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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172739
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】移動体制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231129BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084755
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】那須 貴信
(72)【発明者】
【氏名】脇田 敏裕
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
5H301LL01
5H301LL08
5H301LL11
5H301LL12
5H301QQ02
5H301QQ06
(57)【要約】
【課題】移動体が開閉体をスムーズに通過できる技術を提供する。
【解決手段】移動体制御システム1において、経路設定部(第1経路設定部24)は、出発地から目的地までの移動体10の経路を設定する。取得部22は、経路の途中に位置する開閉体の手前に設定された経由エリアまたは経由点の情報と、経由エリアまたは経由点における開閉体を通過可能な指定方向の情報とを取得する。移動制御部28は、経路に基づいて移動体10を移動させ、移動体10が経由エリア内または経由点に到達した場合、経由エリア内または経由点において指定方向を向いた状態で移動体10を一時停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの移動体の経路を設定する経路設定部と、
前記経路の途中に位置する開閉体の手前に設定された経由エリアまたは経由点の情報と、当該経由エリアまたは当該経由点における当該開閉体を通過可能な指定方向の情報とを取得する取得部と、
前記経路に基づいて前記移動体を移動させ、当該移動体が前記経由エリア内または前記経由点に到達した場合、当該経由エリア内または当該経由点において前記指定方向を向いた状態で当該移動体を一時停止させる移動制御部と、
を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項2】
前記移動制御部は、前記移動体を一時停止させた場合、検出部により当該移動体の前方に物体が検出されなければ、前記経路に基づいて当該移動体を前進させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記移動体が一時停止してから所定の待機時間が経過しても検出部により当該移動体の前方に物体が検出されている場合、障害物が存在することを通知する通知部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を自律的に移動させる移動体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体を目標地点に向けて自律的に移動させる技術の開発が進んでいる。特許文献1は、地図情報に含まれる障害物の情報を使用して出発位置から目的地までの経路を算出する移動体の制御システムを開示する。例えば、Global Dynamic Window Approach(Global DWA)というアルゴリズムを使用し、全体的な経路計画であるグローバルパスを求め、それに基づいて局所的な動作計画であるローカルパスを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-003437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動ドアやエレベータのドア等のような一時的に通過可能な狭路を移動体が通過しようとする場合、ドアが閉じている間に移動体が経路探索することで、閉じたドアを回避するように生成された経路に沿って移動体が移動してしまい、ドアが開いた時点で通過できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、移動体が開閉体をスムーズに通過できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の移動体制御システムは、出発地から目的地までの移動体の経路を設定する経路設定部と、前記経路の途中に位置する開閉体の手前に設定された経由エリアまたは経由点の情報と、当該経由エリアまたは当該経由点における当該開閉体を通過可能な指定方向の情報とを取得する取得部と、前記経路に基づいて前記移動体を移動させ、当該移動体が前記経由エリア内または前記経由点に到達した場合、当該経由エリア内または当該経由点において前記指定方向を向いた状態で当該移動体を一時停止させる移動制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動体が開閉体をスムーズに通過できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の移動体制御システムの機能構成を示す図である。
図2図1の移動体の移動例を示す図である。
図3図2に続く、移動体の移動例を示す図である。
図4図3に続く、移動体の移動例を示す図である。
図5図3の状態で待機時間以上にわたりドアが閉じている状況を示す図である。
図6】第1比較例の移動体の移動例を示す図である。
図7図6に続く、第1比較例の移動体の移動例を示す図である。
図8】第2比較例の移動体の移動例を示す図である。
図9図8に続く、第2比較例の移動体の移動例を示す図である。
図10図9に続く、第2比較例の移動体の移動例を示す図である。
図11図10に続く、第2比較例の移動体の移動例を示す図である。
図12図1の移動体の処理を示すフローチャートである。
図13図1の移動体の別の制御による移動例を示す図である。
図14図13に続く、移動体の移動例を示す図である。
図15図14に続く、移動体の移動例を示す図である。
図16図13から図15の移動体の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施の形態の移動体制御システム1の機能構成を示す。移動体制御システム1は、移動体10および制御装置80を備える。移動体10は、建物内、または、建物外と建物内との間などを出発地から目的地まで自律的に移動する。移動体10は、車輪を有し、床、道路、または地面の上を走行する。制御装置80は、例えば、パーソナルコンピュータまたはサーバであり、移動体10と無線通信または有線通信可能に構成されている。制御装置80は、出発地と目的地の情報、出発指示などを移動体10に送信可能である。
【0010】
図2は、図1の移動体10の移動例を示す。図2は、壁40、通路42、およびエレベータ44を含む領域を示す。移動体10は、壁40で仕切られた通路42を移動し、エレベータ44内の目的地D1まで移動することを想定する。エレベータ44の入口には開閉可能なドア46が設けられている。エレベータ44のドア46は、一時的に開かれて通過可能となる開閉体の一例であり、開閉体は、自動ドア、認証式のドア、自動シャッター、認証式のシャッターなどであってもよい。図2の状態では、ドア46は閉じており、ドア46が開くまで待ち時間がある。
【0011】
移動体10は、地図情報をもとに出発地から目的地D1までの全体的な経路(図示せず)を生成し、生成した全体的な経路と、自身の検出部12で検知した周囲の物体の情報とに基づいて、経路探索を定期的に実行しながら移動し、局所的な経路を定期的に生成する。局所的な経路は、現在のサンプリング時刻から次のサンプリング時刻までの経路である。全体的な経路に沿った移動体10の進行方向に人などの障害物が検出されなければ、局所的な経路は、全体的な経路の一部に実質的に一致し得る。全体的な経路に沿った移動体10の進行方向に障害物が検出されると、障害物を避けるように局所的な経路が生成される。
【0012】
図2の例では、目的地D1までの全体的な経路に沿った移動体10の進行方向に物体としてドア46が検出されるため、移動体10は、ドア46を避けるように複数の局所的な経路P1~P3を生成する。移動体10は、生成した複数の局所的な経路P1~P3のうち所定の基準を満たす局所的な経路を選択する。所定の基準としては、公知の基準を採用でき、例えば、移動後の位置から目的地D1までの直線距離が最短となることであってよい。移動体10は、目的地D1までの距離が最短の局所的な経路P2を選択し、局所的な経路P2に沿って移動する。
【0013】
ドア46の手前には、経由エリアA1が予め設定されている。経由エリアA1には、ドア46を通過可能な指定方向が予め設定されている。指定方向は、指定された姿勢とも呼べる。
【0014】
図3は、図2に続く、移動体10の移動例を示す。移動体10は、局所的な経路P2に沿って目的地D1に向けて移動中に経由エリアA1を通過する場合、経由エリアA1内で指定方向d1を向いて一時停止する。つまり、停止した移動体10の向きd2は、指定方向d1と一致する。移動体10は、前方に物体が検出されなくなるまで、停止し続ける。
【0015】
経由エリアA1と指定方向d1は、移動体10が経由エリアA1内で指定方向d1を向いて停止した場合、開いたドア46を通過できるように予め設定される。
【0016】
図示しないエレベータ44の管制システムは、例えば、移動体10がドア46の前に到着したことが図示しないセンサで検出された場合、そのセンサが設置されたフロアにエレベータ44のかごを移動させ、ドア46を開いてもよい。あるいは、移動体10は、ドア46の前に到着すると、移動体10に設けられた図示しないアームを制御することで、ドア46の近くの壁40に設けられた操作ボタンを操作し、エレベータ44の管制システムがボタン操作に応じてエレベータ44のかごを移動させてもよい。
【0017】
図4は、図3に続く、移動体10の移動例を示す。図4では、エレベータ44のかごが到着し、ドア46が開いている。移動体10は、ドア46が開き前方に物体が検出されない場合、目的地D1に向けて移動を再開する。移動体10は、全体的な経路の一部に実質的に一致する局所的な経路P4に沿って前進する。移動体10は、一時停止位置から直進するだけで、狭路となっているドア46をスムーズに通過でき、目的地D1まで移動できる。移動体10は、目的地D1に到着すると停止する。
【0018】
なお、エレベータ44のかごが到着し、ドア46が開いても、エレベータ44内に人などが存在する場合、移動体10は、前方に物体が存在することを検出し続けるので、停止し続ける。エレベータ44から人が移動して物体が検出されなくなると、移動体10は前進する。移動体10が停止し続けることで、エレベータ44に乗っていた人が安心して外に出ることができる。
【0019】
移動体10が目的地D1に到達すると、制御装置80は、次の目的地を移動体10に指示してよい。指示を受けた移動体10は、その場で旋回してから、所定のフロアで次の目的地に向けて移動を開始する。
【0020】
図5は、図3の状態で待機時間以上にわたりドア46が閉じている状況を示す。移動体10は、一時停止してから所定の待機時間が経過しても前方に物体が検出されている場合、即ちドア46が閉じている場合、障害物が存在することを音、表示、ランプなどで周囲に通知する。移動体10は、エレベータ44または自動ドアなどの管制システムなどに通知してもよい。これにより、ドア46が開かないことを周囲の人や管制システムに知らせることができる。例えば、移動体10がドア46の前に到着したことがエレベータ44のセンサで正しく検知されなかった場合、または、移動体10がアームで壁40の操作ボタンを誤って操作した場合などに、待機時間が経過してもドア46が開かないことが想定される。このような場合であっても、通知を受けた人や管制システムがエレベータ44のかごを呼んでドア46を開くことができるので、移動体10は、ドア46をスムーズに通過でき、目的地D1まで移動できる。つまり、異常発生時にも対処できる。待機時間は、実験やシミュレーションにより適宜定めることができる。
【0021】
ここで、第1および第2比較例の移動体10xの動作を説明する。移動体10xは、経由エリアにおける制御を実行しないことが実施の形態と異なる。地図情報は図2等と同一であるとする。
【0022】
図6は、第1比較例の移動体10xの移動例を示す。移動中の経路探索の際、目的地D1までの全体的な経路に沿った移動体10xの進行方向にドア46が検出されるため、移動体10xは、ドア46を避けるように複数の局所的な経路を生成する。移動体10xは、移動後の位置から目的地D1までの距離が最短となる局所的な経路P1xを選択し、局所的な経路P1xに沿って移動する。
【0023】
図7は、図6に続く、第1比較例の移動体10xの移動例を示す。図7に示す位置に移動体10xが移動した後でドア46が開いたとする。局所的な経路P1xに沿って移動した結果、移動体10xは、ドア46が開いても通過できない方向と位置に移動している。そのため、移動体10xはドア46を通過できない。
【0024】
なお、第1比較例では、ドア46が開くタイミングが適切であった場合などに、移動体10xがドア46を通過できる可能性はある。しかし、この場合、エレベータ44内に人が乗っていた場合には人を避けて目的地D1に向けて進むように局所的な経路を生成するため、移動体10xは細かな移動を続けることが想定される。そのため、エレベータ44内の人は、いつ外に出るべきか判断しにくくなる。これに対して、実施の形態では、既述のように移動体10が停止し続けるのでエレベータ44内の人が外に出やすい。
【0025】
図8は、第2比較例の移動体10xの移動例を示す。第2比較例では、全体的な経路に沿った移動体10xの進行方向に障害物が検出されると、目的地D1に到達可能な経路が見つかるまで、移動しながら経路探索を続けることが第1比較例と異なる。図8に示すように、移動中の経路探索の際、目的地D1までの全体的な経路に沿った移動体10xの進行方向にドア46が検出されるため、移動体10xは、局所的な経路P11に沿って移動する。
【0026】
図9は、図8に続く、第2比較例の移動体10xの移動例を示す。図9の移動体10xの位置でドア46が開いたとする。移動体10xは、複数の局所的な経路を生成するが、破線で示す2つの局所的な経路は、曲がる角度が急であり経路に沿って移動できないため、局所的な経路P12に沿って移動する。
【0027】
図10は、図9に続く、第2比較例の移動体10xの移動例を示す。局所的な経路P12に沿って移動した結果、移動体10xは開いたドア46の方向を向いておらず、開いたドア46に向けて移動できないため、実線で示す局所的な経路P13に沿って移動する。
【0028】
図11は、図10に続く、第2比較例の移動体10xの移動例を示す。局所的な経路P13に沿って移動した結果、移動体10xは、壁40付近で立ち往生してしまい、目的地D1に到達できない。
【0029】
このような第1および第2比較例に対して、実施の形態では、既述のように目的地D1に容易に到着できる。
【0030】
図1に戻り、移動体10の構成を説明する。移動体10は、検出部12、処理部14、記憶部16、駆動部18、および出力部20を備える。
【0031】
検出部12は、センサを含み、移動体10の周囲の壁や歩行者などの物体の情報を定期的に検出し、検出結果を処理部14に出力する。検出部12は、移動体10から周囲の物体までの距離を測定する。検出部12は、例えば、ライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)を含み、カメラを含んでもよい。
【0032】
記憶部16は、出発地、目的地、地図情報、開閉体の情報、開閉体の手前に設定された経由エリアの情報、および経由エリアにおける開閉体を通過可能な指定方向の情報を記憶している。複数の開閉体が存在する場合、それぞれの開閉体に関する経由エリアと指定方向の情報が記憶されている。
【0033】
出発地と目的地は、地図上の座標で特定され、制御装置80から送信される。出発地は、移動体10の現在位置であってもよい。
【0034】
地図情報は、例えば、移動体10が移動すべき領域において検出部12で検出された物体の情報に基づいて作成できる。例えば、オペレータは、自律移動に先立ち、制御装置80を介して移動体10を手動で移動させ、処理部14は、移動中に検出部12で検出された情報を収集し、収集した情報に基づいて地図情報を導出してもよい。また、移動体10が移動すべき領域の壁等の障害物の位置や寸法が図面情報等により事前に分かっている場合、制御装置80または処理部14は、これを地図情報に変換してもよい。地図情報の作成には公知の技術を利用できる。
【0035】
開閉体の情報は、位置と寸法を含み、地図上の座標で特定される。開閉体の情報は、オペレータが制御装置80に入力できる。開閉体の位置や寸法が図面情報等により事前に分かっている場合、制御装置80または処理部14は、これを地図上の座標に変換してもよい。また、地図を作成後、移動体10が自律移動中に検出部12が地図にない障害物を検出した場合、処理部14は、検出された障害物を開閉体として特定してもよい。
【0036】
経由エリアと指定方向の情報は、地図上の座標で特定される。経由エリアと指定方向の情報は、オペレータが制御装置80に入力してもよいし、制御装置80により所定のアルゴリズムに従い自動で設定されてもよい。
【0037】
駆動部18は、処理部14から出力される制御信号に従い、移動体10の車輪を回転させ、移動体10を移動させる。駆動部18は、例えば、車輪を回転させるサーボモータ等を含む。
【0038】
出力部20は、表示部とスピーカの少なくともいずれかを含み、処理部14の指示に従い移動体10の周囲に通知情報を出力する。出力部20は、制御装置80またはエレベータ44等の管制システムに対して無線通信により通知情報を出力してもよい。
【0039】
処理部14は、取得部22、第1経路設定部24、第2経路設定部26、移動制御部28、および通知部30を備える。処理部14の構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0040】
取得部22は、地図情報と開閉体の情報を記憶部16から取得し、取得した情報を第1経路設定部24と第2経路設定部26に供給する。
【0041】
第1経路設定部24は、自律移動に先立ち、地図から開閉体を除いた状態で、地図情報に基づいて出発地から目的地までの移動体10の全体的な経路を設定し、設定した経路の情報を取得部22と第2経路設定部26に供給する。第1経路設定部24は、壁などの障害物を回避しつつ、移動距離が最短となる全体的な経路を設定してよい。第1経路設定部24は、グローバルプランナとも呼べる。
【0042】
取得部22は、第1経路設定部24で設定された全体的な経路の途中に位置する開閉体の手前に設定された経由エリアの情報と、当該経由エリアにおける指定方向の情報とを記憶部16から取得し、取得した情報を第2経路設定部26に供給する。
【0043】
第2経路設定部26は、移動体10の自律移動中に定期的に経路探索を行い、全体的な経路に基づいて、検出部12で検出された前方の物体を避けるように局所的な経路を定期的に設定し、設定した経路の情報を移動制御部28に定期的に供給する。第2経路設定部26は、ローカルプランナとも呼べる。
【0044】
第2経路設定部26は、例えば、(1)移動後の位置から全体的な経路までの距離、(2)移動後の位置から目的地までの距離、(3)移動後の位置から障害物までの距離のそれぞれに所定の重み付けパラメータを乗じ、得られた値の総和が最小となる局所的な経路を決定してもよい。既述のように、移動体10の近くに障害物が検出されなければ、局所的な経路は全体的な経路の一部に実質的に重なり得る。
【0045】
全体的な経路と局所的な経路の設定には、公知の技術を利用できる。局所的な経路の設定には、Global DWAを利用してもよい。
【0046】
移動制御部28は、駆動部18を制御することで、第2経路設定部26で設定された局所的な経路に沿って移動体10を移動させる。この処理は、移動制御部28が、全体的な経路に基づいて移動体10を移動させることに相当する。
【0047】
第2経路設定部26は、移動体10が経由エリア内に到達した場合、移動体10が経由エリア内において指定方向を向くように局所的な経路を設定する。移動体10の所定の基準位置が経由エリア内に位置する場合、移動体10が経由エリア内に位置するとみなす。
【0048】
移動制御部28は、移動体10が経由エリア内に到達した場合、第2経路設定部26で設定された局所的な経路に沿って移動体10を移動させ、経由エリア内において指定方向を向いた状態で移動体10を一時停止させる。
【0049】
移動制御部28は、経由エリア内で移動体10を一時停止させた場合、検出部12により移動体10の前方に物体が検出されなければ、全体的な経路に基づいて移動体10を前進させる。
【0050】
通知部30は、移動体10が経由エリア内で一時停止してから所定の待機時間が経過しても検出部12により移動体10の前方に物体が検出されている場合、出力部20を介して、障害物が存在することを周囲の人などに通知する。
【0051】
次に、移動体制御システム1の全体の動作を説明する。図12は、図1の移動体10の処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置80から出発地と目的地の情報および出発指示が移動体10に送信されると開始される。
【0052】
取得部22は、記憶部16から地図情報と開閉体の位置情報とを取得する(S10)。第1経路設定部24は、地図から開閉体を除いた状態で目的地までの全体的な経路を設定する(S12)。取得部22は、記憶部16から経由エリアと指定方向の情報を取得する(S14)。移動制御部28は、全体的な経路に基づいて移動体10を移動させる(S16)。目的地に到着した場合(S18のY)、移動制御部28は、移動体10を停止させ(S32)、処理を終了する。
【0053】
目的地に到着していない場合(S18のN)、経由エリアに到達していなければ(S20のN)、S16に戻る。経由エリアに到達した場合(S20のY)、移動制御部28は、経由エリア内で指定方向を向いた状態で移動体10を一時停止させる(S22)。前方に物体がなければ(S24のN)、S16に戻る。
【0054】
前方に物体がある場合(S24のY)、一時停止してから待機時間が経過していなければ(S26のN)、S24に戻る。待機時間が経過した場合(S26のY)、通知部30は周囲などに通知し(S28)、前方に物体があれば(S30のY)、S28に戻る。前方に物体がなければ(S30のN)、S16に戻る。
【0055】
実施の形態によれば、エレベータ44のドア46や自動ドアなどの開閉体の手前に経由エリアA1と指定方向d1を設定し、移動体10を経由エリアA1内において指定方向d1を向いた状態で一時停止させるので、開閉体が開いた場合、移動体10は開閉体をスムーズに通過できる。
【0056】
(別の制御例)
次に、移動体10の別の制御について説明する。以下、既述の制御を第1の制御と呼び、別の制御を第2の制御とも呼ぶ。第2の制御では、経由エリアに代えて経由点を用いることが第1の制御と異なる。以下、第1の制御との相違点を中心に説明する。
【0057】
図13は、図1の移動体10の別の制御による移動例を示す。移動体10は、地図情報をもとに出発地から目的地D1までの全体的な経路P20を生成し、生成した全体的な経路P20上のドア46の手前に経由点p1を設定し、経由点p1にドア46を通過可能な指定方向d21を設定する。
【0058】
移動体10は、生成した全体的な経路P20と、検出部12で検知した周囲の物体の情報とに基づいて、移動中に経路探索を定期的に実行し、経由点p1までの局所的な経路を定期的に生成する。
【0059】
図13の例では、経由点p1までの全体的な経路P20に沿った移動体10の進行方向に物体が検出されないため、移動体10は、全体的な経路P20に実質的に重なる局所的な経路P21を生成し、選択する。移動体10は、局所的な経路P21に沿って移動する。
【0060】
図14は、図13に続く、移動体10の移動例を示す。移動体10は、局所的な経路P21に沿って移動して経由点p1に到達すると、経由点p1で指定方向d21を向いて一時停止する。つまり、停止した移動体10の向きd22は、指定方向d21と一致する。移動体10は、その場で旋回できるとする。
【0061】
図15は、図14に続く、移動体10の移動例を示す。図15では、エレベータ44のかごが到着し、ドア46が開いている。移動体10は、前方に物体が検出されない場合、目的地D1に向けて移動を再開する。移動体10は、全体的な経路の一部に実質的に一致する局所的な経路P22に沿って前進する。これにより、移動体10は、狭路となっているドア46をスムーズに通過でき、目的地D1まで移動できる。移動体10は、目的地D1に到達すると停止する。
【0062】
第2の制御における移動体10の各部の機能を説明する。
取得部22は、第1経路設定部24で設定された全体的な経路の途中に位置する開閉体の手前において全体的な経路上に経由点を設定し、設定された経由点における開閉体を通過可能な指定方向を設定し、設定した情報を取得する。取得部22は、取得した経由点の情報と、当該経由点における指定方向の情報とを第2経路設定部26に出力する。目的地までに複数の開閉体が存在する場合、取得部22は、それぞれの開閉体に関して経由点と指定方向を設定する。
【0063】
第2経路設定部26は、移動体10の自律移動中に定期的に経路探索を行い、全体的な経路に基づいて、検出部12で検出された前方の物体を避けるように経由点までの局所的な経路を定期的に設定し、設定した経路の情報を移動制御部28に定期的に供給する。第2経路設定部26は、移動体10が経由点に到達した場合、当該経由点から目的地までの間に次の経由点が存在しない場合、目的地までの局所的な経路を定期的に設定する。
【0064】
移動制御部28は、移動体10が経由点に到達した場合、移動体10を旋回させ、経由点において指定方向を向いた状態で移動体10を一時停止させる。
【0065】
図16は、図13から図15の移動体10の処理を示すフローチャートである。この処理は、目的地までに経由点が1つ存在する場合の例である。
【0066】
取得部22は、記憶部16から地図情報と開閉体の位置情報とを取得する(S40)。第1経路設定部24は、地図から開閉体を除いた状態で目的地までの全体的な経路を設定する(S42)。取得部22は、全体的な経路上の経由点と指定方向の情報を取得する(S44)。移動制御部28は、全体的な経路に基づいて経由点に向けて移動体10を移動させる(S46)。
【0067】
経由点に到達していない場合(S48のN)、S46に戻る。経由点に到達した場合(S48のY)、移動制御部28は、経由点で指定方向を向いた状態で移動体10を一時停止させる(S50)。
【0068】
前方に物体がなければ(S52のN)、移動制御部28は、全体的な経路に基づいて目的地に向けて移動体10を移動させる(S54)。目的地に到着していない場合(S56のN)、S54に戻る。目的地に到着した場合(S56のY)、移動制御部28は、移動体10を停止させ(S58)、処理を終了する。
【0069】
S52で前方に物体がある場合(S52のY)、一時停止してから待機時間が経過していなければ(S60のN)、S52に戻る。待機時間が経過した場合(S60のY)、通知部30は周囲などに通知し(S62)、前方に物体があれば(S64のY)、S62に戻る。前方に物体がなければ(S64のN)、S54に移る。
【0070】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態はあくまでも例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0071】
例えば、実施の形態の取得部22、第1経路設定部24、第2経路設定部26、移動制御部28、および通知部30は、移動体10に替えて制御装置80が備えてもよい。この場合、移動体10は、制御装置80と通信する通信部を備え、検出部12で検出された情報を通信部を介して制御装置80に送信し、制御装置80の移動制御部28から出力される制御情報を通信部を介して受信し、受信した制御情報に従い駆動部18が移動体10を移動させる。この変形例では、移動体制御システム1の構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0072】
1…移動体制御システム、10…移動体、12…検出部、14…処理部、16…記憶部、18…駆動部、20…出力部、22…取得部、24…第1経路設定部、26…第2経路設定部、28…移動制御部、30…通知部、80…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16