘って略一定とされており、第二本体ゴム弾性体42の軸方向端面と略平行となるように傾斜して設けられている。
【0045】
第二本体ゴム弾性体42は、図5に示すように、ロッド本体12の第二筒状部22に挿し入れられて、外周面が第二筒状部22の内周面に押し当てられる。これにより、第二ブッシュ16がロッド本体12の第二筒状部22に対して非接着で取り付けられており、ロッド本体12と第二ブッシュ16とによって本実施形態の筒形防振装置60が構成されている。筒形防振装置60において、第二本体ゴム弾性体42は、第二インナ軸部材40と第二筒状部22との間に介装されている。
【0046】
本実施形態では、第二ブッシュ16の第二筒状部22への装着によって、第二本体ゴム弾性体42が第二筒状部22で径方向に圧縮されており、図5に示すように、逃し溝52,52がゴムで充填されて、逃し溝52,52の凹形状が略消失している。このように、逃し溝52,52は、第二本体ゴム弾性体42の変形を許容する空間を設ける機能を有しており、それによって第二筒状部22に取り付けられた第二本体ゴム弾性体42のばね特性が過度に硬くなることなく調節されている。また、逃し溝52,52が抜止部54,54の軸方向内側に隣接して設けられていることにより、第二本体ゴム弾性体42の変形による歪が抜止部54,54に伝達され難くなっており、後述するように抜止部54,54が第二筒状部22の軸方向端面であるアウタ傾斜面28,28に適切に重ね合わされる。
【0047】
第二ブッシュ16の第二筒状部22への組付けに際して、例えば、ロッド本体12が一方の組付治具にセットされると共に、第二ブッシュ16の第二インナ軸部材40が他方の組付治具にセットされて、それら組付治具によって第二ブッシュ16がロッド本体12に組み付けられる。このような組付治具を用いた組付工程において、第二ブッシュ16は、他方の組付治具に対して誤った向きでセットされてしまう誤セットの発生が回避される。即ち、他方の組付治具にセットされる第二インナ軸部材40は、平面部44,44による二面幅構造と突起46とが設けられていることから、所定の向き以外では他方の組付治具にセットすることができない。それ故、組付治具を用いて第二ブッシュ16をロッド本体12の第二筒状部22に組み付ける際に、第二ブッシュ16をロッド本体12に対して適切な向きに組み付けることができる。このように、本実施形態の第二ブッシュ16では、第二インナ軸部材40と第二筒状部22とを周方向で位置決めする位置決め部が、平面部44,44と突起46とによって構成されている。
【0048】
第二ブッシュ16は、第二本体ゴム弾性体42のゴム長尺部48がロッド本体12のロッド長さ方向外側(右側)に位置し、ゴム短尺部50がロッド本体12のロッド長さ方向内側(左側)に位置するように、第二筒状部22に対する周方向の向きが設定されている。従って、第二筒状部22及び第二本体ゴム弾性体42の周方向において、第二本体ゴム弾性体42のゴム長尺部48は第二筒状部22のアウタ長尺部24と位置決めされており、第二本体ゴム弾性体42のゴム短尺部50は第二筒状部22のアウタ短尺部26と位置決めされている。要するに、ゴム長尺部48の外周側にアウタ長尺部24が配されており、ゴム短尺部50の外周側にアウタ短尺部26が配されている。
【0049】
第二本体ゴム弾性体42と一体形成された抜止部54,54は、第二筒状部22の各一方の軸方向端面と略平行となるように傾斜しており、第二筒状部22の各一方の軸方向端面に重ね合わされている。そして、第二筒状部22の軸方向端面と抜止部54との係止によって、第二ブッシュ16の第二筒状部22からの抜けが防止されている。本実施形態では、第二筒状部22の軸方向両側にそれぞれ抜止部54が配されており、第二ブッシュ16の第二筒状部22からの抜けが軸方向の両側において防止されている。
【0050】
かくの如き構造とされたトルクロッド10は、第一ブッシュ14の第一インナ軸部材30と、第二ブッシュ16の第二インナ軸部材40とが、車両ボデーとパワーユニットとの各一方に固定されることにより、車両ボデーとパワーユニットを連結して、パワーユニットのトルク反力を受けるようになっている。
【0051】
トルクロッド10の車両への装着状態において、第二筒状部22に作用する荷重(パワーユニットのトルク反力)は、ロッド本体12のロッド長さ方向内側であるロッド部18側において小さく、且つロッド本体12のロッド長さ方向外側であるロッド部18と反対側において大きい。本実施形態の第二本体ゴム弾性体42は、ロッド長さ方向外側に軸方向寸法が大きいゴム長尺部48が設けられていると共に、ロッド長さ方向内側に軸方向寸法が小さいゴム短尺部50が設けられており、入力荷重に対する耐久性を確保し得るゴムボリュームを設定しながら、第二本体ゴム弾性体42の小型化及び軽量化が実現されている。
【0052】
本実施形態では、第二本体ゴム弾性体42が嵌め入れられる第二筒状部22が、ゴム長尺部48に対応するアウタ長尺部24と、ゴム短尺部50に対応するアウタ短尺部26とを備えており、第二本体ゴム弾性体42の外周面を全体的に保持しつつ、アウタ短尺部26による第二筒状部22ひいてはロッド本体12の小型化及び軽量化が図られる。
【0053】
第二本体ゴム弾性体42は、軸方向両端が傾斜しており、軸方向寸法がゴム長尺部48からゴム短尺部50へ向けて周方向で連続的に変化している。それ故、軸方向寸法が相互に異なるゴム長尺部48とゴム短尺部50が設けられていても、第二本体ゴム弾性体42の軸方向端面に段差等の応力が集中し易い形状がなく、入力時の応力集中による第二本体ゴム弾性体42の耐久性の低下が回避される。
【0054】
同様に、ロッド本体12の第二筒状部22は、軸方向両端面がアウタ傾斜面28,28とされており、軸方向寸法がアウタ長尺部24からアウタ短尺部26へ向けて周方向で連続的に変化している。これにより、第二筒状部22の軸方向端面にも段差等の応力集中が発生し易い部分はなく、入力時の応力集中による第二筒状部22の耐久性の低下が回避される。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、ゴム長尺部48とゴム短尺部50が各1つ設けられた構造を例示したが、ゴム長尺部48とゴム短尺部50の少なくとも一方が複数設けられていてもよい。例えば、軸直二方向で入力荷重が異なる場合に、入力荷重が大きい軸直方向の両側にそれぞれゴム長尺部48を設けると共に、入力荷重が小さい軸直方向の両側にそれぞれゴム短尺部50を設けることもできる。
【0056】
アウタ長尺部24とアウタ短尺部26は、少なくとも一方が複数設けられていてもよい。アウタ長尺部24とアウタ短尺部26は、ゴム長尺部48とゴム短尺部50に対応して設けられることが望ましく、例えば、ゴム長尺部48とゴム短尺部50が各2つ設けられる場合には、アウタ長尺部24とアウタ短尺部26も各2つ設けられることが望ましい。
【0057】
本体ゴム弾性体の周方向におけるゴム長尺部48とゴム短尺部50の配置は、周方向で相互にずれていれば、特に限定されない。同様に、筒状部の周方向におけるアウタ長尺部24とアウタ短尺部26の配置も、周方向で相互にずれていれば、特に限定されない。
【0058】
前記実施形態では、第二本体ゴム弾性体42の軸方向両端部に各一つの逃し溝52が形成されていたが、かかる態様に限定されるものでない。即ち、逃し溝は、第二本体ゴム弾性体42の装着時の圧縮率やゴム材質などを考慮して適宜に設定されるものであり、例えば逃し溝は必須ではないし、複数の逃し溝を設けてもよい。また、逃し溝の位置や大きさも任意に設定可能であり、逃し溝に代えて又は加えて第二本体ゴム弾性体の外径が軸方向中央から両端に向けて次第に小径となるように第二本体ゴム弾性体の外周面を傾斜させる等してもよい。
【0059】
前記実施形態では、第二本体ゴム弾性体42の軸方向両端がゴム長尺部48からゴム短尺部50に向けて軸方向内側へ傾斜していたが、例えば、第二本体ゴム弾性体42の軸方向一端だけがゴム長尺部48からゴム短尺部50に向けて軸方向内側へ傾斜しており、軸方向他端は、全周に亘って略一定の軸方向位置に位置する非傾斜とされていてもよい。同様に、アウタ部材の筒状部も、何れか一方の軸方向端面だけがアウタ傾斜面28とされていてもよい。
【0060】
例えば、ゴム長尺部48が一定の軸方向寸法で周方向に延びていると共に、ゴム短尺部50がゴム長尺部48よりも小さい一定の軸方向寸法で周方向に延びており、それらゴム長尺部48とゴム短尺部50の周方向端の接続部分において本体ゴム弾性体の軸方向寸法が段差状に変化していてもよい。アウタ部材の筒状部についても同様に、アウタ長尺部24とアウタ短尺部26との周方向端の接続部分において軸方向寸法が段差状に変化していてもよい。
【0061】
前記実施形態では、本体ゴム弾性体である第二本体ゴム弾性体42が全周に亘って連続していたが、本体ゴム弾性体は、全体として筒状であればよく、例えば、軸方向に貫通するすぐりによって周方向で部分的に分断されていてもよい。
【0062】
前記実施形態の本体ゴム弾性体は、インナ軸部材である第二インナ軸部材40に接着されていると共に、アウタ部材の筒状部である第二筒状部22に非接着で嵌め付けられていたが、例えば、インナ軸部材が筒状とされた本体ゴム弾性体の中心孔に非接着で嵌め入れられていてもよいし、筒状部が本体ゴム弾性体の外周面に接着されていてもよい。また、前記実施形態の第一ブッシュ14のように、本体ゴム弾性体の外周面に固着された該中間スリーブを筒状部に圧入固定することもできる。
【0063】
位置決め部は、平面部44,44による二面幅構造と突起46とによるものに限定されない。例えば、複数の平面部44を周方向で不均等に配することによって、本体ゴム弾性体を周方向で位置決め可能としてもよい。なお、位置決め部として、例えば矢印や凹凸の如き認識可能な目印などの周方向での相対的な位置合わせ用の表示などを採用することも可能である。例えばかかる表示などをカメラなどのセンシング手段で検出して位置合わせする機構等も採用可能である。
【0064】
前記実施形態の第一ブッシュ14の構造は、あくまでも例示であって、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、第一ブッシュは、内部に封入された流体の流動作用を利用する流体封入式とされていてもよい。また、例えば、第一ブッシュは、中間スリーブを持たず、第一本体ゴム弾性体34の外周面が第一筒状部20の内周面に対して接着されて或いは非接着で取り付けられていてもよい。また、前記実施形態では、ロッド本体12の一方の端部にのみ本発明に係る筒形防振装置60を設けた例を示したが、例えば、ロッド本体12の両端部にそれぞれ本発明に係る筒形防振装置60を設けることもできる。
【0065】
前記実施形態では、本発明に係る筒形防振装置を自動車のトルクロッドに適用した例を示したが、本発明に係る筒形防振装置は、トルクロッド用に限定されず、例えば、サスペンションブッシュ、パワーユニットマウント等にも好適に適用され得る。このように筒形防振装置がトルクロッド以外に用いられる場合に、アウタ部材は、ロッド本体12のような長手形状に限定されるものではなく、例えば全体が筒状部を構成する円筒状等であってもよいし、筒状部の外周面に車両ボデー等へ取り付けるための取付部や別体ブラケット等が設けられることで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 トルクロッド
12 ロッド本体(アウタ部材)
14 第一ブッシュ
16 第二ブッシュ(筒形防振装置)
18 ロッド部
20 第一筒状部
22 第二筒状部(筒状部)
24 アウタ長尺部
26 アウタ短尺部
28 アウタ傾斜面
30 第一インナ軸部材
32 中間スリーブ
34 第一本体ゴム弾性体
36 外側すぐり部
38 内側すぐり部
40 第二インナ軸部材(インナ軸部材)
42 第二本体ゴム弾性体(本体ゴム弾性体)
44 平面部(位置決め部)
46 突起(位置決め部)
48 ゴム長尺部
50 ゴム短尺部
52 逃し溝
54 抜止部
58 段差状端面
60 筒形防振装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13