(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172729
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20231129BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20231129BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20231129BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20231129BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20231129BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20231129BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
F24F11/65
F24F11/61
F24F110:70
F24F120:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084738
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠二
(72)【発明者】
【氏名】岡 浩二
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BE01
3L260AB01
3L260AB15
3L260BA26
3L260CA04
3L260CA17
3L260FA07
3L260FC01
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善する、空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体を提供する。
【解決手段】空気調和システムは、ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得する覚醒センサと、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、部屋の換気を行う換気ファンと、制御部とを備える。制御部は、覚醒センサと、空気調和機と、換気ファンとを制御する。制御部は、覚醒センサによって取得したユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定し、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンの回転数を低下させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムであって、
前記ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得する覚醒センサと、
前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、
前記部屋の換気を行う換気ファンと、
前記覚醒センサと、前記空気調和機と、前記換気ファンと、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記覚醒センサによって取得した前記ユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、前記ユーザの覚醒状態を判定し、
前記ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、前記換気ファンの回転数を低下させる、
空気調和システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ユーザが覚醒していない状態であると判定する場合の前記換気ファンの回転数を、前記ユーザが覚醒した状態であると判定する場合の前記換気ファンの回転数よりも高くなるように設定する、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記制御部は、運転モード制御コマンドを受信し、前記運転モード制御コマンドに基づいて、前記空気調和システムに睡眠モードを実行させるように制御し、
前記制御部は、前記運転モード制御コマンド、および前記ユーザの覚醒状態に基づいて、前記空気調和システムに、前記睡眠モードにおける入眠前換気制御、前記睡眠モードにおける入眠後換気制御、または前記入眠前換気制御と前記入眠後換気制御とも異なる通常換気制御を実行し、
前記入眠前換気制御は、前記ユーザが覚醒した状態であると判定する場合に行う換気制御であり、
前記入眠後換気制御は、前記ユーザが覚醒していない状態であると判定する場合に行う換気制御であり、
前記制御部は、
前記入眠後換気制御における前記換気ファンの回転数を、前記入眠前換気制御における前記換気ファンの回転数よりも高くなるように設定し、
前記入眠後換気制御における前記換気ファンの回転数を、前記通常換気制御における前記換気ファンの回転数以下となるように設定する、
請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記入眠後換気制御において、
前記ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、前記換気ファンの回転数を低下させ、覚醒防止タイマを起動し、
前記ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、前記覚醒防止タイマを停止する、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記入眠後換気制御において、
前記覚醒防止タイマの起動時から所定時間が経過したと判定する場合、前記覚醒防止タイマを停止し、前記換気ファンの回転数を上昇させる、
請求項4に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記入眠前換気制御または前記入眠後換気制御を実行する前に、
前記覚醒防止タイマが起動されていると判定する場合、前記換気ファンの回転数を、現在運転中の前記換気ファンの回転数に設定し、
前記覚醒防止タイマが起動されていないと判定する場合、前記部屋内の二酸化炭素濃度に基づいて前記換気ファンの回転数を設定する、
請求項4に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記換気ファンの回転数を前記換気ファンに出力する前に、
前記換気ファンの回転数が第1上限回転数よりも高いと判定する場合、前記換気ファンの回転数を前記第1上限回転数に更新してから、更新した前記換気ファンの回転数を前記換気ファンに出力する、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項8】
前記制御部は、実行する換気制御に基づいて、前記第1上限回転数を、通常上限回転数と、入眠前上限回転数と、入眠後上限回転数とのうちの1つに設定し、
前記通常上限回転数は、前記通常換気制御において前記換気ファンの回転数に対する上限値であり、
前記入眠前上限回転数は、前記入眠前換気制御において前記換気ファンの回転数に対する上限値であり、
前記入眠後上限回転数は、前記入眠後換気制御において前記換気ファンの回転数に対する上限値であり、
前記制御部は、
前記入眠前上限回転数を、前記通常上限回転数よりも小さくなるように設定し、
前記入眠後上限回転数を、前記通常上限回転数以下かつ前記入眠前上限回転数よりも大きくなるように設定する、
請求項7に記載の空気調和システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記入眠前換気制御において、前記第1上限回転数を前記入眠前上限回転数に設定し、
前記入眠後換気制御において、前記ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、前記第1上限回転数を前記入眠前上限回転数に設定する、
請求項8項に記載の空気調和システム。
【請求項10】
前記制御部は、睡眠モードにわたって前記ユーザの覚醒回数をカウントし、
前記制御部は、前記入眠後換気制御において、
前記ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、前記覚醒回数に基づいて前記換気ファンの回転数を低下させる、
請求項3~9のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記睡眠モードが解除されたと判定するとき、前記覚醒回数をリセットする、
請求項10に記載の空気調和システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記入眠後換気制御において、
前記ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、前記入眠後上限回転数を、覚醒時の前記換気ファンの回転数に設定する、
請求項7~9のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記入眠後換気制御において、
前記ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、第2上限回転数を、覚醒時の前記換気ファンの回転数に設定し、
前記制御部は、前記入眠前換気制御または前記入眠後換気制御を実行する前に、
前記部屋内の二酸化炭素濃度および前記第2上限回転数に基づいて前記換気ファンの回転数を設定する
請求項12に記載の空気調和システム。
【請求項14】
ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムを制御する方法であって、
前記空気調和システムは、前記ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得する覚醒センサと、前記部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、前記部屋の換気を行う換気ファンと、を含み、
前記方法は、
前記覚醒センサによって、前記ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得するステップと、
取得した前記ユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、前記ユーザの覚醒状態を判定するステップと、
前記ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、前記換気ファンの回転数を低下させるステップと、
を含む、
方法。
【請求項15】
コンピュータに請求項14に記載の方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるときに、請求項14に記載の方法を実現する、
非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に記載するように、ユーザの睡眠の質を向上するために、ユーザの入眠時刻を予想し、当該入眠時刻に基づいて入眠前制御および入眠後制御を行う空気調和装置が知られている。特許文献1に記載の空気調和装置は、入眠前に二酸化炭素濃度が高い方が入眠しやすく、入眠後(睡眠時)に二酸化炭素濃度が低い方が快眠であるという概念のもとに、換気制御を行う。具体的にいうと、特許文献1に記載の空気調和装置は、室内の二酸化炭素濃度を入眠後制御中よりも入眠前制御中のほうが高くなるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気調和機は、入眠後制御中低い二酸化炭素濃度を維持するために、換気ファンを高い回転数で回している。しかしながら、換気ファンの高速回転による騒音を原因として、ユーザが覚醒したり、眠れなくなったりすることがある。すなわち、特許文献1に記載の空気調和装置では、ユーザの睡眠を妨げる点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本開示の目的は、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善する、空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するために、本開示は、空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体を提供するものである。
【0007】
本開示に係る一態様の空気調和システムは、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムである。空気調和システムは、ユーザの覚醒状態(awake state)に関連する情報を取得する覚醒センサと、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、部屋の換気を行う換気ファンと、制御部とを備える。制御部は、覚醒センサと、空気調和機と、換気ファンとを制御する。制御部は、覚醒センサによって取得したユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定し、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンの回転数を低下させる。
【0008】
また、本開示に係る他の態様の空気調和システムを制御する方法は、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムを制御する方法である。空気調和システムは、ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得する覚醒センサと、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、部屋の換気を行う換気ファンと、を含む。方法は、覚醒センサによって、ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得するステップと、取得したユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定するステップと、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンの回転数を低下させるステップと、を含む。
【0009】
また、本開示に係る他の態様のコンピュータプログラムは、空気調和システムを制御する方法を空気調和機に実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0010】
また、本開示に係る他の態様の記憶媒体は、コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、当該コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるときに、空気調和システムを制御する方法を実現する。
【発明の効果】
【0011】
本開示においては、空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体によれば、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる空気調和システムの構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態1における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャート
【
図3】実施の形態2における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャート
【
図5】実施の形態3における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャート
【
図6】実施の形態3にかかる空気調和システムの構成を示すブロック図
【
図7】二酸化炭素濃度の濃度差と換気ファンの回転数の増減との関係を示すグラフ
【
図8】実施の形態4における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャート
【
図9】実施の形態5における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャート
【
図10】実施の形態5における空気調和システムを制御する方法のもう一例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず始めに、空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体の各種態様について説明する。
【0014】
本開示に係る第1の態様の空気調和システムは、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムである。空気調和システムは、ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得する覚醒センサと、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、部屋の換気を行う換気ファンと、制御部とを備える。制御部は、覚醒センサと、空気調和機と、換気ファンとを制御する。制御部は、覚醒センサによって取得したユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定し、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンの回転数を低下させる。
【0015】
このような構成によれば、制御部はユーザが実際に覚醒する前に換気ファンの回転数を低下させ、換気ファンによる騒音を抑制することができる。よって、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善することができる。
【0016】
本開示に係る第2の態様の空気調和システムは、第1の態様において、制御部は、ユーザが覚醒していない状態であると判定する場合の換気ファンの回転数を、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合の換気ファンの回転数よりも高くなるように設定してもよい。
【0017】
このような構成によれば、制御部はユーザが覚醒していないとき(すなわち、入眠後、睡眠中)に二酸化炭素濃度を比較的低くして、快眠環境をユーザに提供することができる。また、ユーザが覚醒したとき(すなわち、入眠前、起きている)に二酸化炭素濃度を比較的高くするとともに、制御部は換気ファンを比較的静かに動作させるため、ユーザの入眠を促すことができる。
【0018】
本開示に係る第3の態様の空気調和システムは、第1の態様または第2の態様において、制御部は、運転モード制御コマンドを受信し、運転モード制御コマンドに基づいて、空気調和システムに睡眠モードを実行させるように制御してもよい。制御部は、運転モード制御コマンド、およびユーザの覚醒状態に基づいて、空気調和システムに、睡眠モードにおける入眠前換気制御、睡眠モードにおける入眠後換気制御、または入眠前換気制御と入眠後換気制御とも異なる通常換気制御を実行してもよい。入眠前換気制御は、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合に行う換気制御である。入眠後換気制御は、ユーザが覚醒していない状態であると判定する場合に行う換気制御である。制御部は、入眠後換気制御における換気ファンの回転数を、入眠前換気制御における換気ファンの回転数よりも高くなるように設定してもよい。制御部は、入眠後換気制御における換気ファンの回転数を、通常換気制御における換気ファンの回転数以下のように設定してもよい。
【0019】
このような構成によれば、入眠前換気制御、入眠後換気制御、および通常換気制御のいずれかにおいても、適切な換気制御を行うことができる。例えば、制御部は入眠前換気制御において、二酸化炭素濃度を比較的高くするとともに、換気ファンを比較的静かに動作させるため、ユーザの入眠を促すことができる。制御部は入眠後換気制御において、二酸化炭素濃度を比較的低くして、快眠環境をユーザに提供することができる。また、睡眠モードにない通常換気制御において、ユーザを覚醒させる恐れがないため、制御部は部屋内の二酸化炭素濃度などの換気ニーズに応じて換気ファンを最大限まで回転させることができる。
【0020】
本開示に係る第4の態様の空気調和システムは、第3の態様において、制御部は、入眠後換気制御で以下のことを行ってもよい。すなわち、制御部は、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンの回転数を低下させ、覚醒防止タイマを起動し、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、覚醒防止タイマを停止してもよい。
【0021】
このような構成によれば、制御部はユーザが覚醒する可能性が高いことを示す覚醒防止タイマを設定することができ、覚醒防止タイマを介してより精確な換気制御を行うことができる。
【0022】
本開示に係る第5の態様の空気調和システムは、第4の態様において、制御部は、入眠後換気制御で以下のことを行ってもよい。すなわち、制御部は、覚醒防止タイマの起動時から所定時間が経過したと判定する場合、覚醒防止タイマを停止し、換気ファンの回転数を上昇させてもよい。
【0023】
このような構成によれば、制御部は、覚醒防止タイマの起動時から所定時間にわたって、すなわち、ユーザが覚醒する可能性が高い時間にわたって、換気ファンを比較的静かに動作させることができる。よって、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることをさらに改善することができる。
【0024】
本開示に係る第6の態様の空気調和システムは、第4の態様または第5の態様において、制御部は、入眠前換気制御または入眠後換気制御を実行する前に、以下のことを行ってもよい。すなわち、制御部は、覚醒防止タイマが起動されていると判定する場合、換気ファンの回転数を、現在運転中の換気ファンの回転数に設定してもよい。また、制御部は、覚醒防止タイマが起動されていないと判定する場合、部屋内の二酸化炭素濃度に基づいて換気ファンの回転数を設定してもよい。
【0025】
このような構成によれば、制御部は、覚醒防止タイマが起動中か否かに基づいて、換気制御開始時の換気ファンの回転数を設定することができ、覚醒防止タイマを介してより精確な換気制御を行うことができる。
【0026】
本開示に係る第7の態様の空気調和システムは、第3の態様から第6の態様のいずれか1つにおいて、制御部は、換気ファンの回転数を換気ファンに出力する前に、以下のことを行ってもよい。すなわち、制御部は、換気ファンの回転数が第1上限回転数よりも高いと判定する場合、換気ファンの回転数を第1上限回転数に更新してから、更新した換気ファンの回転数を換気ファンに出力してもよい。
【0027】
このような構成によれば、制御部は、第1上限回転数を介して、換気ファンに出力する回転数を制御することができる。
【0028】
本開示に係る第8の態様の空気調和システムは、第7の態様において、制御部は、実行する換気制御に基づいて、第1上限回転数を、通常上限回転数と、入眠前上限回転数と、入眠後上限回転数とのうちの1つに設定してもよい。通常上限回転数は、通常換気制御において換気ファンの回転数に対する上限値である。入眠前上限回転数は、入眠前換気制御において換気ファンの回転数に対する上限値である。入眠後上限回転数は、入眠後換気制御において換気ファンの回転数に対する上限値である。制御部は、入眠前上限回転数を、通常上限回転数よりも小さくなるように設定してもよく、入眠後上限回転数を、通常上限回転数以下かつ入眠前上限回転数よりも大きくなるように設定してもよい。
【0029】
このような構成によれば、制御部は異なる換気制御に対して適切な上限回転数をそれぞれに設定することができる。例えば、換気ファンの騒音を抑制したい入眠前換気制御において、制御部は入眠前上限回転数を通常上限回転数よりも小さく設定することができる。
【0030】
本開示に係る第9の態様の空気調和システムは、第8の態様において、制御部は、入眠前換気制御において、第1上限回転数を入眠前上限回転数に設定してもよい。また、制御部は、入眠後換気制御において、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、第1上限回転数を入眠前上限回転数に設定してもよい。
【0031】
このような構成によれば、制御部はユーザの覚醒に応じて入眠後換気制御から入眠前換気制御に切り替えることができるため、ユーザの覚醒後、再度にユーザの入眠を促すことができる。
【0032】
本開示に係る第10の態様の空気調和システムは、第1の態様~第9の態様のいずれか1つの態様において、制御部は、睡眠モードにわたってユーザの覚醒回数をカウントしてもよい。制御部は、入眠後換気制御において、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、覚醒回数に基づいて換気ファンの回転数を低下させてもよい。
【0033】
このような構成によれば、制御部はユーザの覚醒回数に応じて換気ファンの回転数を低下させることができる。このため、ユーザが何回も覚醒することを抑制することができる。
【0034】
本開示に係る第11の態様の空気調和システムは、第10の態様において、制御部は、睡眠モードが解除されたと判定するとき、覚醒回数をリセットしてもよい。
【0035】
このような構成によれば、異なる睡眠イベントの換気制御が互いに干渉せず、制御部は覚醒防止タイマを介して換気制御をより精確に行うことができる。
【0036】
本開示に係る第12の態様の空気調和システムは、第7の態様~第9の態様のいずれか1つの態様において、制御部は、入眠後換気制御で以下のことを行ってもよい。すなわち、制御部は、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、入眠後上限回転数を、覚醒時の換気ファンの回転数に設定してもよい。
【0037】
このような構成によれば、制御部は入眠後換気制御において、入眠後上限回転数の設定を介して換気ファンの回転数を低下させることができる。
【0038】
本開示に係る第13の態様の空気調和システムは、第12の態様において、制御部は、入眠後換気制御で、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、第2上限回転数を、覚醒時の換気ファンの回転数に設定してもよい。また、制御部は、入眠前換気制御または入眠後換気制御を実行する前に、部屋内の二酸化炭素濃度および第2上限回転数に基づいて換気ファンの回転数を設定してもよい。
【0039】
このような構成によれば、制御部は入眠後換気制御において、さらに第2上限回転数を用いて覚醒ファンの回転数を制限することができる。第2上限回転数の設定によって、制御部は、ユーザの覚醒回数に応じて換気ファンの回転数の上限値を低下させることができるため、ユーザが何回も覚醒することを抑制することができる。
【0040】
本開示に係る第14の態様の空気調和システムを制御する方法は、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う空気調和システムを制御する方法である。空気調和システムは、ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得する覚醒センサと、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節する空気調和機と、部屋の換気を行う換気ファンと、を含む。方法は、覚醒センサによって、ユーザの覚醒状態に関連する情報を取得するステップと、取得したユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定するステップと、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンの回転数を低下させるステップと、を含む。
【0041】
本開示に係る第15の態様のコンピュータプログラムは、空気調和システムを制御する方法を空気調和機に実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0042】
本開示に係る第16の態様の記憶媒体は、コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、当該コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるときに、空気調和システムを制御する方法を実現する。
【0043】
このような方法、コンピュータプログラム、または記憶媒体によれば、ユーザが実際に覚醒する前に換気ファンの回転数を低下させ、換気ファンによる騒音を抑制することができる。よって、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善することができる。
【0044】
《技術的概念》
本開示に係る空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体の具体的な実施の形態を説明する前に、まず、一例を用いて、本開示に記載の技術的概念を説明する。この例において、空気調和システムは、空気調和機と換気ファンとを備え、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行う。空気調和システムは、その運転モードおよびユーザの覚醒状態(awake state)に基づいて換気制御を行う。特に、睡眠モードにおいてユーザが入眠した後、換気による騒音を抑制する入眠後換気制御を行う。
【0045】
空気調和システムは、睡眠モードにおいて、覚醒センサによってユーザの覚醒状態に関連する情報を取得し、取得した情報に基づいてユーザの覚醒状態を判定する。そして、空気調和システムは、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンによる騒音を抑制するように、換気ファンの回転数を低下させる。このようにすれば、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善することができる。
【0046】
以下で説明する実施の形態のそれぞれは、本開示の一例を示すものである。以下の実施の形態のそれぞれにおいて示される数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、本開示を限定するものではない。以下の実施の形態1における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0047】
以下に述べる実施の形態のそれぞれにおいて、特定の要素に関しては変形例を示す場合があり、その他の要素に関しては任意の構成を適宜組み合わせることを含むものであり、組み合わされた構成においてはそれぞれの効果を奏するものである。実施の形態において、それぞれの変形例の構成をそれぞれ組み合わせることにより、それぞれの変形例における効果を奏するものとなる。
【0048】
以下の詳細な説明において、「第1」、「第2」などの用語は、説明のためだけに用いられるものであり、相対的な重要性または技術的特徴の順位を明示または暗示するものとして理解されるべきではない。「第1」と「第2」と限定されている特徴は、1つまたはさらに多くの当該特徴を含むことを明示または暗示するものである。
【0049】
《実施の形態1》
以下、本開示に係る空気調和システム、空気調和システムを制御する方法、コンピュータプログラム、および記憶媒体の実施の形態1について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
<全体構成>
図1は、実施の形態1にかかる空気調和システム10の構成を示すブロック図である。
【0051】
空気調和システム10は、ユーザの存在する部屋の空調制御および換気制御を行うシステムである。本実施の形態において、空調制御とは、ユーザの存在する部屋の空気の温度、湿度、清浄度、または気流などを調節することをいい、換気制御とは、ユーザの存在する部屋の空気を部屋の外の空気と入れ替える際の、換気量などを調節することをいう。
【0052】
図1に示すように、空気調和システム10は、覚醒センサ11と、空気調和機12と、換気ファン13と、制御部14と、を備える。
【0053】
<覚醒センサ11>
覚醒センサ11は、部屋にいるユーザの覚醒状態に関連する情報を取得することのできるセンサを含む。例えば、ユーザの生体情報を取得することのできるセンサや、ユーザの体動等を取得することのできるカメラなどを含む。本開示において、ユーザの覚醒状態とは、ユーザの覚醒の度合いを表す状態を指す。そして、覚醒状態は、覚醒していない状態、覚醒した状態、および、覚醒していないものの覚醒しそうな状態(本開示では「覚醒しそうな状態」と略称する。)を含む。覚醒していない状態は睡眠中の状態ともいい、覚醒した状態は、目覚めている状態、または睡眠中でない状態ともいう。
【0054】
ユーザの覚醒状態に関連する情報とは、部屋にいるユーザの集中状態を推定することのできる情報であり、例えば、ユーザの生体情報、または、ユーザの体動の有無などの情報を含む。生体情報としては、例えば、ユーザの心拍数、脳波、呼吸、または脈波などの情報が挙げられる。体動としては、例えば、ユーザの頭部の動き、または姿勢の変化などが挙げられる。体動は、赤外線、電波、超音波、写真に対する画像分析などの手段によって検出可能であり、体動センサは、カメラ、または、ユーザが身に着けるウェアラブルデバイスであってもよい。
【0055】
本実施の形態では、覚醒センサ11は体動センサであり、ユーザの覚醒状態に関連する情報は体動センサによって取得したユーザの体動である。覚醒センサ11は、常時、または定期的に、ユーザの体動を取得して制御部14に送信することができる。覚醒センサ11は、空気調和機12の本体に搭載されてもよく、他の家電、またはスマートホーム内外の任意箇所に搭載されてもよく、独立したセンサ装置であってもよい。
【0056】
覚醒状態は、覚醒センサ11で取得した体動に基づいて推定することができる。基本的には、体動が少ない場合は覚醒していない状態と判定し、体動が多い場合覚醒した状態と判定し、その間の特定区間は覚醒しそうと判定する。例えば、制御部14は、体動が第1閾値以上の場合、覚醒状態を「覚醒した」と判定する。制御部14は、体動が第1閾値より小さく、かつ第2閾値以上の場合、覚醒状態を「覚醒しそう」と判定する。なお、第1閾値は、第2閾値より大きい。制御部14は、体動が第2閾値より小さい場合、覚醒状態を「覚醒していない」と判定する。
【0057】
<空気調和機12>
空気調和機12は、部屋の室温、風向、または風速のうち少なくとも1つを調節することができ、ユーザの存在する部屋の空調制御を行う。空気調和機12は、例えば、冷房機能、暖房機能、加湿機能、除湿機能、または空気清浄機能を有していてもよく、これらの機能を自由に組み合わせて、部屋の空気を調和することができる。
【0058】
<換気ファン13>
換気ファン13は、ユーザの存在する部屋の換気制御を行う。換気ファン13は、例えば、シロッコファン等で構成される。換気ファン13を回転させることにより、部屋の内部の空気と部屋の外部の空気とを入れ替えることができる。換気ファン13は、例えば、部屋の壁面に取り付けられた換気扇であってもよく、または空気調和機12に配置された換気装置であってもよい。
【0059】
空気調和機12と換気ファン13とはそれぞれが別々に動作してもよいし、空気調和機12と換気ファン13とがともに動作して、部屋の空調制御と換気制御とを一緒に行ってもよい。
【0060】
<制御部14>
制御部14は、覚醒センサ11と、空気調和機12と、換気ファン13と、を制御する。制御部14は、例えば、プログラムを記憶したメモリと、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサに対応する処理回路を備える。制御部14の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。制御部14は、メモリに格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、所定の機能を実現する。
【0061】
本実施の形態では、制御部14は、覚醒センサ11により取得したユーザの覚醒状態に関連する情報、すなわちユーザの体動に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定する。上述したように、例えば、ユーザの体動と第1閾値および第2閾値とを比較して、ユーザの覚醒状態は、「覚醒した」、「覚醒しそう」、および「覚醒していない」のどれかを判定する。
【0062】
制御部14は、判定したユーザの覚醒状態に基づいて、換気ファン13の回転数を制御する。例えば、制御部14は、睡眠モードにおいて、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、換気ファンによる騒音を抑制するように、換気ファンの回転数を低下させてもよい。
【0063】
また、制御部14は空気調和システム10に関連する操作端末20から空調制御および/または換気制御に関する様々な操作コマンドを受信してもよい。操作コマンドは。例えば、空気調和システム10の運転モードに関する運転モード制御コマンドや、空調制御のための設定温度に関する設定コマンドなどを含んでもよい。操作端末20は、ユーザの入力に基づいて、操作コマンドを空気調和システム10に送信することができる。制御部14は、受信した操作コマンドに基づいて、運転モードを切り替えたり、設定温度を変更したりすることができる。
【0064】
[換気ファン13の回転数の制御]
図2は、実施の形態1における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャートであり、当該方法はステップS100、ステップS200およびステップS300を含む。以下、
図2のフローチャートを用いて、
図1の空気調和システム10を制御し、その換気ファン13の回転数の制御動作を説明する。この制御方法によれば、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善することができる。
【0065】
1つの実施例において、制御部14は、空気調和機12がユーザの指令より換気モードに入ってから、ステップS100、ステップS200およびステップS300を実行することによって換気機能を発揮してもよい。もう1つの実施例において、制御部14は、情報に基づいて換気ニーズがあると判定する場合に、自動的に換気モードに入り、ステップS100、ステップS200およびステップS300を実行してもよい。以下の各実施例は、空気調和機12がすでに換気モードにあるという前提で説明する。
【0066】
本実施の形態において、制御部14はまず、覚醒センサ11によって取得したユーザの覚醒状態に関連する情報に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定する(ステップS100)。上述したように、制御部14は、ユーザの体動を取得し、当該体動と特定の閾値とを比較し、ユーザの覚醒状態が「覚醒していない」、「覚醒しそう」、および「覚醒した」のうちのいずれかを判定する。ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合(ステップS200で「YES」)、制御部14は換気ファン13の回転数を低下させる(ステップS300)。すなわち、ユーザがまだ睡眠状態にあるものの睡眠が浅くて目覚めやすいと判定する場合、制御部14は、ユーザを起こさないように、換気ファン13の回転数を低下させ、換気ファン13による騒音を抑制する。
【0067】
回転数を低下させるときは、回転数を段階的に低下させてもよい。例えば、換気ファン13の回転数を300rpmずつ、500rpmずつ、1000rpmずつ等、所定の値ずつ低下させてもよい。また、制御部14、覚醒状態または取得した体動に応じて、換気ファン13の回転数をどれだけ低下させるかを決定してもよい。
【0068】
一方、ユーザが覚醒しそうな状態でないと判定する場合(ステップS200で「NO」)、制御部14は換気ファン13の回転数を低下させなくてもよい。例えば、ユーザが覚醒していない状態であると判定した場合、ユーザは換気ファン13による騒音を原因として目覚める可能性が低い。この場合、換気量を比較的高くし部屋内の二酸化炭素濃度を低くして、快眠環境を作ってもよい。このため、制御部14は、ユーザが覚醒していない状態であると判定する場合の換気ファン13の回転数を、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合の換気ファン13の回転数よりも高くなるように設定する。
【0069】
制御部14はステップS100、ステップS200およびステップS300を少なくとも一回の実行により換気制御の処理を完了する。換気モードにおいて、制御部14はステップS100~ステップS300を繰り返して実行してもよい。例えば、制御部14は、一定時間ごとに(例えば、3分ごとに、5分ごとに、10分ごとに、15分ごとに、または30分ごとに)ステップS100~ステップS300を実行し、入眠後のユーザに提供する換気性および快適性を維持する。
【0070】
1つの実施例において、上述したような方法を制御部14に実行するために使用されるコンピュータプログラムを提供する。
【0071】
もう1つの実施例において、上述したコンピュータプログラムは非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されている。当該コンピュータプログラムが制御部14によって読み出されて実行されるときに、上述した空気調和システムを制御する方法を実現する。
【0072】
このような空気調和システム10の構成および換気制御によれば、制御部14はユーザが実際に覚醒する前に換気ファン13の回転数を低下させ、換気ファン13による騒音を抑制することができる。よって、ユーザの入眠後、換気による騒音が睡眠を妨げることを改善することができる。
【0073】
《実施の形態2》
<運転モードおよび入眠前後による異なる換気制御>
実施の形態2において、睡眠モードではユーザの入眠前後に対して異なる換気制御を提供することができる。上述したように、制御部14は、受信した操作コマンドに基づいて運転モードを切り替えることができる。空気調和システム10は、異なる運転モードにおいて、異なる換気制御を行ってもよい。
【0074】
<操作端末20>
操作端末20は、空気調和システム10に関連して、空気調和システム10の運転モード制御コマンドを送信する端末である。操作端末20は、例えば、空気調和システム10のリモートコントローラであってもよい。または、操作端末20は、空気調和システム10を含む、複数の家電製品を管理および制御することのできるコントローラであってもよい。あるいは、操作端末20は、例えば、スマートフォンまたはタブレットなどの電子機器であってもよい。操作端末20は、空気調和システム10に含まれてもよく、空気調和システム10に含まれない外部機器であってもよい。
【0075】
<運転モード制御コマンド>
運転モード制御コマンドは、空気調和機12の運転モードに関する制御信号である。本実施の形態では、空気調和機12は、換気モードの他に、ユーザの快眠を促進する睡眠モードと、睡眠モードと異なる通常運転モードと、の2つの運転モードを有し、いずれかの運転モードが実行される。空気調和機12は、換気モードと睡眠モードとを並行して運転してもよく、換気モードと通常運転モードとを並行して運転してもよい。運転モード制御コマンドには、少なくとも1つの運転モードが指定される。
【0076】
1つの実施例において、制御部14は、運転モード制御コマンドを受信し、運転モード制御コマンドに基づいて、空気調和システムに睡眠モードを実行させるように制御する。例えば、制御部14は、操作端末20から運転モード制御コマンドを受信し、運転モード制御コマンドによって指定された運転モードに切り替える。
【0077】
もう1つの実施例において、空気調和機12は自動運転モードを有する。自動運転モードにおいて、制御部14は、様々なセンサから取得した情報と、設定温度や設定湿度などの事前に設定された設定値とに基づいて、睡眠モードと通常運転モードとのうちの1つを自動的に選択して実行する。
【0078】
換気モードと通常運転モードとが並行するとき、制御部14は通常換気制御を実行する。通常換気制御において、制御部14は、二酸化炭素濃度、ユーザの活動量、空気質指数(air quality index、AQI」などの換気ニーズに基づいて、換気ファン13の回転数を制御することができる。通常運転モードでは、制御部14はユーザの覚醒状態に関わらず換気ファン13の回転数を設定してもよい。例えば、二酸化炭素濃度が所定閾値より高いとき、制御部14は、換気ファン13の回転数をその最大値に設定して、換気ファン13に全速回転させてもよい。
【0079】
睡眠モードとは、快適な睡眠環境を整えてユーザの快眠を促進することを目的とする、空気調和機12の運転モードの1つである。睡眠モードにおいて、空調制御部22は、ユーザの睡眠活動に合わせて空調制御を行ってもよい。例えば、睡眠モードにおいて、空調制御部22は、室内温度が下がりすぎないように、室内温度を26℃~28℃にするように空調制御をしてもよい。また、睡眠モードにおいて、空調制御部22は、空気調和機12の吹き出し気流が直接的にユーザに当たらないように、当該吹き出し気流の方向を制御してもよい。睡眠モードは、おやすみモード、快眠モードなどとも呼ばれている。
【0080】
制御部14は、睡眠モードにおいて、さらにユーザの覚醒状態に基づいて、異なる換気制御を実行してもよい。例えば、制御部14は、ユーザの覚醒状態に基づいて、睡眠モードにおける入眠前換気制御と睡眠モードにおける入眠後換気制御とのうちの1つを選択して実行してもよい。さらに具体的にいうと、入眠前換気制御は、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合に行う換気制御であり、入眠後換気制御は、ユーザが覚醒していない状態であると判定する場合に行う換気制御である。なお、通常換気制御と入眠前換気制御と入眠後換気制御とは互いに異なる換気制御である。
【0081】
1つの実施例において、制御部14は、現在行うべき換気制御を表す現行制御というパラメータを維持する。当該パラメータによって、通常換気制御と入眠前換気制御と入眠後換気制御とのうちの1つが指定される。制御部14は、入眠前換気制御を、睡眠モードに切り替えるときの現行制御の初期設定としてもよい。このようにすると、覚醒状態を判定する前にも換気制御ができる。制御部14は、後に覚醒状態が「覚醒した」と判定するときに、入眠後換気制御から入眠前換気制御に切り替える。
【0082】
まとめるに、制御部14は、運転モード制御コマンド、およびユーザの覚醒状態に基づいて、空気調和システムに、入眠前換気制御、入眠後換気制御、または通常換気制御を実行する。
図3は、実施の形態2における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャートである。
【0083】
まず、制御部14は現在の運転モードが睡眠モードであるかを判定する(ステップS410)。現在の運転モードが睡眠モードでないと判定する場合、制御部14は通常換気制御を行う(ステップS420)。通常換気制御において、制御部14は、ユーザの覚醒状態に関わらず、換気ニーズに基づいて換気ファン13の回転数を制御する。
【0084】
制御部14は、現在の運転モードが睡眠モードであると判定する場合、入眠前換気制御を行うかを判定する(ステップS430)。例えば、現行制御によって指定された換気制御が入眠前換気制御であると判断する場合(ステップS430で「YES」)、制御部14は入眠前換気制御を行う(ステップS440)。入眠前換気制御において、ユーザの入眠を促すように、制御部14は、二酸化炭素濃度を比較的高くするとともに、換気ファン13を比較的静かに動作させる。具体的にいうと、制御部14は換気ファン13の回転数を低く設定する。例えば、回転数を最小値に設定してもよく、所定閾値よりも小さく設定してもよい。回転数の最小値は、例えば、2000rpm、3000rpm、4000rpmであってもよい。
【0085】
一方、睡眠モードにおいて現行制御によって指定された換気制御が入眠前換気制御でないと判断する場合(ステップS430で「NO」)、ステップS100~ステップS300を入眠後換気制御として行う。すなわち、
図3に示された実施例において、入眠後換気制御はステップS100~ステップS300を含む。
図3におけるステップS100~ステップS300の内容は、上述した
図2におけるステップS100~ステップS300と同様なので、ここで重複する説明を割愛する。
【0086】
実施の形態2において、制御部14は、入眠後換気制御における換気ファン13の回転数を、入眠前換気制御における換気ファン13の回転数よりも高くなるように設定する。入眠後換気制御での回転数を比較的高く設定すれば、二酸化炭素濃度を比較的低くして、快眠環境をユーザに提供することができる。ただし、換気ファン13による騒音でユーザを覚醒させることを回避するために、換気ファン13の回転数を制限してもよい。例えば、制御部14は、入眠後換気制御における換気ファン13の回転数を、通常換気制御における換気ファン13の回転数以下となるように設定してもよい。このようにすれば、部屋の二酸化炭素濃度を適切な値に維持しつつ、換気ファン13の騒音を抑制して、睡眠を妨げることを改善することができる。
【0087】
なお、上述したように入眠前換気制御を初期設定として実行してもよいが、ステップS100をステップS430の前に実行して、覚醒情報を判定してから判定結果によって実行すべき換気制御を選択してもよい。
【0088】
1つの実施例において、換気ファン13の回転数を決める際に、換気による騒音を抑制するように、所定の上限値を用いて換気ファン13の回転数を制限する。このような制限は、ステップS300で実行可能である。具体的には、制御部14は、換気ファン13の回転数を換気ファン13に出力する前に、以下のように回転数を確認し、回転数を選択的に更新する。
【0089】
図4は、ステップS300の一例のフローチャートである。まず、ユーザが覚醒しそうな状態と判定したので、制御部14は換気ファン13の回転数を低下させる(ステップS310)。次に、制御部14は、低下させた換気ファン13の回転数が第1上限回転数よりも高いか否かを判定する(ステップS320)。第1上限回転数は回転数に対するある上限値であり、予め設定された値であってもよく、ユーザの睡眠状況に基づいてリアルタイムで変更可能である。好ましくは、第1上限回転数が通常換気制御における換気ファン13の回転数以下となるように設定される。このようにすれば、部屋内を静に保ちやすい。
【0090】
低下させた回転数が第1上限回転数よりも高いと判定する場合、制御部14は、換気ファン13の回転数を第1上限回転数に更新してから、更新した換気ファン13の回転数を換気ファン13に出力する(ステップS330)。すなわち、低下させた回転数がまだ十分に低くないとき、さらに第1上限回転数まで低下させてから換気ファン13に出力する。逆に、低下させた回転数がすでに第1上限回転数以下であると判定する場合、制御部14は当該回転数をそのまま換気ファン13に出力する。
【0091】
次に、第1上限回転数について、さらに詳細に説明する。制御部14は、実行する換気制御に基づいて、第1上限回転数を、通常上限回転数と、入眠前上限回転数と、入眠後上限回転数とのうちの1つに設定してもよい。具体的には、制御部14は、通常換気制御において第1上限回転数を通常上限回転数に設定する。同様に、入眠前換気制御において、第1上限回転数を入眠前上限回転数に設定し、入眠後換気制御において、第1上限回転数を入眠後上限回転数に設定する。
【0092】
通常上限回転数は、通常換気制御において換気ファン13の回転数に対する上限値である。例えば、通常上限回転数は、実際に換気ファン13が実行可能な回転数の最大値に設定され得る。回転数の最大値は、例えば、5000rpm、6000rpm、または8000rpmであってもよい。
【0093】
入眠前上限回転数は、入眠前換気制御において換気ファン13の回転数に対する上限値である。騒音を抑制するために入眠前上限回転数を低く設定することが好ましいが、一定の換気量を維持するために、入眠前上限回転数を0に設定しなくてもよい。入眠前上限回転数は、例えば、2000rpm、3000rpm、または4000rpmであってもよい。
【0094】
入眠後上限回転数は、入眠後換気制御において換気ファン13の回転数に対する上限値である。制御部14は、ユーザが覚醒しているときに騒音を抑制するために、入眠前上限回転数を通常上限回転数よりも小さくなるように設定してもよい。そして、制御部14は、入眠後上限回転数を、通常上限回転数以下かつ入眠前上限回転数よりも大きくなるように設定してもよい。このような設定によって、入眠後換気制御において、適切に換気しつつ、換気ファン13の騒音を抑制することができる。
【0095】
1つの実施例において、制御部14は、入眠後換気制御において、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、すなわち、ユーザが睡眠から目覚めるとき、入眠前換気制御に移し、第1上限回転数を入眠前上限回転数に設定する。このようにすれば、制御部14はユーザの覚醒に応じて入眠後換気制御から入眠前換気制御に切り替えることができるため、ユーザの覚醒後、再度ユーザの入眠を促すことができる。
【0096】
これにより、異なる換気制御内の換気処理は完了する。制御部14は、異なる運転モードおよび換気制御に対して、換気量または騒音抑制のどちらを優先するか、またどの程度優先するかを判断することができ、適切な換気制御を行うことができる。また、それぞれの換気制御に対して上限回転数を設定することによって、換気ファン13の回転数を容易に制御できる。例えば、制御部14は入眠前換気制御において、二酸化炭素濃度を比較的高くするとともに、換気ファンを比較的静かに動作させるため、ユーザの入眠を促すことができる。制御部14は入眠後換気制御において、二酸化炭素濃度を比較的低くして、快眠環境をユーザに提供することができる。また、睡眠モードにない通常換気制御において、ユーザを覚醒させる恐れがないため、制御部は部屋内の二酸化炭素濃度などの換気ニーズに応じて換気ファンを最大限まで回転させることができる。
【0097】
《実施の形態3》
<覚醒防止タイマによる換気制御>
実施の形態3において、制御部14は覚醒防止タイマを用いて、より精確な換気制御を行う。よって、ユーザが覚醒する可能性が高い時間にわたって、換気ファンを比較的静かに動作させることができる。
【0098】
<覚醒防止タイマ>
覚醒防止タイマは、設定された所定時間を測る機能を有する。後述するように、制御部14は、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定するときに、覚醒防止タイマを起動する。よって、制御部14は、覚醒防止タイマの起動時から満了時まで、すなわち、ユーザが覚醒しそうと判定する時から所定時間にわたって、ユーザの覚醒状態について監視し、より精確な換気制御を行うことができる。覚醒防止タイマによって監視する所定時間は、例えば、10分間、15分間、または30分間であってもよい。
【0099】
図5は、実施の形態3における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャートである。
図5におけるステップS510~ステップS540およびステップS100~ステップS300の内容は、実施の形態2の
図3におけるステップS410~ステップS440およびステップS100~ステップS300と同様なので、ここで重複する説明を割愛する。実施の形態3では、入眠後換気制御がステップS550~ステップS590およびステップS100~ステップS300を含む点で、実施の形態2と異なる。
【0100】
制御部14は、行うべき換気制御が入眠後換気制御であると判断する場合(ステップS530で「NO」)、ユーザの体動等に基づいて、ユーザの覚醒状態を判定する(ステップS100)。ユーザが覚醒した状態であると判定する場合(ステップS550で「YES」)、制御部14は入眠後換気制御から入眠前換気制御に切り替える。
【0101】
一方、ユーザが覚醒した状態でないと判定する場合(ステップS550で「NO」)、制御部14は、覚醒防止タイマが起動され、かつ満了したかを判定する(ステップS560)。覚醒防止タイマが起動されていない、または覚醒防止タイマが起動されているが満了していないと判定する場合、制御部14はユーザが覚醒しそうな状態であるかをさらに判定する(ステップS200)。ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する場合、制御部14は換気ファン13の回転数を低下させ(ステップS300)、覚醒防止タイマを起動する(ステップS570)。
【0102】
覚醒防止タイマが満了しておらず、ユーザも覚醒していないと判定する場合(ステップS200で「NO」)、特に処理を行わなくてもよい。
【0103】
覚醒防止タイマが満了したと判定する場合(ステップS560で「YES」)、制御部14は、換気ファン13の回転数を上昇させ(ステップS580)、覚醒防止タイマを停止する(ステップS590)。これは、覚醒防止タイマが満了すると、ユーザが覚醒する可能性が高い(ユーザが覚醒しやすい)時間は満了したことが考えられるためである。この状況では、入眠後換気制御で部屋内の二酸化炭素濃度を低く維持するように、換気ファン13の回転数を高い水準に回復させる。例えば、ステップS580において、回転数を、入眠後上限回転数、通常上限回転数、または換気ファン13の回転数に対する上限値までに上昇させてもよく、段階的に上昇させてもよい。また、ステップS580において、制御部14は回転数を、睡眠モードにおいて低下させた分だけ上昇させてもよい。
【0104】
実施の形態3において、入眠前換気制御または入眠後換気制御を実行する前に、換気ファン13の回転数を仮に設定してもよい。前述したように、換気制御は繰り返して実行可能である。例えば、
図5に示された制御フローを5分ごとに繰り返してもよい。ここでは、毎回繰り返すときに、その回の初期値としての回転数を仮に設定することを指す。
【0105】
1つの実施例において、入眠前換気制御に対して部屋の二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の回転数を仮に設定する。1つの実施例において、覚醒防止タイマが起動されているか否かに基づいて換気ファン13の回転数を仮に設定する。例えば、覚醒防止タイマが起動されていると判定する場合、換気ファン13の回転数を、現在運転中の換気ファン13の回転数に仮に設定してもよい。ユーザが覚醒したと覚醒防止タイマが停止されるので、覚醒防止タイマが起動中とのことから、入眠後換気制御が行われており、かつユーザが覚醒しやすい状態にあることが分かる。また、覚醒防止タイマが起動中とのことから、現在運転中の換気ファン13の回転数は前の換気制御ですでに低下していることが分かる。ここで、ユーザに覚醒させないように、低下した回転数を引き続き利用する形で、今回の初期値としての回転数を現在値に設定する。
【0106】
また、制御部14は、覚醒防止タイマが起動されていないと判定する場合、部屋内の二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の回転数を設定してもよい。この場合、空気調和システム10は二酸化炭素センサ15をさらに含む。
図6は、この場合の空気調和システムの構成を示すブロック図であり、
図7は、二酸化炭素濃度の濃度差と換気ファン13の回転数の増減との関係を示すグラフである。
【0107】
なお、通常換気制御においても、制御部14は同じ方法で部屋の二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の回転数を制御することができる。
【0108】
<二酸化炭素センサ>
二酸化炭素センサ15は、ユーザの存在する部屋の二酸化炭素濃度を検出するセンサである。二酸化炭素センサ15により、部屋の空気中に含まれる二酸化炭素の濃度を測定することができる。
【0109】
制御部14は、覚醒防止タイマが起動されていないと判定する場合、目標二酸化炭素濃度を取得し、二酸化炭素センサ15を用いて部屋の二酸化炭素濃度を検出する。目標二酸化炭素濃度は入眠後換気制御において維持したい二酸化炭素濃度であり、例えば、2500ppm、2000ppm、または1000ppmであってもよい。
【0110】
覚醒防止タイマが起動されていないと判定する場合の換気ファン13の回転数の初期値は、部屋の二酸化炭素濃度を、目標二酸化炭素濃度に近づけるために設定される回転数である。
【0111】
図7は、二酸化炭素濃度の濃度差と換気ファン13の回転数の増減との関係を示すグラフである。
図7において、二酸化炭素濃度の濃度差とは、検出した部屋の二酸化炭素濃度から、目標二酸化炭素濃度を引いた値である。換気ファン13の回転数の増減は、現在の換気ファン13の回転数に対する、回転数の増加数または減少数を示す。本実施の形態では、
図7のグラフに基づいて、目標二酸化炭素濃度と部屋の二酸化炭素濃度との濃度差から、換気ファン13の回転数を算出する。
【0112】
入眠後換気制御が実行されていて覚醒防止タイマが起動されていない場合、目標二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の初期値が設定される。また、通常換気制御が実行されている場合、同じまたは異なる目標二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の目標回転数が設定される。
【0113】
仮に、入眠後換気制御が実行されていて覚醒防止タイマが起動されていない場合、設定された目標二酸化炭素濃度が1450ppmで、検出された部屋の二酸化炭素濃度が1700ppmであるとする。この場合、二酸化炭素の濃度差は、「1700ppm-1450ppm=+250ppm」である。よって、換気ファン13を、現在の回転数に対して1500rpm上乗せした回転数で動かすことで、部屋の二酸化炭素濃度を目標二酸化炭素濃度に近づけることができる。例えば、現在の換気ファン13の回転数が4000rpmである場合、換気ファン13の目標回転数は「4000rpm+1500rpm=5500rpm」に設定される。
【0114】
これにより、覚醒防止タイマによる換気処理は完了する。簡略に言うと、制御部14は、ユーザが覚醒しそうと判定するときに覚醒防止タイマを起動し、覚醒防止タイマが満了したときまたはユーザが覚醒したと判定するときに覚醒防止タイマを停止する。また、ユーザを覚醒させずに覚醒防止タイマが満了すると、換気ファン13の回転数を上昇させる。覚醒防止タイマを利用すれば、ユーザが覚醒しやすい時間にわたって換気ファン13を比較的静かに動作させるとともに、当該時間が過ぎたら換気ファン13の回転数を高くすることによって元の回転数に戻して二酸化炭素濃度を下げることができる。すなわち、より精確な換気制御を行うことができる。
【0115】
また、覚醒防止タイマが起動中か否かに基づいて、低下させた回転数、または二酸化炭素濃度による回転数を初期値として設定することによって、より適切な換気制御を行うことができる。また、二酸化炭素センサを用いる制御によって、部屋の二酸化炭素濃度を適切な値に維持しつつ、換気ファン13の騒音を抑制して、ユーザの睡眠を妨げることを改善することができる。
【0116】
《実施の形態4》
<覚醒回数に基づいて回転数を低下させる換気制御>
実施の形態4において、睡眠モードにおける覚醒回数をカウントし、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定するときに覚醒回数に基づいて回転数を段階的に低下させる。このように回転数を低下させれば、ユーザの覚醒の繰り返しを抑制することができる。
【0117】
実施の形態4の回転数を低下させる制御は、実施の形態1~3で説明した制御と組み合わせることができる。例えば、実施の形態2の入眠前換気制御および入眠後換気制御と、実施の形態3の覚醒防止タイマおよび二酸化炭素センサと組み合わせることができる。
【0118】
図8は、実施の形態4における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャートである。
図8におけるステップS610~ステップS630、ステップS100、およびステップS200の内容は、実施の形態3の
図5におけるステップS530~ステップS550、ステップS100、およびステップS200と同様なので、ここで重複する説明を割愛する。そして、実施の形態4では、入眠後換気制御がステップS630、ステップS640およびステップS100~ステップS300を含む。
【0119】
入眠後換気制御において、制御部14は、ユーザの覚醒状態を判定し(ステップS100)、さらに、ユーザが覚醒した状態であるか、覚醒しそうな状態であるかをさらに判定する(ステップS630、S200)。ここで、ステップS630とステップS200とを合併して1つのステップ内でユーザの覚醒状態を判定してもよい。
【0120】
ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、制御部14は、覚醒回数をカウントし(ステップS640)、入眠前換気制御に切り替える(ステップS620)。すなわち、睡眠モードにおいて、ユーザが覚醒したと判定する度に覚醒回数を積算する。そして、制御部14は、ステップS300において、覚醒回数に基づいて換気ファン13の回転数を低下させる。1つの実施例において、制御部14は所定の基準低下量と現在の覚醒回数とを乗算することによって、回転数低下量を算出する。制御部14は、現在運転中の換気ファン13の回転数から回転数低下量を減算した回転数まで換気ファン13の回転数を低下させる。基準低下量は、例えば、300rpm、500rpm、または1000rpmであってもよい。
【0121】
仮に、覚醒防止タイマが起動中で、覚醒回数が1回であり、現在運転中の換気ファン13の回転数が5500rpmであり、基準低下量が500rpmである。制御部14は、ユーザが覚醒しそうな状態と判定するとき、換気ファン13の回転数を、初期値の5500rpmから、「500rpm×1=500rpm」低下させ、「5500rpm-500rpm=5000rpm」に設定する。そして、制御部14は入眠後換気制御で5000rpmの回転数で換気ファン13に回転させる。回転数を低下させたため、ユーザが換気による騒音で覚醒する可能性が低くなる。なお、実施の形態3のステップS570(
図5)と同様に、制御部14はユーザが覚醒しそうな状態と判定するとき、覚醒防止タイマを起動する。
【0122】
もしユーザは覚醒防止タイマが満了するまで覚醒しなかったら、ユーザは覚醒やすい状態から脱出したと考えられるため、制御部14は、
図5のステップS580のように、回転数を入眠後上限回転数まで上昇させてもよい。もし5000rpmの回転数で回転する換気ファン13による騒音で覚醒防止タイマが満了するまでにユーザが覚醒する場合、制御部14は覚醒回数を2にカウントし、覚醒防止タイマを停止し、入眠前換気制御に切り替える。仮に覚醒回数が2、3または4回の場合、回転数低下量は1000rpm、1500rpmまたは2000rpmとなる。よって、5500rpmから低下された回転数は4500rpm、4000rpmまたは3500rpmとなる。
【0123】
1つの実施例において、制御部14は、睡眠モードが解除されたと判定するとき、覚醒回数をリセットする(ゼロにする)。例えば、ユーザが夜に睡眠モードに設定し就寝してから、翌日の朝に起きて睡眠モードを解除するまでの間の覚醒回数が制御部14によってカウントされる。この実施例において、(毎晩)睡眠モードの実行ごとに覚醒回数がリセットされるため、昨夜の覚醒回数は今夜の入眠後換気制御に影響を及ぼさない。
【0124】
カウントのリセットについて、もう1つの実施例において、少なくとも複数回の睡眠モードの実行にわたって覚醒回数はリセットされずに積算され続ける。この実施例において、制御部14はステップS300において1回の睡眠モードの覚醒回数の平均値を用いて回転数を低下させてもよい。
【0125】
これにより、ユーザの覚醒回数のカウントに基づく処理は完了する。ユーザの覚醒回数に応じて換気ファンの回転数を低下させることによって、ユーザが何回も覚醒することを抑制することができる。また、睡眠モードごとに覚醒回数のカウントをリセットすれば、異なる睡眠イベントの換気制御が互いに干渉せず、制御部14は覚醒防止タイマを介して換気制御をより精確に行うことができる。
【0126】
《実施の形態5》
<入眠後上限回転数を低下させる換気制御>
実施の形態5において、入眠後上限回転数を低下させることによって、最後に換気ファン13に出力する回転数を制限する。例えば、制御部14は入眠後上限回転数を段階的に低下させてもよい。このように低下させれば、ユーザの覚醒の繰り返しを抑制することができる。
【0127】
実施の形態5の回転数および入眠後上限回転数を低下させる制御は、実施の形態1~3で説明した制御と組み合わせることができる。例えば、実施の形態2の入眠前換気制御および入眠後換気制御と、実施の形態3の覚醒防止タイマおよび二酸化炭素センサと組み合わせることができる。
【0128】
図9は、実施の形態5における空気調和システムを制御する方法の一例のフローチャートである。
図9におけるステップS710~ステップS730、ステップS100、およびステップS200の内容は、実施の形態4の
図8におけるステップS610~ステップS630、ステップS100、およびステップS200と同様なので、ここで重複する説明を割愛する。そして、実施の形態5では、入眠後換気制御がステップS730、ステップS740およびステップS100~ステップS300を含む点で、およびステップS300の内容で実施の形態4と異なる。
【0129】
実施の形態4と同様に、入眠後換気制御において、制御部14は、ユーザの覚醒状態を判定し(ステップS100)、さらに、ユーザが覚醒したか、覚醒しそうな状態であるかをさらに判定する(ステップS730、S200)。ここで、ステップS730とステップS200とを合併して1つのステップ内でユーザの覚醒状態を判定してもよい。
【0130】
ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、制御部14は、入眠後上限回転数を覚醒時の換気ファン13の回転数に設定し(ステップS740)、入眠前換気制御に切り替える(ステップS720)。すなわち、ユーザが覚醒した状態であると判定する場合、制御部14は現在運転中の換気ファン13の回転数を新たな入眠後上限回転数とする。
【0131】
制御部14は、ユーザが覚醒しそうな状態であると判定する度に回転数を低下させる(ステップS300)。例えば、回転数を、段階的に低下させてもよく、所定の固定値まで低下させてもよく、覚醒状態または取得した体動に応じてどれだけ低下させるかを決定してもよい。このように低下される回転数は、ステップS740において入眠後上限回転数に設定される。
【0132】
1つの実施例において、制御部14は、睡眠モードが解除されたと判定するとき、入眠後上限回転数をリセットし、入眠後上限回転数を初期値(例えば、6000rpm)に戻す。
【0133】
仮に、ユーザが覚醒しそうな状態と判定する場合、ステップS300においては現在運転中の換気ファン13の回転数を1000rpm低下させる。繰り返す入眠後換気制御のうち、ユーザが覚醒しそうな状態と判定するとき、換気ファン13の回転数を6000rpmから5000rpmに低下させ、覚醒防止タイマを起動する。その後、ユーザが覚醒しそうな状態と判定するとき、制御部14は入眠後上限回転数を覚醒時の換気ファン13の回転数(5000rpm)に設定する。入眠後上限回転数がリセットされるまで、入眠後換気制御において換気ファン13の回転数は低下された入眠後上限回転数に制限される。さらに具体的にいうと、入眠後上限回転数を第1上限回転数(
図4のステップS320)にして、換気ファン13に出力する回転数を制限することができる。
【0134】
本実施の形態において、低下させた入眠後上限回転数で入眠後換気制御を行う。そして、回転数の初期値が二酸化炭素濃度によって決定するとき、入眠後上限回転数と関連する第2上限回転数を用いてさらに当該初期値を制限してもよい。
図10は、実施の形態5における空気調和システムを制御する方法のもう一例のフローチャートである。
【0135】
図10におけるステップS820~ステップS850、およびステップS100~ステップS300の内容は、
図9におけるステップS710~ステップS740、およびステップS100~ステップS200と同様である。そして、
図10では、入眠後換気制御がステップS810およびステップS860をさらに含む点で
図9と異なる。
図10において、入眠後換気制御はS840~ステップS860およびステップS100~ステップS300を含む。
【0136】
換気制御の前に、制御部14は、部屋内の二酸化炭素濃度および第2上限回転数に基づいて、今回の換気制御における換気ファン13の回転数の初期値を設定する(ステップS810)。具体的には、実施の形態3で
図6および
図7を用いた説明のように、制御部14は、覚醒防止タイマが起動されていないと判定する場合、部屋内の二酸化炭素濃度に基づいて換気ファン13の回転数を設定することができる。ただし、入眠後換気制御において換気ファン13による騒音を抑制するために、
図10の実施例では、制御部14は、二酸化炭素濃度に基づいて設定した回転数の初期値が第2上限回転数数よりも高いか否かを判定する。当該初期値が第2上限回転数よりも高いと判定する場合、制御部14は、初期値を第2上限回転数に更新してから、更新した初期値を用いてその後のステップを行う。
【0137】
第2上限回転数は、入眠後上限回転数と同様に、ユーザが覚醒した状態と判定する場合(ステップS840で「YES」)、覚醒時の換気ファン13の回転数に設定される(ステップS860)。すなわち、第2上限回転数は入眠後上限回転数と同じ値を有する。このようにすれば、入眠後換気制御において、低下させた回転数が二酸化炭素濃度に基づく回転数の初期値に戻されることを原因として騒音の抑制が不十分な状況になることを回避することができる。
【0138】
これにより、入眠後上限回転数の低下に基づく換気制御の処理は完了する。制御部14は、入眠後換気制御において、入眠後上限回転数の設定を介して換気ファン13の回転数を低下させる。また、部屋内の二酸化炭素濃度に基づいて回転数の初期値を設定するとき、入眠後上限回転数と同じ値を有する第2上限回転数によって、より精確に入眠後換気制御を行うことができる。これによって、ユーザの覚醒の繰り返しを抑制することができる。
【0139】
以上は本開示の具体的な実施の形態に過ぎず、本開示の保護範囲はこれに限定されるものではない。本開示は図面および前述した具体的な実施の形態において前述された内容を含むが、本開示がそれらの内容に限定されるものではない。本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、開示された様々の実施の形態または実施例を組み合わせることができる。本開示の機能および構造原理から逸脱しない変更は特許請求の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0140】
10 空気調和システム
11 覚醒センサ
12 空気調和機
13 換気ファン
14 制御部
15 二酸化炭素センサ
20 操作端末