(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172742
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】距離画像撮像装置、及び距離画像撮像方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/894 20200101AFI20231129BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01S17/894
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084758
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山本 和人
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 知行
(72)【発明者】
【氏名】中込 友洋
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA07
2F112CA12
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA33
2F112GA01
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB04
5J084CA03
5J084CA20
5J084CA65
5J084EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチパス反射光RLmの影響を抑制する。
【解決手段】被写体OBに光パルスPOを照射する光源部2と、二次元マトリクス状に複数配置された画素回路と画素駆動回路と電荷排出手段を有する受光部3と、前記電荷蓄積部の各々に蓄積される電荷量に基づいて前記被写体OBまでの距離を算出する距離演算部42と、を備え、光パルスPOは、複数のドット光により構成される構造化光であり、前記距離演算部42は、直接反射光RLdを受光する第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される第1電荷量から、前記第1画素回路の周辺に位置し前記直接反射光RLdを受光しない第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量に基づく第2電荷量を減算した値を用いて、前記被写体OBまでの距離を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に光パルスを照射する光源部と、
入射した光に応じた電荷を発生する光電変換素子及び前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部を具備する二次元マトリクス状に複数配置された画素回路と、前記光パルスの照射に同期させた蓄積タイミングで前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を振り分けて蓄積させる画素駆動回路と、前記蓄積タイミングでない期間において前記電荷を排出する電荷排出手段を有する受光部と、
前記電荷蓄積部の各々に蓄積される電荷量に基づいて前記被写体までの距離を算出する距離演算部と、
を備え、
前記光パルスは、複数のドット光により構成される構造化光であり、
前記距離演算部は、直接反射光を受光する第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される第1電荷量から、前記第1画素回路の周辺に位置し前記直接反射光を受光しない第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量に基づく第2電荷量を減算した値を用いて、前記被写体までの距離を算出する、
距離画像撮像装置。
【請求項2】
前記距離演算部は、複数の前記第2画素回路の各々にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量を用いて前記第2電荷量を算出する、
請求項1に記載の距離画像撮像装置。
【請求項3】
前記距離演算部は、複数の前記第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量のうち、最も電荷量が多い前記電荷蓄積部を有する前記第1画素回路の位置を基準として、前記基準とした位置から対角方向に1画素以上離れた箇所に位置する前記画素回路を前記第2画素回路として選択する、
請求項1又は請求項2に記載の距離画像撮像装置。
【請求項4】
前記距離演算部は、複数の前記第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量のうち、最も電荷量が多い前記電荷蓄積部を有する前記第1画素回路の位置を基準として、
前記基準とした位置から垂直又は水平方向に1画素以上離れた箇所に位置する前記画素回路を前記第2画素回路として選択する、
請求項1又は請求項2に記載の距離画像撮像装置。
【請求項5】
前記距離演算部は、前記第2画素回路が配置されている位置に応じて前記第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量を重みづけした値を用いて前記第2電荷量を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の距離画像撮像装置。
【請求項6】
前記距離演算部は、複数の前記第2画素回路を用いる場合において、隣接する前記画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量の差が閾値以上である場合、前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量が多い前記画素回路を前記第2画素回路として選択しない、
請求項1又は請求項2に記載の距離画像撮像装置。
【請求項7】
被写体に光パルスを照射する光源部と、入射した光に応じた電荷を発生する光電変換素子及び前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部を具備する二次元マトリクス状に複数配置された画素回路と、前記光パルスの照射に同期させた蓄積タイミングで前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を振り分けて蓄積させる画素駆動回路と、前記蓄積タイミングでない期間において前記電荷を排出する電荷排出手段を有する受光部と、前記電荷蓄積部の各々に蓄積される電荷量に基づいて前記被写体までの距離を算出する距離演算部と、
を備える距離画像撮像装置が行う距離画像撮像方法であって、
前記光パルスは、複数のドット光により構成される構造化光であり、
前記距離演算部は、直接反射光を受光する第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される第1電荷量から、前記第1画素回路の周辺に位置し前記直接反射光を受光しない第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量に基づく第2電荷量を減算した値を用いて、前記被写体までの距離を算出する、
距離画像撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離画像撮像装置、及び距離画像撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の速度が既知であることを利用し、空間(測定空間)における光の飛行時間に基づいて測定器と対象物との距離を測定する、タイム・オブ・フライト(Time of Flight、以下「TOF」という)方式の距離画像撮像装置が実現されている(例えば、特許文献1参照)。このような距離画像撮像装置では、光パルスを照射した時点から被写体に反射した反射光が戻ってくるまでの遅延時間を、反射光を撮像素子に入射させて反射光の光量に応じた電荷を複数の電荷蓄積部に振り分けて蓄積させることによって求め、遅延時間と光速とを用いて被写体までの距離を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮像素子には光源から被写体に反射して直接入射される光(直接反射光)だけでなく、床面や壁から被写体への反射を経て入射される光(マルチパス反射光)が含まれる。このマルチパス反射光は、床面や壁に反射した後に撮像素子に到達するため光路長が直接反射光より長く、直接反射光より遅れて撮像素子に入射される。そのため、撮像素子にマルチパス反射光が入射することにより、精度よく距離を演算することができなくなる恐れがある。しかも、撮像素子には、直接反射光とマルチパス反射光が混ざり合った光が入射される。このため、電荷蓄積部に蓄積された電荷量から直接反射光の成分のみを抽出することは困難である。特に、距離画像撮像装置から遠く離れた位置にある被写体(遠距離物体)までの距離を測定しようとした場合、光パルスが被写体に照射されるまでに拡散される傾向にあるため、近くにある被写体(近距離物体)までの距離を測定する場合よりマルチパス反射光の影響が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、マルチパス反射光の影響を抑制することができる距離画像撮像装置、及び距離画像撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の距離画像撮像装置は、被写体に光パルスを照射する光源部と、入射した光に応じた電荷を発生する光電変換素子及び前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部を具備する二次元マトリクス状に複数配置された画素回路と、前記光パルスの照射に同期させた蓄積タイミングで前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を振り分けて蓄積させる画素駆動回路と、前記蓄積タイミングでない期間において前記電荷を排出する電荷排出手段を有する受光部と、前記電荷蓄積部の各々に蓄積される電荷量に基づいて前記被写体までの距離を算出する距離演算部と、を備え、前記光パルスは、複数のドット光により構成される構造化光であり、前記距離演算部は、直接反射光を受光する第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される第1電荷量から、前記第1画素回路の周辺に位置し前記直接反射光を受光しない第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量に基づく第2電荷量を減算した値を用いて、前記被写体までの距離を算出する。
【0007】
本発明の距離画像撮像装置では、前記距離演算部は、複数の前記第2画素回路の各々にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量を用いて前記第2電荷量を算出する。
【0008】
本発明の距離画像撮像装置では、前記距離演算部は、複数の前記第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量のうち、最も電荷量が多い前記電荷蓄積部を有する前記第1画素回路の位置を基準として、前記基準とした位置から対角方向に1画素以上離れた箇所に位置する前記画素回路を前記第2画素回路として選択する。
【0009】
本発明の距離画像撮像装置では、前記距離演算部は、複数の前記第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量のうち、最も電荷量が多い前記電荷蓄積部を有する前記第1画素回路の位置を基準として、記基準とした位置から垂直又は水平方向に1画素以上離れた箇所に位置する前記画素回路を前記第2画素回路として選択する。
【0010】
本発明の距離画像撮像装置では、前記距離演算部は、前記第2画素回路が配置されている位置に応じて前記第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量を重みづけした値を用いて前記第2電荷量を算出する。
【0011】
本発明の距離画像撮像装置では、前記距離演算部は、複数の前記第2画素回路を用いる場合において、隣接する前記画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量の差が閾値以上である場合、前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量が多い前記画素回路を前記第2画素回路として選択しない。
【0012】
本発明の距離画像撮像方法は、被写体に光パルスを照射する光源部と、入射した光に応じた電荷を発生する光電変換素子及び前記電荷を蓄積するN個(N≧3)の電荷蓄積部を具備する二次元マトリクス状に複数配置された画素回路と、前記光パルスの照射に同期させた蓄積タイミングで前記電荷蓄積部のそれぞれに前記電荷を振り分けて蓄積させる画素駆動回路と、前記蓄積タイミングでない期間において前記電荷を排出する電荷排出手段を有する受光部と、前記電荷蓄積部の各々に蓄積される電荷量に基づいて前記被写体までの距離を算出する距離演算部と、を備える距離画像撮像装置が行う距離画像撮像方法であって、前記光パルスは、複数のドット光により構成される構造化光であり、前記距離演算部は、直接反射光を受光する第1画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される第1電荷量から、前記第1画素回路の周辺に位置し前記直接反射光を受光しない第2画素回路にある前記電荷蓄積部に蓄積される電荷量に基づく第2電荷量を減算した値を用いて、前記被写体までの距離を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マルチパス反射光の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の距離画像撮像装置1の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の距離画像センサ32の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の画素321の構成の一例を示す回路図である。
【
図4】実施形態の直接反射光RLdとマルチパス反射光RLmを説明する図である。
【
図5】実施形態の受光領域320に受光される光の例を示す図である。
【
図6A】実施形態の直接反射光RLdを受光した画素321の例を示す図である。
【
図6B】実施形態の直接反射光RLdを受光しない画素321の例を示す図である。
【
図7】実施形態の重み付け処理を説明する図である。
【
図8A】実施形態の受光領域320に受光される光の例を示す図である。
【
図8B】
図8Aにおける画素321ごとに受光される光量の変化を示す図である。
【
図9】実施形態の距離画像撮像装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の距離画像撮像装置を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、実施形態の距離画像撮像装置の概略構成を示すブロック図である。距離画像撮像装置1は、例えば、光源部2と、受光部3と、距離画像処理部4とを備える。
図1には、距離画像撮像装置1において距離を測定する対象物である被写体OBも併せて示している。
【0017】
光源部2は、距離画像処理部4からの制御に従って、距離画像撮像装置1において距離を測定する対象の被写体OBが存在する測定対象の空間に光パルスPOを照射する。光源部2は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの面発光型の半導体レーザーモジュールである。光源部2は、光源装置21と、拡散板22とを備える。
【0018】
光源装置21は、被写体OBに照射する光パルスPOとなる近赤外の波長帯域(例えば、波長が850nm~940nmの波長帯域)のレーザー光を発光する光源である。光源装置21は、例えば、半導体レーザー発光素子である。光源装置21は、タイミング制御部41からの制御に応じて、パルス状のレーザー光を発光する。
【0019】
拡散板22は、光源装置21が発光した近赤外の波長帯域のレーザー光を、被写体OBに照射する面の広さに拡散する光学部品である。拡散板22が拡散したパルス状のレーザー光が、光パルスPOとして出射され、被写体OBに照射される。
【0020】
受光部3は、距離画像撮像装置1において距離を測定する対象の被写体OBによって反射された光パルスPOの反射光RLを受光し、受光した反射光RLに応じた画素信号を出力する。受光部3は、レンズ31と、距離画像センサ32とを備える。
【0021】
レンズ31は、入射した反射光RLを距離画像センサ32に導く光学レンズである。レンズ31は、入射した反射光RLを距離画像センサ32側に出射して、距離画像センサ32の受光領域に備えた画素に受光(入射)させる。
【0022】
距離画像センサ32は、距離画像撮像装置1に用いられる撮像素子である。距離画像センサ32は、二次元の受光領域に複数の画素を備える。距離画像センサ32のそれぞれの画素の中に、1つの光電変換素子と、この1つの光電変換素子に対応する複数の電荷蓄積部と、それぞれの電荷蓄積部に電荷を振り分ける構成要素とが設けられる。つまり、画素は、複数の電荷蓄積部に電荷を振り分けて蓄積させる振り分け構成の撮像素子である。
【0023】
距離画像センサ32は、タイミング制御部41からの制御に応じて、光電変換素子が発生した電荷をそれぞれの電荷蓄積部に振り分ける。また、距離画像センサ32は、電荷蓄積部に振り分けられた電荷量に応じた画素信号を出力する。距離画像センサ32には、複数の画素が二次元の行列状に配置されており、それぞれの画素の対応する1フレーム分の画素信号を出力する。
【0024】
距離画像処理部4は、距離画像撮像装置1を制御し、被写体OBまでの距離を算出する。距離画像処理部4は、タイミング制御部41と、距離演算部42と、測定制御部43とを備える。
【0025】
タイミング制御部41は、測定制御部43の制御に応じて、測定に要する様々な制御信号を出力するタイミングを制御する。ここでの様々な制御信号とは、例えば、光パルスPOの照射を制御する信号、反射光RLを複数の電荷蓄積部に振り分けて蓄積させる信号、1フレームあたりの蓄積回数を制御する信号などである。蓄積回数とは、電荷蓄積部CS(
図3参照)に電荷を振り分けて蓄積させる処理を繰返す回数である。この蓄積回数と、電荷を振り分けて蓄積させる処理1回あたりに各電荷蓄積部に電荷を蓄積させる時間幅(蓄積時間幅)の積が露光時間となる。
【0026】
距離演算部42は、距離画像センサ32から出力された画素信号に基づいて、被写体OBまでの距離を演算した距離情報を出力する。距離演算部42は、複数の電荷蓄積部に蓄積された電荷量に基づいて、光パルスPOを照射してから反射光RLを受光するまでの遅延時間を算出する。距離演算部42は、算出した遅延時間に応じて被写体OBまでの距離を算出する。
【0027】
測定制御部43は、タイミング制御部41を制御する。例えば、測定制御部43は、1フレームの蓄積回数及び蓄積時間幅を設定し、設定した内容で撮像が行われるようにタイミング制御部41を制御する。
【0028】
このような構成によって、距離画像撮像装置1では、光源部2が被写体OBに照射した近赤外の波長帯域の光パルスPOが被写体OBによって反射された反射光RLを受光部3が受光し、距離画像処理部4が、被写体OBとの距離を測定した距離情報を出力する。
【0029】
なお、
図1においては、距離画像処理部4を距離画像撮像装置1の内部に備える構成の距離画像撮像装置1を示しているが、距離画像処理部4は、距離画像撮像装置1の外部に備える構成要素であってもよい。
【0030】
ここで、
図2を用いて、距離画像撮像装置1において撮像素子として用いられる距離画像センサ32の構成について説明する。
図2は、実施形態の距離画像撮像装置1に用いられる撮像素子(距離画像センサ32)の概略構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、距離画像センサ32は、例えば、複数の画素321が配置された受光領域320と、制御回路322と、振り分け動作を有した垂直走査回路323と、水平走査回路324と、画素信号処理回路325とを備える。
【0032】
受光領域320は、複数の画素321が配置された領域であって、
図2では、8行8列に二次元の行列状に配置された例を示している。画素321は、受光した光量に相当する電荷を蓄積する。制御回路322は、距離画像センサ32を統括的に制御する。制御回路322は、例えば、距離画像処理部4のタイミング制御部41からの指示に応じて、距離画像センサ32の構成要素の動作を制御する。なお、距離画像センサ32に備えた構成要素の制御は、タイミング制御部41が直接行う構成であってもよく、この場合、制御回路322を省略することも可能である。
【0033】
垂直走査回路323は、制御回路322からの制御に応じて、受光領域320に配置された画素321を行ごとに制御する回路である。垂直走査回路323は、画素321の電荷蓄積部CSそれぞれに蓄積された電荷量に応じた電圧信号を画素信号処理回路325に出力させる。この場合、垂直走査回路323は、光電変換素子により変換された電荷を画素321の電荷蓄積部それぞれに振り分けて蓄積させる。つまり、垂直走査回路323は、「画素駆動回路」の一例である。
【0034】
画素信号処理回路325は、制御回路322からの制御に応じて、それぞれの列の画素321から対応する垂直信号線に出力された電圧信号に対して、予め定めた信号処理(例えば、ノイズ抑圧処理やA/D変換処理など)を行う回路である。
【0035】
水平走査回路324は、制御回路322からの制御に応じて、画素信号処理回路325から出力される信号を、水平信号線に順次出力させる回路である。これにより、1フレーム分蓄積された電荷量に相当する画素信号が、水平信号線を経由して距離画像処理部4に順次出力される。
【0036】
以下では、画素信号処理回路325がA/D変換処理を行い、画素信号がデジタル信号であるものとして説明する。
【0037】
ここで、
図3を用いて、距離画像センサ32に備える受光領域320内に配置された画素321の構成について説明する。
図3は、実施形態の距離画像センサ32の受光領域320内に配置された画素321の構成の一例を示す回路図である。
図3には、受光領域320内に配置された複数の画素321のうち、1つの画素321の構成の一例を示している。画素321は、3個の画素信号読み出し部を備えた構成の一例である。
【0038】
画素321は、1個の光電変換素子PDと、ドレインゲートトランジスタGDと、対応する出力端子Oから電圧信号を出力する3個の画素信号読み出し部RUとを備える。画素信号読み出し部RUのそれぞれは、読み出しゲートトランジスタGと、フローティングディフュージョンFDと、電荷蓄積容量Cと、リセットゲートトランジスタRTと、ソースフォロアゲートトランジスタSFと、選択ゲートトランジスタSLとを備える。それぞれの画素信号読み出し部RUでは、フローティングディフュージョンFDと電荷蓄積容量Cとによって電荷蓄積部CSが構成されている。
【0039】
なお、
図3においては、3個の画素信号読み出し部RUの符号「RU」の後に、「1」、「2」、または「3」数字を付与することによって、それぞれの画素信号読み出し部RUを区別する。また、同様に、3個の画素信号読み出し部RUに備えたそれぞれの構成要素も、それぞれの画素信号読み出し部RUを表す数字を符号の後に示すことによって、それぞれの構成要素が対応する画素信号読み出し部RUを区別して表す。
【0040】
図3に示した画素321において、出力端子O1から電圧信号を出力する画素信号読み出し部RU1は、読み出しゲートトランジスタG1と、フローティングディフュージョンFD1と、電荷蓄積容量C1と、リセットゲートトランジスタRT1と、ソースフォロアゲートトランジスタSF1と、選択ゲートトランジスタSL1とを備える。画素信号読み出し部RU1では、フローティングディフュージョンFD1と電荷蓄積容量C1とによって電荷蓄積部CS1が構成されている。画素信号読み出し部RU2~RU3も同様の構成である。
【0041】
光電変換素子PDは、入射した光を光電変換して電荷を発生させ、発生させた電荷を蓄積する埋め込み型のフォトダイオードである。光電変換素子PDの構造は任意であってよい。光電変換素子PDは、例えば、P型半導体とN型半導体とを接合した構造のPNフォトダイオードであってもよいし、P型半導体とN型半導体との間にI型半導体を挟んだ構造のPINフォトダイオードであってもよい。また、光電変換素子PDは、フォトダイオードに限定されるものではなく、例えば、フォトゲート方式の光電変換素子であってもよい。
【0042】
画素321では、光電変換素子PDが入射した光を光電変換して発生させた電荷を3個の電荷蓄積部CSのそれぞれに振り分け、振り分けられた電荷の電荷量に応じたそれぞれの電圧信号を、画素信号処理回路325に出力する。
【0043】
距離画像センサ32に配置される画素の構成は、
図3に示したような、3個の画素信号読み出し部RUを備えた構成に限定されるものではなく、複数の画素信号読み出し部RUを備えた構成の画素であればよい。つまり、距離画像センサ32に配置される画素に備える画素信号読み出し部RU(電荷蓄積部CS)の数は、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0044】
また、
図3に示した構成の画素321では、電荷蓄積部CSを、フローティングディフュージョンFDと電荷蓄積容量Cとによって構成する一例を示した。しかし、電荷蓄積部CSは、少なくともフローティングディフュージョンFDによって構成されればよく、画素321が電荷蓄積容量Cを備えない構成であってもよい。
【0045】
また、
図3に示した構成の画素321では、ドレインゲートトランジスタGDを備える構成の一例を示したが、光電変換素子PDに蓄積されている(残っている)電荷を破棄する必要がない場合には、ドレインゲートトランジスタGDを備えない構成であってもよい。
【0046】
図4は、実施形態の直接反射光RLdとマルチパス反射光RLmを説明する図である。
図4には、距離画像撮像装置1が被写体OBに光パルスPOを照射する様子が模式的に示されている。
図4に示すように、距離画像撮像装置1に受光される反射はRLには、直接反射光RLdとマルチパス反射光RLmが含まれる。すなわち、距離画像撮像装置1が照射した光パルスPOの一部は被写体OBに反射した反射光が距離画像撮像装置1に到達し、直接反射光RLdとして受光部3に受光される。一方、距離画像撮像装置1が照射した光パルスPOの他の一部は、床などに反射した後に被写体OBに反射した反射光が距離画像撮像装置1に到達し、マルチパス反射光RLmとして受光部3に受光される。このようなマルチパス反射光RLmは、直接反射光RLdより受光部3に受光されるまでの光路が長く、直接反射光RLdより遅れて受光されるため、正しい距離演算ができなくなるという問題があった。
【0047】
この対策として、本実施形態では光源部2が照射する光源にドット光を用いるようにした。ドット光源は、複数のドット光により構成される構造化光である。ドット光源を用いることにより、被写体OBに対し、均一でない局所的な光パルスPOが照射される。
【0048】
図5は実施形態の受光領域320に受光される光の例を示す図である。
図5に示すように、ドット光源を用いることにより被写体OBにはドット光が照射される領域と照射されない領域が存在し、受光部3の受光領域320には被写体OBにおいてドット光が照射された領域から到来する光を受光する画素321Aと、受光しない画素321Bの二種類の画素321が存在する。画素321Aは「第1画素回路」の一例である。画素321Bは「第2画素回路」の一例である。
【0049】
ドット光源を用いた場合、画素321Aには被写体OBからの反射光が受光される。一方、画素321Bには被写体OBからの反射光が受光されないとも考えられる。しかしながら、実際には床や壁面等に反射した後に被写体OBに到達した光がマルチパス反射光RLmとして距離画像撮像装置1に受光され、このようなマルチパス反射光RLmが距離演算における誤差の要因の一つとなっている。
【0050】
マルチパス反射光RLmがある場合、ドット光源を用いていることによって画素321Aには被写体OBからの反射光とマルチパス反射光RLmが混在した光が受光され、画素321Bにはマルチパス反射光RLmのみが受光される。本実施形態ではこの性質を利用し、画素321Aが受光した光量から画素321Bが受光した光量を減算することによってマルチパス反射光RLmの影響を抑えるようにした。
【0051】
より具体的には、距離演算部42は、画素321Aの電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量に相当する信号値から、画素321Bの電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量に相当する信号値を減算する。距離演算部42は、減算後の値を用いて処理演算を行う。これにより、マルチパス反射光RLmを含まない直接反射光RLdのみに相当する信号を用いて距離演算を行うことができ、マルチパス反射光RLmの影響を抑えることが可能となる。
【0052】
図6(
図6A及び
図6B)は、画素321のタイミングチャートが示されている。
図6には照射光(光パルスPO)が照射されるタイミング、直接反射光RLd及びマルチパス反射光RLmが受光されるタイミング、及び画素321が駆動されるタイミングのそれぞれが示されている。画素321が駆動されるタイミングとして、画素321における読み出しゲートトランジスタG1を駆動させる駆動信号TX1を「G1」、読み出しゲートトランジスタG2を駆動させる駆動信号TX2を「G2」、読み出しゲートトランジスタG3を駆動させる駆動信号TX3を「G3」、ドレインゲートトランジスタGDを駆動させる駆動信号RSTDを「GD」の項目にて示されている。
【0053】
図6には画素321Aを駆動させるタイミングを示すタイミングチャートが示されている。
垂直走査回路323は、光パルスPOを照射させるタイミングと同じタイミングにて、ドレインゲートトランジスタGDをオフ状態にするとともに、読み出しゲートトランジスタG1をオン状態とする。垂直走査回路323は、読み出しゲートトランジスタG1をオン状態としてから蓄積時間幅に相当する時間が経過した後に、読み出しゲートトランジスタG1をオフ状態にする。これにより、読み出しゲートトランジスタG1がオン状態に制御されている間に光電変換素子PDにより光電変換された電荷は、読み出しゲートトランジスタG1を介して電荷蓄積部CS1に蓄積される。
次に、垂直走査回路323は、読み出しゲートトランジスタG1をオフ状態としたタイミングで、読み出しゲートトランジスタG2を蓄積時間幅に相当する時間オン状態にする。これにより、読み出しゲートトランジスタG2がオン状態に制御されている間に光電変換素子PDにより光電変換された電荷は、読み出しゲートトランジスタG2を介して電荷蓄積部CS2に蓄積される。
次に、垂直走査回路323は、電荷蓄積部CS2への電荷の蓄積を終了させたタイミングで、読み出しゲートトランジスタG3をオン状態にし、蓄積時間幅Taに相当する時間が経過した後に、読み出しゲートトランジスタG3をオフ状態にする。これにより、読み出しゲートトランジスタG3がオン状態に制御されている間に光電変換素子PDにより光電変換された電荷は、読み出しゲートトランジスタG3を介して電荷蓄積部CS3に蓄積される。
そして、垂直走査回路323は、電荷蓄積部CS3への電荷の蓄積を終了させたタイミングで、ドレインゲートトランジスタGDをオン状態にして電荷の排出を行う。これにより、光電変換素子PDにより光電変換された電荷はドレインゲートトランジスタGDを介して破棄される。
【0054】
図6Aに示すように、直接反射光RLdに対し、マルチパス反射光RLmは遅れて受光される。画素321AのゲートトランジスタG2がオン状態にされた期間において、直接反射光RLd1(直接反射光RLdの一部)とマルチパス反射光RLm1(マルチパス反射光RLmの一部)が受光され、受光された光量に応じた電荷が電荷蓄積部CS2に蓄積される。また、画素321AのゲートトランジスタG3がオン状態にされた期間において、直接反射光RLd2(直接反射光RLd2における残りの一部)とマルチパス反射光RLm2(マルチパス反射光RLmにおける残りの一部)が受光され、受光された光量に応じた電荷が電荷蓄積部CS3に蓄積される。すなわち、直接反射光RLd及びマルチパス反射光RLmが混在した光量に応じた電荷が、画素321Aの電荷蓄積部CS2及びCS3に振り分けられて蓄積される。
【0055】
図6Bに示すように、画素321Bには直接反射光RLdが受光されず、マルチパス反射光RLmのみが受光される。画素321BのゲートトランジスタG2がオン状態にされた期間において、マルチパス反射光RLm1が受光され、受光された光量に応じた電荷が電荷蓄積部CS2に蓄積される。また、画素321BのゲートトランジスタG3がオン状態にされた期間において、マルチパス反射光RLm2が受光され、受光された光量に応じた電荷が電荷蓄積部CS3に蓄積される。すなわち、マルチパス反射光RLmの光量に応じた電荷が、画素321Bの電荷蓄積部CS2及びCS3に振り分けられて蓄積される。
【0056】
垂直走査回路323は、上述したような蓄積サイクルを所定の蓄積回数分繰り返し行う。垂直走査回路323は蓄積サイクルを所定の蓄積回数分繰り返し行った後、垂直走査回路323は、それぞれの電荷蓄積部CSに振り分けられた電荷量に応じた電圧信号を出力する。具体的に、垂直走査回路323は、選択ゲートトランジスタSL1を所定時間オン状態にすることにより、画素信号読み出し部RU1を介して電荷蓄積部CS1に蓄積された電荷量に対応する電圧信号を出力端子O1から出力させる。同様に、垂直走査回路323は、順次、選択ゲートトランジスタSL2、SL3をオン状態とすることにより、電荷蓄積部CS2、CS3に蓄積された電荷量に対応する電圧信号を出力端子O2、O3から出力させる。そして、画素信号処理回路325、及び水平走査回路324を介して、電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量に相当する電圧信号が信号値として距離画像処理部4に出力される。
【0057】
距離画像処理部4の距離演算部42は、垂直走査回路323から出力された信号値に基づいて、被写体OBまでの距離を算出する。距離演算部42は、反射光RLに相当する電荷が振り分けて蓄積された複数の電荷蓄積部CSを特定し、特定した複数の電荷蓄積部CSに振り分けられた電荷量の配分(振り分け比率)に基づいて、被写体OBまでの距離を算出する。
【0058】
距離演算部42は、以下の(1)式を用いて、マルチパス反射光RLmの影響を取り除いた電荷量Q2を算出する。また、(2)式を用いて、マルチパス反射光RLmの影響を取り除いた電荷量Q3を算出する。
【0059】
Q2=Q2A-Q2B …(1)
但し、Q2は直接反射光RLdが振り分けられて電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量
Q2Aは画素321Aの電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量
Q2Bは画素321Bの電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量
【0060】
Q3=Q3A-Q3B …(2)
但し、Q3は直接反射光RLdが振り分けられて電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量
Q3Aは画素321Aの電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量
Q3Bは画素321Bの電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量
【0061】
距離演算部42は、以下の(3)式により、遅延時間Tdを算出する。
【0062】
Td=To×(Q2-Q1)/(Q2+Q3-2×Q1) …(3)
Q1は画素321A又は画素321Bの電荷蓄積部CS1に蓄積された電荷量である。
Q2は(1)式により求めた電荷量である。
Q3は(2)式により求めた電荷量である。
【0063】
距離演算部42は、(3)式で求めた遅延時間Tdに、光速(速度)を乗算させることにより、被写体OBまでの往復の距離を算出する。そして、距離演算部42は、上記で算出した往復の距離を1/2とすることにより、被写体OBまでの距離を求める。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、(1)式及び(2)式により電荷蓄積部CS2及びCS3に蓄積された電荷量からマルチパス反射光RLmに応じた電荷量を除いた電荷量、すなわち直接反射光RLdに応じた電荷量を算出することができる。したがって、マルチパス反射光RLmの影響を抑えて、精度よく距離を算出することが可能となる。
【0065】
ここで、受光領域320にある画素321のうち、何れの画素321を画素321Aとし、何れの画素を画素321Bとするかは、画素321が配置された位置に応じて決定される。
図2に示すように、受光領域320において画素321が二次元マトリクス状に複数配置される。例えば、距離演算部42は、ドット光源におけるドットパターン及びドットの形状に応じて、受光領域320に配置された画素321を、ドット光に応じた直接反射光RLdを受光する画素321と、受光しない画素321に予め分類する。距離演算部42は、ドット光に応じた直接反射光RLdを受光する画素321を、画素321Aとする。画素321Aの周辺に位置する画素321を、画素321Bとして用いる画素321とする。
【0066】
距離演算部42は、複数の画素321を、画素321Bとして用いてもよい。この場合、距離演算部42は、画素321Aの周辺に位置する複数の画素321のそれぞれに蓄積された電荷量から得られる統計量、例えば、単純加算平均値、或いは中央値などを用いて、(1)式における電荷量Q2B、及び(2)式における電荷量Q3Bを算出する。複数の画素321それぞれに蓄積された電荷量から得られる統計量を用いることにより、画素321に蓄積されるノイズの影響を低減させることができる。
【0067】
また、距離演算部42は、最も電荷量が多い電荷蓄積部CSを有する画素321Aの位置を基準として、その基準とした位置から対角方向に1画素以上離れた箇所に位置する画素321を、画素321Bとして選択する。ドット光の大きさ及び形状にもよるが、通常、ドット光に応じた直接反射光RLdは複数の画素321にまたがって受光される。この性質を利用し、ドット光に応じた直接反射光RLdを受光する複数の画素321のうち最も大きい光量に応じた電荷を蓄積した画素321が配置された位置を基準として設定する。例えば、距離演算部42は、基準とした位置から、対角方向に、所定の画素数(例えば、1画素)離れた位置に配置された画素321を、画素321Bとして設定する。ドット光の形状は円形状となる場合が多い。対角方向に離れた位置に配置された画素321を画素321Bとして選択することにより、基準とする位置にもっと近い位置にある画素321であって、直接反射光RLdを受光しない画素321を、画素321Bとして選択することができる。なお、基準とする画素321が配置された位置から、対角方向に何画素以上離れた箇所に位置する画素321を選択するかについては、ドット光の大きさに応じて決定されてよい。
【0068】
或いは、距離演算部42は、水平方向、又は垂直方向に、1画素以上離れた箇所に位置する画素321を、画素321Bとして選択するようにしてもよい。つまり、距離演算部42は、最も電荷量が多い電荷蓄積部CSを有する画素321Aの位置を基準として、その基準とした位置から水平方向、又は垂直方向に、1画素以上離れた箇所に位置する画素321を、画素321Bとして選択するようにしてもよい。ドット光の形状が方形状であるなど、円形状でない場合であっても、水平方向又は垂直方向に離れた位置に配置された画素321を画素321Bとして選択することにより、基準とする位置にもっと近い位置にある画素321であって、直接反射光RLdを受光しない画素321を、画素321Bとして選択することができる。
【0069】
また、距離演算部42は、画素321Bにある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量(電荷量Q2B、Q3B)を、その画素321が配置された位置に応じて重みづけし、重みづけをした電荷量を距離演算に用いるようにしてもよい。例えば、受光領域320において下側に配置された画素321は、床に反射した後に到来するマルチパスの影響を大きく受けていることが予想される。このように、受光領域320において配置された位置に応じてマルチパスの影響を受ける度合が異なる場合において、位置に応じた重みづけを行うことによってマルチパスの影響を均一化することが可能となる。
【0070】
図7は実施形態の重み付け処理を説明する図である。
図7に示すように、受光領域320において、下側にあるグループGrに属する画素321群が配置され、基準とした画素321-0が配置された位置から対角方向にある4つの画素321、つまり画素321-1~321-4を、画素321Bとして用いるとする。
【0071】
この場合において、グループGrに属する画素321のうち、上側にある画素321-1及び321-2よりも、下側にある画素321-3及び321-4が、マルチパスの影響をより大きく受けていることが予想される。このような場合、距離演算部42は、例えば、以下の(4)式を用いて重みづけを行うことにより電荷量Q2Bを算出する。また、以下の(5)式を用いて重みづけを行うことにより電荷量Q3Bを算出する。
【0072】
Q2B=Q2B1×α1
+Q2B2×α2
+Q2B3×α3
+Q2B4×α4 …(4)
但し、Q2Bは重みづけにより求めた電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量である。
Q2B1は画素321-1の電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量である。
Q2B2は画素321-2の電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量である。
Q2B3は画素321-3の電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量である。
Q2B4は画素321-4の電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量である。
α1は電荷量Q2B1に乗算される重み係数である。
α2は電荷量Q2B2に乗算される重み係数である。
α3は電荷量Q2B3に乗算される重み係数である。
α4は電荷量Q2B4に乗算される重み係数である。
【0073】
ここで、係数α(係数α1~α4)の合計は、特定の値(例えば、1)となるように設定される。また、上側にある画素321に乗算される係数(係数α1及びα2)は、下側にある画素321に乗算される係数(係数α3及びα4)よりも小さい値に設定される。例えば、係数α1=1/8、係数α2=1/8、係数α3=3/8、係数α4=3/8に設定される。
【0074】
Q3B=Q3B1×β1
+Q3B2×β2
+Q3B3×β3
+Q3B4×β4 …(5)
但し、Q3Bは重みづけにより求めた電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量である。
Q3B1は画素321-1の電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量である。
Q3B2は画素321-2の電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量である。
Q3B3は画素321-3の電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量である。
Q3B4は画素321-4の電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量である。
β1は電荷量Q2B1に乗算される重み係数である。
β2は電荷量Q2B2に乗算される重み係数である。
β3は電荷量Q2B3に乗算される重み係数である。
β4は電荷量Q2B4に乗算される重み係数である。
【0075】
ここで、係数β(β1~β4)は係数αと同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。係数βの合計は、特定の値(例えば、1)となるように設定される。また、下側にある画素321に乗算される係数(係数β1及びβ2)は、下側にある画素321に乗算される係数(係数β3及びβ4)よりも小さい値に設定される。例えば、係数β1=1/8、係数β2=1/8、係数β3=3/8、係数β4=3/8に設定される。
【0076】
以上説明したように、実施形態の距離演算部42では、複数の画素321B(画素321-1~321-4)を用いる場合において、それぞれの画素321B(画素321-1~321-4)が配置された位置に応じて、それぞれの画素321B(画素321-1~321-4)にある電荷蓄積部CSに蓄積される電荷量を、式(4)及び式(5)を用いて重みづけする。距離演算部42は、重みづけをした値を用いて電荷量Q2B、及びQ3Bを算出する。これにより、実施形態の距離演算部42では、配置された位置に応じて画素321がマルチパスの影響を受ける度合が異なる場合であってもマルチパスの影響を均一化することが可能となる。
【0077】
ここで、受光領域320において、本来、ドット光に応じた直接反射光RLdを受光しないはずなのに、マルチパス反射光RLmよりもより多くの光量を受光する画素321が検出される現象が発生する場合がある。これは、本来、拡散された反射光RLに由来するマルチパスが大多数を占めるはずのマルチパス反射光RLmの中に、ドット光に応じた直接反射光RLdに由来するマルチパスが混入したためと推測される。このような現象は、例えば鏡面反射をする床があるなどの理由で発生することが考えられる。
【0078】
図8(
図8A及び
図8B)を用いて、直接反射光RLdに由来するマルチパスが混入する現象について説明する。
図8Aには受光領域320に受光される光の例が示されている。
図8Aに示すように、受光領域320における画素321B#において、本来、ドット光に応じた直接反射光RLdが受光されないはずなのに、ドット光に応じた直接反射光RLdに由来するマルチパスが受光される場合がある。
【0079】
図8Bには、
図8Aにおける点線Lに示す列に配置された画素321ごとに受光される光量の変化を示す図である。
図8Bの横軸は画素321、縦軸は光量を示す。
図8Bに示すように、列の左端にある画素321B-Lsから、列に沿って右方向に配置された5個の画素群X、6個目~10個目の画素群Y、11個目から列の右端にある画素321B-Leまでの画素群Zのそれぞれにおいて蓄積された電荷量に大きな差が生じている。
【0080】
具体的に、画素群X及び画素群Zにある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量はほぼ同量でありほとんど差がない。例えば、画素321B-L1と、その画素321B-L1に隣接する画素321B-L2のそれぞれに蓄積される電荷量の差D1は画素321B-L1に対して±1%以下の値となる。
【0081】
これに対し、画素群Yにある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量は、画素群X及び画素群Zと比較して大きな値となっている。例えば、画素321B-L3と、その画素321B-L3に隣接する画素321B-L4のそれぞれに蓄積される電荷量の差D2は画素321B-L3に対して+3%以上の値となる。これは、画素群Yが、直接反射光RLdに由来するマルチパスを受光したことに起因するものと考えられる。
【0082】
このような直接反射光RLdに由来するマルチパスは、本来想定されるマルチパス反射光RLmと同様に直接反射光RLdより遅れて受光され、かつ、
図8Bに示すように、本来想定されるマルチパス反射光RLmよりも大きな光量である。このため、距離演算において大きな誤差を発生させる要因となり得る。
【0083】
この対策として、本実施形態では、直接反射光RLdに由来するマルチパスを受光した画素321を、画素321Bとして用いないようにする。具体的に、距離演算部42は、隣接する複数の画素321Bのうち、電荷蓄積部CSに蓄積される電荷量が、他の画素321よりも大きいものを、画素321Bとして用いないようにする。
【0084】
具体的に、距離演算部42は、画素321Bとして用いる位置に配置される画素群について隣接する画素群ごと、例えば、列単位に、電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量のそれぞれに応じた信号値を取得する。距離演算部42は、取得した信号値に応じて、画素群に含まれる画素321を、画素321Bとして用いるか否かを判定する。例えば、距離演算部42は、取得した信号値を用いて、電荷蓄積部CS毎に、蓄積された電荷量の平均値(単純加算平均値)を算出する。距離演算部42は、算出した平均値に基づいて、閾値、例えば、測定誤差として許容される最大のマージンである平均値の3%を、平均値に加算した値を設定する。距離演算部42は、信号値を取得した画素群のうち、画素321にある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量が閾値以上であるものを、画素321Bとして選択しない。つまり、距離演算部42は、信号値を取得した画素群のうち、画素321にある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量が閾値未満であるものを、画素321Bとして選択する。
【0085】
これにより、実施形態の距離画像撮像装置1では、直接反射光RLdに由来するマルチパスを受光した画素321を、画素321Bから除外することができる。したがって、鏡面反射をする床があるなど、直接反射光RLdに由来するマルチパスが発生するような状況にあっても、本来想定していたマルチパス反射光RLmを精度よく除外することができ、距離を精度よく算出することが可能となる。
【0086】
ここで、
図9を用いて、距離画像撮像装置1が行う処理の流れを説明する。
図9は、実施形態の距離画像撮像装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
ステップS10:距離画像撮像装置1は画素321を駆動させる。例えば、距離画像撮像装置1は、反射光RLを画素321にある複数の電荷蓄積部CS(
図6における電荷蓄積部CS2及びCS3)に振り分けて蓄積させる処理を、1フレームに相当する蓄積回数行うことにより、画素321を駆動させる。
【0088】
ステップS11:距離画像撮像装置1は、画素321A(画素A)にある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量(電荷量QA)に相当する信号値VAを取得する。距離画像撮像装置1は、ステップS1において画素321を駆動した後に設定されている読出期間において、画素321Aにある電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量に対応する信号値が読み出すことにより信号値VAを取得する。より具体的には距離画像撮像装置1は、画素321Aにある電荷蓄積部CS1に蓄積された電荷量(電荷量QA1)に相当する信号値VA1を取得する。距離画像撮像装置1は、画素321Aにある電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量(電荷量QA2)に相当する信号値VA2を取得する。距離画像撮像装置1は、画素321Aにある電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量(電荷量QA3)に相当する信号値VA3を取得する。
【0089】
ステップS12:距離画像撮像装置1は、画素321B(画素B)にある電荷蓄積部CSに蓄積された電荷量(電荷量QB)に相当する信号値VBを取得する。距離画像撮像装置1は、ステップS1において画素321を駆動した後に設定されている読出期間において、画素321Bにある電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積された電荷量に対応する信号値が読み出すことにより信号値VAを取得する。より具体的には距離画像撮像装置1は、画素321Bにある電荷蓄積部CS1に蓄積された電荷量(電荷量QB1)に相当する信号値VB1を取得する。距離画像撮像装置1は、画素321Bにある電荷蓄積部CS2に蓄積された電荷量(電荷量QB2)に相当する信号値VB2を取得する。距離画像撮像装置1は、画素321Bにある電荷蓄積部CS3に蓄積された電荷量(電荷量QB3)に相当する信号値VB3を取得する。
【0090】
ステップS13:距離画像撮像装置1は、信号値VAから信号値VBを減算した信号値Vを算出する。より具体的には距離画像撮像装置1は、信号値VA2から信号値VB2を減算した信号値V2を算出する。距離画像撮像装置1は、信号値VA3から信号値VB3を減算した信号値V3を算出する。
【0091】
ステップS14:距離画像撮像装置1は、ステップS13において算出した信号値V(信号値VA2及びV3)を用いて距離を算出する。例えば、距離画像撮像装置1は、(3)式を用いて距離を算出する。この場合、(3)式における電荷量Qに信号値Vを代入する。具体的には、(3)式における電荷量Q1に信号値V1を代入する。信号値V1は画素321(画素321Aでも321Bでもよい)にある電荷蓄積部CS1に蓄積された電荷量に対応する信号値である。また、(3)式における電荷量Q2に信号値V2を代入する。(3)式における電荷量Q3に信号値V3を代入する。距離画像撮像装置1は測定処理を終了させる。
【0092】
以上説明したように、実施形態の距離画像撮像装置1では、画素321は二次元マトリクス状に複数配置される。また、光パルスPOは、複数のドット光により構成される構造化光である。距離演算部42は、電荷量QA(第1電荷量)から、電荷量QBを減算した値を用いて、被写体OBまでの距離を算出する。電荷量QAは、直接反射光RLdを受光する画素321A(第1画素回路)にある電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積される電荷量である。電荷量QBは、直接反射光RLdを受光しない画素321B(第2画素回路)にある電荷蓄積部CSのそれぞれに蓄積される電荷量である。
これにより、実施形態の距離画像撮像装置1では、直接反射光RLdとマルチパス反射光RLmが混在した光量から、マルチパス反射光RLmに相当する光量を取り除くことができる。したがって、誤差の要因となるマルチパス反射光RLmの影響を抑制することができ、距離を精度よく算出することが可能となる。
【0093】
また、実施形態の距離画像撮像装置1では、複数の画素321B(第2画素回路)を用いて電荷量QB(第2電荷量)を算出するようにしてもよい。複数の画素321Bを用いることにより、電荷に含まれるノイズや受光量のばらつきを低減させることができる。
【0094】
また、実施形態の距離画像撮像装置1では、距離演算部42は、基準とした位置から対角方向に1画素以上離れた箇所に位置する画素321(画素回路)を画素321B(第2画素回路)として選択するようにしてもよい。
また、実施形態の距離画像撮像装置1では、距離演算部42は、基準とした位置から水平方向又は垂直方向に1画素以上離れた箇所に位置する画素321(画素回路)を画素321B(第2画素回路)として選択するようにしてもよい。
ここでの基準とした位置は、複数の画素321A(第1画素回路)にある電荷蓄積部CSの各々に蓄積される電荷量のうち、最も電荷量が多い電荷蓄積部CSを有する画素321A(第1画素回路)の位置である。
これにより、実施形態の距離画像撮像装置1では、画素321Aが配置された位置に近い画素321を、画素321Bとして用いることができる。つまり、マルチパス反射光RLmの光量が同等であることが推定される画素321(画素321A及び321B)を用いることができる。したがって、精度よくマルチパス反射光RLmの影響を排除することができ、距離を精度よく算出することが可能となる。
【0095】
また、実施形態の距離画像撮像装置1では、距離演算部42は、画素321B(第2画素回路)が配置されている位置に応じて、画素321B(第2画素回路)にある電荷蓄積部CSに蓄積される電荷量を重みづけした値を用いて、電荷量QB(第2電荷量)を算出する。これにより、実施形態の距離画像撮像装置1では、受光領域320における画素321が配置された位置に応じて光量が異なるマルチパス反射光RLmが受光される場合であっても、マルチパス反射光RLmの光量を均一化することが可能となる。したがって、例えば、床を経由したマルチパス反射光RLm等によって、受光領域320の下側にある画素321(
図7における画素321-3及び321-4)が、上側にある画素321(
図7における画素321-1及び321-2)と比較してマルチパス反射光RLmの影響を大きく受けるような状況にあっても、その影響のばらつきを抑えることができる。
【0096】
また、実施形態の距離画像撮像装置1では、距離演算部42は、複数の前記第2画素回路を用いる場合において、隣接する画素321にある電荷蓄積部CSに蓄積される電荷量の差が閾値以上である場合、これらの隣接する画素321のうち電荷蓄積部CSに蓄積される電荷量が多い画素321を、画素321B(第2画素回路)として選択しない。これにより、実施形態の距離画像撮像装置1では、本来想定したマルチパス反射光RLmとは異なるマルチパスを受光した画素321、例えば、
図8Aに示す画素321B#が含まれる場合であっても、その本来想定したマルチパス反射光RLmとは異なるマルチパスの影響を受けないようにすることができる。したがって、本来想定したマルチパス反射光RLmとは異なるマルチパスを受光した場合であっても精度よく距離を算出することが可能となる。
【0097】
上述した実施形態における距離画像撮像装置1、距離画像処理部4の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0098】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1…距離画像撮像装置
2…光源部
3…受光部
32…距離画像センサ
321…画素(画素回路)
321A…画素(第1画素回路)
321B…画素(第2画素回路)
42…距離演算部
CS…電荷蓄積部
PO…光パルス
RL…反射光
RLd…直接反射光
RLm…マルチパス反射光